勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

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    ロシアは、ウクライナ侵攻を始めてすでに16ヶ月経った。ロシア経済は、完全に軍需で拡大するという不安定化する。若者は、30万人動員で軍務についているほか、国外へ大量流出したことも手伝って、労働力不足の深刻化に直面。軍需工場では、「学歴は今やあまり重要ではないだろう。正直なところ、手が2本、足が2本、そして目と耳があれば採用される」という事態だ。 

    『フィナンシャル・タイム』(11月9日付)は、「戦時経済体制のロシア、深刻化する人手不足」と題する記事を掲載した。 

    ウクライナ侵攻を続けるロシアが長期戦に備えるなか、ロシアの軍と兵器工場がますます多くの労働者を取り込んでいる。民間部門は痛みを伴う人手不足に見舞われ、経済全体が不安定化している。労働市場は非常に逼迫している」。ロシアの大手鉱山会社のトップはフ『ィナンシャル・タイムズ』(FT)に語った。「原因は労働力の戦争動員や国外流出だけでない。一番の問題は兵器生産だ」と指摘する。

     

    (1)「労働力不足は、クレムリン(ロシア大統領府)が描くバラ色の見通しとは相反するロシア経済の弱点を露呈させている。プーチン大統領は、ロシア経済の健全性と戦闘や西側諸国の制裁が深刻な損害をもたらしていないことの証拠として、同国の国内総生産(GDP)は増加していると繰り返し強調している。だがエコノミストらは、GDPの数字は国防費の大幅な増加によって実態以上に押し上げられており、長期的な不安定化要因になり得る構造的な問題を見えなくしていると指摘する」 

    GDPは、軍需費の増大で拡大する。長期的にみれば、国民生活は何ら豊かにならない。こういう矛盾した事態が起こっている。 

    (2)「ロシアの危機は戦闘でとりわけ深刻化している。2022年には、ウクライナ側がロシア軍の侵攻を食い止めたことを受け、約30万人が緊急動員された。さらに数十万人が兵役を逃れるため国外に脱出した。脱出者の多くは教育を受けた若者で、高度なスキルを持つ人材に頼るIT(情報技術)などの業界には大打撃が及んでいる。エコノミストやロシアの実業界からは、紛争の長期化を見越して経済を戦時体制に移行させるという政府の決定が状況の悪化を招いているとの声が聞かれる。防衛企業が軍への供給でフル稼働するなか、民間業界は労働者の確保に苦戦している。ロシアの失業率は過去30年間で最低の3%に低下しており、ロシア経済の大半を占める労働集約型産業は働き手の確保に苦労している」 

    ロシア経済の過半を占める労働集約型産業は、国民生活に直結する。戦時経済下で労働力不足に直面しているのだ。

     

    (3)「米シンクタンク、欧州政策分析センターの非常勤シニアフェロー、パベル・ルジン氏は「23年1月以降、軍事関連産業(の購買担当者景気指数)は30〜40%急上昇している」と話す。ロシア政府は9月、24年の国防費をGDPの約6%に相当する10兆8000億ルーブル(約17兆8000億円)とする予算案を発表した。ウクライナ侵攻を始める前年の21年比で3倍、23年の当初予算比では1.7倍になる。独立系アナリストらは、機密費を含めると実際の数字はさらに上がるとみている」 

    24年国防費は、ウクライナ侵攻を始める前の21年比で3倍へ。23年比で1.7倍へ急増する。これに合わせて民間労働力が不足する。

     

    (4)「UPFのエニコロポフ氏は「ロシアの労働市場と経済全体は限界に達している。ギリギリの状態を強いられているため、これ以上の生産は不可能だ」と述べた。例えば、ロシア西部のニジニ・ノブゴロド州では、当局が未曽有の労働力不足を報告していると、ロシア紙コメルサントの地方版が報じた。同州では登録失業者数が9月に27%減少し、製造業で1万7000人の欠員が発生した。そのうち7500人は防衛産業で、この1年で1600人の雇用が創出されるなど労働需要が高まっている」 

    ロシアは、労働市場と経済全体が限界に達している。となれば、ウクライナ侵攻を続ける余力は失われる。供給面から、ウクライナ侵攻は重大な局面を迎えることになりそうだ。 

    (5)「プーチン氏は今夏、この問題を認めた。大統領府で製造業の幹部と会談した際「労働力不足は中小企業に、いい意味ではなく影響を及ぼし始めている」と語った。プーチン氏に続く形で政府高官からも声が上がっている。レシェトニコフ経済発展相は9月、労働力不足は「ロシア経済にとって最大の内部リスク」だと発言した。ロシアの「アルミ王」とも呼ばれる大富豪のオレグ・デリパスカ氏も、防衛企業が他部門から労働者を呼び込んでいるとの見方を示した。FTの取材に対し「国家資本主義は資金と資本、指令で成り立つ。(防衛企業には)資金があるため、人材を採用し、競争を続けるだろう」と語った」

    労働力不足が、ロシア経済にとって最大の内部リスクである。この矛盾は、どこかで吹き上げるだろう。 

    (6)「ロシアのデジタル発展・通信・マスコミ相は8月、国内でIT人材が50万〜70万人不足していると述べた。通信分野のある管理者は、熟練した専門職はもはや「希少種」だと語った。労働市場全般の逼迫について問われると「目も当てられない」状況だと嘆いた」 

    IT人材が、50万~70万人不足している。生産性上昇を押し上げる力が落ちている。

     

     

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    ロシアの傭兵部隊ワグネルの創設者プリゴジン氏は、武装反乱が1日で失敗に終わった。これが、プーチン大統領の権力を弱めたことは疑いない。それだけでない。プーチン氏にとって最も重要な盟友である中国の習近平国家主席にも、実質的に後退を強いたことになろう。肝心の中国経済の低迷や、米国が主導する西側連合との対立激化という問題に直面しているからだ。

     

    「拙いことになったな」。これが、習氏の抱く個人的に正直な危機感であろう。現実は、強気の姿勢を崩さず扇動を続けている。焦点は、習氏がプーチン氏のウクライナ侵攻と傭兵部隊反乱から教訓を引きだせるかどうかだ。習氏の判断が、中国の命運を握っている。

     

    『ロイター』(7月5日付)は、「ロシア劣勢と習氏の打撃、西側は好機生かせ」と題するコラムを掲載した。筆者は、ロイター・コラムニストHugo Dixon氏である。

     

    ロシアによるウクライナ侵攻直前、習氏はロシアとの「無制限の」協力関係を築くと約束し、もしも、ロシアがすぐに戦争で勝利していれば、習氏は素晴らしい戦略を打ち出した形になったとみられる。この同盟は、西側諸国にとって「待った」をかける手段が乏しい、との印象をより強く与えただろう。現実を見ると、ロシアは戦争でしくじった。そして、ワグネルの反乱はプーチン氏のイメージを弱めた上、ウクライナの反転攻勢を後押しする可能性がある。それでも、実際に中国は自らの国際的イメージが損なわれるという代償を伴う形で、プーチン氏を支えている。

     

    (1)「今や西側の地政学的戦略を策定する上で基幹的な存在となりつつある主要7カ国(G7)は、中国経済との関係で「デリスク(リスク低減)」や、先端半導体など軍事転用の恐れがある技術の輸出規制を共同で推進している。米国は、人工知能(AI)向け半導体の対中輸出規制も検討しているところだ。これら全ての要素が、既に低調な中国経済の足をさらに引っ張るだろう。もっとも、中国が抱える最大の問題は、2008年の世界金融危機以降ずっと、借金に頼って成長てこ入れを図ってきたことにある。この間に公的部門と民間部門の合計債務は倍増して国内総生産(GDP)の3倍まで膨らんだ。平均すると年間でGDPの1割の規模で借り入れが増えた計算になる」

     

    中国経済が2008年以降、過剰債務によって支えられてきたことは明白である。債務残高の対GDP比が300%にも達する事態に陥っているからだ。この異常事態が、いつまでも続くはずがない。精算時期を迎える。それが、今から始まるのだ。

     

    (2)「経済の元気が衰えれば、中国が海外に軍事力を投入する力にも制約が加わる。防衛費の急拡大は無理だし、「グローバルサウス」と呼ばれる途上国に影響力を及ぼすための「債務のわな」も、積極的には展開できなくなる。こうした情勢変化を受け、中国がどう対応するかについては2通りの考え方がある。

    1)強圧的な態度を慎むというアプローチだ。

    2)国力が峠を越える前に早く影響力を行使しなくてはいけないという重圧を感じるというシナリオだ。プーチン氏の経験が、中国にとって「反面教師」になるのは間違いない。プーチン氏は、他国を侵略すればそのツケをどのように払わされるのか、身をもって示してくれた」

     

    中国が、経済衰退過程で取り得る道は二つある。これまでの強硬路線の修正か、強行突破かである。後者であれば、中国は破滅への道に転落である。

     

    (3)「G7は引き続き、台湾問題に関して最悪事態に備えなければならない。つまり同盟関係を強化しつつ、中国に対するデリスクの作業を加速させる必要がある。ただ、同時にG7は、最善の展開に向けた取り組みもできる。これは、先月のブリンケン米国務長官の訪中によって生まれた緊張緩和を土台として、共通の利益が得られる分野で、力を合わせる機会を探るという意味だ」

     

    G7は、中国に強硬路線(台湾侵攻)を諦めさせて、共通の利益が得られる融和路線への転換を誘導する必要がある。

     

    (4)「G7は、習氏に対してプーチン氏にウクライナの主権を尊重する形の和平協定を結べ、と働きかけるよう促し続ける必要がある。ある段階で習氏は、プーチン氏は敗北者なのでそうするべきだとの結論に達するだろう。中国と米国主導の同盟の対立は、依然として危うさをはらんでいる。それでも中国の力が落ちてきたことは恐らく、西側にとってマイナスよりもプラスを多くもたらすとみられる」

     

    中国の国力低下は、台湾侵攻への大きな障害になるはずである。だが、習氏はこうした合理的判断を受け入れる冷静さがあるかどうかだ。側近の民族主義者(王滬寧氏)が気がかりな存在である。王氏は、生粋の民族主義者であり党内序列4位に上がっている。

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    ロシアのウクライナ侵攻は、意外な展開になってきた。傭兵部隊ワグネルを率いるプリゴジン氏が、公然と軍事的反抗姿勢を取っているからだ。

     

    プリゴジン氏は23日、ウクライナでの戦争は「ショイグ(国防相)が元帥になれるよう」開始されたのだと非難。「国防省は国民をだまし、大統領をだまし、いかれたウクライナが我々を攻撃しようとして、NATO(北大西洋条約機構)と一緒になって我々を攻撃しようとしているだとか、そんなでたらめをまきちらしていた」のだと攻撃した。

     

    『BBC』(6月24日付)は、「プーチン大統領、ワグネルを『裏切り』と緊急演説で非難 プリゴジン氏は『死ぬ覚悟』」と題する記事を掲載した。

     

    ワグネルの部隊は24日未明、ウクライナから国境を越えてロシア南西部ロストフ・ナ・ドヌに入った。プリゴジン氏が同市内のロシア軍南部軍管区司令部に入る映像が拡散している。動画の中でプリゴジン氏は、ワグネル部隊がロストフを封鎖し「すべての軍事施設を掌握」したと宣言。セルゲイ・ショイグ国防相とヴァレリー・ゲラシモフ総司令官が会いに来ない限り、このまま首都モスクワへ進軍すると述べている。

     

    (1)「イギリス国防省は、一部のワグネル部隊が「ヴォロネジ州から北へ移動しており、首都モスクワを目指しているのはほぼ確実」との見方を示している。同州の州都ヴォロネジは、ロストフ・ナ・ドヌとモスクワの中間地点にあたる。BBCロシア語の取材に対して消息筋は、ワグネルの部隊がヴォロネジでも軍事施設を制圧したと話した。ヴォロネジ州の北にあるリペツク州のイーゴリ・アルタモノフ州知事は24日午後、ワグネルが州内で「装備」を移動させていると認めた」

     

    (2)「プーチン大統領は「ロシア市民への呼びかけ」と題された緊急演説を行い、全軍に勢力を結集するよう呼びかけた。大統領は、ワグネルによる行動は国民への裏切りだとして、ロストフ・ナ・ドヌで「情勢安定化のため断固たる対応」をとると強調。「内部からの反乱はこの国を脅かす恐ろしい脅威だ。この国と国民を攻撃するものだ。そのような脅威から祖国を守るため、我々は厳しい行動をとる」と述べた。同時にプーチン氏は、正規のロシア軍と共にウクライナで戦ってきたワグネルの雇い兵たちを「英雄」としてたたえた」

    大統領は、プリゴジン氏は名指ししなかったものの、その演説は同氏への直接的な警告と受け止められている」

     

    (3)「プーチン大統領の演説にプリゴジン氏が直接反応したものと思われる音声が、その後「テレグラム」に投稿された。プリゴジン氏の声に酷似した声は、「母国への裏切りについて、大統領は非常に間違っている」、「我々は母国の愛国者だ。我々は戦ってきたし、今も戦っている」と主張。「そして誰も、FSB(ロシア連邦保安庁)も、ほかの誰も、大統領が要求したように、我々に罪があると認めたりはしない」、「なぜなら我々は自分たちの国がこれ以上、汚職とうそと官僚主義の中で生きてほしくないからだ」と続けた。この後、プリゴジン氏は「テレグラム」に、ロシア軍が進軍するワグネルの車列を攻撃していると書いた。「まず砲撃、そしてヘリから空爆された」と、プリゴジン氏は具体的な場所や証拠を示さずに書いている」

    (4)「プリゴジン氏はこれに先立ち、メッセージアプリ「テレグラム」に、「自分たちは全員、死ぬ覚悟だ。2万5000人が全員。そしてその後にはさらに2万5000人が」と述べる音声を投稿した。同氏はさらに、プーチン大統領の演説とは裏腹に、自分たちの行動は「ロシア国民のため」なのだと述べた。ロシア第二の都市でプーチン氏の地元でもある西部のサンクトペテルブルクでは、市内のワグネル事務所を警察や国家親衛隊が強襲したという地元情報もある。プリゴジン氏が関係するホテルやレストランの近くでは、「覆面をかぶり自動小銃を持った」人物たちが配備されたと、現地メディアは伝えている」

     

    (5)「イギリス国防省は同日、「ロストフ・ナ・ドヌで、ワグネルはほぼ確実に、主要な防衛拠点を占拠した。その中には、ウクライナにおけるロシアの軍事作戦を統括する司令本部も含まれる」と状況分析を公表した。イギリス国防省はさらに、一部のワグネル部隊が「ヴォロネジ州から北へ移動しており、首都モスクワを目指しているのはほぼ確実」との見方を示し、「ワグネルとロシア治安部隊の戦闘はきわめて限定的で、おそらくその一部はワグネルを受け入れる格好で受け身のままだと思われる」と書いた」

     

    (6)「その上で、「これからの数時間において、ロシアの治安部隊、とりわけ国家親衛隊の忠誠が、この危機の展開を決定するカギとなる。この事態は、最近のロシア国家に対する最も重大な挑戦」だとの見方を示した」

     

    ロシアの治安部隊、とりわけ国家親衛隊が、ワグネルに対してどのように対応するのか。これが、極めて重要と指摘している。プリゴジン氏に共鳴するのかどうかだ。プリゴジン氏によるこれまでの発言では、同調者がいるとしてきたのでその真偽のほどが判明する。

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    ロシアは、ウクライナ侵攻が後手に回りいまや防衛体制を取るほかなくなっている。こうした情勢下で、ロシアの傭兵組織ワグネルがロシア南西部の主要都市ロストフへ進軍したと国営放送が伝えた。ロストフには、ロシア軍の南部軍管区司令部がある。

     

    ロシアの国営テレビは、通常の番組を中断。「緊急ニュース速報」として、プリゴジン氏が「武装蜂起」を呼びかけ、ロシア国内で内戦を開始しようとしたとして、ロシア連邦保安庁(FSB)が刑事捜査に着手したと報道。FSBはワグネル兵に、プリゴジン氏の命令に従わず、拘束に協力するよう呼び掛けている。BBC(6月24日付)が伝えた。

     

    『BBC』(6月24日付)は、「ロシア政府、雇い兵組織『ワグネル』が武装蜂起呼びかけと ワグネル部隊の動きに注目集まる」と題する記事を掲載した。

     

    民間軍事組織ワグネルは、正規のロシア軍と共にウクライナとで戦ってきたが、創設者プリゴジン氏は数カ月前からロシア軍幹部への名指しの非難を激化させていた。

     

    (1)「プリゴジン氏は24日未明、ワグネルの部隊がそれまで戦っていたウクライナ東部から国境を越えてロシアに入ったと主張した。裏付けとなる証拠は示していない。同氏はさらに、ワグネルが「民間車列」を攻撃したロシア軍ヘリを撃墜したとメッセージアプリ「テレグラム」に投稿したが、詳細は明らかにしていない。ウクライナ国境から約100キロ東にある地方都市ロストフ・ナ・ドヌでは同日早朝、ワグネル部隊が政府庁舎を包囲していると思われる様子が撮影されている。市内の内務省関連の政府庁舎の周辺を、武装した男たちが歩き回っているほか、大砲を庁舎に向けた戦車2両が映っている。ロイター通信によると、この場所は現地の警察本部庁舎だという」

     

    (2)「AFP通信によると、プーチン大統領の政敵で亡命中のミハイル・ホドルコフスキー氏は、プリゴジン氏を支持するようロシア国民に呼びかけたホドルコフスキー氏は、「私たちは今こそ助ける必要がある。必要とあれば、この戦いにも参加する」と述べた。また、プリゴジン氏がロシア政府を打倒すると決めたなら、彼がたとえ「悪魔でも」支持することが重要だと発言。「そして、それは始まったばかりだ」と語った。ホドルコフスキー氏はかつて、ロシアでも最も裕福な富豪(オリガルヒ)だったが、プーチン氏と断絶後、10年にわたり服役。現在は亡命し、プーチン氏への厳しい制裁を呼びかけている」

     

    (3)「プリゴジン氏は23日夜、ロシア軍がワグネル宿営地を攻撃し、「大人数」のワグネル兵が死亡したと、音声を「テレグラム」に投稿していた。プリゴジン氏は証拠を提示しないまま、「我々の仲間と、(ウクライナでの戦争で)何万人ものロシア兵の命を奪った連中に、罰を与える」と主張。「抵抗しないようお願いする。抵抗する者は誰だろうと脅威とみなし、破壊する。我々の前に立ちはだかるすべての検問所や航空も同様だ」「大統領権限、政府、警察、ロシア国家親衛隊も、通常通りに機能する」「これは軍事クーデターではなく、正義の行進だ。我々の行動は(ロシア軍の)部隊をいっさい妨げない」とも、プリゴジン氏は主張した」

     

    (4)「(プリゴジン氏は)23日、ウクライナでの戦争は「ショイグが元帥になれるよう」開始されたのだと非難。「国防省は国民をだまし、大統領をだまし、いかれたウクライナが我々を攻撃しようとして、NATO(北大西洋条約機構)と一緒になって我々を攻撃しようとしているだとか、そんなでたらめをまきちらしていた」のだと攻撃していた」

     

    (5)「かつて米国防次官補代理で中央情報局(CIA)捜査員だったミック・マルロイ氏はBBCに対して、プリゴジン氏はプーチン大統領にとって深刻な課題を突き付けていると指摘した。「ロシアのウクライナ侵攻は戦略的に壊滅的で、それをなんとかしようとするのにロシアが私兵組織に頼らなくてはならなかったということ自体、相当なこと。しかし今やプリゴジン氏は、そもそもロシアへの挑発など何もなく、ロシア国民は最初からうそをつかれていたのだと公然と認めている。これはかなりのことだ」と、マルロイ氏は話した」

     

    (6)「ワグネルが、今後仮にプーチン政権を脅かすようなことになれば、「ロシアは自己保存に向けて軍事力を再編成し、ウクライナの反転攻勢に対する防戦から手を引かなくてはならなくなるかもしれない」とも、マルロイ氏は述べた。「たとえこのクーデター未遂が失敗したとしても、(ウクライナでの)戦争に最も近い人たちが、戦争はとんでもない間違いだったと承知していることを、強烈に強調している」と指摘した」

     

    ロシアは過去、戦争が長引くとその不満からこうした「反乱的」な行動が生まれてきた。現在の問題は、その延長線に起っている現象と見られる。過去は、歴史を変える事態になったが、これからどうなるかだ。戦線膠着がもたらしたことは間違いない。

     

     

     

     

     

     

     

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    西側諸国に属する国民は、ウクライナ軍の反攻作戦に大きな期待をかけて「吉報」を待っている。だが、いくつかの村落を奪回したものの、ロシア軍の固い防衛線に阻まれ進軍は難航を極めている模様だ。西側諸国から提供された「虎の子」戦車は、ロシア軍の反撃で被弾した様子が報じられている。ただ、ロシア製戦車と異なり、ウクライナ軍の戦闘員は無事脱出している光景が見られる。貴重な人命は守られているのだ。これが救いである。 

    今後の戦況を占う傍証は第二次世界大戦で、連合軍が敵前上陸して成功したノルマンディー作戦が参考になるという。連合軍は数週間かけてゆっくりと前進し、極めて大きな犠牲を払ったが、ついにドイツ軍を撃破した作戦が参考になる。 

    『CNN』(6月21日付)は、「ロシアは反転攻勢にどれだけ備えができているのか?」と題する記事を掲載した。 

     十分に予想された中で始まったウクライナ軍のロシア軍に対する反転攻勢だが、これまでのところウクライナ側にとって際立った成功とはなっていない。16日、ロシア軍が共有した数日前の交戦の動画には、新たに米国から供与された歩兵戦闘車「ブラッドレー」16両が無力化されたとみられる様子が映っている。ウクライナ軍第47旅団に所属する車両だ。

     

    (1)「こうした状況は、ウクライナにとって全ての終わりを意味するものではないし、ウクライナが現在負けているということにもならない。反転攻勢は野心的な目標の下、ウクライナの広範囲な解放を目指す。つまり過酷で長期にわたり、膨大な犠牲を伴う苦難の道のりだということは常に織り込み済みだ。それでも今回の敗北が明らかにするのは、昨年不手際だらけだったロシアが依然として深刻な脅威をもたらす存在であるという事実に他ならない。彼らにも過去の失敗から学ぶ能力はそれなりにあったということだ 

    ロシア軍は昨年、目を覆うような敗走を続けたが、今回の作戦では準備期間があったので防衛線を固めている。 

    (2)「ここで思い出すべきなのは、ウクライナ軍による南部ヘルソン州での反転攻勢だ。昨年8月に始まった攻勢を受けてロシア軍が退却したのは、11月に入ってからだった。今回の作戦も大まかに言ってそのくらい続く公算が大きい。まして現状はより困難であり、一段と多くの代償を払ってロシア軍の要塞への侵入を試みることになる。そこでは機甲部隊、歩兵隊、防空、砲兵隊、工兵隊の見事な連携の実践が求められる」 

    昨年、ウクライナ南部の反撃では、8月に作戦を開始して勝利を収めたのは11月である。この程度の時間は掛る。

     

    (3)「最良の比較対象となるのは、第2次世界大戦におけるいくつかの戦闘だ。そこでは周到に準備された守備隊への攻勢が往々にして序盤に混乱を来し、重大な損失を被るものの、最終的には成功を収める事例が見受けられる。例えば血みどろの戦闘でノルマンディー海岸への上陸を果たした後、連合軍は数週間かけてゆっくりと前進し、極めて大きな犠牲を払った。ついには英国軍が大規模な戦車攻撃を仕掛け、ドイツ軍の守備を突破したが、結果的に数百台の戦車を次々と失う羽目になった。それでも1週間後、米軍が圧倒的な戦果を挙げる。ドイツ軍が予備兵力の大半を英国軍制圧のために使い果たしていたからだ 

    今回の反攻作戦では、連合軍による第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦が参考になろう。敵前上陸であり犠牲も多かったが、ドイツ軍を撃破できた。 

    (4)「もし、ウクライナ軍がこの反転攻勢に成功するなら、マリウポリやベルジャンシクといった経済的に重要な沿岸部の港湾都市を解放するチャンスが生まれる。これらの都市は昨年、ロシアが占領した。同時にロシア本土と戦略的に重要なクリミア半島の基地とをつなぐ「陸の回廊」を遮断できる可能性も出てくる。実現すればクリミア半島そのものも、ウクライナ軍が所有する数多くの兵器の射程に入ることになる」 

    軍事専門家の多くが指摘するように、ウクライナ軍はマリウポリやベルジャンシクなどのアゾフ海沿岸まで突破する目標を立てている。これによって、ロシア軍の兵站線分断を図るというものだ。

     

    (5)「第47旅団は悲惨な目に遭ったものの、彼らの経験は西側が供与する武器の重要性を改めて見せつけた。優れた性能の車両は「十分に」役に立つ。なぜなら動画から明らかなように、車両に乗っていた兵士のほとんどは生き延びているからだ。ウクライナ軍が比較的装甲の薄いソ連時代の歩兵戦闘車両を使用していたなら、まずあり得なかった結果だ。動画はウクライナ軍がロシアに対して有する別の利点も浮き彫りにする。それは強固な士気とプロ意識だ。ウクライナ軍の兵士はたとえ最前線で作戦が大失敗に終わっても、順序良く退却している。お互いに助け合いながら援護射撃を行い、発煙弾を使用する。パニックに陥ってはいない」 

    ウクライナ軍は、最前線で作戦が失敗してもパニックに陥らず、整然と退避行動している。この士気の高さが勝利を呼び寄せる。 

    (6)「ロシア軍の兵士が疲弊しているのに対し、ウクライナの新たな旅団は経験こそ浅いものの活力に満ち、ロシアの徴集兵よりも質の高い訓練を受けている。とりわけ戦闘に先駆け、北大西洋条約機構(NATO)によって訓練された12の旅団はそうだ。ウクライナのその他の強みとしては、小型ドローンの製造とより効果的な使用が挙げられる。その数はロシアを大幅に上回っている。また西側が供与した精密攻撃が可能な火砲やミサイルは、前線から奥深くにいるロシア軍の部隊にとっても脅威となり得る」 

    ウクライナ軍の本格的な反攻作戦には、高い訓練を積んだ12の旅団が無傷で控えている。現状は、予備的な作戦行動である。ロシア軍の弱点地帯を探り出す狙いが目的だ。

     

     

     

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