勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ウクライナ経済ニュース時評 > ウクライナ経済ニュース時評

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    NATO軍(北大西洋条約機構)は四六時中、空からロシア周辺情報を収集している。この情報が即、ウクライナ軍に伝えられている。一方、米軍も独自情報をウクライナ軍へ提供している。ただ、提供された情報の選択については、ウクライナ軍の判断に任されている。そういう面で、米軍とウクライナ軍は画然と分業体制になっているという。

     

    それにしても、ウクライナ軍はNATOと米軍との二本建による情報収集の機会を持っており、ロシア軍に比べて極めて優位な立場である。今後のウクライナ・ロシア両軍の戦術では、この情報量の差が大きく開いてくるものと見られる。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月9日付)は、「ウクライナと対ロ機密情報を共有、米の綱渡り」と題する記事を掲載した。

     

    米国は大量の機密情報をウクライナと共有する上で際どい綱渡りをしている。ウクライナ軍がロシア軍を撃退できるよう支援しつつ、米国がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と直接衝突するのを避ける取り組みだ。米国の現・元当局者らが明らかにした。

     

    (1)「現・元当局者らによれば、米国の情報共有政策の要諦は、米国がロシア軍の部隊・戦車・艦船の動きに関するデータを提供し、ウクライナが自らの情報収集能力も活用して攻撃のタイミングを決める、というものだ。ウクライナ軍が米国から提供された情報を使って、ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」の位置を特定して攻撃したり、ロシア軍の将軍らを戦場で死亡させる攻撃を行ったりしたことが、過去1週間に明らかになった。これにより、米情報機関からウクライナ政府にデータが迅速に提供されていることが浮き彫りになった。こうした情報共有はほぼ前例がないと当局者らは指摘する。米国が、ウクライナに対し、攻撃すべきロシア側の目標や殺害すべき人物を指示していたのではないかとの見方を強く否定している」

     


    米国の情報収集能力の高さから見て、超一級の情報が集められているのだろう。ウクライナ軍は、それを活用して攻撃目標を決めている。武器の面で劣勢であるが、それを補っているのだ。

     

    (2)「戦争が3カ月目に入り、ウクライナは米国やその同盟諸国から提供された一層高度な兵器を手にしている。その中で米バイデン政権が、当局者らが「微妙なバランス」と認める状態を維持できるかどうかは分からない。元米当局者らは、プーチン氏が米国の情報共有政策の微妙な意味合いを理解する可能性は低いと指摘。地上と海上でロシア兵を殺害している攻撃にバイデン政権が直接関与していると、ロシア政府が判断するリスクがあるとの見方を示している」

     

    米国とウクライナが、情報収集において二人三脚で進んでいることに対して、ロシアがどのように反応するか。これが、今後の課題という。

     


    (3)「ロシアで活動していた元米中央情報局(CIA)の高官、ダン・ホフマン氏は、「われわれの見方からすると、われわれは彼らに戦術的な情報を与えている。ここに司令部があって、ここに艦艇がある、といったことだ。判断は彼ら自身で下している」と話した。しかし、ホフマン氏によれば、ロシアはそうしたやりとりを同じようには捉えていない。「重要なことはロシアがこれをどう見るかであり、彼らはこれを米国との代理戦争と捉えたがっている」

     

    米国は、ウクライナに対して情報提供だけである。ウクライナは、その提供されたデータを活用して具体的な攻撃目標を決めている。

     

    (4)「米国は4月、ウクライナに提供する情報を大幅に拡大し、ドンバス地方やクリミア半島などのロシア支配地域で展開するロシア軍をウクライナが標的にできるようにした。米当局者は安全保障上の懸念から、共有している情報の詳細を明らかにしていない。ただ、それには衛星写真が含まれることが知られているほか、傍受した通信の内容が含まれることもほぼ確実だ。米当局者によると、情報共有の制限はごくわずかしかない。米国は、ロシアの軍指導部や民間指導者を狙うのを手助けするような情報も共有していないという」

     

    米国は、4月から大幅に情報提供の範囲を広げている。衛星写真・傍受した通信などである。ウクライナは、豊富になった情報を組み合わせれば、自ずと攻撃目標が決まるのであろう。

     


    (5)「米国の情報共有に関する姿勢や、ウクライナへの武器供与に何十億ドルもの予算を割いていることは、バイデン政権が二大核保有国の衝突を引き起こすことなく、ロシア軍にウクライナ侵攻の高い代償を払わせる取り組みの一環だ。ロイド・オースティン国防長官は4月下旬にアントニー・ブリンケン国務長官とともにキーウを訪問した後、「ロシアがウクライナ侵攻でこれまでしてきたようなことをできなくなるまで弱体化することを望む」と述べた」

     

    下線部が、米国のロシアに対する本音部分であろう。この一環として情報がウクライナへ提供されているものと見られる。

     

    (6)「米国の現・元当局者はウクライナ独自の情報収集能力を過小評価すべきではないと指摘する。2014年のロシアによるクリミア半島併合やドンバス地方の不安定化を狙った作戦が行われたあと、米軍とCIAの支援を得て情報収集能力が向上したという。ウィリアム・バーンズCIA長官はこのほど、英フィナンシャル・タイムズ紙主催のイベントで、「ウクライナが持つ独自の強大な情報収集能力を過小評価するのは大きな誤りだ」と語った

     

    ウクライナ軍は2014年以降、NATOや米軍から軍事訓練を受けてきた。これによって、旧来のソ連式軍隊から脱皮している。その成果が、戦術面に現れていると見られる。

     

    (7)「元CIA諜報(ちょうほう)員のダグラス・ロンドン氏によると、標的となり得る対象の追跡情報を米国がウクライナに提供しているのは明らかだが、ドローンからのライブ映像といった、米政府が過去にパートナーと共有していた情報が含まれているかどうかは分からない。ロンドン氏は、米国がウクライナ側にロシア軍の配置に関する情報を提供する際、何らかの行動を示唆することはないと指摘。「われわれは、こうしろとは指示してい

    ない。彼らは主権国家であり、独自の課題がある」と語った」

     

    ウクライナの愛国精神は、極めて高いものがある。過去の歴史で、従属させられてきた屈辱の経験を持つだけに、抵抗精神が強いのであろう。 

     

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    ロシアが、2月24日に始めたウクライナ侵攻は、すでに2ヶ月が経った。解決の目途は全く立たず、逆にどこまで拡大するのか。世界は、おびただしい犠牲者の増加におののくだけである。現状では、ロシア軍を具体的に支援する国は現れないが、ウクライナ軍には武器弾薬の支援が強化されている。形の上では、ロシアが不利な状況である。結末は、どのようになるのか。プーチン氏以外には、誰も予測できないが、3つのシナリオ考えられるという。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月25日付)は、「プーチン政権『苦境悪化は不可避』ウクライナ侵攻2カ月」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の編集委員、高坂哲郎氏である。

     

    ロシアによるウクライナ侵攻の開始から2カ月が経過し、ロシア軍はウクライナの東部と南部で攻勢に出つつある。ウクライナのゼレンスキー政権は徹底抗戦の構えで、米欧なども同国支援を続ける構えだ。攻防戦の今後を予測すると、いかなる結果になってもロシアが開戦前より弱体化することが必至であることがみえてくる。

     


    (1)「第一のシナリオ。ロシア軍は、ウクライナ北部での作戦継続を断念した後、生き残った兵士を新たな部隊に再編成するとともに増援部隊も追加し、東部地域で攻勢に出つつある。東部は平原地帯で、ロシア軍はここで戦車や火砲を大量に投入してウクライナ軍を圧倒したい考えとみられる。攻防の最大の焦点は、米欧の軍事支援が十分間に合うかどうかだ。間に合わなければ、ロシア軍は南部でも攻勢を強め、モルドバ東部の親ロシア派が「沿ドニエストル共和国」を自称する地域につながる回廊を形成しそうだ」

     

    ウクライナ東部は平原地帯である。ロシア軍は、戦車や火砲を大量に投入してウクライナ軍を圧倒する戦術である。ウクライナ軍へ武器弾薬の増援が遅れれば、ロシア軍が有利な戦いになろう。

     


    (2)「その場合、プーチン大統領は「国外のロシア系住民の救済という作戦目的を達成した」として勝利を宣言しそうだ。英国のジョンソン首相は、戦争が来年末まで長引けば「ロシアが勝利する可能性はある」と語った。米欧の「支援疲れ」を懸念しているとみられる。その場合でもロシアは、大きくみると「戦闘には勝ったが、戦争には負けた状態」に陥る。ロシア支配地域とそれ以外のウクライナ領の間には新たな「鉄のカーテン」がひかれる形となり、対ロ制裁は固定化される。世界は再び東西に分断され、ロシア経済はソ連崩壊直後の1990年代のような大低迷期に突入しそうだ」

     

    ロシア軍が、ウクライナ東部で勝利を収めた場合、ロシア支配地域はウクライナ領と遮断される。この場合、ロシア制裁は固定化されてしまい、ロシア経済の混乱状態が継続する。

     


    (3)「第二のシナリオ。米欧の軍事支援が円滑に進み、ウクライナ軍が北部戦線と同様にロシア軍部隊を精密誘導兵器で効率的に撃破すると同時に、新たに供与される155ミリりゅう弾砲など重火器面でもロシア軍に対抗する展開を想定する。ロシア軍は攻勢に出ようとしているが、北部などでの苦戦を経験した兵士の士気は高いとは言えず、増援部隊にもそうした苦境は伝わっているとみられる。補給に陰りが出れば、ロシア軍首脳がもくろむ大規模攻勢をかけられるかは流動的となる」

     

    第一のシナリオと異なり、ウクライナ軍への支援が順調に進み、ロシア軍を圧倒するケースである。

     

    (4)「米欧のウクライナへの軍事支援の中身は質量ともに強まっている。「今後本格化するウクライナ軍の反撃で、ロシアはいずれ本国にまで押し戻されるかもしれない」と、シナリオAとは正反対の予測を語る元自衛隊情報系幹部もいる。確かに、破格な規模の武器供与をみていると、どうやら米欧は「プーチンが勝手に始めた戦争なのだから、これを奇貨としてこの際徹底的にロシア軍をたたき、当面は欧州方面で脅威にならない水準まで弱体化させてしまいたい」と考え始めたようにもみえる」

     

    NATO加盟国は、結束してウクライナ支援に立ち上がっている。下線部のように劣勢になったロシア軍を追詰める戦術も予想される。

     

    (5)「そうした展開になると、ウクライナが平和を回復する一方、ロシアの国内情勢は不安定化していく。「ウクライナ侵攻」から「ロシア不安定化」に事態が転化するわけだ。この展開に向かう必須要素は、米欧の支援が迅速かつ強力に進むこと、ロシア軍の本国撤退を「その時点でのロシアの指導者」が許容するかどうかの2点となる」

     

    ウクライナ優勢で情勢が逆転すれば、ロシアが国内的に苦境に立たされる。ロシア国内で,停戦の動きが出ないとも限らない状況も考えられる。

     

    (6)「第三のシナリオ。東部や南部での戦闘が膠着状態に陥ったり、ウクライナ軍が明らかに優勢になったりする場合、ロシア軍が化学兵器や核兵器といった大量破壊兵器の使用に踏み切る恐れがある。ロシア軍は伝統的に、戦術核兵器を「通常爆弾のちょっとした延長線上の兵器」程度にしか認識しておらず、プーチン大統領も過去にたびたび核使用の可能性に言及している。東部のどこかにウクライナ軍部隊が集結した場合、そこにロシア軍が戦術核攻撃をしかける危険がある。マリウポリの巨大製鉄所の地下には、なおウクライナ軍部隊や市民が隠れ、抵抗を続けている。世界の目が東部や南部での戦局に移る隙を突く形で、ロシア軍が製鉄所の完全制圧へ化学兵器を使う恐れもある」

     

    このシナリオでは、苦境に立たされるロシア軍が、化学兵器や核兵器を使って退勢挽回を図る事態だ。これは、ロシアにとっても悲劇的結末が待っている。

     


    (7)「ロシア軍による大量破壊兵器使用で起こりうるのは、第一に、ウクライナや米欧が衝撃を受けて混乱し、ロシアが一方的に勝利を宣言する展開だ。もうひとつは米欧の軍事支援が一段と手厚くなり、一部の国が公然と軍事行動に出たり、ウクライナ以外の場所でロシア軍対米欧諸国軍の戦いが始まったりする可能性だ」

     

    ロシア軍による大量破壊兵器使用されれば、そこで、ウクライナ戦争が終わる保証がないことだ。事態は、さらに悪化する危険性が出てくる。これを、どのようにして防ぐかだ。第三のシナリオになったなら、ロシア国民も安閑としていられなくなろう。その深刻さを早く、認識すべきだ。戦争を止めなければ危険である。

     

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    ロシアは、ウクライナ侵略戦争の焦点をウクライナ東部に置くことになった。全土の把握は、ロシアの戦力の現状から諦めたようである。ロシアが仕掛けた古典的な「植民地戦争」は、失敗という印象が強くなった。プーチンのロシアは、これからどうなるのか。新たなテーマが浮かび上がる。

     

    米経済通信社『ブルームバーグ』(3月25日付)は、「プーチン氏の戦争、勝てない場合のロシアの未来」と題するコラムを掲載した。筆者のハル・ブランズ氏は、米ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院教授である。

     


    (1)「2月下旬以降、ロシアは経済、貿易、金融の面で制裁を受けている。債務不履行(デフォルト)へ突き進み、テクノロジー面のデカップリング(切り離し)も進行している。外国企業はロシアから撤退し、サッカーなどスポーツ界でもロシア代表は国際大会から排除されている。ロシアはキューバもしくは北朝鮮のような小さな独裁国家ではなく、つい最近まで国民が国際社会と深く結びついていた大国だ。それが今や、ある国が世界を相手に戦争している時だけに起きるような国際社会からの追放に直面している」

     

    ロシアは文字通り、世界の孤児になった。経済制裁が強烈、かつ広範囲にわたること。それだけでない、スポーツや芸術にまで及んでいる。チャイコフスキーの名曲演奏まで拒否される「ロシア嫌悪感」に満ちあふれている。

     


    (2)「ウクライナでの戦争が、今後数カ月もしくは数年続くとしたら、それはロシア側には何を意味するだろうか。いくつかのシナリオが考えられるが、いずれもロシアにとっては難題をもたらすものだろう。米国やその同盟国にとって極めて憂慮すべき展開も考えられる」

     

    プーチン氏は、間違った民族主義に酔い、タブーの引き金に手を掛けてしまった。戦争を止めるのはプーチン氏である。

     

    (3)「最も明るいシナリオは「モスクワの春」だ。戦争の代償として政変が起こり、1990年代にロシアが一時的に経験した民主主義が復活する。ロシアのエリート層がプーチン氏を排除し、ウクライナとの和平を結ぶ。侵略と独裁が迎えた結末を目の当たりにしたロシアの都会的かつリベラルな層は、政治の開放と国際社会への再統合を求める。1980年代後半に世界から孤立した南アフリカ共和国がアパルトヘイト(人種隔離)を放棄したように、ロシアの内外政策は外圧によって劇的な変化を強いられる」

     

    ロシア民衆が、「プーチン不信任」を行い政権から降すのがベストだ。2024年の大統領選挙がカギを握る。

     


    (4)「このシナリオが実現する可能性は低い。過去20年にわたるプーチン主義により、ロシアの野党勢力は弱く、分裂している。プーチン氏もクーデター防止網を張り巡らせているだろう。仮にロシアで革命が起きたとしても注意が必要だ。1990年代の歴史は、不安定かつ混沌(こんとん)とした時代が続く可能性をわれわれに警告している」

     

    旧ソ連時代はあのフルシチョフ書記長でさえ、ソ連共産党から解任された。いまのロシアは、ソ連時代よりさらに独裁化が進み、プーチン一人舞台である。「プーチン退任」は夢物語だ。

     


    (5)「2番目は、より妥当な「傷を負った巨人」シナリオだ。権力にしがみつくプーチン氏は、孤立で高まる民衆の不満を治安部隊を使って抑える。ロシアは経済および技術の面で西側に代わる選択肢を模索し、中国への依存を高めるようになる。この場合、変わるのはロシアの政策ではなく、ロシアの影響力だ。経済の衰退、技術進歩の遅れ、軍事力の長期弱体化という代償を伴う。このシナリオは西側や太平洋地域の民主主義国家にとって素晴らしいものではないが、ひどいものでもない。停滞するロシアに対し、米国は長期的なライバル関係で十分な成果を上げることができるだろう」

     

    プーチン氏が権力にしがみつけば、ロシアは国家として衰退する。国際的な影響力は低下するだろう。

     


    (6)「3番目は、さらに暗い「ボルガ川のテヘラン」シナリオだ。ここでは孤立化と急進化が並行して進む。高学歴で将来性のある層はロシアを離れ、率直な批判を口にするリベラル派は政権から排除される。強硬派は自給自足を前提とした「抵抗経済」を受け入れ、西側からの汚染を避けようとする。厳しい内部粛清、執拗(しつよう)なプロパガンダ、好戦的ナショナリズムの高揚はロシア型ファシズムを生み出す。やがてプーチン氏がいなくなっても、同じように抑圧的で野心的、外国嫌いのリーダーが現れる。こうしてロシアは、核兵器を保有する超大国版イランと化し、世界から永久に疎外され、好戦性を高めることで弱さを補うようになる。西側との対立は緩和するどころか激化するかもしれない」

     

    プーチン後のロシアは、世界から永久に阻害される存在となる。中国は、こういうロシアを支え続けることはないだろう。好戦的ロシアが続く以上は、経済制裁が続くからだ。

     


    (7)「もちろん、最終的な現実は上記のいかなるシナリオとも違ってくる可能性がある。しかし、こうした頭の体操で2つの重要なポイントが浮かび上がる。まず、米政権はロシアの長期的な軌道について真剣に考え始める必要があるという点だ。ソ連に激震が走っていた1989年、当時のブッシュ(父)政権は何が起こり得るかを検討する会議を静かに立ち上げていた。今回の危機で何が起きるにせよ、ロシアは強大であり、その軌道は国際秩序全体の健全性にとって極めて重要だ。米国はロシアがどんな方向に進んでも対応できるようにしておく必要がある」

     

    米国は、衰退するロシアへの準備を始めるべきだ。1989年、米国のブッシュ大統領(当時)は、1991年のソ連崩壊を見据えて準備作業に入っていた。

     


    (8)「次に、何を望むかに注意が必要だ。ウクライナが粘り強い抵抗を見せる中、米国とその同盟国は、最も基本的な国際行動規範を明白に破ったロシアに重い代償を背負わせるべく、厳しい制裁措置を正しく行使している。これに代わる唯一明白な、そして忌まわしい代替策となるのが融和策と武力介入だ。しかし、われわれは制裁措置が長期的にどのような結果をもたらし得るかの検討を始めたばかりだ」

     

    西側は現在、ロシアへ強烈な経済制裁を行なっている。これを緩めてはいけない。融和策と武力介入は、決して「代替策」になり得ない。「兵糧攻め」が、最善の策である。 

     

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    ロシア軍が窮地に立たされている。ウクライナ軍の予想を超えた抵抗で、多大の戦死者を出しているからだ。急遽、全土から増援部隊を呼び集めているとの最新の諜報内容が、英国防省から発表された。

     

    ロシアのプーチン大統領は16日、テレビ演説を行い、欧米志向のロシア人を「国の裏切り者」と呼んで痛烈に非難した。プーチン氏は、思うように進まないウクライナ侵攻に焦っていることは明らかだ。ウクライナ侵攻以降、プーチン氏は反対派への締め付けを強化している。

     

    米『CNN』(3月17日付)は、「ロシア軍、人員損失続き全土で増強部隊を徴集 英国防省の分析」と題する記事を掲載した。

     

    英国防省は17日までに、ウクライナに侵攻したロシア軍が要員の損失が続いている事態を受け、同国全土から増強部隊を呼び集めている状況にあるとの最新の諜報内容を公表した。

     


    (1)「追加の派遣部隊をひねり出す措置は増す一方とし、ロシア軍はウクライナ側の抵抗が衰えていないことを踏まえ攻撃作戦の新たな着手に苦労している可能性があるとした。英国防省は、遠方の東部軍管区、太平洋艦隊やアルメニアからの戦力を招集しての再配置にも踏み切っているとも指摘。さらに、「民間の軍事企業、シリア人やほかの傭兵(ようへい)の動員も含めて戦闘員を補充する手当てを探っている」とした。その上で、ロシアはこれら戦力を制圧した地域に投入して生じる正規の実戦部隊の戦闘能力を、停滞している攻撃作戦の活性化の手立てに向けることを試みる可能性があると述べた」

     

    ロシア軍の士気の低さが、指摘されている。戦争の意義を説明することもなく、2月24日に突然の出動命令となった。車両などの準備不足は覆いがたく、最前線で故障を起し、ウクライナ農民がトラクターで引っ張る情景がSNSに投稿されているほど。無理な侵略戦争であった。

     

    ロシア軍の犠牲が増えているのは、ウクライナ軍が欧米から供与された武器の優秀性にあることも一因である。ウクライナ軍の適確な反撃に手を焼いているのだ。

     


    『フィナンシャル・タイムズ』(3月12日付)は、「ウクライナ軍、西側兵器でロシア軍の弱点突く」と題する記事を掲載した。

     

    破壊され、炎上し、放棄されたロシアの戦車や軍用車が道路を塞ぎ、水路に落ちている――。西側情報機関、戦争写真家、SNS投稿者らによる無数の写真や動画がそんなロシアのウクライナ侵攻の決定的なイメージを記録している。

     

    ロシア軍は当初、電撃的に攻撃し、首都キエフや主要都市を短期で征服することをもくろんでいたが、ウクライナ軍はその進撃を阻止している。ウクライナ軍は軍用車を確実に狙い撃ちして破壊する能力が高く、ロシア軍に打撃を与え、その進軍を遅らせている。

     

    (2)「ウクライナ軍はたいてい、小人数の部隊で、肩に抱える携行式ミサイルの装備だけで、地の利を生かし、ロシア軍の戦略の弱みを突いて反撃している。ウクライナ軍の対戦車ミサイルの多くは、ロシアの侵攻以降、西側諸国が提供したものだ。巧みな反撃による善戦は西側の支援者らも驚かせている。小型武器を活用するウクライナ軍に対し、重砲に依存するロシア軍。この構図が両軍の戦術の対照的な違いを示している」

     

    ロシア軍は、大部隊編成で移動している。ウクライナ軍は、少人数で肩に抱える携行式ミサイル装備だけで素早く攻撃し姿を消す戦術に徹している。ウクライナ軍の機動性が、大部隊のロシア軍と五分の戦いを可能にさせている。

     

    (3)「ロシアの軍隊は、2012年までに大幅に再編された。現在その戦闘部隊は、大隊戦術群(BTG)を中心に編成されている。米国の推定によると、ロシア全体でおよそ170あるBTGのうち、機動性が高く、高度の攻撃能力を持つ100がウクライナに配置されているという。しかし、1BTG当たり約75台と軍用車への依存度が高く、歩兵隊が200人と比較的少ないため、特に側面や後方からの攻撃に弱い。地の利があり、戦術、軍の能力でも高いレベルにあるウクライナ軍が相手となると、ロシア軍のこの弱みは大きな弱点となる」

     

    ロシア軍は、1大隊戦術群当たり約75台と軍用車への依存が高い。ただ、歩兵隊が200人と比較的少なく、護衛できない弱みを抱えている。ウクライナ軍は、このロシア軍の弱点を突くべく、携行式ミサイル装備で戦いを挑んで成果を上げている。

     

    (4)「プーチン大統領とごくわずかな顧問グループが企てた今回のウクライナ侵攻は、ウクライナとの国境に「訓練」の名目で配置されていたロシア部隊の多くにとって、ショックだった。西側の情報機関関係者や防衛アナリストによると、突然、国境を越えるよう命令されたロシアの軍用車は、整備状態が悪く、タイヤやスペア部品が粗末な例が多いという。このため、未舗装道路を走行するのは危険ないし不可能な状態だ。実際、タイヤや車軸が壊れたりして泥地に放棄されたロシア軍車両の画像が多数存在する」

     

    ロシアの軍用車は、整備状態が悪く、タイヤやスペア部品が粗末な例が多い状況だ。ウクライナへ出撃前の車両整備で、十分な時間も与えられず突然の開戦となった。未舗装道路を走行するのは、危険ないし不可能な状態にある。これが、緒戦での躓きをもたらした背景である。

     


    (5)「ここから、ウクライナ軍は2つの結論を導いた。1つは、装甲部隊がどんなに大きくても、部隊は道幅以上には広がれず、後ろの車両は先頭車両より速くは進めないということだ。2つ目は、ウクライナの防衛軍は道路沿いの森や荒野、村落で比較的自由に動けるということだ。歩兵が側面をほとんど守れないため、ロシアの軍用車は、ウクライナ軍の少数部隊からの奇襲に弱い。ウクライナ軍は、隠れ場所から狙い撃ちして、見つかることなく退却することが可能だ」

     

    ロシア装甲部隊は、舗装道路以外を走れないことが判明した。ウクライナ軍は、地の利を生かして森や荒野、村落を自由自在に動いて攻撃できる機動性を備えている。これでは、ロシア軍が補給面でも問題を抱えることになった。有り体に言えば、ロシア軍はロケット攻撃しかできず、白兵戦が不利ということだ。戦線は膠着して、ロシア軍の消耗が激しくなる構図になってきた。

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