勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:EU経済ニュース時報 > EU経済ニュース時評

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    中国企業は、半導体製造装置の部品の買いだめに余念がない。これは欧米や日本の業者に膨大な利益をもたらしていると同時に、不穏な兆候でもある。23年の世界の半導体装置売上高は、前年比6.1%減の1010億ドルだったと試算されている。だが、中国の税関データによると、23年の半導体装置輸入額は前年比14%増の約400億ドル(約6兆円)に達した。中国は、23年の世界半導体装置の4割を購入したことになる。 

    ここから浮かび上がるのは、中国の半導体戦略である。先端半導体は製造できなくても、レガシィー(成熟)半導体で世界市場を支配しようとする狙いである。 

    『ブルームバーグ』(3月19日付)は、「EU、中国製『レガシー半導体』のリスク調査を検討ー米国に続くか」と題する記事を掲載した。 

    欧州連合(EU)は域内企業による中国製「レガシー半導体」の使用がどの程度広がっているかについて正式調査を検討している。米国はEUに先立ち、これら半導体が国家安全保障と世界のサプライチェーンに及ぼし得る潜在的リスクについて注意喚起し、調査を開始した。レガシー半導体とは古い世代のプロセス技術で製造される半導体である。

     

    (1)「ブルームバーグが確認した声明草案によると、EUはこうした半導体が産業ネットワークにどれだけ深く組み込まれているかについて調査を実施するかどうか検討している。最先端ではないが、電気自動車(EV)からインフラに至る幅広い業界や軍にとって極めて重要なレガシー半導体に依存するリスクを調査しているバイデン政権の動きと一致する」 

    中国は、西側諸国と価値観の基準が異なっている。西側を「出し抜く」ことで優位な立場に立つことを目指しているのだ。現在のレガシィー半導体の増産体制構築には、目的があるはずだ。世界のレガシィー半導体市場で、3割のシェア確保を目指していると推測されている。 

    (2)「EUの行政執行機関である欧州委員会が調査に乗り出せば、規制を含む米国との共同の取り組みへの第一歩となる可能性がある。米国は、中国のこの分野への投資拡大で、太陽光発電や鉄鋼分野のように中国企業が供給を独占するのではないかと懸念している。同声明草案は、「EUと米国は、非市場的な政策や慣行に関する公開情報や市場情報の収集と共有を継続し、計画されている行動について協議することを約束する」としている。同草案はまだ最終版ではない。4月にベルギーで開催される米・EU貿易技術評議会(TTC)に提出される見込み」 

    米国はすでに、こうした中国の動きに警戒観を示している。これに対抗すべく、日台が世界のレガシィー半導体の主要生産基地になるという構想だ。米国が、日本半導体再興へ協力を惜しまない背景には、こうした中国への牽制が隠されている。

     

    日本経済新聞 電子版』(2月6日付)は、「半導体の生産再編、日本が受け皿に 対中で経済安保強化」と題する記事を掲載した。 

    半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、熊本県に第2工場の建設を発表した。日米欧は対中国をにらみ半導体サプライチェーン(供給網)の再構築を進めてきた。トヨタ自動車も加わる新たな枠組みで日台が協力を深め、経済安全保障を強化する。 

    (3)「日本は自動車産業などで先端品を含む半導体需要が見込める。欧米に比べて生産コストや補助金制度などの条件面も優位に立ち、半導体の生産再編の受け皿になっている。熊本第2工場は国内で最先端となる回路線幅6ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体などの生産を予定する。製品の性能や投資規模は第1工場を上回る。第1工場の順調な立ち上げも第2工場の計画を後押しした。第1工場は当初予定通り24年10〜12月の量産開始を見込む。TSMCが建設を決めた日米欧の工場のなかで最も早く立ち上がる」 

    TSMC熊本第一工場建設は、日台の半導体協業関係を強固なものにした。TSMCは、台湾を先端半導体製造基地にし、レガシィー半導体は日本で生産するという方針が浮かび上がっている。日本が、立地的に半導体増産体制を構築しやすい条件を擁しているからだ。

     

    (4)「米中対立が本格化して以降、日米欧は経済安保の観点から、半導体受託生産で世界シェアの50%超を握るTSMCの工場誘致を進めてきた。日本は補助金支給で欧米に先行し、人手不足のなかでもスケジュール通り工場建設を進めた。1号案件がTSMCの熊本第1工場だ。経産省が構想から関与し、最大4760億円の補助金を用意して誘致した。工場で使う工業用水の整備費用の補助などインフラ支援も検討する。経産省は第2工場向けに最大7700億円の予算を用意する。自動運転向けなどの先端品を輸入に頼らざるを得ない状況を改善する狙いがある」 

    日本にとってTSMC誘致は大きな意味を持つ。半導体再興への足場を築くことになるからだ。日本は、半導体製造装置・半導体素材という一貫生産体制を構築している。この強みは、絶対的なものである。 

    (5)「バイデン米政権は対中国を念頭に、日欧や韓台と連携して半導体サプライチェーンの再構築を進めてきた。目玉の一つである「TSMC誘致」の進捗は日本が先行する形となった。TSMCは最先端半導体の研究開発や量産について、今後も台湾で続ける方針を示している。半面、台湾の一極集中は限界を迎えている。日米欧の政府や産業界が生産拠点の分散を求めるだけでなく、台湾で働き手や電力を確保することが難しくなっている。最先端品は台湾を拠点とし、それ以外は日本をはじめ海外生産を広げる見通しだ」 

    日本が、かつての「半導体王国」であった歴史は、ふたたび世界半導体の頂点に立てる潜在的な条件を持つことを意味する。その可能性が強まってきたのだ。

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    中国の習近平国家主席は7日、訪中した欧州連合(EU)のミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長と北京の釣魚台国賓館で会談した。EUと協力して中国の広域経済圏構想「一帯一路」を進める意向を示した。だが、イタリアは12月3日、一帯一路離脱を正式文書で通告した。理由は、イタリアの対中貿易赤字が倍増していたことだ。中国が、貿易赤字圧縮の努力をしなかったことが「破局」を迎えた理由だ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月7日付)は、「中国・EU首脳会議、欧州側は厳しい姿勢」と題する記事を掲載した。この記事は、会談前に報じられたが、EU側の基本姿勢が滲みでている。

     

    欧州連合(EU)指導部は、中国の習近平国家主席に対し、中国政府が経済摩擦への対応を進めなければEUとして新たな制裁や貿易規制措置を設ける用意があると警告する予定だ。また、ウクライナでの戦争でロシア軍が使用している物資の輸出抑制も求めるという。北京で7日に開かれる首脳会議を前に、EU当局者らが明らかにした。

     

    米国政府が中国との緊張緩和に向けて動く中、欧州と中国政府との緊張は高まっている。EU指導部が6日に中国に向け出発する中、イタリア政府は同国が「一帯一路」構想から離脱すると正式に中国政府に伝えたと述べ、双方の対立が深まっていることを示した。また英政府も6日、戦争に関連するロシアの製造業を支えたとして、中国企業に対し初の制裁措置を発表している。

     

    (1)「首脳会議では、習氏と李強首相がウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長およびシャルル・ミシェルEU大統領と会談する予定。EU当局者らは、中ロの協力関係を最優先議題に取り上げると述べ、ガザ地区のパレスチナ人にさらに多くの人道支援を提供するよう中国に働きかける意向だとした。また貿易面では、中国で生産された商品が低価格でEUやその他の地域に輸出され、域内生産者が影響を受けているとし、過剰な供給の問題を取り上げる見通し」

     

    中国が、国内不況の突破口として輸出ドライブを掛けている。それだけに、EU側は、中国に対して安易な妥協が許されない状況である。

     

    (2)「EU側は中国政府に対し、こうした生産に歯止めをかけるよう説得を試みるとみられる。EU高官は、これが成果を挙げられなければ、EUとして貿易規制措置を設けるかもしれないと述べた。このような措置は最終手段になるとみられている。EUの対中貿易赤字は4000億ドル(約59兆円)を突破し、ここ2年間で約2倍に膨れ上がっている。こうした状況について欧州政府当局者は、持続不可能なものだとみている。また、この状況には、中国における欧州企業の進出を妨げる障壁と中国政府の補助金の両方が反映されているとしている」

     

    EUの対中貿易赤字は、4000億ドル(約59兆円)を突破。ここ2年間では、約2倍にも膨れ上がっている。それだけに、中国側の輸入増を迫っている。だが、中国の景気不振で輸入が低迷している。

     

    中国の輸入は11月に予想に反して減少した。新型コロナウイルス禍の影響で大きく落ち込んでいた前年同月の水準さえも割り込んだ。中国経済がなお底入れしていないことを示唆している。中国税関総署が7日発表した11月の輸入は、ドルベースで前年同月比0.6%減少。エコノミスト予想中央値は3.9%増だった。こうした予想を下回る状況だけに、対EU輸入を増やすことは難しくなっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月7日付)は、「習近平氏、一帯一路『中・欧共同で推進』EU首脳と会談」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は7日、訪中した欧州連合(EU)のミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長と北京の釣魚台国賓館で会談した。EUと協力して中国の広域経済圏構想「一帯一路」を進める意向を示した。一帯一路を巡っては、イタリアが経済的恩恵が乏しいと判断し中国側に離脱を通知した。中国は離脱の動きが加速しないよう欧州のつなぎ留めを図る。

     

    (3)「習氏は会談で一帯一路について「150カ国以上に具体的な利益をもたらした」と強調した。EUが進めるインフラ投資戦略との融合も含め「一帯一路の質の高い共同建設を推進し、発展途上国の成長を支援したい」と語った。一帯一路の公式サイトによると、EU加盟国はオーストリアやハンガリー、ポーランドなどイタリアを除いて17カ国が参加している。習氏は中EUの経済関係に関し「高度に補完的だ。双方は利益共同体の絆を強めるため努力すべきだ」と唱えた。「共通の発展を実現するため、EUを経済・貿易や科学技術、産業サプライチェーン(供給網)のパートナーにしたい」と呼びかけた」

     

    中国は、EUとの貿易不均衡問題には触れず、一帯一路を売り込んだことがわかる。EU加盟国では、オーストリア・ハンガリー・ポーランドなど17カ国が参加している。これら「残留組」の離脱を恐れているのだ。ただ、貿易不均衡という形で不利益を被れば、いずれはイタリアに続いて脱退となろう。

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    EU(欧州連合)は9月、中国製EV(電気自動車)の輸出急増問題をめぐってダンピング疑惑で調査する旨を発表した。これに対して、中国は「EUの保護貿易化」として猛烈な反発をみせたが、その後はやや沈静化に向っている。中国は、欧州との全面的対立に陥らないように自制している様子が窺える。

     

    ここで、EUと全面的な対立になると、すでに米国との対立が厳しい局面にあるだけに、せめてEUとは正常な関係を維持したいという外交的な狙いが透けて見えるのだ。

     

    『ロイター』(10月4日付)は、「中国商務省、EUのEV補助金調査に「強烈な不満」表明」と題する記事を掲載した。

     

    中国商務省は4日、欧州連合(EU)が正式に開始した中国製電気自動車(EV)の補助金調査を巡り、EUが中国側に「非常に短期間」の協議を要求したとの不満を表明した。

     

    (1)「同省は、EUの補助金調査について「強烈な不満」を表明。証拠が不十分で、世界貿易機関(WTO)のルールに合致しておらず、中国側に十分な協議資料が提供されていないと主張した。自国企業の権利と利益を守るため、欧州委員会の調査手続きに細心の注意を払うとしている。またEUに対し、グローバルな供給網の安定と中国・EUの戦略的パートナーシップを守るよう要請。貿易上の是正措置は「慎重に」適用すべきだと訴えた」

     

    EUが、中国のEVに対する補助金調査を始めたことに対して、中国商務省は「強烈な不満」を表明した。これまで、EUに対して「対抗手段を取る」と威嚇してきたが、今回はそういう「物騒」な言葉も消えて冷静な姿勢をみせている。

     

    (2)「補助金調査の正式開始は、EUの官報に発表された。官報によると、中国は事前に協議に招かれていた。協議が行われた時期は不明。官報は、中国のメーカーが補助金の恩恵を受け、EUの産業が損害を被っていると主張。具体的には助成金交付、国有銀行による優遇ローン、減税、税還付、免税が行われているほか、国が原材料・部品などの財・サービスを適切な水準を下回る価格で提供していると指摘した」

     

    EU発表の官報によれば、「中国のメーカーが補助金の恩恵を受け、EUの産業が損害を被っていると主張」している。具体的には、助成金交付、国有銀行による優遇ローン、減税、税還付、免税が行われているほか、国が原材料・部品などの財・サービスを適切な水準を下回る価格で提供している、と指摘している。

     

    地方政府は、①工場建設で助成金を提供する。②借入資金には優遇金利を適用する。③減税・税還付・免税を行う。④國が、原材料・部品などの財・サービスを適切な水準を下回る価格で提供している。これらの項目をみると、「おんぶに抱っこ」という至れり尽くせりの「サービス」を施しているのだ。これらの事実がすべて明らかになると、中国製EVは、世界市場で総スカンを受けることになろう。

     

    中国商務省は、EUが前記の項目を中心にして調査に入ることを前提にすれば、従来のような「威嚇発言」を控えざるを得まい。後で、取り返しのつかない事態になるからだ。

     

    『東洋経済オンライン』(9月21日付)は、「EUが『中国製EV』の補助金に関する調査に着手」題する記事を掲載した。これは、中国『財新』記事の転載である。

     

    中国製EV(電気自動車)のヨーロッパ市場向け輸出が規制される可能性が出てきた。EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は9月13日、欧州議会での施政方針演説のなかで、中国製EVへの補助金に関する調査に着手すると明らかにした。

     

    (3)「フォンデアライエン氏が非難した中国製EVの(不当な)低価格と巨額の補助金について、中国の自動車業界からは反論の声が上がっている。「中国製EVの輸出先での販売価格は、中国国内での販売価格より明らかに高い。(不当な)安売り行為は存在しない」。財新記者の取材に応じた複数の業界関係者は、そう口をそろえた。例えば、国有自動車最大手の上海汽車集団が傘下の「MG」ブランドで販売しているグローバルモデル「MG4」は、ベースグレードの希望価格が中国では11万5800元(約233万円)なのに対し、ドイツでは3万2312ユーロ(約510万円)と2倍を超える高さだ」

     

    ここでは、中国が買収した「MG」という英国老舗自動車企業ブランドを使って、EUで売り込んでいる。これは、EUにとっては「不公正」というイメージで反発している。EUでは、中国価格よりも高値で販売しているとしているが、いずれ調査で真偽のほどが分る。

     

    (4)「ある中国の自動車業界の専門家は、中国製EVの優れたコストパフォーマンスは生産のスケールメリットや(EVの主要部品のほとんどが中国国内で調達できるという)サプライチェーンの優位性などで形づくられたものであり、「政府の補助金によるものではない」と語気を強めた」

     

    中国EVは、政府の補助金によるものでなく、と自らのコストパフォーマンスの良さを自慢している。これも、EUの調査結果で判明するはずだ。

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    中国は、EU(欧州連合)が中国製EV(電気自動車)への政府補助金支給状態を調査すると発表した時、猛反発して対抗策をちらつかせた。その後、強硬発言は姿を消しており、話合い路線へ転換した模様だ。EUをさらなる反中国へ追いやれば、米中対立の緩衝役を失うリスクを考慮し始めたとの指摘が出ている。 

    この裏には、「親中派」とみられるフランスが、最も強硬に中国製EVのEU進出を警戒していることが明らかになった事情も働いている。フランスは、ドイツとともに自動車が主力産業だけに割安な中国製EVに警戒姿勢を強めている。 

    『ブルームバーグ』(9月28日付)は、「中国、EV補助金調査巡りEUとの正面衝突回避ー対外関係修復探る」と題する記事を掲載した。 

    欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会は今月、中国製の電気自動車(EV)を対象に補助金の調査を始めると発表した。その直後に欧州委のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)が北京を訪れたが、EUの一部では中国側が激しく反発し報復をちらつかせるとの想定もあった。

     

    (1)「EU側が目にしたのは、9000億ドル(約135兆円)規模に上る欧中経済関係を悪化させるような攻撃的な論調を控える習近平政権のスタンスだ。EUと対話し、約束を交わす用意があることが分かった。中国の何立峰副首相は補助金調査について「懸念と不満」を表明する一方で、金融サービスや貿易規制を含む幾つかの作業部会を設置することに同意した。中国経済が低迷している中で、中国政府が貿易パートナーとの関係を慎重に扱おうとしているのは、地政学的な関係を安定させようとする幅広い動きの一環とみられる」 

    EUと中国との貿易関係では、中国が一方的な黒字を計上している。中国は、「不均衡な貿易関係」であることを知りながら、EU側の動きを恫喝で一蹴しようとした。中国は、この間違いに気づいて、融和路線へ転じたのであろう。 

    (2)「中国は、ここ数カ月でホワイトハウスの閣僚級高官計4人を北京に招き、習国家主席がバイデン米大統領と11月に会談する可能性を踏まえ、米国との作業部会を再開した。イタリアは習主席が旗振り役となって進める巨大経済圏構想「一帯一路」の協定から離脱する方針だが、習主席はイタリアとの「安定的」な関係を促進すると26日に約束した。中国の王毅外相は27日、ハンガリーのシーヤールトー外務貿易相との電話会談で、EUに対しより開かれた中国政策を採用するよう働きかけるよう求めた。中国との関係が悪化していたオーストラリアは、2020年の最悪期から関係改善が進んだことを示すためアルバニージー豪首相が近く中国を訪問する可能性が高い」 

    中国は、自国経済の悪化に加えてさらなる紛争拡大を望まないという外交姿勢を見せ始めている。一方では、日本へは高姿勢である。これは、欧米側と融和スタンスを見せていることで日本へ高姿勢になってバランスを取ろうとしているに過ぎない。逆に欧米とギクシャクすれば、日本接近という構図だ。常に、「天秤外交」で利益を得ようとしている國だ。

     

    (3)「欧州外交問題評議会アジアプログラムの政策フェロー、アリッチャ・バチュルスカ氏は中国の経済政策について、「保護主義色が強まるとともに安全保障を重視している」と分析。「EUとの関係修復が急務であることを中国政府は自覚している」と述べ、「そのため、レトリックが比較的穏やかになった」と指摘した。欧州委が中国製EVの補助金調査を発表すると、中国政府は当初、「露骨な保護主義」だとEUを非難。そのため欧州では、中国が過剰に反応し貿易戦争を引き起こしかねないとの懸念が高まったという」 

    中国は、対EU貿易で大幅黒字を得ている。その大事な「顧客」に当たるEUへ、暴言混じりの高姿勢を取ることは、誰がみても異常である。中国も、そのことに気づいたに違いない。 

    (4)「ドムブロフスキス氏の4日間にわたる訪中の際、中国はそうした批判を公には繰り返さなかった。同氏はウクライナでの戦争に対する中国の姿勢は良い投資先としてのイメージを損なうものだと批判し、貿易不均衡を是正するため欧州はより強い姿勢で臨まざるを得ないと中国側に伝えた」 

    欧州委のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)は、中国の痛いところを突いている。EUの本音を聞かされた中国は、事態の深刻さに気づいて後退したに違いない。この裏には、フランスの強硬姿勢も伝わったのであろう。

     

    『ブルームバーグ』(9月26日付)は、「EUの対中強硬シフト、フランスが主導-域内産業への打撃警戒」と題する記事を掲載した。 

    欧州連合(EU)が中国に対しこれまで以上に厳しい新たなアプローチを始めている。背景にあるのが、中国政府の貿易慣行が欧州の基幹産業に重大な脅威をもたらし始めたというフランスの懸念だ。 

    (5)「EUの対中強硬スタンスの形成に重要な役割を果たしているのがフランス政府だと、同国の考えをよく知る関係者は指摘する。今何もしなければ、EUの域内経済は長期的なダメージにさらされる方向に進むと仏政府は警戒している。欧州は約10年前、中国からの安価な輸入品流入によって太陽光発電関連の生産が大打撃を受けた。匿名を条件に述べた複数の当局者によれば、念頭にあるのはこうした状況が再び起き得るとの懸念で、当局者の1人は欧州の自動車業界が同じような道をたどる恐れがあるとみているという」 

    中国は、EUの太陽光発電設備生産を中国製で駆逐してしまったという「すねに傷持つ」身である。EUから、この点を蒸し返されると返す言葉がない。さらに、フランスの強硬姿勢を伝えられ、話合い路線を求め始めたのであろう。

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    欧米は、中国のEV(電気自動車)に神経を使っている。これまで、自動車は欧米が独占的な強みを発揮してきたが、EV登場でこの構図が狂い始めている。中国が、政府補助金をテコに輸出攻勢を掛けているからだ。

     

    欧州の雇用先は、約6%が自動車産業である。それだけに、中国EVが欧州へ輸出ドライブを掛ければ雇用喪失問題が起ることは確実だ。これによって、社会不安を生んで極右の政治勢力台頭というリスクをはらんでいる。単なる経済問題を超えて政治問題へ発展する危険性が指摘されている。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(9月18日付)は、「中国EV台頭が米欧の保護主義招く」と題する記事を掲載した。

     

    「中国と自由に貿易をしよう。時間は私たちの味方だ」――。中国が2001年に世界貿易機関(WTO)への加盟を果たす前、当時の米大統領だったブッシュ氏(第43代)は自信を持ってこう発言していた。ところが、それから20年以上が経過した今、時間は中国の味方だったというのが西側の一般的な結論となっている。中国は習近平国家主席の下、むしろ閉鎖性と独裁主義を強めていった。米国に対しても強硬姿勢を鮮明にし、急速な経済成長を糧に軍事力の強化も進めた。

     

    (1)「米政策当局者の中には、中国のWTO加盟を認めたのは間違いだったとする向きもある。彼らは、中国はWTO加盟によって輸出を急拡大させることができたわけで、そのことが米国の産業空洞化に拍車をかけたとみている。そしてそれに伴い米国で格差が拡大したことがトランプ前大統領を登場させる一因につながった、と。この流れを踏まえると、厄介な疑問が浮上してくる。「グローバル化は、中国の民主主義を推進するどころか、米国の民主主義の弱体化をもたらしたのではないか」との見方だ。現状を踏まえれば、笑うに笑えない皮肉と言える」

     

    中国のWTO加盟を認めたのは失敗とする意見が、トランプ政権(当時)から強く出ていた。WTOには罰則規定がないので、中国はこの抜け穴探しを行ってきたという非難だ。

     

    (2)「欧州連合(EU)では、米国が先に保護主義へ傾き、自国の産業に多額の補助金を提供するようになったことに失望する声が多く上がっていた。しかしEUは9月13日、中国製の安価な電気自動車(EV)のEUへの流入を問題視し、中国政府によるEV産業への補助金提供が競争を阻害していないか調査すると表明した。このニュースは、EUも米国と同様の道を歩み始めたことを示している。米国の中国製自動車に対する関税は27.%だが、現時点のEUの同関税は10%と低い。しかし、もしEUが中国は自動車メーカー各社に不当な補助金を支給していると判断すれば、関税は大幅に引き上げられる可能性がある」

     

    中国が、WTO規則を無視する以上、保護貿易で対抗するほかない。これは、トランプ政権の見方であり、バイデン政権も引き継ぎ強化している。米国の中国製自動車に対する関税は27.%である。これによって中国EV輸入を防いでいるのだ。EUも、これに従うであろう。

     

    (3)「EUが、米国の後を追って実際に保護主義に傾くのであれば、それは米国と同じ理由による。つまり、中国のやり方は欧州の産業基盤、ひいてはその社会および政治の安定性をも脅かしつつあるという懸念だ。中でも自動車産業はEU、特にドイツにとって最も重要な産業で、EU経済の中核を成す。しかも自動車は欧州が世界をリードする数少ない産業分野の一つだ。売上高でみた世界4大自動車メーカーのうち、フォルクスワーゲン(VW)、ステランティス、メルセデス・ベンツ・グループの3社は欧州企業だ」

     

    自由貿易は理想型である。中国は、この抜け穴を利用して急成長したという認識が欧米に強いのだ。これは、ロシアのウクライナ侵攻への中国支援によって強くなっている。

     

    (4)「欧州委員会によれば、自動車産業はEUの全雇用者数の6%強を占める。その給与水準は往々にして比較的高く、ドイツなどにとっては自国のアイデンティティーにもなっている。それだけにこうした雇用が中国に奪われることになれば、それは政治的にも社会的にも大きな反発を招くことになる。ドイツでは極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持がすでに拡大しており、世論調査では2位の人気政党となっている。独自動車大手のBMWに代わって中国の自動車大手BYDの車がアウトバーンを走るようになり、国内の自動車業界が不振に陥れば、AfDへの支持がどうなるかは容易に想像できるだろう」

     

    ドイツでは、極右政党が支持率を高めている。ドイツ自動車業界が不振に陥れば、極右政党が跋扈するのは不可避であろう。民主主義を守るためにも、中国EV進出を阻止しなければならない。こういう論調が強くなっているのだ。

     

    次の記事もご参考に。

    2023-09-18

    メルマガ499号 中国、EUとEV「紛争予兆」 23%の高関税掛けられれば「経済は混乱」

     

     

     

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