勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ウクライナ経済ニュース時評 > ウクライナ経済ニュース時評

    a0001_000088_m
       

    EU(欧州連合)は、ウクライナとモルドヴァの両国を「加盟候補国」と承認した。EU加盟国27カ国が全会一致で決めた。今後は、国内の制度改革が実効を挙げたか、その実績評価によって、正式な加盟国になる。これによって、経済的なメリットを受ける。EU域内では、モノやサービス、ヒトが自由に移動できる。ウクライナ国民も、EU市民になれば域内のどこにでも住み、働くことができるからだ。現状から見ると、夢のような環境が生まれる。

     

    こうした経済的メリットもさることながら、「EUに加盟することで、ウクライナはロシア世界の一部ではなく、欧州の独立主権国家という地位を確立できるだろう」という指摘がある。バルト三国(エストニア・リトアニア・ラトビア)が、「一寸の虫にも三分の魂」で自由を叫び、ロシアから独立した血の叫びを想起すべきだろう。人間には、自由が不可欠である。ウクライナ国民は、それを勝ち取ろうとしているのだ。

     


    英国『BBC』(6月23日付)は、「ウクライナがEU加盟候補国へ『何が変わる』ロシアの反応は?」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ゼレンスキー大統領は、今年2月にロシアの侵攻が始まった5日後に、EU加盟を申請した。ウクライナ側は即時の加盟を求めているが、その手続きには数年かかる可能性もある。EUに加盟すれば財政的な利点があるだろう。しかし、ブリュッセルのシンクタンク「欧州政策研究センター」のザック・パイキン博士は、ウクライナの動機は経済的なものではないと指摘する。「EUに加盟することで、ウクライナはロシア世界の一部ではなく、欧州の独立主権国家という地位を確立できるだろう」と、パイキン博士は述べた」

     

    ウクライナのEU加盟への目的は、欧州の一員になってロシアと縁を切りたいことだという。ウクライナ人の親類縁者はロシアに一杯いるが、もはや価値観が異なる以上、絶縁したいのだ。ウクライナ正教は、すでにロシア正教から独立した存在である。信仰が異なる以上、ロシアの支配を受けたくないという独立精神が旺盛なのだ。

     


    (2)「欧州委員会は、
    申請した国が加盟候補にふさわしいかどうかを判断する。安定した民主主義政府があるかどうか、人権が尊重されているか、自由市場経済が存在しているかどうかなどが基準となる。この手続きの後、欧州委が申請国を加盟候補に推奨すると、次は全加盟国の承認が必要となる。全加盟国が承認し、正式な加盟候補となった国は、数年をかけてEU法や規制を国内法に適用していく。このプロセスが終わって初めて、加盟候補国は加盟条約に署名することができる。この条約も、全加盟国が批准する必要がある」

     

    欧州は、カソリックかプロテスタントである。宗教改革や科学革命を経験している文化圏だ。それだけに、正教の古い慣行に染まっている国では、汚職などがはびこっている。EUは、それを糺さないと正式加盟国として受入れない。

     


    (3)「ブルガリアやルーマニア、クロアチアといった直近の加盟国は、一連の手続きに10~12年を費やした。アルバニアと北マケドニア、モンテネグロ、セルビアは正式な加盟候補国となって数年がたっているが、手続きは滞っている。トルコも1999年に加盟候補国となったものの、人権侵害への懸念があることから、加盟交渉は中断したままだ。ウクライナの隣国のモルドヴァも、ウクライナと同じ日に加盟候補国に認められた。ジョージアも同時期に申請したが、いくつかの改革が必要と判断された」

     

    ブルガリアやルーマニアの宗教は正教である。クロアチアはカトリックが8割である。一連の手続きに10~12年も費やしている。ウクライナは、こういう国々と比べてどこまで短縮できるかだ。ウクライナ侵攻という多大の犠牲を被っても、新しい国造りを目指す熱意が、期間を短縮させることを期待したい。

     

    (4)「ウクライナは、EU加盟申請への準備としてすでに、数々の国内法や規制をEU基準に変更している。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ウクライナは「良い仕事をしている」と述べた一方で、加盟に向けてはさらに「重要な改革」が必要だと指摘した。これには、法の統治の強化、人権状況の改善、オリガルヒ(新興財閥)の権力縮小、汚職対策などが挙げられている。欧州政策研究センターのパイキン博士はさらに、「ウクライナは一人前の市場経済を構築する必要がある。旧ソ連国には難しい課題だ」と指摘した。また、大きな批判を浴びている司法体系の整備も、課題の一つだという」

     

    ウクライナが、EUの加盟国になるには下線部のような改善が課されている。オリガルヒの権力はかなり縮小されている。ウクライナ侵攻撃退で、自費で戦費を提供している例もあるという。

     


    (5)「EU加盟から15年がたった
    ルーマニアでは国民総所得が3に、ブルガリアでは2に拡大した。EUは欧州構造投資基金(ESIF)を通じ、両国に数百億ユーロを投入している。こうした資金は、新しい道路や港の建設などに充てられ、経済開発を支援している。2014~2020年に、ブルガリアは112億ユーロを、ルーマニアは350億ユーロを受け取っている。一方で、各国の腐敗・汚職に取り組む非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルは、こうした資金の多くが汚職によって失われていると指摘する」

     

    EUが、汚職に厳しい目を向けているのは、EUからの補助金が汚職で消えているからだ。EUが、新加盟国のハードルを高くしているの裏には、こういう事情があるのだ。

    a0960_008532_m
       

    ロシア軍のウクライナ東部作戦は、停滞気味と報道されている。この状況視察で、ロシア軍のゲラシモフ軍参謀総長が現地へ入らざるを得ないほどだ。米『ニューヨーク・タイムズ』は5月1日、ウクライナ軍がロシア軍制服組トップのゲラシモフ軍参謀総長を標的とした攻撃を行ったと報じた。

     

    ウクライナ軍は、欧米からの武器弾薬の供給を受け、これまでの防衛から転じて「反転攻勢」により、ロシア軍支配地の奪回を目指す作戦に転じる。ウクライナ政府の高官が、日本経済新聞との単独インタビューで明らかにした。

     


    『日本経済新聞 電子版』(5月3日付)は、「ウクライナ高官『5月末にも反転攻勢』 米欧軍事支援で」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナのオレクシー・アレストビッチ大統領府長官顧問は5月1日、日本経済新聞のオンライン取材に応じた。ロシアの軍事侵攻について、米欧からの武器供与により「ウクライナ軍は5月末から6月半ばには攻勢に転じることができる」と述べた。ロシア軍は5月9日の対独戦勝記念日に向け猛攻撃に出るとの見方もあり、戦闘が一段と激しくなる恐れがある。アレストビッチ氏はゼレンスキー大統領の側近の一人で、大統領府で安全保障・軍事部門を担当している

     

    (1)「2月24日にウクライナに侵攻してきたロシア軍とは、近く東部ドンバス地方をめぐる「決定的な戦闘」(ゼレンスキー氏)が始まるとみられている。アレストビッチ氏は5月半ば以降に米欧から戦車や長距離砲などが前線に届くと説明し、「攻勢に移るための攻撃部隊を整えることができる」と指摘した。これまでウクライナ軍は防衛に軸を置いてきたが、反転攻勢に出れば戦局は大きな転機になりそうだ。数多くの市民殺害が確認された首都キーウ(キエフ)近郊のブチャの惨事を挙げ、「ロシア軍が領内に一日でも長くとどまれば、それだけ大量殺人の犯罪が増える」と訴え、欧米に侵攻を止めるため武器支援を急ぐよう求めた」

     


    ウクライナ軍は、ロシア軍との「決定的な戦闘」を準備している。一日も早くロシア軍の支配地を取り戻さなければ、ウクライナ国民が災害を受ける、としている。

     

    (2)「ロシア軍についてはキーウ占領作戦などに失敗し、「すでに戦略的に敗北した。何一つ目標を達成できていない」と述べた。予備役の補充がなく、ソ連時代の旧式武器が多いロシア軍は多大な損失を被って弱体化している。ロシアには対独戦勝記念日に向け成果をアピールしたい考えがあるとみられ、停滞する攻撃を勢いづけるため大規模動員に乗り出す可能性がある。アレストビッチ氏はウクライナ軍が最終的には「勝つだろう」と指摘したが、ドンバスを中心にロシア軍の猛攻撃も予想され、予断は許さない」

     

    ロシア軍は、予備役の補充がない上に旧式武器が多く多大の損失を被っている、と分析している。東部作戦が膠着している理由は、ここにありそうだ。

     

    (3)「アレストビッチ氏によると、今後の展開は3つのシナリオがある。

    1つ目はウクライナ軍が攻撃に転じ「12か月で領土を解放する」。

    2つ目はロシア軍が早期に予備役を投入し、ウクライナ軍による攻勢まで時間がかかる。

    3つ目はロシアが事実上、攻撃を断念して停戦交渉が進展するという展開だ」

     

    今後の展開には3通りのシナリオが考えられる。ウクライナは、「1つ目」のシナリオの実現に全力を挙げる。欧米からの強力な武器弾薬が着きしだい、反転攻勢に転じるとしている。順調に行けば、夏には明るいニュースが出るかもしれない。

     

    ロシア軍が、予備役を投入するとしても最低、半年間の訓練が必要であろう。となれば、ウクライナ軍の反転攻勢に対して時間的余裕がなくなる。ロシア軍が停戦を申入れる可能性は、極めて低いだろう。プーチン氏の政治生命に関わる問題であるからだ。

     


    (4)「ロシアとの停戦協議については、両国代表団の接触はあるものの、検討中の合意文書の文言調整などにとどまり「行われていないに等しい」という。特にロシアが一方的に要求するクリミア半島併合の承認では「大きな隔たり」があるとした。ゼレンスキー氏はロシア軍の残虐行為で国民感情が悪化し協議が終わる可能性を示唆している。激戦が続く南東部マリウポリでは巨大製鉄所からの民間人の脱出が始まった。まだ約1000人が取り残されているとみられ、ウクライナ当局がロシア側と救出に向けた協議を続けている。アレストビッチ氏は交渉について「非常にデリケートで、不用意な言葉を発すれば妨害されてしまう」として明言を避けた。

     

    停戦交渉は事実上、ストップしている。ロシアは、ウクライナへ「無条件降伏」を強要しているからだ。その上、西側へ経済制裁解除を求めている。こういう難題を突付けている状態では、停戦交渉は不可能だろう。

     


    (5)「仮に停戦したとしても、ウクライナ難民の再定住支援など多くの難題が待ち受ける。アレストビッチ氏は子供460万人を含む1100万人以上の国民が避難を強いられたとして、「こうした避難民のうち約200万人が仮設住宅を必要としている」と国際社会の協力を求めた。日本に対しては「ロシアを一貫して非難する立場をとり、ウクライナ国民の真の友人だ」と謝意を示したうえで、さらなる人道支援を呼びかけた」

     

    停戦自体は、喜ばしいことである。新たな犠牲者が出ないからだ。ロシア軍によって、徹底的に破壊し尽くされているので、約200万人が仮設住宅を必要としている。日本は、仮設住宅建設のノウハウと実績がある。貢献する分野であろう。

     


    (6)「ロシアではプーチン大統領が4月下旬に「我々には誰もいまは誇示できないようなあらゆる武器がある」と述べるなど核兵器の使用も辞さない考えを示唆する発言が相次ぐ。アレストビッチ氏は核兵器を使用すればロシア領内や同国軍にも大きな被害が及ぶとして「現状では可能性は低い」との見方を示した」

     

    ロシア軍が、追詰められれば大量殺戮兵器を使用する危険性も残っている。この面では、ロシア軍自体にも被害が及ぶので、「現状では可能性は低い」という。そうなることを祈るほかない。

    テイカカズラ
       

    ロシアは、5月9日が対独戦勝記念日である。今年は、ウクライナ戦争の勝利宣言をするのでないかと予想されてきた。だが、ウクライナ侵攻以来2ヶ月を経ても、戦況は当初予想とお異なって、首都キーウの占領が夢に終わっている。東部の作戦も停滞気味であり、とても「勝利宣言」できる状況でない。

     

    そこで、プーチン大統領は「勝利宣言」に代わって、ウクライナへ「宣戦布告」するという予想が登場してきた。英国国防相の発言である。これによって、ロシア国内のムードを引締めるというのだ。だが、「宣戦布告」だけでなく、徴兵制度を敷くのでないかと見られている。ロシア軍の士気が低く、徴兵制で有無を言わせずにウクライナ前線へ送り込もうというのである。

     


    だが、これは危険な側面を持っている。徴兵制になると、都市部出身者も兵役につくので戦死の場合、従来の地方出身兵士の戦死と異なり、反戦運動と結びつく可能性が強まることだ。これまでは、地方出身兵士の戦死であって、土地柄もあり反戦運動にならなかった。それが、徴兵制で一挙に事態が変化する危険性が高まるであろう。

     

    『共同通信』(4月30日付)は、「ロシア、5月9日に宣戦布告か 英国防相が見解示す」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ウォレス英国防相は4月30日までに、ロシアのプーチン大統領が第2次大戦の対ナチス・ドイツ戦勝の記念日に当たる5月9日に、ウクライナと戦争状態にあると位置付け、宣戦布告して総動員をかける可能性があるとの見方を示した。英ラジオ局『LBC』の番組で語った。ロシアは、これまで侵攻を「特別軍事作戦」とし、戦争とは表現していない」

     


    「特別軍事作戦」とは、一般的に次のような意味に使われる。

    戦争以外の軍事作戦は、戦争ではない状況における軍事作戦を指すもの。これには、全面戦争に至らない程度の武力行使も含まれる。具体的に、戦争以外の軍事作戦は侵略の抑止、国益の保護、条約義務の遂行、人道的支援及びそれに伴う警備活動、文民支援、平和的解決などが当てはまる。

     

    ロシア政府は、「ロシア派市民の保護」とか、「ナチズムへ対抗する」などと、大義を付けてきた。それゆえ、「特別軍事作戦」と称し「戦争」という言葉を禁じてきた。

    一般的に、「特別軍事作戦」は次の6点を意味している。

    1)目標は明確かつ達成可能であること。

    2)あらゆる能力・資源は共通の目標の下に統一的に運用されること。

    3)敵対勢力に政治的、軍事的、情報的な優位を阻止すること。

    4)適量の兵力を適切に使用すること。

    5)作戦の長期化に準備すること。

    6)軍事行動の正当性を維持すること。

     


    ロシア軍が、2月24日以来取ってきた軍事行動は、戦争そのものである。そこで、「宣戦布告」によって、ロシア国内向けにも「戦争」と位置づけ、徴兵制を敷くことになるのでないか、と予測されるにいたった。

     

    (2)「ロシア政府は、ウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」と敵視。ウォレス氏は、プーチン氏が「『世界のナチスと戦争状態にある。国民を大量動員する必要がある』と宣言するかもしれない」と述べた」

     

    プーチン氏は、ゼレンスキー政権を「ネオナチ」と位置づけている。現実は、正統な選挙で選ばれた大統領だ。ゼレンスキー氏の祖父は、ユダヤ人収容所の数少ない「生残り」である。ナチに弾圧・拷問された犠牲者の孫であるゼレンスキー氏が、「ネオナチ」とは驚くべきねつ造である。ウクライナへ戦争を仕掛ける口実であることは明白だ。

     

    ロシアは、徴兵制を敷いて「大軍」をウクライナへ送り込み、戦争の主導権を握る戦略と見られる。だが、これまで軍事教練を全く受けたこともない人々が、短期の教育で戦場に立てるだろうか。ましてや、根本的に脆弱構造であるロシア製戦車に搭乗して戦場に立つのは、自殺行為にも等しいことである。徴兵制は、危険な戦術そのものだ。

     

    徴兵制と並んで注目されるのは、「予備役」の招集である。予備役は、かつて軍務経験を持ち現在は、一般社会で生活している人々である。全く軍務経験のない人(徴兵制)に比べれば、格段に有利な立場である。それでも装備を整え、部隊を編成するのに少なくとも数カ月はかかるのだ。

     

    プーチン氏は、大軍を率いて夏までにウクライナを「解放」するという戦術である。5月9日の「対独戦勝記念日」に、それを発表すると予想されている。この予想が外れて、現実のものにならないことを祈るのみである。

     

     

    a0070_000030_m
       


    ロシア軍は、ウクライナ侵攻開戦当初から躓きを指摘されている。どうやらその原因が、ロシア製戦車の構造的な重大欠陥に帰せられることが分った。戦車が被弾すると、ほとんど同時に戦車内に積んでいる爆薬に引火し爆発炎上するのだ。むろん、乗員3名は運命を共にする。

     

    ロシア軍は、ウクライナ軍を圧倒すべく、ウクライナ北部の部隊を撤収させて、東部攻撃に向かわせている。だが、米国防総省高官は4月28日、ロシア軍の成果について「緩慢でむらのある段階的な進展をしている」と指摘した。補給体制の立て直しを重視し、支配地拡大のスピードを最優先事項としていないと分析したのだ。

     


    上記の戦況は、ロシア戦車部隊が計画通り進軍できないことを覗わせている。ウクライナ軍による攻撃で、戦車が被弾しているのであろう。ロシア軍は、北部の戦いと同じ状況になっているのかも知れない。

     

    米『CNN』(4月29日付)は、「まるで『ビックリ箱』、ウクライナで戦うロシア軍の戦車が抱える設計上の欠陥とは」と題する記事を掲載した。

     

    砲塔部分が吹き飛ばされたロシア軍の戦車の残骸は、同国のウクライナへの侵攻が計画通りに進んでいないことを示す最新の兆候だ。ウクライナ侵攻の開始以降、これまで破壊されたロシア軍の戦車は数百台に上ると考えられている。ウォレス英国防相は4月25日、その数を推計で最大580台と発表した。

     

    (1)「専門家らは戦場を写した画像から、ロシア軍の戦車がある不具合を抱えていることが分かると指摘する。西側諸国の軍隊が、数十年間にわたり認識している欠陥で、「ビックリ箱」効果と呼ばれているものだ。ロシア軍戦車は、回転式砲塔の内部に多数の弾薬を搭載している。被弾の際の危険は極めて大きく、直撃(被弾)ではない場合でさえもそこから連鎖反応が始まり、搭載する最大40発の砲弾がすべて爆発する恐れがある。その結果、生じる衝撃波の威力で、砲塔は2階建ての建物ほどの高さにまで吹き飛ぶこともある」

     


    ロシア軍戦車は、回転式砲塔の内部に多数の弾薬を搭載している。被弾すると、直撃弾でなくとも連鎖反応により、最大40発の砲弾がすべて爆発するというのだ。西側諸国の戦車では、この点が改良されている。

     

    (2)「最近ソーシャルメディアに投稿された動画に映っている通りだ。米シンクタンク、海軍分析センターでロシア研究プログラムの顧問を務めるサム・ベンデット氏は、上記のような問題を「設計上の欠陥」と説明。「とにかく弾が当たりさえすれば、たちまち搭載した弾薬に引火し、大爆発を引き起こす。砲塔は文字通り吹き飛ぶ」と述べた。こうした欠陥に対し戦車の搭乗員はなす術がないと、英国陸軍の元将校で現在は防衛産業アナリストのニコラス・ドラモンド氏は指摘する」

     

    ロシア製戦車は、戦車のどこでも被弾すれば即、爆発という極めて危険な構造になっている。ロシア軍は、この点の改良をしないかった。それが、致命傷になっている。

     


    (3)「戦車には通常、砲塔に2人、運転席に1人の兵士が乗り込んでいるが、被弾から「1秒以内に脱出しなければトースト状態」だという。
    ドラモンド氏によると、弾薬の爆発はロシアが現在ウクライナで使用するほぼすべての装甲車両で問題を引き起こしている。特に搭乗員3人に加えて兵士5人を輸送する歩兵戦闘車「BМD4」は、同氏に言わせると「動く棺桶(かんおけ)」であり、ロケット弾が命中すれば「全滅する」。こうした欠陥について、西側の軍隊は1991年の湾岸戦争や、2003年のイラク戦争を通じて察知していた」

     

    戦車には、砲塔に2人、運転席に1人の兵士が乗り込む。装甲車両では、搭乗員3人に加えて兵士5人を輸送できる。ここへロケット弾が命中すると全滅する危険性を抱えている。

     


    (4)「オープンソースインテリジェンスのモニタリングウェブサイト、オリックスは28日、少なくとも300台のロシア軍戦車が破壊され、さらに279台が損傷もしくは放棄、鹵獲(ろかく)されているとの見方を示した。ウォレス英国防相は冒頭の戦車の損失に関する推計のほか、1万5000人を超えるロシア軍要員が侵攻中に死亡したとも述べている。このうち戦車の搭乗員が何人いるのか突き止めるのは困難だが、疑いなく言えるのは搭乗員らの補充は容易ではないということだ」

     

    戦車の搭乗員補充は簡単にできない。特別訓練が必要であるからだ。ロシア軍の戦車が、約579台も失っていれば搭乗員は最大1737人失った計算になる。これだけの補充には、相当の時間を必要とする。

     

    (5)「戦車の搭乗員の訓練には最短でも数カ月かかり、1年でも早いとみなされることがある。フィンランド国防軍の元戦車搭乗員、アレクシ・ロイニラ氏はそう語る。そのためロシアが戦争の続くこの時点で数百人の搭乗員を補充するのは無理な注文だろう。使用するつもりの戦車に重大な欠陥があるならなおさらだ」

     

    戦車搭乗員の教育期間には、最低6ヶ月を必要とし、1年が必要という。ロシアにとって、戦車579台の損失は、戦力的に大きな痛手を被ったことを示している。

     



     

     

    a0960_006624_m
       


    米国バイデン大統領は、ウクライナ戦争長期化を見据えて、長期的な軍事・人道支援へ向けて330億ドル(約4兆3200億円)の追加予算を議会へ要請した。バイデン大統領は、「自由のための戦い」と称している。このほか、新興財閥(オリガルヒ)の凍結資産をウクライナ復興資金に当てる法制化を求めた。

     

    ロシアのウクライナ侵攻によって、ウクライナの個人や企業の財産を含めた経済損失全体は、ウクライナのGDPの3倍以上にあたる約5650億ドルにも達するという試算が発表されている。この復興資金の調達が、新たな課題として浮上している。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月29日付)は、「バイデン氏、ウクライナ向け予算330億ドルを議会に要請」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米大統領は4月28日、議会に対しウクライナへの武器供与や経済・人道支援に充てる330億ドル(約4兆3200億円)の追加予算の承認を求めた。ウクライナとロシアの戦闘は3ヵ月目に突入しており、より長期的な支援を視野に入れる。今回の予算は9月末までの支援を手当てするもので、与野党から幅広い支持を得ている。

     

    (1)「バイデン氏はホワイトハウスで演説し、「ウクライナの人々が自国を守るのを支援するか、それともロシアがウクライナで残虐行為と侵略を続けるのを傍観するかだ」とした上で、これは「自由のための戦いだ」と述べた。議会は今年に入り、ウクライナ向け軍事・人道・経済支援として136億ドルの予算枠を承認している。バイデン氏は、資金がほぼ底を突いたとして、ウクライナへの防衛支援を続けるための追加予算を議会に求めた。議員らは、ウクライナへの新たな支援策を早期に承認する考えを示している。下院議員らは来週ワシントンを離れるため、法案成立に向けた手続きが進むのは早くても2週間後になりそうだ」

     


    2022会計年度では、すでに136億ドルの予算枠を承認している。今回の330億ドルを加えれば、466億ドルになる。米議会は,超党派でウクライナ支援に賛成しているので可決成立は間違いない。

     

    (2)「政府高官によると、今回の予算案には、軍事・安全保障分野に204億ドル、危機対応や国民の生活支援として85億ドル、食糧や農業など人道支援に30億ドルを盛り込んだ。バイデン氏は軍事支援について、「ウクライナの兵士が戦場で使用して大きな成果を上げている大砲や装甲車、対装甲システム、防空能力をさらに供与できる」と述べた。このほか、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)から没収した資金をウクライナ向け支援に回せるよう議会に法制化を求めた」

     

    今回の予算は軍事支援だけでなく、生活支援や人道支援で115億ドルが含まれている。軍事支援では、大砲、装甲車、対装甲システム、防空システムなどが含まれている。ロシア軍は、ウクライナ東部の攻撃で苦戦している模様だ。ウクライナ東部のロシア軍が支配している地域で、対独戦勝記念パレード(5月9日)を開催予定だったが、取消されたと報道されている。思わしい「戦果」をあげられないことが理由のようだ。西側諸国の軍事支援がロシア軍の進出を阻んでいる。

     


    新たな話題は、ウクライナの復興支援に注目が集まっている。西側諸国が、それだけ戦況有利と見ているのであろう。

     

    『日本経済新聞』(4月29日付)は、「米欧、ロシア資産活用案 ウクライナ復興支援」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの侵攻を受けるウクライナの支援や同国の復興にかかる莫大な費用を、ロシアに負担させる動きが米欧で広がってきた。米議会では超党派が制裁で凍結したロシア人の資産を没収し、支援にあてる法案が審議される。欧州議会ではロシアの外貨準備の活用が浮上する。いずれも国際法などに基づく検討が必要で、実現には曲折がありそうだ。

     

    (3)「イエレン米財務長官は21日の記者会見で、「ウクライナ再建に必要な資金の一部をロシアに負担させることは、米国が追及すべきことだと思う」として、友好国と協調しロシア資産の活用を検討すると述べた。カナダのジョリー外相も27日、政府が制裁で凍結した個人や団体の資産を没収し、支援に充てる措置を検討していると表明した。米下院では3月上旬、民主党のマリノフスキー議員と共和党のウィルソン議員が共同でロシア資産を没収して支援にあてる法案を提出した」

     

    ウクライナ復興資金を、ロシアに負担させることは当然である。加害者責任である。米議会では、オリガルヒの凍結資産を復興資金に当てたいとしている。

     


    (4)「没収対象は、米国の制裁で凍結されたロシアのオリガルヒ(新興財閥)らの資産だ。200万ドル以上に相当する資産の没収を米政府に奨励するという内容だ。使い道はウクライナの復興・人道支援、同国への兵器供与などに限定する。下院は27日に同法案を可決したが、このまま成立するかどうかは不透明だ。言論の自由を監視する米市民団体などが、「資産を没収される側に反論の機会を与えなければ、憲法上の手続きを欠く」と主張する。仮に新法が成立しても、米裁判所が無効と判断する可能性があるというわけだ。

     

    オリガルヒの凍結資産は、1件200万ドル以上が対象としている。ただ、拙速に決めると法的な問題が生じるので、オリガルヒに反論の機会を与えるべきとの意見が出されている。

     


    (5)「欧州議会の議員の間では、ロシアの外貨準備を活用する案が取りざたされる。ロシア側は米欧の中央銀行などに預けている約3000億ドルの外貨準備が凍結されたと主張している。国際法違反の被害回復に関する2005年の国連決議は「被害を与えた当事者が(賠償などの)義務を果たせない場合に、被害者支援のための他のプログラムを確立するよう努める」と指摘する。バイデン米政権はイスラム主義組織タリバンが制圧したアフガニスタンでの人道支援のために、凍結されているアフガン中銀の資産70億ドルをあてる方針だ」

     

    欧州議会では、凍結しているロシアの外貨準備約3000億ドルを復興資金に充てるべきという案が出ている。2005年の国連決議では、被害を与えた国の賠償責任を認めている。これに従って、ロシアの外貨準備を没収しようとするものだ。

    このページのトップヘ