勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:EU経済ニュース時報 > EU経済ニュース時評

    ムシトリナデシコ
       

    中国の習近平国家主席は3月20、21日の両日、ロシアを公式訪問。プーチン大統領と会談し、ウクライナ危機について「中国は平和と対話を求めていく」と発言した。これを額面通りに受け取れば、中国が殺傷性にある武器をロシアへ供与しないことになる。だが20日、中ロ首脳は二人きりで4時間もウクライナ問題について討議したと見られている。何らかの「密約」が交わされたのでないかという憶測は消えないのだ。

     

    中ロの首脳会談前、米国は活発な両国へのけん制を行なった。中国が武器供与に踏み切れば、戦線が拡大するという懸念を表明していた。中国は、ここで武器供与へ踏み切れば、経済制裁を受けて、「ゼロコロナ」による病み上がり経済が徹底的なダメージを受けることは明らか。こうした状況から、「中国は平和と対話を求めていく」という和平路線を守らざるを得ないであろうという見方も強い。西側は今後も、中国の豹変を封じなければならないことに変わりない。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月25日付)は、「仏EU首脳、一緒に訪中へ『結束した欧州の声』伝える」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、4月上旬にフランスのマクロン大統領とともに中国を訪問する。マクロン氏が3月24日、フォンデアライエン氏に一部日程の同行を提案したと明らかにした。「結束した欧州の声」を中国に伝えるのが目的としている。

     

    (1)「24日のEU首脳会議後の記者会見では、ロシアのウクライナ侵攻に関して中国に協調を求めると述べた。「ロシアに対して化学兵器や核兵器の使用を控え、紛争をやめるよう」中国が圧力をかけることを要望する。フォンデアライエン氏の同行は、フランス単独ではなくEUとしての要請である点を強調する狙いがあるとみられる。マクロン氏はかねて4月上旬に中国を訪問する予定を明らかにしていた。ロイター通信によると、EUの報道官はフォンデアライエン氏が4月の第1週にマクロン氏とともに中国を訪れると認めた」

     

    中国にとって、EUは貴重な「外交窓口」である。米国との対立が激化している中で、EUとの関係が希薄になると、文字通り「世界の孤児」になりかねないのだ。EUは、この中国の苦しい立場を見抜いており、EUのフォンデアライエン欧州委員長とフランスのマクロン大統領が、ともに中国を訪問して欧州の厳しい声を伝える。

     

    これとは別に、スペインのサンチェス首相は3月30日から中国を訪問する。ロシアとウクライナの仲裁役に意欲を示す中国に対し、ウクライナの意向尊重を求める欧州の立場を説明する目的だ。スペインは7月からEU議長国を務める予定で、欧州の代表としての意見交換を意識しているとみられる。

     

    今回の訪問はスペインと中国の国交50周年を記念し、習近平国家主席がサンチェス氏を招待したもの。サンチェス氏は、「ウクライナの和平に関する習氏の立場を理解したうえで、和平の条件を決めるのはウクライナであることを伝えるのは重要だ」と語っている。

     

    このように3~4月にかけてEU欧州委員長(EU首相に当る)やフランス、スペインの首脳による相次ぐ訪中は、中国にとって正念場になろう。適当にあしらうような返事をしておきながら、後でロシアへの武器供与が発覚した場合、中国はEUからも「破門」されるリスクを背負う。外交に「二枚舌」は禁物なのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月24日付)は、「NATO事務総長『中国信用されていない』 仲裁案巡り」と題する記事を掲載した。

     

    北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は2月24日、中国が公表したロシアのウクライナ侵攻に関する文書に関し「中国は信用されていない」と述べ、ロシア寄りとされる中国は仲介役として信用できないとの見方を示した。

     

    (2)「ストルテンベルグ氏は、「中国は違法なウクライナ侵攻を非難できないのであまり信用されていない」と指摘。「中国がロシアに軍事支援を供与しようとしている兆候が見られるが、すべきではない」と警告した」

     

    NATO事務総長は、これまでも一貫して中国への信頼欠如を表明してきた。これは、NATO内での中国スパイの露骨な動きから起こっている。ファーウェイを使った組織的スパイ活動は、大きな非難を浴びたのだ。こういう伏線があるので、中国の武器供与が明らかになれば、EUは一挙に「反中国」へ動き出すであろう。

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    EU(欧州連合)の欧州委員会は21年7月、35年以降の新車登録で、ゼロエミッション車(走行時に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない車両)に限定する方針を示していた。この方針を最終決定する3月7日、土壇場で「待った」がかかったのである。

     

    ドイツのフォルカー・ウィッシング運輸・デジタル相が当日、「“ゼロエミッション車にe燃料のみで走行する内燃機関車を含めない限り、法案を支持しない」と表明したためだ。e燃料とは、再エネ由来の水素を用いた合成燃料である。燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出するが、生産過程でCO2を利用するため、CO2の排出量と吸収量を差し引けば実質ゼロ。これだけでない。次のようなメリットも指摘されている。

     

    e燃料は、既存のガソリン車やディーゼル車にも使えるのだ。ただ、製造効率が悪いため、生産コストが高くつくという問題が指摘をされている。ドイツの自動車メーカーは、このe燃料の利用を推進しようとしている。これによって、既存のガソリン車やディーゼル車の生産ラインを維持できので、肝心の雇用維持が可能になるのだ。

     

    EUと言えば、EV推進のモデルとまで言われてきたが、e燃料利用による内燃機エンジンの「サバイバル」は現実化してきた。これが、日本の自動車メーカーにとって「福音」になるのは確実である。EVと内燃機エンジンの「二刀流」を模索してきたからだ。トヨタには、この動きがあるのだ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(3月9日付)は、「ドイツ、EUの内燃機関禁止案に急ブレーキ」と題する社説を掲載した。

     

    2035年までに内燃エンジンを搭載した新車の販売を禁止するという欧州連合(E U)の野心的な計画は、EUの自動車産業をけん引するドイツの反対で土壇場で頓挫した。今週、EU閣僚理事会が承認すれば発効するはずだったが、無期限で延期されることになった。この一件は、低炭素社会への移行(グリーントランジション)に取り組むドイツ自身とEUの信頼性をも脅かした。この規制案は50年までにカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)を達成するというEUの目標のカギとなる施策だ。それが今、壁にぶつかってしまった。

     

    (1)「気候変動の危機により、化石燃料からクリーンな代替燃料への転換がこれまでにないほどの規模と速さで求められている。それには最大の要因の一つを取り除く必要がある。環境を汚染する産業での雇用減少など、痛みを伴うトレードオフ(二律背反)は避けられない。自動車産業の場合、状況は厳しい。米フォード・モーターのトップは、内燃エンジンを廃止して電気自動車(EV)に切り替えると、雇用が約4割失われる可能性があると考えている。フォードは欧州で3800人の人員削減を発表したばかりだ」

     

    内燃エンジンを廃止してEVに切り替えると、現在の自動車雇用は約4割が失われるという。e燃料を活用すれば、雇用を維持できてCO2を増やすことにはならないメリットがある。

     

    (2)「ドイツでは、旧来の自動車産業が国内産業全体の売上高の5分の1を占めていることを踏まえると、市民生活が物価高騰で圧迫されている今、政治家がこの業界の雇用確保になぜ熱心なのかは容易に理解できる。ただドイツ政府が首を縦に振らなければ、EUの内燃エンジン搭載車の販売禁止案は効力を持たない。フェラーリの本拠地イタリアもドイツを支持している。ポーランドはすでに禁止案への反対を表明ずみで、ブルガリアは採決では棄権すると公言している」

     

    内燃機エンジンは、ドイツが発祥である。それを量産化させたのが米国フォードである。ドイツで、内燃機エンジンへの郷愁が強い裏には歴史的背景がある。ドイツの他に、イタリア、ポーランドもe燃料に賛成していた。ブルガリアも採決では棄権してドイツなどに同調姿勢である。

     

    (3)「ドイツは欧州委員会に対し、二酸化炭素(CO2)と水素でつくる「e燃料」を使う車は例外とするよう求めている。e燃料は通常のエンジンでも使えるため、ガソリン車メーカーなどにとっては頼みの綱となるかもしれない。しかし、うたわれているような万能薬ではない。高価で効率が悪く、たとえ技術的には気候中立でも、燃やせば化石燃料と同程度の二酸化窒素を排出するからだ。メーカー側も、バッテリー製造で遅れているとみられる部品大手のボッシュ以外は特にe燃料を推進しているわけではない。独ポルシェは看板車種の「911」には内燃エンジンを使い続けたいと考えている。フェラーリはe燃料の使用を検討中としながらも、まだ正式に取り入れてはいない」

     

    EVと内燃機エンジンを比較すれば、後者のほうが「ドライブ」では楽しみがある。今後、この問題を巡る議論は続くであろう。

     

     

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    EU(欧州連合)は、12月5日からロシア産原油を輸入禁止にする。これに合わせて、原油価格の高騰を防ぐために、ロシア産原油価格に上限制を決めた。1バレル60ドルにし、価格上限を市場価格より少なくとも5%低く保つことになった。この決定に、G7と豪州が賛成している。

     

    価格が上限を下回っていない限り、海運や保険、再保険会社がロシア産原油の貨物を扱うことを禁止する。主要海運企業や保険会社は、G7各国に拠点を置いているため、価格上限設定によりロシアが原油をより高い価格で販売することは極めて難しくなる。海上保険がつかないロシア産原油の輸送は、リスクが余りにも高くなることから、事実上の輸送禁止になるもの。ロシアにとっては、大きな打撃だ。

     

    『ロイター』(12月3日付)は、「EU、露産原油価格上限で週末にも正式合意 禁輸後の高騰阻止」と題する記事を掲載した。

     

    EU(欧州連合)は2日、ロシア産原油の輸入価格に対する1バレル=60ドルの上限設定で合意した。承認を保留していたポーランドが支持に転換したことを受け、週末にも正式承認される見通し。

     

    (1)「ポーランドのアンジェイ・サドスEU大使は2日、記者団に対し、価格上限を市場価格より少なくとも5%低く保つとの条件が含まれた合意に賛成すると表明した。ポーランドは、ロシアの戦費調達を制限するため上限をより低く抑える調整メカニズムの検討を求め、提案された水準に抵抗感を示していた。価格上限の設定は主要7カ国(G7)の提案で、ロシアの原油収入を減らし、EUが12月5日にロシア産原油禁輸を開始した後の価格高騰を防ぐ狙いがある」

     

    ロシア産原油価格の上限制を最初に提案した米国は、EUの決定を歓迎している。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、記者団に対し「価格上限はプーチン氏が石油市場から利益を得て罪のないウクライナ人を殺し続ける戦争マシンに資金を供給し続ける能力を制限するのに資する」と指摘。1バレル=60ドルでの価格上限は適切な水準で、望ましい効果を及ぼすとした。また価格上限には2つの意図があり、一つはロシアが石油市場から利益を得ることを制限すること、もう一つは需給のバランスに役立つこととした。『ロイター』(12月3日付)が報じた。

     

    (2)「EUの輪番議長国を務めるチェコの報道官は、加盟27カ国全てがこの協定を正式に承認するため書面による手続きを開始したと明らかにした。4日に正式発表される見通し。フォンデアライエン欧州委員長は、上限の設定はロシアの収入を著しく減少させるとの認識を示した。また、市場の動きに対応できるように60ドルの上限の調整は可能とした上で、「世界のエネルギー市場を安定させる」という見通しを示した」

     

    ロシア産原油価格の上限制は、60ドルで固定せず調整が可能になっている。これにより、世界のエネルギー価格は安定するとしている。

     

    (3)「先週のG7の当初提案では、価格上限は1バレル当たり65~70ドルとし、調整メカニズムの設定はなかった。ロシアのウラル原油はすでにこれを下回って取引されていたため、ポーランド、リトアニア、エストニアは上限価格の引き下げを求めていた」

     

    価格の上限を巡っては、ギリシャのように70ドル以上を主張する国もあった。ギリシャは船主が多いので、高価格のほうが運賃も上がるからだ。だが、バルト三国のようにロシアへ強い反感を持つ国々は、60~65ドルを主張。結局、最低ラインに落ち着いた。

     

    (4)「G7の価格上限は、EU域外の国々がロシア産原油の海上輸入を継続することは認めるが、価格が上限を下回っていない限り、海運や保険、再保険会社がロシア産原油の貨物を扱うことを禁止するもの。主要海運企業や保険会社は、G7各国に拠点を置いているため、価格上限設定によりロシアが原油をより高い価格で販売することは極めて難しくなる。米ホワイトハウスは2日、これを歓迎し、ロシアの収入に対する制限につながると引き続き確信しているとした」

     

    原油輸送には、海上保険が不可欠だ。主要保険会社は欧州に存在するので、EUのロシア産原油価格の上限制は、決定的な意味を持つ。EUの決定が、保険会社を拘束するからだ。

     

    (5)「ロシア下院外交委員会のスルツキー委員長は2日、EU(欧州連合)はロシア産石油に価格上限を設定することにより、EU域内のエネルギー安全保障を危険にさらしていると述べた。タス通信が報じた」

     

    ロシアのプーチン大統領とドイツのショルツ首相が12月2日、電話会談した。ロシア大統領府によると、プーチン氏はウクライナに関するドイツなどの西側の対応は「破壊的」だとし再考を求めたという。今回のロシア産原油価格の上限制について触れていないが、「破壊的」という意味にはこれも含まれているであろう。

     

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    EV(電気自動車)は、時代の寵児である。異常気象克服への切り札として、EVが関心を集めている。EVの販売台数では、中国が断トツである。政府が、大気汚染対策として力を入れている結果だ。だが、人口当りの普及率では欧州が中国を抜いている。ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、「脱化石燃料」のエースとしてEVがさらなる関心を集めている。

     

    『ロイター』(10月10日付)は、「中国がリードするEV市場、欧州が逆転する可能性と理由」と題するコラムを掲載した。

     

    世界の電気自動車(EV)市場に目を向けると、購買力という点で中国は圧倒的な存在だ。昨年販売されたEVの2台に1台は中国で買われており、今後何十年も国・地域別のEV販売台数でダントツの首位を守り続けるだろう。しかし、EV市場における他の重要な幾つかの指標、具体的には自動車販売台数全体に占める割合、既存の自動車在庫に対する比率、人口100万人当たりの販売台数といった分野では、欧州が世界の中で大きくリードしている。これはEV産業の動きを包括的に理解しようとする人々にとって、注目に値する状況と言える。

     


    (1)「過去10年間にわたり、中国がEV市場で独占的に脚光を浴び続けてきたのは確かだ。背景には、政府が大胆な脱炭素化と省エネ推進に乗り出し、国内自動車メーカーがEV生産で積極的に優越的な地位を得ようと取り組んだという流れがある。同時に重要なバッテリー製造能力を含めたEV向けサプライチェーン(供給網)の主要部門構築を進めたため、世界のEV市場とりわけ供給サイドで、中国が最も大事な役割を担うという確固たる構図が出来上がった」

     

    中国がEVに特化したのは、ガソリン車(内燃機関)のエンジンづくりで永遠に西側を抜けないという自覚が、強く後を押した。EVで世界一を狙っているのだ。

     


    (2)「自動車需要全体と比べたEV需要の伸びに焦点を当てた場合、今度は欧州の優位がはっきりしてくる。国際エネルギー機関(IEA)によると、北欧諸国では昨年の自動車販売台数の半分以上がEVだった。その理由として、1)気候変動問題に関心が高い一般の人々の所得水準が高い、2)政府の強力なEV購入支援、3)官民一体となった充電施設普及の努力――が挙げられる。ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機で苦境に陥っている欧州では、電力価格高騰を受けて脱化石燃料を加速する取り組みに幅広い支持が集まっており、これから先にEV需要が勢いを増していくと予想される」

     

    欧州は、環境意識の高さで世界一である。EV推進には、こういう環境意識の高さが後押ししている。それが、普及率で中国をはるかに抜いている理由だ。

     


    (3)「欧州のEV需要拡大を後押しするもう1つの要素は、消費者が買うことができる自動車の在庫に占めるEVの割合が、急速に上昇している点だ。IEAのデータによると、販売用自動車在庫におけるEVシェア世界上位10カ国中9カ国は欧州勢。そのうち7カ国はシェアが3%ないしそれ以上となっている。単位人口当たりのEV販売台数の多さが、主にこうした在庫を膨らませる原動力になっている。絶対的なEV販売台数では中国が群を抜いてトップだが、ノルウェーとドイツ、オランダ、英国はいずれも昨年の100万人当たりのEV販売台数が中国を上回った。つまり購入予算を気にする潜在的な買い手でも、いざ買い換えの際に新車だけでなく、中古車でもEVの選択肢が広がっていることを意味する」

     

    欧州の自動車メーカーは、ガソリン車を捨ててEV特化の経営作戦へ転換している。それだけに、供給されるEV車種も多彩化している。消費者が選択し易い状態が生まれている。

     


    (4)「欧州では充電施設の急速な整備進展も、EV需要の追い風だ。IEAによると、2016年から昨年までに欧州全体でEVの充電ステーション数が431%増えて35万6000カ所を超えた。16年以降の伸びは中国の716%や韓国の5197%には及ばないものの、欧州各国が最近、早急にEV関連インフラを一層充実させると約束している以上、今後は充電ステーションがもっと大幅に増加するのは確実だ」

     

    EVの普及には、充電ステーション数を充実することが前提である。欧州各国は、充電ステーションの増加に力を入れて、EV普及率を引上げるテコになる。

     

    (5)「EVの走行距離に不安を持つ人々にとっても、欧州では他の地域よりも多くのプラグインハイブリッド車(PHEV)を購入対象として選べるという利点がある。ドイツと英国、ノルウェーではEV在庫の4割強がPHEV。この比率は中国がわずか21%、世界全体でも32%にとどまる。また、割高で温室効果ガス排出量の多い化石燃料への依存を欧州各国が減らすため、充電ステーションとともにEV購入補助金の拡充も打ち出そうとしている。このため、欧州のEV購買力は今後も高まり続け、どこかのタイミングで中国をしのぐ日が訪れるかもしれない」

     

    PHEVは、充電ステーション不足を克服する有力手段である。こういう努力の甲斐あって、欧州のEV普及率は高まり続ける、というのだ。

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    G7(主要7ヶ国)財務相会議は、ロシアの戦費調達に斬り込むべくロシア産原油価格に上限制を設けることで合意した。1バレル40~60ドル見当が目安にされている。現在の国際価格(WTI)は、87ドル(先物価格)程度。実現すれば、西側諸国にプラスだが、ロシアにとっては大きな圧迫材料になる。EU27ヶ国も共同歩調の見込み。

     

    『ロイター』(9月2日付)は、「G7財務相、ロシア産石油価格の上限設定で合意」と題する記事を掲載した。

     

    主要7カ国(G7)の財務相は2日開催したオンライン会合で、ロシア産石油および石油製品の価格に上限を設定する措置を導入する方針で合意した。

     


    (1)「原油価格の高騰を回避しつつ、ウクライナ侵攻を続けるロシアの戦費調達を阻む。しかし、バレル当たりの価格上限については「技術的インプットの範囲に基づき」今後詰めるとし、重要な詳細は盛り込まれていない。G7財務相は声明で「ロシア産原油および石油製品の海上輸送を可能にするサービスの包括的な禁止を決定し、実施するという共同の政治的意図を確認する」と表明した」

     

    G7は、EUが12月5日に発動する予定のロシア産原油の部分的禁輸措置に合わせて上限価格を導入する計画だ。声明で、制裁内容の変更にはEU加盟国全てが合意する必要があると明記した。ただ、最終的な上限価格のレンジには言及していない。上限価格は、「これを着実に守り実行する各国の幅広い連合によって決定される」とし、「明確かつ透明性ある方法で公に発表される」と説明している。

     

    G7とEU加盟27ヶ国が、ロシア産原油価格上限制に参加すれば、ロシアにとっては大きな圧力だ。米国はインドにも働きかけている。

     


    (2)「価格上限を超えるロシア産石油や石油製品の海上輸送への保険・金融サービスなどの提供は禁止される。声明はまた、「欧州連合(EU)の第6次対ロシア制裁に含まれる関連措置のスケジュールに合わせて実施することを目指す」としている。EUは12月からロシア産石油の禁輸を施行する。米国財務省の高官によると、ロシア産原油については特定のドルの価格上限を設け、石油製品については別の2種類の上限を設ける見通し。価格は必要に応じて見直すという」

     

    この上限制に参加した国々のロシア産原油の輸送には、正規の海上保険契約を認めることにしている。ロシアは、これに対抗して独自に保険機能を付けるとしている。だが、果たして事故が起こった時、保険金支払いができるか疑問視されている。

     

    (3)「議長国ドイツのリントナー財務相は会見で、ロシアの石油価格に上限を設けることで、ロシアの歳入が減少するとともに、インフレが抑制されるとし、「われわれはロシアの収入を制限したい。それと同時にわれわれの経済への打撃を軽減したい」と語った。さらに、G7は上限設定でコンセンサス形成を目指しており、EUの全加盟国が参加することを望んでいるとした。イエレン米財務長官も声明で「世界のエネルギー価格に下押し圧力をかける、ウクライナでの残忍な戦争の財源となるプーチン大統領の収入を断つという2つの目標」達成に役立つという認識を示した」

     

    この上限制に参加することは、一種の踏み絵になる。国連の「ロシア非難決議」では、棄権や反対した国が、原油を安く買えるとなれば、どのように対応するのか。見ものである。

     

    ロシア大統領府のペスコフ報道官はG7の声明を受け、世界の石油市場を不安定化させる措置という見方を示し、上限価格を設定する国への石油販売を停止すると述べた。これは、ロシアとして販売先を失うことになる。痛し痒しであろう。

     


    (4)「G7の高官は、ロシア産石油価格の上限設定を巡り、他国からも参加に向け「前向きなシグナルを受け取っているが、確固としたコミットメントには至っていない」と述べた。同時に「われわれはロシアや中国などに対する結束のシグナルを送りたかった」と述べた。

    ウクライナのゼレンスキー大統領のウステンコ上級経済顧問は、「ロシアの収入を減らすためにまさに必要な措置」とし、G7財務相会合での決定を歓迎。価格上限が4060ドルのレンジになるという見通しを示した。ゼレンスキー大統領はビデオ演説で、ロシアの天然ガス輸出にも上限を設けるべきと訴えた」

     

    ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア産天然ガス輸出にも上限価格制を設けるべきと主張している。原油で成功すれば、天然ガスにも適用されよう。

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