勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

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    フランスのマクロン大統領は2月24日、ウクライナとロシア間の停戦が数週間以内に合意される可能性があると述べた。ホワイトハウスで、トランプ米大統領と会談した後にFOXニュースのインタビューで明らかにした。ロシアにとって、米国による和平交渉斡旋が渡りに船である。

    ロシア経済は、破綻の一歩手前まで追込まれている。政策金利は21%、軍需支出が国家予算の3分の1に達している。今年1月の財政赤字は、前年の14倍にもなった。スタッグフレーションへの道が、待っていたのである。プーチン大統領は、夜も眠れなかったであろう。「盟友」トランプ氏が、プーチン氏へ助け船を出したのである。

    『ロイター』(2月25日付)は、「苦境のロシア経済、トランプ米大統領の早期終戦案は助け船か」と題する記事を掲載した。

    ロシア経済はウクライナ戦争の膨大な軍事支出で過熱状態だが、深刻な冷え込みに転じる瀬戸際にある。大規模な景気刺激策や金利の急上昇、インフレの高止まり、そして西側諸国による経済制裁の影響が浸透しつつあるからだ。それだけに、戦争の早期終結を目指すトランプ米大統領の方針はロシアにとって助け船になりそうだ。


    (1)「トランプ政権は、対ロシア交渉でウクライナや欧州の同盟国を除外し、侵攻の責任をウクライナに負わせるなど政治的にロシア寄りの姿勢を取っている。米国のこうした動きについて、元ロシア中央銀行副総裁のオレグ・ビューギン氏は、ロシアが2つの望ましくない選択肢に直面する中で起きていると分析。ロシアはウクライナ戦向けの軍事支出の拡大を中止するか、あるいは支出を拡大し続けてその代償として何年にもわたる低成長、高インフレ、生活水準の悪化を甘受するか、二者択一を迫られている。いずれの道も政治的リスクを伴うと指摘した」

    ロシア経済は、危機の分かれ道にある。このまま続けば今後、何年にもわたる低成長、高インフレ、生活水準の悪化を甘受する最悪状態へ向うところだった。

    (2)「財政支出は通常、経済成長を促進する。ロシアでは、民間部門を犠牲にする形でミサイル向け支出という、新しい価値創出につながらない軍事支出で経済が過熱し、中央銀行の政策金利は21%にまで達して企業の設備投資が鈍り、インフレは抑制できていない。ビューギン氏は、「ロシアは経済的な観点から外交的手段による戦争終結に向けた交渉に関心を持っている。これこそスタグフレーションを避ける唯一の方法だ」と話した。ロシアが国家予算の3分の1を占める軍事費をただちに減らすことはないだろう。しかし、和平合意の可能性が浮上すれば経済への圧迫が弱まり、制裁の解除や、最終的には西側企業の復帰につながることもあり得る」

    ロシアは、和平交渉が始まらなければ、スタグフレーションへ突入する瀬戸際であった。トランプ氏の和平交渉斡旋は、「神の声」にも等しいグッドタイミングであった。


    (3)「ロシアが軍需生産向けの支出を一夜にして止めることには消極的だろう。不況の発生を恐れているし、軍の立て直しが不可欠だからだ。ただ、兵士を一部復員させることで労働市場への圧力を多少なりとも和らげることができるだろう」と、欧州政策分析センター(CEPA)のアレクサンダー・コリアンドル氏は予想した。ロシアは徴兵や戦闘忌避の国外移住で深刻な労働力不足が発生し、失業率は過去最低の2.3%となっている。コリアンドル氏は和平の可能性が高まれば米国が中国などの企業に対する二次制裁を強める可能性が下がり、輸入がスムーズになり、その結果物価も下がる可能性があると見ている」

    ロシアは一時的に、軍需費削減は困難である。大不況の発生が不可避であるからだ。ただ、兵士の帰還で労働力不足は緩和の方向に向う。

    (4)「ロシア市場には既に好転の兆しが現れており、21日には制裁緩和の期待からルーブル相場が対ドルで約6カ月ぶりの高値を付けた。中銀のナビウリナ総裁は、政策金利を21%に据え置いた14日の会合で、長期にわたり需要の伸びが生産能力を上回っているため、成長は自然に減速していると説明した。経済成長を促しつつインフレを抑制するという中銀の課題は、大規模な財政刺激策によって複雑になっている。政府が2025年の財政支出を前倒したことで1月の財政赤字は1兆7000億ルーブル(192億1000万ドル)と前年比で14倍に膨らんだ」

    今年1月の財政赤字は、前年比で14倍にも膨らんだ。これこそ、ロシアがもはや継戦不可能な事態へ向っている証拠だ。


    (5)「多くの企業は、高金利にあえいでいる。「現在の貸出金利では新たな開発プロジェクトを立ち上げるのは困難だ。内部資料によると、ロシアが直面する主な経済リスクとして原油価格の下落、財政面の制約、企業の不良債権の増加などが挙げられている。また、トランプ氏はウクライナ問題で譲歩の可能性を示唆する「アメ」をぶら下げる一方、合意が成立しなければ追加制裁を科すと「ムチ」もちらつかせている。マクロアドバイザリーの最高経営責任者(CEO)クリス・ウィーファー氏は、「米国は経済的に大きな影響力を持っている。だからロシア側も交渉の席につくことを望んでいる」とロシアの立場を解説。「米国はこう言っているのだ。『協力するなら制裁を緩和できるが、応じなければ状況をさらに悪化させることもできる』と」

    ロシア企業は、21%という高金利に苦しんでいる。トランプ氏は、こうしたロシア経済の苦境を知っており、「和平へ協力するなら制裁を緩和できるが、応じなければ状況をさらに悪化させることもできる」と迫っているのだ。ロシアは、トランプ氏の言うことを聞くほかない事態へ追込まれている。


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    米『ブルームバーグ通信』は16日、トランプ政権が欧州側にロシアとウクライナの「停戦」を4月20日の復活祭(イースター)までに実現したいとの考えを伝えたと報じた。戦争終結に向けてロシア政府高官との和平交渉に当たる米側の一員、ウィットコフ中東担当特使は16日、サウジアラビアでロシア側と協議を始めると明らかにした。ロシア主要紙コメルサントは、交渉は18日に行われると報じた。

    ルビオ米国務長官は15日、ロシアのラブロフ外相と電話協議し、ロシアとウクライナの停戦に向け意見を交わした。ロシア側の発表によると、両氏は米ロ首脳会談に備えるために定期的に連絡を取ることで合意した。米『ブルームバーグ通信』は、早ければ今月末にも首脳会談が実施されると伝えた。

    ロイター通信などによると、米国からウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)やルビオ国務長官らが数日以内にサウジアラビアを訪問し、ロシア側と協議を始めるという。ロシア側の代表団にはウシャコフ大統領補佐官やナルイシキン対外情報局(SVR)長官が参加すると報じられている。


    ウクライナメディアによると、同国のポドリャク大統領府長官顧問は15日、サウジでの高官協議にウクライナは参加しないと明らかにした。「交渉のテーブル上に議論すべきものはない。ロシアはまだ交渉の準備はできていない」と語った。

    『日本経済新聞 電子版』(2月17日付)は、「『4月20日までに停戦』意向、ウクライナ巡り 通信社」と題する記事を掲載した。

    米ロ間の対話の動きが加速しているが、ウクライナは今回の米ロ協議には参加しないとしており、両国がウクライナの頭越しに交渉を進めないようけん制を強めている。ウィットコフ氏はFOXニュースのインタビューで、ウォルツ大統領補佐官と共に現地時間17日中にサウジに入ると明らかにした。ルビオ国務長官も訪問先のイスラエルからサウジへ向かう。


    (1)「ウィットコフ氏は、ロシア側との初回協議について「信頼の構築」を主眼に置くと強調し「良い進展を得たい」と述べた。ルビオ氏は、CBSテレビで、今後数日間でロシアのプーチン大統領が和平にどれだけ真剣なのかを判断すると述べた。交渉にウクライナが参加する段階ではないと指摘。「真の交渉」に至ればウクライナや欧州も関与することになると話した」

    米国の動きが早くなっている。4月20日までに停戦を実現するとしている。米国ベッセント財務長官は12日、ウクライナ鉱物資源の50%を米国へ譲渡する協定書が、ロシア・ウクライナ戦争終結後のウクライナにとって「安全保障の盾」になるとの考えを示した。これは、米国が、この鉱物資源協定によって現在、ロシアに占領されている地域から撤退を迫る根拠にしたいのであろう。ウクライナも、「4月20日停戦案」を聞かされると、鉱物資源協定へ積極的に取組む可能性が強まるであろう。


    (2)「ウクライナのイエルマーク大統領府長官は16日、通信アプリの投稿でロシアとの会談予定はないと表明。「ウクライナ抜きの合意は受け入れられない」と強調した。ゼレンスキー大統領は16日、米ロ首脳会談の別の候補地とされるアラブ首長国連邦(UAE)を訪問したと発表した。サウジやトルコも訪問する。ロシア当局者との会談予定はないとしている」

    米国は、ウクライナの出席なしでロシアと直接協議をする理由は、大急ぎで停戦案の「たたき台」を作りたいという思惑であろう。米国は、ウクライナ抜きの第1回交渉で、ロシアへ妥協した案を持ち帰るようなことがあれば、ウクライナはもちろん欧州からも非難されることは間違いない。米国は、「火中の栗を拾う」リスキーな交渉だけに、慎重対応が求められる。

    ロシア連邦統計局によると、24年10~12月の失業率は2.3%で過去最低を記録した。軍需工場に労働力を取られているからだ。ロ政府は昨年12月、人口減少などを背景に30年までに労働市場で310万人が不足するとの見通しを示し働き手確保の問題は、長期化するとみられる。ロシア経済は、すでに戦時経済で混乱している。



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    ウクライナ軍が、じりじりと領土を奪われている。ロシア軍は、自国兵士の犠牲をいとわない人海戦術を仕掛ける。ウクライナは、ロシア軍に対し兵力が絶対的に足りず、動員逃れや戦場からの逃亡も起きている。前線を安定させなければ、米ロ主導で進む停戦交渉で一段と不利な立場に追い込まれる気配である。

    『日本経済新聞 電子版』(2月15日付)は、「『このままでは戦い続けられない』、ウクライナ前線の悲鳴」と題する記事を掲載した。筆者の古川英治氏は、日本経済新聞社でモスクワ特派員を務め、現在はウクライナを拠点に取材活動を続けている。

    1月末、ロシア軍が5キロに迫る南部ザポリージャ(ザポロジエ)州の前線の村、テミリウカに入った。手引きしてくれた兵士2人の車に乗り込み、鉄線とコンクリートの障害物が敷かれた地点を越えて「戦闘地域」に入ると、こう告げられた。「ここからはいつでもドローンの攻撃があり得る。(電波を発する)携帯電話を機内モードに変えてくれ」。


    (1)「ドローンは電子音とともに、あっという間に突っ込んでくるという。兵士は敵のドローンの電波を妨害する大きな装置を抱えて歩いた。曇り空で、寒さがこたえ、道はぬかるんでいる。大半の家屋は崩れ落ち、村は静まり返っていた。ロシアの全面侵略の前に600人いた住人のうち、今も村に留まるのは高齢の男性1人だけだという。テミリウカはドネツィク(ドネツク)州とドニプロペトロウシク(ドニエプロペトロフスク)州との境界に位置する。東方から攻めるロシア軍はこの2カ月で2キロ進軍し、ウクライナ兵は拠点を後方のドニプロペトロウシク州の村に後退させている。その村もその日、航空機搭載爆弾を4発落とされ、電気と水の供給が途絶えた」

    かつて600人いたテミリウカ村は、高齢の男性1人だけだという。大半の家屋は崩れ落ち、村は静まり返っていた。

    (2)「テミリウカを案内してくれた兵士はザポリージャ州出身の42歳。敵のドローン攻撃に対する防御が十分でなく、大隊の大半が戦死したという。地元の領土防衛隊の仲間だった16人のうち、今も前線に残るのは2人だけ。この話に及ぶと、気持ちを抑えきれずに泣き崩れた。「我々は家族を守るために戦っている。しかし、今の状態では戦い続けられなくなる。徴兵を契約方式にして兵士を集め、退役までの期間も定めるべきだ」。ウクライナ軍は歩兵不足に苦しむ。兵士によるとザポリージャ、ドネツィクの州境界の前線では、ロシア軍との兵力の差は1対5〜7人。兵士は迫撃砲部隊に所属しているが、今は歩兵を欠く別の部隊に駆り出されている」

    地元の領土防衛隊の仲間だった16人のうち、今も前線に残るのは2人だけという戦争の厳しさだ。ロシア軍の兵力は、ウクライナ軍の5~7倍である。


    (3)「ウクライナ軍はそれまで兵力不足をドローン戦で補ってきた。1台500ドルの自爆ドローンを多用して装甲車などを効率的にたたき、火力の差を埋めた。するとロシア軍は戦術を変えてきた。1000キロ以上にわたるウクライナ軍の防衛線の弱いところを突き、3〜5人の兵士を波状攻撃で突っ込ませる。これにはドローンでは対処しきれない。ロシア兵の大半は倒されるが、生き残った兵士が前進して陣を築き、ウクライナ軍を後ずさりさせる」

    ウクライナ軍は、ロシア軍の人海戦術に圧倒されている。多勢に無勢で、不利な状況に追込まれている。

    (4)「最近は砲兵やドローン操縦士、軍医まで歩兵に配置換えされ、軍総司令官が空軍から5000人を陸上部隊に組み替える指令を出したことも明らかになった。新兵の訓練は十分ではなく、前線ではスキルや経験を持つ司令官や兵士が少なくなっている。ゼレンスキー大統領は24年12月、これまでに4万3000人以上の兵士が戦死し、40万人が負傷したと明らかにしている。ドネツィク州の前線から30キロ離れた場所では数十人の歩兵の訓練が行われていた。全体訓練のあと、ここで所属する旅団による1週間ほどの訓練を受けて前線に向かう」

    ウクライナ軍は、砲兵やドローン操縦士、軍医まで歩兵に配置換えされている。何か、沖縄戦線を彷彿とさせる壮絶さだ。この戦いは、もはや限界点にきた。これ以上の犠牲を出してはなるまい。


    (5)「22年の本格侵略の開始直後は全土から数十万人が軍に志願してきたが、状況は変わった。24年の法改正で軍への登録を義務付けられた徴兵対象者のうち、600万人の男性は登録せず、徴兵を逃れている。世論調査では半数が「徴兵逃れは理解できる」と答えている。悪化する戦況、富裕層や高官の子息らは徴兵対象から外れるという不信感、装備や訓練の不備――といった問題を、SNS上で氾濫するロシアのプロパガンダが増幅しているという。政府も世論の反発を恐れ、動員の問題を避けている面がある」

    徴兵対象者のうち、600万人の男性は登録せず、徴兵を逃れている。世論は、これを非難できないという同情論もある。「厭戦ムード」が高まっている。

    (6)「ドネツィク州で戦う旅団を率いる司令官は、「我々は全面戦争を戦い続ける体制にない」ともらす。各旅団はそれぞれ自前で広告やSNSを通じてPRを展開して新兵を募集し、ドローンや軍用車を購入する寄付金を集めている。司令官は、「兵士を訓練したり休ませたりしなくては効果的には戦えない。政府も軍も社会も変わらなくてはならない。我々には時間がない」と訴える」

    ウクライナ各旅団は、それぞれ自前で広告やSNSを通じてPRを展開して新兵を募集し、ドローンや軍用車を購入する寄付金を集めている。ここまで来た以上、継戦は困難だ。


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    中国政府はウクライナ戦争以降、ロシアから欧米による制裁を回避する実例を学ぶなど熱心だ。中国は、ロシアによる全面侵攻後の数カ月間に複数の省庁を横断する組織を設置したほどである。欧米による制裁の影響を研究し、指導部に報告書を定期的に提出している。これは、米国とその同盟国が台湾を巡る紛争で中国に同様の制裁を科した場合に備え、その影響を緩和する方法を学ぶことが目的だという。 

    中ロの経済規模は段違いである。中国が、世界のサプライセンターで西側経済と密接に結びついていることから、ロシアでは通用する回避策も中国に使えない限界がある。中国は、早とちりしないことが肝心だ。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月2日付)は、「中国、制裁回避はロシア手本に 台湾有事に備え」と題する記事を掲載した。 

    中国政府当局者らは、定期的にモスクワを訪れ、ロシア中央銀行や財務省、また制裁対策に関わるその他の機関と会合を持っていると関係者らは述べた。中国によるこの動きはこれまで報じられていなかったもので、経済政策と地政学的戦略の境界線がますます曖昧になる中、ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた新たな経済戦争の時代を象徴するものでもある。またこの傾向は、交渉と強制の手段として関税を活用するとしているドナルド・トランプ次期米大統領の2期目でさらに強まる可能性が高い。

     

    (1)「中国政府の意思決定に近い関係者らは、(ウクライナ侵攻後設置した)複数の省庁を横断する研究組織が(台湾)侵攻準備を意味するものではないと注意を促し、政府として武力紛争とその経済的影響という「極端なシナリオ」に備えている状況だと述べた。中国にとっては、世界最大の3兆3000億ドル(約494兆円)以上に上る外貨準備も大きな懸念の一つとなる。ウクライナ侵攻後に米国やその同盟国がロシアの国外資産を凍結したことを受け、中国政府は米国債などドル建て資産から準備金を多様化する方法をより積極的に模索するようになっているという」 

    中国政府は、ロシアのウクライナ侵攻後に経済制裁による影響と回避策を研究している。だが、中国とロシアでは、経済規模や西側との経済依存度で格段の違いがある。部分的には参考になっても、制裁回避の「決め球」はない。 

    (2)「中国指導部が、外貨準備関連の制裁リスクを警戒していることを示すかのように、習近平国家主席は2023年秋、国家外貨管理局(SAFE)を珍しく訪問した。中国政府の意志決定に近い前出の関係者らはそう話す。習氏はその際、外貨準備をどのようにして守るかについて質問したという。対ロシア制裁に関する中国の省庁間グループは、経済・金融問題を担当する何立峰副首相の監督下にある。習氏直属の何氏は、中国経済を西側諸国の制裁から守る防御策を主に立案する役割を担っている。中国の対ロ接近に詳しい関係者は、「(中国政府は)事実上、あらゆることに関心がある。その範囲は制裁回避の方法から、内製化を進めるためのインセンティブといった(制裁の)各種プラス効果にまで至る」と述べた」 

    外貨準備高3兆3000億ドルの一部でも、差し押さえられなくするためには、米国債を保有しないことも手段だろう。だが、外貨準備は輸入決済に必要であるから一定量(普通は3ヶ月分)を必要とする。問題は、必要物資の輸入ができなくなる事態だ。中国経済は大混乱するであろう。

     

    (3)「米シンクタンクの大西洋評議会とロジウム・グループによる昨年の報告書によると、西側諸国が全面的な金融制裁を実施すれば、中国の金融システムは混乱し、貿易も滞り、さらに中国が国外の銀行に預けている資産や外貨準備金3兆7000億ドルが危険にさらされるだろうと分析する」 

    中国経済の首根っこを抑えるには、西側諸国が全面的な金融制裁を加えることだ。輸出入業務はストップする。 

    (4)「米国務省の元制裁担当官エドワード・フィッシュマン氏は、(中国が)「対ロ制裁から得られた教訓の一つは、大規模な経済に制裁を科し始めると、国内で経済的・政治的な影響が出るということだ」と述べている。製造大国である中国は、グローバル・サプライチェーン(供給網)とのつながりがもたらす潜在的な落とし穴についても、ロシアの経験から学んだ」 

    西側が、大規模な経済に制裁を始めれば、「世界の工場」と言われる中国は身動きできなくなる。西側諸国が、サプライチェーンの「脱中国」を図っている理由もここにある。

     

    (5)「ロシアは長年にわたり、経済の自給自足を目指してきたが、ほとんど失敗に終わっていた。制裁が科された時、同国は突然入手できなくなった西側の部品に深く依存していることに気付いた。その結果、モノ不足が生じ、自動車製造など産業全体が一時ストップした。生産再開後、ロシアの自動車メーカーは必要な部品がなかったため、当初はエアバッグなどの安全機能なしで車を製造した。フィッシュマン氏は、「制裁は、グローバル・サプライチェーンに組み込まれている全ての生産部門にとって本当に破壊的なものになり得る」と述べる。「それは中国を非常に脆弱(ぜいじゃく)にする」 

    下線部は、中国経済が世界経済に組み込まれている以上、「謀反」が不可能ということだ。「台湾は中国領」ということで気ままに動き出せば、その反作用は極めて大きいことを知るべきだろう。

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    米ワシントンで10月23~25日にかけて、20カ国・地域(G20)と主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議が開催された。その間、中国やロシアはBRICSなどの枠組みを通じて新興国との関係を深めて対抗する形になった。BRICSは、中ロの思惑通り、西側への対抗軸になれるのか。実態は、不揃いで「興味半分」で集まっているのが実態のようだ。 

    『ロイター』(10月25日付)は、「BRICS拡大後初の首脳会議、増大する『非西側』の影響力誇示」と題する記事を掲載した。 

    BRICSは、首脳会議参加国の人口を合わせれば世界全体のほぼ半分に達し、加盟国は増え続けている。依然として国際通貨基金(IMF)と肩を並べて基軸通貨であるドルに対抗するにはほど遠いとはいえ、加盟国が今年9カ国に拡大した後初となった今回の首脳会議開催で影響力の増大ぶりを見せつけた。 

    (1)「閉会に当たって公表された共同宣言は、長々と書き連ねてはいたものの、西側主導で作られた決済・貿易制度や制裁の仕組みを回避する新たなメカニズムの創設については具体的に触れなかった。プーチン氏にとっては、多くのリーダーがロシアに集まったという事実だけでも、ロシアが世界経済から孤立しているという西側の主張への反論に役立つ。経済シンクタンク、ブリューゲルの上級研究員、アリシア・ガルシアエレロ氏は「西側諸国は首脳会議の重要性を理解していない。今回の会合は西側が力を失いつつあることを示している」と述べた」 

    BRICSは、中ロの「隠れ蓑」になっている。とりわけ、ロシアのプーチン氏には貴重な存在である。一方、BRICSの存在が西側の力を失っている証拠とみる向きもいる。

     

    (2)「アフリカ諸国の統治のあり方を調査している財団を運営するモ・イブラヒム氏は「BRICSへの参加を希望する国々がどれほど多いかを認識すべきだ。第二次世界大戦後の1945年頃に設立された、代表性や民主性に欠ける機関は全く変わっていないことが明らかだ」と述べた。プーチン氏によると、BRICSには30カ国以上が加盟を申請している」 

    BRICSへの参加国が多いのは、「藁をつかみたい」という保険機能への期待だろう。ハッキリ言えば「弱者連合」である。自らは改革せずに、恵みを待っている集団のようにみえる。 

    (3)「BRICSは2006年にブラジル、ロシア、インド、中国で発足したが、これまでの実績は一長一短。ウィーン国際経済研究所のマリオ・ホルツナー氏の試算によると、発足後も創設4カ国の1人当たり国内総生産(GDP)の伸びに大きな変化は見られない。また、BRICSの新開発銀行(NDB)は今年の融資予定額が50億ドルと、世界銀行が計画していう与信や融資、供与の合計額728億ドルに比べれば微々たるもので、他のプロジェクトもまだ初期段階に過ぎない」 

    BRICS創設4ヶ国の1人当たり名目GDPの伸び率には、大きな変化がみられないという。「中所得国の罠」に落込んでいる。改革がストップしている証拠であろう。

     

    (4)「BRICSは加盟国が増えるにつれて、加盟国間の規模や影響力の違い、対立する案件などにより、共通する課題で合意を形成するのが難しくなると見られている。しかし、加盟を望む国は既に世界の商取引の5分の1を占めており、これらの国はBRICを事実上の貿易フォーラムとみなしている」 

    BRICS加盟を望む国々の貿易額は、世界の2割に達している。だが、最大の市場は米国である。ここへ輸出できるメリットが最大のはずだ。米国へ背を向けたBRICSは、存在し得ないであろう。 

    (5)「BRICSが構築を目指す独自の決済システムがルの支配をすぐに脅かすことはないと見られるが、こうした取り組みは、自国の政策が将来西側から制裁を受けるのではないかと恐れる国にとって魅力的だ。「西側諸国との間で将来起きるかもしれない摩擦に対する地政学的な緩衝材として、こうした代替構造を作り、リスクを分散している」と、リスク情報会社ベリスク・メープルクロフトの上級アナリスト、ハミッシュ・キニア氏は分析した。BRICSは「世界秩序が変化する兆しであって、秩序の変化を引き起こしている原因ではない」と言う」 

    下線部こそ、BRICS参加国の本音部分だ。西側諸国との摩擦を起こしやすい国は、そのリスク分散でBRICSを利用するという狙いである。ヘッジを賭けているのだろう。

     

    (6)「実際のところ、BRICSは加盟国や加盟を希望する国から、IMFに対する明確な代替手段というよりも、世界が地政学的変化に直面する中で賢くリスクを分散させるための手段として利用価値があると受け止められている。中国人民大学国際関係学院の時殷弘教授は、「(中国にとって)BRICSは戦略的かつ経済的な連合ではない」とし、多くのBRICS加盟国が西側諸国と関係を促進していると指摘した」 

    BRICSは、愚痴を言い合う場所であろう。自らの改革努力を棚上げして、多くの恵みを待っているのであろう。下線部は、BRICSが戦略的かつ経済的な連合でないと言い切っている。この発言の主が、なんと中国の時殷弘教授だ。意味深長である。

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