勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

    テイカカズラ
       


    ロシア軍は、ウクライナ侵攻で重大局面を迎えている。ウクライナ軍がクリミア半島奪回に向けて作戦計画を練っているからだ。これまで、冬季の作戦は膠着状態になると予想されていたが、地表の凍結によって作戦が容易になるというのである。

     

    冬季作戦では、ロシア軍が不利と見られている。耐寒装備が、不十分であろうと見られていることだ。ロシア軍兵士は、耐寒装備が行き渡っておらず、凍死などの危険性と隣合わせになれば、士気は一層の低下を余儀なくされよう。

     

    『日経ヴェリタス』(12月4日付)は、「ウクライナ軍『迫るレッドライン』ロシア核使用の懸念も」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナでは、侵攻中のロシア軍が戦力を南部から東部に再配置し始めたことで、今後の戦闘の焦点は東部に移るとの見方が浮上している。ただ、ウクライナ軍は東部だけでなく、南部でも反転攻勢を続けており、ロシア軍が南部で大きな後退を強いられれば、化学兵器や小型核兵器といった大量破壊兵器の使用に踏み切る事態がかつてなく現実味を帯びそうだ。

     

    (1)「ロシア軍は11月、南部へルソン州のドニプロ川西岸から部隊を撤退させ、東岸地域で防衛線を構築している。同時に、後退させた部隊の一部を東部戦線に振り向けたことで、東部地域で攻防が激化するとの見方が多い。ただ、主戦場が東部に限定される保証はない。ウクライナ軍は9月以降、南部にロシア軍主力を引き付けたうえで、東部で一気に占領地を奪回してみせた。一方、現在はロシア軍が東部を重視していることで、南部でのロシア側の守りは手薄になっている」

     

    軍事専門家の見方では、ロシア軍の作戦に迷いがあると指摘している。ウクライナの東部と南部のどちらに防衛の力点を置いているか不明というのだ。ウクライナ軍は、南部でクリミア半島奪回に向けて動いている。ロシア軍はそれを気づきながら、東部で不要な攻撃をかけているのは解せないというのである。

     

    (2)「ウクライナ軍にとって9月と状況が異なるのは、南部での前進を阻むドニプロ川という地理的障害があることだ。ただ、これまでの戦闘でもウクライナ軍は渡河作戦を実施しており、ロシア軍がウクライナ軍のドニプロ渡河作戦を警戒しているとの情報もある。仮にウクライナ軍が東岸に橋頭堡(きょうとうほ)を築ければ、そこを起点に障害が比較的少ないヘルソン州南西部を経てクリミア半島の付け根部分まで短期間に進出する展開がみえてくる」

     

    ウクライナ軍が、ドニプロ川を渡河するのは極めて危険を伴う。対岸にはロシア軍が防衛戦を築いているからだ。こういうリスクを冒すよりも、ザボリージャ州を南下してロシア軍を分断し、クリミア半島への兵站線を絶つ戦術を取るだろう。これが、軍事専門家の見方だ。ウクライナ軍は、「敵前上陸」のような危険な作戦を回避するであろう。

     

    (3)「一方、そこはロシア軍にとってはレッドライン(越えてはならない一線)で、「過激な反応」を誘いやすい。これには二つの事情がある。まず、ロシア軍が2014年の電撃侵攻の成果であるクリミア半島を失う可能性が出てくる。これが現実になると、ロシア国内の厭戦(えんせん)気分や、強硬派によるプーチン政権への突き上げが強まるのは避けられない」

     

    ロシア軍が、クリミア半島奪回が視野に入れば、ロシア軍が核を使うだろうという予想がある。西側諸国もこれをもっとも警戒している。だが、軍事専門家によれば、軍事的な意味はないという。ロシア軍は、報復を受けることを十分に認識しているからだ。米国が、ホットラインでロシアへ警告したほか、両国の情報当局トップが会談して意思疎通を図っている。核を使えば、NATO(北大西洋条約機構)が参戦する危険性が高まる。ロシアは、これを最も警戒しているのだ。

     

    (4)「(クリミア半島を失えば)ロシアの中長期的計画が狂うことだ。「ロシア軍はヘルソン州からさらに西に支配地域を広げ、モルドバを制圧することで、ウクライナを海への出口を持たない内陸国にしてしまうことを企図している」(防衛省情報部局関係者)。できれば、目下の戦闘を膠着状態に持ち込んだ上で、今後数年間かけて軍を再建し、14年、22年に続く3度目となる次回侵攻でウクライナの内陸国化を果たしたいと考えているわけだ。その意味でも、ロシア軍はドニプロ東岸(へルソン州南部)を失うわけにはいかない」

     

    このパラグラフは、完全にロシア側の身勝手な青写真である。西側諸国は、絶対にこれを認める訳にいかないのだ。ロシアが受けている経済制裁は、これから一段と厳しくなる。EU(欧州連合)とG7・豪州は、12月5日からロシア産原油価格の上限制(当面は1バレル60ドル)によって、ロシアの収入減を実現させる。これによって、戦争継続を困難にさせる戦術を発動させるのだ。ロシアは、自らの思惑が実現できるほど、世界が甘くないことを知るであろう。

     

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    ドイツ首相を4期16年務めたメルケル氏は、2021年12月に退任した。この間、プーチン・ロシア大統領との会談は、60回を上回ったという。しかも、プーチン氏とは1対1の会談であった。膝つき合わせた議論を交わした関係である。だが、メルケル氏が首相としてモスクワを最後に訪れたのは2021年8月、プーチン氏の対応は変わっていた。これまでの1対1の会談でなくラヴロフ外相を同席させたというのだ。

     

    メルケル氏は、この最後の会談でプーチン氏の真意を知ったという。もはや権力の座を離れるメルケル氏に深入りしないという信号であったのだ。メルケル氏は、それ以前にプーチン氏が欧州の分断を策していることを知っていたが、「ソフトパワー」でそれを防げると信じていたという。つまり、経済関係が平和を維持すると見ていたのである。ドイツは、ロシアから原油や天然ガスを輸入することで密接な関係を築いてきた。だから、ロシアはドイツを裏切ることはないと信じていたのだ。

     

    プーチン氏は、これを逆手に取って、ウクライナ侵攻によって欧州を分断できると見た。ドイツはロシア側について、ウクライナ侵攻を容認すると踏んでいたのである。ここに、プーチン氏は大きな誤算をしたが、ドイツもまた誤算をしたのだ。経済関係が蜜であれば、平和を維持できるという甘い期待である。侵略者には、こういう「合理的期待」が成立しないことを立証した。

     

    英『BBC』(12月3日付)は、「欧州はアメリカなしでは大変なことに、単独ではロシアに対抗できずーフィンランド首相」と題する記事を掲載した。

     

    オーストラリア訪問中のマリン首相は、「容赦なく正直に申し上げる必要がある。今の欧州は力が足りない」、「アメリカなしでは大変なことになっていた」と発言した。

     

    (1)「シンクタンクのロウイー研究所で講演したマリン首相は、「アメリカはウクライナにたくさんの武器と資金支援と人道支援を提供してきた。欧州にはまだ力が足りない」と述べた。さらに、欧州の防衛力について、確実に能力を増強し「欧州の防衛産業を強化し、さまざまな状況に対応できるようにしなくてはならない」と強調した」

     

    これまでの欧州は、何かにつけて米国と対立してきた。だが、今回のロシアのウクライナ侵攻で、両者は対立から協力へと大きく変わっている。プーチン氏が、最も見誤った点であろう。米国は覇権国家として、世界の秩序維持に責任を負う立場だ。ロシアを信じ切ってきた欧州には、ウクライナ侵攻が晴天の霹靂であった。

     

    (2)「マリン首相は加えて、一部の欧州諸国が近年、ロシアとの関係を強化しようとしてきたと批判。「欧州は長いこと対ロ戦略を築いていた(中略)ロシアからエネルギーを買って、経済関係を緊密にすれば、戦争が防げると思っていた」ものの、この考えは「まったく間違っていたと証明されてしまった」と述べた」

     

    このパラグラフは、ドイツのメルケル前首相を指している。メルケル氏は、筋金入りの「反米主義者」であった。米国が嫌いだったのだ。一方、帝政時代から独ロは密接な関係にあった。米国は、ドイツがエネルギー政策でロシアに大きく依存することの危険性を早くから警告していたが、馬耳東風で聞き流してきた。それが、今回の「エネルギー危機」に繋がった背景だ。ドイツが現在、米国へ最敬礼している理由である。

     

    (3)「マリン首相はこれについて、欧州諸国はポーランドやバルト諸国の警告に耳を傾けるべきだったと指摘。ロシアに近い各国は、ロシアがウクライナ侵攻となると「経済関係など気にしていない、制裁など気にしていない、そういう諸々は一切気にしていない」のだと、かねて警告していたと、マリン氏は強調した。さらに、欧州諸国の軍備がウクライナ支援によって縮小する中、マリン首相は欧州各国が手元の軍備を強化する必要があると強調した」

     

    ポーランドとバルト三国は、ロシアの残忍性を最も知っているだけに、ロシアへの警戒感はもっとも強かった。ポーランドは、ロシアのウクライナ侵攻を最も早くから警告してきた国である。今回のロシア産原油価格の上限制決定で、事実上の主導権を握っていたのはポーランドである。EUが、ポーランドに敬意を表したとも言えるだろう。

     

    (4)「最近では、ロシアと国境を接するエストニアなどから、それをGDP比3%に増やすよう求める声も出ている。ロシアと1300キロ以上にわたって国境を接するフィンランドは今年、スウェーデンと共に正式にNATO加盟を申請した。NATO加盟30カ国は7月にフィンランドとスウェーデンの加盟議定書に署名。全部30カ国が国内の批准手続きを終えれば、両国はNATO加盟国になる」。

     

    ロシアはこれまで、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟を絶対許さないという姿勢であった。現在のロシアには、前記二ヶ国へ攻め込む軍事力すらないほど消耗している。ウクライナ侵攻で、ロシアの国力は大きく落込んでおり、回復のメドは立たないほどだ。

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    30万人の動員令は、ロシア企業に大きな後遺症を残すことになろう。企業は、働き盛りを招集されただけに、その穴埋めに必死である。簡単に人員補充もできず、受注があっても応じられない事態になっている。それだけでない。能力と資産のある多くの人々が出国しているのだ。これは、ロシア経済にボディブローのように効いてくるに違いない。

     

    英国『フィナンシャル・タイムズ』(11月29日付)は、「『手当たり次第に動員』、ロシア企業の人手不足深刻」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領がウクライナに侵攻するロシア兵の大量動員を発表したのが9月20日。その翌朝には全国の男たちの職場に徴兵事務所への出頭を命じる令状が届いていた。夕方になると、妻たちが帰宅しない夫を探しに職場へ押し寄せた。ある大手鉱業会社幹部は「飲み物を出して彼女たちを落ち着かせなければならなかった」と工場内での絶望的な光景を振り返った。「心情は理解できる。朝に出勤した夫が帰って来なかったのだから」。ロシア企業の間では突然の徴兵による動揺が広がっている。9月21日以降、少なくとも30万人の男性がウクライナ戦争に動員され、それをはるかに上回る人々が国外に脱出した。

     


    (1)「ロシアのガイダル研究所が今月発表した調査結果によると、動員令を受けて同国は1993年以来最悪の労働力不足に陥っている。企業への調査では、大半の回答者が需要に応じようにも増産できないと述べたほか、減産したり製品の品質を落としたりせざるを得ないという回答もあった。労働市場エコノミストのウラジーミル・ギンペルソン氏は「端的に言えば、国内総生産(GDP)を生み出す健康で学識も体力もある人が減ったということだ」と指摘した。同氏はモスクワを離れ、現在は米国で職を得ている。「もしロシア政府が経済成長を優先したいなら、致命的な間違いを犯したことになる」と指摘」

     

    突然の招集である。有無を言わせないで引っ張っていく状況は、ロシア経済に大きなひび割れを起して当然だ。しかも、人口動態的に見て20〜40歳の労働力人口は減少過程にある。ロシアにとっては、泣き面にハチである。

     

    (2)「徴兵と頭脳流出によってロシアの人口減少に拍車が掛かっている。ロシア連邦保安局(FSB)の国境警備局によると、7〜9月の出国者数は970万人と前年同期より120万人増加し、4〜6月の2倍近くに上った。(前出の)ギンペルソン氏によると、生産性向上に不可欠な20〜40歳の労働力人口が2010年代後半から30年にかけて25%減少すると人口統計学者は予測している。単純労働者は中央アジアからの移民で補えるが、動員前から人手不足に悩まされていたIT(情報技術)分野の高技能労働者の後任を探すのは不可能だと米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のオレグ・イツホキ教授は指摘する」

     

    動員令30万人以上の人達が出国している。出国した人たちは、外国で暮らして生きられる技能と資産を持っている。ロシア経済にとっては二重の打撃だ。

     

    (3)「ロシア中央銀行のナビウリナ総裁も10月、動員令により「労働市場の構造変化や専門技能者不足が生じ」インフレが加速する可能性があると懸念を示した。米投資銀行ルネサンス・キャピタルのエコノミスト、ソフィア・ドネツ氏は、「技能労働者の国外流出は長期的な成長力に悪影響を及ぼすだろう」と予想する。働き手の流出は労働力や経済に間接的な負担を強いている。ドネツ氏によれば、生産年齢人口1人当たりの高齢者などの扶養家族が増えた。また、イツホキ氏によれば、「明らかに元から裕福だった」人々が国外に脱出したため、労働者は平均的に貧しくなった。つまり「ロシア経済の需要を生み出していた多くの人がいなくなったわけだ」と同氏は補足した」

     

    このパラグラフは、極めて重要な点を指摘している。ロシア経済への長期的な影響がいかに大きいかである。20~40代は働き盛りである。この層が、招集されるか出国している。出国者は、技能と資産を持っている。これは、供給と需要の二面でロシア経済に打撃を与えるはずだ。

     

     

     

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    ウクライナ軍は晩夏からの4カ月間、ロシア軍との市街戦に持ち込まず、南部の要衝へルソン市を奪還するため、用意周到な反撃を進めて成功した。そのウクライナ軍を指揮する総司令官は、まだ49歳のザルジニー氏である。

     

    昨年7月、ウクライナ軍の中間管理職であったザルジニー氏が、ゼレンスキー大統領の抜擢人事で総司令官に就任した。この柔軟な人事が、強敵ロシア軍を窮地に追込む立役者を生んだのである。もちろん、西側諸国からの手厚い武器弾薬の支援あっての勝利である。だが、その貴重な武器弾薬を無駄にせず、有効に使う総司令官の力量にも注目すべきだ。

     

    ザルジニー氏は、旧ソ連型のウクライナ軍から、米軍式軍隊への柔軟な人材配置の妙を学んでいる。氏は軍人の家に生まれ、高校卒業後はオデーサの士官学校に入学し、修士論文では米軍の権限移譲型の組織づくりを研究。それまでのウクライナ軍は、旧ソ連モデルで凝り固まった上意下達な意思決定に依存していた。それをNATO軍のように、柔軟組織にしたいと考えるに至った。

     

    ザルジニー氏は、総司令官就任直後すぐに組織改革に着手。数週間で、現場部隊の将校は、作戦目的を実現するための判断として、上級指揮官の許可は不要というルール作成した。これによって、各部隊がそれぞれの戦況に合わせて軍を使うことができたのだ。さらに重要なことは、ザルジニー氏が敵将となるロシア軍のゲラシモフ参謀総長の著作や論文をすべて研究していたことだ。

     

    ゲラシモフ参謀総長は、フェイクニュースやサイバー攻撃など、非軍事活動による情報戦や心理戦と軍事力を組み合わせて鮮やかに勝利する「ハイブリッド戦争」を編み出した人物として著名だ。ロシアのクリミア併合を成功させた立役者として知られる。ザルジニー氏は、ゲラシモフ氏の著作を十分に研究していたので、ロシアの軍略の裏をかく戦法で見事な成功を収めた。以上は、『週プレニュース』(10月31日付)から引用した。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(11月18日付)は、「ウクライナ『鉄の将軍』、ザルジニー総司令官の気骨」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロシアが2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以降、ウクライナが善戦している背景には国民から「鉄の将軍」とたたえられる人物の指揮がある。ロシアから奪還した東部ハリコフ地域の反転攻勢に参加したウクライナ国家親衛隊のビタリー・マルキフ氏は、「敵とその行動を知り、海外パートナーの支援を得て弱みを突くことができれば見事なことだ。これをやってのけているのが、ザルジニー総司令官だ」とたたえた」

     

    ザルジニー総司令官には、年齢的な若さ来る気負いがない。ロシア軍の戦略を頭に叩き込み、安全を期しながら、「ここぞ」という局面で大英断を下して戦果を上げる。見事な戦い方である。

     

    (2)「ウクライナの元国防相で、現在は政府の安全保障担当顧問を務めるアンドリー・ザゴロドニュク氏は、「ハリコフとへルソンにおいて、まさに臨機応変な戦闘だった」と強調した。ザゴロドニュク氏によると、ザルジニー氏の指揮は「部下に自らの能力や才能に気付かせる」というスタイルだ。これに対し、ロシア軍は「1人か2人が判断を下し、残りは黙っていろと言われる」。西側の支援国から供与された最新鋭の兵器も加えた「この強みが、ロシアが持つ大量の迫撃砲や戦車など全てのものに勝っている」という」

     

    ロシア軍は、指揮官がすべてを決める。一方、ウクライナ軍は現場の判断に任せる柔軟性を持っている。この点が、両軍の戦果に大きな違いを生んでいる。

     

    (3)「ロシア軍の指揮系統はトップダウン型で、現場の指揮官が主導権を握るのをためらっており、守勢に回っていると軍事専門家は指摘する。一方、ウクライナは手を緩める兆しはみられない。米国の駐欧州陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏はヘルソン解放を受け、ツイッターに「ウクライナ軍は冬も歩みを止めるわけがない。ロシア軍に圧力をかけ続け、問題を修正したり、防御力を強めたりする暇を与えないだろう」と指摘した。

     

    ウクライナ軍は、常にロシア軍を攻撃して揺さぶりをかけ続けている。相撲と同じで、押して押して、押しまくる戦法である。動きを止めたら敗北するのだ。この背後では、ハイマースによって兵站線を潰すので、ロシア軍の補給が少なくなり、士気が低下するという戦法である。

     

    (4)「米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長が、ウクライナ政府は今冬の期間をロシアと停戦の交渉に使うことができるとの見方を示すと、自分の意見をめったに公にしないザルジニー氏は異議を唱えた。ザルジニー氏はフェイスブックの投稿で、米国側に「我々の目的はウクライナ全土をロシアの占領から解放することだ。どんな状況でもこれを続ける。交渉の唯一の条件は、ロシアが全ての占領地域から去ることだ」と電話で伝えたことを明らかにした」

     

    ウクライナ軍は、「冬将軍」の到来でも攻撃を止めず、戦い抜くこれまでの戦術を踏襲する。ウクライナ軍にはNATOから防寒着が供与されている。さらに、自国領であることの強みで国民からの支援がある。ロシア軍には、それが全くないのだ。形勢は、自ずと決まるであろう。

     

     

     

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    ロシア軍は、これから迫る「冬将軍」を避けるために、ヘルソン市の住民を強制移住させた空き家にしのび込み、民間人の服装で潜伏していることが分かった。ウクライナ軍が進軍すれば、軍服に着替えて逆襲すると待ち伏せ戦法である。だが、ウクライナ軍はすでのこの動きを知って警戒している。

     

    『CNN』(11月8日付)は、「ロシア軍、占領下のヘルソン州で民間人への強制捜索を強化 州都で戦闘の可能性も」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア軍は、ウクライナ南部ヘルソン州の占領地域で民間人への監視を強化している。地元住民を拘束し、ゲリラによる抵抗活動の根絶を図っている。ウクライナ軍が明らかにした。

     

    (1)「占領下のヘルソン市で、ロシア軍の部隊は現在、ほとんどが民間人の衣服を着用し、民間人の家屋で暮らしている。「市内での陣地を強化して市街戦を行うため」だと、ウクライナ軍や住民がCNNと交わしたメッセージの中で指摘した。ウクライナ軍は、2月下旬の侵攻開始から間もなくロシア軍が制圧したヘルソン州の領土のかなりの部分を奪還。10月初めには驚くべき勝利を立て続けに収めてきたが、州都ヘルソン市に迫るにつれ進展のペースは鈍ってきている。同市の攻防を巡っては、激しい戦闘が繰り広げられることも予想される」

     

    国際法では、兵士が戦場で民間人の服装をすることを禁じている。敢えて、その禁じ手を使って、ウクライナ軍を誘き出そうという戦法だ。ロシア軍も落ちぶれたものである。

     

    (2)「ウクライナ軍が創設した国家レジスタンスセンターは7日、「ウクライナ軍が反転攻勢を仕掛ける中で、占領者たちは選別の措置を著しく強化している」と指摘。州内の占領地域では住民に対する強制捜索が激しさを増し、積極的に地下活動を突き止めようとする動きがみられるとした。同センターが把握するところによると、数十件の拘束がここ数日で行われた。ウクライナ軍が反攻を強化する中、民間人に対して「可能であれば」占領地域から退去するよう、同センターは呼び掛けている」

     

    ロシア軍は、伝統的に敵の選別を厳しく行なうという。この手法が、ウクライナで再現されているものだ。内通者を防ぐという意味であろう。ウクライナへ侵攻したのだから、母国へ内通者が出るのを恐れているに違いない。

     

    (3)「ヘルソン州は、ロシアが国際法に違反してウクライナからの併合を宣言した4州のうちの1州。住民からの報告によると、路上には軍隊の姿がより多く見られるようになっている。ヘルソン市に住む女性は6日、CNNの取材に第三者を通じて答え、ロシア軍の兵士らについて、占領した村々で住民に対し一段と攻撃的に振る舞うようになっていると明らかにした。CNNは安全上の理由からヘルソン州の住民の身元を明かしていない。ヘルソン市自体は「かなり静か」だが、「時折、夜に自動小銃の銃声が聞こえることもある」と上記の女性は語った。市内には外出禁止令が敷かれており、夜に出歩く人はいないという」

     

    ロシア軍は、ヘルソン市内に塹壕を掘っているのではなさそうだ。民家に隠れている程度とすれば、重火器で武装しているとは思えない。ウクライナ軍の進撃を遅らせるという狙いであろうか。ドニプロ川の東岸には塹壕を掘って、重火器を揃えているという。ドニプロ川の西岸へ殺到するウクライナ軍を東岸から攻撃する準備と伝えられている。

     

    (4)「また、女性によると市内の複数の検問所は撤去され、市の入り口にある唯一の検問所で書類や車内の検査が行われている。公共交通機関のミニバスの場合は、車内に占領者が入ってくる。携帯電話をチェックしたり、男性に対してタトゥー(入れ墨)を確認させるよう迫ることもあるという。大半の兵士は30歳過ぎとみられるが、18~20歳くらいの若い兵士も増えてきたと、この女性は述べた」

     

    動員令で招集した若者が、ヘルソン市内へ送り込まれているようだ。完全な弾よけ要員であろう。動員令で集められた若者は、すでに多くの戦死者が出ている。ウクライナ東部では動員兵の1個大隊の500人以上がほぼ全滅したと報じられた。

     

    『CNN』(11月8日付)は、「ロシア軍の『ヘルソン撤退』は偽装工作か ウクライナ」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍のナタリア・グメニュク報道官は5日、ロシア軍が南部ヘルソン州から撤退すると見せかけ、ウクライナ側の部隊を市街戦におびき出そうとしていると主張した。

     

    (5)「グメニュク氏は国内メディアとのインタビューで、ロシア軍が実はヘルソンにとどまっていることを示す客観的な証拠があると述べた。市内を流れるドニプロ川の左岸(東岸)に置かれた陣地は、右岸(西岸)陣地の援護に使われるとみられる。同氏によれば、左岸へ移動したのはロシア軍の精鋭部隊や将校らで、右岸に残った部隊は退避経路を断たれ、最後まで戦うことを強いられている。ロシア軍は撤退を偽装することにより、近隣集落での市街戦にウクライナ軍をおびき出す作戦とみられ、ウクライナ側もこれに対抗する戦略を立てているという

     

    ウクライナ軍は、徹底的にロシア軍の戦法を読み込んでいるという。2月24日の侵攻の際も事前想定範囲内の中で、最も拙い攻撃であったという。今回の「囮(おとり)作戦」も、ロシア軍の得意の戦法かも知れない。ロシア軍は、完全に手の内を読まれている。

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