勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ウクライナ経済ニュース時評 > ウクライナ経済ニュース時評

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    「窮鼠猫を噛む」現象が起っている。産油国ロシアは、ウクライナによるドローン攻撃によって、ガソリン供給能力が13%も低下。ついに配給制へ追い込まれた。ロシア国内の鉄道網や空港では、ウクライナのドローン攻撃の影響で頻繁に混乱が生じ、夏の休暇中も自動車での移動を強いられる市民が増加している。収穫期であることも、燃料需要を急増させているのだ。

     

    ウクライナの外相を務めたパブロ・クリムキン氏は、「戦争は前線だけで起きているわけではない。そのため、システム的な打撃は非対称的な重要性を持つ」と指摘。「これらの攻撃は軍事活動に直接的な影響を与えないが、ロシア経済に影響を与える。ロシア経済は、すでに問題を抱えているため小さな圧力でもボトルネックを生み、システム内部の問題を増幅させる可能性がある」とした。ロシアの継戦能力が、ダーメージを受けている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月28日付)は、「ロシアが燃料配給制、ウクライナのドローン攻撃で」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの戦争は石油、ガス、燃料の輸出に支えられている。プーチン大統領は、死傷者が増加しているにもかかわらず、高額の入隊ボーナスで軍への志願者を募集している。

     

    (1)「ウクライナは長距離ドローン産業を発展させ、2023年からロシアの製油所に対する攻撃を開始。バイデン前米政権は当時、世界の原油供給の混乱を懸念し、このような攻撃に反対していた。ウクライナは最近まで、ロシア経済の生命線である石油・ガス輸出インフラへの攻撃をおおむね控えていた。それも今や過去のものとなり、ウクライナのドローンは24日にはバルト海沿岸の戦略的施設であるウスチルガを炎上させた。過去1カ月間でロシア国内10カ所以上の製油所が攻撃を受けており、その一部は国境から数百マイル(数百キロ)離れた場所にある。これはウクライナのドローンがより強力になり、数も増えたことが背景にある」

     

    過去1カ月間で、ロシア国内10カ所以上の製油所が、ウクライナのドローン攻撃を受けて損傷を被っている。これが、ガソリン不足を起こす原因になっている。

     

    (2)「ロシアの主要な国営ガス会社の一つであるガスプロム・ネフチで22年まで幹部を務めていたセルゲイ・バクレンコ氏は、「ウクライナは現在、持続的攻撃を実行できる。昨年もこれを試みたが弾頭は軽く、成功率も低かった。今は攻撃で生じた影響が修復されると新たな攻撃が続く状況にある。もしウクライナがこの圧力を維持し、ロシアが修復できる以上の頻度で製油所に損害を与えることができれば状況は全く異なるものになるだろう」と述べた。ドローン攻撃はウクライナの政治的道具にもなっている。米国防総省は今春以降、米国製の長距離陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)でウクライナがロシアを標的とすることを制限してきた。だが、ウクライナ製兵器にはこのような制限はない」

     

    ウクライナのドローンは、攻撃能力が一段と高まっている。ロシアが、修復できる以上の頻度で製油所は損害を被ると、今後の状況が大きく変ってくる。ドローン攻撃は、ウクライナの政治的道具になっており、プーチン政権を追詰める状況が起りうる事態だ。

     

    (3)「ウクライナ国立戦略研究所(NISS)の研究員で、ウクライナ軍を支援する同国の慈善団体「カムバック・アライブ」のミコラ・ビエリエスコフ氏は、「われわれは攻撃範囲を常に拡大し、戦術も改善している。確かにパートナー国には依存しているものの、独自の能力、独自のカードを開発し、主体性も持っている」と述べた。また、「ロシアはあまりにも大きいため防空システムが十分に行き渡ることはなく、われわれはこれを利用している。過去の戦争と異なり、ロシアはその規模や戦略の深さが実際には不利になっている」とも付け加えた」

     

    ロシアは、国土があまりにも大きいために防空システムが十分に行き渡っていない。ウクライナは、この盲点をついている。戦争の形態が変れば、広い国土は逆に負担になるというパラドックスが起きている。

     

    (4)「ウクライナはドローンに加え、巡航ミサイル「フラミンゴ」を含む独自のミサイルも開発。オスロ大学のミサイル専門家ファビアン・ホフマン氏によると、フラミンゴはより大きな弾頭を持っており、ゲームチェンジャーになる可能性がある。ホフマン氏は「敵の産業・経済的標的を妨害できる長距離攻撃能力が、それらを包括的に破壊できる能力へと移行すれば、ロシアにとってはるかに対処が難しくなる」と説明。「ロシアはこの戦争を続ける限り、ウクライナが本当にロシアに打撃を与えることができるということを考慮に入れなければならなくなる」とした」

     

    ウクライナは、巡航ミサイル「フラミンゴ」を含む独自のミサイルも開発している。完成すれば、ロシアに脅威になるという。ウクライナを「舐めるな」という、強い警告だ。

     

    (5)「ロシア経済は、最近まで比較的堅調な成長を続けてきたが、持続的なインフレや高金利、欧米の制裁も影響を及ぼし始めている。国際通貨基金(IMF)は7月、ロシアの今年のGDP成長率の予想を0.9%に下方修正した。これは2024年の4%超から大幅な低下となる」

     

    ロシア経済は、戦争の負担に耐えかね急減速期に入っている。プーチン氏は、休戦を引き延ばせばウクライナが「白旗」を掲げるとみているが、大きな錯覚になりそうだ。物事には、必ず「潮時」がある。それを逃すと、手痛い打撃を被るのだ。現在が、その時期に来ていることを示している。

    あじさいのたまご
       

    ウクライナ戦争の終結は、これからが難問である。トランプ氏とプーチン氏が行なったアラスカでの首脳会談。18日にホワイトハウスで開かれたトランプ氏やゼレンスキー氏、欧州首脳らとの協議は、プーチン氏がゼレンスキー氏と首脳会談に応じる意思があるかどうか、大きな関心が集まっている。ロシア政府当局者らは19日、会談の実現に向けた動きをほとんど示唆せず、ラブロフ外相は、当局者間の接触に関する計画は「細心の注意を払って」進められるべきだと発言。他のロシア政府高官らは、ゼレンスキー氏がまともな政治家ではないとやゆした。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月20日付)は、「ロシア・ウクライナ首脳会談は期待薄か、現状維持続く可能性」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロシアのプーチン大統領は、3年半にわたってウクライナのゼレンスキー大統領が正統性のない指導者で、操り人形だと批判してきた。米国トランプ大統領の要請に応じるかに注目が集まっている。プーチン氏は、2022年のウクライナ侵攻を正当化するため、国民に対し、この戦争は欧米との広範な対立の一部であり、ゼレンスキー氏とウクライナは単なる駒にすぎないと主張してきた。だが、ゼレンスキー氏と直接会談することになれば、慎重に築き上げてきたその構図と大きく矛盾する」

     

    プーチン氏は、ジレンマに立たされている。これまで、ゼレンスキー氏を操り人形と批判してきたからだ。そのゼレンスキー氏に会えば、プーチン氏はこれまでの発言に傷がつくという理屈だ。無辜の市民が傷つき倒れるよりも、自己保身が先である。

     

    (2)「トランプ氏からの要請は、プーチン氏を窮地に追い込むものだ。要請を拒否すれば、すでに追加制裁をちらつかせているトランプ氏の怒りを買うリスクがある。一方でゼレンスキー氏との会談に応じれば、ロシアのエリート層や国民との関係で政治的な打撃を受けることも考えられる。プーチン氏が速やかに、あるいは容易にゼレンスキー氏との会談に同意するとはみられていない」

     

    トランプ氏という強圧権力者が、プーチン氏を苦しめている。要請に答えなければ、経済制裁が強化される。時間を引き延ばしつつ、最大の利益を得る。こういうプーチン式交渉術は成功するか。

     

    (3)「プーチン氏は、ゼレンスキー氏を欧米の手先だとして繰り返し非難し、両首脳が会談する前には多くの複雑な問題を解決する必要があると主張してきた。またゼレンスキー氏が戦争中の選挙実施に関する問題を理由に通常の5年の任期を超えて大統領職を務めている点に触れ、ゼレンスキー氏の正統性に疑問を投げかけている。さらに、同氏が和平合意に署名する権限にも疑問を呈している」

     

    ロシア経済が現在、急減速に見舞われている。ここへ、制裁が強化されればプーチン氏のメンツは吹飛ぶ。時間の問題であろう。

     

    (4)「プーチン氏はこれまでに、両首脳の会談は和平プロセスの最終段階で行われるべきで、必要な文書に署名する形式的なものにすぎないと発言。6月には「会談する用意はある。ただし延々と物事を分け合うのではなく、最終段階としてこれを終わらせるためであればだ」と述べた。また「正統な当局者の署名が必要になるだろう」と語った」

     

    「正統な当局者の署名が必要」というプーチン発言は、ゼレンスキー氏が侵略戦争で大統領選が行えないという「弱点」を指している。引き延しの口実だ。

     

    (5)「アナリストらはプーチン氏がこの戦争に関し、冷戦終結以来ロシアが抱いてきた不満を再検討する広範な取り組みの一つだと説明。問題は、ゼレンスキー氏にとどまるものではないとした。ロシアがトランプ政権と関与していることは、ウクライナでの領土譲歩をはるかに超え、欧州全体の安全保障体制の構造に関わる合意を確保する取り組みの一部となっている。

     

    プーチン氏は、NATO体制に疑念を持っている。これが、ウクライナを唆しているという理由だ。自らの侵略意図を隠すためであろう。

     

    (6)「カーネギー財団ロシア・ユーラシアセンターの上級研究員、タチアナ・スタノバヤ氏は、「プーチン氏にとって、これは欧米側とのより広範な対立であり、ウクライナはロシアと欧米の戦場になっている」と説明。「プーチン氏からすれば、その中でゼレンスキー氏はプレーヤーではない」とし、「ウクライナが戦い続けているのは、欧米の支援があるからだ」と付け加えた」

     

    プーチン氏は、ウクライナ戦争がロシアと欧米の戦争という位置づけである。となれば、米国は、前面に出てプーチン氏へ圧力をかけなければならない。プーチン氏は、「後講釈」で、侵略戦争を美化しているのだ。

     

    (7)「プーチン氏は、和平に向けたトランプ氏の努力に対し、これまでに微妙な駆け引きを続けてきた。だがゼレンスキー氏との会談に応じれば、これが終わる可能性があるのは最も重要なポイントでもある。プーチン氏は、米政府による追加制裁を避けるために和平への意欲を表明する一方で、ロシア軍は攻勢を強めてウクライナ東部で重要な進展を勝ち取っている。その中でゼレンスキー氏との首脳会談に応じれば、プーチン氏は望まない正念場を迎える可能性もある」

     

    プーチン氏の狙いは、米国の経済制裁を避けるために和平のポーズを取るが、すぐに休戦する気持ちはない。引き延ばして、ウクライナの占領地を増やす魂胆である。ゼレンスキー氏との首脳会談に応じれば、プーチン氏は望まない正念場を迎える可能性がある。

     

     

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    ウクライナのゼレンスキー大統領は18日、ワシントンで予定されているトランプ米大統領との首脳会談に先立ち、トランプ政権のケロッグ特使(ウクライナ・ロシア担当)とワシントンで会談した。ゼレンスキー大統領は会談後、Xへの投稿で、ウクライナは和平実現に向けて建設的に取り組む用意があると再表明し、「ロシアを平和に導くために必要なのは力のみだ。トランプ大統領にはその力がある」と投稿した。『ロイター』が報じた。

     

    ゼレンスキー氏は、ケロッグ特使との打ち合せで手応えを感じた模様だが、果たしてウクライナへ恒久平和がもたらされるのか。西側諸国が、ウクライナの安全保障をいかに制度的に樹立するか。和平へのポイントはここにある。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル」(8月18日付)は、「ウクライナ和平はどのようなものになるか」と題する社説を掲載した。

     

    ドナルド・トランプ米大統領は自身の直感と戦術的な衝動に従って外交政策を遂行しており、ロシアとウクライナに関する15日の突然の方向転換はその典型的な例だ。これが和平への道の始まりなのか、それとも対ロ融和政策への道の始まりなのかは、分からない。トランプ氏自身が分かっているかどうかも定かでない。

     

    (1)「ホワイトハウスから友好的なメディアにリークされた情報は、プーチン氏がドネツク州の獲得と引き換えに、攻撃を停止し他国へ侵攻しないことを約束したと示唆している。プーチン氏の約束は、価値がないどころではなく、有害だ。同氏はウクライナおよび西側諸国との約束を次々に破ってきた。具体的には、外部からの攻撃からウクライナを守ると約束した1994年のブダペスト覚書や、ミンスク合意だ。プーチン氏がドネツク州を求めているのは、これまで戦場で征服できなかったものが交渉の場で手に入るからだ。また、ドネツク州を獲得しておけば、プーチン氏やその後継者が再攻撃に適切なタイミングだと判断した際に、より多くの領土を奪いやすくなる」

     

    プーチン氏の約束は過去、ことごとく破られてきた。単純に信ずることは、ウクライナの破滅へ導く危険がある。

     

    (2)「欧州の首脳らによれば、トランプ氏は彼らに対し、プーチン氏がウクライナの「安全の保証」の受け入れに同意したと伝えた。この点は希望の光だ。ここから示唆されるのは、たとえ北大西洋条約機構(NATO)が保証人にならなくても、米国が共同保証人になる可能性があるということだ。だが、トランプ氏は一切の詳細を明らかにしていない。この保証が真の抑止力を持つためには、ウクライナに外国部隊を駐留させる必要があるだろう。ウクライナ政府は自国の軍事・兵器産業を強化する能力を必要とするだろう。米国は地上軍支援のため、情報や空軍力を提供する必要があるだろう。トランプ氏もプーチン氏も、このいずれかに同意するかは不明であり、米国が大きな役割を果たさなければ、欧州首脳は部隊派遣に前向きにならない可能性がある」

     

    ロシアによる再度の侵略を防ぐには、米国が共同保証人になることだ。米国が大きな役割を果たさなければ、ウクライナに恒久平和は訪れない。

     

    (3)「トランプ氏が、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を招いて、18日にホワイトハウスで会談する予定である。そして、欧州首脳がそれに加わる予定であることは明るい兆しだ。彼らは、誰が戦争を始めたかやそれを終わらせるために必要とされる安全の保証について、プーチン氏がついているうそに反論できる可能性がある。しかし、トランプ氏の今後の言動は誰にも分からないのが現実だ」

     

    18日(現地時間)、ホワイトハウスでゼレンスキー大統領や欧州首脳が、トランプ氏と会談することは有益な機会である。プーチン氏の嘘が明らかになるからだ。

     

    (4)「欧州諸国とウクライナにとって有利な点がないわけではない。トランプ氏がウクライナを見捨てたり、プーチン氏が求める条件でのディール(取引)をウクライナに押し付けたりした場合には、トランプ氏は極めて大きな政治的代償を払うことになる。トランプ氏は、好むと好まざるとにかかわらず、今後起きる事態はトランプ氏の政権下での出来事になる。ウクライナが敗北すれば、同氏の大統領任期の残りの期間を通じてずっと、米国内および世界中でその影響が反響し続けることになる」

     

    今後、ウクライナで起る事態は、すべてトランプ政権下での出来事になる。トランプ外交の真価が問われるのだ。成功すれば、トランプ氏念願のノーベル平和賞候補者の一人に慣れるであろう。

    ムシトリナデシコ
       

    米国トランプ政権は、ウクライナのインフラ復旧投資に関し,米国が管理権を要求していることが分った。ウクライナは「まな板の鯉」である。ウクライナは、米国の要求をすべて受入れない限り、念願の停戦状態にならないことから受入れざるを得ない状況である。膨大なウクライナの復旧では、EU(欧州連合)や日本などの介入を排除して、先ず米国企業が選択権を持つ形になりそうだ。

    『ブルームバーグ』(3月28日付)は、「米国、ウクライナに投資計画全ての管理権要求-欧州など他国排除」と題する記事を掲載した。

    米国はウクライナで将来行われる主要インフラ投資全ての管理権を要求している。欧州など他のウクライナ支援国は排除され、ウクライナの欧州連合(EU)加盟をくじくことにもなりかねない。


    (1)「ブルームバーグニュースが入手した草案文書によると、トランプ政権が要求しているのはインフラと天然資源に関連する全ての投資プロジェクトの「優先交渉権」で、ウクライナとの改定版パートナーシップ協定で規定される。ウクライナが受け入れる場合、道路や鉄道、港湾、鉱山、石油・ガス、重要鉱物の採掘などあらゆるプロジェクトで、米国が極めて大きな権限を握る。国土の広さで欧州最大を誇り、EUとの協調を強めようとしているウクライナに、米国の経済的な影響力が前例のない形で拡大することになる」

    米国は、ウクライナの道路や鉄道、港湾、鉱山、石油・ガス、重要鉱物の採掘などあらゆるプロジェクトで極めて大きな権限を握る。ウクライナの「属国化」である。トランプ氏は、米国民に「戦果」を誇るのだろう。

    (2)「ウクライナの特別復興投資基金は、米政府が管理し同基金に移管される利益について米国は優先的に請求できる。草案文書によると、米国は2022年のロシアによる全面侵攻以降にウクライナに提供された「物質的・金銭的便益」を同基金への拠出金と位置づけた。これは実質的に、戦争開始以降の米国の軍事・経済支援を払い切るまで、ウクライナは基金の利益を全く受け取れないことを意味する」

    米国は、ウクライナへ支援した全資金を回収する意思だ。だが、2026年に中間選挙を控える状況で、この「強欲作戦」は裏目に出る可能性が高い。非営利調査団体モア・イン・コモンが、3月9日に公表した世論調査結果によれば、米国人の67%、共和党員の65%が、米国は戦争終結までウクライナへの支援供与を続けるべきだと答えている。超大国の米国が、戦争被害国から支援資金を取り立てることに否定的である。


    (3)「米国とウクライナは2月に天然資源協定に調印する計画だったが、ホワイトハウスで会談した両国の首脳が激しい口論となり決裂。この後で米政府は協定内容を改定し、ウクライナ側に草案を先週末提示していた。ホワイトハウスは先週、ウクライナの重要鉱物を対象とした前回の合意よりも、もっと踏み込むと説明していた。両国の協議は継続中で、最終的な草案では条件が変更される可能性もある。事情に詳しい関係者がブルームバーグニュースに述べたところによると、ウクライナは今週、米国に対し修正案を提示する可能性が高い」

    ウクライナは、恐る恐る米国へ修正案を出すのだろう。トランプ氏のご機嫌を損ねれば、すべての努力が水泡に帰す。

    (4)「パリで開かれた欧州首脳との会議に出席したウクライナのゼレンスキー大統領は27日、米国が提示した合意案は「詳細な検討」が必要で、交渉過程で条件は常に変化していると記者団に説明。合意に至ったと断言するのは時期尚早だとしつつ、「われわれは米国との協力を支持する。米国にウクライナ向け支援の停止を促す恐れのあるシグナルは一つでも発したくない」と続けた。米財務省報道官はコメントの要請に対し、「この重要な合意の早期締結と、ウクライナとロシア両国の恒久的な平和の確保に米国は引き続き努めている」と述べた」

    ゼレンスキー氏は、米国にウクライナ向け支援の停止を促す恐れのあるシグナルは一つでも発したくないとしている。ウクライナにとって、米国が「命綱」であるからだ。


    (5)「ウクライナは、2022年にEU加盟候補国として認定され、正式加盟に向けた交渉が始まる見通しだ。ただ、交渉完了には長い年月がかかる可能性があり、ウクライナ経済の大部分における投資決定権を米国が実質的に握るとなれば、交渉は一段と難しくなる公算が大きい。ウクライナは以前、米国との合意がEUと結んだ連合協定と矛盾することがあってはならないと主張してきた。これまでの支援を共同基金への拠出金に位置づけようとする米国の働きかけも、拒否していた」

    ウクライナは、戦争終結と引き換えにしているので、米国と難しい交渉を迫られている。最終的に、米国の意向に従うほかないのだ。

    (6)「この草案文書によると、米国は基金の理事会メンバー5人のうち3人を指名し、決定を阻止できる特別議決権も得る。ウクライナ政府はあらゆる天然資源・インフラ関連の新プロジェクトから得る利益の50%を基金に払い込むことが義務づけられ、米国はこれまでの支援金額を完全に回収するまで、利益の全額に加えて年4%のリターンを受け取る権利を有する。ウクライナは全てのプロジェクトを「可能な限り早期に」基金に提示し、審査を受ける義務も負う。却下されたプロジェクトについて、ウクライナは「大きく改善した」条件で第三者に提案することが少なくとも1年間は禁じられる」

    米国は、ウクライナ支援金に年4%の金利を課すという。これは、米国民からみて余りにも情け容赦ない姿勢に映るだろう。来年11月、米中間選挙では争点にされるに違いない。トランプ氏の理由は、国債発行で得た資金だから、その金利分を払えと言うのだ。


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    ウクライナのゼレンスキー大統領は、物別れに終わったトランプ米大統領との会談から一夜明けた3月1日、ウクライナの苦境について耳を傾けられ、ウクライナが忘れられないことが「非常に重要」とソーシャルメディアに投稿した。『ロイター』(3月1日付)が報じた。

    ゼレンスキー氏は、ワシントンのウクライナ人コミュニティとの会合の映像を添えた投稿で、「戦時中も戦後も、誰もがウクライナに耳を傾け、ウクライナのことを忘れないようにすることがわれわれにとって非常に重要だ」とした。「ウクライナの人々が、自分たちが孤立していないこと、自分たちの利益が世界中のあらゆる国、あらゆる地域で代弁されていると知ることが重要だ」とも述べた。ゼレンスキー氏は、国益実現目指して奮闘している。


    『ロイター』(2月27日付)は、「ウクライナ、鉱物資源取引にのぞくトランプ氏顔負けのしたたかさ」と題する記事を掲載した。

    (1)「ウクライナの重要鉱物などの資源を米国に提供することは、ゼレンキー氏が昨年9月に当時米大統領選の候補だったトランプ氏に持ちかけたアイデアであり、両国の商業的利益に合致させることを望んでいた。ただ、ゼレンスキー氏は昨年11月の米大統領選後に、持ちかけたよりも大きな譲歩を迫られた。ロシアが、2022年にウクライナへ侵攻して以来、米国がウクライナに提供してきた財政的・軍事的支援に対する「見返り」として、トランプ氏が約5000億ドル(約75兆円)について話し始めたからだ」

    協定草案の内容に詳しい情報筋によると、草案には米国の安全保障や武器の継続的な提供は明記されていないものの、米国はウクライナが「自由で、主権があり、安全であること」を望んでいるとの文言が盛り込まれているという。これは、ウクライナの安全保障を示唆している。ゼレンスキー氏は、もう一歩の突っ込んだ安全保障が欲しいのだ。戦火に蹂躙されているウクライナ大統領として、当然のことであろう。


    (2)「米紙『ニューヨーク・タイムズ』は、ウクライナが天然資源を将来収益化する際に、収入の半分を米国が管理する特別基金に支払う内容の合意に向けて協議していると報じた。この基金は外国からの資本誘致の起爆剤として、収入の一部をウクライナ国内に再投資する役割を担う。一方で米国は、ほとんど理にかなわない5000億ドルの要求を取り下げたようだ。キール世界経済研究所によると、米国の過去3年間のウクライナに対する軍事および民用支援は1140億ユーロ(約18兆円)に上り、欧州諸国は同じ期間に計1320億ユーロを支援した」

    今回のトランプ・ゼレンスキー会談の「喧嘩別れ」は、欧州のウクライナ支援の声を一段と強めている。これは、欧州が結束して米国へ圧力をかけることに繋がるであろう。

    (3)「ウクライナの鉱物資源の規模は未知数だ。ウクライナのウランやリチウム、原油、ガスなどの天然資源について地元当局はほとんど把握していない。いわゆるレアアース(希土類)のマッピングは数十年前が最後で、もしかすると鉱床には採算性がないかもしれない。その上、一部はロシアに占領された地域にある。さらに、収入が得られるのは何年も先になる。ウクライナはまず、鉱山施設の建設や再建を手がけた上で、損傷したエネルギー網を修復しなければならない。もっとも、将来的な見返りが約束されれば米国の投資が促進され、世界銀行が5240億ドルかかると試算しているウクライナの再建が始まる可能性がある」

    ゼレンスキー氏は、米国をウクライナへ繋ぎ止める手段を考案した。トランプ氏は、経済利益と聞けば関心を強める。この虚をついて、共同の鉱物資源開発を持ち込んだ。


    (4)「ゼレンスキー氏は、ウクライナでの停戦を監督するために米国が関与することを条件とする取引を望んでいた。この条件は、米国の欧州への軍事的関与に否定的なトランプ政権の意向に反しているようだ。しかし、ゼレンスキー氏はウクライナ経済の将来に対する関心を米国に与えることで、同じ結果がもたらされるとも述べている。実際、ロシアはこの交渉中の取引を嫌っており、プーチン大統領は米国に対して独自の鉱物資源協定を提案した」

    ゼレンスキー氏は、ウクライナ経済の将来に対する関心を米国に与えることで、米国の安全保障を引出す手立てに使っている。なかなかの「役者」である。


    (5)「ゼレンスキー氏は、未知の資源を対象とする一般的な協定が、ウクライナをあまり拘束することにはならないと結論付けるかもしれない。鉱山が立ち上がって稼働する頃には、米国の大統領はより友好的な人物になっているかもしれない。そうなれば、ウクライナは契約を見直すか、完全に破棄することができる。これはトランプ氏でさえも称賛するかもしれない見事な交渉戦術だ」

    トランプ大統領の任期は、29年1月までだ。その後は、鉱物資源開発の契約を見直すチャンスも出てくる。ゼレンスキー氏は、ホワイトハウスで恥をかかされたが「一時のこと」。ウクライナ国民のためにも、ここは「忍の一字」で臨むほかない。



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