勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ウクライナ経済ニュース時評

    a0960_008417_m
       

    ウクライナ軍は、旧ソ連時代の兵器体系に慣れ親しんできた。この特性を生かすべく、米国は数十年前に入手した旧ソ連製防空システムをウクライナ軍へ提供する。この意表をつく作戦にロシア軍は驚くであろう。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月22日付)は、「米、旧ソ連製ミサイル防衛システムをウクライナに提供」と題する記事を掲載した。

     

    米国はウクライナ軍を支援するため、何十年も前にひそかに入手した旧ソビエト連邦製兵器をウクライナに提供している。複数の米当局者が明らかにした。

     

    (1)「米国は、情報専門家に点検させ、米軍の訓練に役立てる目的で少数の旧ソ連製ミサイル防衛システムを入手していた。今回ウクライナに提供するのは対空ミサイルシステム「SA-8」など。ウクライナ軍はソ連解体後にこの種の兵器を受け継いでおり、慣れている」

     

    ポーランドが、ソ連製戦闘機「ミグ21」をウクライナへ提供したいと米国へ提案した件は、米国の反対で白紙になった。米国は、ロシアとの直接戦闘を回避するのが基本戦略である。米国の最大の「仮想敵」は中国である。雌雄を決する「世紀の戦い」の前に、中国へ手の内を見せる戦争をしたくないのだ。それだけ、余裕を残したいという戦術である。

     


    (2)「米国防総省は、ほとんど知られていない旧ソ連製兵器を提供するという判断についてコメントを控えた。バイデン政権はウクライナの防空能力の強化に取り組んでいる。米当局者によると、ウクライナに提供する兵器にベラルーシの「S-300」は含まれない。米政府はウクライナの防空能力を高め、同国が設定を要請している飛行禁止区域(NFZ)を実質的につくり出したい考えだ」

     

    米国は、旧ソ連製の対空ミサイルシステム「SA-8」などをウクライナへ提供するという。ウクライナが、米国へ切望しているロシア機の飛行禁止区域(NFZ)設定に代わる機能を構築する意向である。NFZ設定には、NATO(北大西洋条約機構)も否定している。設定によって、ロシア軍との直接戦闘に陥るリスク回避が目的である。戦線拡大が、人命損失を招くという理由である。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル(3月22日付)は、「ロシア、ミサイル攻撃多用 ウクライナへ圧力強化」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアはウクライナの首都キエフやオデッサなど各地への攻撃を続けている。ウクライナに南部と東部の領土を放棄させることを狙い、ロシアは作戦の転換を図っているとの見方がある。

     

    (3)「ロシアの軍事侵攻に停滞が目立つ中、民間人が住む地域への空爆が増えてきた。ウクライナ政府への圧力を強化し、譲歩を引き出したり要求をのませたりすることを目的とした消耗戦の様相も呈している。一方、ジョー・バイデン米大統領は今週、欧州を訪れる。対ロシア制裁や人道支援などについて、北大西洋条約機構(NATO)や先進7カ国(G7)、欧州連合(EU))の首脳らと話し合うとみられる。ロシア外務省は21日、米国との2国間関係は「崩壊寸前」だと警告した。同日に米国のジョン・サリバン駐ロシア大使を召喚し、ウラジーミル・プーチン大統領を「戦争犯罪人」と呼んだバイデン氏に抗議した」

     


    ロシアは、市街戦による被害増大を恐れて、ミサイル攻撃を行っている。これによって、ウクライナ側を恐怖に陥れ、ロシアに有利な停戦に持込もうという狙いだ。ウクライナ側は、停戦にはウクライナ国民の賛成が必要と切り返している。ミサイル攻撃の恐怖に屈しないという意思表示なのだ。

     

    (4)「戦闘が膠着状態に陥っているキエフ周辺では、ロシア軍は砲撃や長距離ミサイル攻撃でウクライナ軍の陣地破壊を狙ったとみられ、21日は集中砲撃の轟音がほぼ絶え間なく鳴り響いた。ロシアは、武器庫として使われているとみなすショッピングモールを破壊した。ロシア国防省は21日、攻撃の様子を映した動画などを公開。ウクライナがキエフ近くの前線にいるロシア軍に向けてミサイルを発射するために駐車場を使っていた証拠なども示されているとした。ウクライナ当局によると、この攻撃で少なくとも8人が死亡した」

     

    ロシア軍が、下線のようなミサイル攻撃の動画を公開している理由は、ウクライナ市民へ厭戦気分を高めて、ロシアに有利な停戦条件を引き出す狙いである。

     


    (5)「ウクライナ側では、ロシア工作員が潜入して自軍のための標的探しを行っているとの懸念が広がっている。キエフの市長は現地時間21日午後8時から35時間の外出禁止令を発表した。南部の港湾都市マリウポリでは、ロシアがウクライナ軍に投降を要求。ウクライナのイリナ・ベレシチューク副首相は投降の選択肢がないと述べ、ロシアに対して民間人を安全に退避させるよう求めた」

     

    ウクライナ人が、ロシアへ抱く敵愾心は価値観の違いに基づく。ロシア人の中世的道徳観に対して、ウクライナ人は親西欧の近代価値観に憧れているのだ。旧ロシア帝国への郷愁は、ウクライナ人にゼロである。こういう状況で、ウクライナがロシアへ「白旗」を掲げる可能性はない。ロシアは、無益な戦争を仕掛けていることに気付くべきなのだ。

     

     

     

     

    テイカカズラ
       

    ロシアは、隣国ウクライナを侵略して無条件降伏を迫っている。21世紀の現在、想像もできない現実が起こっている。

     

    ロシアは、ウクライナ南部の都市マリウポリのウクライナ軍に対し、武器を放棄し同市を去るよう要求したが20日、ウクライナは回答期限前に拒否した。近日中に、ウクライナ軍は米国から最新武器が到着する手はずという。ロシアが、こうした傍若無人な振る舞いをしている裏に何があるのか。

     

    それは現在、ロシア正教会がウクライナ正教会と紛争を起していることが原因である。ロシアは、現代の「十字軍」気取りでウクライナにおいて残虐行為を働いている。残酷なプーチン氏とロシア正教会の指示によるものだ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月18日付)は、「プーチン氏の戦争、背後に『ロシア世界』思想」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア正教の指導者であるモスクワ総主教のキリル1世は最近、ウクライナで続く戦争について、正義と悪の黙示録的戦いに他ならないと語った。彼によれば、この戦争の結末は「神の加護を受けられるか否かという人類の行方」を決めることになる。

     

    (1)「ウラジーミル・プーチン大統領は、今回のウクライナ侵攻の目的が一部のウクライナ人の解放だとしており、キリル1世の説明によれば、その一部のウクライナ人は、世界の支配者と称する国々が提供する価値観的なものを拒否しているという。その価値観とは、同性愛者の権利を主張する「ゲイ・プライド」のパレードに代表されるものであり、「こうした諸国に仲間入りする際の」踏み絵の役割を果たしている、と彼は語った。「こうした諸国」とは欧州連合(EU)と、もっと広く西側諸国を指している」

     


    ロシア正教会は1054年、キリスト教が東方教会(ロシア正教会)と西方教会(カトリック教会)に大分裂して以来の歴史を持つ
    。それだけに、ロシア正教会が高い気位に支配されていることは容易に推測がつく。

     

    (2)「ロシア正教は、プーチン氏の地政学的野望を支えるイデオロギーの形成に積極的役割を果たしてきた。その世界観は、現在のロシア政府をロシアのキリスト教文明の守護者と見なすものであり、それゆえ、ロシア帝国と旧ソ連の版図にあった国々を支配する試みを正当化する。ウクライナ生まれの神学者で、キリル1世のアドバイザーを務めた経験を持つシリル・ホボラン神父によれば、こうした考え方は共産主義崩壊後のロシアがイデオロギーの空白を埋めようとする中で生まれたもので、長年迫害されてきたロシア正教が、新たに開けた公共の場で影響力を持つのと同時進行してきた」

     

    下線部は重要である。ロシア政府が、ロシア帝国と旧ソ連の版図にあった国々を支配する正統性を持つという、とてつもない時代錯誤に陥っている。ウクライナ侵略は、ロシアの権利であるという驚くべき現代の「十字軍」意識だ。十字軍とは、11世紀末から13世紀にかけての200年間、7回もキリスト教徒が聖地エルサレムをイスラム教徒から奪還するために行なった遠征である。

     

    (3)「こうした2つの互恵的な力の合流が「ソ連崩壊後の市民宗教」、言い換えれば「ルスキー・ミール(ロシア世界)」という思想の原点になったという。ルスキー・ミールという言葉は11世紀に生まれたもので、現在のロシア・ベラルーシ・ウクライナの大半を含む東スラブ語圏のことを意味する

     

    プーチン氏の脳裏を支配しているのは、ソ連崩壊後の空白とロシア正教会の失地回復が重なりあったものである。これは、プーチン発言の端々に現れている。自らの行為を正統化しているのだ。「ルスキー・ミール(ロシア世界)」の再現である。

     


    (4)「プーチン氏にとってルスキー・ミールは、旧ソ連やそれ以前のロシア帝国の領土を含むロシアの正当な勢力圏を意味する言葉だ。プーチン氏は、ウクライナ侵攻の3日前の2月21日、「ウクライナはわれわれにとって単なる隣国ではない。ウクライナはわれわれの歴史・文化・精神世界と不可分の存在だ」と語っていた。ロシア正教はこの言葉を信奉し、そこに宗教的色彩を加えた。その宗教的意味合いの中では、ウクライナが特別な役割を担っている。ロシア正教の起源は、10世紀にキエフ地域の人々が一斉にキリスト教に改宗した、いわゆるルーシ・カガン国のキリスト教化にある

     

    下線部は、重要である。ロシア正教の起源がキエフ地域にあるとしている。ロシアが、ウクライナへ「十字軍」を送る理由になっているのだ。

     

    (5)「ウクライナでは、ルスキー・ミールの宗教的概念は、政治的概念と同様の抵抗に直面した。ウクライナの正教会信者の多くはロシアが主導する正教会に属しているが、ウクライナにはかなりのカトリック信者のほか、モスクワからの独立を求めてきたウクライナの正教会の信者もいる。2019年に世界的な東方正教会の宗教指導者、コンスタンチノープル総主教のバルトロメオ1世はその独立を認めた」

     

    ウクライナの正教会は2019年、世界的な東方正教会コンスタンチノープル総主教から独立を認められた。ロシア正教会とは別の組織であり、「ルスキー・ミール」でないという認識である。この紛議が、今回のウクライナ侵略の背景にある。

     


    (6)「この決定は東方正教会内に深刻な亀裂をもたらした。さまざまな国の教会が、モスクワ側についたり、コンスタンチノープル側についたりした。キリル1世はバルトロメオ1世との交流を中止し、バルトロメオ1世が「ウクライナ人とウクライナに住むロシア人を精神的にロシアの敵に作り替える」後押しをしていると嘆いた。プーチン氏はバルトロメオ1世が米政府の命令に従っていると非難した」

     

    ウクライナ正教会の独立が、ロシア正教会の敵意をつくり出した。ロシアの侵略が、ウクライナで殺戮を引き起していても、ロシア正教会は何らの精神的苦痛も感じないとすれば、もはや宗教としての存在意義を問われる事態だ。

     


    (7)「ロシア国内で、ルスキー・ミールは深く宗教的な響きを得ている。特に軍においては。ロシア軍に詳しいイスラエル・ライマン大学のドミトリ・アダムスキー教授によると、正教会の聖職者は軍の士気を高め、愛国心を促す。ロシアで核戦力を扱う陸海空の3つの軍には、いずれも守護聖人がいる。正教会はまた、シリア内戦におけるロシアの役割について、少数派のキリスト教徒を守るための「十字軍」だとして熱心に宣伝していたという」

     

    ロシアの核部隊に、ロシア正教会の守護聖人がいるという。となると、ロシア正教会の正統性を守るために「核投下」という悪魔的な決定を下すのだろうか。こうなると,正気の沙汰とは言えない。

    テイカカズラ
       

    ロシアによる無差別攻撃で、ウクライナ国民は避難せざるを得なくなっている。すでに、出国した人々を含めれば、1000万人が生活の基盤を奪われている。日本へは70人の人々が在日の親族を頼り入国した。

     

    ウクライナ侵攻では、ロシア正教会がプーチン氏の侵略行為を正当化しており、多くの波紋を呼んでいる。ウクライナには4000万人のロシア正教徒がいるとされる。ウクライナ国民にとって、この侵略戦争が正教会によって「聖戦」とされるならば、いったいどこへ精神的な救いを求めれば良いのか。二重の苦しみに押しつぶされている。

     

    『日本経済新聞』(3月20日付)は、「ウクライナ避難民 1000万人迫る」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアが侵攻したウクライナで人道危機が深まっている。国連機関は18日、ウクライナ国内で避難生活をしている住民が推計650万人にのぼると発表した。国外への避難民とあわせると1000万人に迫る。総人口の5人に1人以上にあたり、さらに1200万人以上が攻撃で退避を阻まれているという。

     

    (1)「英BBCは18日、南東部マリウポリを包囲していたロシア軍が中心部に入り、市街戦になっていると報じた。ロシアにはアゾフ海に面したマリウポリを掌握し、海上輸送路を絶つ狙いがある。ウクライナ軍参謀本部は18日にアゾフ海への接続を「一時的に奪われた」と明らかにした。首都キエフ市は同日までに民間人60人を含む222人が死亡したと発表した。英国防省はロシアが戦略転換を迫られ「消耗戦」に移ったと分析する」

     


    ウクライナ南東部のマリウポリが、ロシア軍の侵攻で市街戦になっている。ロシア軍が消耗戦へ突入したと分析される。こうした状況では、双方で人命の損失が激増するだけに早期停戦が求められる。

     

    (2)「ウクライナのゼレンスキー大統領は19日のビデオ声明で「対話はロシアが過ちによる被害を減らす唯一の手段だ」と述べ、即時の和平協議を促した。BBCはトルコ高官の話として、ロシアのプーチン大統領がゼレンスキー氏との会談に意欲を示したと伝えた。停戦条件を巡る双方の主張は隔たり、攻撃による被害は拡大している。ゼレンスキー氏は「ロシア軍による当初の占領計画は失敗した」と述べた。いま対話を始めなければロシアの損失が膨らみ、数世代にわたり悪影響が及ぶと訴えた。同氏は侵攻前からプーチン氏に直接協議を求めていたが、ロシアは応じてこなかった」

     

    ウクライナ大統領は、ロシア大統領に対して直接協議を求めている。市街戦による被害が甚大であることから、早期の直接協議が必要になっているのだ。

     


    (3)「ロシアは駆け引きを続けている。BBCによると、プーチン氏は17日のトルコ大統領との電話協議で、侵攻を止める条件にウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟断念や中立化の確約、ロシアに脅威を与えない形での「非武装化」などを挙げた。直接会談での決着に前向きな構えも示したという。交渉の長期化も懸念される。ウクライナ政府高官は18日、和平協議は数週間以上かかる可能性があるとの見解を示した。米ブルームバーグ通信が報じた。ロシアの対話姿勢が時間稼ぎにすぎないとの見方もある」

     

    侵略者のロシアが、「無条件降伏」を求めるとは、なんとも不条理な話である。こうした事態の裏には、ロシア正教会がプーチン氏に「正義の御旗」を与えているという事情がある。無辜の民を地獄へ落とす戦争を容認する、ロシア政教とは「何者か」。

     


    『ロイター』(3月20日付)は、「ウクライナ侵攻による正教会の混乱、孤立するロシア総主教」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア正教会のキリル総主教が、ロシアによるウクライナ侵攻に高らかな祝福を与えたことで、世界中の正教会は分裂の危機に陥り、専門家から見ても前代未聞の反乱が正教会内部で生じている。

     

    (4)「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の盟友であるキリル総主教(75)は、今回の戦争について、同性愛の受容を中心に退廃的であると同師が見なす西側諸国への対抗手段であると考えている。キリル総主教とプーチン大統領を結びつけるのは、「ルースキー・ミール」(ロシア的世界)というビジョンだ。専門家の説明によれば、「ルースキー・ミール」とは、旧ソ連領の一部だった地域を対象とする領土拡張と精神的な連帯を結びつける構想だという」

     


    ロシア正教会は1054年、キリスト教が東方教会と西方教会に大分裂して以来の歴史を持つ。そのロシア正教会の総主教が、プーチン氏の盟友とされるのだ。総主教は、ウクライナ侵略を聖戦として認めるという、卒倒しそうな「教義」である。イエス様は、嘆き悲しんでいるに違いない。

     

    (5)「プーチン氏にとってはロシアの政治的な復権だが、キリル総主教から見れば、いわば十字軍なのである。だが総主教の言動は、ロシア国内にとどまらず、モスクワ総主教座に連なる諸外国の正教会においても反発を引き起こしている。ロシアでは、「平和を支持するロシアの司祭」というグループに属する300人近い正教徒が、ウクライナで行われている「非常に残忍な命令」を糾弾する書簡に署名した。この書簡には、ロシア政府とウクライナ政府の板挟みになっている数百万もの人々に触れ、「ウクライナの人々は、銃口を突きつけられることなく、西からも東からも圧力を受けることなく、自らの意思による選択を行うべきだ」と書かれている」

     


    ウクライナ正教会は、
    モスクワ総主教の庇護下にある。だが、財政的には完全に独立し、大幅な裁量を持つ自治を行ってきた。在外ロシア正教会は2007年、モスクワ総主教の庇護下で自治正教会に準ずる扱いを受けることになった。ただし2018年、ウクライナ正教会が、ロシア正教会からの独立をめぐって交渉が決裂したままだ。こうした、正教会をめぐる紛争が、プーチン氏によって利用され侵略を容認されるという事態を招いている。天上のイエス様から見れば、地上の教会の争いが政治に利用されている現実に、さぞや嘆き悲しんでいるであろう。「天罰」はどちらに下るのか。

    このページのトップヘ