勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

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    米中首脳会談はホワイトハウスの発表によると、中国がイランがホルムズ海峡を軍事化しようとするいかなる動きや、通行料を課そうとする試みにも反対することを明確にした。中国、ロシア、イランからなるいわゆる「枢軸」の実態が脆い関係であることを露呈した。枢軸の一角にヒビ割れが起こった理由は、中国の損得計算に大きく響くからだ。

     

    『ニューズウイーク 日本語版』(5月18日付)は、「イランを見捨てた中国は、次にロシアを見捨てる。中露イランの『枢軸』の『急所』とは」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロシア国内では、対中依存はすでに構造的なものになっている。ロシアの輸入に占める中国製品の割合は約40%に上り、戦前のおよそ20%から増加している。機械、車両、通信機器、デュアルユース技術など、制裁下のロシアの戦時経済を支える主要分野では、中国が60%から90%の物資を供給している。中国は、ロシアにとって最大の債権者であり、最大のエネルギー顧客にもなった。結果、ロシアは石油や天然ガスの大幅な値引きを受け入れざるを得なくなっている。中国は、ロシアにとって最大の貿易相手だが、ロシアの中国の貿易に占める割合は3%強だ。この非対称性は、決して見過ごせるものではない。ロシアは対中依存状態に陥っている危険性を理解している。ただ、それを表に出さないだけだ」

     

    中国にとってのロシアは、安い石油や天然ガスの売手であるだけである。中国の貿易に占めるロシアの割合は3%強。ロシアの輸入に占める中国製品の割合は、約40%で戦前の約20%から倍増している。この中ロの貿易関係が、国益の比重を示している。

     

    (2)「2024年にフィナンシャル・タイムズが確認したロシア軍の流出文書によると、ロシア軍参謀本部は中国が南方から侵攻してきた場合に備え、中国へ戦術核攻撃まで想定していたことが分かる。あるシナリオでは、中国がロシア極東で抗議者に資金を渡して警察と衝突させ、破壊工作員をロシアのインフラに投入し、そのうえで「ジェノサイド」を口実に人民解放軍を国境に集結させる展開が想定されている。ロシアの計画担当者は、中国の都市への核攻撃を机上演習で想定していたが、西側にはそのように考えていることを知られたくないようだ」

     

    歴史的にみた中ロ関係は、敵対関係にあった。中国は、帝政ロシアに極東地域を奪われたからだ。必ず、奪回に動くはずである。ロシアは、これを認識しているから「戦術核」という反撃構想を秘めている。

     

    (3)「ロシアは好戦的な、衰退しつつある劣位のパートナーである一方、中国は慎重に台頭しており、冒険主義よりも安定と貿易の維持を重視する。だからこそ、中国はホルムズ海峡をめぐってイランをかばわなかった。イランは中東で強硬な行動を続けた結果、すでに中国にほぼ全面的に頼らざるを得ない立場に追い込まれていた。中国は、イラン戦争開戦までは、イラン産原油輸出のおよそ90%の輸出先となっていた。イランによるホルムズ海峡への機雷敷設や通行料の徴収が、中国のエネルギー安全保障に悪影響を及ぼし始めると、習近平の判断は明確だった。中国にとって、従属的な立場にあるイランをかばうために、タンカーの重要航路を危険にさらす理由はなかったのだ」

     

    イランは、ホルムズ海峡を封鎖して中国経済に多大の被害を及ぼしている。だから、中国にとって救済相手でないという認識になっている。中国にとって、イランは従属的な立場にあるので、リスクを冒す必要はないとしている。

     

    (4)「トランプによると、習近平はさらに踏み込み、中国はイランに軍事装備を供給しないと約束した。トランプの言葉を借りれば、それは「大きな発言」であり、イランにとっては壊滅的な発言であった。中国のユーラシア戦略は、対等な同盟関係を築くことではない。相手国を中国に依存させ、都合のよいときには利用し、必要になれば従わせるのだ。イランは、そのやり方が最もはっきり表れた例だった。イランの強硬姿勢が西側への圧力になっている間は有用だったが、それが中国のサプライチェーンを脅かした瞬間、中国はイランをばっさり切り捨てた。ロシアも今、同じ道を歩んでいる。ただ、イランよりスローペースなだけだ」

     

    中国の戦略は、相手国を中国に依存させ、都合のよいときには利用し、必要になれば従わせるのだ。始皇帝以来の「合従連衡」そのものである。合従(同盟)を嫌い、連衡(従属)させるものである。

     

    (5)「中国にとって、ロシアはあくまで利用価値のある相手だった。安いエネルギーを供給してくれる上、アメリカの注意を引きつけてくれる。中国の北側にある緩衝地帯としても機能する。ロシアの行動が中国の経済的安定を脅かし始めた瞬間、中国は態度を変えるだろう。欧州への貿易ルートを破壊すること、中国の銀行に二次制裁のリスクを及ぼすこと、湾岸の中国顧客を巻き込むより広範な対立に発展すること。そのような事態が起これば、中国はイランに対してそうしたように、対応を変えることになる。ホルムズ海峡をめぐる今回の出来事は、中国、ロシア、イランの「枢軸」が、深い信頼や共通の理念で結びついているわけではないことを思い出させる。三者を結びつけているのは、西側からの圧力という側面が大きい」

     

    中国は最近、ロシア極東地域の地図に「中国名」を書き入れている。必ず、奪回するという意思を示したものだ。中国のロシアへの姿勢は、イランも同様で使い捨てである。

     

     

     

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    ロシアの大学キャンパスは今、ウクライナ戦争で膨大な兵士を失った「穴埋め」に、強引な徴兵戦術が行われている。学生を兵士に仕立てて前線へ送るのだ。戦時中の日本が行った大学生の繰上げ卒業による「学徒動員」である。「大学の『トップ』たちは今、学生たちに戦争に行くよう呼びかけている」、「大学中に無人機部隊関連のポスターが貼られている。 文字通り至る所に」「圧力が凄まじい」という生々しい声が、CNNの取材で分かったという。

     

    『CNN』(4月20日付)は、「ロシア、大学生を兵役募集の標的に 『凄まじい』圧力 との証言も」と題する記事を掲載した。

     

    こうした証言や増え続ける公開情報から得られる証拠は、ロシアが学生に対してドローン(無人機)部隊への加入を誘引、強要するキャンペーンを密かにエスカレートさせていることを示唆している。このような動きはロシアの教育制度に緊張をもたらす恐れがあるとともに、ロシア政府の抱える課題の深刻化を浮き彫りにする。具体的にはウクライナでの4年に及ぶ戦争に向けた兵員の確保だ。

     

    (1)「戦場での損失が拡大しているにもかかわらず、クレムリン(ロシア大統領府)は2022年秋に実施した悲惨な「部分動員」の二の舞を何とか回避してきた。この時は数十万人の男性が国外逃亡する事態を引き起こしている。しかし専門家によると、学生に特化した今回の動員は、より強硬な徴兵戦術が再び台頭しつつあることを示す兆候の一つだという。これまでの取り組みとは異なり、学生たちには1年間の有期契約、前線から遠く離れた場所での勤務、そして先端技術の習得の機会が約束されている。しかし、専門家や弁護士らはCNNに対し、これは実際には標準的な無期限の軍契約を隠すための口実である可能性が高いと指摘する。また、約束された特典に懐疑的な学生が多いことから大学側は強制や脅迫に訴える形で、学生を入隊させようとしているという」

     

    学生が、入隊条件に疑問を抱いているので、大学側は強制や脅迫して入隊させようとしている。悲劇的だ。

     

    (2)「CNNは、大学のウェブサイトやソーシャルメディアのページ、地元メディアの報道を分析し、ロシア国内の複数の学生への取材を通じて、広範かつ多面的な学生勧誘キャンペーンが行われている証拠を突き止めた。この取り組みが本格的に始まったのは、今年1月のようだ。その2カ月前にはロシア国防省が無人航空機(UAV)やドローンを用いた戦闘を専門とする新たな軍種「無人システム部隊」の創設を公式に発表している。ロシア全土の大学は、洗練された募集動画やポスターを次々とソーシャルメディアアカウントに掲載し始めた。一部の大学のアカウントでは、ロシアのいわゆる「特別軍事作戦(SMO)」に従事した兵士や退役軍人による対面講義が紹介されることさえあった」

     

    学生募集は、今年1月から始まった。ロシア全土の大学が、洗練された募集動画やポスターを使い募集している。

     

    (3)「サンクトペテルブルク国立大学(ロシアのプーチン大統領の母校)は、ウェブサイト上でこれらの契約を公然と宣伝。大学関係者や軍関係者が入隊のメリットを詳述する長時間の講義動画も併せて掲載している。25年のフォーブス誌によるロシアの大学ランキングで2位にランクインしたモスクワの国立研究大学高等経済学院(HSE)は、2月に「無人システムフェスティバル」を開催。そこでは同国のドローン部隊の募集ポスターが堂々と掲示されていた」

     

    サンクトペテルブルク国立大学も、学生募集の対象になっている。モスクワの国立研究大学高等経済学院も募集が掛っている。

     

    (4)「ベルリン在住のロシア人軍事弁護士アルテム・クリガ氏は、ロシア国防省が大学に対し、このキャンペーンの実施方法について具体的な指示を出したと主張している。同氏はSNSテレグラムの自身のページに、モスクワのある大学から受け取ったとする文書を公開している。その中には、「連邦公立高等教育機関の軍事訓練センター長」宛ての通達書が含まれており、そこでは「国防省の代表者と共同で学生向けのキャンペーンを組織し、(中略)国防省人事総局に毎日報告すること」が求められている。この「指針」には、男女を問わず学生に提供されるインセンティブが詳述されており、その中には「敵の砲火にさらされるリスクが低い」ことや、「独自の知識と技能の習得」などが含まれている。CNNが分析した大学の募集資料も、まさにこうした具体的な提案を明記している。

     

    男女を問わず学生に募集を掛けている。募集には、「独自の知識と技能の習得」という殺し文句が入っているという。

     

    (5)「これらの文書は多額の金銭的インセンティブにも言及する。連邦および地方自治体からの入隊ボーナスは1人あたり40万ルーブル(約5000ドル=約793000円)以上とされている。一部の大学ではこれよりも格段に高い金額を提示。サンクトペテルブルク国立大学は軍に入隊する学生に対し、約56000ドルの一時金を約束している。「金銭面だけが、実現する可能性の高い唯一の約束だ」とクリガ氏。CNNの取材に対し「(それ以外の)すべては嘘(うそ)だ。これはロシア軍との単純な契約であり、期限も特別な条件もない」と語った」

     

    入隊ボーナスは、1人あたり40万ルーブル(約80万円)という。これだけは正しくても、後の入隊条件は「全部ウソ」と手厳しい批判が投げかけられている。

     

     

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    イランは、これまで中ロと密接な関係によって米国と対抗してきた。今回の米国とイスラエルの攻撃では、中ロから何らの支援も受けられず、一片の支援声明に止まっている。相撲で言えば土壇場で「うっちゃり」を喰った形だ。国際関係のはかなさを示してもいる。中ロが、イランを見捨てた形になったのは、反イランの湾岸石油産出国との関係悪化を恐れたものである。これら諸国は、米国との関係が深く米軍の駐留を認めている。要するに、中ロともに米国を敵に回す損失を計算した結果であろう。

     

    『レコードチャイナ』(3月13日付)は、「イランは中国とロシアに見捨てられたのか?―仏メディア」と題する記事を掲載した。

     

    仏国際放送局『ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)』中国語版は12日、「イランは本当に中国とロシアから見捨てられたのか?」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「記事は、米国イスラエルによる攻撃を受けたイランについて、「国際的に孤立している」との見方が広がっていると説明。特に注目されているのが、イランと近しいとされる中国とロシアの対応だとした上で、「中国とロシアはいずれも外交的には米国とイスラエルを非難した。しかし、両国の対応は主に外交声明にとどまり、軍事支援などの具体的な行動は確認されていない」と指摘した」

     

    イランは、親密国とみてきた中ロから実質的支援を受けられず、孤立した形になっている。

     

    (2)「中国が、慎重な姿勢を取る背景にはエネルギーと経済の問題があると言及。「中国は中東から大量の石油と液化天然ガスを輸入しており、湾岸地域は極めて重要な供給源となっている。中国が輸入する石油のうち、湾岸諸国からの割合は約45%に達しており、輸入が滞れば中国経済にも大きな打撃となる可能性がある。すでに国際原油価格は上昇を始めており、エネルギー価格高騰は中国の産業や経済成長に大きな負担となる。そのため中国政府は事態の安定化を望みつつ、一方へ肩入れすることを避けている」との見方を示した」

     

    中国は、中東から大量の石油と液化天然ガスを輸入。湾岸地域が、極めて重要な供給源となっている。それだけに、イランへ肩入れすれば湾岸諸国と敵対することになる。こういう利害関係が、中国に二の足を踏ませている。同時に、米国との関係悪化は、中国経済不振に拍車を掛ける。こういう意味で、中国は自らの国益第一で動いているのであろう。

     

    (3)「中国の安全保障の重点は、台湾問題や南シナ海に置かれている。中東で軍事的な責任を負うことには、消極的であるとの見方もあると紹介。「中国の対外関係は米国のような軍事同盟ではなく、貿易や投資、武器輸出を基盤としたパートナー関係が中心であり、直接的な軍事介入を避ける傾向が強い」と指摘した」

     

    中国の最大の安保に関わる関心事は、台湾問題や南シナ海にある。ここから離れた軍事問題には「無関心」である。こういう中国の基本スタンスが明確になった以上、一帯一路で世界中へ網を張って、安保上の「エサ」を蒔いても相手国は信用しないであろう。

     

    (4)「ロシアについても事情は似ているようだ。記事は「ロシアとイランは軍事面で協力関係にあり、ウクライナ戦争ではイラン製無人機(ドローン)がロシア軍の作戦に大きく寄与したとされる」とする一方、「近年ロシアは自国でのドローン生産を拡大し、イランへの依存度を徐々に低下させている。またロシアにとって現在の最優先課題はウクライナ戦争であり、米国と直接衝突するような形でイランを支援する可能性は低いとみられている」と論じた」

     

    ロシアにとって最優先課題は、ウクライナ戦争である。最近は、ウクライナ軍が優勢と報じられている。ロシアが、これまでスターリンク情報を窃取していたことが判明し、遮断されたことが要因だ。イラク情報が分からないことで逆襲されている。

     

    (5)「石油市場や湾岸諸国との関係も、ロシアの判断に影響しているとし、「もしロシアがイランを強く支援すれば、イスラエルや米国だけでなく、湾岸諸国との関係にも悪影響が及ぶ可能性がある。そのためロシアは表向きで慎重な姿勢を保ちつつ、必要に応じて情報提供などの形で間接的に支援しているとの見方もある」と伝えた」

     

    ロシアも中国同様に、石油市場や湾岸諸国との関係を重視している。「一匹狼」のイランを軍事支援することの反動が余りにも大きいのだ。

     

    (6)「記事は、今回の中東情勢が米中競争とも関係している可能性に言及。米国が、イランの石油インフラを完全には破壊していないのは、中国への圧力カードとして残しておきたいという思惑があるのではないかという見方もあるとしたほか、この戦争によって米軍が中東に戦力を投入した場合、中国はその作戦能力を観察することができ、将来の台湾問題などへの参考になる可能性もあるとした」

     

    米国は、中国を牽制すべくイランの石油インフラを完全に破壊しないで手心を加えている。中国が、イラン石油への依存度の大きいことを見越して、米国は圧力を掛けている。

     

    (7)「中国とロシアは、イランを完全に見捨てたわけではないとし、「両国にとってエネルギー安全保障やウクライナ戦争、米国との関係など、より重要な戦略的利益が存在するため、現実的で慎重な対応を取っている」と指摘した」

     

    中ロは、ともに米国との関係悪化を避けている。世界覇権国の米国の重みが、中ロを圧迫しているのだ。中国の「張り子の虎」ぶりが、如実に表れている。

    あじさいのたまご
       

    ロシア軍のクゾブレフ上級大将は11月下旬、プーチン大統領にウクライナ東部ハルキウ州クピャンスクの「解放を完了した」と報告した。クピャンスクは、小さいながら戦略的に重要な要衝だ。その後プーチン氏は、ロシア軍最高の栄誉である金星章をクゾブレフ氏に授与した。だが授与式からわずか3日後、ウクライナのゼレンスキー大統領がクピャンスクへの境界標前に立つ動画を公開した。第三者による評価では、ロシアは2022年前半以降、クピャンスク全域を支配下に置いたことはない。このように、ロシア軍は大統領を欺くような戦況報告をして、勲章まで授与されている。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(12月22日付)は、「自信深めるプーチン氏、根拠に不正確な戦況報告か」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領がロシアに有利とみられている和平案を提示したにもかかわらず、プーチン氏は戦争を推し進めている。欧米の政府関係者はロシア大統領府に届く不正確な情報が同氏の判断に影響していると考えている。

     

    (1)「2人の当局者によると、ロシア軍や情報機関はプーチン氏に定期報告を行う際、ウクライナ側の死傷者数を水増ししているほか、ロシアが人員などの軍事資源で優位に立っていると強調したり戦術的な失敗を小さく見せたりしているという。プーチン氏と定期的に面会する側近が、ウクライナ侵略が勢いを失いつつあるロシア経済の重荷になっていると説明しているものの、軍幹部が伝える楽観的な戦況報告によってプーチン氏は全面的な勝利を収められると信じているという」

     

    太平洋戦争でも、旧日本軍は戦果を過大に発表していた。これが、戦争を長引かせた大きな要因だ。ロシアでも、ウクライナ侵攻で同じ手が使われている。

     

    (2)「バンス米副大統領も10月、その傾向に言及した。「ロシア側は実際の戦況より自分たちが優位に立っていると考える傾向があり、本質的にずれた期待を抱いている」と述べ、これが合意をより困難にしているとの見方を示した。英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のロシア専門家キア・ジャイルズ氏は、ロシアの偽情報作戦が国外にも届いており、「トランプ氏の側近の大半にロシアが早期に戦争に勝利する」と確信させる「非常に高い効果」を上げていると指摘した」

     

    プーチン氏は、完全に「雲の上」の人になっている。ロシア軍の嘘情報を真に受けているからだ。

     

    (3)「ゼレンスキー氏は12月中旬、「ロシアから大量の偽情報が流れてきている。そのため米国の仲間にロシアの言うことをうのみにすべきではないと合図を送った」と報道陣に述べた。ロシアの独立系ニュースサイト「ファリデイリー」はプーチン氏が10月以降、公開の場で6回軍幹部から説明を受けており、ウクライナ侵略開始以降で最も多いと報じた。そのうち3回でプーチン氏は軍服を着用していた。4時間半に及んだ19日の記者会見で、プーチン氏はロシア軍が優位に立っていると再び主張した。「我が軍は前線全体で前進しており、敵は後退している」と述べ、「25年末までに(戦場での)新たな成功を目にするだろう」と国民に約束した」

     

    ロシア軍の嘘情報は、米国まで流れて正常な判断を妨げているほどだ。プーチン氏が丸め込まれているのは、最も信頼している軍幹部から聞かされるかららだ。

     

    (4)「プーチン氏への戦況報告は、ウクライナ侵略の総司令官であるゲラシモフ参謀総長が主に行っている。ウクライナは、抵抗しないとの報告を受けていたゲラシモフ氏が2022年にウクライナの首都キーウへの電撃戦を指揮した。1カ月後には撤退を余儀なくされ、作戦は大失敗に終わった。戦闘が長期化すると、侵略を支持する強硬派はゲラシモフ氏と当時のショイグ国防相がプーチン氏に実情を知らせず、多数の兵士を犠牲にする「肉ひき機」戦術に依存していると非難した。前出のジャイルズ氏は、組織内におけるこの「独立した偽情報のループ」が軍事作戦の結果に直接影響していると指摘した。最も顕著な例が22年に始まったウクライナへの全面侵略そのものだ。プーチン氏は数日で終わると期待したが、4年近く続いている」

     

    ウクライナ侵攻をはじめた時のゲラシモフ参謀総長が、いまもプーチン氏への「嘘戦況報告」の張本人となっている。

     

    (5)「ゲラシモフ氏は24年8月、プーチン氏にロシア西部クルスク州でウクライナ軍の前進を止めたと報告した。だが実際にはウクライナ軍が既に同州の一部を制圧しており、混乱の中で避難した住民に死者が出た。同じ集落を何度も制圧したと主張するなど勝利を誇張する報告と、戦場での実態には落差があった。これは民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏(故人)による23年の反乱で、ゲラシモフ氏とショイグ氏が主な標的となる理由にもなった。ジャイルズ氏によれば、ロシアが停戦合意によって得られる利益を無視し、多大な犠牲を払って侵略を継続しているのも、この落差を埋めるためだと考えれば説明できる」

     

    ロシアが、停戦合意によって得られる利益を無視し、多大な犠牲を払って侵略を継続しているのも、すべて「嘘戦況報告」が原因としている。実に、「罪作りな話」である。

     

     

    テイカカズラ
       

    ロシアは、ウクライナ和平をめぐって「のらりくらり」しながら時間稼ぎをしている。ウクライナの体力疲弊を待つ形だ。最終的には、ロシアの思い描く通りの決着へ持ち込もうという算段だ。ふらつくロシア経済は、ウクライナ侵攻4回目の冬を迎える。国民生活は疲弊しているが、未だ崖っ縁までには至っていない。これが、プーチンロシア大統領にわずかな「余裕」を与えている。

     

    『ブルームバーグ』(11月27日付)は、「ウクライナ侵攻から4回目の冬、ロシア国民に痛み-経済的体力が試練に」と題する記事を掲載した。

     

    プーチン大統領の下でロシアが開始したウクライナ侵攻から4回目の冬を迎え、ロシア国民は日常生活のあらゆる部分で影響の広がりを実感している。ロシア中部と南部の何十もの地域で、エネルギー施設や住宅がドローンとミサイルの攻撃を受けており、前線との近さを実感せざるを得ない。空襲警報のサイレンがほぼ毎晩鳴り続け、戦闘が迫っていると絶えず知らせる。

     

    (1)「前線のはるかかなた、モスクワを含むロシア各地で、経済的痛みを人々は感じ始めた。家計は食費を切り詰め、鉄鋼・鉱業・エネルギー産業も苦境に陥り、成長エンジンに亀裂が幾つも生じつつある。大規模財政出動と記録的なエネルギー収入が支えるロシア経済のレジリエンス(体力)が試練にさらされている。苦しみはウクライナとは到底比べものにならず、プーチン氏に戦争終結を促す可能性は低い。それでも2022年2月の全面侵攻を決断した代償が、これまでになく大きいという現実を浮き彫りにする」

     

    ロシアの今年の冬は、いつもの冬よりも厳しくなりそうだという。戦争の痛みが、あちこちで強くなっているからだ。家計は食費を切り詰め、鉄鋼・鉱業・エネルギー産業も苦境に陥っている。軍需産業は、武器を納品しても政府から代金が支払われない状態だ。この状態が、前記の鉄鋼・鉱業・エネルギー産業へ波及している。

     

    (2)「トランプ米政権は停戦実現に向け、ロシアの石油・天然ガス収入の抑制を目指す圧力を強めている。ロシアが望む制裁緩和を盛り込んだ包括的和平案を巡り、米ロの交渉が水面下で続いているもようだ。米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのアレクサンドル・ガブエフ氏は「全体の経済指標に基づけば、今この戦争をやめることがロシアの最善の利益になるだろう。けれども戦争を終わらせたいと考えるには、崖っぷちに立たされている認識が必要だ。ロシアはそこにまだ至っていない」と指摘した」

     

    プーチン氏は、「時間を味方につけている」。粘り勝ちで、ウクライナを屈服させるという「我慢比べ」をしている。トランプ氏が、ウクライナへ強力な武器を与えて、ロシアの経済的消耗度を引上げれば、事態の打開へ繋がるであろう。だが、トランプ氏には別の思惑がある。ロシアを味方につけて対中国戦略を練っているからだ。

     

    米国が、先に提出した和平案には、ロシアをG8へ復帰させるという項目さへあって仰天させた。トランプ氏が、ロシアを取込もうという戦術が含まれている。ウクライナの犠牲で、米国の対中戦略へロシアを組入れるというのだ。ロシアと米国の下打ち合せでは、ロシアがこれを望んだのであろう。ロシアの本心は、新興国のトップでなく先進国の一角に席を占めて「大国ロシア」の威容を国民に示したいのであろう。

     

    このロシアの願望は、どこまで満たして行けばいいのか。その場合の欧州の反応はどうか。難しい方程式である。だが、なによりも侵略されたウクライナの悲劇の回復が第一でなければならないが、当のウクライナ政府の幹部は、大規模な汚職容疑で揺れている。戦争で国土が消えるかどうかという瀬戸際で、賄賂を懐に入れる輩がいるとは絶句する。そう言ってはいけないが、「タヌキとキツネの化かし合い」という局面である。

     

    こうなると、最前線で命を的にさせられて戦っている両軍の兵士とその家族、犠牲になった兵士や家族が、最大の貧乏籤を引かされたことになる。最前線から遠く離れるほど、それぞれの「欲望」が渦巻いて、この戦争を利用しようとしている一団の人たちが控えているのだ。

     

    ロシアの文豪トルストイは、若き日にクリミア戦争に従軍した経験が、反戦思想の原点となった。晩年には非暴力主義(トルストイ主義)を提唱し、ガンジーにも大きな影響を与えた。トルストイにとって戦争とは、人間の理性と愛を破壊する最大の暴力とみた。このトルストイが、次のような名言を残している。

     

    「戦争は、最も卑劣な人間が、最も高貴な理想を語るときに始まる」。この言葉は、プーチン氏や習近平氏にそのまま当てはまる。プーチン氏は、「大ロシア帝国の復活」を。習氏は「中華民族再興」を語って、戦争を美化しているのだ。正義の戦争などは存在しない。邪悪だけが開戦動機である。

     

     

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