勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ロシア経済ニュース時評 > ロシア経済ニュース時評

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    先進国では、領土拡大を意味する植民地主義が、19世紀の遺物として清算済である。ロシアは、未だにこれにしがみついており、世界の平和にとって大きな障害であることが浮き彫りになった。こういう「時代遅れ」の国に対して、どのように対応するのか。悩みは深い。

     

    ロシアの領土拡大の欲望は、止まるところを知らないようだ。6月初め、プーチン氏はウクライナについて、第一歩にすぎないと述べ、他の多くの領土も潜在的な標的とみていることが分かった。9日には初代ロシア皇帝のピョートル大帝の生誕350周年を記念する展覧会に出向き、ピョートル大帝がスウェーデンから獲得した領土について、「彼は私たちの領土を取り戻し、強化しただけだ」と笑みを浮かべて説明した。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月27日付)は、「プーチン氏『帝国の野望』 どこまで目指すのか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「初代ロシア皇帝のピョートル大帝の生誕350周年を記念する展覧会で、プーチン氏は次のように語った。「(土地を)取り戻して強化することがわれわれの運命のようだ」と述べ、ウクライナ戦争がピョートル大帝の戦争のように、20年以上続く可能性を示唆した。大統領補佐官のウラジーミル・メジンスキー氏はさらに露骨で、モスクワが地球の表面の6分の1を支配していたときより領土が大幅に縮小したと嘆き、不運な後退は「いつまでも続かない」と述べた」

     

    領土拡大を歴史の使命とするプーチン氏は、歴史を動かす原動力が「イノベーション」であることの認識がない。領土重視=資源重視=モノカルチャー経済という必然的な衰退コースを歩んでいる。この意味で、20年後のロシアは確実に弱小国へ転落するに違いない。科学革命の経験がない国家の悲劇である。

     


    (2)「領土の回復を訴えるこうした発言は1991年のソビエト連邦崩壊を巡る積年の憤りによるところが大きい。プーチン氏が20世紀最大の惨劇だとするソ連崩壊で、ロシアは歴代皇帝が積み上げた人口と領土のほぼ半分を失った。これをきっかけに世界の超大国は権威を失って、貧困や汚職、反乱に悩まされる破綻国家となった。ロシア政府はエストニアやリトアニア――両国ともNATOと欧州連合(EU)に加盟している――やモルドバ――ロシア軍高官が標的として最近引き合いに出した――などの隣国に新たに脅しをちらつかせている」

     

    ロシアは、1991年のソ連崩壊で領土も人口も失った。正確に言えば、これまでの支配が異常であり、正常化されたにすぎない。これを歴史の屈辱と捉えているが、大きな間違いだ。

     

    戦後の日本も同じ境遇に陥った。後に総理になる石橋湛山(当時:東洋経済新報社社長)は敗戦の年、『東洋経済新報(週刊東洋経済)』8月25日号社説)で、「更正日本の針路」と題し、日本は領土を失っても悲観することはない、技術でこれを補えると鼓舞した。その後の日本経済は、現実に復興を果たした。ロシアには、石橋湛山のような思想も人物もいないのだろう。ロシアが今後、発展できない理由はこれだ。

     


    (3)「ウクライナでのぶざまな後退こそが、プーチン氏を戦争の拡大に追いやる可能性があると警告するのは、ロシアの野党政治家でかつてはプーチン氏に助言したマラト・ゲルマン氏だ。「国内で大統領の支持率が脅威にさらされている。大統領は自分が拡大し、資金を注いできた偉大な軍隊がなぜウクライナの抵抗に対応できないかを説明できない」と同氏は言う。「従って大統領はウクライナとだけでなく、世界全体と戦う新たな次元に全てを移行させる必要がある。それゆえプーチン氏は別の犠牲者を選ぶ危険がある」。戦争が拡大すれば、民間人の軍への動員と、ロシアにまだ存在する数少ない市民的自由の排除が正当化される可能性がある、と同氏は指摘する」

     

    プーチン氏が、ウクライナ敗北で引き下がる男ではない。戦線を拡大して勝つまで戦うだろう。これは、見過ごしにできない重要な点である。

     


    (4)「ロシアが軍事的な問題を抱えているにもかかわらず、ウクライナ戦争の終結はほど遠い。ロシアは年単位の戦争に備えながら、ドンバス地方で前進を続けており、ウクライナ併合という当初の目標を変えていない。国家安全保障会議の副議長を務めるドミトリー・メドベージェフ前大統領は今月、「ウクライナが2年後に世界地図に残っていると誰が言ったか」と述べた。一部の欧州の指導者にとってこれらの発言が意味するところは、ウクライナの大部分がロシアに支配された状態で停戦が実現し、ロシアが消耗した軍を再編・再建して、新たな攻撃に向けて準備をすることができれば、最終的に他の欧州の国がプーチン氏の標的になる、ということだ

     

    ウクライナ戦争は、簡単に終わらないだろうという見方である。プーチン氏が、敗北を受入れない男であるからだ。

     

    (5)「エストニアを含むバルト3国は、建前上はNATO加盟によって保護されているが、NATOが現在、この地域を含めた東欧に配置している兵力は少なく、ロシアの全面侵攻を軍事的に撃退するには十分ではない。東欧最大の国ポーランドでさえ、軍隊はウクライナ軍ほど強くはなく、戦闘で鍛えられてもいない。一部の西側の軍事専門家によると、ロシア軍はエストニアの首都タリンをわずか1日で占領できるという。ポーランド国防省が2021年に実施した軍事演習では、同国軍は5日間でロシアに完敗するとの結論に達した」

     

    バルト3国は、ロシアの戦闘拡大に最も警戒している。エストニアの首都タリンは、わずか1日で占領されるという。米軍が、バルト3国へ常駐するので、ロシア軍も簡単に手を出せない状況だ。

     

    (6)「元駐NATO米大使でシンクタンク「シカゴ・グローバル評議会(CCGA)」会長のイボ・ダルダー氏によれば、ロシアがNATO加盟国に対して軍事侵攻した場合、現状では米国は間違いなく迅速に対応するという。ウクライナでの経験とは違って、ロシアの空軍は数日で破壊され、地上部隊はNATOの優れた空軍力に太刀打ちできないだろう。しかし、米国でより孤立主義的な政権が成立すれば、状況は変わるかもしれない」

     

    米軍とNATO軍がロシア軍と戦えば、帰趨ははっきりしている。ただ、米国でトランプ氏のような孤立主義者が政権につくと状況は変わる。欧州はその場合、悲劇再現となるリスクが高まる。

     

     

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    中国の習近平氏は、2月4日の中ロ共同声明でロシアと「限りない友情」を誓い合った仲である。そのロシアが、ウクライナ戦争で残虐行為を働いたとして、世界中から非難されている。「友人」である習近平氏には、困った事態であろう。「友人」が評判を落とせば、習近平氏にも累が及ぶのだ。

     

    『時事通信 電子版』(5月8日付)は、「中国の習氏『ロシアのウクライナ侵攻で動揺』 台湾侵攻の決意変わらず 米CIA長官」と題する記事を掲載した。

     

    米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は5月7日、ワシントン市内で開かれた英紙『フィナンシャル・タイムズ』主催の会合に出席し、ロシアのウクライナ侵攻を受け、中国の習近平国家主席が「動揺している印象を受ける」と語った。

     


    (1)「バーンズ氏は、侵攻で明らかになったロシア軍の残虐性により、ロシアと緊密な関係を維持する中国が「評判を落としかねない」と指摘。習氏は「予測可能性」を重視しており、「戦争に伴う経済の不透明感」も習氏の動揺につながっていると説明した」

     

    習氏は、「友人」プーチン氏とは60回以上も会談を重ねてきた親友である。それだけに、友人の評判が悪いのは、習氏自身にもはね返ってくることだ。「朱に染まれば赤くなる」で、習氏も侵略志向と見られている。中ロの密接化が、こういう警戒観となって現れているのだ。

     

    (2)「中国はロシアの侵攻で欧米諸国の結束が深まったことに失望しており、台湾侵攻に向けて「生かすべき教訓」を慎重に見極めていると語った。「時間をかけて台湾を支配するという習氏の決意は損なわれていない」としつつも、「(中国の)計算には影響を与えている」と話した」

     

    ロシアのウクライナ侵攻に対して、欧米は結束を固めている。中国の外交戦術では、米国と対決する一方で、欧州との関係を強化して共同で米国と対決する構図を描いていた。現在、この構図は大きく崩れている。

     


    もともと、米欧は同じ仲間である。米国は、欧州の移民で成立した国だ。その欧州が、米国と対立して中国と連携するはずがない。こういう経緯を見誤る当たり、習氏の「外交眼力」は相当鈍っていると言うほかない。日本が、中国と手を組んで米国と対決することなど100%あり得ない。それは、価値観=文化の違いでもある。習氏は、この辺の判断が間違っているのだ。

     

    『時事通信 電子版』(4月27日付)は、ウクライナ危機で中国政府は大ショック、庶民はロシア応援」と題する記事を掲載した。筆者は、柯 隆(か・りゅう)氏である。東京財団政策研究所主席研究員である。

     

    中国の一般の庶民は、ウクライナのことをあまり知らない。逆にロシアは身近な存在である。中国の公式メディアやインターネットのSNSでは、ウクライナが米国を中心とする先進国の手先となって、ロシアを追い詰めているから、ロシアは反撃しているといわれている。民衆の間では「ロシア、頑張れ」の声が上がっている。

     


    (3)「これに対して、知識人の間で事情をよく知っている人は少なくない。言論統制されているため、声を上げることができないが、心の中でウクライナを応援する人は多い。中には、プーチンのロシアと手を切るべきだと主張する政府系シンクタンクの研究者も現れている。ウクライナ危機を見た中国政府は、大きなショックを受けているはずである。なぜなら、中国の軍事技術の源泉はロシアだからだ」

     

    ウクライナ戦争で、ロシア軍の戦況が芳しくないことにより、中国は失望している。中国の軍事技術の源泉はロシア軍である。この状態で、仮に米国と戦うことになれば、冷や汗ものである。

     

    (4)「ロシアが短期間にウクライナを攻略できると中国は確信していたが、1カ月たっても、ウクライナを攻略できていない。すなわち、ロシアの軍事力が本当に強いものかどうかが今、疑われている。単なる「張子の虎」ではないか、とさえ思われている可能性は高い。なぜ中国政府がショックを受けるかというと、もし、ロシアから導入した軍事技術をもって台湾に侵攻したとしても、本当に台湾を攻略できるのか、自信を失ってしまう可能性がある。すなわち、中国人民解放軍が台湾に侵攻した場合、短期間に台湾を攻略できなければ、後方から補給が追い付かず、失敗に終わる可能性が高いからである」

     

    中国は、ロシアの武器体系にそっている。そのモデルたるロシアの武器が、ウクライナ軍によって破壊されている映像は、身震いするほどの恐怖であろう。

     


    (5)「中国政府はロシアと米国の間で、自分にとって最も得する解を求めようとしている。すなわち、損得の勘定を一生懸命しているところである。米国などからは、中国がロシアに軍事支援した場合、重い代償を払うことになると警告されている。これに対して、駐米中国大使の秦剛氏は、米CBSの番組に出演した時、中国はロシアに軍事支援をしていないとコメントした。このコメントから中国はロシアへの軍事支援による代償を十分に認識していることが分かる。もう少し時間がたって、ロシアの敗戦がはっきり見えれば、中国は自然にロシアと距離を置くようになると思われる」

     

    ロシアが敗北すれば、中国はロシアと自然に距離を置くようになるという。これは,習氏の外交的失敗を意味する。国家主席3選どころの話でなくなるであろう。

     


    (6)「中国経済が先進国に依存しているのは明白な事実である。それを無にしてロシアと同盟を組むことはあり得ない。ただし、米国から経済制裁を受けているのは事実であり、中国政府は米国に対する警戒も強めている。習近平政権の本心は、米国との関係を改善したいということである。しかし、ここ数年の米中対立の溝はあまりにも深い。簡単には埋まらないだろう。これからは、ある種の準冷戦の状態に突入していく可能性が高い」

     

    中国にとって、ロシアが頼れる相手でないことが分れば、中国はどうするのか。今さら、米国との関係復活も言い出せないのだ。苦しい局面にきた。

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    戦争は痛ましいものである。前途有為の青年が、戦場で斃れるからだ。ロシアが侵攻したウクライナ戦争では、ロシア兵士の戦死者が1万~2万人も出ていると報じられている。このため、著しい兵士の士気低下が起こっているという。

     

    この士気低下の理由が分ってきた。戦死者に、モスクワ出身者がいないことだ。最前線へは,モスクワ出身兵士が出動していないことを覗わせている。これは、偶然でなく政府による意図的な兵士の選別であろう。

     


    『中央日報』(5月5日付)は、「死亡者のうちモスクワ出身はいない、ロシア軍戦死者の悲しい真実」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナを侵攻したロシア軍隊を支えているのはモスクワから数千キロメートル離れた極東・シベリア地域から来た所得が低いいわゆる「土の箸とスプーン」出身だった。

     

    (1)「英紙『タイムズ』は、ウクライナで戦っている多くのロシア兵士が首都モスクワから遠く離れた地方に基盤を置いていると3日(現地時間)、伝えた。寒く土地がやせているシベリア・極東地域や少数民族別に区分された一部の共和国など、ロシア内の非主流地域から来た兵士たちが多かった。ウクライナ戦争が70日以上続いていて、この地域出身の兵士はさらに増えている。ウクライナのシンクタンク、国防戦略センターによると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はモスクワを除き、主に極東とシベリア地域から毎週200人ずつ入隊するよう要求している」

     


    ウクライナ最前線で戦っているロシア軍兵士は、シベリア・極東地域や少数民族に区分された一部の共和国などの出身者である。戦死してもモスクワから遠く離れた地域であれば、ロシア国民に広く知られないで済むという計算が働いていると見られる。報道統制しているので、好都合なのだろう。プーチン氏は、主に極東とシベリア地域から、毎週200人ずつ入隊するよう要求しているという。これは、200名の戦死者が出るという想定であろう。

     

    (2)「ブチャで戦争犯罪を起したとされる第64分離車両化小銃旅団も、モスクワの東6000キロメートル以上離れた極東地域ハバロフスクの小さな村に基地を置いている。ハバロフスクは中国と国境を接していて、モスクワとは7時間の時差がある。戦争初期はロシア兵士がウクライナ占領地で略奪したテレビ・洗濯機・貴金属・化粧品などをベラルーシの国境都市マジルの宅配会社からシベリアの人里離れた地方などに送る防犯カメラの映像が公開された。ロシアの家族に送ったものと推定される」

     

    ブチャで大量虐殺を行なった部隊は、モスクワの東6000キロメートル以上離れた極東地域ハバロフスクの小さな村に駐屯している。寒村ゆえに貧しく、略奪したテレビ・洗濯機・貴金属・化粧品を故郷へ送ったことが判明している。

     


    (3)「入隊者が、多いため死亡者も多かった。ロシア独立メディア『メディアゾナ』は4月末、ロシア兵士死亡の内容が出てきた1700本余りの記事を研究した結果、少なくとも1774人が死亡(西側は1万5000余人死亡推定)したと推定した。このうちロシア南部の北カフカースのダゲスタン共和国、東部シベリアのブリヤート共和国などだけで200人余り以上が戦死した。メディアゾナは、「モスクワとサンクトペテルブルク地域の戦死者はいなかった」とした。『ワシントン・ポスト』(WP)は、「ダゲスタン・ブリヤート共和国は貧しい地域」と伝えた。ダゲスタン共和国の昨年の平均給与は3万2000ルーブル(約6万円)、ブリヤート共和国の平均給与は4万4000ルーブルだ。モスクワの平均給与は11万ルーブルだ」

     

    ロシア僻地は給与も低く、モスクワ平均給与の3~4割レベルである。それだけに、高い給与に釣られて入隊してくるのであろう。

     


    (4)「ロシア独立メディア『メドゥーサ』によると、ダゲスタン共和国は3月からウクライナ戦争に参戦する兵士たちを募集している。一般兵士の月給は17万7000ルーブルだった。ロシアの今年の最低生活費は1人あたり月1万3000ルーブル程度だ。ウクライナの1カ月派兵で年間生活費を得られる場合があるため貧しい地域からは若者が軍隊に志願入隊する場合が多かった」

     

    一般兵士の月給は、17万7000ルーブル(約33万2000円)である。ダゲスタン共和国の昨年の平均給与は3万2000ルーブル(約6万円)、ブリヤート共和国の平均給与は4万4000ルーブル(約8万2000円)であるから、4~5倍もの高収入である。喜んで入隊するのだろう。

     


    (5)「『メドゥーサ』は、「ダゲスタン共和国の多くの若者たちが貧しい家を立て直し、出世のために軍隊に行こうとする。過去、各地で徴兵人員を制限すると徴集委員会に賄賂を送りさえした」と伝えた。今回の戦争でも多くの人々が入隊した。ロシア国営メディア「リアノボスティ通信」は3月、「ダゲスタン共和国では1週間で300人以上が兵役契約を締結した」と伝えた。しかし、100人以上が戦死した。20代の若い青年たちが多かった

     

    貧しい地域では、一般兵士の高い給与に目が眩み、応募してくるのであろう。事情を知らないままに、ウクライナ最前線へ送り込まれている。

     

    (6)「高麗(コリョ)大学ロシア語ロシア文学科のチェ・ジョンヒョン教授は、「極東とシベリア地域などは所得が低く生活水準が劣悪だ。他の職業よりも給与がよい軍入隊でお金と名誉を得ようとする者が多い。世論統制もうまくいっていて、ウクライナ戦争の真実について知らずに志願した若い青年たちが多かった」と背景を説明した。続いて「反面、モスクワなど大都市で徴兵しないのはロシア内部で逆風が吹く恐れがあるためだ。モスクワで徴兵するようになれば西側で『ロシアは本当の危機に直面している』と考える可能性もある」と付け加えた」

    ロシア軍は目下、辺鄙な地域で一般兵士を募集しているが、モスクワで徴兵を開始するようになれば、募集兵業務が行き詰まってきたことを示す。

     

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    ロシアへの経済制裁効果が、なかなか現れないと指摘されている。だが、ロシアではすでに原油需要の低下によって、貯蔵スペース不足に直面する事態になっている。この状況が続けば、永久に施設を閉鎖する恐れも出ているという。西側諸国による一致した経済制裁で、先ず原油輸入を禁止ないし抑制している効果が現れてきた。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月14日付)は、「ロシア産原油のだぶつき、成長エンジンを直撃」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアでは行き場を失った原油がエネルギー供給網を逆流し、産油量の落ち込みが鮮明になってきた。ウクライナとの戦闘が激化する中で、ロシア経済の屋台骨に深刻な影響をもたらしつつある。製油所では、国内外の需要の落ち込みを受けて精製量を減らすか、閉鎖に追い込まれたところも出ている。パイプラインやタンク内の貯蔵スペースは減少の一途をたどっており、油井でも生産を縮小している。とはいえ、損失は今のところ限定的で、エネルギー業界は依然としてロシア政府に巨額の収入をもたらしている。ただ、向こう数カ月には、原油を採掘してから供給先に届けるまでに問題が生じる可能性が高い、とトレーダーやアナリストは指摘している。

     


    (1)「国際エネルギー機関(IEA)は13日、ロシアでは5月以降、日量およそ300万バレルの生産が滞るとの予想を示した。これにより産油量は日量900万バレル弱と、アナリストの予想以上に落ち込む見通しだ。ロシアの産油量がどこまで打撃を受けるかは、アジアで新規顧客を確保できるかどうかにかかっている。米国の顧客は完全に避けており、欧州でも代替の調達先を探る動きが広がっている。IEAでは、ロシア産原油の長年の買い手が離れていったことで、中国が急いでその分を輸入している兆候はまだ見られないとしている」

     

    ロシアは、5月以降の原油生産が日量300万バレル減少して、日量900万バレル弱に落込む見通しである。これはIEAの予測であり、アナリストの予想を上回る落込みである。この落込みをアジアでどこまでカバーできるかだ。

     

    (2)「産油量が持続的に落ち込めば、西側の経済制裁で深刻な景気後退に向かっているとみられる厳しい局面で、ロシア経済のけん引役が大きく損なわれることになる。DNBマーケッツの上級石油アナリスト、ヘルジ・アンドレ・マーティンセン氏は「潜在的な生産能力の一部が恒久的に失われる恐れがある」と話す。ロシアの石油・天然ガス業界がこの危機を乗り越えることができるかどうかは、政府の運命を左右することになりそうだ。2021年のロシア予算で、歳入の45%は石油・ガス業界によるものだった(IEA調べ)。国際金融協会(IIF)では、ロシアは3月の原油輸出代金として121億ドル(約1兆5200億円)を受け取ると試算している」

     

    急激な需要減で生産量を落とせば、潜在的な生産能力の一部が恒久的に失われる恐れがあるという。宝の持腐れに直面するのだ。2021年のロシア予算で、歳入の45%は石油・ガス業界による利益である。原油生産量が5月以降、25%以上も減れば、歳入への影響が出て当然である。

     


    (3)「トレーダーによると、ロシアの精製業界はウクライナへの侵攻開始直後から問題に直面した。欧州の買い手が代替の調達先の確保に動き、輸出が急減したためだ。その後の3月初旬には、米国がロシア産石油の輸入禁止に踏み切った。ロシアでは十分な買い手がつかなったことで、ディーゼルやガソリンなど石油製品の貯蔵スペースが枯渇し始めた。そのため、精製業者の稼働率は低下。4月8日までの1週間に製油所の生産量は日量約170万バレル減った。S&Pグローバル・コモディティー・インサイツの石油分析責任者、リチャード・ジョスウィック氏が分析した。これは稼働率が下がる春季メンテナンス期間の通常レベルをさらに7割下回る水準だという」

     

    石油精製業界にも,影響が出ている。4月8日までの1週間に、製油所の生産量は日量約170万バレル減っている。それでも、石油製品の貯蔵スペースが枯渇し始めている。だぶついているのだ。

     


    (4)「
    ロシアの製油業界が衰退すれば、石油市場への影響は大きい。ロシアはウクライナに侵攻するまで、米国、サウジアラビアに次いで世界第3位の石油生産国だった。また世界最大の輸出国でもあり、日量500万バレルの原油とコンデンセート(注:熱水 ナフサの成分に似ている)に加え、ディーゼルなど日量290万バレルの石油精製品を海外に供給していた。ロシア国営パイプライン会社トランスネフチでは、製油所への原油供給が落ち込んでいるため、パイプライン内の原油貯蔵スペースがひっ迫しているもようだ。トレーダーやアナリストが明らかにした」

     

    ロシアは、世界3位の原油生産国である。また、世界最大の輸出国でもあり、日量500万バレルの原油を輸出してきた。それだけ、国内需要が少ないことを意味する。西側諸国が輸入を禁止ないし抑制すると、途端に大きな影響が出る体質である。

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    ソ連「赤軍」は、第二次世界大戦でドイツ軍を打ち破り、かくかくたる戦果を上げた。その歴史を汲むロシア軍が、圧倒的な兵力を持ちながら、ウクライナ軍の猛攻に苦戦している。ロシア将官の戦死が相次ぐ事態だ。

     

    ウクライナ国防省は26日、南部ヘルソン近郊での空爆で、ロシア軍のヤコフ・レザンツェフ中将が死亡したと発表した。レザンツェフ氏はロシア南部軍管区第49軍司令官。西側当局者は、ロシア軍の将軍が死亡するのは7人目だとしている。中将の戦死は2人目で、ウクライナ侵攻開始以降、最高位だという。

     


    ウクライナ戦線には、約20人の将官が派遣されているという。すでに、そのうち7人が戦死するという異常な戦争になっている。3分の1が、犠牲になっている計算だ。将官クラスでも、特殊な通信手段を持たず、ウクライナ軍に傍受されて「狙い撃ち」されている結果とされている。ロシア軍の近代化が、いかに遅れているかを証明している。ハイテク化とは無縁の軍隊のようだ。

     

    英『BBC』(3月23日付)は、「『ロシアは軍事的に何を誤ったのか』ウクライナ侵攻・解説」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアは世界有数の強力な軍隊を保有している。しかし、その強力な軍事力はウクライナ侵攻の開始当初、ただちにあらわにならなかった。西側の軍事アナリストの多くは、ロシア軍のこれまでの戦いぶりに驚いている。「みじめなものだ」と言う専門家もいる。

     

    ロシア軍の軍勢はほとんど前進せず、これまでの損失から立ち直れるのだろうかと疑問視する人もいる。3月半ばになって、北大西洋条約機構(NATO)の軍幹部はBBCに対して、「ロシア軍は明らかに目的を実現していないし、おそらく最終的にも実現しないだろう」と話した。だとすると、いったい何がうまくいかなかったのか? 西側諸国の複数の軍幹部や情報当局幹部に、ロシアが何をどう誤ったのか、尋ねてみた。

     

    (1)「侵攻開始当初、ロシアは明らかに空では有利だった。国境近くまで移動させた戦闘機の数はウクライナ空軍の戦闘機の3倍だった。ほとんどの軍事アナリストは、ロシア軍が侵略開始と共に直ちに制空権を掌握するものと見ていたが、実際にはそうならなかった。ロシア政府は、特殊部隊も、素早い決着をつけるのに重要な役割を担うはずだと考えていたかもしれない。西側政府の情報当局幹部がBBCに話したところでは、特殊部隊スペツナズや空挺部隊VDVなどが少数精鋭の先遣隊となり、「ごく少数の防衛部隊を排除すれば、それでおしまい」だとロシアは考えていたようだ」

     


    太平洋戦争で、旧日本軍は真珠湾奇襲攻撃すれば、それで勝利間違いなしと見ていた。米国の軍事力を低評価していた結果である。だが、米軍は日本軍の情報をすべて解読していた。真珠湾攻撃も事前に情報をキャッチし、空母を疎開させていたのである。米海軍は、空母が無傷であったから半年後に,ミッドウェー海戦を挑み日本海軍に致命的打撃を与えた。ここに、日本軍は敗戦への道を歩まざるを得なかった。

     

    今回のウクライナ戦争でも、米軍が事前に情報を分析してウクライナ軍へ通知していたのであろう。一方のロシア軍は、旧日本軍と同様に事前の情報分析に抜かりがあったに違いない。緒戦で、大きな打撃を被っているのは、それを現している。

     


    (2)「開戦間もなく首都キーウ(ロシア語ではキエフ)近郊のホストメル空港に戦闘ヘリコプターで攻撃を仕掛けたものの、ウクライナ軍に押し返された。このためロシア軍は、兵員や装備、物資の補給に必要な空路を確保しそこねた。わりにロシア軍は、補給物資のほとんどを主に陸路で運ぶ羽目になっている。このため軍用車両の渋滞が発生し、渋滞すると予測できる場所も生まれ、ウクライナ軍からは急襲しやすくなっている。道路から外れて進もうとした重装甲車は、ぬかるみで身動きが取れなくなった。「泥沼にはまった」軍隊のイメージが、ますます強くなった」

     

    ロシア軍は、空挺部隊をキエフ近郊のホストメル空港攻撃目的で送ったが全滅している。この時、将官クラスが戦死している。こうして、制空権を奪えず敗退した。この結果、空路で行なうべき弾薬や食糧の輸送が、陸路になった。ウクライナ南部は、鉄道輸送が可能である。東部は、陸路という極めてリスクの高い方法に依存している。

     

    (3)「この間、人工衛星がウクライナ北部上空で撮影したロシア軍の長大な装甲車の列は、いまだに首都キーウを包囲できていない。ロシア軍は主に、鉄道を使った補給ができている南部で、軍を進めている。イギリスのベン・ウォレス国防相はBBCに、ロシア軍が「勢いを失っている」と話した。「(ロシア軍は)身動きが取れない状態で、じわじわと、しかし確実に、相当な被害をこうむっている」と見られる」

     

    戦争の帰趨を決めるのは、物資輸送の兵站が成功しているか否かに関わるという。その点で、ロシア軍によるキエフ周辺の占領は、極めて困難な事態に陥っている。不可能と言っても良さそうだ。

     


    (4)「ロシアは今回の侵攻作戦のために約19万人の部隊を集めた。そのほとんどはすでに戦場に投入されているが、すでに兵の約10%を失ってしまった。ロシアはすでに失った分の兵士を補充するため、国の東部やアルメニアなど遠方の予備役部隊さえウクライナに移動させている。シリアからの外国人部隊や、謎めいた傭兵組織「ワグナー・グループ」も、近くウクライナでの戦闘に参加する可能性が「きわめて高い」と、西側当局者は見ている。NATOの軍幹部はこれについて、「たるの底にあるものを必死でかき集めている」印だと述べた」

     

    ロシア軍が、シリアからの外国人部隊や、謎めいた傭兵組織「ワグナー・グループ」まで、ウクライナ戦争へ投入するのは、もはや、ロシア正規兵がいなくなってしまった結果である。傭兵は所詮、アルバイト部隊である。ウクライナで戦う動機がない以上、これがどこまで助っ人の役を果たすかは疑問である。ウクライナ戦争の全貌が、見えてきた感じである。

     

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