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米国、「駆け足」ウクライナ停戦、4月20までに実施の意向「欧州側へ連絡」
ウクライナ、「限界」600万人が徴兵逃れ、前線の悲鳴“このままでは戦えない”「慟哭」
中国、「ロシアを例に」経済制裁、回避策研究も無駄 西側との貿易依存「格段」
中国政府はウクライナ戦争以降、ロシアから欧米による制裁を回避する実例を学ぶなど熱心だ。中国は、ロシアによる全面侵攻後の数カ月間に複数の省庁を横断する組織を設置したほどである。欧米による制裁の影響を研究し、指導部に報告書を定期的に提出している。これは、米国とその同盟国が台湾を巡る紛争で中国に同様の制裁を科した場合に備え、その影響を緩和する方法を学ぶことが目的だという。
中ロの経済規模は段違いである。中国が、世界のサプライセンターで西側経済と密接に結びついていることから、ロシアでは通用する回避策も中国に使えない限界がある。中国は、早とちりしないことが肝心だ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月2日付)は、「中国、制裁回避はロシア手本に 台湾有事に備え」と題する記事を掲載した。
中国政府当局者らは、定期的にモスクワを訪れ、ロシア中央銀行や財務省、また制裁対策に関わるその他の機関と会合を持っていると関係者らは述べた。中国によるこの動きはこれまで報じられていなかったもので、経済政策と地政学的戦略の境界線がますます曖昧になる中、ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた新たな経済戦争の時代を象徴するものでもある。またこの傾向は、交渉と強制の手段として関税を活用するとしているドナルド・トランプ次期米大統領の2期目でさらに強まる可能性が高い。
(1)「中国政府の意思決定に近い関係者らは、(ウクライナ侵攻後設置した)複数の省庁を横断する研究組織が(台湾)侵攻準備を意味するものではないと注意を促し、政府として武力紛争とその経済的影響という「極端なシナリオ」に備えている状況だと述べた。中国にとっては、世界最大の3兆3000億ドル(約494兆円)以上に上る外貨準備も大きな懸念の一つとなる。ウクライナ侵攻後に米国やその同盟国がロシアの国外資産を凍結したことを受け、中国政府は米国債などドル建て資産から準備金を多様化する方法をより積極的に模索するようになっているという」
中国政府は、ロシアのウクライナ侵攻後に経済制裁による影響と回避策を研究している。だが、中国とロシアでは、経済規模や西側との経済依存度で格段の違いがある。部分的には参考になっても、制裁回避の「決め球」はない。
(2)「中国指導部が、外貨準備関連の制裁リスクを警戒していることを示すかのように、習近平国家主席は2023年秋、国家外貨管理局(SAFE)を珍しく訪問した。中国政府の意志決定に近い前出の関係者らはそう話す。習氏はその際、外貨準備をどのようにして守るかについて質問したという。対ロシア制裁に関する中国の省庁間グループは、経済・金融問題を担当する何立峰副首相の監督下にある。習氏直属の何氏は、中国経済を西側諸国の制裁から守る防御策を主に立案する役割を担っている。中国の対ロ接近に詳しい関係者は、「(中国政府は)事実上、あらゆることに関心がある。その範囲は制裁回避の方法から、内製化を進めるためのインセンティブといった(制裁の)各種プラス効果にまで至る」と述べた」
外貨準備高3兆3000億ドルの一部でも、差し押さえられなくするためには、米国債を保有しないことも手段だろう。だが、外貨準備は輸入決済に必要であるから一定量(普通は3ヶ月分)を必要とする。問題は、必要物資の輸入ができなくなる事態だ。中国経済は大混乱するであろう。
(3)「米シンクタンクの大西洋評議会とロジウム・グループによる昨年の報告書によると、西側諸国が全面的な金融制裁を実施すれば、中国の金融システムは混乱し、貿易も滞り、さらに中国が国外の銀行に預けている資産や外貨準備金3兆7000億ドルが危険にさらされるだろうと分析する」
中国経済の首根っこを抑えるには、西側諸国が全面的な金融制裁を加えることだ。輸出入業務はストップする。
(4)「米国務省の元制裁担当官エドワード・フィッシュマン氏は、(中国が)「対ロ制裁から得られた教訓の一つは、大規模な経済に制裁を科し始めると、国内で経済的・政治的な影響が出るということだ」と述べている。製造大国である中国は、グローバル・サプライチェーン(供給網)とのつながりがもたらす潜在的な落とし穴についても、ロシアの経験から学んだ」
西側が、大規模な経済に制裁を始めれば、「世界の工場」と言われる中国は身動きできなくなる。西側諸国が、サプライチェーンの「脱中国」を図っている理由もここにある。
(5)「ロシアは長年にわたり、経済の自給自足を目指してきたが、ほとんど失敗に終わっていた。制裁が科された時、同国は突然入手できなくなった西側の部品に深く依存していることに気付いた。その結果、モノ不足が生じ、自動車製造など産業全体が一時ストップした。生産再開後、ロシアの自動車メーカーは必要な部品がなかったため、当初はエアバッグなどの安全機能なしで車を製造した。フィッシュマン氏は、「制裁は、グローバル・サプライチェーンに組み込まれている全ての生産部門にとって本当に破壊的なものになり得る」と述べる。「それは中国を非常に脆弱(ぜいじゃく)にする」
下線部は、中国経済が世界経済に組み込まれている以上、「謀反」が不可能ということだ。「台湾は中国領」ということで気ままに動き出せば、その反作用は極めて大きいことを知るべきだろう。
BRICS、「勢力誇示」中ロは、西側への対抗軸狙いも“同床異夢”「ただの集まり」
米ワシントンで10月23~25日にかけて、20カ国・地域(G20)と主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議が開催された。その間、中国やロシアはBRICSなどの枠組みを通じて新興国との関係を深めて対抗する形になった。BRICSは、中ロの思惑通り、西側への対抗軸になれるのか。実態は、不揃いで「興味半分」で集まっているのが実態のようだ。
『ロイター』(10月25日付)は、「BRICS拡大後初の首脳会議、増大する『非西側』の影響力誇示」と題する記事を掲載した。
BRICSは、首脳会議参加国の人口を合わせれば世界全体のほぼ半分に達し、加盟国は増え続けている。依然として国際通貨基金(IMF)と肩を並べて基軸通貨であるドルに対抗するにはほど遠いとはいえ、加盟国が今年9カ国に拡大した後初となった今回の首脳会議開催で影響力の増大ぶりを見せつけた。
(1)「閉会に当たって公表された共同宣言は、長々と書き連ねてはいたものの、西側主導で作られた決済・貿易制度や制裁の仕組みを回避する新たなメカニズムの創設については具体的に触れなかった。プーチン氏にとっては、多くのリーダーがロシアに集まったという事実だけでも、ロシアが世界経済から孤立しているという西側の主張への反論に役立つ。経済シンクタンク、ブリューゲルの上級研究員、アリシア・ガルシアエレロ氏は「西側諸国は首脳会議の重要性を理解していない。今回の会合は西側が力を失いつつあることを示している」と述べた」
BRICSは、中ロの「隠れ蓑」になっている。とりわけ、ロシアのプーチン氏には貴重な存在である。一方、BRICSの存在が西側の力を失っている証拠とみる向きもいる。
(2)「アフリカ諸国の統治のあり方を調査している財団を運営するモ・イブラヒム氏は「BRICSへの参加を希望する国々がどれほど多いかを認識すべきだ。第二次世界大戦後の1945年頃に設立された、代表性や民主性に欠ける機関は全く変わっていないことが明らかだ」と述べた。プーチン氏によると、BRICSには30カ国以上が加盟を申請している」
BRICSへの参加国が多いのは、「藁をつかみたい」という保険機能への期待だろう。ハッキリ言えば「弱者連合」である。自らは改革せずに、恵みを待っている集団のようにみえる。
(3)「BRICSは2006年にブラジル、ロシア、インド、中国で発足したが、これまでの実績は一長一短。ウィーン国際経済研究所のマリオ・ホルツナー氏の試算によると、発足後も創設4カ国の1人当たり国内総生産(GDP)の伸びに大きな変化は見られない。また、BRICSの新開発銀行(NDB)は今年の融資予定額が50億ドルと、世界銀行が計画していう与信や融資、供与の合計額728億ドルに比べれば微々たるもので、他のプロジェクトもまだ初期段階に過ぎない」
BRICS創設4ヶ国の1人当たり名目GDPの伸び率には、大きな変化がみられないという。「中所得国の罠」に落込んでいる。改革がストップしている証拠であろう。
(4)「BRICSは加盟国が増えるにつれて、加盟国間の規模や影響力の違い、対立する案件などにより、共通する課題で合意を形成するのが難しくなると見られている。しかし、加盟を望む国は既に世界の商取引の5分の1を占めており、これらの国はBRICを事実上の貿易フォーラムとみなしている」
BRICS加盟を望む国々の貿易額は、世界の2割に達している。だが、最大の市場は米国である。ここへ輸出できるメリットが最大のはずだ。米国へ背を向けたBRICSは、存在し得ないであろう。
(5)「BRICSが構築を目指す独自の決済システムがルの支配をすぐに脅かすことはないと見られるが、こうした取り組みは、自国の政策が将来西側から制裁を受けるのではないかと恐れる国にとって魅力的だ。「西側諸国との間で将来起きるかもしれない摩擦に対する地政学的な緩衝材として、こうした代替構造を作り、リスクを分散している」と、リスク情報会社ベリスク・メープルクロフトの上級アナリスト、ハミッシュ・キニア氏は分析した。BRICSは「世界秩序が変化する兆しであって、秩序の変化を引き起こしている原因ではない」と言う」
下線部こそ、BRICS参加国の本音部分だ。西側諸国との摩擦を起こしやすい国は、そのリスク分散でBRICSを利用するという狙いである。ヘッジを賭けているのだろう。
(6)「実際のところ、BRICSは加盟国や加盟を希望する国から、IMFに対する明確な代替手段というよりも、世界が地政学的変化に直面する中で賢くリスクを分散させるための手段として利用価値があると受け止められている。中国人民大学国際関係学院の時殷弘教授は、「(中国にとって)BRICSは戦略的かつ経済的な連合ではない」とし、多くのBRICS加盟国が西側諸国と関係を促進していると指摘した」
BRICSは、愚痴を言い合う場所であろう。自らの改革努力を棚上げして、多くの恵みを待っているのであろう。下線部は、BRICSが戦略的かつ経済的な連合でないと言い切っている。この発言の主が、なんと中国の時殷弘教授だ。意味深長である。





