ロシア軍は、精密誘導弾を使い果たしており、現在は昔流の非誘導弾の攻撃でウクライナ側市民の被害を大きくしている。ウクライナ軍が、これを沈黙させるには超長距離の高機動ロケット砲しかない状態であった。こうした期待の兵器である、米提供の高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」が、ウクライナ軍の最前線へ到着し早速、威力を発揮している。これによって、ロシア軍に奪われた国土の奪回が進みそうだ。
韓国紙『WOWKOREA』(7月7日付)は、「ゼレンスキー大統領、米提供のゲームチェンジャー『強力な力を発揮し始めた』」と題する記事を掲載した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「米国が提供した高速機動歩兵ロケットシステム(HIMARS)など西側諸国が提供した歩兵戦力が、ロシア軍を相手に強力な効果を発揮し始めた」と強調した。
(1)「ゼレンスキー大統領は7日(現地時間)SNSにあげた演説動画を通じて「われわれのパートナーたちから提供された武器である大砲が、ついに強力に作動し始めた」と語った。また、「防御に乗り出していたウクライナ軍は、ロシア軍占領者たちの兵站に必須である倉庫などの重要な地点に対し目立った攻撃を加えた」と語った。また、「(西側諸国が提供した歩兵火力の)高い正確性は、これまでわれわれウクライナ軍が切に願っていた、まさにそのものだ」とし「損失が急速に増えているロシア軍は、補給の困難をより強く経験することになり、攻撃力もかなり下がるだろう」と説明した。米国が提供したHIMARSは、現在熾烈な砲撃戦の様相をみせているウクライナ東部のドンバス大戦で「ゲームチェンジャー」になると期待されている」
ゼレンスキー大統領の腹の底からの喜びが、読む側に伝わってくる感じだ。HIMARSは、兵器としてのあらゆる機能を備えている。77キロメートル先の標的を精密誘導弾で攻撃できる「夢の兵器」である。米国から合計8基が提供されるので、ロシア軍の戦意を挫くことは確実である。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月4日付)は、「米供与の高機動ロケット砲、ウクライナ反撃支援」と題する記事を掲載した。
米国が供与したハイテクロケット砲システムがウクライナ東部の前線に届き始めた。ウクライナ軍将校によると、新兵器投入で、ロシア軍との激しい砲撃戦のパワーバランスに変化が生じている。6月末に高機動ロケット砲システム「HIMARS」(ハイマース)1基が届くと状況が変わった。
(2)「コバル中尉率いる砲兵隊は夜陰に紛れて、トラックに搭載されたハイマースを発射位置に移動させ、座標を入力して発射ボタンを押した。中尉によれば、重さ約90キロのロケット弾6発がロシア軍基地を襲い、大部分を破壊したという。中尉は現在、ハイマース2基を指揮している。中尉によると、ウクライナはハイマースを引き受けてから2週間で10前後の高価値目標を攻撃。ロシア軍基地はその1つだという。ハイマースは2月にロシアが侵攻を開始してから米国がウクライナに提供した最も高度な兵器だ」
ハイマースは、重さ約90キロのロケット弾6発が発射できる機能を持つ。車に搭載されているので、発射後すぐに移動して敵に探知されないように工夫されている。
(3)「運用を担当するウクライナ兵によると、ハイマースのおかげで部隊の射程は2倍になり、ロシア占領地域まで砲弾が届くようになった。精度も上がり、自分たちのリスクは下がったという。ウクライナ当局者はハイマースについて、過酷な消耗戦でロシアを破るための頼みの綱だと話す。22歳のコバル中尉は「ハイマースは非常に強力だ。ハイマースのおかげでわれわれはできるかぎり(ロシア軍の)動きを阻止できる」と話した。「ハイマースはわれわれにとって大きな強みだ。ロシアにはこれに匹敵するものはない」と指摘する」
22歳の若き中尉が、ハイマースの指揮を取っている。未だ、大学4年生の年齢である。この人達がウクライナ軍の最前線で国土防衛に当っているのだ。
(4)「ウクライナには6月にハイマース4基が引き渡され、7月半ばまでにさらに4基が届く見通しだ。米国のバイデン大統領は6月30日、8億ドル(約1081億円)の新たな支援の一環として、ウクライナには他国から追加の火砲が、米国からは追加の砲弾が提供されると述べた。米政府は当初、ハイマースの提供には消極的だった。米国やその他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対するロシアの報復を懸念したためだ。ハイマースで発射されるロケット弾は米国がそれまでウクライナに提供していたM777榴弾砲のおよそ2倍の射程がある」
ハイマースの射程距離は77キロである。米国がこれまでウクライナに提供していたM777榴弾砲の2倍の射程がある。これだけ、ウクライナ軍は敵の前線から遠距離で攻撃できるので被害も減る計算になる。
(5)「ウクライナの運用担当者にとって、ハイマースは兵力、兵器の数で上回る敵と対等な立場に立てるチャンスをもたらした。米国と西側の同盟国はウクライナが保有するソ連時代の火砲の代わりに使えるように、これまで主に155ミリ榴弾砲――射程はロシアのシステムと同程度――を提供していた。ハイマースは最大射程約77キロの精密誘導ロケット6発を発射するシステム。ウクライナはハイマースを使用することで、ロシアの戦闘司令所や弾薬庫、燃料保管庫、後方で兵力が集中する地点を攻撃できる」
米国がこれまで提供してきた155ミリ榴弾砲の射程は、ロシア軍の榴弾砲と同程度であった。それが、ハイマースの登場で射程が77キロになるので、ロシア軍よりも優位な立場になる。
(6)「ハイマースは小型で、操作が簡単なため、敵の偵察から逃れやすい。運用を担当する兵士は装甲が施された乗組員室で操作する。しかもハイマースは素早い発射が可能だ。発射地点に着いたら2、3分以内にロケット弾の発射を開始することが可能で、発射から20秒で再び移動できる。「ボタンを3つ押せば数秒で発射の準備が整う」とコバル中尉は言う。「ハイマースには数えきれないほどの強みがある」と言う。
ハイマースは、発射後20秒で移動できる。ロシア軍に場所を探知されずに安全に移動可能だ。
(7)「ロシアのドローンに見つからないようにするため運用するのは夜間だ。コバル中尉はハイマースをそれぞれ異なる発射地点に送り、連携攻撃でロシアの陣地にロケット弾24発を撃ち込んだ。ドミトロ・コバレンコ兵卒(18)ら運用担当者は攻撃を指示するため、人工衛星を利用するデジタルシステムに座標を入力し、発射ボタンを押した。コバル中尉が記者に見せた動画によると、ロケット弾は一気に暗い空を横切り、数秒後にはハイマースを搭載した車両が安全な場所へと移動を始めた」
ハイマースの運用担当者は、18歳の兵卒である。大学1年生の年齢だ。こうして、18~22歳のウクライナ青年が、国土防衛の最前線に立っている。