勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    中国は、通商や安全保障の対中抑止を主導する米国に対抗するため、欧州との関係を重視している。習氏は3月にオランダのルッテ首相、4月にドイツのショルツ首相とそれぞれ北京で会い、協力の拡大を確かめた。そして現在、習氏自身が欧州を訪問中である。これら一連の欧州首脳との会談で、中国は外交成果をあげていると思われがちである。欧州は、本音部分で中国へ警戒感を募らせている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月7日付)は、「欧州の海空軍、太平洋集結へ 中国念頭に南シナ海も航行」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツやフランスなど欧州諸国が、多くの艦船と航空機を近く太平洋に展開する。日米などとの共同演習に臨み、一部艦船は南シナ海を航行する。中国の脅威への警戒心が急速に強まっているためだ。前例のない規模で欧州の海空軍が太平洋に集結する。

     

    (1)「ドイツ政府は、フリゲート艦や補給艦で構成する艦隊を太平洋に派遣すると決めた。7日、独北部ウィルヘルムスハーフェンなどから出航し、大西洋を横断して太平洋に入る。今夏に米海軍主催の多国間海上訓練「環太平洋合同演習(リムパック)」に参加したのち、フィリピンと中国が領有権を争う南シナ海を通る。フランスやイタリアなどもリムパックに参加すると日本経済新聞の取材に明かした。ベーアボック独外相は1月、フィリピンを訪問し、覇権主義に傾く中国を批判した。ドイツ海軍高官は「将来の紛争抑止のため、ドイツ海軍も重要な役割を果たす」と話す。フリゲート艦を派遣するオランダ海軍の報道官は「最新鋭兵器を使った演習で同盟国との協力を深めたい」と答えた」

     

    今年の夏から秋にかけて、ヨーロッパ諸国の軍艦が太平洋へ出現しそうな情勢だ。多くの欧州諸国が、米ハワイ沖で行われる合同演習(リムパック)に参加するためだ。インド太平洋に領土を持つ英国やフランスだけなく、ドイツ・イタリア・オランダ・スペイン・イタリアなどEU主要国が軒並み太平洋へ艦船か航空機(もしくは両方)を展開することになりそうだ。

     

    (2)「欧州諸国は、同時に多くの航空機を太平洋に展開する。独仏スペインが、戦闘機ユーロファイターと給油・輸送機などで構成する航空編隊をインド太平洋に送り、日米やオーストラリアとの演習に臨む。ここ数年、欧州勢がアジア安保に関与する動きが目立つ。2021年には英国が米英豪の安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」を背景に、航空母艦を日本に派遣した。軍艦に台湾海峡を通過させたこともある。ドイツも同じ頃、フリゲート艦を日本に送った。ドイツは派遣規模を大きく広げ、歴史的にみてアジア外交に関心の薄かったスペインやイタリアまで加わる」

     

    欧州諸国は、軍艦と同時に多くの航空機を太平洋に展開する見通しである。「仮想敵」中国を想定した動きである。

     

    (3)「欧州のこうした動きには2つの政治的な狙いがある。1つ目は民主主義陣営が安全保障政策で一枚岩であるというメッセージだ。7月に米ワシントンで北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が開かれる。これに重なるタイミングで遠い太平洋に兵力を展開し、米欧が表裏一体だと印象づけたい。ロシアを意識するとともに、米国に「欧州の貢献」を目に見える形で示す思惑もある。2つ目は中国への警告だ。セルビアやモンテネグロなどのバルカン半島諸国に政治的な影響力を強めようとする中国への警戒心は強まっている。ドイツや英国など欧州政界のあちこちに潜入した中国のスパイ工作が相次ぎ露見し、不信に拍車をかけている」

     

    欧州が、太平洋へ軍艦と航空機を派遣する目的は二つある。1つ目は、民主主義陣営が安全保障政策で一枚岩であるというメッセージ。2つ目は直接、中国への警告とされる。欧州に出没する中国スパイによる不信感が増大しているからだ。

     

    (4)「ショルツ独首相は、4月に独企業幹部を引き連れて訪中。マクロン仏大統領も56日、パリを訪れた中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と経済交流を巡って会談した。一方で、欧州は海軍と空軍を同時に太平洋に展開し、日韓印との関係も深めようとしている。欧州連合(EU)では、インド太平洋地域の安定こそ欧州の利益になるとの認識が浸透しつつある。台湾海峡などは海上輸送の要衝で、貿易ルートが寸断されれば欧州景気を支えるドイツ企業のサプライチェーン(供給網)に大きな混乱が生じる。英国は、25年からインド太平洋で日米と定期的に合同演習することを明らかにした。今秋の米大統領選の結果にかかわらず、欧州のアジア安保への関与はますます深まりそうだ」

     

    世界のサプライチェーンが、アジアに多く広がっている以上、欧州の各国政府はインド太平洋との関わりが増えている。「台湾有事」が起こる事態になれば、欧州経済へ波及する。傍観できない状況になっているのだ。NATO(北大西洋条約機構)が将来、アジアへ足がかりをつくるステップになるのであろう。

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    中国自動車業界は、操業度が適正水準の80%を大きく割り込み60%台まで低下している。それでも、政府補助金によって増産体制を維持する目的は何か。その一つとして、雇用維持が上げられる。中国は、EV(電気自動車)輸出によって過剰生産をカバーしているが、輸入国側もダンピング調査など、壁を高くしている。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月2日付)は、「あふれる中国車、それでも生産続けるのはなぜ?」と題する記事を掲載した。 

    (1)「中国では長年にわたり、自動車の生産能力が過剰状態にある。国内100余りのブランドは毎年、同国のドライバーが購入するより多くの自動車を生産している。しかし、中国当局が経済成長押し上げや雇用維持、世界のEVビジネスにおける中国の役割拡大を目指す中で、政府は赤字の自動車メーカーに生産継続を奨励している。補助金など政府の奨励策によって、世界市場への供給が増えており、供給過剰に拍車がかかる恐れがある」 

    中国当局は、雇用維持目的で赤字の自動車メーカーに補助金を支給して生産を継続させている。 

    (2)「中国には現在、年間4000万台を生産する能力があるが、国内での販売台数は2200万台前後にとどまっている。こうした状況は、テスラなどの企業が中国で激しい値下げ競争に直面することにつながっている欧米諸国では、中国の自動車メーカーが国内で売れ残った車で他国の市場をあふれさせるのではないかとの懸念が生じている生産能力の余剰は、とりわけエンジン車で顕著だ。中国の消費者がEVへの乗り換えを進める中、エンジン車は人気がなくなってきている」 

    欧米諸国は、中国の過剰生産された部分が輸出されているのでないかと危惧している。貿易摩擦の原点である。

     

    (3)「中国から米国に輸入される自動車には高関税が課されるとはいえ、米政府は、補助金の恩恵を受けた中国の自動車が米国に輸入されることでダンピング(不当廉売)を心配している。欧州は昨年、中国のEV補助金に関する調査を開始した。この結果、向こう数カ月の間に輸入関税がかけられる公算が大きい中国の自動車輸出はわずか3年間で5倍近くに増え、2023年には約500万台に達し、欧米諸国に懸念を生じさせる一因となった」 

    EUは、今後数ヶ月以内に中国製EVに対して関税引上げに踏み切るとみられる。中国との関係悪化が懸念される。 

    (4)「明らかな点は、中国国内の自動車販売の伸びが減速する中で、同国の自動車産業が拡大基調にあることだ。4月25日に開幕した中国最大の自動車ショー「北京国際モーターショー」では、300近い車種のEV、プラグインハイブリッド車(PHV、PHEV)が展示されている。その中には、スマートフォンメーカーの小米科技(シャオミ)が開発したスポーツセダンEVも含まれている。同社は自動車生産に乗り出したばかりだが、今年中に10万台を販売する計画を立てている」 

    中国の国内自動車需要は減少しているのに、供給は拡大基調にある。このギャップが、貿易摩擦に発展している理由だ。3月にEVへ参入した小米科技は、年内に10万台を目指すという。国内競争激化が、さらなる輸出圧力となろう。

     

    (5)「中国はかなり前から、支配的地位の確立を目指す産業分野の一つにEVを挙げていた。このため地方政府の多くは先を争うように、雇用創出につながる新たな自動車メーカーの育成を図ってきた。中国経済の他の分野が停滞し、習近平国家主席が地方の指導者に「新質生産力」の強化を求める中、この1年で自動車産業育成の緊急性が高まった。新質生産力とは、高付加価値の製造業育成の必要性を訴えるために中国の政策立案者がよく用いる言葉だ。ドイツのキール世界経済研究所(IfW)の4月の報告書によれば、中国の自動車業界への公的支援策には、市場実勢を下回る金利での融資、割引価格での鉄鋼や電池の供給などが含まれる」 

    下線の通り、中国自動車業界は手厚い公的支援を受けている。貸出金利や鋼材・電池の購入で優遇されているという。 

    (6)「同研究所が中国EV最大手、比亜迪(BYD)の年次報告書に基づき指摘したところによると、同社は2018~22年に政府補助金約35億ドルを受け取った。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)で中国の経済政策について研究するスコット・ケネディ氏が提供する最新の推計によれば、中国はEVやPHVなどを含む新エネルギー車産業を支援するために2009~22年に総額約1730億ドルの補助金を支出した」 

    EVで破竹の勢いであるBYDは、2018~22年に政府補助金を約35億ドル(約5400億円)受け取っている。政府は、新エネルギー車産業を支援するため、自動車業界へ2009~22年で総額約1730億ドル(約26兆8000億円)の補助金を支給した。

     

    (7)「中部・河南省鄭州市は2月、「新質生産力」産業を育成し、年間70万台の生産能力を持つ「新エネルギー車都市」となることを宣言した。その1ヶ月後、鄭州市の政府系事業体が、経営難に陥っていた自動車メーカー、海馬汽車の現地部門の資産を一時的に取得した。現地部門は3000人近い従業員を抱え、同市に工場を持つ。同社の開示文書によると、今年1~3月の販売台数は2000台に満たなかった。期間5年のこの契約で、海馬汽車には必要な資金約2750万ドル相当が供与された。海馬は、ロシアやベトナムといった市場への輸出強化に注力し、成長を促進する方針を明らかにした」 

    河南省鄭州市は、新たに年間70万台の自動車都市を宣言した。経営難の海馬汽車(従業員約3000人)へテコ入れしている。5年間の契約で、すでに約42億6000万円が供与された。自動車の過剰生産は、さらに勢いづく情勢だ。

     

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    中国経済は、不動産バブル崩壊によって内需が停滞している。これをカバーすべく、「三種の神器」(EV・電池・太陽光パネル)の輸出に全力を挙げている。だが、中国輸出の標的になっている各国は、輸入障壁を高める体制をかためつつある。中国製品には、ダンピング輸出の疑いが濃いというのが理由だ。

     

    中国の工業部門利益が、3月に前年同月比3.5%も急減した。輸出が、3月に前年比7.5%減に見舞われた結果である。工業利益は、1~3月期は前年同期比4.3%増。輸出は、同1.5%増であるが、1~2月と3月の様相でハッキリと境界線が生まれている。年初の勢いが3月に途切れたという意味だ。

     

    『ブルームバーグ』(4月27日付)は、「中国の工業部門利益減少に転じるー海外からの需要低迷が響く」と題する記事を掲載した。

     

    中国の工業部門の企業利益は3月に減少した。輸出の低迷とデフレ圧力の継続が響いた。1~3月の予想を上回る経済成長を維持するのは難しいことを示唆している。

     

    1)「国家統計局の27日の発表によると、大企業の3月の工業利益は前年同月比で3.5%減少。1~3月の利益は1兆5100億元(約33兆円)と4.3%増加したが、新型コロナウイルス禍後に見られた回復との比較では伸びが鈍化している。1~2月の工業利益は前年同期比10.2%増加していた。3月の減少により、連続増益は7ヶ月で終止符が打たれた。輸出は3月に予想外に落ち込み、弱い内需を補う助けにはほとんどならなかった」

     

    中国は、内需が停滞しているので輸出に依存する経済運営を行っている。その頼みの輸出が3月に急減したことから、13月期の工業利益は通期で4.3%増に止まった。1~2月は前年同期比10.2%増であったから、急ブレーキがかかった格好である。これは、中国経済にとって前途の厳しさを予告している。

     

    2)「住宅不況で内需低迷が続く中、工場渡し価格の下落が利益率を圧迫し、工業製品を扱う企業は海外での販売を強化している。ただ、地政学的リスクの高まりによって、そうした取り組みを難しくする可能性が高まっている。欧米諸国は、中国が国内で過剰生産能力を構築し、製品を海外で不当廉売していると非難。欧州連合(EU)は中国の電気自動車(EV)補助金などに関する調査を実施している」

     

    EUは、中国の電気自動車(EV)補助金に関する調査に加え、中国が欧州の風力発電に違法な支援を行ったかどうかも調べている。補助金調査はソーラー企業や鉄道会社にも及び、中国の医療機器調達に関する調査にも間もなく着手する。EUで、対中貿易規制問題を牽引しているのは、欧州委員会のフォンデアライエン委員長(首相)である。これは、EUが対中貿易問題をいかに深刻に捉えているかを示している。

     

    EUは、中国に対して一段と強硬になりつつあり、関税を課すような貿易制限措置をちらつかせている。中国を欧州市場から切り離し、貿易戦争に発展させる可能性もあるほどである。EUは、2022年に対中国貿易赤字が約4000億ユーロ(約67兆6000億円)と過去最大を記録している。EUの危機感が強まるのは致し方あるまい。

     

    3)「国家統計局のアナリスト、於衛寧氏は「工業企業の利益は第1四半期に成長の勢いを維持した」ものの、回復はまだ不均衡だと説明。政府は「内需を押し上げ、引き続き各業種の企業の信頼感を向上させ、産業経済の回復の基盤をさらに強化する」とした」

     

    中国は、不動産バブル崩壊による過剰負債処理を棚上げしたままである。この穴をカバーするために、「三種の神器」の輸出策に出ているが、これも限界を迎えている。

     

    『読売新聞』(4月28日付)は、「日本とEUが経済安保強化へ共同構想、中国を念頭 半導体など調達を特定国に依存しない方針」と題する記事を掲載した。

     

    日本と欧州連合(EU)は、経済安全保障の強化に向けた国際的な共同構想を打ち出す。半導体など戦略物資の調達で、特定国に依存しないことや、環境への配慮など共通の原則を策定していく。中国製など安価な製品が市場を席巻していることが念頭にある。米国を始め同志国にも賛同を呼びかけ、透明性の高いルールに基づく市場競争を目指す

     

    (4)「5月初旬に、日EUのハイレベル経済対話をパリで開催して共同声明を出す見通しだ。日本からは上川外相と斎藤経済産業相、EUの執行機関・欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長が出席する。共同声明では、日EUが「透明、強靱(きょうじん)で、持続可能な供給網」を推進していくことを盛り込む。日EUで経済安保の強化について具体的な声明を出すのは初めてだ」

     

    EUは、日本と協調して半導体など戦略物資の調達で中国に依存しない体制構築を目指している。中国による台風のような輸出攻勢を遮断する姿勢をみせているのだ。中国は、こうして輸出市場を失うのであろう。

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    中国企業は、半導体製造装置の部品の買いだめに余念がない。これは欧米や日本の業者に膨大な利益をもたらしていると同時に、不穏な兆候でもある。23年の世界の半導体装置売上高は、前年比6.1%減の1010億ドルだったと試算されている。だが、中国の税関データによると、23年の半導体装置輸入額は前年比14%増の約400億ドル(約6兆円)に達した。中国は、23年の世界半導体装置の4割を購入したことになる。 

    ここから浮かび上がるのは、中国の半導体戦略である。先端半導体は製造できなくても、レガシィー(成熟)半導体で世界市場を支配しようとする狙いである。 

    『ブルームバーグ』(3月19日付)は、「EU、中国製『レガシー半導体』のリスク調査を検討ー米国に続くか」と題する記事を掲載した。 

    欧州連合(EU)は域内企業による中国製「レガシー半導体」の使用がどの程度広がっているかについて正式調査を検討している。米国はEUに先立ち、これら半導体が国家安全保障と世界のサプライチェーンに及ぼし得る潜在的リスクについて注意喚起し、調査を開始した。レガシー半導体とは古い世代のプロセス技術で製造される半導体である。

     

    (1)「ブルームバーグが確認した声明草案によると、EUはこうした半導体が産業ネットワークにどれだけ深く組み込まれているかについて調査を実施するかどうか検討している。最先端ではないが、電気自動車(EV)からインフラに至る幅広い業界や軍にとって極めて重要なレガシー半導体に依存するリスクを調査しているバイデン政権の動きと一致する」 

    中国は、西側諸国と価値観の基準が異なっている。西側を「出し抜く」ことで優位な立場に立つことを目指しているのだ。現在のレガシィー半導体の増産体制構築には、目的があるはずだ。世界のレガシィー半導体市場で、3割のシェア確保を目指していると推測されている。 

    (2)「EUの行政執行機関である欧州委員会が調査に乗り出せば、規制を含む米国との共同の取り組みへの第一歩となる可能性がある。米国は、中国のこの分野への投資拡大で、太陽光発電や鉄鋼分野のように中国企業が供給を独占するのではないかと懸念している。同声明草案は、「EUと米国は、非市場的な政策や慣行に関する公開情報や市場情報の収集と共有を継続し、計画されている行動について協議することを約束する」としている。同草案はまだ最終版ではない。4月にベルギーで開催される米・EU貿易技術評議会(TTC)に提出される見込み」 

    米国はすでに、こうした中国の動きに警戒観を示している。これに対抗すべく、日台が世界のレガシィー半導体の主要生産基地になるという構想だ。米国が、日本半導体再興へ協力を惜しまない背景には、こうした中国への牽制が隠されている。

     

    日本経済新聞 電子版』(2月6日付)は、「半導体の生産再編、日本が受け皿に 対中で経済安保強化」と題する記事を掲載した。 

    半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、熊本県に第2工場の建設を発表した。日米欧は対中国をにらみ半導体サプライチェーン(供給網)の再構築を進めてきた。トヨタ自動車も加わる新たな枠組みで日台が協力を深め、経済安全保障を強化する。 

    (3)「日本は自動車産業などで先端品を含む半導体需要が見込める。欧米に比べて生産コストや補助金制度などの条件面も優位に立ち、半導体の生産再編の受け皿になっている。熊本第2工場は国内で最先端となる回路線幅6ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体などの生産を予定する。製品の性能や投資規模は第1工場を上回る。第1工場の順調な立ち上げも第2工場の計画を後押しした。第1工場は当初予定通り24年10〜12月の量産開始を見込む。TSMCが建設を決めた日米欧の工場のなかで最も早く立ち上がる」 

    TSMC熊本第一工場建設は、日台の半導体協業関係を強固なものにした。TSMCは、台湾を先端半導体製造基地にし、レガシィー半導体は日本で生産するという方針が浮かび上がっている。日本が、立地的に半導体増産体制を構築しやすい条件を擁しているからだ。

     

    (4)「米中対立が本格化して以降、日米欧は経済安保の観点から、半導体受託生産で世界シェアの50%超を握るTSMCの工場誘致を進めてきた。日本は補助金支給で欧米に先行し、人手不足のなかでもスケジュール通り工場建設を進めた。1号案件がTSMCの熊本第1工場だ。経産省が構想から関与し、最大4760億円の補助金を用意して誘致した。工場で使う工業用水の整備費用の補助などインフラ支援も検討する。経産省は第2工場向けに最大7700億円の予算を用意する。自動運転向けなどの先端品を輸入に頼らざるを得ない状況を改善する狙いがある」 

    日本にとってTSMC誘致は大きな意味を持つ。半導体再興への足場を築くことになるからだ。日本は、半導体製造装置・半導体素材という一貫生産体制を構築している。この強みは、絶対的なものである。 

    (5)「バイデン米政権は対中国を念頭に、日欧や韓台と連携して半導体サプライチェーンの再構築を進めてきた。目玉の一つである「TSMC誘致」の進捗は日本が先行する形となった。TSMCは最先端半導体の研究開発や量産について、今後も台湾で続ける方針を示している。半面、台湾の一極集中は限界を迎えている。日米欧の政府や産業界が生産拠点の分散を求めるだけでなく、台湾で働き手や電力を確保することが難しくなっている。最先端品は台湾を拠点とし、それ以外は日本をはじめ海外生産を広げる見通しだ」 

    日本が、かつての「半導体王国」であった歴史は、ふたたび世界半導体の頂点に立てる潜在的な条件を持つことを意味する。その可能性が強まってきたのだ。

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    中国の習近平国家主席は7日、訪中した欧州連合(EU)のミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長と北京の釣魚台国賓館で会談した。EUと協力して中国の広域経済圏構想「一帯一路」を進める意向を示した。だが、イタリアは12月3日、一帯一路離脱を正式文書で通告した。理由は、イタリアの対中貿易赤字が倍増していたことだ。中国が、貿易赤字圧縮の努力をしなかったことが「破局」を迎えた理由だ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月7日付)は、「中国・EU首脳会議、欧州側は厳しい姿勢」と題する記事を掲載した。この記事は、会談前に報じられたが、EU側の基本姿勢が滲みでている。

     

    欧州連合(EU)指導部は、中国の習近平国家主席に対し、中国政府が経済摩擦への対応を進めなければEUとして新たな制裁や貿易規制措置を設ける用意があると警告する予定だ。また、ウクライナでの戦争でロシア軍が使用している物資の輸出抑制も求めるという。北京で7日に開かれる首脳会議を前に、EU当局者らが明らかにした。

     

    米国政府が中国との緊張緩和に向けて動く中、欧州と中国政府との緊張は高まっている。EU指導部が6日に中国に向け出発する中、イタリア政府は同国が「一帯一路」構想から離脱すると正式に中国政府に伝えたと述べ、双方の対立が深まっていることを示した。また英政府も6日、戦争に関連するロシアの製造業を支えたとして、中国企業に対し初の制裁措置を発表している。

     

    (1)「首脳会議では、習氏と李強首相がウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長およびシャルル・ミシェルEU大統領と会談する予定。EU当局者らは、中ロの協力関係を最優先議題に取り上げると述べ、ガザ地区のパレスチナ人にさらに多くの人道支援を提供するよう中国に働きかける意向だとした。また貿易面では、中国で生産された商品が低価格でEUやその他の地域に輸出され、域内生産者が影響を受けているとし、過剰な供給の問題を取り上げる見通し」

     

    中国が、国内不況の突破口として輸出ドライブを掛けている。それだけに、EU側は、中国に対して安易な妥協が許されない状況である。

     

    (2)「EU側は中国政府に対し、こうした生産に歯止めをかけるよう説得を試みるとみられる。EU高官は、これが成果を挙げられなければ、EUとして貿易規制措置を設けるかもしれないと述べた。このような措置は最終手段になるとみられている。EUの対中貿易赤字は4000億ドル(約59兆円)を突破し、ここ2年間で約2倍に膨れ上がっている。こうした状況について欧州政府当局者は、持続不可能なものだとみている。また、この状況には、中国における欧州企業の進出を妨げる障壁と中国政府の補助金の両方が反映されているとしている」

     

    EUの対中貿易赤字は、4000億ドル(約59兆円)を突破。ここ2年間では、約2倍にも膨れ上がっている。それだけに、中国側の輸入増を迫っている。だが、中国の景気不振で輸入が低迷している。

     

    中国の輸入は11月に予想に反して減少した。新型コロナウイルス禍の影響で大きく落ち込んでいた前年同月の水準さえも割り込んだ。中国経済がなお底入れしていないことを示唆している。中国税関総署が7日発表した11月の輸入は、ドルベースで前年同月比0.6%減少。エコノミスト予想中央値は3.9%増だった。こうした予想を下回る状況だけに、対EU輸入を増やすことは難しくなっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月7日付)は、「習近平氏、一帯一路『中・欧共同で推進』EU首脳と会談」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は7日、訪中した欧州連合(EU)のミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長と北京の釣魚台国賓館で会談した。EUと協力して中国の広域経済圏構想「一帯一路」を進める意向を示した。一帯一路を巡っては、イタリアが経済的恩恵が乏しいと判断し中国側に離脱を通知した。中国は離脱の動きが加速しないよう欧州のつなぎ留めを図る。

     

    (3)「習氏は会談で一帯一路について「150カ国以上に具体的な利益をもたらした」と強調した。EUが進めるインフラ投資戦略との融合も含め「一帯一路の質の高い共同建設を推進し、発展途上国の成長を支援したい」と語った。一帯一路の公式サイトによると、EU加盟国はオーストリアやハンガリー、ポーランドなどイタリアを除いて17カ国が参加している。習氏は中EUの経済関係に関し「高度に補完的だ。双方は利益共同体の絆を強めるため努力すべきだ」と唱えた。「共通の発展を実現するため、EUを経済・貿易や科学技術、産業サプライチェーン(供給網)のパートナーにしたい」と呼びかけた」

     

    中国は、EUとの貿易不均衡問題には触れず、一帯一路を売り込んだことがわかる。EU加盟国では、オーストリア・ハンガリー・ポーランドなど17カ国が参加している。これら「残留組」の離脱を恐れているのだ。ただ、貿易不均衡という形で不利益を被れば、いずれはイタリアに続いて脱退となろう。

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