ロシアは、内憂外患状態へ追い込まれている。ウクライナ戦争が、膠着状態に陥る一方、経済制裁の強化でモノ不足による消費者物価上昇は、深刻化の気配を見せている。年内に20%上昇が予想され始めており、今世紀最大の値上りに直面しそうだ。ウクライナ戦争を継続できる状況でなくなってきたのだ。
『ブルームバーグ』(3月17日付)は、「ロシア、モノ不足による『ソ連型インフレ』に向かっている恐れ」と題する記事を掲載した。
ロシアではウクライナ侵攻に対する国際的な制裁を受け、主食や輸入品の不足が広がっている兆しが見られる。
(1)「ロシア連邦統計局の発表によれば、11日までの1週間で消費者物価指数(CPI)は2.09%上昇。前週の2.22%上昇から伸びが鈍化した。一方、経済発展省によると、11日時点で前年同期比のインフレ率は12.54%と、1週間前の10.42%から加速した。ロシア大統領府付属ロシア国民経済公共行政アカデミー(RANEPA)の金融市場専門家アレクサンドル・アブラモフ氏によると、ロシアはコスト上昇ではなくモノ不足によって生じる「ソ連型インフレ」に向かっている可能性があるという」
「ソ連型インフレ」とは、消費財供給不足によって起こったインフレである。需要過多によるものでない。それにも関わらず、政策金利が現在、20%にも引き上げられている。これでは、設備投資抑制になるので、ますます供給不足に陥る悪循環である。さらにロシアの場合、消費財輸入依存が40%台前半と高いので、ルーブル暴落と西側諸国の輸出禁止によって、一層の物価高騰に拍車を掛けている。
(2)「同氏は、「現在の主なリスクは、基本的な輸入日用品および耐久消費財の不足が生じていることだ」と分析。「多くの商品は実店舗ではもはや入手不可能なほか、オンライン店舗で価格が急激に上昇している」と指摘した。ルーブル急落および制裁による打撃で、インフレ率は1998年のロシア国債デフォルト(債務不履行)以来の水準付近に高止まりしている。消費者はさらなる物価上昇を見越し、ここ数日間に買い物を急いでいるほか、海外企業のロシア離れもモノ不足懸念に拍車をかけている」
実店舗段階では、すでに商品不足が起こっている。消費者は商店へ足を運んでも購入できない状態だ。開戦3週間で、この状態である。先行きが懸念される訳だ。物価状況の現状は、1998年の国債デフォルト当時に近い状況である。
(3)「ライファイゼン・バンクのアナリストは、顧客向けリポートで「金融引き締めがインフレの緩和に寄与しているものの、一部のモノ不足とルーブル急落の中で、インフレ率が年内に20%に達することは避けられないだろう」と指摘した」
年内のインフレ率は、2001年の25%に次ぐ20%上昇が予想され始めている。この状態で、ウクライナ戦争を継続できるはずがない。国民の間に「反戦ムード」が高まらないとう保証はないのだ。プーチン氏が、苦境に立たされる場面であろう。
『日本経済新聞 電子版』(3月17日付)は、「ロシア・ウクライナ「中立国化」で溝、米中18日に協議へ」と題する記事を掲載した。
ロシアとウクライナによる停戦に向けた直接協議について、双方とも16日に一定の前進があったとの認識を示した。今後、ウクライナの「中立国化」や「軍備制限」などの項目が主要な議題になる見通しだ。米ホワイトハウスは17日、バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が18日にロシアのウクライナ侵攻について電話協議すると発表した。
(4)「英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)によると、ウクライナとロシアは停戦条件を定めた草案をつくることで合意したという。①ウクライナが中立を宣言し、軍備の制限を受け入れればロシアが同国から撤収する②ウクライナの安全保障の見返りに、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟を取り下げる――など15の項目を含むという。この報道について、ウクライナ政府高官はツイッターに「この草案はロシア側のもので、我々には独自の立場がある」と投稿し、草案の存在自体は認めた。ウクライナのゼレンスキー大統領は16日に「ウクライナの国益に沿う決定にはまだ時間がかかる」と語った」
ロシアとウクライナの停戦交渉が、少しずつ動いている。ウクライナは、ロシアが一方的に突付けた条件をどこまで回避するか。最小限の犠牲に止める努力をしている。ロシアの弾薬や糧食が、5月初旬で底をつく見通しがあるだけに、ロシアは時間との勝負になっている。
(5)「米中両首脳が直接話すのは2021年11月にオンライン協議して以来となる。バイデン氏は、習氏に対して中国が米欧や日本による金融・経済制裁で打撃を被ったロシアを軍事・経済面で支えないよう迫る見通しだ。ロシア軍による地上部隊の侵攻はほぼ止まっているが、砲撃や空爆などの手を緩めていない。南東部の港湾都市マリウポリでは17日、前日に空爆で大きな被害を受けた市民の避難所でもあった中心部の劇場で、生存者の救出作業が進められた」
米中首脳オンライン会談が、予定されている。米国は、中国がロシア支援に動かぬように釘を刺す目的である。戦争を長引かせれば、それだけ,ウクライナの犠牲が大きくなる。中国も、苦しい局面へ追い込まれている。