勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

    あじさいのたまご
       

    ロシア軍のクゾブレフ上級大将は11月下旬、プーチン大統領にウクライナ東部ハルキウ州クピャンスクの「解放を完了した」と報告した。クピャンスクは、小さいながら戦略的に重要な要衝だ。その後プーチン氏は、ロシア軍最高の栄誉である金星章をクゾブレフ氏に授与した。だが授与式からわずか3日後、ウクライナのゼレンスキー大統領がクピャンスクへの境界標前に立つ動画を公開した。第三者による評価では、ロシアは2022年前半以降、クピャンスク全域を支配下に置いたことはない。このように、ロシア軍は大統領を欺くような戦況報告をして、勲章まで授与されている。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(12月22日付)は、「自信深めるプーチン氏、根拠に不正確な戦況報告か」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領がロシアに有利とみられている和平案を提示したにもかかわらず、プーチン氏は戦争を推し進めている。欧米の政府関係者はロシア大統領府に届く不正確な情報が同氏の判断に影響していると考えている。

     

    (1)「2人の当局者によると、ロシア軍や情報機関はプーチン氏に定期報告を行う際、ウクライナ側の死傷者数を水増ししているほか、ロシアが人員などの軍事資源で優位に立っていると強調したり戦術的な失敗を小さく見せたりしているという。プーチン氏と定期的に面会する側近が、ウクライナ侵略が勢いを失いつつあるロシア経済の重荷になっていると説明しているものの、軍幹部が伝える楽観的な戦況報告によってプーチン氏は全面的な勝利を収められると信じているという」

     

    太平洋戦争でも、旧日本軍は戦果を過大に発表していた。これが、戦争を長引かせた大きな要因だ。ロシアでも、ウクライナ侵攻で同じ手が使われている。

     

    (2)「バンス米副大統領も10月、その傾向に言及した。「ロシア側は実際の戦況より自分たちが優位に立っていると考える傾向があり、本質的にずれた期待を抱いている」と述べ、これが合意をより困難にしているとの見方を示した。英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のロシア専門家キア・ジャイルズ氏は、ロシアの偽情報作戦が国外にも届いており、「トランプ氏の側近の大半にロシアが早期に戦争に勝利する」と確信させる「非常に高い効果」を上げていると指摘した」

     

    プーチン氏は、完全に「雲の上」の人になっている。ロシア軍の嘘情報を真に受けているからだ。

     

    (3)「ゼレンスキー氏は12月中旬、「ロシアから大量の偽情報が流れてきている。そのため米国の仲間にロシアの言うことをうのみにすべきではないと合図を送った」と報道陣に述べた。ロシアの独立系ニュースサイト「ファリデイリー」はプーチン氏が10月以降、公開の場で6回軍幹部から説明を受けており、ウクライナ侵略開始以降で最も多いと報じた。そのうち3回でプーチン氏は軍服を着用していた。4時間半に及んだ19日の記者会見で、プーチン氏はロシア軍が優位に立っていると再び主張した。「我が軍は前線全体で前進しており、敵は後退している」と述べ、「25年末までに(戦場での)新たな成功を目にするだろう」と国民に約束した」

     

    ロシア軍の嘘情報は、米国まで流れて正常な判断を妨げているほどだ。プーチン氏が丸め込まれているのは、最も信頼している軍幹部から聞かされるかららだ。

     

    (4)「プーチン氏への戦況報告は、ウクライナ侵略の総司令官であるゲラシモフ参謀総長が主に行っている。ウクライナは、抵抗しないとの報告を受けていたゲラシモフ氏が2022年にウクライナの首都キーウへの電撃戦を指揮した。1カ月後には撤退を余儀なくされ、作戦は大失敗に終わった。戦闘が長期化すると、侵略を支持する強硬派はゲラシモフ氏と当時のショイグ国防相がプーチン氏に実情を知らせず、多数の兵士を犠牲にする「肉ひき機」戦術に依存していると非難した。前出のジャイルズ氏は、組織内におけるこの「独立した偽情報のループ」が軍事作戦の結果に直接影響していると指摘した。最も顕著な例が22年に始まったウクライナへの全面侵略そのものだ。プーチン氏は数日で終わると期待したが、4年近く続いている」

     

    ウクライナ侵攻をはじめた時のゲラシモフ参謀総長が、いまもプーチン氏への「嘘戦況報告」の張本人となっている。

     

    (5)「ゲラシモフ氏は24年8月、プーチン氏にロシア西部クルスク州でウクライナ軍の前進を止めたと報告した。だが実際にはウクライナ軍が既に同州の一部を制圧しており、混乱の中で避難した住民に死者が出た。同じ集落を何度も制圧したと主張するなど勝利を誇張する報告と、戦場での実態には落差があった。これは民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏(故人)による23年の反乱で、ゲラシモフ氏とショイグ氏が主な標的となる理由にもなった。ジャイルズ氏によれば、ロシアが停戦合意によって得られる利益を無視し、多大な犠牲を払って侵略を継続しているのも、この落差を埋めるためだと考えれば説明できる」

     

    ロシアが、停戦合意によって得られる利益を無視し、多大な犠牲を払って侵略を継続しているのも、すべて「嘘戦況報告」が原因としている。実に、「罪作りな話」である。

     

     

    テイカカズラ
       

    ロシアは、ウクライナ和平をめぐって「のらりくらり」しながら時間稼ぎをしている。ウクライナの体力疲弊を待つ形だ。最終的には、ロシアの思い描く通りの決着へ持ち込もうという算段だ。ふらつくロシア経済は、ウクライナ侵攻4回目の冬を迎える。国民生活は疲弊しているが、未だ崖っ縁までには至っていない。これが、プーチンロシア大統領にわずかな「余裕」を与えている。

     

    『ブルームバーグ』(11月27日付)は、「ウクライナ侵攻から4回目の冬、ロシア国民に痛み-経済的体力が試練に」と題する記事を掲載した。

     

    プーチン大統領の下でロシアが開始したウクライナ侵攻から4回目の冬を迎え、ロシア国民は日常生活のあらゆる部分で影響の広がりを実感している。ロシア中部と南部の何十もの地域で、エネルギー施設や住宅がドローンとミサイルの攻撃を受けており、前線との近さを実感せざるを得ない。空襲警報のサイレンがほぼ毎晩鳴り続け、戦闘が迫っていると絶えず知らせる。

     

    (1)「前線のはるかかなた、モスクワを含むロシア各地で、経済的痛みを人々は感じ始めた。家計は食費を切り詰め、鉄鋼・鉱業・エネルギー産業も苦境に陥り、成長エンジンに亀裂が幾つも生じつつある。大規模財政出動と記録的なエネルギー収入が支えるロシア経済のレジリエンス(体力)が試練にさらされている。苦しみはウクライナとは到底比べものにならず、プーチン氏に戦争終結を促す可能性は低い。それでも2022年2月の全面侵攻を決断した代償が、これまでになく大きいという現実を浮き彫りにする」

     

    ロシアの今年の冬は、いつもの冬よりも厳しくなりそうだという。戦争の痛みが、あちこちで強くなっているからだ。家計は食費を切り詰め、鉄鋼・鉱業・エネルギー産業も苦境に陥っている。軍需産業は、武器を納品しても政府から代金が支払われない状態だ。この状態が、前記の鉄鋼・鉱業・エネルギー産業へ波及している。

     

    (2)「トランプ米政権は停戦実現に向け、ロシアの石油・天然ガス収入の抑制を目指す圧力を強めている。ロシアが望む制裁緩和を盛り込んだ包括的和平案を巡り、米ロの交渉が水面下で続いているもようだ。米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのアレクサンドル・ガブエフ氏は「全体の経済指標に基づけば、今この戦争をやめることがロシアの最善の利益になるだろう。けれども戦争を終わらせたいと考えるには、崖っぷちに立たされている認識が必要だ。ロシアはそこにまだ至っていない」と指摘した」

     

    プーチン氏は、「時間を味方につけている」。粘り勝ちで、ウクライナを屈服させるという「我慢比べ」をしている。トランプ氏が、ウクライナへ強力な武器を与えて、ロシアの経済的消耗度を引上げれば、事態の打開へ繋がるであろう。だが、トランプ氏には別の思惑がある。ロシアを味方につけて対中国戦略を練っているからだ。

     

    米国が、先に提出した和平案には、ロシアをG8へ復帰させるという項目さへあって仰天させた。トランプ氏が、ロシアを取込もうという戦術が含まれている。ウクライナの犠牲で、米国の対中戦略へロシアを組入れるというのだ。ロシアと米国の下打ち合せでは、ロシアがこれを望んだのであろう。ロシアの本心は、新興国のトップでなく先進国の一角に席を占めて「大国ロシア」の威容を国民に示したいのであろう。

     

    このロシアの願望は、どこまで満たして行けばいいのか。その場合の欧州の反応はどうか。難しい方程式である。だが、なによりも侵略されたウクライナの悲劇の回復が第一でなければならないが、当のウクライナ政府の幹部は、大規模な汚職容疑で揺れている。戦争で国土が消えるかどうかという瀬戸際で、賄賂を懐に入れる輩がいるとは絶句する。そう言ってはいけないが、「タヌキとキツネの化かし合い」という局面である。

     

    こうなると、最前線で命を的にさせられて戦っている両軍の兵士とその家族、犠牲になった兵士や家族が、最大の貧乏籤を引かされたことになる。最前線から遠く離れるほど、それぞれの「欲望」が渦巻いて、この戦争を利用しようとしている一団の人たちが控えているのだ。

     

    ロシアの文豪トルストイは、若き日にクリミア戦争に従軍した経験が、反戦思想の原点となった。晩年には非暴力主義(トルストイ主義)を提唱し、ガンジーにも大きな影響を与えた。トルストイにとって戦争とは、人間の理性と愛を破壊する最大の暴力とみた。このトルストイが、次のような名言を残している。

     

    「戦争は、最も卑劣な人間が、最も高貴な理想を語るときに始まる」。この言葉は、プーチン氏や習近平氏にそのまま当てはまる。プーチン氏は、「大ロシア帝国の復活」を。習氏は「中華民族再興」を語って、戦争を美化しているのだ。正義の戦争などは存在しない。邪悪だけが開戦動機である。

     

     

    115
       

    米欧の政治家や識者の間では、第2次世界大戦の直前の状況に、現状が似てきたという指摘が広がっているという。ウクライナでは、ロシアによる侵略が続き、欧州にも準戦時ムードが漂っている。アジアでも朝鮮半島や台湾海峡、南シナ海の緊張が高まっている。中ロが手を結んで西側諸国へ戦いを挑むという説に現実性はあるのか。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月2日付)は、「2026年に世界は同時戦争を防げるか 第2次世界大戦の直前に類似」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙のコメンテーター秋田浩之氏である

     

    約80年続いた戦後が終わり、世界は「戦間期」に入った。ウクライナではロシアによる侵略が続き、欧州にも準戦時ムードが漂う。アジアでも朝鮮半島や台湾海峡、南シナ海の緊張が高まる。こうしたなか、米欧の政治家や識者の間では、第2次世界大戦の直前の状況に、現状が似てきたという指摘が広がっている。

     

    (1)「最も懸念されるのがロシアのウクライナ侵略が続き、欧州に戦火が飛び火していくことだ。ウクライナ停戦を実現しようと、トランプ米大統領は8月15日、ロシアのプーチン大統領と米国・アラスカで会談した。詳しいやり取りは一切、公表されていないが、失敗に終わったことは明白だ。会談後の共同記者会見で、プーチン氏はこう力説した。「ウクライナ問題の解決を持続的で長期的なものにするには、危機の根本的な原因をすべて取り除かなければならない」。ウクライナ領土の一部割譲をはじめとする要求を事実上、繰り返したに等しい」

     

    ロシアが、戦線を拡大させるか否かは継戦能力にかかっている。軍事専門家は、戦争だけを取り上げているが、肝心なのは「兵站線」である。安易な戦争拡大論は意味がない。ロシア経済は、「下り坂」である。今後は、大都市での徴兵もしなければならない。反戦論が一挙に高まる。こういう総合論で考察すべき問題である。台湾侵攻も、中国経済の「下り坂」で危機論は収まってきたのだ。

     

    (2)「ロシアは8月下旬以降、停戦実現に水を差すような言動を繰り返している。ウクライナのゼレンスキー大統領とプーチン氏の早期会談について、準備に時間がかかると指摘。停戦後のウクライナへの「安全の保証」に関しても、ロシア抜きの解決に反対する意向を示した。ウクライナの領土をさらに奪い、有利な条件を得るまで侵略をやめない姿勢とみられる。このままウクライナでの戦争が続けば、やがて欧州にも紛争が広がる恐れがある。北大西洋条約機構(NATO)の結束を崩そうと、ロシアが欧州にも攻撃する危険があるからだ。実際、欧州の情報機関の間では、ロシアによるNATO攻撃を警告する分析が相次いでいる」

     

    プーチン氏は、自分の仕掛けた戦争だから止められないだけだ。良い条件が出れば、明日にでも停戦するだろう。ウクライナが停戦しないから、戦線を拡大すればNATOも折れるだろうという駆け引きだ。本当に戦線拡大する経済能力はなくなっている。

     

    (3)「デンマーク国防情報局(DDIS)は25年2月、ロシアが今後5年以内に欧州で「大規模戦争」を起こす可能性を警告した。ドイツの対外情報機関、連邦情報局(BND)のブルーノ・カール長官も同年6月、独メディアに対し、ロシアがエストニアなどに攻撃を仕掛ける危険性を指摘した。考えられるのは全面侵攻ではなく、特殊作戦だ」

     

    ロシアが、エストニアなどに攻撃を仕掛けるのは、全面侵攻ではなく特殊作戦だ。それは、脅しである。この脅しに乗ってはいけない。

     

    (4)「エストニアなどをロシアが攻撃しても、NATOが直ちに集団防衛を発動し、ロシアに反撃することはない。核戦争の危険を冒してまで、ロシアと戦争すべきかどうか、NATO内で意見が割れる。結局、NATOは動けず、結束は失墜する……。仮にロシアがエストニアを攻撃し、NATOが反撃を見送ったとしても、ロシアと欧州が「戦争状態」に突入する可能性がある。対ロ強硬派であるバルト3国や英国、北欧諸国などが有志連合を組み、ロシアに軍事報復することが考えられる」

     

    肝心の米国は、黙ってみているのか。トランプ氏は、「自分が大統領であったなら,ウクライナ戦争を始めさせなかった」と豪語している。今度こそ、ロシアを鎮める番である。

     

    (5)「中朝からみれば、ウクライナでロシア軍が敗北することは受け入れがたい。中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相は7月、外国要人との会談で「(ウクライナで)ロシアの敗北を見たくない」と漏らした。仮にウクライナで敗北し、ロシアが崩壊したら、中朝は国際社会で深く孤立してしまう。逆にいえば、ウクライナでロシア軍が勝てば、支援国である中朝も勝利することになる。中朝ロの枢軸はさらに深まり、軍事的な結束も強まるに違いない。そうなれば、中朝ロはより強気になり、欧州とアジアの緊張が同時に高まってしまう」

     

    目下、ロシアへの経済制裁が強化されつつある。ロシア経済は、急速に悪化している。冷静に事態をみるべきだ。これまでの日経は、米中が台湾問題で取引する、としてきた。今度は、ロシアの戦線拡大論へすり替わっている。経済問題を抜きにした「戦争論」は、説得力を持てないであろう。

     

     

    テイカカズラ
       

    トランプ米大統領は、ウクライナへ巡航ミサイル「トマホーク」の供与をめぐり、土壇場で苦悩している。ウクライナ軍が、首都モスクワやロシア領の内陸部の軍事施設に攻撃できるようになるからだ。プーチン大統領が、「米ロ関係の破壊につながる」と反発するなど、強い警戒感を示している。これまで、強がりをみせてきた、ロシアの泣き所が浮上している。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月18日付)は、「トランプ氏、ウクライナにトマホーク供与より『終戦望む』」と題する記事を掲載した。

     

    ドナルド・トランプ米大統領は17日、ホワイトハウスでウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナが米国の長距離巡航ミサイル「トマホーク」を必要としないことを望むと述べた。トランプ氏は「われわれはトマホークについて話し合うが、彼らがトマホークを必要としないことを強く望んでいる」とし、「正直に言えば、戦争が終わることをはるかに強く望んでいる」と話した。また「ゼレンスキー大統領はそうなることを望んでいると思う。今はプーチン大統領もそうなることを望んでいると思う」と語った。

     

    (1)「トランプ氏は、停戦交渉を拒否するロシアのウラジーミル・プーチン大統領に失望感を示し、ここ数週間、ウクライナへのトマホーク供与を検討していると公然と語ってきた。トランプ氏とプーチン氏は16日に電話協議した。ゼレンスキー氏が会談後にホワイトハウスを去ると、トランプ氏は首脳会談についてソーシャルメディアに投稿したが、トマホークについては言及しなかった。「ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談は非常に興味深く、友好的なものだった。プーチン大統領にも強く提案したように、今こそ殺りくを止めて合意を結ぶ時だと伝えた!」と書き込んだ。「現状のままで双方に勝利を宣告させ、歴史に判断を委ねるべきだ!これ以上の銃撃も、死も、持続不可能な巨額支出もあってはならない」と訴えた」

     

    トマホークをウクライナへ引き渡して、ロシアの最終反応をみることだ。ロシアは、絶体絶命の境地を追い込まなければ翻意しまい。口先の和平論を唱えるだけだ。

     

    (2)「その後の記者会見で、ゼレンスキー氏は戦争終結に向けた2国間または3国間協議に前向きだと述べた。兵器システムの供与について質問されると、「私は現実的だ」と答えた。 トランプ氏はまた、和平合意を仲介するために今後数週間のうちにハンガリーでプーチン氏と個別に会談する予定だと述べた。トランプ氏は大統領選挙中、ロシアとウクライナの戦争を「就任初日」に終わらせられると豪語していたが、いまだ実現していない」

     

    戦線拡大を望まないが、これ以上の膠着は犠牲者が増えるだけである。ロシアへ和平を決断させるには、思い切った圧力が必要である。

     

    (3)「トランプ氏はプーチン氏が時間稼ぎをしようとしていると思うかと記者に問われると、プーチン氏はディール(取引)をまとめたがっていると思うと応じた。トマホークの射程は1000マイル(約1610キロメートル)以上で、ロシア内陸の標的に届き、これまでウクライナに供与された西側諸国の武器の能力をはるかに上回る。ロシア政府関係者は、トマホークの供与は大幅なエスカレーションを招くと警告している」

     

    ロシアは、トマホークを恐れている。有効な武器の証明だ。ウクライナへ、引き渡してロシアの最終的反応をみるのも必要だ。

     

    (4)「ゼレンスキー氏のホワイトハウス訪問は、トランプ氏の大統領2期目では今回が3回目。両首脳は会談を始めるにあたり、温かくあいさつを交わした。トランプ氏はゼレンスキー氏の黒のスーツジャケットを「美しい」と褒めた。今年に入ってからの訪問とは異なり、ゼレンスキー氏はホワイトハウス近くの迎賓館「ブレアハウス」に宿泊した。ゼレンスキー氏はトランプ氏に「あなたの助けがあれば、われわれはこの戦争を止められると確信している」と語った」

     

    ウクライナは、トマホークさえ入手できれば戦線を転換できことがハッキリしている。ロシアが劣勢に回っている。

     

     

     

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    ロシアとウクライナの戦争は、ロシアのプロパガンダが吹聴する筋書きとは逆に、これまでのところウクライナが勝ち続けている。トランプ米大統領でさえ9月23日、自身のSNSで「ウクライナは欧州連合(EU)の支援を受けて戦いに勝利する立場にある」と表明した。ロシア寄りであったトランプ氏が、米情報部門からの報告でようやく真相を知ったと指摘されている。

     

    『日本経済新聞』(10月15日付)は、「ウクライナは勝利している」と題する歴史学者ハラリ氏の寄稿を掲載した。ハラリ氏は、1976年イスラエル生まれ。歴史学者、哲学者。著書に『サピエンス全史』『NEXUS 情報の人類史』など。

     

    ロシアとウクライナの戦争は、ロシアのプロパガンダが吹聴する筋書きとは逆に、これまでのところウクライナが勝ち続けている。ロシアは22年2月24日、ウクライナの全土を制圧して独立国家としての存在に終止符を打つべく全面攻撃に乗り出し、戦争は激しい局面へと入った。

     

    (1)「ウクライナ軍は戦力で劣るにもかかわらず、ロシア軍のキーウ攻撃を退け、世界を驚かせた。その後22年の夏の終わり頃、反撃に転じた。東部ハルキウ州と南部ヘルソン州の2カ所で大きな勝利を収め、22年の侵攻当初にロシア側に占領された領土の多くを解放した。それ以降、両陣営とも限定的な前進はあったにせよ前線はほとんど動かなくなった。ロシアは絶え間なく前進しているという印象を与えようとしているが、22年春以降、キーウやハルキウ、ヘルソンといった戦略的に重要な大都市の攻撃目標を一つとして制圧できていない」

     

    軍備で劣勢のウクライナ軍が、ロシア軍の侵略に対抗して戦える源泉は、「戦闘方式」にある。NATO軍仕込みで、前線部隊に作戦指揮を任せる自主性だ。ロシア軍は、作戦司令部の命令で戦うので前線部隊には何の自主性も与えられていない。中国軍も、全く同様だ。

     

    (2)「25年に入ってから、兵士の死傷者数20万~30万人という代償を払ってロシア軍がなんとか獲得できたのは、前線周辺のわずかな領土だ。その面積は最も信頼できる複数の情報源によると、ウクライナ全土の約0.%にすぎない。ロシア軍が、25年のスピードで侵攻を続けるとすると、ウクライナの残りの領土すべてを征服するのに理論上、約100年の歳月と数百万人の死傷者が必要となる。それどころか、ロシアが25年8月時点で支配していたウクライナ領土は、22年8月時点より小さい」

     

    ロシア軍が、無謀な作戦命令で多くの犠牲者を出している。旧日本軍と同じで、司令部の作戦命令で戦っているからだ。

     

    (3)「ウクライナにとって適切な場面で戦術的に撤退して軍の体力と兵士の命を温存することは、軍事的に理にかなっている。ロシア側はその間、あまり意味のない前進を勝ち取ろうと高い代償を払って攻撃を仕掛け、自ら流血と疲弊を繰り返すことになるからだ。ウクライナは徹底抗戦でロシアを膠着状態に追い詰めた、というのが本当のところだ。オーストラリア軍の退役少将ミック・ライアン氏は近著の中で、こう記している。もし03年にイラクに侵攻した米軍が3年以上かけてもイラク全土の20%しか制圧できず、死傷者が100万人に達していたとしたら、これを米軍の勝利と呼ぶ人はいるだろうか。ロシアが置かれた状況はそのようなものだ、と」

     

    ウクライナは、前線指揮官の判断で戦術的に撤退し、軍の体力と兵士の命を温存している。言うならば、義経がみせた壇ノ浦での「八艘飛び(はっそうとび)」である。現場に合せた戦い方を採用している。

     

    (4)「北大西洋条約機構(NATO)はウクライナに兵器や他の物資を大量に供与しているが、NATO軍が公式に実際の戦闘に加わったことはない。ウクライナ軍は22年、限られた兵器だけでキーウ、ハルキウ、ヘルソンの勝利を手にしたのだ。当初から全面支援を受けていれば、ロシアが軍隊と戦時経済を立て直すいとまを与えず、22年末か23年夏には勝利していたかもしれない」

     

    NATOは、ロシア軍の動向を逐次、ウクライナ軍へ通報している。これが、ウクライナ軍が敏捷に動ける要因である。

     

    (5)「ウクライナ防衛の最大の弱点は今も、同国を支援する西側諸国の考えだ。制空権と制海権の掌握に失敗したロシアは、地上でもウクライナの防衛線を突破できない以上、米欧各国の意志をくじいてウクライナを窮地に追い込むしかない。「自国の勝利は必然」とのプロパガンダで米欧各国の意欲をそぎ、各国がウクライナ支援から手を引けば、ウクライナが降伏を余儀なくされると期待している。こんなプロパガンダに屈すれば、ウクライナにとっては悲劇だ。またNATOの信頼も失墜し、強まるロシアの脅威に対して最も優れた防衛力を持つウクライナを失うことになる」

     

    ウクライナ軍100万は現在、欧州で最強軍隊とされる。NATOは、このウクライナ軍がロシアに屈することになれば、どれだけ痛手であるか明白だ。ウクライナ軍への軍備支援は、NATO自身の防衛にもなっている。

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