「窮鼠猫を噛む」現象が起っている。産油国ロシアは、ウクライナによるドローン攻撃によって、ガソリン供給能力が13%も低下。ついに配給制へ追い込まれた。ロシア国内の鉄道網や空港では、ウクライナのドローン攻撃の影響で頻繁に混乱が生じ、夏の休暇中も自動車での移動を強いられる市民が増加している。収穫期であることも、燃料需要を急増させているのだ。
ウクライナの外相を務めたパブロ・クリムキン氏は、「戦争は前線だけで起きているわけではない。そのため、システム的な打撃は非対称的な重要性を持つ」と指摘。「これらの攻撃は軍事活動に直接的な影響を与えないが、ロシア経済に影響を与える。ロシア経済は、すでに問題を抱えているため小さな圧力でもボトルネックを生み、システム内部の問題を増幅させる可能性がある」とした。ロシアの継戦能力が、ダーメージを受けている。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月28日付)は、「ロシアが燃料配給制、ウクライナのドローン攻撃で」と題する記事を掲載した。
ロシアの戦争は石油、ガス、燃料の輸出に支えられている。プーチン大統領は、死傷者が増加しているにもかかわらず、高額の入隊ボーナスで軍への志願者を募集している。
(1)「ウクライナは長距離ドローン産業を発展させ、2023年からロシアの製油所に対する攻撃を開始。バイデン前米政権は当時、世界の原油供給の混乱を懸念し、このような攻撃に反対していた。ウクライナは最近まで、ロシア経済の生命線である石油・ガス輸出インフラへの攻撃をおおむね控えていた。それも今や過去のものとなり、ウクライナのドローンは24日にはバルト海沿岸の戦略的施設であるウスチルガを炎上させた。過去1カ月間でロシア国内10カ所以上の製油所が攻撃を受けており、その一部は国境から数百マイル(数百キロ)離れた場所にある。これはウクライナのドローンがより強力になり、数も増えたことが背景にある」
過去1カ月間で、ロシア国内10カ所以上の製油所が、ウクライナのドローン攻撃を受けて損傷を被っている。これが、ガソリン不足を起こす原因になっている。
(2)「ロシアの主要な国営ガス会社の一つであるガスプロム・ネフチで22年まで幹部を務めていたセルゲイ・バクレンコ氏は、「ウクライナは現在、持続的攻撃を実行できる。昨年もこれを試みたが弾頭は軽く、成功率も低かった。今は攻撃で生じた影響が修復されると新たな攻撃が続く状況にある。もしウクライナがこの圧力を維持し、ロシアが修復できる以上の頻度で製油所に損害を与えることができれば状況は全く異なるものになるだろう」と述べた。ドローン攻撃はウクライナの政治的道具にもなっている。米国防総省は今春以降、米国製の長距離陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)でウクライナがロシアを標的とすることを制限してきた。だが、ウクライナ製兵器にはこのような制限はない」
ウクライナのドローンは、攻撃能力が一段と高まっている。ロシアが、修復できる以上の頻度で製油所は損害を被ると、今後の状況が大きく変ってくる。ドローン攻撃は、ウクライナの政治的道具になっており、プーチン政権を追詰める状況が起りうる事態だ。
(3)「ウクライナ国立戦略研究所(NISS)の研究員で、ウクライナ軍を支援する同国の慈善団体「カムバック・アライブ」のミコラ・ビエリエスコフ氏は、「われわれは攻撃範囲を常に拡大し、戦術も改善している。確かにパートナー国には依存しているものの、独自の能力、独自のカードを開発し、主体性も持っている」と述べた。また、「ロシアはあまりにも大きいため防空システムが十分に行き渡ることはなく、われわれはこれを利用している。過去の戦争と異なり、ロシアはその規模や戦略の深さが実際には不利になっている」とも付け加えた」
ロシアは、国土があまりにも大きいために防空システムが十分に行き渡っていない。ウクライナは、この盲点をついている。戦争の形態が変れば、広い国土は逆に負担になるというパラドックスが起きている。
(4)「ウクライナはドローンに加え、巡航ミサイル「フラミンゴ」を含む独自のミサイルも開発。オスロ大学のミサイル専門家ファビアン・ホフマン氏によると、フラミンゴはより大きな弾頭を持っており、ゲームチェンジャーになる可能性がある。ホフマン氏は「敵の産業・経済的標的を妨害できる長距離攻撃能力が、それらを包括的に破壊できる能力へと移行すれば、ロシアにとってはるかに対処が難しくなる」と説明。「ロシアはこの戦争を続ける限り、ウクライナが本当にロシアに打撃を与えることができるということを考慮に入れなければならなくなる」とした」
ウクライナは、巡航ミサイル「フラミンゴ」を含む独自のミサイルも開発している。完成すれば、ロシアに脅威になるという。ウクライナを「舐めるな」という、強い警告だ。
(5)「ロシア経済は、最近まで比較的堅調な成長を続けてきたが、持続的なインフレや高金利、欧米の制裁も影響を及ぼし始めている。国際通貨基金(IMF)は7月、ロシアの今年のGDP成長率の予想を0.9%に下方修正した。これは2024年の4%超から大幅な低下となる」
ロシア経済は、戦争の負担に耐えかね急減速期に入っている。プーチン氏は、休戦を引き延ばせばウクライナが「白旗」を掲げるとみているが、大きな錯覚になりそうだ。物事には、必ず「潮時」がある。それを逃すと、手痛い打撃を被るのだ。現在が、その時期に来ていることを示している。




