中国は、通商や安全保障の対中抑止を主導する米国に対抗するため、欧州との関係を重視している。習氏は3月にオランダのルッテ首相、4月にドイツのショルツ首相とそれぞれ北京で会い、協力の拡大を確かめた。そして現在、習氏自身が欧州を訪問中である。これら一連の欧州首脳との会談で、中国は外交成果をあげていると思われがちである。欧州は、本音部分で中国へ警戒感を募らせている。
『日本経済新聞 電子版』(5月7日付)は、「欧州の海空軍、太平洋集結へ 中国念頭に南シナ海も航行」と題する記事を掲載した。
ドイツやフランスなど欧州諸国が、多くの艦船と航空機を近く太平洋に展開する。日米などとの共同演習に臨み、一部艦船は南シナ海を航行する。中国の脅威への警戒心が急速に強まっているためだ。前例のない規模で欧州の海空軍が太平洋に集結する。
(1)「ドイツ政府は、フリゲート艦や補給艦で構成する艦隊を太平洋に派遣すると決めた。7日、独北部ウィルヘルムスハーフェンなどから出航し、大西洋を横断して太平洋に入る。今夏に米海軍主催の多国間海上訓練「環太平洋合同演習(リムパック)」に参加したのち、フィリピンと中国が領有権を争う南シナ海を通る。フランスやイタリアなどもリムパックに参加すると日本経済新聞の取材に明かした。ベーアボック独外相は1月、フィリピンを訪問し、覇権主義に傾く中国を批判した。ドイツ海軍高官は「将来の紛争抑止のため、ドイツ海軍も重要な役割を果たす」と話す。フリゲート艦を派遣するオランダ海軍の報道官は「最新鋭兵器を使った演習で同盟国との協力を深めたい」と答えた」
今年の夏から秋にかけて、ヨーロッパ諸国の軍艦が太平洋へ出現しそうな情勢だ。多くの欧州諸国が、米ハワイ沖で行われる合同演習(リムパック)に参加するためだ。インド太平洋に領土を持つ英国やフランスだけなく、ドイツ・イタリア・オランダ・スペイン・イタリアなどEU主要国が軒並み太平洋へ艦船か航空機(もしくは両方)を展開することになりそうだ。
(2)「欧州諸国は、同時に多くの航空機を太平洋に展開する。独仏スペインが、戦闘機ユーロファイターと給油・輸送機などで構成する航空編隊をインド太平洋に送り、日米やオーストラリアとの演習に臨む。ここ数年、欧州勢がアジア安保に関与する動きが目立つ。2021年には英国が米英豪の安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」を背景に、航空母艦を日本に派遣した。軍艦に台湾海峡を通過させたこともある。ドイツも同じ頃、フリゲート艦を日本に送った。ドイツは派遣規模を大きく広げ、歴史的にみてアジア外交に関心の薄かったスペインやイタリアまで加わる」
欧州諸国は、軍艦と同時に多くの航空機を太平洋に展開する見通しである。「仮想敵」中国を想定した動きである。
(3)「欧州のこうした動きには2つの政治的な狙いがある。1つ目は民主主義陣営が安全保障政策で一枚岩であるというメッセージだ。7月に米ワシントンで北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が開かれる。これに重なるタイミングで遠い太平洋に兵力を展開し、米欧が表裏一体だと印象づけたい。ロシアを意識するとともに、米国に「欧州の貢献」を目に見える形で示す思惑もある。2つ目は中国への警告だ。セルビアやモンテネグロなどのバルカン半島諸国に政治的な影響力を強めようとする中国への警戒心は強まっている。ドイツや英国など欧州政界のあちこちに潜入した中国のスパイ工作が相次ぎ露見し、不信に拍車をかけている」
欧州が、太平洋へ軍艦と航空機を派遣する目的は二つある。1つ目は、民主主義陣営が安全保障政策で一枚岩であるというメッセージ。2つ目は直接、中国への警告とされる。欧州に出没する中国スパイによる不信感が増大しているからだ。
(4)「ショルツ独首相は、4月に独企業幹部を引き連れて訪中。マクロン仏大統領も5月6日、パリを訪れた中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と経済交流を巡って会談した。一方で、欧州は海軍と空軍を同時に太平洋に展開し、日韓印との関係も深めようとしている。欧州連合(EU)では、インド太平洋地域の安定こそ欧州の利益になるとの認識が浸透しつつある。台湾海峡などは海上輸送の要衝で、貿易ルートが寸断されれば欧州景気を支えるドイツ企業のサプライチェーン(供給網)に大きな混乱が生じる。英国は、25年からインド太平洋で日米と定期的に合同演習することを明らかにした。今秋の米大統領選の結果にかかわらず、欧州のアジア安保への関与はますます深まりそうだ」
世界のサプライチェーンが、アジアに多く広がっている以上、欧州の各国政府はインド太平洋との関わりが増えている。「台湾有事」が起こる事態になれば、欧州経済へ波及する。傍観できない状況になっているのだ。NATO(北大西洋条約機構)が将来、アジアへ足がかりをつくるステップになるのであろう。





