勝又壽良のワールドビュー

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    テイカカズラ
       


    ロシアのウクライナ侵攻開始後、すでに9ヶ月が経過した。ロシア軍とウクライナ軍の双方におびただしい犠牲者が出ている。これまで、米英の軍事専門家からはロシア軍の犠牲者が約8万人と推定されてきた。ウクライナ高官が、現地のテレビで初めてウクライナ軍の犠牲者が最大で1万3000人と発表した。ロシア軍については、10万人の犠牲者が出ており、これ以外に負傷・行方不明などが10万~15万人もいると語った。

     

    ロシア軍の犠牲者が、ウクライナ軍に比べて桁違いに多いのは、兵士の生命を無視した戦い方にある。兵士を「弾避け」に使うという残酷な戦闘方式を採用しているのだ。ロシア軍は数カ月にわたって東部ドネツク州バフムート周辺を攻撃しており、最近では新たに動員された経験に乏しい部隊を前方に送り込んでいる状況だ。この攻撃は、軍事的に意味のない戦い方と批判されている。ロシア軍内部での功名争いの一環とも見られるほどだ。

     

    英国『BBC』(12月2日付)は、「ウクライナ兵の犠牲者、これまでに13000人ーゼレンスキー氏側近」と題する記事を掲載した。

     

    ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の顧問を務めるミハイロ・ポドリャク氏は12月1日、犠牲になった兵士は1万~1万3000人だと、ウクライナのテレビ番組で発言した。ウクライナが死者数を明らかにするのは珍しい。また、ポドリャク氏の発言はウクライナ軍が裏付けたものではない。ポドリャク氏は6月の時点で、毎日100~200人のウクライナ兵が亡くなっていると話していた。

     

    (1)「11月には米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長が、侵攻開始以来、ロシアとウクライナでそれぞれ10人の兵士が死傷していると述べていた。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は11月30日のビデオ演説で、ウクライナ兵10万人が殺されたと発言。しかしその後、報道官により、これは負傷者も含めた数だと訂正された」

     

    これまで、ウクライナ軍の犠牲者数が明らかにならず、ロシア軍の犠牲者数が報じられてきた。ロシアが、30万人の動員令を出した裏には、相当数の死亡・負傷・行方不明などが出ていることを予想させる。

     

    (2)「1日にウクライナの「民放テレビ24」に出演したポドリャク氏は、「ウクライナ政府は死者数についてオープンに話している」と述べた。「参謀本部による公式の推計と、総司令官(ゼレンスキー氏)による公式な評価では、1万人から1万2500人、1万3000人が亡くなった」。また、殺害された民間人の数は「非常に多い」と付け加えた。この数字は現在、さらに増えているとみられる」

     

    ウクライナ軍は、開戦当初の後退が多かった。これは、兵士の「人命尊重」を第一とする戦術と説明されて来た。ウクライナ軍は、ロシア軍の損耗率が30%に達した5月の時点で、ロシア軍の戦力が大幅に低下したと判断し、反攻作戦を作成して奪回作戦に転じている。

     

    (3)「ロシア軍の損害についてポドリャク氏は、死者10万人と推定。さらに、負傷者や行方不明者、戦闘に復帰できない10万~15万人としている」

     

    ウクライナは、ロシア軍の犠牲者を10万人と推定しているが、犠牲者の多いことは事実である。これが、ロシア軍の士気を引下げている理由だ。ウクライナ軍が設けている「ロシア兵への投降呼びかけ」に対して、多くのロシア兵が問合せしている。特に、戦闘が止む夜間に入ってからの問合せが多いという。「どうすれば、投降できる」という問合せだ。

     

    米シンクタンク戦争研究所(ISW)は11月30日、ウクライナの戦況をめぐり、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州バフムート周辺で戦力を消耗しているとする分析を公表した。

     

    バフムートは東部地域の交通の要衝。ISWによるとロシア軍は5月下旬以降、一貫して同方面に戦力を注いできたが、得られた戦果は少ないという。ISWは、「バフムート市周辺での6カ月にわたる激しい戦闘に伴う損失は、ロシア軍が同市を攻略することで得られる作戦上の利点をはるかに超えている」と指摘。ロシア軍が、バフムート方面に注力することで、他の地域でウクライナ軍が反攻しやすくなる可能性があるとしている。米『CNN』(12月2日付)が伝えた。

     

    ロシアは、こういう「無意味な戦闘」で貴重な兵士の生命を失っているのだ。ロシア軍の犠牲者数が、ウクライナ軍を8倍も上回っているのは、バフムートに見るような無益な戦い方に原因があるのだろう。

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    ロシア軍が、第2次動員令として50~70万人を招集するとの報道が、ロシア内外で行なわれている。ロシアメディア『プラウダ』は、「プーチン大統領は年末までに連邦議会での演説を通じて、兵士と将校を補充するための国家動員令を発表するだろう」と報道したのがきっかけであった。

     

    ウクライナ内務相顧問を務めるアントン・ヘラシチェンコ氏は22日、自身のツイッターに「ロシアは来年1月に2度目の動員令を発令する準備をしている。50万~70万人を動員する計画だとした。

    これら報道に対して、クレムリンの報道官は25日(現地時間)、「『プーチン大統領が国家動員令を発表する』というメディア報道は事実ではない」と伝えた。このように、第2次動員令が話題に上がっているが、ロシア軍はウクライナ侵攻で多大の消耗を強いられているだけに、クレムリン報道官の「否定」を額面通りに受取れないのも事実だ。

     

    韓国紙『ハンギョレ新聞』(11月25日付)は、「また強制動員令? 徴集におびえるロシア」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ戦争で守勢に追い込まれたロシア軍が、9月の30万人に続き再び動員令を発表すると懸念される中、ロシアの野党はウラジーミル・プーチン大統領に対し「予備役の部分的な動員令」の終了を公式に確認する大統領令を発するよう要求した。

     

    (1)「ロシアの自由主義系政党「ヤブロコ」のウェブサイトなどによると、北欧に隣接しモスクワ北方に位置するカレリア共和国の議会に所属する2人の議員が22日、プーチン大統領に書簡を送り、このように要求した。同党所属のエミリア・スラブノワ、インナ・ボルチェフスカヤの両議員は、先月28日にセルゲイ・ショイグ国防長官が「部分的な動員令は完了した」と放送で発表したものには法的効力がないとし、動員終了を大統領令で確認することを求めた。ヤブロコは市場経済を支持する自由主義系の政党。プーチン政権に批判的で、今回の戦争に懐疑的な立場を表明してきた」

     

    プーチン氏は、動員終了を大統領令で確認することを求められている。そうでなければ、第2次動員令もありうるからだ。前回の動員令では30万人に止めたが、実際の動員計画では100万人を予定していたとも報じられていた。この説が正しいとすれば、第2次「50~70万人」動員令を出したとしても、当初計画の100万人の枠に収まる。

     

    (2)「スラブノワ議員はこの日、自身のテレグラムに「ロシア国防省は動員令が終了したと述べたが、徴集が再び起こらないという法的保障はない」と書き込み、プーチン大統領が9月21日の大統領令によって予備役徴集を命じたように、これが公式に終了したということも同じ方式で発表することを要求した。彼らは、法的効力のない動員令の終了はロシア人の不安と恐怖をかきたてると強調した。ロシア国民は、冬を前に再び動員令が発表されるのではないかと不安にさいなまれている。米国の戦争研究所によると、ロシアの極右系ブロガーたちは、今年12月または来年1月に新たな動員令が下されるだろうという主張をオンラインなどで流している

     

    ロシアの軍事ブロガーは、オンラインで新たな動員令が今年12月~来年1月に下されると流している。雰囲気づくりをやっているわけだ。

     

    (3)「ウクライナも、ロシアが新たな動員令を下すだろうとの見通しを示している。内務相の顧問を務めるアントン・ヘラシチェンコ氏は22日、自身のツイッターに「ロシアは来年1月に2度目の動員令を発令する準備をしている。50万~70万人を動員する計画だ。以前に動員された30万人はすでに戦死あるいは負傷したか、戦闘意志を喪失している」と述べ「ロシア人は当局に対して静かに不満を持ちはじめた」と付け加えた。英国「スカイ・ニュース」は、この主張が事実なら、これはロシアが戦争の長期化に備えており、戦況がプーチン大統領の考えていたやり方で解決されていないことを示唆すると分析した」

     

    ウクライナ内務省顧問は、第2次動員令として50万~70万人説をツイッターで書き込んでいる。情報戦で、ロシアの極秘情報を握ったのであろう。問題は、ロシアで第2次動員令が出た場合、ロシア国内の反発は大きなものになろう。

     

    米『CNN』(11月28日付)は、「ロシア兵の母親たち、オンライン署名運動 ウクライナからの撤退求め」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア軍兵士の母親たちが市民団体「フェミニスト反戦レジスタンス」と協力し、ウクライナからの撤退を求めるオンライン署名運動を展開している。署名はロシアの「母の日」にあたる27日から始まった。署名は初日の夕方までに1500件を超え、さらに増え続けた。

     

    (4)「嘆願書は、過去9カ月にわたる「特別軍事作戦」が破壊と悲嘆、流血と涙をもたらしていると懸念を表明し、「われわれロシアの母たちは国籍や宗教、社会的地位にかかわらず、平和と調和の中で暮らしたい、子どもたちの将来を恐れることなく平和な空の下で育てたいという願いで一致団結している」と述べている。母親らはこの中で、「死ぬため」に動員される兵士の家族は、防弾ベストなどの装備を自費でそろえなければならず、稼ぎ手を失った家庭で母親たちの負担は増すばかりだと訴えた」

     

    悲痛な母親達の停戦への願いが、プーチン氏に届くか疑問である。だが、第2次動員令が出れば、確実に世論は変わるであろう。

     

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    ウクライナ軍は晩夏からの4カ月間、ロシア軍との市街戦に持ち込まず、南部の要衝へルソン市を奪還するため、用意周到な反撃を進めて成功した。そのウクライナ軍を指揮する総司令官は、まだ49歳のザルジニー氏である。

     

    昨年7月、ウクライナ軍の中間管理職であったザルジニー氏が、ゼレンスキー大統領の抜擢人事で総司令官に就任した。この柔軟な人事が、強敵ロシア軍を窮地に追込む立役者を生んだのである。もちろん、西側諸国からの手厚い武器弾薬の支援あっての勝利である。だが、その貴重な武器弾薬を無駄にせず、有効に使う総司令官の力量にも注目すべきだ。

     

    ザルジニー氏は、旧ソ連型のウクライナ軍から、米軍式軍隊への柔軟な人材配置の妙を学んでいる。氏は軍人の家に生まれ、高校卒業後はオデーサの士官学校に入学し、修士論文では米軍の権限移譲型の組織づくりを研究。それまでのウクライナ軍は、旧ソ連モデルで凝り固まった上意下達な意思決定に依存していた。それをNATO軍のように、柔軟組織にしたいと考えるに至った。

     

    ザルジニー氏は、総司令官就任直後すぐに組織改革に着手。数週間で、現場部隊の将校は、作戦目的を実現するための判断として、上級指揮官の許可は不要というルール作成した。これによって、各部隊がそれぞれの戦況に合わせて軍を使うことができたのだ。さらに重要なことは、ザルジニー氏が敵将となるロシア軍のゲラシモフ参謀総長の著作や論文をすべて研究していたことだ。

     

    ゲラシモフ参謀総長は、フェイクニュースやサイバー攻撃など、非軍事活動による情報戦や心理戦と軍事力を組み合わせて鮮やかに勝利する「ハイブリッド戦争」を編み出した人物として著名だ。ロシアのクリミア併合を成功させた立役者として知られる。ザルジニー氏は、ゲラシモフ氏の著作を十分に研究していたので、ロシアの軍略の裏をかく戦法で見事な成功を収めた。以上は、『週プレニュース』(10月31日付)から引用した。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(11月18日付)は、「ウクライナ『鉄の将軍』、ザルジニー総司令官の気骨」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロシアが2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以降、ウクライナが善戦している背景には国民から「鉄の将軍」とたたえられる人物の指揮がある。ロシアから奪還した東部ハリコフ地域の反転攻勢に参加したウクライナ国家親衛隊のビタリー・マルキフ氏は、「敵とその行動を知り、海外パートナーの支援を得て弱みを突くことができれば見事なことだ。これをやってのけているのが、ザルジニー総司令官だ」とたたえた」

     

    ザルジニー総司令官には、年齢的な若さ来る気負いがない。ロシア軍の戦略を頭に叩き込み、安全を期しながら、「ここぞ」という局面で大英断を下して戦果を上げる。見事な戦い方である。

     

    (2)「ウクライナの元国防相で、現在は政府の安全保障担当顧問を務めるアンドリー・ザゴロドニュク氏は、「ハリコフとへルソンにおいて、まさに臨機応変な戦闘だった」と強調した。ザゴロドニュク氏によると、ザルジニー氏の指揮は「部下に自らの能力や才能に気付かせる」というスタイルだ。これに対し、ロシア軍は「1人か2人が判断を下し、残りは黙っていろと言われる」。西側の支援国から供与された最新鋭の兵器も加えた「この強みが、ロシアが持つ大量の迫撃砲や戦車など全てのものに勝っている」という」

     

    ロシア軍は、指揮官がすべてを決める。一方、ウクライナ軍は現場の判断に任せる柔軟性を持っている。この点が、両軍の戦果に大きな違いを生んでいる。

     

    (3)「ロシア軍の指揮系統はトップダウン型で、現場の指揮官が主導権を握るのをためらっており、守勢に回っていると軍事専門家は指摘する。一方、ウクライナは手を緩める兆しはみられない。米国の駐欧州陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏はヘルソン解放を受け、ツイッターに「ウクライナ軍は冬も歩みを止めるわけがない。ロシア軍に圧力をかけ続け、問題を修正したり、防御力を強めたりする暇を与えないだろう」と指摘した。

     

    ウクライナ軍は、常にロシア軍を攻撃して揺さぶりをかけ続けている。相撲と同じで、押して押して、押しまくる戦法である。動きを止めたら敗北するのだ。この背後では、ハイマースによって兵站線を潰すので、ロシア軍の補給が少なくなり、士気が低下するという戦法である。

     

    (4)「米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長が、ウクライナ政府は今冬の期間をロシアと停戦の交渉に使うことができるとの見方を示すと、自分の意見をめったに公にしないザルジニー氏は異議を唱えた。ザルジニー氏はフェイスブックの投稿で、米国側に「我々の目的はウクライナ全土をロシアの占領から解放することだ。どんな状況でもこれを続ける。交渉の唯一の条件は、ロシアが全ての占領地域から去ることだ」と電話で伝えたことを明らかにした」

     

    ウクライナ軍は、「冬将軍」の到来でも攻撃を止めず、戦い抜くこれまでの戦術を踏襲する。ウクライナ軍にはNATOから防寒着が供与されている。さらに、自国領であることの強みで国民からの支援がある。ロシア軍には、それが全くないのだ。形勢は、自ずと決まるであろう。

     

     

     

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    ロシア軍は、これから迫る「冬将軍」を避けるために、ヘルソン市の住民を強制移住させた空き家にしのび込み、民間人の服装で潜伏していることが分かった。ウクライナ軍が進軍すれば、軍服に着替えて逆襲すると待ち伏せ戦法である。だが、ウクライナ軍はすでのこの動きを知って警戒している。

     

    『CNN』(11月8日付)は、「ロシア軍、占領下のヘルソン州で民間人への強制捜索を強化 州都で戦闘の可能性も」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア軍は、ウクライナ南部ヘルソン州の占領地域で民間人への監視を強化している。地元住民を拘束し、ゲリラによる抵抗活動の根絶を図っている。ウクライナ軍が明らかにした。

     

    (1)「占領下のヘルソン市で、ロシア軍の部隊は現在、ほとんどが民間人の衣服を着用し、民間人の家屋で暮らしている。「市内での陣地を強化して市街戦を行うため」だと、ウクライナ軍や住民がCNNと交わしたメッセージの中で指摘した。ウクライナ軍は、2月下旬の侵攻開始から間もなくロシア軍が制圧したヘルソン州の領土のかなりの部分を奪還。10月初めには驚くべき勝利を立て続けに収めてきたが、州都ヘルソン市に迫るにつれ進展のペースは鈍ってきている。同市の攻防を巡っては、激しい戦闘が繰り広げられることも予想される」

     

    国際法では、兵士が戦場で民間人の服装をすることを禁じている。敢えて、その禁じ手を使って、ウクライナ軍を誘き出そうという戦法だ。ロシア軍も落ちぶれたものである。

     

    (2)「ウクライナ軍が創設した国家レジスタンスセンターは7日、「ウクライナ軍が反転攻勢を仕掛ける中で、占領者たちは選別の措置を著しく強化している」と指摘。州内の占領地域では住民に対する強制捜索が激しさを増し、積極的に地下活動を突き止めようとする動きがみられるとした。同センターが把握するところによると、数十件の拘束がここ数日で行われた。ウクライナ軍が反攻を強化する中、民間人に対して「可能であれば」占領地域から退去するよう、同センターは呼び掛けている」

     

    ロシア軍は、伝統的に敵の選別を厳しく行なうという。この手法が、ウクライナで再現されているものだ。内通者を防ぐという意味であろう。ウクライナへ侵攻したのだから、母国へ内通者が出るのを恐れているに違いない。

     

    (3)「ヘルソン州は、ロシアが国際法に違反してウクライナからの併合を宣言した4州のうちの1州。住民からの報告によると、路上には軍隊の姿がより多く見られるようになっている。ヘルソン市に住む女性は6日、CNNの取材に第三者を通じて答え、ロシア軍の兵士らについて、占領した村々で住民に対し一段と攻撃的に振る舞うようになっていると明らかにした。CNNは安全上の理由からヘルソン州の住民の身元を明かしていない。ヘルソン市自体は「かなり静か」だが、「時折、夜に自動小銃の銃声が聞こえることもある」と上記の女性は語った。市内には外出禁止令が敷かれており、夜に出歩く人はいないという」

     

    ロシア軍は、ヘルソン市内に塹壕を掘っているのではなさそうだ。民家に隠れている程度とすれば、重火器で武装しているとは思えない。ウクライナ軍の進撃を遅らせるという狙いであろうか。ドニプロ川の東岸には塹壕を掘って、重火器を揃えているという。ドニプロ川の西岸へ殺到するウクライナ軍を東岸から攻撃する準備と伝えられている。

     

    (4)「また、女性によると市内の複数の検問所は撤去され、市の入り口にある唯一の検問所で書類や車内の検査が行われている。公共交通機関のミニバスの場合は、車内に占領者が入ってくる。携帯電話をチェックしたり、男性に対してタトゥー(入れ墨)を確認させるよう迫ることもあるという。大半の兵士は30歳過ぎとみられるが、18~20歳くらいの若い兵士も増えてきたと、この女性は述べた」

     

    動員令で招集した若者が、ヘルソン市内へ送り込まれているようだ。完全な弾よけ要員であろう。動員令で集められた若者は、すでに多くの戦死者が出ている。ウクライナ東部では動員兵の1個大隊の500人以上がほぼ全滅したと報じられた。

     

    『CNN』(11月8日付)は、「ロシア軍の『ヘルソン撤退』は偽装工作か ウクライナ」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍のナタリア・グメニュク報道官は5日、ロシア軍が南部ヘルソン州から撤退すると見せかけ、ウクライナ側の部隊を市街戦におびき出そうとしていると主張した。

     

    (5)「グメニュク氏は国内メディアとのインタビューで、ロシア軍が実はヘルソンにとどまっていることを示す客観的な証拠があると述べた。市内を流れるドニプロ川の左岸(東岸)に置かれた陣地は、右岸(西岸)陣地の援護に使われるとみられる。同氏によれば、左岸へ移動したのはロシア軍の精鋭部隊や将校らで、右岸に残った部隊は退避経路を断たれ、最後まで戦うことを強いられている。ロシア軍は撤退を偽装することにより、近隣集落での市街戦にウクライナ軍をおびき出す作戦とみられ、ウクライナ側もこれに対抗する戦略を立てているという

     

    ウクライナ軍は、徹底的にロシア軍の戦法を読み込んでいるという。2月24日の侵攻の際も事前想定範囲内の中で、最も拙い攻撃であったという。今回の「囮(おとり)作戦」も、ロシア軍の得意の戦法かも知れない。ロシア軍は、完全に手の内を読まれている。

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    ロシア大統領プーチン氏は、眠れぬ夜を送っていることであろう。打つ手がすべて失敗しているからだ。自ら決めた開戦である。責任はすべてプーチン氏にあるが、そこは独裁者の巧妙さである。軍司令官に詰め腹切らせて交代させる。こうやって、多くの司令官が解任されているが、軍部の憾みは確実に高まっているはず。これは、「反プーチン」へのエネルギーを溜め込んでいくはずだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月6日付け)は、「ロシア軍司令官解任か、英分析『指導層への不満そらす』」と題する記事を掲載した。

     

    英国防省は6日、ロシア軍中央軍管区のラピン司令官が解任され、司令官代行としてリンコフ少将が任命されたとの分析結果を明らかにした。ウクライナ軍が反転攻勢を強める状況に不満の声が出ており、ロシア軍では幹部の更迭が相次いでいる。英国防省はツイッターで「指導層への不満をそらそうとする試みの可能性がある」と指摘した。

     

    (1)「ラピン氏は7月、東部ルガンスク州制圧に貢献したとして、プーチン大統領から「英雄」の称号を授けられた。ただ、最近はプーチン氏に忠誠を誓うロシア南部チェチェン共和国のカディロフ首長らから批判され、前線の指揮から外れたとの見方も出ていた」

     

    ラピン氏はプーチン氏から7月、「英雄」の称号を受けたばかりだ。プーチン氏は、その将官の首をすげ替えたのである。軍人は性格が単純明快である。今回の解任は、顔に泥を塗られたにも等しいと受け取っても不思議でない。ラピン氏が、部下統帥力に優れていれば、この憾みを晴らすべくクーデター予備軍になるだろう。こういう解任された司令官は、すでに3~4人に上がっている。連携すれば、クーデターは可能だ。鉄壁の規律を誇った旧日本陸軍にも、終戦間際にクーデター計画があった。ロシア軍は、そういう歴史に事欠かないのだ。

     

    英『BBC』(11月5日付)は、「プーチン氏、ウクライナ南部へルソン住民の避難承認 元受刑者の招集可能に」と題する記事を掲載した。

     

    プーチン大統領は、予備役の動員に関する法律を変えた。凶悪犯罪で刑務所に入り、最近出所した人も招集の対象にした。子どもに対する性犯罪やテロ行為で有罪となった元受刑者は除外される。

     

    (2)「ロシアは9月、雇い兵組織「ワグネル」が、減刑と引き換えにウクライナでの戦闘に参加する囚人を募っていると報じられた。ロシアの法律では、刑期短縮と引き換えに雇い兵になることは認められていない。しかし、ワグネルのトップのエフゲニー・プリゴジン氏が、ワグネルに加われば「誰も刑務所に戻ることはない」と囚人らに話す場面が撮影されている。ワグネルは4日、ロシアで最初の公式本部をサンクトペテルブルク市に開設した」

     

    囚人まで戦争へ狩り出す。現状は、打てる手は何でも打つという追込まれたプーチン氏の状況を示している。この人たちは、「弾よけ」の盾になっている。軍事訓練を受けていない人たちが、戦場へ立たされても為す術があるまい。合法的に死へ追いやっているだけだ。これだけ残酷なことを平気でやれる。人間の持つ恐ろしさを示している。

     

    (3)「プーチン氏は4日の赤の広場での式典で、9月以降に動員された予備役約30万人のうち、約4万9000人がすでにウクライナにいる部隊に配属されたと発表した。同氏はまた同じ演説で、志願兵の登録も「約5万人」に上ったと述べた。この日の式典には、親プーチン氏の官製社会団体「全ロシア人民戦線」の若者グループが出席していた。西側とウクライナの軍事専門家は、プーチン氏による予備役の動員について、ロシア軍がウクライナの戦場でひどく失敗していることを示すものだと指摘する。動員が発表されて以来、戦争に反対するロシア人男性が多数、国外に逃がれている」

     

    プーチン氏が、歴史に自己の名前を残したいという欲望で始めた戦争だ。終末に当って、どのように幕引きするのか。プーチン氏自身にも計画はあるまい。ただ、惰性で戦争を継続しているに過ぎないようである。ロシア軍が、プーチン氏を説得して、あるいは強硬手段を使っても武器を置くしかない。それが、いつ起こるかである。 

     

     

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