勝又壽良のワールドビュー

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    ロシアのプーチン大統領は焦っている。対独戦勝記念日(5月9日)に、ウクライナ勝利宣言を発するためには、マリウポリを完全占領する必要があるからだ。こうして、多くの人々が犠牲になるのでは、と憂慮されている。

     

    欧州当局者は19日、ウクライナ南東部の港湾都市マリウポリは向こう数日でロシア軍の手に落ちる恐れがあり、多数の民間人の遺体が見つかった首都キーウ(キエフ)郊外のブチャよりも厳しい状況になる恐れがあるとの見方を示した。 当局者は匿名を条件に「マリウポリ市は完全に破壊され、多くの民間人が犠牲になる」とし、「ブチャを超える惨状になると恐れている。『ロイター』(4月20日付)が報じた。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月20日付)は、「マリウポリで根強い抵抗、いらだつロシア」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ東部への全面攻撃に向けてロシア軍が兵力を集結させる中、さらに数千人の兵士が戦略的な要所である南東部の港湾都市マリウポリを包囲しつつある。マリウポリでは、ウクライナ兵が徹底抗戦の構えを崩しておらず、ロシア軍は7週間が経過しても制圧できずにいる。

     

    (1)「マリウポリで抵抗するウクライナ軍がロシアの攻撃を妨害し、降伏要求も拒否している現状は、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が日々訴えている愛国主義的なメッセージとも重なる上、ウクライナ全土で戦っている同国兵士の士気を高めることにもつながっている。なお数千人の民間人が十分な食料や水、電気もないまま退避できず、現地に取り残されているとみられている。ロシアはここ数日、この地域で制空権を確保し、長距離爆撃機で市内を攻撃しているとウクライナは指摘している。ゼレンスキー氏は、ロシアがマリウポリへの攻撃を続け、ウクライナ軍を全滅させれば、和平協議を打ち切る考えを示した」

     


    ゼレンスキー大統領が、日々訴えている愛国主義的なメッセージで、ウクライナ軍がロシアの攻撃を凌いでいる。ゼレンスキー氏は、ロシアがマリウポリでウクライナ軍を全滅させれば、和平協議を打ち切る考えを示している。

     

    (2)「ウクライナ軍は目下、マリウポリのアゾフスターリ製鉄所に立てこもることで抵抗を続けている。軍事専門家によると、ここは地下の核シェルターで電力供給を確保しており、トンネル網が張り巡らされている。この強化された構造により、ウクライナ軍は移動することができ、ロシア軍との戦闘に備えた配置を可能にしている」

     

    製鉄所の地下は、核シェルターになっており、トンネル網ができている。これを利用して、ウクライナ軍は長期戦に備える準備をしてきた。

     


    (3)「マリウポリ中心部の東側にあるこの地下施設は、重量数トン、かつ厚さ数メートルの鉄骨鉄筋コンクリートで覆われている。ロシアの軍事専門家が新たな検閲法への懸念から、匿名を条件に明らかにした。施設内には核戦争に備え、寝床や食料が備蓄されている可能性が高いという。その専門家は、ロシア軍は規模や攻撃力で圧倒的に優位にあるにもかかわらず、ウクライナ兵の排除に手間取るとの見方を示した。西側の専門家も、ロシア軍が侵攻を開始した2月24日以前の段階で、ウクライナ軍には長期戦に耐えられるよう、食料と武器が供給されていたと分析している」

     

    地下施設には、寝床や食料が備蓄されている可能性が高いという。これによって、ウクライナ軍はロシア軍に抵抗可能となっている。

     


    (4)「英空軍のミック・スミース少将は18日、英国防省の諜報分析を要約しながら、「ロシアの司令官はマリウポリ制圧に時間を要していることに懸念を抱くだろう」と述べた。「ウクライナ軍による組織だった抵抗はロシア軍を極限まで試しており、人員や物資を奪い、他地域でのロシアの進軍ペースを鈍らせている」。ウクライナ国防省は17日、ロシア海兵隊の部隊がマリウポリで上陸作戦の準備を進めているとの報道を調査していると明らかにした。米国防総省は18日、その形跡は確認できないとしながらも、上陸はあり得るとの見方を示した。ロシアは現在、マリウポリに近いアゾフ海上に少なくとも戦車揚陸艇1隻を配備しており、さらに離れた黒海にも複数の揚陸艇を展開している」

     

    下線部は、旧日本軍が沖縄戦によって、米軍の本土上陸作戦を遅らせる計画と重なる部分があって胸が痛む。昨日のG7首脳オンライン会議は、ウクライナへ踏込んだ軍事支援を決めた。米国は、戦闘機の供与も決めたようである。西側諸国は、ロシア軍の攻撃拡大を阻止する本格的な動きを見せ始めた。

     


    (5)「ロシア軍の専門家の分析では、同国政府はマリウポリ制圧に向けて1万人の兵士を振り向けている。たとえロシア軍が勝利を宣言できる状況までウクライナ軍を追い詰めたとしても、支配を維持するには一部の兵力を残すことが必要で、根強い抵抗運動に遭う公算が大きいと指摘されている」

     

    ウクライナ軍は、旧日本軍と似た面を持っているようだ。コサック兵の歴史が、こういう勇猛果敢な戦い方をさせるとすれば、改めて歴史の重みを考えさせられる。コサック兵は、ウクライナの騎兵であった。

     

    (6)「ロシアはウクライナ侵攻について、同国を支配する「ナチス」を排除する試みだとして正当化している。ロシアがマリウポリの防衛部隊に対してナチスのレッテルを貼り、かつ現地での戦況が想定通りに進展していないことを踏まえると、ロシア軍は包囲戦術でさらに残忍な手段に打って出ることもあり得る。西側の一部専門家からはこうした指摘も聞かれる。前出のスミース少将は、ロシアが「マリウポリ内の人口密集地を標的にしていることは、1999年のチェチェン紛争や2016年のシリア内戦で使ったアプローチと一致する」と話す。いずれも激しい攻撃で都市を荒廃させ、抵抗勢力を壊滅させたという」

     

    ロシアは、ウクライナを「ナチス」呼ばわりしている。このことは、マリウポリで惨劇を繰り広げる「免罪符」に使う懸念が出てきた。ロシア軍が、チェチェン紛争やシリア内戦で使った無差別攻撃の予兆を感じさせるのだ。

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    ウクライナへは、世界が支援の輪を広げている。その中でも、ウクライナと敵対するロシアやベラルーシから、母国の自由を夢見てウクライナ軍へ入隊する人たちが増えている。特に、隣国ベラルーシ人の数百人がウクライナ軍として戦っているほか、約1000人が審査中か訓練中という。ロシア人やベラルーシ人の隊員は、戦争終結後に和平面でウクライナとの橋渡し役をするのでないかと期待される。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月8日付)は、「ウクライナ軍に入るベラルーシ人、母国の自由を夢見て」と題する記事を掲載した。

     

    パベル・クラザンカさんにとって、母国での自由への道は、ここウクライナでロシア軍を倒すことによって初めて切り開かれる。最近ウクライナ軍に加わったベラルーシ人やロシア人の戦闘員の多くが、同じように考えている。

     


    (1)「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2月24日にウクライナ侵攻を開始して以降、ベラルーシから数百人の戦闘員がウクライナ軍に加わった。ベラルーシ人で構成される大隊に配置される者もあれば、ウクライナ軍の他の部隊に入る者もいる。ベラルーシの反政府派指導者らによると、この他にも1000人以上が審査か訓練を受けている途中だ。ウクライナの法律では、同国軍に入隊した外国人には市民権を取得する資格が与えられる」

     

    ベラルーシは、ロシアと一心同体の動きをしている。ウクライナ侵攻では、大きな手助けをした。こういうベラルーシの動きに反対する人たちは、ウクライナ支援に回っている。ウクライナ軍に入隊したり、その前段階にある人々が千数百人にもいるという。

     


    (2)「ロシア人兵士で構成される「ロシアに自由を」部隊も、前線への配置に向けて準備を進めている。同部隊には今回の侵攻で捕虜となってウクライナ側に寝返ったロシア兵も含まれる。この部隊は、亡命したロシアの野党指導者らが支援している。ウクライナの防衛と残虐行為の阻止に尽力するロシア兵の存在が将来、両国民の和解に大きな役割を果たすと彼らは期待する」

     

    ロシア人兵士も前線への配置に向けて準備中である。ウクライナ軍に捕虜となり寝返った兵士も含まれる。彼らは将来、両国が和解する時期になったときに大きな役割を果たすと期待される。

     


    (3)「冒頭のクラザンカさんは「独立したウクライナがなければ、独立したベラルーシもない」と語る。数週間前にキーウに到着したクラザンカさんは、ベラルーシ人が率いる「カストゥーシュ・カリノウスキ大隊」に所属する。今のところ約200人の部隊で、戦闘経験の全くない活動家やブロガーもいれば、2014~15年にウクライナ東部ドンバス地方で親ロ派武装勢力との戦いに加わった兵役経験者もいる。同大隊はすでにキーウの防衛に参加している。ロシア軍は5週間にわたる激しい戦闘でも首都を制圧できなかった」

     

    ベラルーシ人による、「独立したウクライナがなければ、独立したベラルーシもない」という言葉に重みがある。自由と独立を賭けた戦いという意味であろう。

     


    (4)「2020年のベラルーシ大統領選でルカシェンコ氏の対抗馬だった野党指導者、スベトラーナ・チハノフスカヤ氏(現在はリトアニアに亡命中)の元アドバイザー、フラナク・ビアコルカ氏ビアコルカ氏は、「ベラルーシの存在そのものが脅かされている。プーチンはウクライナの独立国家は存在すべきでないと話しており、ベラルーシに対しても同じ考えだ」と述べる。ルカシェンコ体制が崩壊したら、ウクライナ軍とともに戦っているベラルーシ人たちが、新しいベラルーシの軍を構築すると同氏は述べた」

     

    ベラルーシのルカシェンコ体制が崩壊したら、ウクライナ軍で戦っている人たちによって、新しいベラルーシがつくられるだろうと期待がかかっている。

     


    (5)「ベラルーシの反政府派はかねて、ウクライナのロシアへの抵抗に刺激を受けてきた。ロシア人が、同胞を敵に回して戦うというのは比較的新しい動きだ。「ロシアに自由を」部隊の軍服には白・青・白の記章がついている。これは一部の反プーチン派がロシアの新たな国旗として好む色だ。キーウで5日開かれた記者会見では、黒い目出し帽をかぶった3人の男性が(ウクライナ)部隊に加わった経緯を説明した。3人ともロシア軍人としてウクライナに派遣されたが、捕虜となって思い直したという。このうちロシア特殊部隊の軍曹だったという男性は「だまされてこの戦争に送られたことが分かった」と話した。「この部隊はプーチン体制と戦うために創設された」と発言」

     

    ロシア人が、母国を敵に回して戦うのは新しい動きだ。反プーチン派が好む「白・青・白」の記章を付けて、元ロシア兵が記者会見に臨んだ。プーチン体制と戦うために創設されたという。

     

    (6)「ロシアの元議員、イリヤ・ポノマリョフ氏は、ウクライナ軍に加わるロシア兵について、第2次世界大戦で連合軍に加わった反ナチス派ドイツ人に近いと話す。その上で、ノルウェーでドイツ人の同胞と戦い、ナチス敗北後はドイツ連邦共和国(旧西ドイツ)の連邦首相に就任したビリー・ブラント氏にこうしたロシア兵をなぞらえた。ポノマリョフ氏は2014年のクリミア半島併合について、ロシア議会で唯一反対票を投じた人物で、現在はキーウ在住だ。ロシアの美術品収集家で、かつてプーチン氏に助言し、主要国営テレビの幹部も務めていたマラト・ゲルマン氏は、ウクライナ軍として戦うロシア人義勇兵は大きな戦力にはならないかもしれないが、彼らの政治的な重要性は無視できないと指摘する」

     

    西ドイツ(当時)首相になったブラント氏は、ノルウェーで反ナチス派としてドイツ人の同胞と戦った経験がある。このブラント氏のように、ウクライナ軍として戦うロシア人義勇兵の存在が、政治的な意味を持つと指摘している。

     


    (7)「ゲルマン氏は、「戦争が終われば、少なくとも双方の対話が可能になるという希望を彼らは象徴している」と語る。「ロシア市民がこの侵略者を撃退するためにウクライナ人を助けていたことが分かれば、将来ロシアとウクライナの対話を促すだろう。そうなれば、彼らは橋渡し役になれる」と言う」

     

    ウクライナ戦争終了後に、戦いあったウクライナとロシアがいずれは、普通に対話する時期がくる。そのとき、ロシア人義勇兵にその仲立ちを期待するというのだ。

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    ウクライナは、ロシア軍の猛攻を受けながら国民が携帯で連絡を取り合える状況にある。これは、2014年にロシアによるクリミア半島侵攻以来、通信インフラの維持に取り組んできた成果だ。国民は、ロシア軍の動きを逐一、ウクライナ軍へ連絡しており、効率的な防衛にも役立っている。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月25日付)は、「ウクライナが守り抜く携帯接続 善戦の立役者に」と題する記事を掲載した

     

    ウクライナ通信最大手キーイウスターは、南東部マリウポリがロシアの激しい砲撃にさらされる中、市内に残った最後の通信塔が遮断されないよう、作業員がさらに数日にわたり修復に当たると明らかにした。同社のウォロディミル・ラチェンコ最高技術責任者(CTO)は、「当地に残っている市民が家族と連絡を取り合えるよう、わが社のチームは定期的にこの基地局の修復に当たっている」と話す。同社のサービスは3月初旬に通信塔が完全に破壊されるまで、補助発電機によって何日も維持されていた。

     

    (1)「ロシアが侵攻を開始して1カ月が経過する中で、ウクライナの通信サービスは戦時下の厳しい状況にもかなり耐えており、とりわけ携帯電話の接続状況ではその傾向が顕著だ。公表データや通信会社幹部・業界アナリストへの取材で分かった。ブロードバンド接続や無線信号はロシアの攻撃にもかかわらず維持されており、通信が遮断されたのは激しい爆撃にさらされている地域に集中している。危険を返りにみない修復作業や民間部門の協力、一段と信頼性の高い技術といった要素が、通信サービスの維持を支えていると専門家は話している」

     

    「決死の覚悟」という言葉がある。ウクライナは、民間企業がこの気持ちで戦時下の通信サービス維持に努めている。

     


    (2)「政府関係者は、ネット接続が着実に確保されていることが国防にも寄与していると話す。市民がロシア兵の位置情報をウクライナ軍に提供する、集合住宅や病院など民間人が攻撃の標的となっている実態を画像や映像で拡散するといったことが可能なのは、無線サービスが維持されているからこそだ。ウクライナ国家特殊通信・情報保護局の副責任者、ビクトル・ゾラ氏は23日、ネット経由で行われた会見で「これはおそらく、ウクライナの抵抗が成功している理由の一つだ」と述べた」

     

    ウクライナ軍が、ロシア軍へ抵抗できる裏には国民からの「敵情報」が適確に寄せられていることも寄与している。

     

    (3)「通信事業者団体の調査部門GSMAインテリジェンスによると、ウクライナの携帯接続件数は、開戦前およそ3800万件だった。ウクライナからの可視ネットデータ量は侵攻前の水準を約2割下回っている。通信監視サービスのケンティック(米サンフランシスコ)が分析した。前線の都市部が集中的な砲撃を受け、避難民によってもぬけの殻となった地区があることを踏まえると、これは相対的に高水準だという。これまで300万人以上のウクライナ市民が国外に退避した」

     

    戦時下で、可視ネットデータ量が侵攻前の水準を約2割下回っている程度という。これは、相当の通信インフラが維持されている証拠であろう。

     

    (4)「ウクライナの通信業界は東部で何年も戦闘が続いていたことで、全面的な侵攻が発生した場合の備えを着実に進めてきた。ウクライナにサービスを提供する通信会社の現・旧社員が明らかにした。すべての無線通信業者は、顧客が各社のネットワーク網を相互に利用できるようにし始めており、通信サービスの信頼性が高まった。また通信各社は、他の都市で身動きがとれなくなった市民も利用できるよう、サービスの対象区域を拡大している。キーイウスターは先週、200カ所余りの防空壕にWi-Fiサービスを設置した。ライバルのライフセルは、侵攻が始まる約2カ月前に東部にある設備の一部を移動して、西部の無線通信サービスを強化した。ウクライナ西部には目下、数百万人の市民が戦火を逃れるため押し寄せている」

     

    先週、200カ所以上で防空壕にWi-Fiサービスを設置したという。敵弾の飛び交う中での設置作業であったに違いない。これによって、国民は通信が可能になり,互いに鼓舞できるのであろう。過去の戦時体験ではない新たな展開である。

     


    (5)「インターネット接続業者は政府の監視の下で、他の防衛策を強化した。例えば、ウクライナの通信会社は2月に侵攻が始まってわずか1日で、ベラルーシやロシアで登録された電話番号についてはすべてサービスを停止した。サイバーセキュリティー会社アダプティブモバイル・セキュリティー(アイルランド)の技術責任者、カサル・マクダビッド氏はこれについて、障害を起こしかねない悪意のある通信コマンドを送りつけるのを難しくするためだと説明する。マクダビッド氏は「考え自体はシンプルだが、実行するには時間がかかる」と述べる。ウクライナの通信大手3社が同時に変更を加えたことは各社の連携があってこそで、「かつできる限り早期の実行が必要な優先課題だと受け止められていた」という」

     

    敵の攪乱を恐れて、開戦後すぐにロシアやベラルーシで登録された電話を切断したという。これも見事な早業である。

     


    (6)「通信業界の幹部からは、過去数年にわたりロシア軍のプレゼンスが高まっていたことで、その間に補助の光ファイバー線を追加し、危機管理計画を策定する時間が確保できたとの声も上がる。ロシアによる2014年のクリミア半島併合や東部の親ロ派武装勢力への支援、18年に起きたウクライナ艦船の拿捕(だほ)など、そのいずれも計画の策定に影響を与えたという。ライフセルのデジタル技術マネジャー、ユリイ・ザドヤ氏は「2014年の教訓から学んだ」と話す。「われわれの頭の中で、過去8年のすべての新たな動向はこうした『シナリオ』と共に策定された」

     

    これまでのロシアによるウクライナへの軍事圧迫の経験が生かされている。14年以来、ウクライナは「臨戦態勢」にあったことを示している。

     


    (7)「同社は冬場に、一部の設備を西部に移動した。サービスへの影響を避け、市民がパニックを起こさないよう、夜間のメンテナンス期間を利用して行ったという。ザドヤ氏によると、ライフセルが持つ基地局8500カ所のうち、約1割が侵攻以来、接続を断たれた。他の組織もウクライナに後援サービスを提供している。紛争地に通信サービスを提供する非政府組織「国境なき通信団」は、ウクライナで最も被害が大きい地域に衛星携帯電話を送ったと明らかにした。宇宙開発ベンチャー、スペースXも、衛星ネットサービス「スターリンク」の送受信機をウクライナに提供。ウクライナ当局者が使用に向けて準備を進めていると話している」

     

    すでに、ロシア侵攻に備えてサーバーなどの設備を安全地帯へ移動させていた。危機管理能力が優れている結果だ。海外からも衛星ネットサービスの提供が始まる。ウクライナの通信インフラは維持できそうだ。これが、ウクライナ国民の士気を維持するであろう。

     

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    ロシア軍は、ウクライナの主要都市で攻めあぐねている。ウクライナ軍の防空体制が強化されているためだ。旧ソ連軍が残した防空システムと西側諸国から供与された武器の一体化運用で効果を上げている結果である。

     

    ウクライナ軍は、旧ソ連時代の中央管理型の指揮系統を捨て、北大西洋条約機構(NATO)型に近づいたことも要因と指摘されている。これにより、下位の小部隊に攻撃権限が与えられ機動的な戦術が可能になった。ロシア軍は、いまだに中央管理型指揮体系を取っているので、将官クラスが最前線に立って戦死する事態を招いている。ウクライナ戦争で、すでに4人の将官が戦死している。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月23日付)は、「
    ウクライナ防空網、対ロシアの意外な切り札」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア軍は2月、戦闘機や爆撃機、誘導ミサイルなど最新鋭兵器を投入してウクライナへの侵攻を開始した。だが、ここ3週間余りの戦闘で大きな打撃を受けており、ロシア軍が完全に制空権を握ることができるのか疑問が生じている。

     

    (1)「ウクライナ軍は1980年代の旧ソ連製地対空ミサイルに加え、米国など西側から提供された肩撃ち式ミサイルなど最新兵器を組み合わせ、ロシア軍の戦闘機やヘリに甚大な被害を与えている。米国や同盟国はウクライナへの防空システム補充を急いでいる。ウクライナ軍当局者によると、こうした取り組みが奏功し、少なくとも一時的にはロシア空軍の作戦が止まった。ロシア軍幹部はこのところ、巡航ミサイルや弾道ミサイルで標的を狙っていると強調している」

     


    ロシア軍は、ウクライナ上空からの攻撃ができなくなっている。ウクライナ軍に反撃されて撃墜される危険性が高まっているためだ。そこで、遠距離からミサイル攻撃をするようになっている。ロシア軍の劣勢を示す現象であろう。

     

    (2)「西側諸国が供与した短距離の最新型対空システムはウクライナの防衛力強化で重要な役割を果たしている。西側からの武器提供により、ウクライナは防衛力を高めることができたが、軍事・民間施設へのロシア空爆による深刻な被害は防げていない。ロシア軍はここ数日、東部への攻撃を強化しているほか、ポーランドとの国境に近いウクライナ西部にも空爆を加えている」

     

    ウクライナは、防空体制の整っていない地方都市で、ロシア軍の猛攻を受けて被害を広げている。

     


    (3)「ロシア軍がウクライナ上空で制空権を確立できないのは、開戦後数日間の手痛い過ちに関係している、と軍事専門家は指摘している。ロシアはウクライナ軍施設に弾道ミサイルや巡航ミサイルを発射し、空港の滑走路や早期警戒レーダーシステムを破壊した。しかし、ウクライナ軍が保有する地対空ミサイルの多くは残った。ウクライナ陸軍予備軍大佐で軍事専門家のオレグ・ジダノフ氏は「ロシア軍は最初の48時間にわれわれの防空システムを消滅させなかった」と話す。「これはロシア軍にとって致命的な過ちだ。今ではわれわれの防空システムに接近することはほぼ不可能になった」と指摘」

     

    下線のように、ロシア軍は開戦48時間でウクライナ防空システムを壊滅できなかった。これが、致命傷になっている。ウクライナの主要都市は、防空システムが健在で機能している。

     


    (4)「ロシア空軍機は、ウクライナの長距離対空ミサイルから逃れるため低空飛行を余儀なくされており、携行型兵器の射程に収まる高度で飛行していると指摘されている。そのため、ロシア機は熱線追尾式の短距離ミサイルの格好の標的となり、ウクライナ軍の射撃練習場と化している区域もあるという。ウクライナ東部のドンバス地方でロシアが支援する分離主義派との戦いが始まった8年前以降、ウクライナ政府は一段と強力な敵に対してどう臨むべきか戦略を練ってきた。空軍の広報担当者は「われわれは敵を痛い目に遭わせるため、さまざまな戦術を開発してきた」と述べる」

     

    映像でも分るように、ロシア機が低空飛行している。ウクライナの長距離対空ミサイルを逃れるためだが、皮肉にもこれによって、ウクライナの短距離ミサイルの餌食になっている。プーチンの豪語も形なしである。

     


    (5)「ウクライナの対空装備は、30年前の旧ソ連崩壊で残された兵器で主に構成される。これには1970年代の就役当時は最新鋭だった旧ソ連製の地対空ミサイルシステム「S300」が含まれる。老朽化しているが、40キロ余り離れた標的を撃ち落とせるものもある。ロシア製の地対空ミサイル「ブーク(BUK)」も45キロ離れた標的を撃ち落とすことが可能だとされる。ウクライナは短距離システムの「オサー」「ストレラ」「ツングースカ」も配備しており、いずれも冷戦時代のものだ」

     

    ロシアは、旧ソ連時代にウクライナへ残した防空システムで苦しめられている。開戦前に、こういう事態を想定していなかったとすれば、杜撰な侵略戦争を始めたものである。

     

    (6)「ウクライナ軍がこの種の旧型装備の使い方を心得ているという点には、西側諸国も留意している。ドイツとオランダはスロバキアにパトリオットを送り、同国が保有するワルシャワ条約機構時代の地対空ミサイルシステム「S300」をウクライナに提供するよう促した。米国は極秘に取得していた旧ソ連製の対空ミサイルシステム「SA8」をウクライナに送っている」

     

    旧ソ連地域であったスロバキアは、地対空ミサイルシステム「S300」をウクライナへ提供するように促されている。こうして、旧ソ連時代の兵器体系がロシア軍に立ち向かう事態になっている。

     


    (7)「ウクライナの防空網は1カ月近い戦闘で損害を被っている。南東部の港湾都市マリウポリなど、ウクライナの一部地域は空からの攻撃に対して守りが極めて手薄なままだ。
    一方で、首都キエフを筆頭に、他の都市では万全な防空態勢を整えていると、アナリストやウクライナ当局者は話している」

     

    首都キエフなどの主要都市が、万全な防空態勢を整えているとなれば、ロシア軍は最後に何を仕掛けるか。化学兵器などの最悪手段を用いれば、ロシアはNATO軍の介入という事態を招きかねないであろう。そうなると、ロシアは自滅の危機だ。

     

     

     

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    ロシアが、ウクライナ侵略を始めて、すでに3週間を経過している。ロシア軍は、4人の将軍と8000名の兵士を失ったと報じられた。ロシアは、緒戦で大きく躓いている。現在、ウクライナ領へ侵攻した陸軍は、戦線立直しで動きを止めている。

     

    軍事専門家は、ロシア軍のもたつきが制空権を握れなかったことにあると指摘する。今後も、ウクライナ軍が制空権を守れれば、ロシア軍の消耗によって戦局はウクライナ軍へ有利に展開するという。さて、どうなるかだ。西側諸国は、ウクライナへ一段のテコ入れが必要である。

     

    米『CNN』(3月18日付)は、「ウクライナ、制空権の戦いでいつまで持ちこたえられるか」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻以来最も驚いた点は、ロシアがまだウクライナ領空の制空権を握れていないことだろう。

     


    (1)「データを見る限り、ロシアの軍事力からすれば地上での早期勝利に加え、空軍が素早く制空権を確保するはずだった。飛行機の数ではロシアが1391機に対してウクライナは132機、ヘリコプターではロシアが948機に対してウクライナは55機だ。そうした戦力があってもウクライナ側の抵抗を抑えるのに必要な空域の支配権を握れていない。軍事予算で見れば、ロシアは458億ドル(約5兆4000億円)とウクライナの10倍近い」

     

    ウクライナ軍は、ロシア軍に対してあらゆる点で劣勢である。それをはね返して守り抜いているのは、情報を駆使した機略性にある。

     

    (2)「元空軍将校から政府関係者に至るまで専門家から聞こえてくる意見は、ロシアの失敗が3つの組み合わせによるものだということだ。

    1)ロシア側の準備不足

    2)ウクライナが諜報に基づき賢明な資源の使い方をしていること

    3)西側からウクライナへの狙いを絞った武器の供与

    エストニア軍の元司令官リホ・テラス氏は「私の知る限り、彼ら(ウクライナ軍)はロシアが破壊する前に飛行機を飛行場から移動させて、空軍の大部分を温存できた。これは攻撃前の諜報によるものだ」と語った。

     

    緒戦におけるロシアの失敗は、上記3点の組み合わせによるという。なかでも、「準備不足」とは呆れる。長いこと、ウクライナ国境線で「演習」を積んできたはずだ。ウクライナに威圧を与える「軍事演習ショー」とすれば、高い代価についた。

     

    (3)「英ロンドン大学キングスカレッジのフリーマン航空宇宙研究所の研究員で元英空軍将校のソフィー・アントロバス氏は、戦争の初期段階でウクライナが賢い対応をしたため、同国は今その恩恵にあずかっていると指摘する。同氏は「ウクライナがロシアの航空機を撃ち落とせる全ての資源を投入しなかったことは賢い。これにより、ロシアが安全に関して誤信した可能性があり、ウクライナは味方からの補強が届く中で空域の防御を保ち続けている」と語る」

     

    ウクライナは、緒戦で航空機を出撃させずに温存している。「いざ、決戦」という段階で投入するのだろう。ロシア軍は、これを見誤って自己過信に陥った。ロシアの「戦略負け」である。

     

    (4)「ウクライナ軍の補強では、S300対空システム、スティンガー、ジャベリンミサイルなどが含まれ、ウクライナ軍がこれらを使用している。こうしたミサイルシステムの存在はウクライナ軍の劇的な性能向上を示すものだ。米下院外交委員会の幹部、マイケル・マコール議員はCNNに対し、ロシア製のS300は米国がウクライナに送ったスティンガーミサイルよりも「より高高度の」能力を持っていると指摘する。「S300は、ある種我々のパトリオットミサイルのようなもので、高高度の防空システムだ。これらが国内にあり、さらに多くが運び込まれるという状況は非常に効果的だ」(同氏)」

     

    ロシア製のS300が、ウクライナ軍にとって有力「助っ人」になっている。「敵製武器」で、ロシア軍を追詰めているのだ。

     

    (5)「確かにこうしたミサイルシステムは効果的かもしれないが、ウクライナが空と地上でロシア軍の進軍をいつまで阻止できるかには疑問が残る。ロシア軍がはるかに強大であること、北大西洋条約機構(NATO)が直接の関与や飛行禁止区域の設定を嫌がっていること、そして戦争が長引くほどウクライナが致死性の武器供給で味方への依存度を高めることは依然として事実だ。前述のアントロバス氏は、戦争がどれほど続くかは、プーチン氏がこの勝利にどれほどの戦力を投入するのか、またシリア内戦のアサド政権支援でロシア軍が行った戦術を繰り返すかどうかに一部かかっているとの見方を示す

     

    ウクライナ戦争が、どれだけ長引くか。ひとえにプーチン氏の決断次第である。シリア内戦のような惨劇を厭わないのか、どうかも関わってくる。その場合、ウクライナの戦車攻撃能力の高さを計算に入れなければならない。

     


    (6)「アントロバス氏は、プーチン氏がシリアのような極限状態まで行くと決めれば、ロシアのリスクはより高まることになると語る。「ウクライナが保有し、また供給を受けようとしている防空武器があるからだ」という。
    また同氏は、ロシアが中長期の検討をしなければならない状況にあるとの認識も示す。装備や人員の面で、他の利益の代償にどれほど多くを失う意思があるのかという点についてだ。ロシアはウクライナ国内の標的に対するミサイル攻撃を行う多くの場面で、ウクライナ国外から爆撃機を発進させなければならない状況にある

     

    ロシア軍は現状で、市街地戦を回避している。ウクライナの戦車攻撃能力の高さを考えれば、むざむざ「墓場」へ突入するような危険性を伴うからだ。ウクライナを広く面で支配しない限り、ロシアは制空権を握ったとは言えない。航空機が、地上から攻撃されて撃墜されるからだ。

     


    (7)「ウ
    クライナがどれほど確実に領空を防衛できるかは、西側同盟国にどこまでその意思があるかにかかっている。プーチン氏が、犠牲の多い戦争をどれほど長い間正当化できるかは、ウクライナが確実に領空を守れる期間の長さで決まってくる。ウクライナ軍はロシア軍の猛攻撃に反抗し、際立った成果をあげてきた。だが戦闘が長引くにつれて、国を守る者の運命は他国の手と忍耐力に委ねられることになる」

     

    ウクライナ戦争の行方は、ウクライナが確実に制空権を守れる期間の長さで決まるという。西側諸国は、ロシアに制空権を渡さない工夫と努力が不可欠である。西側諸国の責任になってきたのだ。

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