勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

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    中国は、ロシアのウクライナ侵攻を巡り「中立」を装いながら重要物資の輸出を続け、「蜜月」ぶりを見せつけている。だが、中ロ関係は決して「一枚岩」ではない。中国が、ロシアの要求する武器輸出を否定しているからだ。こうした、ロシアの不満が北朝鮮への接近となって現れている。片や、中国は旧ロシア領の中央アジアへ勢力を拡大中だ。中ロは、微妙な形で勢力争いを続けている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月4日付)は、「ロシアの『裏庭』で勢力争い、中露の微妙な関係」と題する記事を掲載した。

     

    中国とロシアはかつてないほど緊密な関係にあり、権威主義的な大国同士が結束して、西側諸国の包囲網とみなす動きに立ち向かおうとしている。カザフスタンで34日に開かれる上海協力機構(SCO)首脳会議を前に、プーチン氏と中国の習近平国家主席は現地で会談し、双方が二国間関係の現状を称賛した。しかし、ロシアにとって裏庭の中央アジアでは、プーチン氏と習氏が「無制限」と宣言した友好関係が、中国の世界的野心と衝突している。

     

    (1)「中国は、ロシアによるウクライナ侵攻を機に、ロシアの伝統的な勢力圏を切り崩そうとしている。ロシアは軍事機構の維持を中国に依存しているため、北極圏と同様、中央アジアにおいても中国の侵入を黙認せざるを得ない。戦略的要衝である中央アジア全体で、中国は域内経済を自らの勢力圏に引き込もうとしている。中国の投資により、この地域の若い労働者のロシア離れが進んでいる。中国が出資する鉄道は、ロシアを経由せずに中央アジアと欧州を結ぶルートとなる予定だ。また、中国の再生可能エネルギープロジェクトは、この地域のロシア産ガスへの依存度を下げるのに役立っている」

     

    ロシアは、ウクライナ侵攻へのめり込んだ結果、大きな代償を払わされている。旧ソ連領の中央アジア5ヶ国は、ウクライナ侵攻に関してロシアを支持せず中立を保っているからだ。それだけでない。経済的に中国との関係を深めている。

     

    (2)「中央アジアにおけるパワーシフトは何年も前から始まっていたが、ロシアによるウクライナ侵攻後にその流れが加速した。この地域ではウクライナ侵攻を、同じ旧ソ連構成国の領土一体性に対する軽率かつ不吉な侵害行為と受け止める人が多かった。中央アジア5カ国はいずれもウクライナ侵攻に関してロシアを支持せず、中立を保った」

     

    ロシアのプーチン大統領は、「ロシア帝国」の意識で行動しているが、実態は発展途上国へ成り下がった。このギャップが、中央アジアの離反を招いている。中国もロシアを軽く扱い始めているのだ。

     

    (3)「ロシアと中国は長年にわたり、この地域で暗黙の役割分担をしてきた。ロシアは安全保障を提供し、中国は開発と投資に重点を置くというものだ。中国は今、開発・投資という役割に一層傾倒し、巨大な経済力を政治的影響力の拡大に利用することで、このバランスを崩そうとしている。中国と中央アジアの貿易額は2023年に890億ドルに達した。ウズベキスタンはソ連崩壊後の中央アジア5カ国の中で最も人口が多く、最も工業化が進んでいる。公式統計によると、中国は昨年、ウズベキスタンの貿易相手国トップの座をロシアから奪った。ウズベキスタンは20年にわたる孤立主義を転換し、世界経済との融合を図っている」

     

    ウズベキスタンは、中央アジア5ヶ国の中で人口がもっとも大きく、経済面で中国との関係を深めている。

     

    (4)「中国はロシアの役割を完全に奪うことはできない。中央アジアのエリート層のキャリアと人脈はロシアと深く結びついており、ロシア語は依然として共通語である。中国のイメージは、中央アジアの多くの人と文化・言語が近いトルコ系イスラム教徒ウイグル族に対する扱いや、一部のロシア語メディアがあおる反中感情によって傷つけられてきた。それでも、中央アジアの新世代エリート層に中国が浸透しつつある兆しが既に見られる」

     

    中国は、新興経済勢力として中央アジアへ接近しているがアキレス腱も抱えている。ウイグル族への弾圧が、中央アジアの多くの人と文化において心から中国を受入れがたい障害になっている。中央アジアのエリート層は、キャリアと人脈でロシアと深く結びついているのだ。 

     

     

     

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    ロシア軍のウクライナ侵攻作戦は最近、膠着状態に陥っている模様だ。西側のウクライナ軍への軍事支援が功を奏し始めた結果とみられる。NATO(北大西洋条約機構)加盟国からのF16戦闘機訓練が済み、しだいに戦線へ投入される日も近いと観測されている。こうして、不利だったウクライナ軍の立直しが進んでいる。

     

    『中央日報』(7月1日付)は、「プーチン氏、ヒトラーと同じ難関に 今年末から『力の均衡』が変わるだろう」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ戦争の長期化でロシア軍の損失が続き、早ければ来年末にも兵器がなくなるという見通しが提起された。

     

    (1)「スイスのチューリッヒ工科大学(ETH)の軍事経済学者であるマルクス・コイフ博士は29日(現地時間)、ドイツ紙『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』(FAZ)とのインタビューでロシア軍の戦力消尽時期について「2025年末から2027年の半ばまで、さまざまな予測値がある」と述べた。同氏は、オランダの軍事情報ウェブサイト「オリックス(Oryx)」などの集計を根拠に、ロシアがこれまで戦車3000台、戦車を含む装備1万6000台以上を失ったと主張した。同時に「ロシアが年間300~500台の戦車を生産できるというが、一日に4台ずつ失うならそれだけでは十分ではない」と話した」

     

    ロシア軍の戦力消尽時期は、「2025年末から2027年の半ばまで」と幅広く予測されている。ただ、この前にピークの時期が来るので、それは、次のパラグラフで説明されている。

     

    (2)「また、「プーチン大統領は、ヒトラーと同じ問題を抱えている。戦力はますます減っているのに戦線から進んでいない」とし、「一方、西側は兵器を生産し続け、ウクライナを支援している。今年末から来年初めの間に力の均衡が徐々に変わるだろう」と見通した。コイフ博士は、「北朝鮮が弾薬を供給しているが、戦勢を決定付けるほどの規模ではなく、イランが送ったドローンは80%が撃墜された」とし、「友好国の支援もロシアの戦力に大きなプラスにならないものとみられる」と見通した」

     

    ウクライナ軍とロシア軍の軍事力均衡は、今年末から来年初めにかけ、徐々にウクライナ軍へ有利に展開し始めると予測している。先のイタリアでのG7サミットは、ロシアの凍結資産を利用して、年末までに500億ドル(約7兆8500億円)をウクライナに支援する枠組みで合意した。これは、ウクライナにとって「吉報」である。

     

    こういう支援もあるので、ロシア軍の戦力消尽時期は、「2025年末から2027年の半ばまで」と観測されている。プーチン大統領は、しだいにヒトラーと同じ問題に直面するであろうとみられている。

     

    プーチン氏は5月、ショイグ国防相を交代させ、第1副首相のベロウソフ氏を後任に充てる人事を行った。経済閣僚が長い同氏を起用し、戦費膨張を抑え財政規律の引き締めを図ったとみられる。ペスコフ大統領報道官は、国防相交代の理由を「軍の予算を国全体の経済運営に合致させる必要がある」と説明した。

     

    今回の国防相交代は、行き詰まっているウクライナ侵攻に伴う軍事予算の見直しにある。これまでのように、無駄な砲弾を撃ち込むラフな攻撃から「合理的戦い」方法を模索するのであろう。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(5月13日付)は、「ロシア、ショイグ国防相交代へ 軍費膨張で規律引き締め」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの2024年の国家予算では、国防費が前年比6割増の10兆ルーブル(約17兆円)超に伸びる見通しだ。歳出全体の3割を占める規模になる。ベロウソフ氏は経済政策の実務家として知られ、プーチン氏の信頼も厚い。

     

    (3)「ペスコフ大統領報道官は、「戦場の勝者となるのは、より創造性を発揮した者だ」と主張した。非軍人であるベロウソフ氏の起用により軍部の組織改革を進める。新たな軍事技術や兵器の開発にも取り組む方針とみられる。12年から国防相を務めたショイグ氏は、安全保障会議書記に任命された。同会議は、安保関連の最高政策立案機関で議長のプーチン氏に次ぐナンバー2の役職だが、軍の実務からは外れる」

     

    ロシア軍内部は現在、高官汚職が瀰漫していると指摘されている。現に相次いで、高官逮捕が報じられる有様だ。これは、ウクライナ侵攻が内部から崩れる前兆でもあろう。「負け戦」では、必ず軍のトップが責任を取り辞任するケースが多い。今回もそのケースに当るのでないかと見られる。軍律の乱れは、敗戦を招くのだ。

     

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    ロシアのプーチン大統領が5月16日、習中国国家主席と会談した。国際会議に合わせた会談を含めれば、この両氏の顔合わせは40回以上にのぼるという。そして、今回の会談が世界へもたらす影響は、かつてなく大きく深刻だという論評まで飛び出している。 

    現秩序を守ろうとする西側陣営(米国と米同盟国)と、それを崩そうとする中ロ枢軸の抜き差しならぬ対立が始まったとしている。だが、こうした悲観論を180度否定する分析も出ている。真相は全く逆であり、「恋い焦がれるロシア」と「深情けを迷惑がる中国」という構図である。 

    『時事通信オンライン』(6月13日付)は、「中国とロシアの冷めた連帯、ウクライナ侵攻前と様変わり」と題する記事を掲載した。 

    ロシアのプーチン大統領が中国を公式訪問し、中ロの緊密な関係を誇示した。しかし、共同声明などを見ると、ウクライナ侵攻直前に同大統領が訪中した時の熱気は既になく、中国側は対米共闘のため、冷めた連帯をやむを得ず維持しているという雰囲気だ

     

    (1)「プーチン大統領は5月16日から17日にかけて訪中し、習近平国家主席との共同声明を発表した。ウクライナ戦争を巡って中ロが米国と対立する中、国交75周年を祝う文書だったが、2022年2月の北京冬季五輪を機にプーチン大統領が来訪した際の共同声明と比べると、次のような違いがある」 

    中ロ会談を分析するには、両国の声明を比較することでヒントが得られる。 

    (2)「両国の声明を分析すると、次のような特色が浮かび上がる。

    1)「両国の友好に限りはなく、協力に立ち入り禁止区域はない」という文言がない。昨年3月に習主席が訪ロした時に発表した共同声明で消え、今回も復活しなかった。

    2)中ロ関係について「同盟せず」と明記された。昨年の共同声明に盛り込まれ、今回もそれを引き継いだ。

    3)中ロそれぞれの「民主主義」を正当化する主張がない。22年の共同声明は、欧米流の民主主義押し付けに対する反論を詳述。昨年の共同声明も少し触れたが、今回は消えた。

    4)大群衆の民主化運動で政権を倒す「カラー革命」反対の記述がない。22年の共同声明は1回、昨年の共同声明は2回言及していた」 

    2)の両国が「同盟せず」は、中国側の主張であろう。中国国内では、歴史的にロシアへの警戒観が極めて強い。中国国内には、ウクライナ侵攻したロシアと「同盟」を結ぶなど頭から否定する見解が多数だ。

     

    (3)「5)昨年の共同声明と同様、北大西洋条約機構(NATO)拡大への反対がない。ロシア側は今回の共同声明で、台湾独立の動きに反対するだけでなく、中国による「国家統一実現」の措置にまで支持を表明したのに、欧州におけるNATOの動きに対しては「重大な関心」が示されただけだった」 

    中国は、NATOを敵に回したくないのだろう。中国の台湾侵攻という事態になれば、NATO介入ありうる。習氏にとっては、自己の立場を窮地に追込むからだ。 

    (4)「22年の共同声明は政策だけでなく、イデオロギー面でも中ロの連帯を強調したが、そうした一心同体的な表現はすっかり薄くなった。政策面でも22年はウクライナ侵攻直前だったロシアに対する中国の配慮が目立ったが、今回は逆になった。ロシア側には、ウクライナ戦争が泥沼化して、中国から支援を得る必要性が増したという事情があるとみられる」 

    中国は、苦境に立つロシアが負担になっている。米中対立が激化した理由の一つは、ウクライナ侵攻が災いしている。

     

    (5)「ロシア産天然ガスをモンゴル経由で中国に送るパイプライン「シベリアの力2」建設プロジェクトに関する具体的発表は今回もなかった。ロシア側は中国との話し合いについて「順調だ」と言い続けているものの、実際には難航しているようだ。ロシアの天然ガス事業を独占している国営企業ガスプロムのミレル最高経営責任者(CEO)はプーチン大統領訪中に同行すらしなかった。話が進む見込みがなかったからだろう」 

    中国は、パイプライン「シベリアの力2」の供給するガス価格の大幅値引きを要求している。ロシアが、これに難色を示しており、プロジェクトは契約できずにいる。 

    (6)「トップセールスに熱心なプーチン大統領は北京のほか、東北地方のハルビン(黒竜江省)にも赴いて、中ロ博覧会の開幕式に出席した。しかし、ハルビンへ同行した中国側指導者は習主席ではなく、韓正国家副主席だった。韓氏は副大統領に当たるポストにあるとはいえ、共産党の最高指導部である政治局常務委員会からは既に引退しており、重要な問題について実質的な話ができる立場にはない。習主席は昨年4月、マクロン仏大統領と北京で会談した後、華南地方の広州(広東省)に同行して、そこで再び会談している。北京からハルビンは広州よりはるかに近いのに、プーチン大統領はマクロン大統領と同等の扱いを受けなかった」 

    習氏は、フランス大統領マクロン氏を国賓として招き2日間もつきっきりで接待した。プーチン氏のハルビンへの立ち寄りには同行せず、接待に差を付けている。

     

    (7)「中国メディアでも、ロシアと距離を置く論説が出ている。党機関紙『人民日報』系の有力紙『環球時報』の前編集長でオピニオンリーダーとして知られる胡錫進氏は5月16日、SNSを通じて、ウクライナ戦争で中国が中立であることを強調する論評を発表。ロシアは中国の友人であり、戦略的パートナーだとしながらも、中ロ関係が中国と西側の関係に対して排他的になってならないと主張し、「中国は一貫して、外交戦略のバランスを実現するために努力している」と指摘した」 

    中国メディアは、「中ロ関係が中国と西側の関係に対して排他的になってならない」と主張するほどだ。中国にとって、ウクライナ侵攻が迷惑であることを示唆している。

     

     

     

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    米政府は6月12日、ロシアに対する制裁を大幅に拡大すると発表した。ロシアとの取引がある外国金融機関に制裁対象を広げることを正式に決めた。イエレン米財務長官は措置の狙いについて、「外国金融機関への『二次的制裁』のリスクを高め、ロシアの軍需産業が米国製のソフトなどを利用することを制限する」と述べた。

     

    中国外務省は13日、米政府が発表したロシアに対する制裁の拡大に「断固反対」を表明した。林剣副報道局長が記者会見で、「中ロ間の正常な経済・貿易を妨げたり、壊したりすべきではない」と主張した。中国の一部金融機関とロシアの銀行や企業との間では、決済や送金といった取引があるとされる。林氏は、対ロ制裁拡大について「中国をおとしめ、封じ込める道具として使うべきではない」と要求した。「米国による世界規模での一方的な制裁は他国の主権と安全を著しく損ね、サプライチェーン(供給網)の安定を壊している」と強調した。

     

    こうした中国外務省の声明は、これまでロシアへ戦略物資を輸出していないと言い繕ってきたことを否定し、公然と認めたようなものである。米国政府の制裁拡大があっても、これに該当する事実がなければ、わざわざ反対声明を出すまでもないからだ。中国は、とんだところで「馬脚」を表した。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月13日付)は、「米国、対ロシア制裁を強化 外国金融機関に対象拡大」と題する記事を掲載した。

     

    米政府は、ロシアとの取引がある外国金融機関に制裁対象を広げることを正式に決めた。半導体などの供給にかかわるロシア国内外の企業・個人も公表し、圧力を強める。

     

    (1)「イエレン米財務長官は措置の狙いについて「外国金融機関への『二次的制裁』のリスクを高め、ロシアの軍需産業が米国製のソフトなどを利用することを制限する」と述べた。外国金融機関が制裁対象のロシアの金融機関や、軍需産業に関わる個人、軍需物資をロシアに販売・供給する企業と取引した場合などが対象になる。従来は米国内の企業、個人が制裁対象の中心だった

     

    金融機関にとって、ドル決済機構から排除されることは「死」を意味する。決済ができなくなるからだ。米国が、こうした「二次制裁」へ踏み切ったことは伝家の宝刀を抜くものだ。

     

    (2)「米財務省は国務省とも連携し、軍需物資の迂回輸出に関わるロシア国内外の300以上の団体・個人を新たに特定して公表した。ロシア向けに半導体や電子部品、工作機械などを供給している中国企業も複数含まれている。バイデン米大統領は2023年12月に、ロシアの軍需関連の取引に関わった外国の金融機関に制裁を科す権限を財務省に与えていた。制裁を受けた外国金融機関は、米国内の金融網から遮断されたり、米国内の送金用口座の維持を禁じられたりする可能性がある」

     

    米国は、「二次制裁」の準備を重ねてきた。制裁権限は昨年12月に、財務省へ与えられていた。

     

    (3)「国際決済銀行(BIS)によると、ロシア関連の投融資は23年末時点でオーストリアが136億ドル(約2兆1000億円)と突出している。モーニングスターDBRSによると、オーストリアの大手銀行ライファイゼン・バンク・インターナショナルはリスク資産のうちロシア関連が15%を占める。イタリア大手ウニクレディトは5%ある。米国の特定のIT関連サービスやソフトウエアをロシアで利用できなくする措置も取る。対象となった場合、9月12日以降はロシア向けのクラウドサービスの提供やソフトウエアの更新などのサポートが禁じられる」

     

    ロシア関連の投融資は、オーストリアが136億ドルと突出している。かつてのロシア・

    オーストリアの関係が、未だに生きていることを再認識させられる。1873年締結のドイツ・オーストリア・ロシアの三国による対フランス同盟である。現在のオーストリアは、永世中立国となったが、「昔の誼(よしみ)」で繋がっていたのであろう。ただ、オーストリアの貿易相手国として、ロシアは輸出が16位、輸入も13位に止まっている。

     

    (4)「ロシア国内の一般市民が、インターネットにアクセスすることを制限する措置までは踏み込まない。13日からイタリアで始まる主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、対ロ制裁の強化が主要テーマの一つになる」

     

    米国は、G7首脳会談が始まる前に、二次制裁を発表して不退転の決意を示した。G7の意思を一本にまとめる伏線であろう。

     

    テイカカズラ
       

    ロシア国営のガスプロムは少なくとも今後10年間、プーチン大統領によるウクライナ侵略を受けて落ち込んだ輸出量を元の水準には戻せない見通しだ。同社幹部に委託された報告書がそう結論づけている。 

    『フィナンシャル・タイムズ』(6月5日付)は、「ロシア国営ガス、輸出回復は10年以上先 報告書が指摘」と題する記事を掲載した。 

    報告書は、同社の欧州向け輸出量が2035年まで年平均500億〜750億立方メートルにとどまると予測している。ウクライナ侵略前のわずか3分の1だ。ガスプロムは、中国にガスを運ぶ新たなパイプラインで欧州向けの輸出の落ち込みを補うことを期待している。だが、その輸送能力は年間500億立方メートルにすぎず、中国向け価格は欧州向けを大幅に下回ると報告書は指摘する。しかもパイプライン敷設をめぐって両国の合意がまだ成立していない。

     

    (1)「報告書には、「ガスプロムとエネルギー業界に対する制裁がもたらしたのは主として輸出量の減少であり、35年までに20年の水準を回復することはないだろう」と記されている。ガスプロムの経営陣が依頼したこの報告書は151ページに及び、23年末に執筆された。ウクライナ侵略を受けて欧米諸国がロシアに科した制裁でガスプロムやロシアのエネルギー業界がどのように打撃を受けたかが率直に記されている。米ワシントンにあるピーターソン国際経済研究所の非常勤シニアフェロー、エリナ・リバコワ氏はこの報告書を読んで「状況は非常に厳しい」と述べた。「ガスプロムは窮地に立たされている。同社もそれを十分把握している」とリバコワ氏は言う」 

    ロシアの国営ガス会社ガスプロムは、ウクライナ侵攻によるEUの制裁で強い影響を受けている。この状態は、2035年まで続くという。侵攻前の3割の水準へ落込む。 

    (2)「報告書によると、パイプライン経由のガス輸出はウクライナ侵略で特に大きな打撃を受けた。影響が、比較的小さい液化天然ガス(LNG)に軸足が移るに伴い、ロシアのエネルギー輸出全体に占めるガスプロムのシェアは縮小するという。また、新しい市場の確保で政府による大きな支援がなければ、成長軌道に戻るのは難しいと指摘している。「ガスプロムはLNGで自社に実績のある大量生産技術がなく、パイプライン経由でガスを輸出している唯一の企業だ。そのため、パイプライン経由の輸出縮小に伴い、ガス業界における同社の役割は小さくなる見通しだ」と報告書は記している」 

    LNG(液化ガス)は、船で輸送するのでロシア政府の「ステルス作戦」で販売に成功している。だが、ガスプロムはパイプラインによる輸送のために「逃げ隠れ」できず、制裁の影響を100%受けている。

     

    (3)「ロシアのエネルギー業界は、制裁によりパイプラインによるガス輸送を支えるタービンなどの重要な技術、さらに部品やそれらの修理に必要な専門知識が入手できなくなったことが報告書で浮き彫りになった。また、イランや北朝鮮、ベネズエラなどの国が欧米諸国の制裁で受けた影響も検証している。米コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターのリサーチフェローであるタチアナ・ミトロワ氏は、そこからロシアが「制裁の恒久化に向けて周到に準備しようとしている」ことが読み取れると言う。「執筆者の名誉のために言えば、彼らは臆することなく制裁が生活水準の低下と国際競争力の喪失を常にもたらすと指摘している」とミトロワ氏は語った」 

    下線部は、ロシアが長期にわたってウクライナ侵攻を続ける前提であることを示唆している。制裁の恒久化を覚悟しているからだ。 

    (4)「ガスプロムは輸出を回復させるのに、中国にガスを運ぶパイプライン「シベリアの力2」敷設計画に期待しているが、ロシアと中国の交渉は難航している。「シベリアの力2」が計画通り30年に完成すれば、輸送能力は年間500億立方メートル増える。だが、中国は欧州の価格を大幅に下回る価格をロシアから引き出せるため、ガスプロムの輸出量がウクライナ侵略前の水準に戻ったとしても、収益性は悪化すると報告書は予測している。米ハーバード大学系機関の研究者でバンク・オブ・アメリカ元副会長のクレイグ・ケネディ氏は「ガスプロムが抱える根本的な問題は、収益のほとんどを欧州に頼っていたことだ。それが消失し、欧州に輸送されていたガスは他に良い市場がない」と指摘した」 

    中国にガスを運ぶパイプライン「シベリアの力2」は、中国が極端に安い価格を提示しているのでまとまらず空転している。欧州は、ロシアのガスに依存してきた。ロシアもまた欧州依存であった。この輪が、断ち切られたのだ。影響は、双方に大きく出ている。

     

    (5)「報告書は、欧米諸国が設計したタービンに依存したままの状況が続けば、ガスプロムは輸出能力の拡大で苦戦すると指摘している。タービンはガスの輸送だけでなく、発電や圧縮にも使用されている。ロシアのエネルギー省は、国内企業が来年までに米国製タービンを修理できるようになると見込む。だが、報告書によると、国内メーカーはタービン製造工程の重要部分をまだ再現できていないため、部品の75%を欧米諸国からの輸入に頼っているという。国内で代替品を製造できなければ、ロシア各地の発電所は操業停止や閉鎖を余儀なくされると報告書は警告している」 

    ガス輸送に不可欠なタービンの部品は、75%が欧米からの輸入に頼っている。タービンは、国内の発電にも使われている。それだけに、いずれロシア各地の発電所が操業不可能な事態へ追込まれる。ウクライナと戦争している状況ではなくなるのだ。

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