勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ:ウクライナ経済ニュース時評 > ウクライナ経済ニュース時評

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    これまで穴だけであったウクライナの防空体制は、大きく前進している。5月16日未明、ロシア軍はウクライナのキーウへ18発ものミサイル攻撃を集中させたが、すべて撃墜したという。ロシア軍は、ミサイル攻撃によってウクライナ軍の盲点を探り出しているが、今回の攻撃の失敗でショックを受けたであろう。

     

    『ロイター』(5月16日付)は、「ロシア、未明にキーウ空爆 ウクライナ「   『異例の激しさ』も全ミサイル撃墜」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア軍は16日未明にウクライナの首都キーウ(キエフ)を複数回にわたり空爆した。市当局者はドローン(無人機)や巡航ミサイルを使った異例の激しい空爆が行われ、おそらく弾道ミサイルも使用されたとの見方を示した。

     

    (1)「その後、ウクライナ軍は未明に発射されたミサイル18発全てを撃墜したと表明。うち6発は極超音速ミサイルだったと述べた。キーウへの空爆は今月8回目。キーウ市の軍管理当局責任者は「異例の頻度だった。最も短時間に最多の攻撃ミサイルがあった」と通信アプリ「テレグラム」に投稿。「暫定情報によると、キーウ空域で敵のターゲットは大部分が検知され、破壊された」と説明した」

     

    ロシア軍のミサイル18発が、すべて空中で捕捉され撃墜された。ウクライナ軍の守備体制が完璧になって来た証明である。ウクライナ軍は、ハイテク機器の操作を習得する能力が極めて高いと指摘されている。しかも、それを応用してさらに精度を上げる点で極めて優秀という。ロシア軍をはるかに上回るとされている。

     

    (2)「ウクライナ軍は、ミサイル18発、イラン製無人機「シャヘド」6機、無人偵察機3機をウクライナ国内で撃墜したと表明。撃墜したミサイルは航空機から発射された弾道ミサイル「キンジャル」6発、黒海の艦船から発射された巡航ミサイル「カリブル」9発、地上発射型ミサイル「イスカンデル」3発としている。ウクライナ軍のナエフ統合軍司令官は「パニックと混乱を引き起こすことが敵の狙いだろう。だが(キーウを含む)北部作戦地域では全てが完全な管理下にある」と述べた」

     

    ウクライナ軍のザルジニー総司令官は16日、同日未明にロシアから発射されたミサイル18発をすべて撃墜したと述べた。ザルジニー氏はSNS「テレグラム」への投稿で、同日午前3時30分ごろ、ロシアがウクライナの北方、南方、東方から空中、海上、地上発射型のミサイル計18発を撃ち込んできたと発表した。内訳はミグ31K戦闘機6機から発射された極超音速ミサイル「キンジャル」6発、黒海の船舶から発射された巡航ミサイル「カリブル」9発と、地上発射のミサイル3発。以上は、『CNN』(5月16日付)による。

     

    下線部のように、キーウの北・南・東の3方向からの同時攻撃である。ロシア軍は、多方面からの攻撃でキーウ防空体制を混乱させようとしたが失敗した。しかも、極超音速ミサイル「キンジャル」が6発も打ち込まれたが、すべて撃ち落とされた。「キンジャル」とは、ロシア軍の極超音速空対地ミサイルで、最大速度はマッハ10とされ、核弾頭も搭載可能だ。2017年12月に就役し、2022年現在はロシア軍の南部軍管区西部軍管区空軍基地に配備されているという。この最新鋭ミサイル6発が撃ち落とされたのは、ウクライナ防空システムが完璧であることを示した。

     

    (3)「ロイター記者によると、キーウでは非常に大きな爆発音が連続して聞こえた。クリチコ市長は、市の西部地区では落下した破片によって数台の車で火災が起き、建物が損傷したと説明。3人が負傷したという。また、キーウ市の南東に位置し主要な民間空港があるボリスピリ市南部では防空システムが無人機攻撃を撃退しているとした。空港は現在閉鎖されている。軍管理当局によると、他の地区では大きな被害は見られず、現時点で負傷者の情報はない。16日未明にはウクライナのほぼ全土で空襲警報が発令された。

     

    ロシア軍のミサイルは、すべて空中で捕捉されたが、残骸が地上へ落下した破片で火災が起きている。これによる被害で、3人が負傷した。犠牲者はゼロである。中国は、この状況をどんな思いで見ていたか。台湾侵攻の場合、米国からの防空システムが供与されれば無傷で済むのだ。

     

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    ウクライナ軍の反攻作戦は、すでに開始されたと見られる。ウクライナ政府は、「反攻開始」を発表しないとしている。ウクライナ軍の無人機が4月29日、クリミア半島のロシア海軍基地で、石油タンク10基を攻撃炎上させたのは、反攻作戦の狼煙とみるべきだろう。

     

    ロシア軍は、ウクライナ軍の反攻作戦を予知しながら、東部バフムト攻略で多大の損害を被りながら占領できずにいる。それどころか、ウクライナ軍司令官は5月1日、東部ドネツク州の激戦地バフムトで、ウクライナ軍の反撃によりロシア軍が複数の陣地から撤退したと明らかにした。『ロイター』(5月1日付)が報じた。

     

    この情報を裏付けるような報道が出ている。ロシアの民間軍事会社ワグネルの創始者プリゴジン氏は、4月29日公表のインタビューで「弾薬が補給されなければ、恐らく部隊を撤退することになるだろう」と語った。ワグネルの部隊は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、激戦が続く東部バフムト攻撃の主力部隊である。このワグネル部隊が、弾薬不足を訴えていたことと、先のバフムトでの複数基地からの撤退情報は符節が合う。

     

    ワグネル部隊の撤退が、ウクライナ軍を油断させるべく仕組まれている疑念はあるとしても、ロシア軍はバフムトを長期にわたり攻撃して陥落させられなかった。となれば、この攻略作戦はどういう意味があったのかが問われるであろう。バフムトで、ロシア軍が多大の犠牲者を出して不首尾であったのは、ウクライナ軍の防衛能力の高さを証明すると同時に、反攻作戦を見据えロシア軍に消耗戦を強いた巧妙な戦術として浮上するのだ。

     

    東部ドンバス地方のセベロドネツクのウクライナ軍は、2022年夏ロシア軍に包囲されながら一歩も引かず、ロシア軍に多くの犠牲者をもたらし、弾薬や武器を消耗させた。これが後に2つの地域でのウクライナ軍の電撃的反転作戦の成功につながった。こうしたウクライナ軍の作戦が、今回の反攻作戦でも踏襲されていることに留意すべきであろう。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(1月14日付)は、「ロシア軍、東部ソレダルの勝利に高い代償も」と題する記事を掲載した。この記事は、現在の状況を的確に読み込んでいる。

     

    匿名を条件に取材に応じたウクライナ国防省顧問の1人は、ウクライナ政府のソレダルとバフムトに対する戦略はセベロドネツクと同じだと明かした。セベロドネツクの戦闘後、ウクライナ軍はロシア軍を圧倒し、東部ハリコフと南部へルソンを奪還した。

     

    (1)「西側各国から武器の供与を受けているウクライナ軍は、バフムトでのロシア軍の人的損失に付け込んで、同様の強力な反転攻勢に乗り出す可能性があると指摘した。英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)のフランツステファン・ガディ上級研究員は、「純粋に軍事的な観点からすると、ロシア軍の被害の方がはるかに大きい限り、ウクライナにとって『セベロドネツク2.0』戦略は機能している」と話す。ウクライナ軍の予備役大佐セルゲイ・グラブスキー氏は、「バフムトで前線を維持する理由は、さらに多くのロシア兵を集結させるためだ。ロシア兵を消耗させるのが狙いだ。そうすればウクライナが(他の地域で)反攻する余地が生じる」と語った」

     

    昨夏の東部におけるウクライナ軍の電撃的反攻作戦が成功した理由として、南部での陽動作戦が挙げられている。ウクライナ軍が、セベロドネツクでロシア軍を消耗させ、反撃能力を低下させたことも勝因であろう。現在も、バフムトでセベロドネツクと同じ防衛戦を展開している。

     

    (2)「ロシア軍はすでに多大な損失を被っている。最近ソレダルに駐留していたウクライナ軍の特殊部隊のタラス・ベレゾベツ隊員によると、攻撃の先陣を切ったロシアの民間軍事会社ワグネルの傭兵と精鋭のロシア軍空挺部隊(VDV)の犠牲者は数千人に上る。これはソレダルとバフムトの前線でワグネルが投入した傭兵5万人のうち4000人が死亡し、1万人が負傷したとする米国の推計と一致している」

     

    今年1月時点で、ロシア軍は多大の犠牲を負っている。あれからすでに、3ヶ月余が過ぎている。ロシア軍の犠牲が急増していることは間違いない。さきに、民間軍事会社ワグネルのプリゴジン氏が弾薬不足を訴えているのは、消耗の大きいことを裏付けている。ロシア軍が、バフムト攻略に固執したのは、プーチン・ロシア大統領の命令とされる。プーチン氏は、戦闘の実態を掌握していなかったと見られる。

     

     

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    ウクライナ軍が、南部ヘルソン州でドニプロ川西岸からロシア軍が占拠している東岸へ渡河し、拠点を設営したとの情報が登場した。渡河作戦は、最も危険な作戦とされており、犠牲を伴うものである。ウクライナ軍が、その危険を冒してまで東岸で拠点づくりに成功したとすれば、ロシア軍の守備兵力が相当、落ちていることを示すものだ。

     

    英国『BBC』(4月25日付)は、「ウクライナ軍、ドニプロ川東岸に拠点か 南部のロシア掌握地域」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍が南部ヘルソン州のドニプロ川東岸に拠点を確保したとする報告が出ている。これまでロシアが掌握していた地域であり、事実であれば、ウクライナ軍の今後の攻勢において重要な意味をもちうる。

     

    (1)「米シンクタンクの戦争研究所(ISW)が23日に公表した報告によると、ロシアの軍事ブロガーが同日、「(ウクライナ軍の)前進を確認するのに十分な、位置情報を伴う映像と文字報告」を投稿した。その投稿からは、ウクライナ軍がドニプロ川東岸のオレシキーの北西部で活動していることがうかがえるという。ISWは、ウクライナ軍の前進の規模や意図を分析できるだけの情報はないとした」

     

    ロシアの軍事ブロガーは、意外にも正確にロシア軍の最新情報を伝えているという。そのブロガー情報では、ウクライナ軍がドニプロ川東岸のオレシキーの北西部で活動しているとしている。ISWも、この情報を確認していない。ただ、こういう情報が出てきたのは、ロシア軍の防衛線に盲点があることを示唆している。

     

    (2)「BBCウクライナ語は軍関係者の話として、ヘルソン市付近で「ドニプロを渡る特定の動き」があったと伝えている。ウクライナ軍はこうした動きが事実か明らかにしていない。ロシアは否定している。ロシアは現在、ヘルソン州のドニプロ川の東に位置する地域を全面掌握している。ドニプロ川は川幅が広く、天然の障壁の役割を果たしている。州都ヘルソンはドニプロ川の西岸にあり、昨年11月にウクライナ軍が解放した

     

    下線部分では、ウクライナ軍関係者が、ヘルソン市付近でドニプロ川を渡る動きがあったとしている。ロシア軍に警戒網をかいくぐったのかも知れない。ウクライナ軍は、この情報について肯定も否定もしていない。隠密作戦を匂わせている。

     

    (3)「もし今回の報告が正しければ、ウクライナがロシア軍を押し返すうえで重要な意味をもちうる。将来的には、2014年にロシアが併合したクリミア半島に続くロシアの陸路を断つ可能性もある。クライナ軍はしばらく前から、大規模な反攻に向けて準備中だと表明している。ただ、反攻の時期や場所は明らかにしていない。ロシアの軍事ブロガー「WarGonzo」は24日、ウクライナ軍がドニプロ川の新旧水路の間にある島を「足場にしようとしている」と伝えた。ただ、軍事専門家らは、ドニプロ川東岸の橋付近で軍が行動するのは困難を伴うとしている。用水路などの障害物が縦横に走っているからだという。空軍力ではロシアが大きく優位に立っており、そのこともウクライナ軍の前進を複雑にするとみられている」

     

    作戦は、常識を覆した意表を突くものだ。定石通りの戦術を使うとは限らない。昨秋、ウクライナ東部でウクライナ軍が「奇襲作戦」を成功させたのは、ロシア軍の裏をかいた作戦の結果だ。

     

    (4)「ウクライナ軍南部司令部のナタリヤ・フメニュク報道官は、ウクライナ軍がドニプロ川東岸に拠点を構えたとの情報を肯定も否定もしなかった。同報道官は、ウクライナのテレビ局に、「困難な作業が続いている」と説明。軍事作戦には「情報面での沈黙」が必要であり、「私たちの軍が十分に安全になるまでそれは続く」と強調した。一方、ロシアによってヘルソン州トップに据えられたウラジミール・サルド氏は23日、ドニプロ川東岸の「オレシキーの付近にもそれ以外の場所にも拠点はなかった」と述べた」

     

    ウクライナ軍は、ドニプロ川東岸に弾薬を秘匿したのかも知れない。仮に、こういう作戦が成功するほど、東岸の防衛線の目は荒っぽいものかも知れない。「ネズミ一匹」通さないほどに綿密な防衛線では、渡河自体が不可能になろう。

     

    ウクライナ軍の反攻作戦開始は、天候次第としている。ウクライナの5月の気象予報はどうなっているのか調べてみた。ウクライナ南部の5月の気象予報をまとめると、以下のようになる。

    平均気温:約15~20度

    最高気温:約25度以上

    最低気温:約10度以下

    降水量:少ない

    天候:晴れや曇りが多いが、雷雨や強風に注意

     

    ウクライナ東部の5月の気象予報は、次のようになっている。

    平均気温:約15~20度

    最高気温:約25度

    最低気温:約5度

    降水量:約40mm

    天候:晴れや曇りが多いが、雷雨や強風に注意

     

    南部と東部を比べると、南部が降水量は少なく、やや有利ということが分る。ウクライナ軍は、この程度の違いを無視して行くのであろう。

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    ウクライナは、膠着した戦線打開を目指して戦闘機と長距離砲の供与を西側諸国へ求めている。米国は拒否姿勢を示したが、フランス大統領マクロン氏は、「排除せず」と含みを持たせる発言をしている。ウクライナは、最も弱点である戦闘機の供与があれば、膠着した戦線突破への手がかりとなろう。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(2月1日付)は、「マクロン氏、ウクライナへ仏戦闘機供与『排除せず』」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナがロシアの攻撃に対抗するのを支援するために欧米諸国が軍事支援の次のステップを検討するなか、フランスがウクライナへの戦闘機供与に前向きな姿勢を示した。「本来的に、何一つ排除されない」。フランスのマクロン大統領は1月30日、訪問先のオランダ・ハーグでの記者会見でこう述べた。ウクライナから戦闘機供与の要請は受けていないと付け加えた。

     

    (1)「米国とドイツが先週、主力戦車をウクライナに供与する決定を発表して以来、ウクライナを支援する国々の関心は、米戦闘機「F16」、もしくは欧米製の他の戦闘機を供与する可能性に集まっている(フランスはまだ戦車の供与を決めていない)。ウクライナの政府高官は、より先端的な航空機は防空体制を強化して、ロシア軍の攻撃を撃退し、春の新たな攻撃に備えるために役立つと話している」

     

    ロシア軍の春先の攻撃が予測されるだけに、ウクライナは、兵器拡充に躍起となっている。戦車は理想通りに手当できたので、次は戦闘機の供与を求めている。

     

    (2)「米国のバイデン大統領は30日夜、ウクライナへのF16戦闘機の供与を否定し、最大の支援国である米国がジェット戦闘機の供与を先導するというウクライナ政府の期待に水を差した。協議について説明を受けた2人の政府関係者によると、フランス政府は欧州諸国の政府に対し、ジェット機を含む追加の兵器システムを送ることが検討議題に上っていることを伝えた。すぐに決定される可能性は低い。その関係者によると、フランス政府は、以前からの防空・ミサイル防衛システムの供与に加え、戦車を供与して戦車の使い方についてウクライナ軍を訓練する新たなプロジェクトに重点を置いている」

     

    フランスは、自国製戦闘機の供与の可能性を認めている。

     

    (3)「ウクライナのレズニコフ国防相は、31日に仏パリでマクロン氏と仏国防相と会談し、ジェット機について話し合ったことを認めた。「飛行機の具体的な名前やタイプ」には触れていないと述べた。レズニコフ氏は、バイデン氏の発言を深刻には受け止めておらず、榴弾砲や戦車の場合と同様、時間がたてば、支援国が折れる可能性があると指摘した。「我々が要請を出したとき、最初はすべてノーという答えが返ってくる。だが、いずれ近代的なジェットプラットフォームを入手できると確信している」と指摘」

     

    ウクライナは、米国がF16戦闘機の供与に「ノー」としたことに落胆していないという。米国は、一度は断るが二度、三度の交渉で受け入れているからだ。戦車の提供と同様に、最終的にはF16を供与してくれるものと期待している。

     

    (4)「マクロン氏は、オランダのルッテ首相との会談後の記者会見で「我々は、噂ではなく、ウクライナからの要請に基づいて判断する」と語った。ウクライナ政府は高度な中距離防空システム「SAMP-T」を手に入れるためにフランス、イタリア両政府と交渉に入っている。これは米国の地対空ミサイルシステム「パトリオット」と似たシステムで、弾道ミサイルを撃ち落とすことができる」

     

    マクロン氏は、ウクライナの要請には現実的対応をするとしている。可能な場合は、積極的に応じるというもの。

     

    (5)「防衛アナリストは、マクロン氏が戦闘機の供与を決めた場合、フランスは戦闘機「ミラージュ」の古いモデルをウクライナに送ると予想している。ミラージュは仏ダッソー・アビアシオンによって製造されており、フランスは昨年の年初時点で「ミラージュ2000」を106機運用していた。全機が2030年までに第5世代の戦闘機「ラファール」に置き換えられることになっている」

     

    フランスは、「ミラージュ2000」を106機運用しているが、全機が2030年までに第5世代の戦闘機「ラファール」に置き換えられる。この退役戦闘機「ミラージュ2000」を順次、ウクライナへ供与する可能性を示している。

     

    (6)「フランスは昨年6月に、「ミラージュ2000C」を14機退役させた。これらをウクライナに供与すればフランス軍の能力は落ちない。今後数年で、さらに26機の要撃機「ミラージュ2000-5」を段階的に退役させる予定になっている。フランスは戦闘機を自国で生産していることから、輸出に当たって第三者の承認を得る必要がない。欧州数カ国の軍隊がF16を運用しているが、これらの戦闘機をウクライナに送るには米国からの承認が必要になる。前出の欧州当局者の一人は、そのためにフランス製戦闘機が明らかな候補になると語った」

     

    フランスは、退役した「ミラージュ」をウクライナへ供与しても良いという可能性を示している。すでに退役した「ミラージュ」14機が候補になるか、だ。

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    ウクライナ軍は、デジタル機器を利用してロシア軍に対抗し、戦線を有利に動かしている。ロシア軍にはそうした敏捷さがなく、兵士が最前線で携帯を使用して、自らの位置をウクライナ軍に察知され砲撃される事態を招いている。

     

    ロシア国防省は1月2日、昨年12月31日に数百人の新規動員兵の拠点が砲撃を受け、兵士63人が死亡したと発表した。その後、死亡者は80名以上に増えたが、原因はロシア兵が携帯を使用したこととされている。改めて、ロシア軍の規律が乱れていると指摘されているのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月7日付)は、「ロシア軍のミス、ウ駐留部隊を危険にさらすー軍事専門家」と題する記事を掲載した。

     

    軍事アナリストによると、ロシア軍は占領下のウクライナで基本的なミスを繰り返し、自軍兵士を危険にさらしている。ウクライナ軍の大砲の射程内にあるにもかかわらず、自軍部隊の集中地域で携帯電話を使用停止にしなかった、などのミスを犯しているという。

     

    (1)「直近の事例では、ウクライナ東部ドンバス地域のマキイフカ市で、ロシア軍動員部隊の拠点がウクライナ軍に破壊されたケースが挙げられる。米国の駐欧州陸軍の元司令官で、開戦以来ウクライナでのロシアの作戦に批判的なベン・ホッジス氏は「ロシア軍は学習する組織ではない」と指摘。「学ぶためには、まず自分が間違っていたことを認める必要があるが、そのような文化はない」と述べた」

     

    ロシア軍は、これまでのウクライナ侵攻で10万人以上の犠牲が出ている、とされている。このため、実戦経験豊富な将校や下士官を失っており、新規募集の兵士が前線へ出ても基本的事項が徹底されていない憾みがあろう。この意味でも、ロシア軍の態勢立て直しは極めて困難になっている。

     

    (2)「ロシア国防省は2日、数百人の新規動員兵が集結していた拠点が昨年12月31日に砲撃を受け、兵士63人が死亡したと発表した。米国がウクライナに供与した高機動ロケット砲「ハイマース」による攻撃だという。ロシア軍とつながりがあるテレグラムチャンネル「リバル(Rybar)」は3日、この攻撃で「100人超のロシア兵が死亡した」と述べた。ウクライナ国防省は自軍による攻撃とは明言しなかったが、兵士400人が死亡、300人が負傷したと発表した。どちらの発表が実際の数字に近いとしても、ロシア軍が昨年2月24日にウクライナに侵攻して以降、自軍に最大級の犠牲者が出た攻撃になったとみられる」

     

    ロシア軍兵士の宿舎近くに、弾薬庫があったとされる。最前線における緊張感が、欠如していたと指摘されている。これも、有能な将校や下士官の不足がもたらした結果であろう。

     

    (3)「ロシア軍のブロガーや親ロシア派の情報筋からの報告では、いくつかの重大な不手際が指摘されている。特に重大なのは、ウクライナ軍の精密な大砲の射程内に多くの部隊をとどめてしまったことだ。砲撃を受けた拠点は、前線から10マイル(約16キロ)も離れていないところにある。兵舎は弾薬庫の隣にあったとみられる。弾薬庫は2次爆発を起こし、兵舎は倒壊した。オープンソースの情報では、兵士による携帯電話の使用が停止されていないため、部隊が集中していることをウクライナ軍に特定される恐れがあるとも指摘されていた。さらに、親ウクライナ派のパルチザン(ゲリラ戦を展開する非正規部隊)がこの兵舎の特定を手助けした可能性を示唆するブロガーもいた」

     

    ウクライナ軍は情報機器を使って、ロシア軍の動静を探っている。NATO軍からの情報もオンラインで入手できるなど、ロシア軍攻撃では至れり尽くせりの状況だ。ロシア軍は、こういう状況認識が甘かったと言える。

     

    (4)「ウクライナ軍の攻撃を受けた原因として、携帯電話の使用に関する規律欠如が挙げられたのは初めてではない。ウクライナ軍は最近、ヘルソン州のロシア占領地域のサヒ付近(ヘルソン市から20マイル弱)にあるロシア特殊部隊の拠点を攻撃した。ある兵士のソーシャルメディアへの投稿がきっかけで、この拠点が容易に特定されたためだった。攻撃後には同じ兵士が破損施設の写真を投稿しており、ウクライナ側が攻撃の成果を確認するのに役立った可能性がある。これらの投稿例は、米シンクタンク「外交政策研究所(FPRI)」のロブ・リー上級研究員がツイートした」

     

    ロシア兵の士気が緩んでいることは確かだ。大義のない戦争に狩り出された不満が、こういう形で噴出しているのであろう。戦場の様子が、SNSに 登場するとは考えられない時代になったものだ。

     

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