勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    あじさいのたまご
       

    トランプ米大統領は6日、ウクライナ戦争の解決は「人々が思っている以上に近づいている」と述べた。今週、トルコで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議での協議の場で、ウクライナ問題を取り上げる考えを示した。トランプ氏は、「ロシアのプーチン大統領は圧力を感じている。われわれは協議を続けており、戦争を終わらせられるか見極める」と語った。また、この件に関して「非常に良い電話会談を行った」とも述べた。以上、ロイターが6日報じた。

     

    トランプ氏が挙げた、「ロシアのプーチン大統領は圧力を感じている」は、ウクライナによる攻撃でガソリン不足が全土で起っていることを指している。ロシア国民の間で不安と不満が高まっており、プーチン氏も決断を迫られている。

     

    『CNN』(7月6日付)は、「ロシアの燃料危機、ほぼ全土に広がる ウクライナのドローン攻撃が激しさ増すなか」と題する記事を掲載した。

     

    CNNの分析によると、ロシアの83地域のほぼすべてでガソリン不足が生じているか供給の混乱が報告されている。多くのガソリンスタンドが給油制限を導入する中、ロシア政府は同国の製油所を標的にしたウクライナの猛烈なドローン(無人機)攻撃の阻止に追われている。燃料危機は、まずロシア支配下のクリミアで深刻化し、6月21日に非常事態宣言が発令され、一般市民への燃料販売が全面的に禁止された。その範囲は現在、ロシアの11のタイムゾーンすべてに及んでいる。

     

    (1)「CNNは各地域の首長らの公式声明に加え、全国・地方メディアの報道を分析した。その結果、ロシアの国際的に認められている地域のうち50超が供給の問題を公式に報告しており、非公式にはほぼすべての地域で混乱が伝えられていることが分かった。東部のイルクーツク州やザバイカル地方を含む少なくとも3地域は、非常事態の1段階下にあたる「高度警戒態勢」を宣言している」

     

    東部のイルクーツク州やザバイカル地方でも、非常事態の1段階下にあたる「高度警戒態勢」を宣言している。クリミア半島の非常事態に次ぐ事態だ。

     

    (2)「ロシアのプーチン大統領は5日、国営テレビの長時間インタビューで「現在、一定の不足が見られるが深刻なものではない」と主張した。これは、すべてが制御下にあると国民を安心させるために仕立てられた、急ごしらえのPR活動の一環のように見えた。ただ、プーチン氏が最も喫緊の課題について「防空システムの生産を迅速かつ大幅に増やすこと」だとした発言は、あまり安心材料にはならなかったかもしれない。これは、ウクライナの攻撃に対するロシアの脆弱(ぜいじゃく)性が高まっていることを明確に示すものだった」

     

    ロシアの防空体制は、ウクライナのドローン攻撃を防げないほど脆弱化している。完全に、攻守ところを変えている。

     

    (3)「ロシア国民の順応性も試されている。CNNの分析によると、ロシア各地のガソリンスタンドは購入制限を課しており、給油に最適な場所を探せる燃料追跡サイトも登場している。給油を待つ車の列が長くなるにつれ、人々の間では緊張が高まっている。SNSに投稿された動画では、クリミアに隣接するロシア南部の都市クラスノダールで車の後部に積んだ容器に給油する男性を2人の女性がルール違反だと非難している。燃料の買い占めを防ぐため、ロシアの複数の地域では19リットル程度の大型容器の使用は禁止されているのだ」

     

    ロシアの複数の地域では、19リットル程度の大型容器の使用は禁止されている。買い溜め防止である。これを巡って、市民同士のいざこざも起っている。

     

    (4)「国民にどの程度不安が広がっているかをはかることは不可能だが、プーチン氏もこの状況を懸念しており、国営メディアのインタビューで攻撃の目的について「我々に不確実性を生み出すこと、あるいはさらにロシア社会を分断すること」だと警告するほどだった。欧州政策分析センターの上級研究員、アレクサンダー・コリアンドル氏は燃料不足について二面性を持つと指摘する。「国民感情を直撃し、インフレにも打撃を与える」と」

     

    ガソリン不足は、国民に不安感を煽ると同時に、インフレをもたらしている。産油国ロシアが、意外な脆弱性を見せつけている。

     

    (5)「ロシアメディアは、給油所で最大18時間待つ人もいると報じている。インターネット上では、前に進まない車の横に飲み物やシーシャのパイプを置いたテーブルを広げる人々を描いたミームも登場している。首都モスクワでさえ、ガソリンスタンドの外にまで乗用車やトラックが列をなす異様な光景が広がっている。給油できる保証もないまま、何時間も待つ運転手もいる。モスクワでは、先月18日にウクライナが実施したドローン攻撃を受け、不安が高まっている。この攻撃は、ロシアが全面侵攻を開始して以降最大規模で、南東部カポトニャの製油所を狙った攻撃としては1週間足らずで二度目だった。迎撃は大規模な爆発を招き、燃料タンクの屋根が派手に吹き飛んだ」

     

    給油所では、最大18時間も待たされる人が出てきた。事態は、深刻である。こうなるとプーチン政権も国民へお座なりな説明で済まなくなってきた。停戦への決断が迫られる理由である。

     

    (6)「ロシアには、この危機に対処する手段がまだ残されている。しかし、専門家らはCNNに対し、その選択肢は狭まりつつあると語る。プーチン氏は、政府が取り組んでいる措置を列挙した。製油所の計画保守期間の短縮から、軽油輸出禁止の検討、輸入拡大などだ。しかしウクライナの攻撃が今のペースで続けば、その正常化は実現しない可能性がある。そして燃料不足によるインフレ進行と消費低迷という経済リスクは、これ以上ないほど悪いタイミングで訪れている。イランと米イスラエルの戦争の最初の数カ月で急騰した原油価格は現在下落しつつあり、ロシアが輸出で得る利益の増加によって拡大する財政赤字を埋める機会は閉じつつある。ロシア経済はすでに停滞しており、その一方で国防支出は増え続けている」

     

    ロシアは、燃料不足によるインフレ進行と消費低迷に加えて、ホルムズ海峡の通過が可能となり原油価格の値下がりに見舞われている。値下がりは、ロシア原油の輸出減となって経済へ跳ね返る。プーチン氏も「年貢の納め時」となった。

     

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    ロシアと中国が、資金決済を伴わない「物々交換」による貿易を早ければ秋にも開始する可能性がある。ロイターが報じた。両国とも、米国が監視する銀行システムの利用を限定的にとどめる狙いだ。

     

    『ロイター』(8月9日付)は、「ロシアと中国、『物々交換』貿易を秋にも開始か=関係筋」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアと中国が、資金決済を伴わない「物々交換」による貿易を早ければ秋にも開始する可能性があることが、事情に詳しい関係者3人の話で明らかになった。両国とも、米国が監視する銀行システムの利用を限定的にとどめる狙いがある。

     

    (1)「プーチン大統領が5月に中国を訪問した際、両国貿易を巡る決済の遅れが重大な問題として議論された。対応策として、米国の監視が届きにくい中国の小さな地方銀行を使うといった案が浮上したが、問題の解決には至っていない。物々交換貿易により、両国は決済の問題を回避できる上、両国間の貿易に対する西側当局の監視力を弱め、為替リスクを抑えることができる」

     

    中国とロシアが、物々交換という最も原始的な方法によって、「地下貿易」を始めるという。こうなると、中国からロシアへ何が渡るかが、全く闇の世界になる。ただ、「価格」がないから、中国に買い叩かれることは明らかである、ロシアは、「弱者」の身分になっているので不平を唱える立場でない。長い目で見て、これが中ロのしこりとなろう。

     

    (2)「ロシア政府は物々交換貿易に関する規則の策定を進めている。ロイターが取材したロシア筋は、中国も同様の作業を進めていると想定している。ロシア大手銀行の幹部は、物々交換貿易の計画は準備が整いつつあると話したが、詳しくは説明しなかった。決済に従事している関係者は、ロシアからの食品輸出が協議されていると話した。ロシアの工業筋は、中国から機械を輸入する見返りに、ロシアから金属を輸出する案が企業間で話し合われていると述べた」

     

    ロシアからは中国へ食品や金属が輸出され、中国が機械を輸入するという。中国は現在、異常気象によって中国の「穀倉地帯」である河南省が、大きな打撃を受けている。河南省は中国小麦の3割を生産している。ロシアから物々交換で輸入できれば助かるだろう。国内は,工業製品が過剰生産で在庫の山である。大幅ディスカウントで輸出している。それだけに、ロシアへ圧力をかければ中国の言い分が通る可能性が強まる。

     

    ロシアは、中国と物々交換を始めるほどの窮迫した事態になっている。今後の経済見通しはどうか。IMF(国際通貨基金)と世界銀行は、25年以降に厳しい見通しを発表している。

     

    IMFは7月16日、世界経済見通しを発表した。ロシアの実質GDP成長率について、2024年は3.2%、2025年は1.5%になると予測。前回見通し(24年4月)と比較して、2024年は据え置いたが、2025年は0.3ポイント下方修正した。

     

    世界銀行は6月11日に発表した世界経済見通しの中で、2024年のロシアの実質GDP成長率を2.9%、2025年は1.4%、2026年は1.1%と予測した。軍事関連の需要が引き続き経済を牽引するという「戦争景気」である。だが、これは線香花火であって持続性がない。軍需景気は、再生産効果がなく消耗一方の経済活動である。

     

    IMFと世界銀行に共通している点は、25年の経済成長率がいずれも1.4~1.5%へと急減速することだ。24年までの戦争経済が終わって、25年以降にその負の部分が顕在化する。世界銀行は、ロシアのマクロ・プルーデンス政策や住宅ローン補助金の縮小が民間需要を抑制すると予測している。マクロ・プルーデンス政策とは、金融システム崩壊を防ぐべく採用する「緊縮政策」である。これを採用せざるを得なくなるとみているのだ。率直に言えば、ロシア経済破綻回避という壁にぶつかると判断している。
     

    ロシア経済は25年に、ウクライナ侵略でいよいよ3年目へ入る。経済的に大きな重圧がかかってきたことを証明している。

     

     

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    ロシア軍のウクライナ侵攻が始まって、間もなく3年目を迎える。ウクライナは、多大な被害を受けながらも、国土を守り抜く強い意志を示している。だが、世論調査ではそういう強い意志をみせる国民は8割を下回っており、「休戦」の二文字がちらつき始めている。

     

    『毎日新聞』(2月15日付)は、「対露戦争3年目を前に疲弊漂うウクライナ 徴兵逃れや関心低下も」と題する記事を掲載した。

    ロシアの侵攻が続くウクライナ。昨年2月以来、1年ぶりに現地入りした記者(鈴木)が感じたのは、人々の間にじわりと広がる疲弊ムードだ。24日で3年目に突入する戦いは終わりが見えない。捕虜への関心低下や、兵員不足の深刻化など重い課題が浮き彫りとなっている。

     

    (1)「前線で戦った兵士のことを忘れるな!」「捕虜を解放させろ!」――。11日、首都キーウ(キエフ)市内の大通りの交差点。冬曇りの下で、ウクライナ内務省傘下の戦闘部隊「アゾフ大隊」の隊員家族ら約200人がプラカードを掲げてデモを行った。アゾフ大隊は開戦当初に、南東部の要衝マリウポリの製鉄所などを拠点としてロシア軍と激戦を繰り広げた部隊だ。製鉄所に立てこもった隊員たちは2022年5月中旬に投降し、ロシアの捕虜となった」

     

    南東部の要衝マリウポリの製鉄所は、激戦地で多数の犠牲者が出た場所だ。多くの兵士が、ロシア軍の捕虜となった。

     

    (2)「デモに参加したカトリーナさん(25)の婚約者の男性(27)は、今もロシアの収容所に捕らわれている。カトリーナさんは昨年6月にテレビ番組のニュース映像でロシアの法廷に姿を現した婚約者を見たというが、それ以降の消息は不明だ。「映像を目にしたときは驚きで息が止まるかと思った。痩せこけていて心配だ」と目に涙を浮かべる。ロシア側との捕虜交換で解放された隊員もいるが、現在でも700人以上が拘束されているとされる。手詰まり状態の戦況に、カトリーナさんは「兵士ではない私が無責任なことは言えない。ただ早く戦争が終わって婚約者が無事に帰ってきてほしい」と声を落とした」

     

    捕虜の解放を待つ身にしてみれば、早い戦争終結を待ちわびている。 

     

    (3)「毎週日曜に続けるこのデモの企画者の一人、ターニャさん(44)は「ウクライナの人々も戦争状態に慣れたり疲れたりしてきている」と指摘する。捕虜の存在にも関心が薄れてきているといい、「彼らは英雄だ。忘れてはならないと訴え続ける」と力を込めた。総動員令が出ているウクライナでは、18~60歳の男性は出国が原則禁止されている。地元メディアによると、侵攻開始後の数カ月間は何万人もの男性がこぞって兵役を志願したが、熱意は次第に低下。前線では兵員不足が深刻化している。ゼレンスキー大統領は昨年12月、最大50万人の追加動員を検討中と明かした」

     

    ゼレンスキー大統領は昨年12月、最大50万人の追加動員を検討している。18~60歳の男性は、すでに全員が出国禁止されている。そのなかで、50万人を動員できるのか。

     

    (4)「こうした状況の中、徴兵逃れが大きな問題となっている。英公共放送BBCは昨年11月、これまでに約2万人の男性が国外に出国したと報道。また、約2万1000人が出国に失敗してウクライナ当局に拘束されたという。徴兵事務所から数回にわたって兵役を呼びかける手紙を受け取ったという男性(31)は匿名を条件として取材に応じ、「適切な装備も訓練もなく前線に放り込まれるのは絶対にごめんだ」と語気を強めた。軍の徴兵担当者らが街頭で対象者をチェックしている場合があるといい、外出の際には、仲間らとネット交流サービス(SNS)で情報交換をするなど警戒しているという。「強制的に徴兵事務所に連行されるのではないかと恐怖を感じている」と話すこの男性。「2年前は国の未来を守るために兵役を志願する人々がいた。今、私は妻と6歳の長女を守るため、戦場へ行くことを拒否する」と断言した」

     

    戦争忌避する人々もいる。中には、不正手段で出国するという事態も発生している。こういうなかで、ゼレンスキー大統領は今後の展望をどのように描いているのか。戦闘機の導入が本格化すれば、新たな展開も期待できるのであろう。

     

    (5)「ウクライナの世論調査機関「キーウ国際社会学研究所」が23年12月に公表した世論調査によると、「どんな状況の下でも領土を諦めるべきではない」と回答したのは74%。多数派ではあるが、22年5月からの調査で初めて8割を下回った。また、「平和のために領土を諦めてもよい」と答えたのは全体の19%で、昨年5月の10%から9ポイント上昇している。回答者の居住地域別にみると、激戦が続くウクライナ東部では25%が「諦めてもよい」と回答。南部、中央部、西部よりも領土放棄を容認する割合が高くなっている。一方で、「領土を諦めてもよい」と答えた人のうち71%は「西側諸国からの適切な支援があれば(露軍の撃退に)成功できる」と回答。「領土を諦めるべきではない」と答えた人では93%が同様の回答をしている。市民レベルでも、欧米の軍事支援が戦況のカギを握ると強く意識している模様だ」

     

    最終的には、ウクライナ世論が停戦=和平案を決めることだ。その時期は、24年中に来るであろうか。

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    国を挙げての戦争で、国内のもめ事は禁物である。このタブーが、ロシアでは民間軍事会社創始者のプリゴジン氏によって日常的に破られている。プリゴジン氏は、国防相や参謀総長へ侮辱的発言を繰り返しており、本来ならば罰せられるべきだが無罪放免だ。この裏には、プーチン大統領がプリゴジン氏の「後援者」として控えている結果とされる。こうして、ロシアの権力構造にひび割れが起こっていると見られる。この状態で、ウクライナ侵攻作戦は継続できるのか疑問符がつくのだ。

     

    『ウォールストリートジャーナル』(5月25日付)は、「ワグネル恨み深く、プーチン氏の権力構造に亀裂」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は520日、制圧したウクライナ東部の都市バフムトの廃虚に立ち、敵視する人物をやり玉に挙げて怒りをぶちまけていた。名指しされたのはロシアのセルゲイ・ショイグ国防相とロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長だ。

     

    (1)「ワグネルとロシア軍幹部の対立激化は、1年余り前のウクライナ侵攻開始以降初めて、ロシアの権力組織内の秩序に生じた大きな亀裂を露呈させた。双方の対立は、シリア内戦に端を発する裏切りの物語とも言える。双方がここ数週間に公然と対立し、軍の作戦にも影響を与えている状況は、戦況の劣勢により、ウラジーミル・プーチン露大統領が過去20年にわたり築き上げてきた強力な権力構造にひずみが生じていることの裏返しでもある」

     

    ワグネルは、ロシア正規軍の敗北をカバーしてきた。それだけに、プリゴジン氏は強気に振る舞っている。誰も彼を咎められないという事態だ。プーチン氏もその一人であろう。すべては、ロシア軍の弱体が原因である。

     

    (2)「自身の立場を脅かす政敵の台頭を警戒するプーチン氏(70)はかねて、部下同士の対抗意識をあえて促してきた。だが、これまで内紛劇が表面化することはなかった。隠すことなく繰り広げられるワグネルと軍幹部のにらみ合いは、こうした従来の慣例を打ち破ったことになる」

     

    プーチン氏は、部下同士の内紛を収めず放置している。それが、プーチン氏にとって最も都合がいいからだ。収めれば、「白黒」をつけるほかない。そうなれば、プーチン氏の身辺に累が及ぶ。成敗を下された側が、プーチン氏を恨んで裏切り行為に及ぶ危険性が高まるからだ。ともかく、武器を持っている相手である。その刃が、プーチン氏に向けられれば

    最後になる。

     

    (3)「プーチン氏の元スピーチライターで、現在は政権に批判的な政治アナリストのアッバス・ガリャモフ氏は「この対立劇をみて、ロシアのエリート層が導き出す主な結論は、プーチン氏がこれらの関係を制御できなくなっているということだ。プーチン氏の立場が弱まっているため、垂直の権力構造が崩れつつある」と述べる。「戦時下では、結束を示すというのが国家の基本任務だ。プーチンはそれを遂行できなくなっている」と指摘する

     

    下線部は、極めて重要である。プーチン氏は、核で威嚇する以外に自らの権力を維持できる基盤がなくなりつつある。追い詰められていることは確かだろう。

     

    (4)「ワグネルによるバフムト制圧は、ロシアにとってここ10ヶ月で最大の成果だ。ロシア正規軍はこの間、ウクライナ南部と東部で大部分の占領地を失っている。プリゴジン氏が重ねて強調している事実だ。プーチン氏自身も、戦況の変化にあわせ、プリゴジン氏に近いとみられる将校の待遇を変えることで、ワグネルと軍幹部双方の間でどっちつかずの立場を維持している」

     

    ウクライナ軍はまだ、ロシアによるバフムト完全制圧を否定している。ワグネルは、制圧したと宣伝して自己の成果にしたいのだろう。

     

    (5)「プリゴジン氏は最近になって、標的とする人物を軍幹部から、プーチン政権関係者にも広げているようだ。このような禁じ手なしの手口は「ロシアから勝利を奪う強力な裏切り者を相手に立ち上がるプリゴジン氏」というイメージを醸成しており、プーチン氏の承諾がなければ不可能だ、と西側当局者や専門家は話している」

     

    プリゴジン氏の大胆な政権幹部批判は、プーチン氏がかなり政治的・軍事的に弱気となっている証拠であるかも知れない。この点は、注目点であろう。

     

    (6)「プリゴジン氏は、ウクライナでの戦闘に加わるよう要請されたのは、2022224日の侵攻開始から3週間後だったと語っている。ロシア軍が首都キーウ(キエフ)掌握に失敗し、「特別軍事作戦の計画が狂って」からだ。ワグネルは直後に、アフリカに展開していた戦闘員を呼び戻してウクライナ東部ルガンスク州に送り、戦況を好転させた。ロシア軍が昨秋、ウクライナ南部と東部から後退を余儀なくされる中、ロシア側が何とか進軍できていたのは、プリゴジン氏が指揮するバフムト近辺に限られた」

     

    このパラグラフによれば、プーチン氏が始めた戦争を持ちこたえさせているのはプリゴジン氏ということになろう。ならば、プーチン氏はプリゴジン氏へ頭が上がらない関係になる。ロシア軍が弱すぎた結果でもある。それほど、ウクライナ侵攻は無謀な戦争であるのだ。

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    G7広島サミットは21日、ウクライナのゼレンスキー大統領を交えた討議を開き、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの財政や軍事面での支援を「必要な限り提供する」ことで一致した。この席上でゼレンスキー氏は、国際社会の支持を取り付けるために首脳級の「平和サミット」を7月に開催することを提案した。『毎日新聞 電子版』(5月21日付)が報じた。 

    ゼレンスキー氏が、7月に首脳級の「平和サミット」開催を提案したことは、大きな意味を持っている。これから開始する総反攻作戦が、大方のメドをつけるという予想ができるからだ。無論、現実には机上プランのように簡単でないにせよ、西側諸国からさらなる支援を取り付けたことで、必要な武器弾薬の調達メドができたと見られる。

     

    『CNN』(5月20日付)は、「ウクライナ支援『必要な限り』、G7首脳が共同声明」と題する記事を掲載した。 

    主要7カ国(G7)の首脳は20日、共同声明を発表し、ウクライナに対して、ロシアによる不法な侵略戦争に直面する中で必要な限りの支援を行うことで合意した。 

    (1)「具体的には外交、財政、人道、そして軍事面でウクライナへの支援を強化し、ロシア及び同国の戦争を支持する側に一段の代償を支払わせることを約束した。またウクライナに対しては揺るぎない支援を必要な限り行うと確認。広範囲にわたる正当かつ永続的な平和を同国にもたらすとの方針を示した。首脳らはこの他、中国に対してロシアに圧力をかけるよう要求。自軍を即刻ウクライナから完全かつ無条件で撤退させ、侵略を止めるよう迫ることを求めた 

    G7が、一枚岩になってロシアと中国へ圧力を掛けている。中国は、「和平仲介」と称して平和の使徒のような振る舞いをしているが、G7によって逆に利用され「真面目にロシアへ撤退圧力」を掛けさせられる無様な形になった。中国は、ウクライナとポーランドまで「和平特使」を送ったが、今後も仲介話を続けるのか。中国にとって、情勢は不利になった。

     

    (2)「共同声明には、「我々は中国が広範囲にわたる正当かつ永続的な平和を支持するよう促す。そうした平和は領土の一体性及び国連憲章の原則と意義に基づくものであり、その過程にはウクライナとの直接の対話も含まれる」とある。中国はかねて、自分たちを今回の紛争における和平の仲介者に位置づけようとしてきた。しかしこれまでのところ、ロシアに対して軍をウクライナの領土から撤退させるよう求めたことはない」 

    中国の狙いは、中国があたかも「平和仲介」の労を取っているというアッピールをしたいのだろう。宣伝効果狙いである。だが、中国はこういう宣伝をしながら、台湾侵攻を行うとなれば、完全な「ジキルとハイド」を演じることになる。習氏は、こういう矛盾に気づいているだろうか。ウクライナ侵攻への平和仲介は、自らの台湾侵攻を放棄することになるはずである。こういう理屈になることを自覚していなければ、とんだピエロになろう。

     

    (3)「西側の首脳らは、中国の習近平(シーチンピン)国家主席がロシアのプーチン大統領との親密な関係を利用して戦争を終結させるのではないかと期待を寄せるが、専門家らは現時点でそうした結果は考えにくいとの見解を示す。中国政府はロシアとの関係維持によって利益を得ているというのがその理由だ」 

    ロシア軍が大敗するような事態になれば、中国は積極的に「平和仲介」へ動き出すであろう。中国にとってロシアは唯一のパートナーであるからだ。だが、冒頭に掲げたように、ゼレンスキー氏は7月に「平和サミット」開催を提唱している。これは、中国の仲介拒否を意味しているのだ。中国外交の失態になろう。

     

    (4)「今回のG7首脳会議は、開催地の広島にウクライナのゼレンスキー大統領が対面で姿を見せる驚きの展開となった。G7首脳らは、ロシアによる「エネルギーの武器化」といったリスクへの対策を講じる計画も共同声明に盛り込んだ。ロシアに対してはかねて、エネルギーの「武器化」や価格と供給の操作を利用して政治的影響力を強めているとの非難が寄せられていた。とりわけ欧州は、ウクライナでの戦争の開始以降、ロシア産エネルギーの依存からの脱却を模索している」 

    G7は、ロシアに対して「エネルギーの武器化」をさらに無力化させる。原油と天然ガスの売上は、一段と低下しており財政赤字の最大要因になっている。これをさらに、徹底化させるというもの。 

    ゼレンスキー氏のG7出席は、G7の結束をさらに固めている。それは、米国バイデン大統領が19日、欧州で使用されてきた米国製戦闘機F16をウクライナへ供与することを認めたことだ。これに伴い、米国はウクライナ軍パイロットの訓練を欧州と合同で行うとしている。ゼレンスキー氏は、この決定をG7サミットへ向かう途中で聞き、米国の「歴史的な決定」とツイッターで歓迎した。ウクライナ軍が、数ヶ月後にF16を実戦で使用できる段階になると、戦況はがらりと変わるであろう。

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