中国の習近平国家主席は7日、訪中した欧州連合(EU)のミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長と北京の釣魚台国賓館で会談した。EUと協力して中国の広域経済圏構想「一帯一路」を進める意向を示した。だが、イタリアは12月3日、一帯一路離脱を正式文書で通告した。理由は、イタリアの対中貿易赤字が倍増していたことだ。中国が、貿易赤字圧縮の努力をしなかったことが「破局」を迎えた理由だ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月7日付)は、「中国・EU首脳会議、欧州側は厳しい姿勢」と題する記事を掲載した。この記事は、会談前に報じられたが、EU側の基本姿勢が滲みでている。
欧州連合(EU)指導部は、中国の習近平国家主席に対し、中国政府が経済摩擦への対応を進めなければEUとして新たな制裁や貿易規制措置を設ける用意があると警告する予定だ。また、ウクライナでの戦争でロシア軍が使用している物資の輸出抑制も求めるという。北京で7日に開かれる首脳会議を前に、EU当局者らが明らかにした。
米国政府が中国との緊張緩和に向けて動く中、欧州と中国政府との緊張は高まっている。EU指導部が6日に中国に向け出発する中、イタリア政府は同国が「一帯一路」構想から離脱すると正式に中国政府に伝えたと述べ、双方の対立が深まっていることを示した。また英政府も6日、戦争に関連するロシアの製造業を支えたとして、中国企業に対し初の制裁措置を発表している。
(1)「首脳会議では、習氏と李強首相がウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長およびシャルル・ミシェルEU大統領と会談する予定。EU当局者らは、中ロの協力関係を最優先議題に取り上げると述べ、ガザ地区のパレスチナ人にさらに多くの人道支援を提供するよう中国に働きかける意向だとした。また貿易面では、中国で生産された商品が低価格でEUやその他の地域に輸出され、域内生産者が影響を受けているとし、過剰な供給の問題を取り上げる見通し」
中国が、国内不況の突破口として輸出ドライブを掛けている。それだけに、EU側は、中国に対して安易な妥協が許されない状況である。
(2)「EU側は中国政府に対し、こうした生産に歯止めをかけるよう説得を試みるとみられる。EU高官は、これが成果を挙げられなければ、EUとして貿易規制措置を設けるかもしれないと述べた。このような措置は最終手段になるとみられている。EUの対中貿易赤字は4000億ドル(約59兆円)を突破し、ここ2年間で約2倍に膨れ上がっている。こうした状況について欧州政府当局者は、持続不可能なものだとみている。また、この状況には、中国における欧州企業の進出を妨げる障壁と中国政府の補助金の両方が反映されているとしている」
EUの対中貿易赤字は、4000億ドル(約59兆円)を突破。ここ2年間では、約2倍にも膨れ上がっている。それだけに、中国側の輸入増を迫っている。だが、中国の景気不振で輸入が低迷している。
中国の輸入は11月に予想に反して減少した。新型コロナウイルス禍の影響で大きく落ち込んでいた前年同月の水準さえも割り込んだ。中国経済がなお底入れしていないことを示唆している。中国税関総署が7日発表した11月の輸入は、ドルベースで前年同月比0.6%減少。エコノミスト予想中央値は3.9%増だった。こうした予想を下回る状況だけに、対EU輸入を増やすことは難しくなっている。
『日本経済新聞 電子版』(12月7日付)は、「習近平氏、一帯一路『中・欧共同で推進』EU首脳と会談」と題する記事を掲載した。
中国の習近平国家主席は7日、訪中した欧州連合(EU)のミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長と北京の釣魚台国賓館で会談した。EUと協力して中国の広域経済圏構想「一帯一路」を進める意向を示した。一帯一路を巡っては、イタリアが経済的恩恵が乏しいと判断し中国側に離脱を通知した。中国は離脱の動きが加速しないよう欧州のつなぎ留めを図る。
(3)「習氏は会談で一帯一路について「150カ国以上に具体的な利益をもたらした」と強調した。EUが進めるインフラ投資戦略との融合も含め「一帯一路の質の高い共同建設を推進し、発展途上国の成長を支援したい」と語った。一帯一路の公式サイトによると、EU加盟国はオーストリアやハンガリー、ポーランドなどイタリアを除いて17カ国が参加している。習氏は中EUの経済関係に関し「高度に補完的だ。双方は利益共同体の絆を強めるため努力すべきだ」と唱えた。「共通の発展を実現するため、EUを経済・貿易や科学技術、産業サプライチェーン(供給網)のパートナーにしたい」と呼びかけた」
中国は、EUとの貿易不均衡問題には触れず、一帯一路を売り込んだことがわかる。EU加盟国では、オーストリア・ハンガリー・ポーランドなど17カ国が参加している。これら「残留組」の離脱を恐れているのだ。ただ、貿易不均衡という形で不利益を被れば、いずれはイタリアに続いて脱退となろう。