勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ウクライナ経済ニュース時評 > ウクライナ経済ニュース時評

    a1320_000159_m
       

    ロシアのショイグ国防相は23日、30万人の「部分動員」が終了したと述べた。動員された新兵8万2000人が紛争地域に派遣され、そのうち4万1000人が部隊に配属されたことを明らかにした。21万8000人は訓練中という。ショイグ氏は「これ以上の措置は予定されていない」とした。今後は、ロシア国内の数百万人の予備兵を動員するのではなく、原則として志願兵や職業軍人を派遣する方針である。

     

    ロシアが、200万人とされる予備役兵の動員を諦めた理由は何か。国民の動員忌避の動きが活発化していることだ。動員令の掛る可能性がある人々は、一斉に姿を隠しており、海外逃亡者が増えている。モスクワ市役所では、3分の1が逃亡したという情報が出て来た。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(10月29日付)は、「モスクワ市職員の3分の1が『国外逃亡』情報 動員後の劣悪すぎる状況を恐れて」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナに派遣する予備役の部分的動員を発令したことを受け、モスクワ市職員の3分の1近くが1カ月の間に国外に逃れたと、地元メディアが報じた。ロシアでは、徴兵を逃れようとする国民の「大量脱出」が起きている。

     

    (1)「地元メディア「Nestka」は、住宅や地域サービス、医療、教育など、大規模な部門の男性職員やIT部門の専門家らが一斉に逃げ出したと、事情に詳しい関係筋の話として伝えた。職員の多くは正式に辞職しておらず、関係当局に届け出もしていないという。「彼らはマグカップも洗わず、職場に私物を残したままいなくなった」と、ある情報筋は語っている」

     

    多くの専門職の人々が、職場を逃げ出している。職場に私物を残したままの状態であり、いかに切迫していたかを示している。戦争への強い拒絶感を物語る。

     

    (2)「プーチンは9月21日、ウクライナでの戦闘に予備役30万人を動員すると発表。その後の2週間で、徴兵を避けるために市民37万人以上がジョージア、フィンランド、カザフスタン、モンゴルなどの近隣国に逃れた。10月中旬には、徴兵されたモスクワ市職員がウクライナで死亡したことで、同市職員が大量に辞職していた。ロシア人ジャーナリストのロマン・スーペルは10月14日、ロシア政府の情報筋の話として、モスクワ市政府の部局長だったアレクセイ・マルティノフ(28)の死を受け、市職員が相次ぎ辞表を提出していると、自身のテレグラムのチャンネルで伝えた。マルティノフは戦闘経験がないにもかかわらず、9月23日に徴兵され、10月10日にウクライナでの戦闘中に死亡したという」

     

    10月中旬、徴兵されたモスクワ市職員がウクライナで死亡したことが判明。これが引き金になって、モスクワ市職員の「大量逃亡」が始まった。戦死したこの職員は、9月23日に徴兵されて10月10日に死亡である。モスクワ市職員が、この悲劇に恐れをなすのは当然であろう。招集=戦死では、余りにも残酷である。

     

    (3)「政府筋はスーペルに、「大量脱出が起きている。職員がメモを残して去っている。IT技術者、広告やマーケティング、広報の担当者や、一般の公務員もだ。まさに大量脱出だ」と話している。スーペルは「動員されたモスクワ市政府職員のアレクセイ・マルティノフが死亡したことが、昨日明らかになっている」と指摘した」

     

    ロシア政府筋すら、大量脱出を認めているほど。招集されて間もない戦死では、誰でも逃亡するだろう。ましてや、大義のない戦争である。この戦いで命を落とすことは、「犬死」に

    なる。

     

    (4)「ロシアの国営メディア放送局RTの副編集長ナターリャ・ロセバは、マルティノフは軍に入隊したわずか数日後にウクライナで死亡したと、自身のテレグラムのチャンネルで伝えた。「彼は若い頃、セミョノフスキー連隊に所属していた」とロセバは指摘。「彼には戦闘経験がなかった。(入隊から)数日後に前線に送られ、10月10日に英雄として死亡した」と述べた。ラトビアに拠点を置くロシア語の独立系ニュースメディア「Meduza」によると、セミョノフスキー連隊は、ロシア大統領とクレムリンの警備を担当しているという」

     

    国営メディア関係者すら、モスクワ市職員が入隊したわずか数日後にウクライナで死亡したと認めている。この戦死した職員は、ロシア大統領とクレムリンの警備を担当し戦争経験はゼロであった。

     

    (5)「著名なロシア人ジャーナリストで元大統領候補のクセニア・ソブチャク(40)も、ロシアからリトアニアに逃れた。同国首都ビリニュスの情報機関によると、26日朝に警察当局がモスクワにあるソブチャクの自宅を強制捜査したという。ロシア国営通信社タス通信は、ソブチャクのメディア担当者であるキリル・スハノフと共に刑事事件の容疑者として彼女を逮捕するよう、治安当局が命令を受けたと報じている」

     

    元大統領候補者も国外逃亡している。大統領選挙に立候補したほどだから、プーチン氏の政敵に当る。こういう事情から、プーチン氏が再び立候補できないように「招集する」ことを恐れたのであろう。生命の危険を感じれば、誰でも逃亡して当然であろう。

    a0070_000030_m
       

    ロシア軍は、これまで大量の武器弾薬を残して敗走した。ウクライナ軍は、これら武器で改修すべきものは修理して、ロシア軍追撃に利用する皮肉な現象が起こっている。これに気付いたロシア軍は、「徹底抗戦」しないで早めに撤収する戦術に変わった様子だ。ウクライナ軍に、遺した武器弾薬を利用されまいという苦肉の策だろう。

     

    『CNN』(10月6日付)によれば、ウクライナ軍が南部ヘルソン州で前進する中、ロシア軍部隊は多大な損失を被っている。負傷者と兵器は、ドニプロ川を越えた最寄りの救護施設に避難させようとしている。ウクライナ軍参謀本部は、「敵は負傷した軍人150人と破損した軍事装備50台ほどをカホフカ水力発電所近くのベセレ集落に移動させた」と述べた。

     


    南部ヘルソンは、クリミア半島の水源でもある。ロシア軍にとっては死守すべき防衛線の筈だが、早めに負傷者と武器弾薬を安全な場所へ避難させている。これまでにない「逃げ腰戦術」である。武器弾薬も避難させたのは、新たな補給がない証拠だ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月6日付)は、「ウクライナ軍、奪ったロシア製兵器でさらに攻勢」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍が同国東部で攻勢に出る中、捕獲されたか放棄されたロシア軍の戦車・榴弾砲・戦闘車両は、今やロシア軍に対する攻撃に使われている。こうした装備品に付いていた、ロシア軍を象徴する「Z」マークは速やかにこすり取られ、代わりにウクライナ軍を表す十字架が描かれている。

     


    (1)「軍当局者によると、ウクライナが1カ月前にハリコフ州で急速に戦果を上げた結果、ロシア軍が無秩序な撤退に追い込まれ、重火器や複数の倉庫内の物資を置き去りにしたため、何百ものロシアの装備品がウクライナ側に渡ったという。ロシア軍の装備品の中には、すぐに使用できるものもあれば、前線で再び使うために修理中のものもある。損傷があまりにひどく修理できない戦車やその他の車両・銃は解体され、部品は予備用に回される。さらにロシア軍が、ウクライナではほとんど使い尽されたソ連式の砲弾を大量に残していったのは重要なことだ

     

    ウクライナ軍が9月に、ハリコフ州で行なった電撃作戦で、ロシア軍が大量の武器弾薬を遺して敗走した。これは、大変な戦利品であり、ウクライナ軍の攻撃力を強化している。ロシア軍が、その後の戦いで徹底抗戦せずに、武器弾薬を遺さずに持って撤退する方式へ切り変えたと原因と見られる。ロシアの兵站(補給)が弱体化している証拠である。

     


    (2)「こうした装備品は、ウクライナ軍が要衝リマンを含む同国東部ドネツク州の一部を奪還し、さらに東に隣接するルガンスク州に進軍する際に戦力の一部となっている。ウクライナのカルパシアン・シーチ大隊の副参謀長ルスラン・アンドリーコ氏によると、同隊は先月、ハリコフ州の要衝イジュムに入った後、10台の近代的なT80型戦車と5門の2S5ギアツィント152ミリ自走式榴弾砲を奪い取った。同氏は「われわれにはあまりにも多くの戦利品があり、それらをどうすればいいのかさえ分からない。初めは歩兵大隊として戦闘に加わったが、今では機械化された大隊になりつつあるようなものだ」と話す」

     

    ロシア軍の遺した武器弾薬は、ウクライナ軍がその後に行ったロシア軍追討作戦で威力を発揮している。ウクライナ歩兵大隊は、ロシア軍の遺した武器によって、「機械化大隊」に変身しているという。大変な皮肉である。

     


    (3)「ハリコフ州の前線で戦うウクライナ砲兵大隊の参謀長によると、「ロシア軍はもはや、火力で優位性を持たない。われわれは攻撃前にロシアの砲兵部隊をたたきつぶしてから迅速に前進を始めたため、ロシア側は戦車に燃料を補給したり、荷物を積んだりする時間さえなかった。彼らは何もかもを置いて逃げていった」と述べた。公開情報を利用する軍事アナリストによると、ロシアが4月にキーウ(キエフ)などのウクライナ北部の都市から撤退した際に奪い取った兵器に今回の分が加わったことで、ロシアはウクライナにとって群を抜いて最大の武器供給国となり、その数は米国やその他の同盟国や友好国を大きく上回った。ただし、西側諸国が供与する武器は、より先進的で精度が高いことが多い」

     

    ロシア軍はもはや、火力で優位性を持たないという。ウクライナ軍が、「ハイマース」で弾薬庫をピンポイント攻撃し、兵站線を叩き潰した結果である。これでは、ロシア軍の本格的な反攻作戦は無理だろう。雌雄は、すでに決した感じだ。

     


    (4)「公開情報を利用したコンサルティングを提供するOryx(オリックス)がソーシャルメディアや報道から集めた視覚的な証拠によると、ウクライナはロシアの主力戦車460台、自走式榴弾砲92門、歩兵戦闘車448台、装甲戦闘車195台、多連装ロケット発射機44基を奪い取った。奪い取った全ての兵器が映像に収められているわけではないため、実際の数はもっと多い可能性が高い。全ての兵器が先進的というわけではない。Oryxで兵器損失リストを集計しているヤクブ・ヤノフスキ氏は、「彼らが奪い取っているのは、かなり有効に使える現代的な兵器と、本当は博物館に置いておくべき兵器の両方だ」と話す」

     

    ロシア軍は、最新兵器と博物館行きの古い武器で武装していたことが分った。ロシア軍の弱さを見る思いがする。ロシア軍は、この先どこまで戦えるか疑問符がつくのだ。

     

     

     

    a0960_008567_m
       


    ロシア軍の敗走が続いている。ロシア国防省が10月4日に行った戦況説明で使用した地図には、ウクライナ南部ヘルソン州での戦況悪化がはっきりと示されていた。前日の説明で使用した同地域の地図と比較して、ロシア軍が大きく後退している。

     

    この地図では、ヘルソン州を流れるドニプロ川西岸のロシア占領地に向かってウクライナ軍が大きく前進したとする、ウクライナや親ロシア派の高官、そして親ロシア派の軍事アナリストの報告を裏付けている。ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、ウクライナ軍が、ロシア軍の占領する南部ヘルソン州の州都ヘルソン市に向けてさらに前進したと述べた。

     


    こうした状況下で、ウクライナはロシア大統領にプーチン氏が止まる限り、交渉しないという規定を定めた。一方のプーチン氏は、欧州を相手に和平交渉するという前提で、準備が進んでいるという見方が出て来た。

     

    米『CNN』(10月4日付)は、「追い詰められたプーチン氏、時計の針の音は増すばかり」と題する評論を掲載した。筆者は、CNNニック・ロバートソン記者の分析記事である。

     

    ドナルド・トランプ前大統領の下で北大西洋条約機構(NATO)大使とウクライナ特使を務めたカート・ボルカー氏は、プーチン氏が平和に向けて準備を進めているのではないかと考えている。「同氏は核兵器をちらつかせ、欧州にあらゆる脅しをかけて、その上でこう持ちかけるつもりに違いない。『OK、和平交渉をしよう。ただ、すでに私が手に入れた物は渡さない』と」

     


    (1)「3人の米大統領に対ロシア国家安全保障で助言をしてきたフィオナ・ヒル氏も、プーチン氏が幕引きを試みているのではと考えている。「プーチン氏は勢いを失っていることを痛切に感じている。そして今、戦争を始めた時と同じやり方で戦争から身を引こうとしている。自分が統括する立場にあり、どんな交渉であれ全体の条件を定めるのは自分だという姿勢で、だ」。こうした分析が正しければ、先月26日にバルト海で起きた不可解な事象も説明がつく」

     

    プーチン氏は、戦況の不利を見て戦争終結への準備を始めたという。その小道具として、バルト海でのパイプラインの一部を爆破。これにより、欧州へ天然ガス供給を止める意思を示した。

     


    (2)「ロシアのパイプライン「ノルドストリーム1」「ノルドストリーム2」の少なくとも4か所からガス漏れが発見された。
    西側の情報機関関係者によれば、数日前にこの付近でロシア海軍の複数の船が欧州の安全保障当局によって目撃されている。ヒル氏によれば、ノルドストリームのパイプラインの破壊行為はプーチン氏が投げた最後の賽(さい)となるかもしれない。「ガス問題で後戻りはない。欧州は冬に向けてガス貯蔵量を増やし続けることはできないだろう。プーチン氏は今まさに、すべてを投げ打っている」。

     

    元スパイのプーチン氏が考え付く戦術である。欧州へのガスを止めて、和平交渉を始めたい意思を見せ始めている。

     

    (3)「プーチン氏の思考を加速させているもうひとつの要因は、おそらく冬の訪れだろう。ナポレオンもヒトラーもモスクワ攻略に失敗したが、ボルカー氏によれば、今はプーチン氏の重荷になっているという。「今回、ウクライナにいる自軍を維持するために補給線が必要なのはロシアのほうだ。この冬、それは非常に困難なものになるだろう。こうした要因がすべてあわさり、プーチン氏の予定が急きょ前倒しになった」

     

    これから訪れる「冬将軍」によって、ロシア軍は補給で悩まされることは確実である。歴史的に言えば、「冬将軍」によってナポレオンやヒトラーのモスクワ攻略は失敗した。今度は、プーチン氏が冬将軍で「敗北」側へ追いやられる決定的リスクを背負っている。

     


    (4)「ヒル氏の言葉を借りれば、要するに「今回の出来事は、ウクライナが地上戦で勢いを増し、プーチンが劣勢に追い込まれた結果だ。同氏はこうした状況への適応を図り、主導権を握って優位に立とうとしている。ヒル氏によれば、プーチン氏はウクライナではなく、バイデン大統領や同盟国との交渉を望んでいるという。「プーチン氏が言おうとしているのは基本的にこうだ。『あなた方は私と交渉し、平和を求める必要がある。それはすなわち、我々がウクライナの地で行ったことを認めるということだ』と」。

     

    プーチン氏は、ウクライナ相手でなく欧米との直接和平交渉をねらっている。だが、欧米はウクライナが最終決定権を持つと発言している。プーチン氏の思惑は早くも外れる。当のウクライナは、プーチン氏と交渉しないとの規定を作って和平交渉を遮断した。

     



    (5)「ボルカー氏の予測では、プーチン氏はまずフランスとドイツに働きかけると思われる。「『我々はこの戦争を終わらせる必要があり、あらゆる代償を払い、あらゆる必要な手段を講じて自国領土を守る。あなた方はウクライナに対して和解するよう圧力をかける必要がある』と言ってくるだろう」。もしこれがプーチン氏の計画なら、これまでで最大の戦略的誤算となる可能性がある。西側諸国にはプーチン氏が権力に居座る状況を望む考えがほとんどなく、米国のロイド・オースティン国防長官も夏にそうした発言をしている。これまで受けた被害を考えれば、ウクライナを見捨てる考えがないのはなおさらだ」

     

    最終的にプーチン氏の目指す和平交渉は、立ち往生して進むまい。この間に、ロシア軍の敗北は一段と鮮明になる。核をちらつかせること自体、ロシア敗北が決定的局面へ来ている証拠だ。

    ムシトリナデシコ
       

    ロシアのプーチン大統領9月21日、部分的動員令を発表した。即日から実施という慌ただしさだ。30万人の動員令である。翌日から召喚が行なわれている。その状況を米『CNN』(9月23日付)は、次のように報じた。

     

    「ロシアの一部の地域、特にカフカスと極東地域で「部分的動員」の第一段階が進行している様子をとらえた動画が、ソーシャルメディアに投稿されている。極東のネリュングリ市でバスに乗り込む大勢の男性に別れを告げる家族の映像も投稿されている。女性が泣きながら夫を抱きしめて送り出し、夫がバスの窓から娘に手を伸ばす姿が映っている」

     

    映像では、幼児の「パパ、パパ」と泣き叫ぶ情景もあり、戦時中の日本の応召姿とは全く異なるものの、悲壮感が漂っている点では同じだ。戦争は悲劇である。

     

    ロシアは「部分的動員令」で、戦局を変えられるだろうか。その可能性は極めて少ないという指摘があるので取り上げた。

     

    『CNN』(9月22日付)は、「ロシアの部分動員、『戦況に劇的な変化』もたらす公算小 戦争研究所」と題する記事を掲載した。

     

    米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は21日の分析で、ロシアのプーチン大統領による部分動員の発表が戦争の流れを劇的に変化させる可能性は少ないとの結論を示した。

     


    (1)「ISWの分析では、予備役の戦闘準備が整うには数週間から数カ月かかるほか、ロシアの予備役はそもそも練度が低いと指摘。(米)国防省が示した慎重な配備の段階をもとに判断すると、ロシア兵が突然押し寄せて戦況を劇的に変化させる事態は考えにくいと述べた。プーチン氏の命令は兵役を終えた「訓練済み」の予備役の一部を動員する内容だが、数カ月は大した戦力にならないだろうと指摘。死傷者の穴を埋めて現在の兵力を来年も維持するには十分かもしれないが、現時点ではそれすら定かではないとの見方を示した

     

    ロシアの兵役は1年間である。新兵が、この間に学ぶことは軍隊生活と基本的な訓練だけであろう。その1年間の兵役後に、継続したサポートを受けているわけでないという。つまり、時間が経てば忘れてしまう危険性が高いのだ。この状態で動員しても、数ヶ月の訓練がなければ、「一人前」の兵士にはなれないであろう。

     


    (2)「さらに、「ロシアの兵役期間はわずか1年で、徴集兵が兵士としての技能を学ぶ時間はそもそもほとんどない。この最初の期間の後には追加訓練がなく、時間が経つにつれ身に着けたスキルの劣化が加速する」としている」

     

    戦う相手のウクライナ兵は、多くが民間人であったが「祖国防衛」という強い信念に燃えている。NATO軍や米軍から合理的な戦い方を学び、ロシア兵と比較して格段の逞しさと強さを身に付けている。ウクライナ軍の長距離重火砲は、ロシア軍を圧倒しており、ロシア軍が戦線挽回の可能性は低いとみられている。

     

    ロシア国民の多くは、ウクライナ侵攻直後は「反戦デモ」を行なったが、その後は取締り強化もあって消えてしまった。そこへ、突然の「予備役動員令」によって、ウクライナ戦争が身近になって恐怖感に襲われている。動員令から逃れるには、国を出るほかない。道は、空路か陸路しかないのだ。空路は、予約が殺到して航空券を手に入れられるか分らない。ならば、陸路での脱出である。

     

    『CNN』(9月23日付)は、「ロシア出国を待つ長い車列、複数の隣国との国境で確認」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領が「部分的動員」を発表した翌22日、ロシアといくつかの隣国との国境ではロシアから出国しようとする長い車列ができ、その様子を収めた映像がソーシャルメディアに投稿された。

     

    (3)「カザフスタン、ジョージア(グルジア)、モンゴルとの国境の検問所には行列が出来ていた。21日撮影のあるビデオでは、ジョージアとロシアの国境の検問所に一晩中何十台もの車が並んでいるのが映っている。その列は、22日にはさらに長くなっているように見える。ビデオでは長い列が国境の後ろの山まで延びており、ある男性は「5〜6キロの長さだ」とコメントしている」

     

    動員令を逃れるには、国を出る以外に方法しかない。家族が一緒かどうかは分らない。逃亡を余儀なくされるのは、命を守るギリギリの決断であろう。

     


    (4)「22日に投稿された別のビデオには、モンゴルとの国境の長蛇の列がうつっている。カザフスタンとの国境の町トロイツクで同日朝に撮影されたビデオでは、何十台もの車が並んでおり、ある男性が「ここはトロイツク。トラックと乗用車の列ができている。列の始まりも終わりも見えない。皆ロシアから逃れている」と話している」

     

    車の列の始まりも終りも見えないとは、「渋滞」というイメージを超えている。予備役は、200万人いる。該当者は、逃げることで命を守るのだ。

     

    (5)「カザフスタン議会上院議長のマウレン・アシンバエフ氏は、カザフスタンはロシア人の入国を制限することはできないと述べたと、ロシア国営RIAノーボスチ通信が22日に報じた。しかしアシンバエフ氏は、在住許可を取得するためには申請者は法律に準拠した書類一式を用意しなければならないと述べている」

     

    カザフスタンでは、在住許可を取得するために書類一式が必要という。大慌てで家を出て来たであろうから、そのような時間はなかったはずだ。パスポート一つと預金だけであろう。こうなると、無事に在住許可を得られるか心配だ。

     

    30    1025   4
       


    ウクライナ軍は、北東部で迅速な反転攻勢を進め、ロシア軍に占領された全域の解放を目指している。ウクライナのゼレンスキー大統領は演説で、これまでに約8000平方キロメートルが解放され、その全てが北東部のハリコフ地域に集中していると述べた。

     

    今回見せたウクライナ軍の作戦は、ロシア軍をウクライナ南部へ誘導し、手薄となった東部の防御ラインを一気に突破する「奇襲作戦」で、これがまんまと成功したものだ。約3ヶ月掛けて編み出した戦術だという。米軍は、こうしたウクライナ軍の優秀さを再評価しており、ロシアによる侵攻開始直後と打って変わり高い評価を与えている。

     


    ロシア軍は、約3旅団分(約1万の兵士)の武器弾薬を放棄して逃走したという。ロシア軍が、どれだけ慌てていたかが分る。私服に着替え、自転車に乗って逃げたという。中には、森林に逃げ込んだとも言われ、掃討作戦に乗り出している。旧「赤軍」のイメージとかけ離れた不甲斐ない負け方だ。

     

    そこで、米軍はロシア軍に占領された全域の解放後、5年程度を見据えたウクライナ防衛計画の検討に着手した。米国は、中国の台湾侵攻作戦をも見据えており、ウクライナを「モデル・ケース」にするのであろう。

     


    米『CNN』(9月15日付)は、「
    ウクライナ軍を長期支援の検討開始、終戦以降も見据え 米国防総省」と題する記事を掲載した。

     

    米国防総省がウクライナ軍に関する詳細な分析を準備し、同軍をロシアとの軍事衝突の終了以降も含め中長期的に支える方途をまとめていることが15日までにわかった。

    同省当局者の3人が明らかにした。まだ初期段階にあるとする作成作業などは米軍の制服組トップのミリー統合参謀本部議長が仕切っている。

     

    (1)「中長期的な支援の財源は、ロシアによる今年2月の侵攻開始以降、米国がウクライナに供与してきた数十億ドル規模の軍事援助をあてにしている。国防総省高官は、今回の作成作業は「ウクライナ軍の将来の姿を見据えている」とし、軍事支援の側面で道理にかない、中長期的に米国がウクライナに取り組んで欲しい課題に関する重要な問題点への回答を見出すことを狙っているとした」

     

    ウクライナが、ロシア軍と対峙して戦える体制づくりが求められている。これは、ロシアへの経済制裁が長期にわたることを前提にした話だ。ロシアは経済制裁で、技術的出遅れがさらに拡大されるであろう。

     


    (2)「
    中長期との位置づけについては、ロシア軍との軍事衝突が長期化しそうなことを踏まえ、戦争が終わった後の少なくとも5年間を念頭に置いているとした。分析は、ウクライナ側と協力して進めており、バイデン米大統領が承認すれば、将来的に複数年の兵器売却や米国が提供する長期の軍事訓練計画に結実する可能性があるとした。中長期的な軍事支援の道筋がまとまれば、ウクライナ側に示して評価を求めるとした。ただ、ウクライナ軍のあるべき姿と米側が判断した将来像に関する明確なロードマップ(行程表)の提供になるだろうともした」

     

    ロシア軍にとっては、ただならぬ「強敵ウクライナ軍」が現れるかもしれない。ウクライナ侵攻が、プーチン氏の個人プレーなのかどうか。その辺も今後、見定めなければならない。ロシアの受ける経済制裁の損害は、時間が経てば立つほど明らかになろう。

     


    (3)「米国防総省高官は、分析作業が今後1~2カ月でまとまるとの見通しを示した。ただ、ウクライナ側の見解が最終的な骨格にとって最重要との考えも表明。「彼らの戦略や要望は何なのか」を知る必要があると強調。この調整作業は、ウクライナ戦争での戦局の推移や同国軍が得る戦果の度合いをにらみながら今後数カ月間、継続するだろうとも予測した」

     

    ウクライナは、NATO(北大西洋条約機構)軍への加盟が最終的な安全保障となろう。それまでの繋ぎが、必要不可欠である。ロシア軍との戦いで、NATO軍加盟資格は立証済である。

     

    (4)「その上でこれら作業の初期段階での成果は、ウクライナ側の承認次第としながらも兵器供与や訓練提供の勧告につながる可能性があると指摘。最終的に、長期かつ複数年にわたるウクライナに対する兵器提供の契約を通じて、米国と同盟国によるウクライナへの関与が拡大する可能性にも言及した。この種の最初の契約はバイデン大統領が1期目を終える前に実現するかもしれないとした」

     

    下線部分が、ウクライナのNATO軍加盟問題を示唆しているように見える。

     


    (5)「米ホワイトハウスは15日までに、ウクライナに対する新たな軍事援助を近く発表する方針を明らかにした。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官が述べたもの。新規援助の内容についての説明は避けたが、ウクライナ軍が必要とする装備品については同国側と同時進行の形で話し合っていると説明。米国が過去数週間あるいは過去2カ月の間にウクライナへ引き渡してきた装備が攻勢を仕掛ける上で役に立ち、その有効性を立証したと指摘。ウクライナの防御面でも、過去数日間あるいは数週間において非常な効果を示したと述べた」

     

    下線部分は、ロシア軍を最終的にウクライナ領土から追い払うことを意味する。クリミア半島への奪回作戦が含められるのだ。プーチン氏は、苦しい選択を迫られる。安易に始めた戦争は、予想外の結末になりそうである。

    このページのトップヘ