勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:EU経済ニュース時報 > EU経済ニュース時評

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    EU(欧州連合)は、第二次世界大戦後に仏独の二ヶ国が、二度の世界大戦という悲劇を繰返さない反省の上に立って和解し、欧州全体の連合の理想主義が実現したものである。こういう経緯からみて、EUは強い理想主義を掲げている。その夢は、ロシアのウクライナ侵攻によって打ち砕かれた。理想主義を実現するには、それを裏付ける「実力」を蓄える必要性を実感させられた。

     

    EUは、「脱炭素」という理想も掲げたが、その手段としてEV(電気自動車)一本に頼るという失敗をしている。トヨタ自動車のように、EVのほかにHV(ハイブリッド)や燃料電池車(FCV)や「曲がる電池」ペロブスカイトを自動車の屋根やボンネットに乗せる実験を始めている。EUには、こういう柔軟性がないのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(7月29日付)は、「揺らぐEUの理想主義、EV偏重 企業は面従腹背」と題する記事を掲載した。

     

    6月の欧州議会選後、「欧州連合(EU)の理想主義は死んだ」と悲観的、あるいは冷笑的な言説に触れる機会が増えた。むろん「脱炭素」「人権」など進歩的な規範・制度づくりを軸に多国間協調を図る、EUの基本理念を全否定した右翼・極右政党の躍進が背景にある。

     

    (1)「理想主義的な政策は最近、綻びが目立っていた。代表例が防衛だ。ESG(環境・社会・企業統治)を順守するあまり、欧州投資銀行(EIB)は域内の防衛産業を「持続可能性がない」と分類。融資対象から外し、米国の軍事力に頼った。ロシアのウクライナ侵略を許し、慌てて防衛強化にかじを切ったが、分類があだとなり中小企業やファンドは今も投融資に二の足を踏む。「気候変動の観点から防衛を捉えるべきではない」。EIB副総裁を2年半務めたフィンランドのストゥブ大統領ですらESG規制を「理解しがたい」と批判する」

     

    NATO(北大西洋条約機構)加盟国で、国防費の対GDP比が2%未満の国がゴロゴロしている。トランプ米国前大統領が、ロシアに対して「こういう国は侵略して良い」などと暴言を吐くほどだ。トランプ氏から非難された欧州の国々が、今や国防で目覚めている。長い間、国防を他国任せにするという無責任な態度であったからだ。これも、理想主義偏重の歪みであろう。

     

    (2)「ただ、EUが多国間協調を捨て、大国のパワーと国益を重視する現実主義に振れると結論づけるのは早計だろう。確かに2035年のエンジン車の販売禁止を決めた後、大国ドイツの意向を踏まえ、合成燃料の利用に限り販売継続を認めた。2期目が決まったフォンデアライエン欧州委員長は18日、あくまで合成燃料は例外措置だと強調した。政権安定のため環境政党に配慮した点を割り引いても、温暖化ガス排出ゼロを目指す理念は変わらない。独シンクタンク、外交問題評議会の元主席研究員、ベンジャミン・タリス氏は理想主義の失敗を踏まえ、「価値や理念を徹底的に守り、広げることに特化した『新理想主義』が主流になる」と説く」

     

    EUが、理想主義を掲げなければ結束は維持できない。その理想主義を実現する「実力」も不可欠である。要するに、「二本立て」である。

     

    (3)「揺らぐEUを横目に、企業はしたたかに現実主義的なアプローチを貫く。21年、新たな車台開発を発表した欧州ステランティス。EUの電気自動車(EV)一辺倒の戦略を踏まえ、当初は「EV向け」と説明していたが、需要が失速するとプラグインハイブリッド車(PHV)などエンジン車にも使えることを明らかにした。カルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)は、「マルチエネルギー車台戦略で予測できない状況にも適応できる」と胸を張る」

     

    企業は,理想主義にばかり酔っていたならば赤字になる。利益を出さなければならないという「現実主義」が裏付けになる。

     

    (4)「独BMWは、EVシフトを強調してきた水面下で、水素を使った燃料電池車(FCV)開発を続ける。ライバルが乗用車から商用車に開発主体を移すなか、乗用車向けFCVの本命に浮上する。対照的に、トヨタ自動車はEVだけでなく多様な環境車をそろえる「マルチパスウェイ(全方位戦略)」を公言してきた。異なる理想主義でEUと対立し、EVに後ろ向きだと環境団体や投資家にたたかれた」

     

    トヨタの全方位戦略の強みは、今回のEV失速で証明された。全固体電池という本命電池を開発しながらHVという補強策も万全であった。

     

     

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    EU(欧州連合)は、中国製EV(電気自動車)に対し7月5日から17.4%~37.6%の追加関税を課す。関税は暫定的なもので、EUの反補助金調査はあと4カ月続く。この間にEUと中国の間で集中的な協議が続けられる見通し。11月から確定税率になる。ドイツのキール世界経済研究所(IfW)のモリッツ・シュラーリック所長の試算によると、EUはこの関税率引上げで中国からのEV輸入は25%減る可能性が高いとされる。中国への影響は大きい。

     

    『ブルームバーグ』(7月4日付)は、「EU、中国製EVに計画通り追加関税賦課へ 5日から適用」と題する記事を掲載した。

     

    EUは中国製のEVに追加関税を暫定的に賦課する計画を進める。中国製EVに適用される暫定税率は最高48%にもなり、中国との貿易摩擦が高まる公算が大きい。

     

    (1)「EUは4日の発表文で、暫定税率は中国政府の補助金に対する調査に基づくと説明。既存の10%の関税に加え、サンプル調査の対象となった中国メーカー3社では英国発祥のブランド「MG」を保有する上海汽車(SAICモーター)に37.6%、スウェーデンのボルボ・カーを傘下に持つ吉利汽車に19.9%、比亜迪(BYD)には17.4%がそれぞれ上乗せされる。調査に協力したがサンプル調査の対象とはならなかったメーカーには加重平均で20.8%、調査に非協力的だったメーカーには37.6%の追加課税が課せられる」

     

    英国発祥のブランド「MG」を保有する上海汽車(国有企業)は、あたかも英国製EVという錯覚を利用してEVを売り込んできた。それだけに、EUの調査には非協力姿勢であったので37.6%という懲罰的な追加関税率を科された。

     

    (2)「暫定税率は7月5日に発効する。これに取って代わる解決策を双方が見いだすか、人口を考慮した特定多数決で加盟国が阻止しない限り、最終的な関税が11月までに導入される。テスラは、サンプル調査の対象とするよう要請しており、最終的な段階では個別の税率が適用される可能性がある。EUはここ数週間、集中的な協議を続けていた。だが、調査の結果、中国の補助金はEU内の自動車メーカーに経済的な損失を引き起こすほどの規模であるとの結論に至ったと説明した」

     

    米テスラは、サンプル調査の対象企業に科される低い関税率を要請している。中国政府の補助金を辞退するとまで「低姿勢」になっている。テスラは、中国で生産しているばかりに高関税率を科される。これを免れるべく必死だ。こうした事情もあって、最終的な段階では個別の税率が適用される可能性があるという。

     

    (3)「欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)は、発表文で「相互に受け入れ可能な解決策について、中国とは引き続き緊密に連絡をとっていく」とし、EUの「調査に対する何らかの交渉結果がまとまるとしても、明確かつ十分にEUの懸念に対応し、世界貿易機関(WTO)の規則を尊重するものでなければならない」と主張した」

     

    現在の関税率引上げは暫定措置である。11月からは、5年間の確定関税率引上げになる。EUは、中国に対してWTOの規則を守るようにと基本的な立場を明らかにしている。

     

    (4)「中国は、報復措置をちらつかせ、既に輸入豚肉を対象とした反ダンピング調査を開始した。EU産酒類に対する調査結果も来年初めに発表される予定だったが、過去の例に基づくと今やすぐにでも発表があり得る。中国はEU産農産物、航空機、大排気量エンジン車にも影響が及び得ると警告。また、EUの調査についてWTOに提訴するという手段を選ぶ可能性もある」

     

    中国は、痛し痒しである。EUと「喧嘩別れ」することは是非とも避けたいのだ。米中対立が厳しくなっているので、EUとはなんとか関係を維持したいという状況である。

     

    (5)「事情に詳しい関係者によると、これに先立って中国はEUに対し、両者の協議継続で状況が変われば、11月までの間に税率の調整が可能かなどを問い合わせていた。交渉の中で税率を微修正することはあり得るが、EUとしてはまず事実の共通理解を確立した上で、WTO規則にのっとった双方が合意する解決策を探りたい考えだと、関係者は説明した。双方は向こう数日以内に実務者協議を再開させる見通しだと、関係者は付け加えた。ドイツのキール世界経済研究所(IfW)の所長であるモリッツ・シュラーリック氏の試算によると、この関税で中国からのEV輸入は25%減る可能性が高い」

     

    ドイツの世界的シンクタンクであるキール世界経済研究所の所長によれば、中国のEVは今回の関税率引上げで25%は減ると予測されている。

     

     

     

     

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    フランスで極右の首相が登場するのか危惧されてきた下院選は、最新の世論調査の結果、過半数に達しない見通しとなった。ただ、マクロン大統領の基盤である与党は3位に沈む公算が強まっている。マクロン氏の強行した下院解散戦略は、完全に目論見を外れた形だ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(7月4日付)は、「仏下院選、極右は過半数に届かない見通し 世論調査」と題する記事を掲載した。

     

    調査会社ハリス・インタラクティブの世論調査によると、フランスの国民議会(下院、定数577)選挙で極右の国民連合(RN)は単独過半数に届かない見通しとなり、議会は大きく分裂した状態に戻りそうだ。7日に行われる決選投票で(どの政党も過半数に届かない)ハングパーラメントに陥るとの予測が現実になれば、フランスはいずれの会派も政権樹立に必要な議席を確保できず混迷期に入ることになる。

     

    (1)「ハリスの世論調査(7月2~3日実施)は、複数の仏メディアの依頼を受けて実施された。これによると、RNと共闘勢力は190〜220議席を確保する見通しだ。だが、首相を指名する議会多数派を握るには過半数の289議席が必要で、それには遠く及ばない。新たに設立された左派連合の新人民戦線(NFP)は、159〜183議席を確保して2位に付けるとみられている。マクロン大統領率いる中道の与党連合は135議席にも届かず、解散前の半分またはそれ以上に減る見通しだ。解散総選挙に打って出るというマクロン氏の決断が間違いだったことが鮮明になった」

     

    極右のRNは、最大限220議席で、過半数の289議席へ遠く及ばないことが分った。左派連合の新人民戦線(NFP)は、最大限183議席。マクロン大統領率いる中道の与党連合は、135議席と3位である。

     

    (2)「現時点では、獲得議席数を正確に予想することは難しいとアナリストは指摘する。だが、RNが実際に単独過半数を獲得できないとすれば、対抗勢力が連携して「共和戦線」を張った戦略が奏功したと言えるだろう。RNが大差で得票率首位を獲得した6月30日の1回目の投票後、中道派と左派勢力は選挙協力で合意し200人前後の出馬を取り下げた。ルペン氏が主導する極右勢力の政権獲得を阻止するために連携する戦法だ」

     

    中道派と左派勢力は、選挙協力で合意し200人前後の出馬を取り下げた。この協力関係から言えば、新たな下院でも協力すれば、合計議席は最大限318議席で過半数を上回る計算になる。

     

    (3)「決選投票で候補者を絞れば、左派と中道派の支持者は通常なら支持しない政党に投票をせざるをえない。とにもかくにもRNが次期議会に送り込む議員を減らすためだ。仏内務省の集計によると、候補者3人で争う選挙区は306区から89区に減った。有権者が政党首脳の思惑通りに投票するかどうかは不透明だ。初回投票で投票率が高水準に達しただけに、決選投票でも投票率がカギを握る。夏季休暇や投票したい候補者が出馬を取り下げたいら立ちから、投票率が下がるのではないかと懸念する政党幹部もいる。RNにとっては、単独過半数を獲得する可能性が後退しても支持者を投票所に向かわせることができるかどうかが重要になる」

     

    決選投票では、候補者3人で争う選挙区は306区から89区に減った。候補者2人では、極右は不利になろう。フランス国民も、極右を選ぶことに戸惑いが出るという前提である。

     

    (4)「ユーロ圏2位の経済規模を持つフランスは、政治で行き詰まり成長が鈍化すれば、仏国債の約半分を保有する外国人投資家にとってフランスの長期的な魅力が薄れかねない。議会が3分裂しそうな公算が大きくなるなか、各党首脳は他党との連携の可能性を探る意向を示し始めた。マクロン氏が首相に任命したアタル氏は、中道派で単独過半数は取れないと認めたものの、個別の政策ごとに協力余地がある政党と連携する「多元的な議会」の構築を呼びかけた」

     

    フランスは、政治状況が混迷すれば経済政策の一貫性が損なわれる懸念も生じよう。仏国債の約半分を保有する外国人投資家にとって、フランスの長期的な魅力が薄れかねない事態を迎えようとしている。

     

    (5)「アタル氏は、公共ラジオ局フランス・アンテルで3日、「中道連合で最大限の議席を獲得したい。そうすれば、(法案ごとに)合意を取り付けて前に進むことができる」と述べた。そうした動きに先鞭をつけたのはヨーロッパエコロジー・緑の党のトンドリエ事務局長だが、同氏は中道派と連携する場合でもマクロン氏やアタル氏の提示条件ではなく、左派の提示する条件で行うとクギを刺した。「この国で前例のないことに踏み出さなければならないのは間違いない」。同氏は仏テレビTF1のニュース専門局でこう語った」

     

    アタル首相は、極右を除いた中道連合を構想している。法案ごとに、合意を取り付けるというもの。この狙いがうまく行くかどうか。

     

     

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    EU(欧州連合)は、環境主義の砦としてEV(電気自動車)普及の旗を振ってきたが、最近のEU議会で極右や右派の議員増加で雰囲気が変わってきた。EVへの熱が冷め始めたからだ。現在のEVは、宣伝されているほど二酸化炭素排出を削減せず、10万キロ以上の走行で初めて「脱炭素」を実現するという科学データが提出された。現実は、10万キロ未満の走行でガソリン車よりも二酸化炭素を増やすという結果になっている。 

    『日本経済新聞 電子版』(6月21日付)は、「欧州EV『補助金頼み』鮮明、打ち切りの独は5月も販売減」と題する記事を掲載した。 

    欧州で電気自動車(EV)販売が政府補助金に依存している構図が鮮明になっている。購入補助金を打ち切った最大市場のドイツでは販売が急減速する。英国とフランスはなお販売が増えているが、支援の縮小の影響が出ている。EV事業にブレーキをかけるメーカーが今後も増えそうだ。

     

    (1)「20日までに欧州自動車工業会(ACEA)がまとめた欧州主要国の5月の電気自動車(EV)販売では、前年同月と比べ16%減とドイツの落ち込みが目立った。23年12月に補助金を打ち切った影響は大きく、5月まで前年割れが4ヶ月続く。今後の販売にも厳しい見通しが多い。独調査会社センターオートモーティブリサーチのディルク・ヴォルシュレーガー氏は「24年のEV販売台数は前年より5万台程度減少する」と予測する。同国の23年のEV販売は約52万台だった」 

    欧州主要国の5月のEV売行きは芳しくない。24年は、昨年よりも5万台程度の減少が予測される事態となった。これでは、中国EVの輸出に大きなブレーキがかかる。 

    (2)「英国とフランスのEV販売は増えている。英国は1月から5ヶ月連続で前年越えが続いており、5月の販売台数も6%増えた。フランスも5%増だった。これらの国では政府補助金が継続しているのがドイツとの違いだ。ただし、補助金政策の内容がEV販売を左右している状態は同じだ」 

    ドイツは、EV補助金を打ち切った。英仏はEV補助金を継続している。これが、EV販売の明暗を分けている。

     

    (3)「英国の場合、消費者の需要に力強さはない。販売増加の詳細をみると、レンタカーなど税制上優遇されている法人向けの「フリート」販売に支えられている。法人向けの支援が充実しているからだ。企業が福利厚生の一環として、従業員にEVを現物支給する場合にかかる税率は車両価格の2%とガソリン車の10分の1だ。電動の商用バンの場合は、購入時の補助金も支給される。個人向け補助金は22年に打ち切られており、個人向けはドイツと同様に販売が落ち込んでいる」 

    英国のEV販売は増加しているが、税制上優遇されている法人向けが支えている。個人向け補助金は打ち切られているので、売上減になっている。全て補助金しだいの状況である。 

    (4)「フランスも販売の増加率をみると、4月までは2桁増だったのが、5月は5%増に低下している。仏政府は2月まで低所得者向けに月額100ユーロ(約1万7000円)台でEVをリースできる制度を展開していたが、これを打ち切った。政府支援の効果が薄れ、ブレーキがかかりつつある」 

    フランスもEV販売は、補助金頼みの状況である。4月と5月ではEV販売の増加率に大きな差が出てきた。

    (5)「普及が先行した欧州でも、なおEVは補助金なしではガソリン車との価格差が大きい。米コンサルティング会社アリックスパートナーズのアンドリュー・ベルクバウ氏は「(各国政府は)補助金を投入し続ける必要がある。そうでなければ市場は非常に脆い状態が続く」と指摘する。欧州の自動車メーカーは市場の状況にあわせ、EV事業の拡大ペースを調整する構えだ」 

    EVとガソリン車の価格差が大きい以上、EVは補助金なしでは太刀打ちできない状態である。その補助金が、打ち切られているのでEV販売は低下して当然である。トヨタ自動車は、こういうEV脆弱性を見抜いて距離を置いてきた。経営センスは抜群である。 

    (6)「足元の政治を巡る動向もEVの逆風になりかねない。6〜9日に投開票された欧州議会選では、欧州連合(EU)の環境政策に対して批判的な極右や右派の勢力が伸長した。従来政策を修正する圧力が強まり、EV推進の機運がさらに後退する可能性がある」 

    EU議会の新議員では、反環境主義の極右や右派が増えている。これが、EUのEV販売へ影響を与える可能性も出てきた。EVは、正念場を迎えている。

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    EU(欧州連合)は、7月から中国製EV(電気自動車)へ、現在の10%に加えて最大「38.1%」の追加関税を課すことになった。一律の関税率引上げでないが、EUの調査に非協力であった企業(国有の上海汽車)が、もっとも高率になった。上海汽車が調査に非協力であったのは、国有企業ゆえに政府からたっぷりと補助金を得ていたことが知れることを恐れたに違いない。この一点だけでも、手厚い補助金が支給されていることを想像させる。

     

    『東洋経済オンライン』(6月17日付)は、「欧州委、中国製EVに対し『最大38.1%』の追加関税」と題する記事を掲載した。この記事は、中国『財新』の転載である。

     

    EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会は6月12日、中国製EV(電気自動車)が不当な補助金の恩恵を受け、人為的に低く抑えた価格でヨーロッパのEVメーカーに脅威を与えているとして、7月4日から最大38.1%の追加関税を課すと発表した。

     

    (1)「この決定に先立ち、欧州委は3社の中国メーカーを対象にしたサンプル調査を実施。補助金の度合いに応じた追加関税をメーカーごとに算定し、3社の税率を国有自動車最大手の上海汽車集団(上汽集団)は38.1%、民営自動車大手の吉利控股集団(ジーリー)は20%、EV最大手の比亜迪(BYD)は17.4%とした。このサンプル調査は、欧州委が2023年10月から進めている中国製EVに対する反補助金調査の一環だ。上述の3社以外の追加関税について、欧州委は反補助金調査に協力しているメーカーには21%、協力していないメーカーには38.1%を課すとしている」

     

    EUが、企業別に追加関税率を決めたことは興味深い。狙いは、中国企業のEVであって、欧米系企業と別扱いにしている。中国政府からの補助金のランクが異なっているからだ。国有企業の上海汽車は、情報開示しなかったことの「罰」という意味も加わり38.1%の追加関税率になった。

     

    (2)「EUは、すでに域外からの輸入乗用車に10%の関税をかけており、追加関税はそれに上乗せされる。その結果、上汽集団および反補助金調査に協力していないメーカーは48.1%もの高関税率を強いられることになった。サンプル調査の3社の中で、上汽集団はなぜ最高の38.1%を課されたのだろうか。ある業界関係者は匿名を条件に、次のようにコメントした。「欧州委は上汽集団が調査に非協力的だと判断したのだろう。そもそも、欧州委が中国メーカーに提出を求めている情報の多くは企業秘密に属するものだ」と指摘する」

     

    上海汽車のブランド「MG」は、英国ブランドを買収して付けたもの。欧州市民にとっては、英国製と間違って購入するケースが多く、中国製EV輸入全体の25%ものシェアを占めている。錯視効果だ。

     

    (3)「中国のEVメーカーにとって、ヨーロッパは現時点で最大の輸出先である。中国海関総署(税関)のデータによれば、2023年に中国からEUに輸出されたEVは48万2000台(中古車を含む)に上り、EVの総輸出台数の45.1%を占めた。今回の追加関税が、EU域内における中国製EVの販売に大きな打撃を与えるのは確実だ」

     

    中国製EVは、EU向け輸出が全体の45%と約半分を占めている。それだけに、関税率引上げの打撃は大きいはずだ。

     

    (4)「その被害者は中国メーカーだけとは限らない。外資系メーカーが中国工場で生産したEVも含まれているからだ。欧州委が公表した反補助金調査に協力しているメーカーのリストには、テスラ、BMW、ルノー、ステランティスなどの中国法人や合弁会社の社名が並ぶ」

     

    欧米系EVも関税率引上げ対象である。補助金を支給されているからだ。

     

    (5)「実は、中国製EVをヨーロッパに最も多く輸出しているメーカーはテスラだ。EUに本社を置くBMWやルノーも、中国工場から相当な数のEVをヨーロッパに輸出している。「これは誤ったやり方だ。保護貿易主義は報復関税の応酬という連鎖反応を引き起こす」。BMWのオリバー・ツィプセ社長は欧州委の追加関税を強く批判し、こう切り捨てた。「BMWのグローバル競争力を高めるうえで、このような保護主義的措置はまったく役に立たない」と指摘する」

     

    BMWなどは、「正論」を吐いて反対している。だが、中国で補助金を得ていることも事実だ。それだけに、この反論には説得力を持たない。

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