勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    ウクライナは、膠着した戦線打開を目指して戦闘機と長距離砲の供与を西側諸国へ求めている。米国は拒否姿勢を示したが、フランス大統領マクロン氏は、「排除せず」と含みを持たせる発言をしている。ウクライナは、最も弱点である戦闘機の供与があれば、膠着した戦線突破への手がかりとなろう。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(2月1日付)は、「マクロン氏、ウクライナへ仏戦闘機供与『排除せず』」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナがロシアの攻撃に対抗するのを支援するために欧米諸国が軍事支援の次のステップを検討するなか、フランスがウクライナへの戦闘機供与に前向きな姿勢を示した。「本来的に、何一つ排除されない」。フランスのマクロン大統領は1月30日、訪問先のオランダ・ハーグでの記者会見でこう述べた。ウクライナから戦闘機供与の要請は受けていないと付け加えた。

     

    (1)「米国とドイツが先週、主力戦車をウクライナに供与する決定を発表して以来、ウクライナを支援する国々の関心は、米戦闘機「F16」、もしくは欧米製の他の戦闘機を供与する可能性に集まっている(フランスはまだ戦車の供与を決めていない)。ウクライナの政府高官は、より先端的な航空機は防空体制を強化して、ロシア軍の攻撃を撃退し、春の新たな攻撃に備えるために役立つと話している」

     

    ロシア軍の春先の攻撃が予測されるだけに、ウクライナは、兵器拡充に躍起となっている。戦車は理想通りに手当できたので、次は戦闘機の供与を求めている。

     

    (2)「米国のバイデン大統領は30日夜、ウクライナへのF16戦闘機の供与を否定し、最大の支援国である米国がジェット戦闘機の供与を先導するというウクライナ政府の期待に水を差した。協議について説明を受けた2人の政府関係者によると、フランス政府は欧州諸国の政府に対し、ジェット機を含む追加の兵器システムを送ることが検討議題に上っていることを伝えた。すぐに決定される可能性は低い。その関係者によると、フランス政府は、以前からの防空・ミサイル防衛システムの供与に加え、戦車を供与して戦車の使い方についてウクライナ軍を訓練する新たなプロジェクトに重点を置いている」

     

    フランスは、自国製戦闘機の供与の可能性を認めている。

     

    (3)「ウクライナのレズニコフ国防相は、31日に仏パリでマクロン氏と仏国防相と会談し、ジェット機について話し合ったことを認めた。「飛行機の具体的な名前やタイプ」には触れていないと述べた。レズニコフ氏は、バイデン氏の発言を深刻には受け止めておらず、榴弾砲や戦車の場合と同様、時間がたてば、支援国が折れる可能性があると指摘した。「我々が要請を出したとき、最初はすべてノーという答えが返ってくる。だが、いずれ近代的なジェットプラットフォームを入手できると確信している」と指摘」

     

    ウクライナは、米国がF16戦闘機の供与に「ノー」としたことに落胆していないという。米国は、一度は断るが二度、三度の交渉で受け入れているからだ。戦車の提供と同様に、最終的にはF16を供与してくれるものと期待している。

     

    (4)「マクロン氏は、オランダのルッテ首相との会談後の記者会見で「我々は、噂ではなく、ウクライナからの要請に基づいて判断する」と語った。ウクライナ政府は高度な中距離防空システム「SAMP-T」を手に入れるためにフランス、イタリア両政府と交渉に入っている。これは米国の地対空ミサイルシステム「パトリオット」と似たシステムで、弾道ミサイルを撃ち落とすことができる」

     

    マクロン氏は、ウクライナの要請には現実的対応をするとしている。可能な場合は、積極的に応じるというもの。

     

    (5)「防衛アナリストは、マクロン氏が戦闘機の供与を決めた場合、フランスは戦闘機「ミラージュ」の古いモデルをウクライナに送ると予想している。ミラージュは仏ダッソー・アビアシオンによって製造されており、フランスは昨年の年初時点で「ミラージュ2000」を106機運用していた。全機が2030年までに第5世代の戦闘機「ラファール」に置き換えられることになっている」

     

    フランスは、「ミラージュ2000」を106機運用しているが、全機が2030年までに第5世代の戦闘機「ラファール」に置き換えられる。この退役戦闘機「ミラージュ2000」を順次、ウクライナへ供与する可能性を示している。

     

    (6)「フランスは昨年6月に、「ミラージュ2000C」を14機退役させた。これらをウクライナに供与すればフランス軍の能力は落ちない。今後数年で、さらに26機の要撃機「ミラージュ2000-5」を段階的に退役させる予定になっている。フランスは戦闘機を自国で生産していることから、輸出に当たって第三者の承認を得る必要がない。欧州数カ国の軍隊がF16を運用しているが、これらの戦闘機をウクライナに送るには米国からの承認が必要になる。前出の欧州当局者の一人は、そのためにフランス製戦闘機が明らかな候補になると語った」

     

    フランスは、退役した「ミラージュ」をウクライナへ供与しても良いという可能性を示している。すでに退役した「ミラージュ」14機が候補になるか、だ。

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    ウクライナ軍は、デジタル機器を利用してロシア軍に対抗し、戦線を有利に動かしている。ロシア軍にはそうした敏捷さがなく、兵士が最前線で携帯を使用して、自らの位置をウクライナ軍に察知され砲撃される事態を招いている。

     

    ロシア国防省は1月2日、昨年12月31日に数百人の新規動員兵の拠点が砲撃を受け、兵士63人が死亡したと発表した。その後、死亡者は80名以上に増えたが、原因はロシア兵が携帯を使用したこととされている。改めて、ロシア軍の規律が乱れていると指摘されているのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月7日付)は、「ロシア軍のミス、ウ駐留部隊を危険にさらすー軍事専門家」と題する記事を掲載した。

     

    軍事アナリストによると、ロシア軍は占領下のウクライナで基本的なミスを繰り返し、自軍兵士を危険にさらしている。ウクライナ軍の大砲の射程内にあるにもかかわらず、自軍部隊の集中地域で携帯電話を使用停止にしなかった、などのミスを犯しているという。

     

    (1)「直近の事例では、ウクライナ東部ドンバス地域のマキイフカ市で、ロシア軍動員部隊の拠点がウクライナ軍に破壊されたケースが挙げられる。米国の駐欧州陸軍の元司令官で、開戦以来ウクライナでのロシアの作戦に批判的なベン・ホッジス氏は「ロシア軍は学習する組織ではない」と指摘。「学ぶためには、まず自分が間違っていたことを認める必要があるが、そのような文化はない」と述べた」

     

    ロシア軍は、これまでのウクライナ侵攻で10万人以上の犠牲が出ている、とされている。このため、実戦経験豊富な将校や下士官を失っており、新規募集の兵士が前線へ出ても基本的事項が徹底されていない憾みがあろう。この意味でも、ロシア軍の態勢立て直しは極めて困難になっている。

     

    (2)「ロシア国防省は2日、数百人の新規動員兵が集結していた拠点が昨年12月31日に砲撃を受け、兵士63人が死亡したと発表した。米国がウクライナに供与した高機動ロケット砲「ハイマース」による攻撃だという。ロシア軍とつながりがあるテレグラムチャンネル「リバル(Rybar)」は3日、この攻撃で「100人超のロシア兵が死亡した」と述べた。ウクライナ国防省は自軍による攻撃とは明言しなかったが、兵士400人が死亡、300人が負傷したと発表した。どちらの発表が実際の数字に近いとしても、ロシア軍が昨年2月24日にウクライナに侵攻して以降、自軍に最大級の犠牲者が出た攻撃になったとみられる」

     

    ロシア軍兵士の宿舎近くに、弾薬庫があったとされる。最前線における緊張感が、欠如していたと指摘されている。これも、有能な将校や下士官の不足がもたらした結果であろう。

     

    (3)「ロシア軍のブロガーや親ロシア派の情報筋からの報告では、いくつかの重大な不手際が指摘されている。特に重大なのは、ウクライナ軍の精密な大砲の射程内に多くの部隊をとどめてしまったことだ。砲撃を受けた拠点は、前線から10マイル(約16キロ)も離れていないところにある。兵舎は弾薬庫の隣にあったとみられる。弾薬庫は2次爆発を起こし、兵舎は倒壊した。オープンソースの情報では、兵士による携帯電話の使用が停止されていないため、部隊が集中していることをウクライナ軍に特定される恐れがあるとも指摘されていた。さらに、親ウクライナ派のパルチザン(ゲリラ戦を展開する非正規部隊)がこの兵舎の特定を手助けした可能性を示唆するブロガーもいた」

     

    ウクライナ軍は情報機器を使って、ロシア軍の動静を探っている。NATO軍からの情報もオンラインで入手できるなど、ロシア軍攻撃では至れり尽くせりの状況だ。ロシア軍は、こういう状況認識が甘かったと言える。

     

    (4)「ウクライナ軍の攻撃を受けた原因として、携帯電話の使用に関する規律欠如が挙げられたのは初めてではない。ウクライナ軍は最近、ヘルソン州のロシア占領地域のサヒ付近(ヘルソン市から20マイル弱)にあるロシア特殊部隊の拠点を攻撃した。ある兵士のソーシャルメディアへの投稿がきっかけで、この拠点が容易に特定されたためだった。攻撃後には同じ兵士が破損施設の写真を投稿しており、ウクライナ側が攻撃の成果を確認するのに役立った可能性がある。これらの投稿例は、米シンクタンク「外交政策研究所(FPRI)」のロブ・リー上級研究員がツイートした」

     

    ロシア兵の士気が緩んでいることは確かだ。大義のない戦争に狩り出された不満が、こういう形で噴出しているのであろう。戦場の様子が、SNSに 登場するとは考えられない時代になったものだ。

     

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    ウクライナ軍は、凍結を利用して反攻作戦を続けている。ウクライナ東部でロシア傭兵部隊ワグネルの拠点であるホテルを攻撃して全壊させた。同ホテルに宿泊のワグネル兵士の半分が犠牲になったと見られる。一方、クリミア半島奪回作戦として、ザポリッジャ州メリトポリへの攻撃を続けている。

     

    英国『BBC』(12月12日付)は、「ウクライナ軍、ロシアの雇い兵組織『ワグネル』の拠点攻撃か ルハンスク州知事が発表」と題する記事を掲載した。

     

    (1)ウクライナ・ルハンスク州ハイダイ知事は、同州カディフカにある「ワグネル」の拠点となっているホテルが攻撃を受け、ロシア側が「大きな損失」を被ったと説明。医療の不足から、生存しているワグネル部隊の「少なくとも50%」は死亡するとみているとした。西側の専門家たちは「ワグネル」について、ロシア政府の後押しを受け、同政府の利益のために活動する雇い兵組織だとしている

     

    ウクライナの最東端に位置するルハンシク州は、ロシアと長い国境を接しており、ドネツク州とともにドンバス地域を構成している。ロシア政府は怪しげな証拠に基づいて、この地域でロシア民族が迫害されていると主張し、ウクライナ侵攻の根拠としてきた。「ワグネル」はルハンシク州で、軍事作戦を「請け負っている」民間軍事会社である。

     

    西側の専門家たちは、「ワグネル」について、ロシア政府の後押しを受け、同政府の利益のために活動する雇い兵組織だとしている。元レストラン経営者でプーチン大統領に近いエフゲニー・プリゴジン氏が創設した民間軍事会社「ワグネル」は、戦争犯罪や人権侵害を行っているとして繰り返し非難されてきた。ワグネルの部隊はこれまで、ウクライナ南部クリミア半島やシリア、リビア、マリ、中央アフリカ共和国に派遣されている。

     

    (2)「ザポリッジャ州メリトポリでは、親ロシア派当局が、ウクライナ軍のミサイル攻撃により、2人が死亡し、10人が負傷したと発表した。ロシア政府に任命された当局者が公表した画像には、大規模な火災が写っている。ロシア政府に任命されてザポリッジャ州のロシア占領地を統括するエフゲニー・バリツキー氏はメッセージアプリ「テレグラム」で、「防空システムがミサイル2発を破壊し、残り4発は彼ら(ウクライナ側)の目標物に到達した」と述べた。ウクライナ軍がアメリカから供給された高機動ロケット砲システム「ハイマース」を使用したと付け加えた。ハイマースはロシア側の司令部など前線から離れた場所を狙う際に使用され、ウクライナ軍の反攻で重要な役割を果たしている」

     

    ウクライナ軍にとってメリトポリは、クリミア半島奪回作戦において要衝の地である。ここを奪回すれば、ロシア軍によるクリミア半島への物資補給線を切断できる重要な任務を帯びている。「ワグネル」は、どう猛な戦いをすることで有名だけに、今回の拠点攻撃によって、クリミア半島奪回作戦でロシア側は大きな駒を失う形だ。

     

    (3)「3月初旬からロシア軍の占領下にあるメリトポリのイヴァン・フェドロフ市長は「侵略者」数十人が死亡したと述べた。メリトポリは南東部にとどまるロシア軍にとって主要な物流拠点となっている。街の東にマリウポリ、西にヘルソンとドニプロ川、南にクリミア半島があり、戦略的に重要な都市でもある。ウクライナは冬の到来を迎えたいまも、占領地奪還を目指し反攻を続けている

     

    メリトポリの重要性は、下線の通りの説明である。ウクライナ軍は、ドニプロ川の渡河作戦を敢行するポーズを見せながら、同時にメリトポリへ南下する作戦も行い、ロシア軍守備隊を迷わせている感じである。ウクライナ軍の作戦は、ロシア軍に的を絞らせない陽動作戦を展開しているように見える。この戦い方は、米軍の最も得意とする戦い方という。

     

    (4)「12月10日夜、ゼレンスキー大統領の顧問を務めるオレクシー・アレストヴィッチ氏は、メリトポリがウクライナ軍の主要な目標になる可能性があると示唆した。「メリトポリが陥落すれば、ヘルソンまで続く防衛線全体が崩壊する」と、アレストヴィッチ氏は述べた。もしそうなれば「ウクライナ軍はクリミア半島へ直接続くルートを獲得できる」と付け加えた。ウクライナは、ロシアが2014年に一方的に併合を宣言したクリミア半島を奪還すると誓っている」

     

    ウクライナの見方では、ロシア軍占拠の「メリトポリが陥落すれば、ヘルソンまで続く防衛線全体が崩壊する」という。ロシア軍は、ウクライナ東部へ部隊を集結させているが、ウクライナ軍の作戦計画を見誤っている感じだ。

     

    米軍は、太平洋戦争で「飛び石作戦」を行なって、日本軍の裏をかいた。日本軍は、太平洋の諸島で米軍が上陸作戦をすると見て防御陣地を構えても、米軍は素通りして次の島の日本軍を攻略したのだ。ウクライナの戦い方を見ると、太平洋戦争を思い起こさせるものがある。朝鮮戦争では、マッカーサー元帥が仁川で上陸作戦を敢行し、北朝鮮軍の兵站線を切断し一挙に退勢を挽回したケースがある。北朝鮮軍の退却は、この上陸作戦が契機になった。米軍の作戦には、セオリーがあるのだ。



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    ロシアのショイグ国防相は23日、30万人の「部分動員」が終了したと述べた。動員された新兵8万2000人が紛争地域に派遣され、そのうち4万1000人が部隊に配属されたことを明らかにした。21万8000人は訓練中という。ショイグ氏は「これ以上の措置は予定されていない」とした。今後は、ロシア国内の数百万人の予備兵を動員するのではなく、原則として志願兵や職業軍人を派遣する方針である。

     

    ロシアが、200万人とされる予備役兵の動員を諦めた理由は何か。国民の動員忌避の動きが活発化していることだ。動員令の掛る可能性がある人々は、一斉に姿を隠しており、海外逃亡者が増えている。モスクワ市役所では、3分の1が逃亡したという情報が出て来た。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(10月29日付)は、「モスクワ市職員の3分の1が『国外逃亡』情報 動員後の劣悪すぎる状況を恐れて」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナに派遣する予備役の部分的動員を発令したことを受け、モスクワ市職員の3分の1近くが1カ月の間に国外に逃れたと、地元メディアが報じた。ロシアでは、徴兵を逃れようとする国民の「大量脱出」が起きている。

     

    (1)「地元メディア「Nestka」は、住宅や地域サービス、医療、教育など、大規模な部門の男性職員やIT部門の専門家らが一斉に逃げ出したと、事情に詳しい関係筋の話として伝えた。職員の多くは正式に辞職しておらず、関係当局に届け出もしていないという。「彼らはマグカップも洗わず、職場に私物を残したままいなくなった」と、ある情報筋は語っている」

     

    多くの専門職の人々が、職場を逃げ出している。職場に私物を残したままの状態であり、いかに切迫していたかを示している。戦争への強い拒絶感を物語る。

     

    (2)「プーチンは9月21日、ウクライナでの戦闘に予備役30万人を動員すると発表。その後の2週間で、徴兵を避けるために市民37万人以上がジョージア、フィンランド、カザフスタン、モンゴルなどの近隣国に逃れた。10月中旬には、徴兵されたモスクワ市職員がウクライナで死亡したことで、同市職員が大量に辞職していた。ロシア人ジャーナリストのロマン・スーペルは10月14日、ロシア政府の情報筋の話として、モスクワ市政府の部局長だったアレクセイ・マルティノフ(28)の死を受け、市職員が相次ぎ辞表を提出していると、自身のテレグラムのチャンネルで伝えた。マルティノフは戦闘経験がないにもかかわらず、9月23日に徴兵され、10月10日にウクライナでの戦闘中に死亡したという」

     

    10月中旬、徴兵されたモスクワ市職員がウクライナで死亡したことが判明。これが引き金になって、モスクワ市職員の「大量逃亡」が始まった。戦死したこの職員は、9月23日に徴兵されて10月10日に死亡である。モスクワ市職員が、この悲劇に恐れをなすのは当然であろう。招集=戦死では、余りにも残酷である。

     

    (3)「政府筋はスーペルに、「大量脱出が起きている。職員がメモを残して去っている。IT技術者、広告やマーケティング、広報の担当者や、一般の公務員もだ。まさに大量脱出だ」と話している。スーペルは「動員されたモスクワ市政府職員のアレクセイ・マルティノフが死亡したことが、昨日明らかになっている」と指摘した」

     

    ロシア政府筋すら、大量脱出を認めているほど。招集されて間もない戦死では、誰でも逃亡するだろう。ましてや、大義のない戦争である。この戦いで命を落とすことは、「犬死」に

    なる。

     

    (4)「ロシアの国営メディア放送局RTの副編集長ナターリャ・ロセバは、マルティノフは軍に入隊したわずか数日後にウクライナで死亡したと、自身のテレグラムのチャンネルで伝えた。「彼は若い頃、セミョノフスキー連隊に所属していた」とロセバは指摘。「彼には戦闘経験がなかった。(入隊から)数日後に前線に送られ、10月10日に英雄として死亡した」と述べた。ラトビアに拠点を置くロシア語の独立系ニュースメディア「Meduza」によると、セミョノフスキー連隊は、ロシア大統領とクレムリンの警備を担当しているという」

     

    国営メディア関係者すら、モスクワ市職員が入隊したわずか数日後にウクライナで死亡したと認めている。この戦死した職員は、ロシア大統領とクレムリンの警備を担当し戦争経験はゼロであった。

     

    (5)「著名なロシア人ジャーナリストで元大統領候補のクセニア・ソブチャク(40)も、ロシアからリトアニアに逃れた。同国首都ビリニュスの情報機関によると、26日朝に警察当局がモスクワにあるソブチャクの自宅を強制捜査したという。ロシア国営通信社タス通信は、ソブチャクのメディア担当者であるキリル・スハノフと共に刑事事件の容疑者として彼女を逮捕するよう、治安当局が命令を受けたと報じている」

     

    元大統領候補者も国外逃亡している。大統領選挙に立候補したほどだから、プーチン氏の政敵に当る。こういう事情から、プーチン氏が再び立候補できないように「招集する」ことを恐れたのであろう。生命の危険を感じれば、誰でも逃亡して当然であろう。

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    ロシア軍は、これまで大量の武器弾薬を残して敗走した。ウクライナ軍は、これら武器で改修すべきものは修理して、ロシア軍追撃に利用する皮肉な現象が起こっている。これに気付いたロシア軍は、「徹底抗戦」しないで早めに撤収する戦術に変わった様子だ。ウクライナ軍に、遺した武器弾薬を利用されまいという苦肉の策だろう。

     

    『CNN』(10月6日付)によれば、ウクライナ軍が南部ヘルソン州で前進する中、ロシア軍部隊は多大な損失を被っている。負傷者と兵器は、ドニプロ川を越えた最寄りの救護施設に避難させようとしている。ウクライナ軍参謀本部は、「敵は負傷した軍人150人と破損した軍事装備50台ほどをカホフカ水力発電所近くのベセレ集落に移動させた」と述べた。

     


    南部ヘルソンは、クリミア半島の水源でもある。ロシア軍にとっては死守すべき防衛線の筈だが、早めに負傷者と武器弾薬を安全な場所へ避難させている。これまでにない「逃げ腰戦術」である。武器弾薬も避難させたのは、新たな補給がない証拠だ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月6日付)は、「ウクライナ軍、奪ったロシア製兵器でさらに攻勢」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍が同国東部で攻勢に出る中、捕獲されたか放棄されたロシア軍の戦車・榴弾砲・戦闘車両は、今やロシア軍に対する攻撃に使われている。こうした装備品に付いていた、ロシア軍を象徴する「Z」マークは速やかにこすり取られ、代わりにウクライナ軍を表す十字架が描かれている。

     


    (1)「軍当局者によると、ウクライナが1カ月前にハリコフ州で急速に戦果を上げた結果、ロシア軍が無秩序な撤退に追い込まれ、重火器や複数の倉庫内の物資を置き去りにしたため、何百ものロシアの装備品がウクライナ側に渡ったという。ロシア軍の装備品の中には、すぐに使用できるものもあれば、前線で再び使うために修理中のものもある。損傷があまりにひどく修理できない戦車やその他の車両・銃は解体され、部品は予備用に回される。さらにロシア軍が、ウクライナではほとんど使い尽されたソ連式の砲弾を大量に残していったのは重要なことだ

     

    ウクライナ軍が9月に、ハリコフ州で行なった電撃作戦で、ロシア軍が大量の武器弾薬を遺して敗走した。これは、大変な戦利品であり、ウクライナ軍の攻撃力を強化している。ロシア軍が、その後の戦いで徹底抗戦せずに、武器弾薬を遺さずに持って撤退する方式へ切り変えたと原因と見られる。ロシアの兵站(補給)が弱体化している証拠である。

     


    (2)「こうした装備品は、ウクライナ軍が要衝リマンを含む同国東部ドネツク州の一部を奪還し、さらに東に隣接するルガンスク州に進軍する際に戦力の一部となっている。ウクライナのカルパシアン・シーチ大隊の副参謀長ルスラン・アンドリーコ氏によると、同隊は先月、ハリコフ州の要衝イジュムに入った後、10台の近代的なT80型戦車と5門の2S5ギアツィント152ミリ自走式榴弾砲を奪い取った。同氏は「われわれにはあまりにも多くの戦利品があり、それらをどうすればいいのかさえ分からない。初めは歩兵大隊として戦闘に加わったが、今では機械化された大隊になりつつあるようなものだ」と話す」

     

    ロシア軍の遺した武器弾薬は、ウクライナ軍がその後に行ったロシア軍追討作戦で威力を発揮している。ウクライナ歩兵大隊は、ロシア軍の遺した武器によって、「機械化大隊」に変身しているという。大変な皮肉である。

     


    (3)「ハリコフ州の前線で戦うウクライナ砲兵大隊の参謀長によると、「ロシア軍はもはや、火力で優位性を持たない。われわれは攻撃前にロシアの砲兵部隊をたたきつぶしてから迅速に前進を始めたため、ロシア側は戦車に燃料を補給したり、荷物を積んだりする時間さえなかった。彼らは何もかもを置いて逃げていった」と述べた。公開情報を利用する軍事アナリストによると、ロシアが4月にキーウ(キエフ)などのウクライナ北部の都市から撤退した際に奪い取った兵器に今回の分が加わったことで、ロシアはウクライナにとって群を抜いて最大の武器供給国となり、その数は米国やその他の同盟国や友好国を大きく上回った。ただし、西側諸国が供与する武器は、より先進的で精度が高いことが多い」

     

    ロシア軍はもはや、火力で優位性を持たないという。ウクライナ軍が、「ハイマース」で弾薬庫をピンポイント攻撃し、兵站線を叩き潰した結果である。これでは、ロシア軍の本格的な反攻作戦は無理だろう。雌雄は、すでに決した感じだ。

     


    (4)「公開情報を利用したコンサルティングを提供するOryx(オリックス)がソーシャルメディアや報道から集めた視覚的な証拠によると、ウクライナはロシアの主力戦車460台、自走式榴弾砲92門、歩兵戦闘車448台、装甲戦闘車195台、多連装ロケット発射機44基を奪い取った。奪い取った全ての兵器が映像に収められているわけではないため、実際の数はもっと多い可能性が高い。全ての兵器が先進的というわけではない。Oryxで兵器損失リストを集計しているヤクブ・ヤノフスキ氏は、「彼らが奪い取っているのは、かなり有効に使える現代的な兵器と、本当は博物館に置いておくべき兵器の両方だ」と話す」

     

    ロシア軍は、最新兵器と博物館行きの古い武器で武装していたことが分った。ロシア軍の弱さを見る思いがする。ロシア軍は、この先どこまで戦えるか疑問符がつくのだ。

     

     

     

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