ウクライナ侵攻は、一日も早い停戦が求められている。一方では、停戦に伴う大量の帰還兵が、一般生活になじめないことから社会不安を引き起すのでは、と危惧されている。ロシアの独立系メディア「ベルストカ」によると、昨年10月時点で約500人の民間人がウクライナ戦争の帰還兵の被害者となった。この事実は、今後の被害者発生を予告している。プーチン・ロシア大統領にとって、新たな難題がのし掛っている。
(1)「国際組織犯罪対策グローバル・イニシアチブ報告書で、ロシア政府の動員解除後の難題について書いた英国のロシア専門家マーク・ガレオッティ氏は、「25年初めの時点で合計して、おそらく150万人以上のロシア人の男性と女性が戦争に参加していた」と述べた。「ますます多くの動員解除が始まるにつれて、ロシアは戦争の心理的影響を抱えた帰還兵の波に直面するだろう」と述べた。クレムリンの消息筋3人によれば、この懸念は最高指導部にも届いている。プーチン大統領は、軍の一斉復員を潜在的なリスクと見なし、社会と自らが築いた政治体制を不安定にしないよう、慎重な対応を探っている」
ロシア最高指導部は、心理的影響を抱えたウクライナ戦争帰還兵の問題の深刻さについて、対応策を探っている。
(2)「ある消息筋は、狙いはソ連のアフガニスタン侵攻終結後に起きた社会的混乱の再現を避けることだと明かす。当時、帰還兵は組織犯罪の拡大を助長し、1990年代のソ連を荒廃させた。同じ消息筋は続ける。民間生活に戻った兵士の多くは、いま受け取っている高額の給与のようには稼げず、不満が高まるだろう。たとえば、モスクワ出身の新兵はウクライナ戦争に参加した最初の年に、少なくとも520万ルーブル(約960万円)を得られる。うち、契約一時金は190万ルーブルで、モスクワの平均年収にほぼ匹敵する額だ」
下手をすると、ソ連当時のアフガニスタン侵攻終結後に起きた社会的混乱の二の舞になりかねない。しかも、ウクライナ戦争では多額の給与と一時金を払っている。それだけに、帰還後の企業では給与が下がって不満の種になりかねないのだ。
(3)「帰還兵の管理は、ロシアだけの課題ではない。米退役軍人省によれば、ベトナム戦争に出征した米国人約270万人のうち、「かなりの少数派」が心理的・社会適応の問題に苦しんだという。ウクライナ戦争には、他の多くの紛争と決定的に異なる点がある。ロシア・ウクライナ両陣営が受刑者を前線に送っていることだ。ロシア矯正当局とウクライナ情報機関のデータによれば、ロシアは2022年の侵攻開始以降、12万~18万人の受刑者を兵士として採用した」。
ウクライナ戦争では、受刑者が戦場へ送られている。もともと、罪を犯している上に、戦場での過酷なストレスが加わった、「異常心理状態」へ陥るリスクを抱えている。
(4)「ロシアの独立系メディア「ベルストカ」によると、昨年10月時点で約500人の民間人がウクライナ戦争の帰還兵の被害者となった。ベルストカは報道やロシアの裁判記録を基にした軍事犯罪に関する公開情報を活用した。その結果、少なくとも242人が殺害され、227人が重傷を負ったと計算した。ロイターはこれらの数字を独自に確認できなかった」
ロシアは昨年10月時点で、約500人の民間人がウクライナ戦争の帰還兵の被害者となった。少なくとも242人が殺害されている。恐ろしい事態だ。
(5)「消息筋の別の1人によると、ロシア政府は大量の兵士の帰還が厳しく統制された政治体制に及ぼす影響を恐れているという。別の情報筋によると、クレムリンはプーチン大統領の指示のもと、潜在的な問題を抑え込むため、複数の政策やプログラム、人事を総動員してきた。具体的には、昨年の地域選挙で退役軍人の参加を後押しし、来年の連邦議会選挙では彼らを候補として擁立する方針を進めているという」
ロシアは、昨年の地域選挙で退役軍人の参加を後押しし、来年の連邦議会選挙では彼らを候補として擁立する方針を進めている。こうした、待遇によって帰還兵のプライドを維持しなければならない。
(6)「プーチン氏は、ウクライナで戦った「戦士」を「真のエリート」の一員と呼び、彼らに栄誉ある職を約束した。またプーチン氏は民間部門の指導者を育てるための「英雄の時代」と呼ばれる指導者養成プログラムに個人的な関心を示している。プーチン氏は6月の会合で「祖国に奉仕しようと意識的に決断し、その結果として個人的成功を収めた人々は徐々に一定の地位を占めていくべきだ」と述べた」
政府は、退役軍人を政治に参加する機会を与え、「真のエリート」として敬う姿勢を取るようだ。




