勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ロシア経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    ロシアのハイテク産業は、経済制裁を受けて総崩れである。半導体の国産メーカーMCSTTは21年、委託生産で試作品をつくったが結果は不合格。将来の展望はゼロだ。最近、IT技術者が相次いでロシアから出国しており、深刻な「人材流出」が続いている。この状態を見ても、中国は支援に動かずじっと様子見に徹している。中ロの「限りない友情」は、言葉だけに終わっている。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(6月2日付)は、「『何もかも消えた』、制裁直撃のロシアテック業界」と題する記事を掲載した。

     

    西側諸国の対ロシア制裁を受け、ロシア企業がテクノロジー危機に陥っている。半導体や電子機器、国内のデータセンターに必要なハードウエアの供給に深刻なボトルネックが生じているためだ。

     


    (1)「米国、英国、欧州(連合)が欧米で製造・設計された半導体を搭載する製品の輸出を制限したことを受け、インテルやサムスン電子、台湾積体電路製造(TSMC)、クアルコムといった世界の半導体大手はほとんどがロシアへの販売を全面的に停止している。このためロシア国内では、自動車や家電、軍事機器の製造に使用される大型で低価格帯の半導体が不足している。先端の家電製品やIT(情報技術)ハードウエアに使用される高度な半導体の供給も大幅に縮小されている。さらに、スマートフォンやネットワーク機器、データサーバーなど、半導体を搭載した外国製の技術や機器類の輸入も甚だしく阻害されている。「サーバーからコンピューター、iPhone(アイフォーン)に至るまで、あらゆる製品のあらゆる供給ルートが消えた」。西側の半導体メーカー幹部はこう語る」

     

    ロシアは、2月24日を境にITを巡る供給状況が一変した。すべて、西側諸国へ依存してきたツケが回ってきた感じだ。

     


    (2)「ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻を受けて西側が科した前例のない包括的な制裁により、ロシア経済は手痛い「構造改革」(ロシア中央銀行)を迫られている。ロシアは原料のほとんどを輸出できず、重要な製品を輸入することも世界の金融市場にアクセスすることもできない。このため、ロシアの2022年の国内総生産(GDP)は15%縮小するとエコノミストは試算している。マイクロチップ、半導体、サーバーなどの「軍民両用(デュアルユース)」技術の輸出制限はロシア経済に与える影響が特に深刻で、長く尾を引きそうだ。ロシアの通信大手は高速通信規格「5G」の対応機器を調達できなくなるだろう」

     

    世界は、ITなしには動かない環境になっている。その心臓部門の半導体関連分野が、すべて対ロ輸出禁止措置を受けている。「暗夜」へ切り替わった。

     


    (3)「ロシアではテクノロジー業界の発達が遅れ、半導体の消費は世界の1%にも満たない。つまり、テクノロジーに特化した制裁が目先でロシアに及ぼす影響は、テクノロジー製品を世界に供給する一大製造拠点である中国に19年に課された同様の輸出制限が及ぼした影響よりはるかに軽微なものにとどまるはずだった。ロシアにもJSCミクロンやMCST、バイカル・エレクトロニクスなど半導体の国産メーカーはある。ロシア各社は従来、中国の中芯国際集成電路製造(SMIC)、米インテル、独インフィニオンなどの外国メーカーから大量に輸入した半導体の完成品に頼っていた。MCSTとバイカルは自社で設計した半導体の製造を台湾や欧州などのファウンダリー(製造受託企業)に委託していた」

     

    ロシア半導体は、他国からの輸入依存であった。それだけに、輸入禁止措置を受けて大騒ぎになるのは当然である。

     


    (4)「ロシアのビジネスニュースサイトRBCによると、MCSTは5月30日、半導体の製造をJSCミクロンが所有する国内工場に切り替えることを検討中と発表し、「ロシアの独自技術を駆使して価値あるプロセッサー(演算処理装置)」を製造できると表明した。しかし、MCSTが開発した半導体「エルブルス」をテストしたズベルバンクは21年、メモリー、処理能力、帯域幅でインテル製品を大幅に下回る「散々な」結果だったと明かしている。こうした状況に対し、ロシア政府には創意工夫が求められる」

     

    ロシアの国産半導体設計企業MCSTは5月、国内企業に委託して生産する方針を発表した。だが、21年にも同様の試みをやって大失敗した経緯がある。短期間に半導体製造技術は発展する筈がない。成果に期待をつなげないのだ。

     

    (5)「ロシアはサーバーや自動車、電話、半導体などのハードウエアを、商標や著作権所有企業の同意を得ずに企業が「並行輸入」することを認める輸入制度を導入し、調達先候補企業も多数列挙した。ロシアは従来、技術・軍事機器の一部については不正な「グレーマーケット」のサプライチェーンに頼り、アジアやアフリカの再販業者から仲介業者を通じて欧米の製品を購入することができた。しかし、半導体や重要なITハードウエアが世界的に不足している今、こうしたグレーな販路でも製品が枯渇している」

     

    ロシアは、技術・軍事機器の一部について不正な「グレーマーケット」のサプライチェーンに依存してきた。ウクライナ侵攻で使われているロシアミサイルは、約4割が標的を外れているという。半導体精度が劣る結果に違いない。

     


    (6)「ロシア当局は、中国のファウンダリーに製造を委託することも検討しているが、中国政府が支援に乗り出す兆候はほとんどない。半導体大手の幹部は「家電や携帯電話、PC、データセンターの分野では、国外メーカーのほとんどがロシアに製品を供給していない。たとえ中国製のレガシー(旧世代の)半導体を搭載している製品でも供給されていない」と話す。また、中国の習近平国家主席がウクライナ戦争を非難しようとしないにもかかわらず、スマートフォンのロシアへの販売打ち切りを決めた中国企業もある」

     

    中国は、ロシアからの半導体受託生産を引き受ける兆候を見せていない。これは、米国の「二次制裁」を恐れている結果である。半導体の「母国」は米国である。米国が、あらゆる半導体技術の基本を抑えているので、中国は「二次制裁」を最も恐れている。

     


    (7)「VKクラウド・ソリューションズは、5月にロシア政府に書簡を送り、「数万台規模のサーバー」確保について即時支援を要請したとロシア国内で報道されている。国内企業は欧米企業からサーバーを調達できないうえ、サーバーに搭載する高度な半導体が不足しているためロシアのITメーカーも自社で増産できない状況になっている。米調査会社IDCのデータによると、ロシアが21年に調達した主流の「x86サーバー」は15万8000台に上る。そのうちロシア企業の製造は27%、欧米企業の製造は39%、残りはアジアでの製造だったという」

     

    ロシアのサーバー不足が深刻になっている。数万台規模で必要な状況である。サーバーの国内供給は3割弱である。これも、半導体供給が杜絶すれば国内生産は不可能になる。サーバーの生産が止まれば、ロシア社会はストップする。 

     

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    トルコが、ロシアに対してウクライナとの和平交渉へ真剣に立ち向かうように圧力をかけている。具体的には、ロシ軍用機によるトルコの空域通過を禁止したもの。ロシア軍機は、シリアに向かう際、どうしてもトルコ空域を通過しなければならない。トルコは、その弱点を突いて、ロシアに対してウクライナとの和平交渉に真剣に取り組むように促す目的である。

     

    英『フィナンシャル・タイムズ』(4月24日付)によれば、プーチン大統領は黒海艦隊旗艦『モスクワ』が撃沈されたことから、ウクライナとの和平交渉を放棄したと、されている。トルコは、こういう情報に危機感を持って和平交渉を促していると見られる。

     

    トルコ政府は24日、エルドアン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が電話会談したと発表した。エルドアン氏はウクライナ情勢を憂慮するとともに、停戦交渉を支援するとの意向をゼレンスキー氏に伝えた。ロシアのウクライナ侵攻では、両国と良好な関係にあるトルコが交渉を仲介。3月末にはトルコ・イスタンブールで停戦交渉が行われたが、その後、ウクライナ首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで多数の民間人虐殺が見つかるなどし、交渉への機運がしぼんでいる。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(4月24日付)は、「ロシア軍機の通過拒むトルコ、ウクライナと和平迫る」と題する記事を掲載した。

     

    トルコがシリアへ向かうロシア軍によるトルコ空域の使用を禁止した。トルコ政府がロシアとウクライナの和平交渉を復活させようとするなか、プーチン大統領への圧力を強めるのが狙いだ。

     


    (1)「トルコのチャブシオール外相は、ロシアの軍用機は今後、シリアへ向かう途中でトルコを経由できないと述べた。ロシア政府はシリアでアサド政権を支える重要な役割を担ってきた。トルコ国営放送によると、チャブシオール氏は訪問先のウルグアイで記者団に「ロシアの軍用機だけでなく軍人をシリアへ運ぶ民間機に対してもトルコ領空を閉鎖した」と語った。トルコはウクライナでの戦争が始まった直後に黒海から地中海へ向かう外国軍艦の通航を制限しており、今回の空路封鎖はロシアにとってシリア国内での後方支援をさらに複雑にするとアナリストらは語る」

     

    トルコが、ロシア軍機の空域通過を拒否したので、シリア支援に支障を来たす。ロシアにとっては困った事態だ。ロシアが、「利用可能な空路補給ルート」は、今やイラン、イラク経由だけになったと指摘されている。

     


    (2)「トルコは、ロシア発着の商用機について今後も領空通過を認め、自国経済にとってのロシア人観光客の重要性を踏まえてロシア機に対する領空閉鎖で欧州連合(EU)に追随することを拒んだ。チャブシオール氏は、トルコのエルドアン大統領がプーチン氏に閉鎖の決定を伝え、両首脳は対話を継続していると語った。この問題に詳しい人物3人によると、ウクライナでロシアの新たな攻撃が始まって以来、トルコ政府はシリア入りするロシア軍による空域使用の許可を徐々に縮小してきた。だが、完全に領空を閉鎖し、それを公表する決定は重大な対応強化となる」

     

    トルコのエルドアン大統領は、なかなかの「曲者」である。大国を手玉にとって外交を行なうという大胆さを見せている。プーチン氏を「手なずける」戦術であるが、どうなるか。プーチン氏は、何らかの回答を迫られている。

     


    (3)「
    米フィラデルフィアにある外交政策研究所で中東部門を率いるアーロン・スタイン氏は、米国やその他の国が、トルコに対しシリアを支援するロシア政府への影響力を行使し、プーチン氏に対する圧力を強めるよう要請してきたと話す。「トルコ政府が話に乗るまで多少時間がかかったが、ほぼ2カ月でトルコ政府はウクライナ問題を巡ってロシア政府にシリアに絡めて圧力をかける新たな措置を講じた」と同氏は語った」

     

    このトルコによるロシアへの圧力は、米国などの諸国が依頼していたものという。

     

    (4)「プーチン氏が、第2次世界大戦以来最大の軍事攻撃に乗り出して以来、トルコは微妙な綱渡りを演じようとしてきた。大半の欧州諸国は戦争が始まった後すぐにロシア機に対して自国領空を閉鎖したが、トルコはむしろ仲介役になろうとした。また、トルコは欧米諸国の制裁に加わることには抵抗したものの、ウクライナ軍に武装ドローン(小型無人機)を供給している」

     

    トルコは、何かにつけてウクライナ側に立っている。ウクライナでの戦争が始まった直後に、黒海から地中海へ向かう外国軍艦の通航を制限した。ロシア軍艦もこの通航制限によって制約を受けている。ウクライナ軍に武装ドローンも供給している。この武装ドローン製造企業(民間)は、エルドアン大統領の女婿とされている。ロシアは、トルコに武装ドローンの供給停止を求めたが、「民間企業の活動に関与しない」との理由で拒否している。

     


    (5)「トルコが、いくつかの広い地域を実質的に支配し、大規模な軍事プレゼンスを持つシリアに関してロシアに圧力をかける政府の決定は、エルドアン氏とプーチン氏の複雑な関係を浮き彫りにする。両首脳は近年、親密な個人的関係を築いたが、シリアやリビア、カフカス地域の係争地ナゴルノカラバフの戦場では繰り返し、互いに対立する側に立ってきた。トルコ政府はウクライナとロシアの和平交渉を仲介しようとした。両国の交渉担当者は3月、4月とトルコでハイレベル会合を2度開いたが、ロシア部隊がウクライナの民間人に残虐行為を働いたとされたことで交渉は進まなかった」

     

    トルコが、ロシアへシリア関連で圧力をかけたのは「和平交渉にもっと真剣に臨むよう」ロシアに強いる狙いだと指摘しされている。これが、ロシアへの圧力となって和平交渉は始まるであろうか。

     

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    米国が3月23日(現地時間)、ロシアのプーチン大統領へ先手を打った。核攻撃や化学兵器・生物兵器の使用を封じるべく、ロシア軍の非人道的攻撃を国際法による「戦争犯罪」であると宣言したのだ。

     

    戦争犯罪とは、戦争における国際法に反する行為である。第二次世界大戦以前より認められてきた法規で、戦時法規の違反者が敵国にとらえられた場合に処罰された。第二次世界大戦後には、平和に対する罪と人道に対する罪が戦争犯罪に加えられた。

     

    米国が、ロシア軍の行為を戦争犯罪であると宣言した以上、国際法によって訴えられることになった。ロシア軍としては、大きな汚名を着せられたもので、ますます大義のない「集団殺人行為」として告発される。

     


    米『CNN』(3月24日付)は、「米、ロシア軍の行為は『戦争犯罪』 公式に宣言」と題する記事を掲載した。

     

    米政府は23日、ロシア軍がウクライナで戦争犯罪を犯したと公式に宣言した。ブリンケン国務長官が声明で発表した。ブリンケン氏は「我々の評価は公表された、また情報機関のソースからの入手可能な情報の精査に基づいている」と述べた。これまでブリンケン氏やバイデン大統領、シャーマン国務副長官は個人的意見として戦争犯罪が発生したとの見解を示していた。

     

    (1)「米政府はこの数週間、ウクライナの市民に対する攻撃を戦争犯罪と公式に表明しておらず、今回の正式な非難は大きな一歩となる。ただ、戦争犯罪に加担した疑いのある者やプーチン大統領個人に責任を負わせられるかは不明。バイデン氏は先週、プーチン氏は「戦争犯罪人だと考える」と発言していた」

     

    バイデン米大統領は、プーチン氏を「戦争犯罪人」と呼んできた。今回のウクライナ侵略を指揮したのはプーチン氏である以上、最終責任を負うべきである。東京裁判では、東条英機(元首相)らが最終責任を問われた。このケースから言えば、プーチン氏も同じである。

     

    (2)「ブリンケン氏は23日、「最終的には、この犯罪に管轄権のある裁判所が個別の事件で刑事犯罪を決定する責務を担う。米政府は戦争犯罪の報告の追跡を続け、必要に応じて同盟国やパートナー、国際機関や組織に情報を共有する」と述べた。ブリンケン氏は集合住宅や学校、病院の破壊を含む、無差別攻撃や故意に市民を狙った攻撃に関する「信頼できる報告」があると言及した。国務省は特にウクライナ南部マリウポリの産科病院と劇場への攻撃に触れ、劇場には「子どもたち」というロシア語の言葉が空から見える状態で記されていたと指摘した」

     

    ロシア軍の無差別攻撃は、「戦争犯罪」そのものである。厳しく罰して,再発を防がなければならない。米国のバンシャーク国際刑事司法担当特使は、米国がどの件について戦争犯罪と評価したのかについて詳細には踏み込めないとしたうえで、米国が「ロシア軍の関与を広範囲に見ている」と述べている。

     


    (3)「ブリンケン氏は、プーチン氏が軍の行為に関して責任を負うかとの質問に、「指揮系統を上へとあがることが可能な国際法や国内法の理論がある」と答え、報告の追跡を続け情報共有を行うと語った。また、将来の説明責任のために証拠を収集し保存しておくことが不可欠だとの認識も示した」

     

    東京裁判における東条英機らへの死刑判決は、軍の行為に関して最終責任を負わせた例である。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月24日付)は、「プーチン氏参加ならG20お断り=キャメロン元英首相」と題する寄稿を掲載した。筆者は、デービッド・キャメロン氏である。2010~16年に英首相を務めた。

     

    「米大統領閣下、バリ島へようこそ。夕食会であなたとご一緒するのは、大量殺人を行った戦争犯罪人のウラジーミル・プーチンです」。今われわれが行動しなければ、今年10月にインドネシア・バリ島で開く主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、こうしたシーンが展開されることになる。

     


    (4)「私には、次のような米英政府からの反対の声が聞こえる。「G20はわれわれの所有物ではなく、対話の場は重要だ」。確かにその通りだ。しかし、G20の会議は、権威と尊敬の念を示すものでもある。ロシアのプーチン大統領がウクライナで既に行ったこと、今行っていることを見れば、G20がこうした場になるとは考えられない」

     

    中国は、ロシアをG20から排除することに反対している。有力な仲間が排除されれば、「徒党」を組む相棒がいなくなるからだ。

     


    (5)「過去1カ月間にわれわれが目にしてきたのは、これまでとは別次元の状況だ。独立した民主主義の主権国家に対し、第2次世界大戦と同様の残虐さで全面侵攻したのだ。そして2014年にわれわれは、プーチン氏の当時の行為を理由に、ロシアを主要8カ国(G8)の枠組みから排除した」

     

    ロシアが、ウクライナを「同じ民族が反ロシア行為をするから侵略する」とは許しがたい行為である。主権国家の存在を無視した暴挙であり、戦争犯罪に該当する。ロシアは2014年、クリミア半島侵略でG8から追放されている。

     

    (6)「『同じ考えの国々がボイコットしたとしても、G20は中止にならない。われわれの声が届かなくなるだけだ』。だから、今始めるべきなのだ。米国と英国が先制的に発表すれば、大きなインパクトがあるだろう。欧州連合(EU)およびG20に加盟するEU諸国(ドイツ、フランスとイタリア)と協力して発表できればなお良い。プーチン氏が現状のまま居座り、戦争を続けているとしたら、カナダ、日本、韓国やオーストラリアが出席するとは思えない。ここまでの国々で、G20の国内総生産(GDP)の約3分の2、世界のGDPの半分以上を占める。われわれの外交官には、アルゼンチン、ブラジル、インド、メキシコ、サウジアラビアと南アフリカ共和国の説得にあたるよう指示すべきだろう」

     

    ロシアによる今回のウクライナ侵略は、クリミア半島侵略以上の犯罪行為を行なっている。G20からの追放が当然である。こういう侵略常習国が、G20へ平然として出席することは許されないであろう。

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    ロシアが、ウクライナ侵略を始めて、すでに3週間を経過している。ロシア軍は、4人の将軍と8000名の兵士を失ったと報じられた。ロシアは、緒戦で大きく躓いている。現在、ウクライナ領へ侵攻した陸軍は、戦線立直しで動きを止めている。

     

    軍事専門家は、ロシア軍のもたつきが制空権を握れなかったことにあると指摘する。今後も、ウクライナ軍が制空権を守れれば、ロシア軍の消耗によって戦局はウクライナ軍へ有利に展開するという。さて、どうなるかだ。西側諸国は、ウクライナへ一段のテコ入れが必要である。

     

    米『CNN』(3月18日付)は、「ウクライナ、制空権の戦いでいつまで持ちこたえられるか」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻以来最も驚いた点は、ロシアがまだウクライナ領空の制空権を握れていないことだろう。

     


    (1)「データを見る限り、ロシアの軍事力からすれば地上での早期勝利に加え、空軍が素早く制空権を確保するはずだった。飛行機の数ではロシアが1391機に対してウクライナは132機、ヘリコプターではロシアが948機に対してウクライナは55機だ。そうした戦力があってもウクライナ側の抵抗を抑えるのに必要な空域の支配権を握れていない。軍事予算で見れば、ロシアは458億ドル(約5兆4000億円)とウクライナの10倍近い」

     

    ウクライナ軍は、ロシア軍に対してあらゆる点で劣勢である。それをはね返して守り抜いているのは、情報を駆使した機略性にある。

     

    (2)「元空軍将校から政府関係者に至るまで専門家から聞こえてくる意見は、ロシアの失敗が3つの組み合わせによるものだということだ。

    1)ロシア側の準備不足

    2)ウクライナが諜報に基づき賢明な資源の使い方をしていること

    3)西側からウクライナへの狙いを絞った武器の供与

    エストニア軍の元司令官リホ・テラス氏は「私の知る限り、彼ら(ウクライナ軍)はロシアが破壊する前に飛行機を飛行場から移動させて、空軍の大部分を温存できた。これは攻撃前の諜報によるものだ」と語った。

     

    緒戦におけるロシアの失敗は、上記3点の組み合わせによるという。なかでも、「準備不足」とは呆れる。長いこと、ウクライナ国境線で「演習」を積んできたはずだ。ウクライナに威圧を与える「軍事演習ショー」とすれば、高い代価についた。

     

    (3)「英ロンドン大学キングスカレッジのフリーマン航空宇宙研究所の研究員で元英空軍将校のソフィー・アントロバス氏は、戦争の初期段階でウクライナが賢い対応をしたため、同国は今その恩恵にあずかっていると指摘する。同氏は「ウクライナがロシアの航空機を撃ち落とせる全ての資源を投入しなかったことは賢い。これにより、ロシアが安全に関して誤信した可能性があり、ウクライナは味方からの補強が届く中で空域の防御を保ち続けている」と語る」

     

    ウクライナは、緒戦で航空機を出撃させずに温存している。「いざ、決戦」という段階で投入するのだろう。ロシア軍は、これを見誤って自己過信に陥った。ロシアの「戦略負け」である。

     

    (4)「ウクライナ軍の補強では、S300対空システム、スティンガー、ジャベリンミサイルなどが含まれ、ウクライナ軍がこれらを使用している。こうしたミサイルシステムの存在はウクライナ軍の劇的な性能向上を示すものだ。米下院外交委員会の幹部、マイケル・マコール議員はCNNに対し、ロシア製のS300は米国がウクライナに送ったスティンガーミサイルよりも「より高高度の」能力を持っていると指摘する。「S300は、ある種我々のパトリオットミサイルのようなもので、高高度の防空システムだ。これらが国内にあり、さらに多くが運び込まれるという状況は非常に効果的だ」(同氏)」

     

    ロシア製のS300が、ウクライナ軍にとって有力「助っ人」になっている。「敵製武器」で、ロシア軍を追詰めているのだ。

     

    (5)「確かにこうしたミサイルシステムは効果的かもしれないが、ウクライナが空と地上でロシア軍の進軍をいつまで阻止できるかには疑問が残る。ロシア軍がはるかに強大であること、北大西洋条約機構(NATO)が直接の関与や飛行禁止区域の設定を嫌がっていること、そして戦争が長引くほどウクライナが致死性の武器供給で味方への依存度を高めることは依然として事実だ。前述のアントロバス氏は、戦争がどれほど続くかは、プーチン氏がこの勝利にどれほどの戦力を投入するのか、またシリア内戦のアサド政権支援でロシア軍が行った戦術を繰り返すかどうかに一部かかっているとの見方を示す

     

    ウクライナ戦争が、どれだけ長引くか。ひとえにプーチン氏の決断次第である。シリア内戦のような惨劇を厭わないのか、どうかも関わってくる。その場合、ウクライナの戦車攻撃能力の高さを計算に入れなければならない。

     


    (6)「アントロバス氏は、プーチン氏がシリアのような極限状態まで行くと決めれば、ロシアのリスクはより高まることになると語る。「ウクライナが保有し、また供給を受けようとしている防空武器があるからだ」という。
    また同氏は、ロシアが中長期の検討をしなければならない状況にあるとの認識も示す。装備や人員の面で、他の利益の代償にどれほど多くを失う意思があるのかという点についてだ。ロシアはウクライナ国内の標的に対するミサイル攻撃を行う多くの場面で、ウクライナ国外から爆撃機を発進させなければならない状況にある

     

    ロシア軍は現状で、市街地戦を回避している。ウクライナの戦車攻撃能力の高さを考えれば、むざむざ「墓場」へ突入するような危険性を伴うからだ。ウクライナを広く面で支配しない限り、ロシアは制空権を握ったとは言えない。航空機が、地上から攻撃されて撃墜されるからだ。

     


    (7)「ウ
    クライナがどれほど確実に領空を防衛できるかは、西側同盟国にどこまでその意思があるかにかかっている。プーチン氏が、犠牲の多い戦争をどれほど長い間正当化できるかは、ウクライナが確実に領空を守れる期間の長さで決まってくる。ウクライナ軍はロシア軍の猛攻撃に反抗し、際立った成果をあげてきた。だが戦闘が長引くにつれて、国を守る者の運命は他国の手と忍耐力に委ねられることになる」

     

    ウクライナ戦争の行方は、ウクライナが確実に制空権を守れる期間の長さで決まるという。西側諸国は、ロシアに制空権を渡さない工夫と努力が不可欠である。西側諸国の責任になってきたのだ。

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