勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:EU経済ニュース時報 > EU経済ニュース時評

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    EU(欧州連合)は、ウクライナ侵攻を早く止めるべく、ロシアからの原油輸入禁止措置を発表している。だが、原油価格の急騰もあって、ロシア貿易にはさほどの影響を与えていないとされている。ロシアの外務省報道官が、EUは原油禁輸で自分の足を撃っている、とまで言い出している。拳を挙げたEUは、メンツ丸つぶれだ。

     

    EUには奥の手が残っていた。タンカーへの保険業務は、欧州企業が一手で握っていることから、ロシア産原油を輸送するタンカーへ保険をつけないという手に出たのだ。

     


    米『CNN』(6月17日付)は、「ロシア、欧州以外への原油輸出もより困難に 運搬船の『保険』禁じた欧州の制裁」と題する記事を掲載した。

     

    EUが最近発表したロシア産原油輸入の9割禁止の措置は、ウクライナ侵攻以降のロシアに対する制裁で最も厳しい内容となった。だが、最近の制裁パッケージの中には、それと同じくらいの重要性を秘めた目立たない項目がある。ロシア産原油の運搬船に対する保険提供の禁止だ。

     

    (1)「ロシアは、毎日数十万バレルの原油の輸出先を欧州からインドや中国など別の買い手に振り向けているが、保険の禁止でそれが難しくなる可能性がある。一方で、こうした措置は世界の原油価格をさらに高騰させるリスクもある。市場調査会社ケプラーのアナリスト、マット・スミス氏は「保険の側面を標的に選ぶのは、ロシア産原油の流れを単に変えるのではなく、止めるために打つ手として最高だ」と語る。EUは実施まで6カ月の移行期間を置いた上で、EU企業がロシア産原油の第三国への輸送に保険を掛けたり、融資したりすることを禁止した。ロンドンの保険会社ロイズは、数世紀にわたり海上保険市場の中心的存在である。」

     


    海上輸送には、海上保険が不可避である。EUは、ロシア産原油の輸出を止めるために、タンカーに海上保険を付けさせない戦術を編み出した。海上輸送で保険がなければ、危険この上ない話になるからだ。

     

    (2)「海上輸送で欧州に輸入されるロシア産原油は、段階的な禁止が始まっている。だが、欧州の顧客は既に、供給の難しさや評判の毀損(きそん)を回避するため、輸入量を減らしている。 ケプラーのデータによると、欧州北西部への輸出量は1月の1日108万バレルから5月には同32万5000バレルにまでに減った。西側の圧力を受けてロシア側も減産し、4月には同国経済省が今年は17%の減産が見込まれると発表した」

     

    ロシア産原油の欧州北西部への輸出量は、1月から5月には3割減である。ロシア経済省は、今年17%の減産見込みである。EUの輸入禁止が、影響しているもの。

     


    (3)「アジア向けの輸出増が、こうした減少の大部分を補っている。中国とインドは大きな割引販売の利益を享受し、1月の1日17万800バレルから5月には同93万8700バレルへと輸入量を急増させた。前述のスミス氏は、侵攻から3カ月が過ぎてもロシアの原油輸出ペースは保たれていると指摘。「彼らは単にルートを変えて、新たな家を見つけただけだ」と話す。

     

    EUへの輸出減は、中国とインドがカバーしている形だ。この増加分を、海上保険の引き受け禁止で抑制したいと狙っている。

     

    (4)「今回の保険禁止は、こうした問題に狙いを定めたものだ。対象となる保険市場には再保険会社のネットワークも含まれ、そうした会社の多くが欧州企業となっている。保険の問題は、石油精製企業や輸入者だけの問題ではない。「無保険や保険不足の船舶は、主要な港や、ボスポラス海峡やスエズ運河といった海上輸送の要衝に入ることが許されない」。ドイツを拠点とするアナリストのセルゲイ・バクレンコ氏は、カーネギー国際平和基金に寄せた投稿でそう記した。 金融機関も、制裁違反に当たる行為を恐れている。万一違反すれば、規制当局から巨額の罰金を受ける可能性がある」

     

    下線のように、無保険や保険不足のタンカーは、海上輸送の要衝に入ることができないルールである。だが、ロシア政府は次のパラグラフで指摘するように、便法を講じるとしている。

     


    (5)「ロンドンのコンサルティング会社エナジー・アスペクツの地政学部門トップ、リチャード・ブロンズ氏は「これは精製企業やロシアの生産者だけが絡む取引ではない。こうした他の全ての関係者が存在する」と指摘する。一方ロシアは、保険の禁止に対抗して、国家保証を付与する方策で回避できると公言している。こうした保証は理論上、従来の保険の代わりに利用できるものとなる。ロイター通信は、国営ロシア国家再保険会社がロシア船舶の主要な再保険会社になると伝えた」

     

    ロシアは、国営ロシア国家再保険会社が、ロシア船舶の主要な再保険会社になる、としている。

     

    (6)「前ロシア大統領で安全保障会議副議長を務めるドミトリー・メドベージェフは、通信アプリへの投稿で、「この問題は解決できる」「保険の問題は第三国と国際的合意を結ぶフレームワークで、国家保証を通じて終結できる。ロシアは常に責任のある、頼りになるパートナーだ」と述べた。こうした回避策で、ロシアの輸送が完全に断たれる状況にはならなそうだ。前述のブロンズ氏も「(保険禁止は)破壊的なものとなるが、ロシアの全輸出を消し去るものにはならないだろう」と語る」

     

    ロシアは、国営ロシア国家再保険会社が保険引き受けするとしている。

     

    (7)「ロシアの提示する方法が、十分な解決策になると誰もが考えるわけではなさそうだ。特に、厳しい制裁を受けるロシアが、いざ保険金の支払いが必要な場面で本当にその能力があるのかという疑問はつきまとう。ブロンズ氏は「より多くの疑念が出てくるだろう。それが原因で購入を希望する国の範囲は狭まると考えられる」と語った」

     

    来年からロシアへの経済制裁は、その効果が現れてくる。その中で、保険金を支払えない局面が来ないとは限らない。最終的に、ロシアの国際収支状況が、保険金支払いを占う手段になろう。



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    紅二代と取引した習近平

    南太平洋で米に外交敗北

    欧州が人権問題で拒絶感

    未来に絶望する若者たち

     

    習近平氏は、生粋の毛沢東主義者である。若い時代から、強烈な民族主義者の薫陶を受けてきた。それゆえ、国家主席に就任した2012年以来、中国は大きく「左」へハンドルを切ることになった。

     

    中国経済は習氏によって、それまでの民営化を主体とし国有企業を補佐する「民進国退」を放棄して、国有企業主体の「国進民退」へと逆戻りすることになった。「民進国退」を推進した鄧小平路線とは当然、対立する構図である。その後の習氏は、ことごとく鄧を否定し、自らの実績を誇示することが増えた。

     


    不思議なのは、こうした路線変更が共産党内部で議論されないままに実施されていることだ。民主主義国では、選挙という国民の選択によって決まることが、中国では習氏を取り巻く少数の人々で決められている。それだけに、権力闘争の起こる基盤が存在する。習近平政権が、絶対に安泰と言えない背景に、こうした少数者による権力簒奪(さんだつ)のもたらす不安定性がつきまとうのだ。

     

    紅二代と取引した習近平

    習近平氏は、今秋に異例の「国家主席3選」を目指している。習氏には、国家主席就任当初から超長期政権を目指す狙いがあったと見られる。前述の「国進民退」には、中国共産党の古参幹部の子弟の支持を得る目的が隠されていた。国有企業は、古参幹部子弟が株主に名を連ねている。習氏は、この「紅二代」の利益を保証することで、支持を取り付けることに成功した。「国進民退」は、習氏の立身出世を保証する道具になった。

     

    習氏による立身出世の目的が、習氏の行なった政策の出発点である。習氏が、終身皇帝になるために「中華の夢」を語り、米国の世界覇権へ挑戦することがこれに彩りを添えた。世界覇権を実現するには、ロシアのプーチン氏との協力が不可欠である。国内的には、少数民族による紛争を封じ込めなければならない。新疆ウイグル族弾圧は、こういう背景で始まった。100万人単位での強制収容が、「第二のホロコースト」と非難されていることは周知の通りである。

     

    習氏は、今年2月にプーチン氏との「限りない友情」を誓い合う中ロ共同声明を発表した。これが、その後のロシアによるウクライナ侵攻で、西側諸国から習氏へ強い疑惑の目が注がれている。習氏が今後、台湾侵攻へ踏み切る手がかりにするのでないかという疑惑だ。もう一つ5月中旬に、新疆ウイグル族弾圧に関わる内部資料が写真付きで漏洩した。習氏が、新疆ウイグル族弾圧を指示した張本人であることを裏づけている。

     

    このように、期せずして習氏にとって極めて不利な事態が起こっている。習氏が、永久政権という毛沢東張りの欲望を持たなければ、起こらなかった事件であろう。これらによって、中国は欧米諸国から強い警戒感に曝されている。

     

    国内的には、ゼロコロナ政策によるロックダウンが、中国経済に重大な悪影響を与えただけでなく、中国の若い人たちに絶望感を与えた。共産党への信頼感が大きく崩れているのだ。このような「強権国家」で暮らすことへの疑問から、結婚・出産に疑念を深めている。結婚・出産に慎重になれば、出生率はさらに低下する。これが、中国経済を衰退に追い込むのだ。将来の中国問題は、今後の出生率が左右する。これについては、最後に取り上げたい。

     


    一国経済の潜在成長率を示唆する指標には、生産年齢人口がある。国際的には、15~64歳である。中国は、健康上の理由から15~59歳となっている。中国の生産年齢人口は、国際基準よりも5歳若く、その分を労働力として換算すれば、国際標準よりも約1割少なくなる計算だ。この事実は、意外と知られていないで、中国経済について過剰評価をもたらす理由になっている。

     

    中国基準の生産年齢人口が、総人口に占める比率は62.5%(2020年)である。米国の65.0%(同)をすでに下回っていることに目をとめていただきたい。この事実だけでも、中国が米国経済を追い越す可能性は、大きく後退している。

     

    さらに、前述のような習氏による「プーチン氏への友情」と「新疆ウイグル族弾圧」のもたらす欧米からの中国非難が、習氏を追詰める要因になってきた。とりわけ、これまで欧州は、中国へ親和姿勢を取ってきた。それが、習氏に関わる前記の二要因によって、「中国と縁切り」へ進む可能性が大きく膨らむ状況だ。習氏は、この厳しい現実を受入れなければならない。

     

    南太平洋諸国で外交敗北

    米中関係が、一段と悪化していることは今さら指摘するまでもなくなった。中ロ接近が、米国の警戒感を一段と高めることになったのだ。米国は、インド太平洋経済枠組(IPEF)に南太平洋諸国のフィジーまで参加させ14ヶ国が同じテーブルに着く。これに慌てた中国は、南太平洋諸国10ヶ国を対象にして、地域安全保障のような協定を申入れたが失敗した。

     

    米国と安保上の関係が深いミクロネシア連邦が、事前に公表した書簡で「地域の安定を脅かす」と反対を表明していたことが決め手になった。全会一致が、南太平洋諸国の決定ルールであることから、さすがの中国も引き下がらざるを得なかった。「札ビラ」で頬を叩く従来の中国外交スタイルが、功を奏さなかったのである。(つづく)

     

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    EU(欧州連合)は、昨年から中国との関係見直しに入っていた。その動きが、ロシアのウクライナ侵攻によって深められ、「中ロ枢軸」に対抗する姿勢を強めている。5月12日には、ミシェルEU大統領とフォンデアライエンEU委員長が初訪日する。11日には、フィンランドのマリン首相も訪日する。4月下旬には、ドイツのショルツ首相が就任後アジアで初の訪問先として日本を選んだ。

     

    これまで、欧州と日本は距離的な問題もあって、提携関係に深まりがなかった。だが、欧州の首脳が相次いで訪日する裏には、ロシアのウクライナ侵攻が関わっている。そのロシアは、中国と「限りない友情」を謳い上げた関係だ。「中ロ枢軸」の形成に動いている。こうして、中ロの接近が、EUと日本の提携強化という副産物を生んだのである。

     


    『日本経済新聞 電子版』(5月10日付)は、「EU大統領、日本との関係強化に意欲 中ロの対抗軸に」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)のミシェル大統領は日本経済新聞のインタビューで、EUや日本のような「民主主義のモデルがますます圧力にさらされているのは明らかだ」と述べた。ロシアや中国など強権国家を念頭に置いた発言だ。同じ価値観を共有する日欧が関係を一段と強化し、米国とともに中ロへの対抗軸を構築する考えを示した。

     

    (1)「フィンランドのマリン首相は、5月初旬の日本経済新聞のインタビューで、フィンランドと日本は「民主主義や法の支配など同じ価値観を共有している」と指摘。EU大統領ミシェル氏も同様の考えを示し、法の支配や多国間主義は「EUと日本が共に持つDNA」と語り、「日本との関係をできるだけ強化することがこれまで以上に重要だ」と訴えた」

     


    改めて、国家間のつながりを深まるかどうかのポイントは、DNA=価値観=文化の同一性という問題に帰着するであろう。経済的なつながりがあっても、それは表面的なものである。ドイツは、ロシアや中国と貿易関係を深め、それによって改革を推進できると考えていた。メルケル前首相には、こういう期待があったのだ。現実は、メルケル氏の期待と異なり、ロシアがウクライナを侵攻し、中国はそれを支持するという結果に終わった。所詮、DNAが異なるのだ。こういう結果になったのは、諦めるほかない。

     

    (2)「欧州が日本との関係強化に動くのは、ウクライナに侵攻して対立が決定的になったロシアだけが理由ではない。EUは2021年9月にインド太平洋戦略を公表し、日本などアジア太平洋の民主主義国・地域との安全保障や経済、気候変動など幅広い分野での関係強化を打ち出した。中国・新疆ウイグル自治区での強制労働や香港での人権問題を巡って対立した中国を視野に入れた戦略だ。EU・中国はウイグル問題を機に互いに制裁を科す事態に発展しており、20年12月に実質合意した投資協定案の批准に向けた手続きは止まっている。ミシェル氏は投資協定の近い将来の発効は難しいとの認識を示唆した」

     

    EUが、中国との溝を深めるきっかけは、香港への国家安全維持法導入と新疆ウイグル族の強制収容所問題である。ここに生まれた亀裂が、今回の中国のロシア支持である。もはや,修復不可能な事態まで進んでしまった。EUと中国とで結ばれた包括的投資協定は、EU議会で批准もされずに葬り去られる運命である。

     

    (3)「ウクライナ侵攻を巡っては、EUなど西側諸国は中国にロシアを説得する役割を期待していたものの、中国は曖昧な姿勢をとり続けている。ミシェル氏は日本との会談は「中国が果たす役割を話す場にもなる」と語り、地域の安定に向けて中国が一定の役割を果たすよう日本とともに求めていく考えを示した。ミシェル氏は基本的な自由やルールに基づく国際秩序を促進するために、パートナーとの協力関係を強化する必要性を説いた。ミシェル氏は台湾が「経済、金融面で重要だ」と話し、インドは自由貿易協定(FTA)交渉を再開し、「経済的な結びつきを強化することを話し合っている」と述べた」

     

    EUは、中国がロシアを説得するように日本と共に働きかけたいとしている。多分、不首尾に終わるであろう。習氏は、プーチン氏と共に米国覇権へ対抗する「青写真」を持ち続けるはずだ。習氏は、生涯の国家主席を夢見ている人物である。そのためにも,プーチン氏が不可欠な存在である。そのプーチン氏を諫めることなど論外である。

     


    (4)「フォンデアライエン欧州委員長は4月下旬にインドでモディ首相と会談。ショルツ独首相は6月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)にモディ氏を招待するなど、民主主義陣営の関係強化を図っている。米欧の軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO)も6月の首脳会議に日本を招待する意向と伝わる。インド太平洋に強い影響力を持つEUと米国の関係は、トランプ大統領時代に冷え込んだものの、バイデン政権発足後は改善している。「強力な経済力を持つEUはもっと積極的になる」とも述べ、経済力をテコに強権国家に対抗するとの見解も示した」

     

    EUは、インドとの関係強化に積極的である。インドは、中国と地政学的に対立しており、その延長線でロシアから武器を購入しているもの。この関係は、インドの独立以来続いている。インドが、他国から安定した武器購入が可能になれば、ロシアとの関係を希薄化させることは十分ありうる。米国は過去、インドへ辛く当ったこともあり目下、この点について「陳謝」しているところだ。 

     

     

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    中国は、習氏の国家主席3選を目指し国内基盤強化に躍起である。2月4日に交わした中ロ共同声明は、「限りない友情」を約束して国内政治に役立てる目的であった。後に起こったロシアによるウクライナ侵攻で、中ロ共同声明は実にタイミングの悪い外交文書になってしまったのである。

     

    そこで、国内からの批判をかわすために、声高にロシアへ「声援」を送らざるを得なくなっている。もっとも、米国からの制裁を恐れて、ロシアへ経済的・軍事的支援を封じられている。一段と声高な「声援」になっている面もあろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(5月1日付)は、「米中、ウクライナ危機で深まる溝」と題する記事を掲載した。

     

    米中がウクライナ危機を巡って溝を深めている。中国のロシアに対する軍事・経済両面の支援を米国は警戒し、中国は米国によるロシアへの経済制裁が世界経済に悪影響を及ぼすと主張。新冷戦に向けた流れが加速しかねない情勢だ。

     

    (1)「ブリンケン米国務長官は4月26日、米上院外交委員会の公聴会で、バイデン大統領が3月中旬に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と協議した際、「ロシアへの支援は中国の利益にならないし、制裁を弱体化させることにもならない」と伝えたと明らかにした。バイデン政権はロシアの特定の企業・銀行と貿易や金融の取引を禁じた。違反すれば外国企業や外国人も罰する「二次的制裁」が科され、制裁対象の企業・銀行と取引すれば中国にも制裁がおよぶ可能性がある。米側は対ロ支援を続ける中国への抑止効果に期待する」

     

    中国は、ロシアを支援すれば米国が「二次制裁」を課すと通告された。動くに動けない事態に追い込まれている。声高な声援は、その鬱憤晴らしと見るべきだろう。

     

    (2)「習近平(シー・ジンピン)指導部は米国主導の対ロ経済制裁に反対し、国内外で米国の責任論を広めている。中国共産党の機関紙、人民日報は3月下旬から4月中旬の党内部の声が反映されやすい重要コラム「鐘声」で「米国こそウクライナ危機を作り出した主犯だ」と批判した。北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を米国が「指導」し、ロシアがウクライナを攻撃せざるを得ないよう仕向けたとの持論を展開した」

     

    いかなる理由があろうとも、他国への侵略は許されない。中国は事実上、侵略戦争を認めていることになる。この中国が、国連常任理事国なのだ。仲裁役になるべき中国が、逆に戦争を煽っている形である。それほど,中国は冷静さを失っている。

     


    (3)「中国外務省の趙立堅副報道局長も22日の記者会見で、「ロシアとウクライナの衝突が発生して以降、米軍需大手の株価が驚くほど上がっている」と発言。「だれが対岸で火に油を注ぎ、漁夫の利を得ているのか皆がはっきり見ている」と話し、危機の原因は米国にあると一方的に決めつけた」

     

    米国は、まだウクライナへの武器供与した分の在庫補充をしていない。株価は、思惑で上昇したのであろう。中国株の低迷と比較して羨ましく見ているに違いない。

     

    危機の原因が米国にあるという中国の主張は、戦争を紛争解決手段として認めていることだ。これは、国連憲章に違反する発言である。自らの矛楯が分らないほど「興奮」状態にあるのだろうか。

     


    (4)「習指導部はウクライナ危機を巡り米欧とも距離を置く「中立国」を増やそうとしている。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は3月以降、中東や東南アジアの外相らと積極的に協議し、対ロ制裁に加わらないようにクギを刺してきた。3月31日には安徽省でイランのアブドラヒアン外相と会談。中国外務省によると、一方的な制裁を共同で阻止することで合意した」

     

    ロシアは、経済制裁によって武器の生産が間もなくできない事態になる。中国の購入しているロシア製武器の補修部品や弾薬が、供給されなくなるのだ。これは、中国にとって安全保障上の一大事である。中国は、ロシアと共に苦境に立たされるであろう。

     

    (5)「習指導部は米欧のロシア制裁は将来の台湾統一時に対中制裁にも「転用」されかねないとの警戒心がある。制裁の反対を唱えてロシアに貸しを作ると同時に、米国主導の対中包囲網が将来形成されないように布石を打つ思惑もありそうだ。中国内の団結を促す目的もある。国内ではロシアがウクライナに侵攻した直後、米欧と距離をとる習指導部の対応を疑問視する声が上がった」

     

    中国の台湾侵攻の際には、今回と同様に強烈な経済制裁が行なわれるはずだ。中国は、ロシアより一層、世界経済に組み込まれている。それだけに経済制裁の衝撃は大きいであろう。

     


    (6)「新型コロナウイルス対策で隔離が続く上海市などでは不満がたまりつつある。共産党幹部の人事を決める5年に1度の第20回党大会が今年秋に控えており、米国を悪者にして国内の結束を促し、習氏の3期目入りを確実にする思惑も透ける」

     

    米国批判によって、中国がロックダウンによる国民の不満を逸らすことは不可能だ。ロックダウンは、日々の生活を不便にしている政策である。米国批判とは異次元である。

     

    (7)「米国責任論の拡散は、米欧との緊張をさらに高めるリスクがある。習指導部は巨大な国内市場を武器に欧州を切り崩そうとしているが、欧州では中ロ結託への懸念が強まっている。中国が反対を唱える米中二大陣営による「新冷戦」への流れを自ら速めている面がある」

     

    欧州は現在、経済優先で中国へ接近してきたことを反省している。ウクライナ侵攻で、ロシアの肩を持つ中国に失望しているのだ。このことは、4月1日のEUと中国のオンライン・トップ会談で明確にされた。欧州は、何よりも安定を求める地帯である。EU(欧州連合)が結成された背景も、戦争根絶であった。それにも関わらず、ロシアが隣国を侵略した。ロシアに不満を持つと同時に、そのロシアを支援する中国にも強い不満を持っている。この際、中国は「沈黙が金」という諺を思い出すべきだ。

     

    テイカカズラ
       

    ロシア国営石油大手のロスネフチは、5月積み出し原油の入札を行なったが、入札者がゼロという異常事態に陥った。欧州の大手資源商社トラフィギュラが4月26日、ロシア産原油の調達を5月15日までに全面停止すると表明したことが理由だ。

     

    今回のロスネフチの入札は、商社が取り扱いを敬遠するようになった分の原油を自ら輸出するための試みだった。原油の輸出先を失うロシアは、経済的に大ピンチに陥る。ロシアの2021年予算のうち、45%が石油・ガス販売収入によるものと国際エネルギー機関(IEA)が分析している。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月27日付)は、「
    ロシア原油輸出に急ブレーキ、買い手つかず」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアはこのほど大量の原油を入札にかけたが、買い手がつかず失敗に終わった。国営石油大手に対して近く発動される制裁措置が足かせとなっており、ロシア経済の屋台骨であるエネルギー業界は苦境に追い込まれつつある。

     

    (1)「ロシアはウクライナへの侵攻を開始して2カ月間は、堅調なペースでエネルギー輸出を維持し、巨額の代金を受け取ってきた。ところが、ロシア国営石油大手のロスネフチはここにきてタンカー船を埋めるだけの十分な買い手を確保することができず、輸出に急ブレーキがかかった。事情に詳しいトレーダーが明らかにした。ロスネフチは先週、企業を招いて原油を入札にかけていた。トレーダーへの取材やウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した文書で分かった」

     


    ロシア国営石油大手のロスネフチは、ロシア経済最大の「納税者」とされている。そのロスネフチが、世界への輸出に急ブレーキがかかった。同社は、プーチン大統領の側近であるイーゴリ・セチン氏が率いるという。こうした状況はいち早く、プーチン氏の耳に入っているはずだ。

     

    (2)「今回の一件は、5月15日から導入される欧州の対ロスネフチ制裁が、ロシアの石油販売に影響を与え始めている初期の兆候と言えそうだ。ロスネフチへの措置は、ロシア産原油の全面禁輸には踏み込んでいない。とはいえ、欧州はいずれロシア産石油を全面禁止とする方向に向かっているとの見方は多い。欧州連合(EU)が3月半ばに明らかにした制裁措置では、企業に対してロスネフチの原油を欧州以外で再販することを禁じており、スイスも追随した。これにはウクライナ侵攻以降、ロシア産原油を買い占めているインドなど、アジアの大口買い手への販売も含まれる

     

    欧州の大手資源商社トラフィギュラは26日、ロシア産原油の調達を515日までに全面停止すると表明した。石油製品についても購入を大きく減らし、欧州の顧客が必要とする最低限の量に限定する。EUの対ロシア制裁では、5月後半以降に取引を原則禁じる対象にロスネフチが含まれており、この制裁に沿って関係を見直した。『日本経済新聞 電子版』(4月27日付)が報じた。

     

    EUは、ロスネフチの原油を欧州以外で再販することも禁じている。アジアの買い手は、ロシアから直接購入するほかない。

     


    (3)「ロスネフチの原油販売が行き詰まれば、西側の金融・商業分野からすでに総じて締め出されているロシア経済にはさらなる衝撃が及ぶだろう。ロスネフチによると、同社はロシア最大の納税者で、国家収入の約2割を占める。国際エネルギー機関(IEA)では、ロシアの2021年連邦予算のうち、45%が石油・ガス販売収入によるものだったと分析している。「石油販売ができなくなれば、(ロスネフチは)油井を閉鎖し始めなければならなくなる」。英オックスフォード・エネルギー研究所(OIES)のシニア研究員で、ロシア国営エネルギー大手ガスプロムの子会社で石油販売の責任者を務めていたアディ・イムシロビッチ氏はこう指摘する」

     

    ロスネフチの原油販売が行き詰まれば、2つの問題が起こる。

    1)国家歳入の45%を占める石油・ガス販売が減少すれば、戦争経済が行き詰まる。

    2)大量の原油を貯蔵できる施設がないので、油井を閉めざるを得ない。これが長期化すれば復旧が不可能になる。

    こういう厳しい状況に追い込まれるのだ。

     


    (4)「ロスネフチは先週、ロシアの代表的な油種ウラル原油510万トン(約3800万バレル)について、買い手の企業を招いて入札を実施した。これは大型タンカー船19隻を満載にするほど膨大な量だ。同社は入札の場で、代金支払いをルーブルで行うよう異例の要請を行った上で、原油は5~6月にバルト海と黒海の港湾からタンカーに積み荷されると説明した」

     

    ロスネフチは、大型タンカー船19隻を満載にするほど膨大な原油輸出(原油510万トン:約3800万バレル)の入札に失敗した。5~6月にかけて積み出す予定であった。ロシア経済にとっては痛手だ。ロシアの原油生産量は、日量1000万バレルとされる。3800万バレルは、約4日分の生産量である。これが消える計算になる。

     

    (5)「ロスネフチは実際の販売について、長らく石油商社大手トラフィギュラやビトルといった一握りの企業にほぼすべて委託し、これらの石油商社が世界の買い手へと届けていた。だが、これらの石油商社はEUの制裁が発動されるのを待たず、ロシア市場から撤退している。内情に詳しい関係筋によると、世界最大の独立系石油商社で、ロシアで30年の販売実績を持つビトルは、年内にロシア産石油の取り扱いを停止する見通しだ」

     

    ロスネフチは、石油商社大手のトラフィギュラやビトルなどに販売を委託してきた。この両社は、経済制裁によってすでにロシア市場から撤退している。ロスネフチは、生産に特化して販売を委託していただけに、経済制裁の衝撃は大きい。

     

    (6)「ロシアは米国とは異なり、大量の原油を貯蔵できる施設がない。そのため、原油販売が滞ってだぶつけば、国内のエネ供給網はすぐに目詰まりを起こし、生産縮小に追い込まれる。油井がいったん閉鎖されると、閉鎖前の生産能力に戻すことは難しいとされる。PVMオイル・アソシエーツのアナリスト、タマス・バルガ氏は、ウラル原油は原油の国際指標である北海ブレントに対して約35ドルのディスカウント水準で売られているとして、精製業者がロシア産原油以外から調達を急いでいることを示唆していると指摘している。ウクライナ侵攻前は、両油種とも数ドル程度の価格差で取引されていたという」

     

    ロシアのウラル原油は、国際指標である北海ブレントに対して約35ドルのディスカウント水準で売られている。相場に対して3~4割の値引きだ。高油価の恩恵を100%受けている訳でない。ロシアが、大量の貯蔵施設を持っていない結果、値引きしでもその日に生産した原油を販売せざるを得ないのである。

     

     

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