勝又壽良のワールドビュー

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    ロシア政府は、2月4日のウクライナ侵攻後に占領したウクライナで、若者を出国禁止にして動員令をかけていることが分った。ウクライナ人同士で、戦わせようという残酷な方法を採用するようだ。モラルの一片もない非道な話である。占領地での徴兵は、国際法違反である。

     

    『中央日報』(9月26日付)は、「『ロシア、ウクライナの占領地に動員令』 少数民族の動員多く不満高まる」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアが占領したウクライナ南部ヘルソンなどで、」ウクライナ人男性をロシア軍に動員しようとする状況が捉えられたと『ニューヨーク・タイムズ』が25日に報道した。ヘルソンはロシアのウクライナ侵攻から1カ月後の3月に占領された。

     


    (1)「同紙は、ヘルソン州とザポリージャ州に住む18~35歳のウクライナ人男性の出国を禁止し、軍服務の可否を確認する作業を進めているとウクライナ政府関係者と現地住民の話として報道した。また、ロシアが2014年に併合したクリミア半島でも動員作業が行われている。現地住民らは地域の男性らがロシア軍の徴兵を逃れて地下に隠れ、一部は脱出を試みていると伝えた。ヘルソン州のある住民は同紙に「みんなが恐怖に震えている。ロシア軍は最初に家を捜索し、いまは男性たちを軍隊に引っ張っていこうとする。これはすべて違法だが私たちには現実」と話した」

     

    ロシアは、ウクライナで占領した地域に住む若者を動員する方針を示している。ウクライナ人同士を戦わせようという狙いだ。それだけ、動員が難しくなっていることを示す例だ。徴兵が行き詰まっているのであろう。占領地での住民の徴兵は、国際条約に違反しており、ロシアの強引な兵員補充である。

     


    (2)「ヘルソンなどの占領地でウクライナ人を戦線に送ろうとする作業は、ロシアのプーチン大統領が21日に部分動員令を出してから数十万人の補充兵を募集するための広範囲な計画の一環とみられる。また、ウクライナ人に対する動員の動きはロシアが占領したヘルソン、ザポリージャ、ドネツク、ルハンシクの4州で進行中である併合住民投票と同時に行われている。27日に投票が終わり早ければ30日にもロシアへの併合が宣言されれば動員活動はさらに活発になるものとみられる。住民投票結果は27日に発表される予定だ」

     

    ウクライナ人の動員が、強制的な併合住民投票と同時に行われている。住民投票に賛成したのだから軍務に就けと圧力を掛けるのであろう。こういうロシア政府のやり方は、ロシアの野望をウクライナ人の命で遂行しようというもの。酷いとしか言いようがない。

     


    (3)「ロシア国内で、動員反対世論はますます強まっている。特にカスピ海沿岸にあるダゲスタン共和国などロシア連邦内の共和国で大きく反発している。住民8400人のうち100人の男性に招集通知が送られたのに怒ったダゲスタン共和国エンディレイ村の住民たちはこの日道路をふさぎ警察と対峙したとこの日ロイター通信が報道した。この渦中で警察が空中に空砲弾を撃ったりもした。BBCの集計によるとウクライナ戦争で死亡したダゲスタン出身の軍人は301人で、モスクワ出身者より10倍多い」

     

    ロシア国内でも動員反対の動きが活発になっている。モスクワの南東185キロに位置するリャザン市のバス停では、ウクライナで戦いたくないと叫んだ男性が焼身自殺を図り、救急車で運ばれた。南部のダゲスタン共和国の首都マハチカラでは25日、部分動員令に抗議する人々と警察が衝突し、少なくとも100人が拘束された。『ロイター』(9月26日付)が伝えた。

     


    (4)「クリミア半島内イスラム少数民族タタール人も、「動員が不均衡に行われている」と不満を表出した。ガーディアンはウクライナ人権団体クリミアSOSを引用して「クリミア半島の人口の13%を占めるタタール人のうち90%が動員通知書を受け取ったと推定される」と伝えた。これに対してウクライナのポドリャク大統領顧問は、ツイッターに「本当の民族虐殺であり国全体に対する巨大な悲劇。ロシアが占領地の市民に戦争を強要する行動は服従しない市民をなくそうとする試みにすぎない」と書き込んだ」

     

    ロシアの占領したクリミア半島では、人口の13%を占めるタタール人のうち90%が動員通知書を受け取ったとされる。タタール人撲滅を意図した行為だ。次々に明るみに出されるロシア政府の暴虐行為は、厳しく批判されなければならない。

     

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    ロシアのプーチン大統領は、予備役30万人動員令を決めた。これは、大きな賭けとなろう。プーチン氏は、ウクライナ占領地で住民投票を行い、「占領地」をロシア「領土」にする意図を示した。これによって、ウクライナ軍の奪回作戦を逆に「侵略」と定義して、核爆弾を使う意図も仄めかしている。

     

    問題は、このような手品が思惑通り進むかだ。ウクライナをはじめとして、西側諸国は一斉に反発している。西側諸国は、ウクライナへさらなる大型重砲を供与して、支援する姿勢を明確にした。こうなると、ロシアは、予備役30万人動員だけでは間に合わなくなって、動員数を増やさざるを得なくなろう。それは、プーチン氏の政治基盤に大きな打撃を与えるのだ。今回の決定は、危険な賭に手を付けたと言うほかない。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月22日付)は、「予備役動員はロシア負け戦の証明」と題する社説を掲載した。

     

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ここにきてウクライナ侵略戦争をエスカレートさせる動きに出たことは、ロシアの強さを示すものではない。プーチン氏が21日に発表した予備役動員と、新たに示した核兵器使用の脅しは、ロシア国内の強硬派から成る批判勢力を当分の間なだめる上で役立つかもしれない。しかしそれによって、ウクライナの攻勢を止めることはできない。また、それによって西側諸国によるウクライナ軍への軍事支援加速が妨げられることがあってはならない。

     

    (1)「プーチン氏は「部分的動員」と表現された対応策を発表した。これによって最大30万人の予備役が動員される可能性があり、この数字は非常に大きいもののように聞こえる。しかしこの動員は、ロシア政府によるウクライナ侵攻作戦が失敗しつつあることや、現在の兵力が消耗し、不十分になっていると認めたことも意味する。予備役は、すぐに前線へ送り出せるような、戦闘経験豊富な部隊ではない。彼らの多くは、かつて徴兵された人々だが、職業軍人の経験を持っておらず、今後訓練が必要になる」

     

    これまで、ロシア軍のウクライナ侵攻正規軍は約18万名だ。そのうち、8万人程度がすでに死傷していると推計されている。30万人の予備役が加わっても、武器や戦い方が同じである以上、多くの死傷兵を出すのは確実である。気の毒である。

     


    (2)「プーチン氏はまた、開戦当初に示していた核兵器を使用するとの脅しを改めて行った。ロシア政府は、ロシア軍がウクライナで占領している4つの地域(ドネツク、ルガンスク、ヘルソンとザポロジエ)で、ロシア連邦に加わるべきかを問う住民投票を急いで行う準備を進め、この脅しを補強しようとしている。ロシアは2014年に同様の住民投票を行ってクリミアを編入した。プーチン氏はこうした不正に操られた投票を使って、自らのウクライナでの領地獲得にうわべだけの正当性を持たせようとしている。プーチン氏の脅しが暗に示しているのは、ウクライナがこれらの領地を奪回し続けるなら、ロシアの領地になる場所を守るために同氏が戦術核を使用することが正当化されるということだ」

     

    ロシアの核使用については、米軍が24時間体制で監視している。仮に、核使用に動き出せば、ウクライナ空軍機によって事前に攻撃させることもあり得るだろう。米国が、手をこまねいている筈がない。

     


    (3)「ウクライナが領地奪回を続けた場合、編入はプーチン氏にとってリスクを伴うものとなる。彼はロシアのものだと宣言したばかりの土地を失いつつある理由を説明しなくてはならなくなる。
    プーチン氏は恐らく、核兵器を使う準備を進めており、その脅しは真剣に受け止める必要がある。しかし、そうした措置はNATOによるウクライナへの一層の支援につながるほか、彼が戦争に関して今もなお保持している一部の国際的な支持をすべて失うことが確実だ。インド首相は先週、戦争に関してプーチン氏に公の場で厳しい意見を述べた。ロシアの戦争に対する中国の支持は、徐々に熱意のないものになっている。トルコのエルドアン大統領は今週、ロシアがクリミアを含め、ウクライナの領地から離れる必要があると述べた」

     

    ロシアが核兵器を使用すれば、国際社会から孤立することは確実である。これまで、「親ロ国」とみられていた国々も、立ち去るであろう。ロシアへは莫大な賠償金が科される。第一次世界大戦時のドイツと同じ過酷な負担を背負わされることは間違いない。ロシアは没落である。

     


    (4)「プーチン氏の発表が示すように戦争は終わっていない。現時点でロシアにとっての最良の選択肢は、ウクライナとの交渉による決着を目指すことだろう。しかし、ウクライナ政府は、今が自国領土からロシアを追い出す絶好の機会だということを理解している。停戦は、ウクライナでの占領を強化し、今後新たな攻撃を仕掛ける時間的余裕をロシアに与えることになる。また、ロシアが占領し、その後ウクライナ軍によって解放された地域でロシアが働いた残虐行為を世界が知れば知るほど、早期停戦の可能性はますます遠のくとみられる」

     

    ロシアは、「停戦」という目くらましを使ってくる可能性もある。それに対抗するには、「占領地撤退」という原則論で立ち向かい、妥協してロシアに時間の余裕を与えてはならない、としている。

     


    (5)「ロシアが侵略を断念し、占領しているウクライナの領土を返還すれば、停戦は可能かもしれない。そうした動きがない場合、今は戦車、戦闘機、さらに長距離攻撃が可能な地対地ミサイル「ATACMS」を含むウクライナへの兵器供与を加速させる時期である。侵略が失敗し、損失を食い止める必要があるとプーチン氏を説得する上で、それが最速のルートである。

     

    「ATACMS」は、最大射程が165キロメートルである。現在、ウクライナ軍がロシア軍を苦しめている「ハイマース」(最大射程77キロメートル)の2倍以上の攻撃力を持つ。30万人動員令でかき集めたロシア兵も兵站部を叩かれれば、武器・弾薬・食糧は干し上がるだろう。ロシア軍の犠牲者を増やすだけだ。

     

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    ロシア軍は、精密誘導弾を使い果たしており、現在は昔流の非誘導弾の攻撃でウクライナ側市民の被害を大きくしている。ウクライナ軍が、これを沈黙させるには超長距離の高機動ロケット砲しかない状態であった。こうした期待の兵器である、米提供の高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」が、ウクライナ軍の最前線へ到着し早速、威力を発揮している。これによって、ロシア軍に奪われた国土の奪回が進みそうだ。

     

    韓国紙『WOWKOREA』(7月7日付)は、「ゼレンスキー大統領、米提供のゲームチェンジャー『強力な力を発揮し始めた』」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「米国が提供した高速機動歩兵ロケットシステム(HIMARS)など西側諸国が提供した歩兵戦力が、ロシア軍を相手に強力な効果を発揮し始めた」と強調した。



    (1)「ゼレンスキー大統領は7日(現地時間)SNSにあげた演説動画を通じて「われわれのパートナーたちから提供された武器である大砲が、ついに強力に作動し始めた」と語った。また、「防御に乗り出していたウクライナ軍は、ロシア軍占領者たちの兵站に必須である倉庫などの重要な地点に対し目立った攻撃を加えた」と語った。また、「(西側諸国が提供した歩兵火力の)高い正確性は、これまでわれわれウクライナ軍が切に願っていた、まさにそのものだ」とし「損失が急速に増えているロシア軍は、補給の困難をより強く経験することになり、攻撃力もかなり下がるだろう」と説明した。米国が提供したHIMARSは、現在熾烈な砲撃戦の様相をみせているウクライナ東部のドンバス大戦で「ゲームチェンジャー」になると期待されている」

     

    ゼレンスキー大統領の腹の底からの喜びが、読む側に伝わってくる感じだ。HIMARSは、兵器としてのあらゆる機能を備えている。77キロメートル先の標的を精密誘導弾で攻撃できる「夢の兵器」である。米国から合計8基が提供されるので、ロシア軍の戦意を挫くことは確実である。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月4日付)は、「
    米供与の高機動ロケット砲、ウクライナ反撃支援」と題する記事を掲載した。

     

    米国が供与したハイテクロケット砲システムがウクライナ東部の前線に届き始めた。ウクライナ軍将校によると、新兵器投入で、ロシア軍との激しい砲撃戦のパワーバランスに変化が生じている。6月末に高機動ロケット砲システム「HIMARS」(ハイマース1基が届くと状況が変わった。

     

    (2)「コバル中尉率いる砲兵隊は夜陰に紛れて、トラックに搭載されたハイマースを発射位置に移動させ、座標を入力して発射ボタンを押した。中尉によれば、重さ約90キロのロケット弾6発がロシア軍基地を襲い、大部分を破壊したという。中尉は現在、ハイマース2基を指揮している。中尉によると、ウクライナはハイマースを引き受けてから2週間で10前後の高価値目標を攻撃。ロシア軍基地はその1つだという。ハイマースは2月にロシアが侵攻を開始してから米国がウクライナに提供した最も高度な兵器だ」

     

    ハイマースは、重さ約90キロのロケット弾6発が発射できる機能を持つ。車に搭載されているので、発射後すぐに移動して敵に探知されないように工夫されている。

     


    (3)「運用を担当するウクライナ兵によると、ハイマースのおかげで部隊の射程は2倍になり、ロシア占領地域まで砲弾が届くようになった。精度も上がり、自分たちのリスクは下がったという。ウクライナ当局者はハイマースについて、過酷な消耗戦でロシアを破るための頼みの綱だと話す。22歳のコバル中尉は「ハイマースは非常に強力だ。ハイマースのおかげでわれわれはできるかぎり(ロシア軍の)動きを阻止できる」と話した。「ハイマースはわれわれにとって大きな強みだ。ロシアにはこれに匹敵するものはない」と指摘する」

     

    22歳の若き中尉が、ハイマースの指揮を取っている。未だ、大学4年生の年齢である。この人達がウクライナ軍の最前線で国土防衛に当っているのだ。

     

    (4)「ウクライナには6月にハイマース4基が引き渡され、7月半ばまでにさらに4基が届く見通しだ。米国のバイデン大統領は6月30日、8億ドル(約1081億円)の新たな支援の一環として、ウクライナには他国から追加の火砲が、米国からは追加の砲弾が提供されると述べた。米政府は当初、ハイマースの提供には消極的だった。米国やその他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対するロシアの報復を懸念したためだ。ハイマースで発射されるロケット弾は米国がそれまでウクライナに提供していたM777榴弾砲のおよそ2倍の射程がある」

     

    ハイマースの射程距離は77キロである。米国がこれまでウクライナに提供していたM777榴弾砲の2倍の射程がある。これだけ、ウクライナ軍は敵の前線から遠距離で攻撃できるので被害も減る計算になる。

     

    (5)「ウクライナの運用担当者にとって、ハイマースは兵力、兵器の数で上回る敵と対等な立場に立てるチャンスをもたらした。米国と西側の同盟国はウクライナが保有するソ連時代の火砲の代わりに使えるように、これまで主に155ミリ榴弾砲――射程はロシアのシステムと同程度――を提供していた。ハイマースは最大射程約77キロの精密誘導ロケット6発を発射するシステム。ウクライナはハイマースを使用することで、ロシアの戦闘司令所や弾薬庫、燃料保管庫、後方で兵力が集中する地点を攻撃できる」

     

    米国がこれまで提供してきた155ミリ榴弾砲の射程は、ロシア軍の榴弾砲と同程度であった。それが、ハイマースの登場で射程が77キロになるので、ロシア軍よりも優位な立場になる。

     

    (6)「ハイマースは小型で、操作が簡単なため、敵の偵察から逃れやすい。運用を担当する兵士は装甲が施された乗組員室で操作する。しかもハイマースは素早い発射が可能だ。発射地点に着いたら23分以内にロケット弾の発射を開始することが可能で、発射から20秒で再び移動できる。「ボタンを3つ押せば数秒で発射の準備が整う」とコバル中尉は言う。「ハイマースには数えきれないほどの強みがある」と言う。

     

    ハイマースは、発射後20秒で移動できる。ロシア軍に場所を探知されずに安全に移動可能だ。

     


    (7)「ロシアのドローンに見つからないようにするため運用するのは夜間だ。コバル中尉はハイマースをそれぞれ異なる発射地点に送り、連携攻撃でロシアの陣地にロケット弾24発を撃ち込んだ。ドミトロ・コバレンコ兵卒(18)ら運用担当者は攻撃を指示するため、人工衛星を利用するデジタルシステムに座標を入力し、発射ボタンを押した。
    コバル中尉が記者に見せた動画によると、ロケット弾は一気に暗い空を横切り、数秒後にはハイマースを搭載した車両が安全な場所へと移動を始めた」

     

    ハイマースの運用担当者は、18歳の兵卒である。大学1年生の年齢だ。こうして、18~22歳のウクライナ青年が、国土防衛の最前線に立っている。

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    ロシアのプーチン大統領は焦っている。対独戦勝記念日(5月9日)に、ウクライナ勝利宣言を発するためには、マリウポリを完全占領する必要があるからだ。こうして、多くの人々が犠牲になるのでは、と憂慮されている。

     

    欧州当局者は19日、ウクライナ南東部の港湾都市マリウポリは向こう数日でロシア軍の手に落ちる恐れがあり、多数の民間人の遺体が見つかった首都キーウ(キエフ)郊外のブチャよりも厳しい状況になる恐れがあるとの見方を示した。 当局者は匿名を条件に「マリウポリ市は完全に破壊され、多くの民間人が犠牲になる」とし、「ブチャを超える惨状になると恐れている。『ロイター』(4月20日付)が報じた。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月20日付)は、「マリウポリで根強い抵抗、いらだつロシア」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ東部への全面攻撃に向けてロシア軍が兵力を集結させる中、さらに数千人の兵士が戦略的な要所である南東部の港湾都市マリウポリを包囲しつつある。マリウポリでは、ウクライナ兵が徹底抗戦の構えを崩しておらず、ロシア軍は7週間が経過しても制圧できずにいる。

     

    (1)「マリウポリで抵抗するウクライナ軍がロシアの攻撃を妨害し、降伏要求も拒否している現状は、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が日々訴えている愛国主義的なメッセージとも重なる上、ウクライナ全土で戦っている同国兵士の士気を高めることにもつながっている。なお数千人の民間人が十分な食料や水、電気もないまま退避できず、現地に取り残されているとみられている。ロシアはここ数日、この地域で制空権を確保し、長距離爆撃機で市内を攻撃しているとウクライナは指摘している。ゼレンスキー氏は、ロシアがマリウポリへの攻撃を続け、ウクライナ軍を全滅させれば、和平協議を打ち切る考えを示した」

     


    ゼレンスキー大統領が、日々訴えている愛国主義的なメッセージで、ウクライナ軍がロシアの攻撃を凌いでいる。ゼレンスキー氏は、ロシアがマリウポリでウクライナ軍を全滅させれば、和平協議を打ち切る考えを示している。

     

    (2)「ウクライナ軍は目下、マリウポリのアゾフスターリ製鉄所に立てこもることで抵抗を続けている。軍事専門家によると、ここは地下の核シェルターで電力供給を確保しており、トンネル網が張り巡らされている。この強化された構造により、ウクライナ軍は移動することができ、ロシア軍との戦闘に備えた配置を可能にしている」

     

    製鉄所の地下は、核シェルターになっており、トンネル網ができている。これを利用して、ウクライナ軍は長期戦に備える準備をしてきた。

     


    (3)「マリウポリ中心部の東側にあるこの地下施設は、重量数トン、かつ厚さ数メートルの鉄骨鉄筋コンクリートで覆われている。ロシアの軍事専門家が新たな検閲法への懸念から、匿名を条件に明らかにした。施設内には核戦争に備え、寝床や食料が備蓄されている可能性が高いという。その専門家は、ロシア軍は規模や攻撃力で圧倒的に優位にあるにもかかわらず、ウクライナ兵の排除に手間取るとの見方を示した。西側の専門家も、ロシア軍が侵攻を開始した2月24日以前の段階で、ウクライナ軍には長期戦に耐えられるよう、食料と武器が供給されていたと分析している」

     

    地下施設には、寝床や食料が備蓄されている可能性が高いという。これによって、ウクライナ軍はロシア軍に抵抗可能となっている。

     


    (4)「英空軍のミック・スミース少将は18日、英国防省の諜報分析を要約しながら、「ロシアの司令官はマリウポリ制圧に時間を要していることに懸念を抱くだろう」と述べた。「ウクライナ軍による組織だった抵抗はロシア軍を極限まで試しており、人員や物資を奪い、他地域でのロシアの進軍ペースを鈍らせている」。ウクライナ国防省は17日、ロシア海兵隊の部隊がマリウポリで上陸作戦の準備を進めているとの報道を調査していると明らかにした。米国防総省は18日、その形跡は確認できないとしながらも、上陸はあり得るとの見方を示した。ロシアは現在、マリウポリに近いアゾフ海上に少なくとも戦車揚陸艇1隻を配備しており、さらに離れた黒海にも複数の揚陸艇を展開している」

     

    下線部は、旧日本軍が沖縄戦によって、米軍の本土上陸作戦を遅らせる計画と重なる部分があって胸が痛む。昨日のG7首脳オンライン会議は、ウクライナへ踏込んだ軍事支援を決めた。米国は、戦闘機の供与も決めたようである。西側諸国は、ロシア軍の攻撃拡大を阻止する本格的な動きを見せ始めた。

     


    (5)「ロシア軍の専門家の分析では、同国政府はマリウポリ制圧に向けて1万人の兵士を振り向けている。たとえロシア軍が勝利を宣言できる状況までウクライナ軍を追い詰めたとしても、支配を維持するには一部の兵力を残すことが必要で、根強い抵抗運動に遭う公算が大きいと指摘されている」

     

    ウクライナ軍は、旧日本軍と似た面を持っているようだ。コサック兵の歴史が、こういう勇猛果敢な戦い方をさせるとすれば、改めて歴史の重みを考えさせられる。コサック兵は、ウクライナの騎兵であった。

     

    (6)「ロシアはウクライナ侵攻について、同国を支配する「ナチス」を排除する試みだとして正当化している。ロシアがマリウポリの防衛部隊に対してナチスのレッテルを貼り、かつ現地での戦況が想定通りに進展していないことを踏まえると、ロシア軍は包囲戦術でさらに残忍な手段に打って出ることもあり得る。西側の一部専門家からはこうした指摘も聞かれる。前出のスミース少将は、ロシアが「マリウポリ内の人口密集地を標的にしていることは、1999年のチェチェン紛争や2016年のシリア内戦で使ったアプローチと一致する」と話す。いずれも激しい攻撃で都市を荒廃させ、抵抗勢力を壊滅させたという」

     

    ロシアは、ウクライナを「ナチス」呼ばわりしている。このことは、マリウポリで惨劇を繰り広げる「免罪符」に使う懸念が出てきた。ロシア軍が、チェチェン紛争やシリア内戦で使った無差別攻撃の予兆を感じさせるのだ。

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    ウクライナへは、世界が支援の輪を広げている。その中でも、ウクライナと敵対するロシアやベラルーシから、母国の自由を夢見てウクライナ軍へ入隊する人たちが増えている。特に、隣国ベラルーシ人の数百人がウクライナ軍として戦っているほか、約1000人が審査中か訓練中という。ロシア人やベラルーシ人の隊員は、戦争終結後に和平面でウクライナとの橋渡し役をするのでないかと期待される。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月8日付)は、「ウクライナ軍に入るベラルーシ人、母国の自由を夢見て」と題する記事を掲載した。

     

    パベル・クラザンカさんにとって、母国での自由への道は、ここウクライナでロシア軍を倒すことによって初めて切り開かれる。最近ウクライナ軍に加わったベラルーシ人やロシア人の戦闘員の多くが、同じように考えている。

     


    (1)「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2月24日にウクライナ侵攻を開始して以降、ベラルーシから数百人の戦闘員がウクライナ軍に加わった。ベラルーシ人で構成される大隊に配置される者もあれば、ウクライナ軍の他の部隊に入る者もいる。ベラルーシの反政府派指導者らによると、この他にも1000人以上が審査か訓練を受けている途中だ。ウクライナの法律では、同国軍に入隊した外国人には市民権を取得する資格が与えられる」

     

    ベラルーシは、ロシアと一心同体の動きをしている。ウクライナ侵攻では、大きな手助けをした。こういうベラルーシの動きに反対する人たちは、ウクライナ支援に回っている。ウクライナ軍に入隊したり、その前段階にある人々が千数百人にもいるという。

     


    (2)「ロシア人兵士で構成される「ロシアに自由を」部隊も、前線への配置に向けて準備を進めている。同部隊には今回の侵攻で捕虜となってウクライナ側に寝返ったロシア兵も含まれる。この部隊は、亡命したロシアの野党指導者らが支援している。ウクライナの防衛と残虐行為の阻止に尽力するロシア兵の存在が将来、両国民の和解に大きな役割を果たすと彼らは期待する」

     

    ロシア人兵士も前線への配置に向けて準備中である。ウクライナ軍に捕虜となり寝返った兵士も含まれる。彼らは将来、両国が和解する時期になったときに大きな役割を果たすと期待される。

     


    (3)「冒頭のクラザンカさんは「独立したウクライナがなければ、独立したベラルーシもない」と語る。数週間前にキーウに到着したクラザンカさんは、ベラルーシ人が率いる「カストゥーシュ・カリノウスキ大隊」に所属する。今のところ約200人の部隊で、戦闘経験の全くない活動家やブロガーもいれば、2014~15年にウクライナ東部ドンバス地方で親ロ派武装勢力との戦いに加わった兵役経験者もいる。同大隊はすでにキーウの防衛に参加している。ロシア軍は5週間にわたる激しい戦闘でも首都を制圧できなかった」

     

    ベラルーシ人による、「独立したウクライナがなければ、独立したベラルーシもない」という言葉に重みがある。自由と独立を賭けた戦いという意味であろう。

     


    (4)「2020年のベラルーシ大統領選でルカシェンコ氏の対抗馬だった野党指導者、スベトラーナ・チハノフスカヤ氏(現在はリトアニアに亡命中)の元アドバイザー、フラナク・ビアコルカ氏ビアコルカ氏は、「ベラルーシの存在そのものが脅かされている。プーチンはウクライナの独立国家は存在すべきでないと話しており、ベラルーシに対しても同じ考えだ」と述べる。ルカシェンコ体制が崩壊したら、ウクライナ軍とともに戦っているベラルーシ人たちが、新しいベラルーシの軍を構築すると同氏は述べた」

     

    ベラルーシのルカシェンコ体制が崩壊したら、ウクライナ軍で戦っている人たちによって、新しいベラルーシがつくられるだろうと期待がかかっている。

     


    (5)「ベラルーシの反政府派はかねて、ウクライナのロシアへの抵抗に刺激を受けてきた。ロシア人が、同胞を敵に回して戦うというのは比較的新しい動きだ。「ロシアに自由を」部隊の軍服には白・青・白の記章がついている。これは一部の反プーチン派がロシアの新たな国旗として好む色だ。キーウで5日開かれた記者会見では、黒い目出し帽をかぶった3人の男性が(ウクライナ)部隊に加わった経緯を説明した。3人ともロシア軍人としてウクライナに派遣されたが、捕虜となって思い直したという。このうちロシア特殊部隊の軍曹だったという男性は「だまされてこの戦争に送られたことが分かった」と話した。「この部隊はプーチン体制と戦うために創設された」と発言」

     

    ロシア人が、母国を敵に回して戦うのは新しい動きだ。反プーチン派が好む「白・青・白」の記章を付けて、元ロシア兵が記者会見に臨んだ。プーチン体制と戦うために創設されたという。

     

    (6)「ロシアの元議員、イリヤ・ポノマリョフ氏は、ウクライナ軍に加わるロシア兵について、第2次世界大戦で連合軍に加わった反ナチス派ドイツ人に近いと話す。その上で、ノルウェーでドイツ人の同胞と戦い、ナチス敗北後はドイツ連邦共和国(旧西ドイツ)の連邦首相に就任したビリー・ブラント氏にこうしたロシア兵をなぞらえた。ポノマリョフ氏は2014年のクリミア半島併合について、ロシア議会で唯一反対票を投じた人物で、現在はキーウ在住だ。ロシアの美術品収集家で、かつてプーチン氏に助言し、主要国営テレビの幹部も務めていたマラト・ゲルマン氏は、ウクライナ軍として戦うロシア人義勇兵は大きな戦力にはならないかもしれないが、彼らの政治的な重要性は無視できないと指摘する」

     

    西ドイツ(当時)首相になったブラント氏は、ノルウェーで反ナチス派としてドイツ人の同胞と戦った経験がある。このブラント氏のように、ウクライナ軍として戦うロシア人義勇兵の存在が、政治的な意味を持つと指摘している。

     


    (7)「ゲルマン氏は、「戦争が終われば、少なくとも双方の対話が可能になるという希望を彼らは象徴している」と語る。「ロシア市民がこの侵略者を撃退するためにウクライナ人を助けていたことが分かれば、将来ロシアとウクライナの対話を促すだろう。そうなれば、彼らは橋渡し役になれる」と言う」

     

    ウクライナ戦争終了後に、戦いあったウクライナとロシアがいずれは、普通に対話する時期がくる。そのとき、ロシア人義勇兵にその仲立ちを期待するというのだ。

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