勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    ウクライナの次なる戦闘にとって、戦車こそが最適の兵器となるだろうと予測されている。ウクライナ軍は、ドイツの主力戦車「レオパルト2」の供与を受けられることになった。ウクライナのオメルチェンコ駐仏大使は、ウクライナに供与される戦車が計321両になると明かした。最短距離で4月以降には最前線に配備される見通しである。これを受けて、ロシア軍も戦車で対抗するものと見られる。 

    ロシア製戦車はこれまでの戦闘で、「ビックリ箱」と揶揄されるように、砲撃に弱いことが知られている。砲塔と弾薬が近くに配置されているから、すぐに誘発をおこして爆発するのだ。西側諸国の戦車は、砲身と弾薬が別々に配置されているので、「ビックリ箱」という事態を免れている。ロシア軍は、こうした弱点を抱える戦車隊がどのように戦うのか、ヤマ場を迎える。 

    米『CNN』(1月28日付)は、「ウクライナ情勢、今後の戦闘で戦車が決め手となる理由」と題する寄稿を掲載した。筆者のデービッド・A・アンデルマン氏は、CNNへの寄稿者で、優れたジャーナリストを表彰する「デッドライン・クラブ・アワード」を2度受賞している。 

    ウクライナで戦争に突入した1年前、一般的な通念では戦車はもはや時代遅れということになっていた。ドローン(無人機)や自動追尾機能のあるミサイルには太刀打ちできないというのがその理由だ。この考えは明らかに間違っている。かなり明確になりつつあることだが、ウクライナのような戦場において、装甲車両による優越性は形勢を逆転させ得る。それも劇的に。 

    (1)「ロシアの戦車は、(昨年ウクライナで)冬から春にかけて雪解けのために起きる土壌のぬかるみにはまった。中には砲塔まで泥に沈んだ戦車もあった。そうした戦車は戦うこともできず、ウクライナ軍に狙い撃ちにされた。侵攻の過程でロシア軍が失った戦車の数は1400両を超える。あれから1年近くが経過した現在、ロシア軍は教訓を得たと思われる。「彼らにとって、冬の後半や春の初めに攻撃を開始するのは得策ではないだろう」「春の終わりまで待つはずだ。その時期なら土壌の水気は格段に抜けている」と、アンドリー・ザゴロドニュク元ウクライナ国防相は指摘する」 

    ロシアは、昨年の開戦直後の失敗に懲りている。本格的攻撃開始は、雪解けが終わって大地が乾くまで仕掛けないと見られる。 

    (2)「西側は現状を好機ととらえ、自国の最新鋭の主力戦車を実際の戦争という状況下でテストしたい考えだ。対するロシア側は、長い間そうしたシナリオへの準備を全く整えていなかった。ソ連の戦車操縦手には大型のハンマーが支給される。頻発するギアの不具合が起きた際には、それでトランスミッションを叩いて対処するのだという。また戦車内には冷暖房がないため、搭乗員は冬の寒さに凍え、夏は暑さに息が詰まる状態を余儀なくされる。とりわけ砲塔を閉じる時にはそうだった」 

    ロシア側は、西側諸国の戦車と戦う想定がなく、旧式の戦車を稼働させている。戦車内は劣悪な「戦闘空間」である。戦車内には冷暖房設備がないのだ。 

    (3)「ウクライナでのロシア軍戦車が、(ソ連時代同様に)脆弱であることに変わりはなかった。中でも「ビックリ箱」に例えられる設計上の欠陥は深刻だ。ロシア軍の戦車のほとんどは、大砲の弾薬を操縦手や砲手のすぐ隣に搭載している。その数最大40発。戦車は前部こそ頑丈な装甲で覆われているが、側面や砲塔はそれほどでもない」 

    ロシア戦車は、「ビックリ箱」と称せられるように、敵の攻撃で簡単に爆発する構造になっている。砲塔が爆発で飛び出すほどである。むろん、塔乗員は犠牲になる。 

    (4)「米国製の「ジャベリン」や、英国とスウェーデンが合同開発した「NLAW」といった対戦車ミサイルが、ロシア戦車のエンジンを直撃すると、最も装甲の薄い部分に影響が及ぶ。このため、搭載する弾薬全てが爆発し搭乗員は焼け死ぬことになる。これに対し、米国のM1エイブラムスやドイツのレオパルト2など西側の戦車は、搭乗員を弾薬から厳重に隔離。双方の間には爆発にも耐えられる壁が設置されている」 

    ドイツのレオパルト2など西側の戦車は、搭乗員が弾薬から厳重に隔離されているので「ビックリ箱」にはならない。 

    (5)「ロシア軍の保有する新型戦車「T14アルマータ」は、あらゆる点でM1エイブラムスとレオパルト2に匹敵するが、わずかな数しか製造していないという問題がある。昨年のメーデーに赤の広場で行われたパレードには、3両しか登場しなかった。最近の情報報告によると、同戦車の開発と配備は、コストの上昇など複雑な問題が絡んで停止しているとみられる」 

    ロシアにも欧米並みの新鋭戦車はあるが、たったの3両しか登場していない。コスト高が鬼門になっている。 
    (6)「ウクライナでの戦争が戦車戦に変わるとしても、またそれがエイブラムス、レオパルト対最新のロシア戦車の戦いだとしても、実際には全く勝負にならない可能性がある。西側の戦車の到着が間に合えばなおさらだ。ウクライナの当局者は、最新の戦車300両があれば自軍の装備を補完しつつ、ロシアに対しても数の上で全く同等の立場に持ち込めるとみている。ザゴロドニュク氏が国防省の推計を引用して筆者に説明した」 

    ウクライナ軍は、西側の最新戦車300両があれば、ロシア軍と対等の戦いができるという。すでに321両の供与が決まったから、この面での不安は消えた。

    (7)「車長や砲手、操縦手、技術兵、整備士を訓練するには最低でも3カ月を要する。それだけ複雑な戦車を相手にするのであり、時間が極めて重要になる。今後4カ月もしないうちに春の雪解けは終わり、地面は乾き始める。間違いを犯す、もしくは躊躇するような余裕はほぼないと言っていい 

    下線のように、ウクライナにとっては今後の4ヶ月が極めて重要な時間になる。それは、ロシアにとっても同じことだ。

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    ロシアは、ウクライナ戦争で装備品の入手難や人員不足、士気の低下に苦しんでいる。以前から可能性が指摘されていたが、指揮官らの対立のようなものも起きているというのだ。ロシア国内の状況は今一つ不透明であるが、戦線膠着と共にロシア内部での矛楯が吹き出ているのであろう。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(1月24日付)は、「ロシアは多くの国家に分裂し、中国の弱い属国になる」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナがロシアに勝利すれば、私たちが知る「ロシア連邦」は崩壊することになるかもしれない──あるエコノミストはこう指摘した。イギリスのシンクタンク「王立国際問題研究所(チャタムハウス)」の客員研究員であるティモシー・アッシュは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とロシア軍がウクライナに敗れるのは避けられないと考えている。ロシアによる軍事侵攻が始まってから11カ月目を迎える今、ロシア政府にのしかかる真の問題は、プーチンのロシアがどうなるのか、そして歴史は繰り返すのか、ということだと彼は言う。

     

    (1)「ウクライナとロシアの問題をめぐる政策について、複数の政府に助言を行ってきたアッシュは、1月21日付のウクライナの英字紙「キーウ・ポスト」に論説を寄稿。その中で、戦争に敗北すればロシアは複数の国家に分裂することになるだろうという考えを示した。これはプーチンが約1年前にウクライナに軍事侵攻を開始した時に目指した「大ロシア」再生とは真逆の結末だ。「プーチン時代の終わりを目の当たりにすることになる可能性は十分にあるし、1991年のソ連崩壊の時のように、ロシア連邦が崩壊して数多くの新国家に分裂する可能性もあると思う」とアッシュは論説の中で述べた」

     

    ロシア連邦共和国が、ウクライナ侵攻を機に分裂するとの見方が世界各国で登場してきた。これは、一つの歴史としての見方であるが、戦争という厳しい現実によって、過去の矛楯によって事態が進展する可能性を指摘したもの。この問題は、中国の台湾侵攻が起これば、中国国内でその反作用が起こり得るという意味で、ロシア国内の動きは注目すべきであろう。

     

    (2)「現在のロシア連邦は89の構成主体──21の共和国、6つの地方、2つの連邦直轄都市(モスクワとサンクトペテルブルグ)、49の州、1つの自治州と10の自治管区──によって構成されている。これを基に考えると、ロシア連邦が崩壊した場合、20の国家が誕生する可能性があるとアッシュは予測する。「プーチンは、ロシアの領土拡大を狙ってこの戦争を始めたが、それによってかえってロシアが縮小することになるかもしれない」と指摘する。1991年のソビエト連邦崩壊で、主権国家としてのソ連はその存在を終えた。それがウクライナに独立をもたらし、そこからロシアとの対立の歴史が始まった」

     

    ロシア連邦は、89もの構成体によって形成されるモザイク模様を描いている。結束を固めるには、中心であるロシア国力が盤石の重みを持つことが条件だ。それが、ぐらついてくると、タガが緩んでバラバラになるリスも高まる。

     

    (3)「ロシア崩壊の可能性を予想する専門家は、アッシュだけではない。米ラトガーズ大学ニューアーク校の政治学教授で、ウクライナとロシアの問題に詳しいアレクサンダー・モティルは、1月7日のフォーリン・ポリシー誌の論説の中で、プーチンが権力の座を去った後には「熾烈な権力闘争」が起き、「中央集権制が崩壊し、ロシア連邦が分裂する」可能性が高いと指摘した。「その場合は誰が権力を握っても政権は弱体化し、ロシアは戦争遂行にかまけてはいられなくなるだろう」とモティルは述べた。「この混乱を生き延びた場合、ロシアは中国の弱い属国と化す可能性が高いし、生き延びられなければ、ユーラシアの地図は大きく変わる可能性がある」

     

    ロシア連邦解体説は、世界の政治外交専門家が異口同音に指摘し始めていることが特色である。プーチン氏という大きな存在が、権力の第一線を去ることがあれば、その空白が大きな渦巻きを起すという論理展開である。下線部は、一つの筋立てとしては考えられるが、ロシア国民のプライドが中国の下になるということを受入れるか疑問である。大ロシア構想を受入れてきた国民が、逆に中国の下位になるのでは承知しないだろう。

     

    (4)「フランスのシンクタンク「モンテーニュ研究所」の地政学専門家であるブルーノ・テルトレも、ウクライナ戦争が「二度目のソ連崩壊」をもたらす可能性が高いと指摘した。テルトレは昨年12月に、「プーチンはロシア世界(ルースキーミール)の統一に失敗しただけではない。今回の戦争によってロシアに最も近い複数の隣国も『脱ロシア』を望むようになった」と書いている。

     

    フランスでは、「二度目のソ連崩壊」という見方がされている。何よりも、ロシア経済の停滞が、このような予測の根拠になっていると見られる。

     

    (5)「米シンクタンク「ジェームズタウン財団」の上級研究員であるヤヌシ・ブガイスキは、西側の政策立案者たちは「差し迫る」ロシア崩壊に向けた備えがまったく出来ていないと警告する。ブガイスキは1月12日発行のポリティコ誌に寄稿した論説の中で、次のように述べた。「西側の当局者たちは、ロシア崩壊の影響に備えたり、ロシア帝国主義の崩壊につけ込んだりする代わりに、冷戦後の過去に戻れると信じたがっているように見える」と指摘する」

     

    西側諸国に、ロシア崩壊という差し迫った見方はない。その意味では、外交・政治の専門家に見方に止まっている。今年中に、その真偽を試す機会がくるであろう。

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    プーチン・ロシア大統領は、昨年12月にG7による価格上限を「愚策」と呼び、「予算について案じる」必要はないとして、ウクライナ侵攻の資金は「無制限」に調達できると豪語した。現実は、そんな甘い状況にはない。プーチン氏は1月11日、「予算にいかなる問題も生じないよう、原油の値引きに対応しなければならない」と政府幹部に指示した。懐状況は苦しいのだ。

     

    だが、戦費調達手段としていくつかの「財布」がある。政府系ファンド、国内銀行からの融資、外貨準備高に組入れている中国人民元の市中売却である。こうなると、「あと数年」持ち堪えられる可能性がある。だが、使い果たした後は「ゼロ状態」になり、再起は著しく困難になろう。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(1月19日付)は、「ロシア原油のさらなる下落、23年の財政を圧迫へ」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア産原油は、2023年はエネルギー価格の下落に加え、主要7カ国(G7)が1バレル60ドルの上限を設けたことで、大幅な値下がりが予想される。ロシア大統領府のエコノミストは頭を痛め、昨年よりはるかに厳しい1年となるだろう。

     

    (1)「ロシアの22年財政赤字は、石油価格の急落と戦費増加により、国内総生産(GDP)比で2.%に膨らみ、プーチン氏ら政府幹部は今後に財政リスクが生じると危惧する。石油・ガス収入はロシア財政の4割を占める。ロシアにとって上限価格の設定による値下げやエネルギー価格の下落は、最大の課題になる。調査会社ケプラーの石油市場専門家、ビクター・カトナ氏は、「『値引き』は制裁がもたらした重大な影響だ。長期間にわたり、ロシア産石油は実際に値引きされるようになった」と指摘する」

     

    石油・ガス収入は、ロシア財政の4割を占めている。これら石油・ガス価格がどう動くかで、大きく響く構造になっている。

     

    (2)「ロシア産原油の輸入国は、原油価格の指標となる北海ブレント原油に比べて、さらなる値引きを迫っている。キーウ経済大学(KSE)は22年、ロシアが値引きによって失った歳入は500億ドル(約6兆5000億円)と当初計画から12%減ったと試算した。ブレントと、ロシア産原油の指標となるウラル原油のスプレッド(価格差)は35〜40ドルと、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始前に比べ10倍に広がった。英調査会社アーガス・メディアによると、ウラル原油は12月5日に1バレル60ドルの上限設定後に下落し、足元ではブレントに比べ48%安い44ドルで取引されている。ロシアの23年予算が想定する1バレル70ドルを大きく下回り、GDP比2%の財政赤字に陥ると推計される」

     

    ウラル原油は、12月5日に1バレル60ドルの上限設定後に下落。足元ではブレントに比べ48%安い44ドルになっている。政府の想定価格は70ドルである。4割弱も下回る価格だ。

     

    (3)「フィンランドのシンクタンクCREAの試算によると、ロシア産原油価格上限制などによりロシアが被る損失は1日1億6000万ユーロ(約220億円)に上る。ロシア政府は、23年予算の全石油・ガス収入は22年比で23%減ると見積もる。一方KSEは、減収幅はその2倍になる可能性があると試算する。財務省のデータによると、ノワク氏が述べたように石油生産量が22年比7〜8%減少し、ウラル原油が平均1バレル50ドルで推移すると、ロシアの23年の石油・ガス収入は当初予算を23%下回る。ウラル価格が平均35ドルなら不足は45%に膨らむ。西側によるロシア産石油製品の禁輸措置が、2月発効すれば、減収幅はさらに大きくなる可能性がある」

     

    西側諸国のロシア産原油価格上限制で、ロシアは大きな損失を被る。23年にウラル原油が、平均1バレル50ドルで石油・ガス収入は当初予算を23%下回る。平均35ドルなら不足は45%に膨らむ。

     

    (4)「23年が予測通りになったとしても、ロシアは損失を補塡し計画通りに戦争資金を捻出できる。主に国内銀行から対内融資を受け、中国人民元を売却するなど総額1480億ドルに上る政府系ファンドの資金を流用できる。ロシア政府は13日、1月見込まれる石油・ガス収入の不足分545億ルーブルを補塡するため人民元売りを始めた。ズベルバンクCIBのアナリストは、ロシア政府は今後数年間、介入するのに十分な人民元を外貨準備に十分に保有しているとの見方を示す」

     

    前述のように、ウラル原油が平均35ドルに値下がりしても、ロシアは歳入不足を補填する手段を持っている。外貨準備に保有している人民元が今後、数年間にわたり市場で売却できる余力があるのだ。また、国内銀行から融資を受けることも可能である。

     

    (5)「元中央銀行職員のアレクサンドラ・プロコペンコ氏はこうみている。歳入が減り、22年のように歳出が当初予算を上回るような場合、ロシアは借金を増やし、プーチン氏は後ろ向きだが、ファンドに手を付けなければならない。あるいはこれまでの難局で実施してきたように経済発展やインフラへの支出を減らさなければならないと。だがプロコペンコ氏は、ロシア政府の政策決定の中心がウクライナ戦争に置かれている限り、軍事支出が影響を被るのは本当に最後だと主張する」

     

    プーチン氏は、ウクライナ侵攻が予算的に行き詰まるまでに、いくつかの資金「引出箱」を持っている。万策尽きる時期は、数年後ということも計算に入れておくべきだろう。

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    ロシアは、ウクライナ侵攻の長期化とともに軍事費が跳ね上がっている。EU(欧州連合)は、すでにロシア産原油価格上限制を設定しており、1バレル=60ドルに枠をはめている。これ以下の価格で取引しなければ、欧州の損保会社が海上保険をつけないので、無保険でのタンカー輸送は不可能になる仕組みが出来上がっている。

     

    こうして現在、ロシア産原油は45ドル見当で取引されている。この価格では、ロシアにとってウクライナ戦費をとても賄えず早晩、増税論が出てくる気配が濃厚になってきた。ロシア国民は、これまで「他国の戦争」程度で見てきたウクライナ侵攻が、増税が現実化することで「自国の戦争」という認識に変わるであろう。

     

    『ロイター』(1月18日付)は、「軍事支出拡大のロシア、油価が想定未満なら増税必至か」と題する記事を掲載した。

     

    軍事支出を拡大しているロシアは財源として石油収入への依存が大き過ぎるので、原油価格が想定水準に達しない場合、増税を迫られるかもしれない――。エコノミストはこうした見方を示している。

     

    (1)「2022年12月上旬に主要7カ国(G7)が主導して西側諸国は、ロシア産原油の輸出価格に1バレル=60ドルの上限を導入した。それ以降、指標ウラル原油価格は20%余り急落している。一方、23年の政府予算はウラル原油が1バレル=70ドル強で推移するとの前提を置いている。足元の価格が50ドル以下に落ち込んでいる点を踏まえると、こうした状況は大きな問題になりかねない。

     

    ロシアは、ウラル原油の平均価格が1バレル60ドル前後で推移し、かつ財政支出が予定通りとしても、23年の財政赤字はGDP比約4.%に膨らむ可能性が指摘されている。しかし、ウラル原油の平均価格はすでに50ドルを割込んでいる。となれば、23年の財政赤字は、対GDP比で6~7%に達することになろう。ロシア財政は、こうして大赤字へ落込む可能性が強まっている。

     

    (2)「アルファ・バンクはノートに「予算の石油依存度が増大し続けているのは懸念される」と記し、天然ガスと石油製品の輸出収入が目減りする展開が迫ってきていると警告した。複数のアナリストの見立てでは、ウクライナにおける戦費などのために政府は22年の支出を25%余り拡大しており、この手当てのためには67ドルだった原油価格が101ドルまで跳ね上がる必要が出てくる。22年にガスプロムからの配当と特別な納税で1兆8500億ルーブルの臨時収入があった点を考慮すれば、今年の財源確保に不可欠な原油価格の水準は最高で115ドルに切り上がる可能性があるという

     

    戦費拡大で膨らむ財政支出を全て原油輸出で補うには、原油価格が100ドル超に跳ね上がる必要がある。既述の通り、ロシア産原油には価格上限制が設けられていることから、100ドル超の価格などあり得ないこと。ロシア財政は、確実に赤字幅拡大へ追込まれる。

     

    (3)「アルファ・バンクのチーフエコノミスト、ナタリア・オルロワ氏は、実際の原油価格と予算を手当てできる価格に大きな差がある局面では、政府借り入れによる持続的な穴埋めは不可能で、支出削減なり新たな増収手段の確保なり、何らかの軌道修正が求められると指摘。プーチン大統領が5期目を目指す大統領選を来年に控え、年内には地方選も行われる以上、支出削減による対応は問題外になるとの見方だ。ルネサンス・キャピタルのエコノミストチームも、22年の予算で軍事支出に多くが振り向けられた結果、中期的な税負担が増大するリスクが高まったとの見方を示した」

     

    ロシアの石油収入の一部を積み立てている政府系ファンド「ナショナル・ウェルス・ファンド(NWF)」の残高が1月1日現在で1484億ドルと1カ月で381億ドル減少した。政府が財政赤字を補てんするために現金を引き出したという。ロシア財務省によると、1月1日時点のNWFの規模は国内総生産(GDP)の7.8%に相当する。流動資産は872億ドル(GDPの4.6%相当)にとどまっている。『ロイター』(1月19日付)が伝えた。

     

    政府系ファンドNWFの流動資産は、1月1日現在で872億ドルだ。財政赤字充当に当てられているが、後2ヶ月程度の流用余地はあるものの、それを過ぎたらゼロになろう。今年4月には、財政赤字充当策が議論される。つまり、増税論が持ち上がる時期だ。

     

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    ウクライナは、IT関連の請負産業が盛んで、ハッカーも多いとされるお国柄だ。この「特技」を生かしたウクライナ軍は、圧倒的な物量作戦のロシア軍に対して、IT活用の「小技」を繰り出して勝利を収めている。米軍特殊部隊も舌を巻く力量とされる。このウクライナ軍のデジタル化戦術を研究して今後の戦術に生かす計画だ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月3日付)は、「ウ軍の善戦支えるデジタル化、西側の手本に」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナはロシアとの戦いで、米国防総省が巨額の資金と数十年の歳月を費やして目指している戦略を、わずかな予算で実現している。兵士と情報・兵器をネットでつなぐ戦力のデジタル化だ。

     

    (1)「ウクライナ軍は通信衛星やソフトウエア経由でドローンや兵士、兵器を結ぶことで、当初の兵力で圧倒的に勝っていたロシア軍を相手に、戦況を有利に運ぶだけの機密や連携、精密さを確保してきた。市販品を中心に構築されたウクライナの雑多なシステムはなお、米軍の巨大かつ極めて野心的なデジタル化の取り組みの足元にも及ばない。米軍が進めるデジタル化は技術の発展とともに拡大し、「ネットワーク中心の戦い」とも呼ばれている。米国防総省が目指すのは、ウクライナの目標をはるかに超えたネットワークの規模、セキュリティーと性能だ

     

    ロシア侵攻以来10ヶ月で、ウクライナ軍は簡便方式でドローン戦術を有効に行なう方式を編み出した。塹壕にこもるロシア兵をめがけて、ドローンから小型爆弾を投下する映像も公開されているなど自信を持っている。

     

    (2)「それでも、米国や同盟国のデジタル化戦略に詳しい関係者は、ウクライナが即席で仮想の指揮管理系統を構築できたことは、とりわけ国防以外の専門家を含めて実験する必要性など、貴重な教訓を西側に提供すると話している。「学ぶべきはイノベーション(技術革新)を起こす必要があるという点だが、われわれはそれができていない」。軍のデジタル化に詳しい英軍の退役中佐、グレン・グラント氏はこう指摘する。西側の軍の「遅々として小回りの利かない」官僚体質では、戦場での問題に対して新たな技術を迅速に投入できないという」

    軍事支援する西側は、ウクライナ軍が即席による仮想の指揮管理系統を構築できたことに驚きを見せている。「必要は発明の母」とされるが、ロシア軍の攻撃の前に、ウクライナ軍が自衛手段で編み出した苦肉のソフトだ。

     

    (3)「これに対し、IT(情報技術)に精通するウクライナの世代は、デジタル時代に見合ったゲリラ戦のスキルを磨いた。反乱軍は常に、竹やりから手りゅう弾まで、身の回りのものを使って簡易兵器を生み出してきた。IT関連の請負産業が盛んで、法の目をかいくぐって暗躍するハッカーが多いウクライナでは、勢力に加わった人にソフトウエアエンジニアが多い。彼らは暗号化技術を使った対話アプリ「シグナル」やイーロン・マスク氏が率いるスペースXといったデジタルサービスを駆使してロシアとの戦いを支えており、携帯アプリや3D(3次元)プリンター、一般向けのドローンが武器になっている

     

    下線部分は、情報最新技術を駆使しての戦い方を示している。米軍特殊部隊が、研究対処にしているのは、この分野かも知れない。

     

    (4)「ウクライナのデジタル変革(DX)相を務めるミハイロ・フェドロフ氏は先頃、ツイッターで「敵は本格的な(テクノロジー)戦争に20年も備えてきた。われわれは10カ月で技術的な飛躍を遂げた」と述べている。ウクライナ軍では、遠隔操作で敵の拠点に手りゅう弾を落下できるよう、市販のドローンを改造。義勇兵は法人向けリソース管理ソフトウエアを構築した民間での経験を前線に応用している。あるウクライナの企業は、重機関銃やその他の貨物を搭載できる遠隔操作の電気自動車(EV)を開発中だ。事情を知る筋によると、米特殊作戦軍関連の「Sofwerx」などを中心にした拠点で、ウクライナの事例を分析する作業が行われる見通しだ」

     

    下線部の「自動装甲車」が完成すれば、前線突破で威力を発揮するだろう。米特殊部隊がウクライナ部隊のIT戦術を研究して、米軍に取り入れるのであろう。

     

    (5)「ウクライナのプログラマーらは、ドローンやロシア占領地のスポッター(観測手)から受け取ったリアルタイムの機密を現地の司令官に送信する「デルタ」と呼ばれるシステムの更新に当たっている。ウクライナ軍の旅団内で新たな軍事技術の開発を担う部隊を率いるロマン・ペリモフ氏は「これはつながる戦争と呼ばれる。実戦での経験があることを踏まえると、ウクライナ軍が最先端を行くことになるだろう」と述べる。同氏のチームは自家製のドローン妨害装置を製造しているほか、前線の兵士を常時ネットに接続させるための安価な高容量電池を量産している」

     

    前線の兵士が常時、ネットに接続して敵の情報などを入手できれば、人命犠牲もそれだけ減らせる。この面で、ウクライナ軍が最先端を行くと、言われるのは当然かも知れない。

     

     

     

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