米中首脳会談はホワイトハウスの発表によると、中国がイランがホルムズ海峡を軍事化しようとするいかなる動きや、通行料を課そうとする試みにも反対することを明確にした。中国、ロシア、イランからなるいわゆる「枢軸」の実態が脆い関係であることを露呈した。枢軸の一角にヒビ割れが起こった理由は、中国の損得計算に大きく響くからだ。
『ニューズウイーク 日本語版』(5月18日付)は、「イランを見捨てた中国は、次にロシアを見捨てる。中露イランの『枢軸』の『急所』とは」と題する記事を掲載した。
(1)「ロシア国内では、対中依存はすでに構造的なものになっている。ロシアの輸入に占める中国製品の割合は約40%に上り、戦前のおよそ20%から増加している。機械、車両、通信機器、デュアルユース技術など、制裁下のロシアの戦時経済を支える主要分野では、中国が60%から90%の物資を供給している。中国は、ロシアにとって最大の債権者であり、最大のエネルギー顧客にもなった。結果、ロシアは石油や天然ガスの大幅な値引きを受け入れざるを得なくなっている。中国は、ロシアにとって最大の貿易相手だが、ロシアの中国の貿易に占める割合は3%強だ。この非対称性は、決して見過ごせるものではない。ロシアは対中依存状態に陥っている危険性を理解している。ただ、それを表に出さないだけだ」
中国にとってのロシアは、安い石油や天然ガスの売手であるだけである。中国の貿易に占めるロシアの割合は3%強。ロシアの輸入に占める中国製品の割合は、約40%で戦前の約20%から倍増している。この中ロの貿易関係が、国益の比重を示している。
(2)「2024年にフィナンシャル・タイムズが確認したロシア軍の流出文書によると、ロシア軍参謀本部は中国が南方から侵攻してきた場合に備え、中国へ戦術核攻撃まで想定していたことが分かる。あるシナリオでは、中国がロシア極東で抗議者に資金を渡して警察と衝突させ、破壊工作員をロシアのインフラに投入し、そのうえで「ジェノサイド」を口実に人民解放軍を国境に集結させる展開が想定されている。ロシアの計画担当者は、中国の都市への核攻撃を机上演習で想定していたが、西側にはそのように考えていることを知られたくないようだ」
歴史的にみた中ロ関係は、敵対関係にあった。中国は、帝政ロシアに極東地域を奪われたからだ。必ず、奪回に動くはずである。ロシアは、これを認識しているから「戦術核」という反撃構想を秘めている。
(3)「ロシアは好戦的な、衰退しつつある劣位のパートナーである一方、中国は慎重に台頭しており、冒険主義よりも安定と貿易の維持を重視する。だからこそ、中国はホルムズ海峡をめぐってイランをかばわなかった。イランは中東で強硬な行動を続けた結果、すでに中国にほぼ全面的に頼らざるを得ない立場に追い込まれていた。中国は、イラン戦争開戦までは、イラン産原油輸出のおよそ90%の輸出先となっていた。イランによるホルムズ海峡への機雷敷設や通行料の徴収が、中国のエネルギー安全保障に悪影響を及ぼし始めると、習近平の判断は明確だった。中国にとって、従属的な立場にあるイランをかばうために、タンカーの重要航路を危険にさらす理由はなかったのだ」
イランは、ホルムズ海峡を封鎖して中国経済に多大の被害を及ぼしている。だから、中国にとって救済相手でないという認識になっている。中国にとって、イランは従属的な立場にあるので、リスクを冒す必要はないとしている。
(4)「トランプによると、習近平はさらに踏み込み、中国はイランに軍事装備を供給しないと約束した。トランプの言葉を借りれば、それは「大きな発言」であり、イランにとっては壊滅的な発言であった。中国のユーラシア戦略は、対等な同盟関係を築くことではない。相手国を中国に依存させ、都合のよいときには利用し、必要になれば従わせるのだ。イランは、そのやり方が最もはっきり表れた例だった。イランの強硬姿勢が西側への圧力になっている間は有用だったが、それが中国のサプライチェーンを脅かした瞬間、中国はイランをばっさり切り捨てた。ロシアも今、同じ道を歩んでいる。ただ、イランよりスローペースなだけだ」
中国の戦略は、相手国を中国に依存させ、都合のよいときには利用し、必要になれば従わせるのだ。始皇帝以来の「合従連衡」そのものである。合従(同盟)を嫌い、連衡(従属)させるものである。
(5)「中国にとって、ロシアはあくまで利用価値のある相手だった。安いエネルギーを供給してくれる上、アメリカの注意を引きつけてくれる。中国の北側にある緩衝地帯としても機能する。ロシアの行動が中国の経済的安定を脅かし始めた瞬間、中国は態度を変えるだろう。欧州への貿易ルートを破壊すること、中国の銀行に二次制裁のリスクを及ぼすこと、湾岸の中国顧客を巻き込むより広範な対立に発展すること。そのような事態が起これば、中国はイランに対してそうしたように、対応を変えることになる。ホルムズ海峡をめぐる今回の出来事は、中国、ロシア、イランの「枢軸」が、深い信頼や共通の理念で結びついているわけではないことを思い出させる。三者を結びつけているのは、西側からの圧力という側面が大きい」
中国は最近、ロシア極東地域の地図に「中国名」を書き入れている。必ず、奪回するという意思を示したものだ。中国のロシアへの姿勢は、イランも同様で使い捨てである。




