勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: ウクライナ経済ニュース時評

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    米国防総省は18日、ウクライナの首都キーウへのロシア軍のミサイル集中攻撃で損傷した米国製地対空防空システム「パトリオット」について、復旧したと明らかにした。同省のシン副報道官は「パトリオット1基が損傷したが、修復された。完全に復帰し運用可能な状態だ」と説明した。『CNN』(5月19日付)が報じた。

     

    これを裏付けるように18日未明、ロシア軍がウクライナ全土へ19発のミサイルが撃ち込んだが、18発を撃墜している。「パトリオット」の修復の結果であろう。

     

    『CNN』(5月18日付)は、「ウクライナ全土に空襲警報 ミサイル30発のうち29発を撃墜」と題する記事を掲載した。

     

     ウクライナ当局は18日、全土規模で同日未明に空襲があり、首都キーウや他州で爆発音が響いたと報告した。空襲警報も全土で発令された。

     

    (1)「キーウのクリチコ市長は、首都のドニプロウスキーなど複数の地区で爆発が発生したとSNS上で伝えた。同市の軍行政部門責任者によると、防空網が迎撃態勢を敷き、一部地区では飛行体などの残骸が落下して火災が発生した。死傷者の人数や有無、被害の程度を調べているとした。市民に対し空襲警報が終わるまで避難施設内にとどまるよう呼びかけた。中部ビンニツァ州でも防空部隊が応戦した。同州の軍行政部門責任者は「我々は今、敵による巡航ミサイルの新たな波状攻撃に遭っている」とSNSに書き込んだ。ウクライナ軍の南部作戦管区は南部オデーサ州の港湾都市オデーサの産業施設に18日未明、ロシア軍のミサイル1発が着弾し、1人が死亡、2人が負傷したことを明らかにした」

     

    18未明のウクライナ全土へのミサイル攻撃では、南部オデーサ州の港湾都市オデーサの産業施設にミサイル1発が着弾し、1人が死亡、2人が負傷を負った。これ以外の地域では、すべてミサイルを撃墜している。

     

    (2)「ウクライナ空軍はこの後、ロシア軍による17日夜からの一連の攻撃について撃ち込まれた巡航ミサイルは30発としてうち29発を無力化したとの声明をSNS上で発表。これら攻撃は数波にわたり、異なった方向から仕掛けられたとした。海上、空中や地上からの発射を組み合わせていたとも述べた。攻撃型ドローン(無人機)の2機と偵察用ドローンの2機も撃墜したとつけ加えた」

     

    17日夜からウクライナ全土へミサイル30発が打ち込まれ。うち29発を撃墜した。「パトリオット」の一部損傷が修復した結果であろう。

     

    『CNN』(5月19日付)は、「ゼレンスキー氏、『攻撃旅団が準備中』 詳細は示さず」と題する記事を掲載した。

     

     ウクライナのゼレンスキー大統領は18日、ウクライナ軍の上級指揮官らとの会合後、同軍の攻撃旅団が戦闘の準備を行っていることを示唆した。ただし具体的な情報は明らかにしなかった。ゼレンスキー氏は「攻撃旅団はいい状態で、我々は準備中だ。だが詳細は言わない」と述べた。

     

    (3)「ウクライナ軍はここ数日で前線に沿って陣地を大きく広げており、予想されている反転攻勢がすでに進行中なのではないかとの臆測を呼んでいる。ある米高官はCNNに準備段階にあたる「形成作戦」が先週始まったと明らかにしたが、ウクライナは反攻が正式に始まったとまだ明言していない。ロシア軍はこのところ、首都キーウなどウクライナ各地へ激しいミサイル攻撃を行っている。ゼレンスキー氏は、ウクライナ軍が防空システムやミサイル備蓄の強化、部隊の訓練、長距離兵器の確保を優先すると述べた」

     

    16日未明に始まったロシア軍のウクライナへの集中的なミサイル攻撃で、ウクライナはさらに反攻作戦準備を入念にしている感じだ。「パトリオット」の増加や長距離兵器の確保によって、一挙に反攻作戦を開始する意向と受け取れる。

     

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    ウクライナ軍は、気象条件の回復を待って領土奪回作戦を行うとしている。防衛側に立つロシア軍は、深刻な人員と弾薬の不足に直面しているとの分析が、米国家情報長官によって明らかにされた。ロシア側の攻撃主力部隊になっている民間軍事会社ワグネルのプリコジン氏は、弾薬不足を理由にして、5月10日に撤退すると発表。ロシア軍の弾薬不足は深刻な様子である。

     

    米『CNN』(5月5日付)は、「『ロシア、今年大きな攻撃は不可能』米国家情報長官」と題する記事を掲載した。

     

     ヘインズ米国家情報長官は4日、ウクライナとロシアの戦争について、ウクライナ軍の反攻の成否にかかわらず、ロシア軍は弾薬と人員の不足により「今年大きな攻撃」をかけることはできないとの見方を示した。

     

    1)「ヘインズ氏は上院軍事委員会に対し「実際、ロシアが強制動員を開始せず、イランなど既存の供給元に加えて第三者からのかなりの弾薬供給を確保しなければ、小さな攻撃すらロシアにとっては続けることが難しくなるだろう」と述べた。さらに、ヘインズ氏はロシアのプーチン大統領について、「おそらく」ウクライナにおける短期的な野心を縮小したと指摘。「ウクライナの東部と南部の占領地支配を強固にし、絶対にウクライナを北大西洋条約機構(NATO)の加盟国としない」ことを勝利と考えていると付け加えた。

     

    プーチン氏は、勝利の条件として東部・南部の占領地とウクライナのNATO加盟阻止に固執すると見られる。これらが、認められない限り、和平交渉に応じないのだろう。

     

    2)「ただ、こうした評価にもかかわらず、ロシアが今年停戦を交渉する可能性は高くないと同氏は述べた。政治的な要素が「プーチン氏の考えを変える」ことがない限り、そうした交渉に入る公算は極めて低いとした。また、ロシア軍はウクライナ軍の反攻に備えて「新たな防衛態勢」を整えつつあり、「4月に獲得した領土は、その前の3カ月のどの月よりも少なかった」と説明した。

     

    停戦交渉は、今年中に行う可能性が低いとしている。来年が、ロシア大統領選であるので弱みを見せられないというのであろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月5日付)は、「ワグネル、10日にバフムト撤退表明『弾薬不足で損失』」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの民間軍事会社ワグネルの創始者エフゲニー・プリゴジン氏は5日、激しい戦闘が続いているウクライナ東部の要衝バフムトから部隊を10日に引き揚げると表明した。弾薬不足が解消されず、部隊に重大な損失が生じているためとした。

     

    (3)「プリゴジン氏は、通信アプリ「テレグラム」で「弾薬不足で我々の損失は日々飛躍的に増大している」と撤退の理由を説明し、代わりにロシアの正規軍を投入するよう求めた。撤退表明に先立ってワグネルの兵士だとする複数の遺体の前で撮影したビデオも投稿した。弾薬の補充が足りないと主張し、ゲラシモフ参謀総長やショイグ国防相を強く批判していた。プリゴジン氏はこれまでも発言を撤回したことがあり、実際にバフムトから撤退するかは不透明だ。弾薬の供給を巡りロシア軍に圧力をかける狙いの可能性もある。ロシアのペスコフ大統領報道官は5日、プリゴジン氏が主張した弾薬の供給不足の指摘について「コメントできない」と記者団に述べた」

     

    ワグネルは、撤退日を5月10日としている。これは、5月9日が「祖国大勝利記念日」であることへの配慮であろうか。実際に、撤退するかどうかは不明だが、弾薬不足を理由にしていることは看過できないことだ。米国家情報局長の発言を裏付けているのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月2日付)は、「激戦地でロシア兵2万人死亡、半数がワグネル 米政府」と題する記事を掲載した。

     

    米政府高官は1日、ロシアが侵攻するウクライナ東部ドネツク州の最激戦地バフムト周辺などで2022年12月以降に2万人以上のロシア人が死亡したとの推計を示した。その半数がロシアの民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員だと明らかにした。

     

    (4)「米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は1日、記者団に「バフムトでの大規模な攻勢は失敗した。ロシアは高い代償を伴った」と述べた2万人の死者を含む死傷者は計10万人ほどに達し、軍事品の在庫を使い果たしたとも指摘。ワグネルはロシアの刑務所から採用して戦地に派遣しており、犠牲者の多くは元囚人だったとの認識を示した。カービー氏は、「十分な戦闘訓練や指導などがないまま、戦地に送り込まれた」と話した。

     

    ロシアの死傷者数は、昨年12月以降に10万人に達している。武器弾薬を使い果たしたと見られるのだ。終戦間際、敗色濃厚な日本軍を思わせるようなニュースである。

     

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    ロシア軍は、武器・弾薬・兵士の「戦闘三点セット」が底をつくという「軍事大国」らしからぬ異常事態に落込んでいる。ウクライナ側は、こういう苦衷をすべて把握しており、ロシア軍を追詰める展望を明らかにする余裕を見せている。それによると、年内にヘルソン州を奪回し、来年夏までに戦闘を終わらせる計画を立てている。

     

    だが、ロシア軍にもメンツがある。ヘルソン州が簡単に奪回されると、クリミア半島への水源確保などに支障を来たすことから、ドニプロ川西岸に塹壕を掘るなどして抵抗を続ける構えを見せているという。

     


    米『CNN』(10月21日付)は、「
    ロシア軍、南部反攻の阻止に注力 ウクライナ軍参謀本部」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍参謀本部のオレクシー・フロモウ氏は21日までに、ロシア軍の最優先任務は南部前線を維持することだとの見解を示した。

     

    (1)「フロモウ氏によると、ロシアは南部ヘルソンに向かうウクライナ軍を押しとどめるため、塹壕を掘ったり追加のリソースを投入したりする策を講じている。ロシア軍は部分的動員の第1波の助けを借りつつ、ドニプロ川西岸に展開する兵士を増やすことで南部前線を維持する計画だという。水路の要衝であるドニプロ川では最近、両岸で戦闘が発生している。フロモウ氏はまた、ヘルソン州に40個を超えるロシア軍の大隊戦術群が展開していることも示唆した。1個大隊戦術群は通常、約1000人の人員で構成される」

     

    ドニプロ川西岸に展開するロシア軍は、これまで2万5000人程度とされたが、新たな情報では、40個を超える大隊(約4万人)という大部隊を結集している模様。ロシアが、残存兵力をかき集めて投入している感じだ。ただ、ドニプロ川西岸のロシア軍はウクライナ軍による高機動砲「ハイマース」による攻撃で、兵站線が潰され孤立させられている。すでに、ロシア軍総司令官は撤退を示唆するほど苦戦を強いられているほどだ。

     


    (2)「プーチン政権にとって、ヘルソンやザポリージャ、ミコライウといった南部方面は、クリミア半島につながる陸上回廊や半島への水供給を維持する観点から戦略的価値がある。ミコライウ州やオデーサ州の制圧に向けた橋頭堡(ほ)を将来的に築き、ウクライナの海洋国家としての地位を奪う意味でも南部は戦略的価値が高いという」

     

    ウクライナは、西側諸国の武器支援によってロシア軍を追詰めている。ただ、ロシア軍も簡単に撤退できない事情がある。ヘルソン州の持つ象徴的意味合いだ。ヘルソン州からの撤退は、ウクライナ侵攻が敗北したというイメージになる。ロシア軍も引くに引けない苦しい立場であろう。それでも、ウクライナ側は最終的な勝利を確信している。

     

    『CNN』(10月20日付)は、「来夏までにウクライナ勝利、ロシアの敗北必至 国防省情報総局長」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ国防省情報総局のキリロ・ブダノフ総局長(少将)は20日までに、ウクライナは今年末までに「重要な勝利」を収め、戦争は来年の夏までに「終わるであろう」との予測を示した。

     

    (3)「情報総局が公表した発言内容で、ロシアの敗北は不可避であって止められないとし、ロシアの破壊につながるだろうとも主張。ウクライナが握るとする重要な勝利については「まもなくわかるだろう」とした。この勝利に、ロシアが占領するウクライナ南部のヘルソン市が含まれることを期待するとも述べた。ウクライナ軍はここ数週間、同市などで大きな戦果を得ている。総局長は「来年春の終わりには戦争は終わるであろうし、夏までには全てが終わるであろう」とも占った」

     

    下線のように、ロシア軍の敗北を見通す「強気」観測を披露するに及んでいる。これは、戦局に対する絶対的な自信をのぞかせている証拠であろう。西側諸国50ヶ国の軍事支援を受けて、「負けるはずがない」という不敗の自信を見せていると言えよう。ロシア軍の士気の低さと武器弾薬の欠乏が、その最大の拠り所であろう。

     


    (4)「ウクライナが1991年時点での国境線を取り戻す意向も表明。2014年にロシアが一方的に併合したウクライナ・クリミア半島と親ロシア派勢力が占領した東部のドネツク、ルハンスク両州の奪回を意味するとした。また、ロシアはウクライナで核兵器の投入はしないだろうとの見方も表明。理論的には使うことができるだろうが、そうなればロシア連邦の崩壊への道のりを速めるだけとなると指摘。「彼らはこのことを十分に理解しているし、我々が望むほど愚かではない」とも説いた」

     

    ウクライナ軍が、1991年の国境線を取り戻すとは、クリミア半島まで奪回する意思を示している。こういう最終局面で、ロシア軍は核を使う懸念も残っている。ただ、ロシアが核を使えば、ロシアとプーチン氏の国際的な立場が消える懸念もつきまとっている。核を使って、「最終勝者」になれる保証がないのだ。

     


    (5)「また、「ロシア大統領府の指導者たちは、ウクライナ戦争の主要な目標について一致しており、それは敗北を喫しないことだ」と強調。「ハト派」もいれば「タカ派」もいるが、共に情勢が非常に悪化していることは認識しているとし、現状から抜け出すための方途についての意見が若干異なっているだけだと説明した。その上で、「一部の者は戦争をやめ、ある種の平和的な解決方法を模索すべきと明確に理解している」とし、「(侵攻を)続けなかったり、敗れたりしたら、ロシアは存在しなくなると判断している者もいる」と続けた」

     

    ロシア国内では、「ハト派」と「タカ派」が対立しているという。世上、プーチン氏がすべてを決めているとされるが、核だけは別格な感じである。西側は、軍部自身に対して「核投下への報復」を通告済である。仮に、プーチン氏が投下を命じても、軍部が拒否するという事態も想定の一つに入れている感じだ。

     

    (6)「ロシア大統領府内の現在の判断について、「もはや勝利の問題ではなく、敗北しないことが問題になっている」と分析。ウクライナが勝利すれば、「非常に深刻な政治的なプロセスが、現在のロシア連邦の組織の変化と組み合わせた形で始まるだろう」とも締めくくった」

     

    ウクライナ軍の勝利は、ロシア連邦の解体をもたらす。また、核使用の際もロシア連邦は解体の憂き目に遭おう。いずれに転んでも、ロシアには過酷な運命が待っている感じだ。 

     

     

     

     

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    ウクライナ軍は、旧ソ連時代の兵器体系に慣れ親しんできた。この特性を生かすべく、米国は数十年前に入手した旧ソ連製防空システムをウクライナ軍へ提供する。この意表をつく作戦にロシア軍は驚くであろう。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月22日付)は、「米、旧ソ連製ミサイル防衛システムをウクライナに提供」と題する記事を掲載した。

     

    米国はウクライナ軍を支援するため、何十年も前にひそかに入手した旧ソビエト連邦製兵器をウクライナに提供している。複数の米当局者が明らかにした。

     

    (1)「米国は、情報専門家に点検させ、米軍の訓練に役立てる目的で少数の旧ソ連製ミサイル防衛システムを入手していた。今回ウクライナに提供するのは対空ミサイルシステム「SA-8」など。ウクライナ軍はソ連解体後にこの種の兵器を受け継いでおり、慣れている」

     

    ポーランドが、ソ連製戦闘機「ミグ21」をウクライナへ提供したいと米国へ提案した件は、米国の反対で白紙になった。米国は、ロシアとの直接戦闘を回避するのが基本戦略である。米国の最大の「仮想敵」は中国である。雌雄を決する「世紀の戦い」の前に、中国へ手の内を見せる戦争をしたくないのだ。それだけ、余裕を残したいという戦術である。

     


    (2)「米国防総省は、ほとんど知られていない旧ソ連製兵器を提供するという判断についてコメントを控えた。バイデン政権はウクライナの防空能力の強化に取り組んでいる。米当局者によると、ウクライナに提供する兵器にベラルーシの「S-300」は含まれない。米政府はウクライナの防空能力を高め、同国が設定を要請している飛行禁止区域(NFZ)を実質的につくり出したい考えだ」

     

    米国は、旧ソ連製の対空ミサイルシステム「SA-8」などをウクライナへ提供するという。ウクライナが、米国へ切望しているロシア機の飛行禁止区域(NFZ)設定に代わる機能を構築する意向である。NFZ設定には、NATO(北大西洋条約機構)も否定している。設定によって、ロシア軍との直接戦闘に陥るリスク回避が目的である。戦線拡大が、人命損失を招くという理由である。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル(3月22日付)は、「ロシア、ミサイル攻撃多用 ウクライナへ圧力強化」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアはウクライナの首都キエフやオデッサなど各地への攻撃を続けている。ウクライナに南部と東部の領土を放棄させることを狙い、ロシアは作戦の転換を図っているとの見方がある。

     

    (3)「ロシアの軍事侵攻に停滞が目立つ中、民間人が住む地域への空爆が増えてきた。ウクライナ政府への圧力を強化し、譲歩を引き出したり要求をのませたりすることを目的とした消耗戦の様相も呈している。一方、ジョー・バイデン米大統領は今週、欧州を訪れる。対ロシア制裁や人道支援などについて、北大西洋条約機構(NATO)や先進7カ国(G7)、欧州連合(EU))の首脳らと話し合うとみられる。ロシア外務省は21日、米国との2国間関係は「崩壊寸前」だと警告した。同日に米国のジョン・サリバン駐ロシア大使を召喚し、ウラジーミル・プーチン大統領を「戦争犯罪人」と呼んだバイデン氏に抗議した」

     


    ロシアは、市街戦による被害増大を恐れて、ミサイル攻撃を行っている。これによって、ウクライナ側を恐怖に陥れ、ロシアに有利な停戦に持込もうという狙いだ。ウクライナ側は、停戦にはウクライナ国民の賛成が必要と切り返している。ミサイル攻撃の恐怖に屈しないという意思表示なのだ。

     

    (4)「戦闘が膠着状態に陥っているキエフ周辺では、ロシア軍は砲撃や長距離ミサイル攻撃でウクライナ軍の陣地破壊を狙ったとみられ、21日は集中砲撃の轟音がほぼ絶え間なく鳴り響いた。ロシアは、武器庫として使われているとみなすショッピングモールを破壊した。ロシア国防省は21日、攻撃の様子を映した動画などを公開。ウクライナがキエフ近くの前線にいるロシア軍に向けてミサイルを発射するために駐車場を使っていた証拠なども示されているとした。ウクライナ当局によると、この攻撃で少なくとも8人が死亡した」

     

    ロシア軍が、下線のようなミサイル攻撃の動画を公開している理由は、ウクライナ市民へ厭戦気分を高めて、ロシアに有利な停戦条件を引き出す狙いである。

     


    (5)「ウクライナ側では、ロシア工作員が潜入して自軍のための標的探しを行っているとの懸念が広がっている。キエフの市長は現地時間21日午後8時から35時間の外出禁止令を発表した。南部の港湾都市マリウポリでは、ロシアがウクライナ軍に投降を要求。ウクライナのイリナ・ベレシチューク副首相は投降の選択肢がないと述べ、ロシアに対して民間人を安全に退避させるよう求めた」

     

    ウクライナ人が、ロシアへ抱く敵愾心は価値観の違いに基づく。ロシア人の中世的道徳観に対して、ウクライナ人は親西欧の近代価値観に憧れているのだ。旧ロシア帝国への郷愁は、ウクライナ人にゼロである。こういう状況で、ウクライナがロシアへ「白旗」を掲げる可能性はない。ロシアは、無益な戦争を仕掛けていることに気付くべきなのだ。

     

     

     

     

    テイカカズラ
       

    ロシアは、隣国ウクライナを侵略して無条件降伏を迫っている。21世紀の現在、想像もできない現実が起こっている。

     

    ロシアは、ウクライナ南部の都市マリウポリのウクライナ軍に対し、武器を放棄し同市を去るよう要求したが20日、ウクライナは回答期限前に拒否した。近日中に、ウクライナ軍は米国から最新武器が到着する手はずという。ロシアが、こうした傍若無人な振る舞いをしている裏に何があるのか。

     

    それは現在、ロシア正教会がウクライナ正教会と紛争を起していることが原因である。ロシアは、現代の「十字軍」気取りでウクライナにおいて残虐行為を働いている。残酷なプーチン氏とロシア正教会の指示によるものだ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月18日付)は、「プーチン氏の戦争、背後に『ロシア世界』思想」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア正教の指導者であるモスクワ総主教のキリル1世は最近、ウクライナで続く戦争について、正義と悪の黙示録的戦いに他ならないと語った。彼によれば、この戦争の結末は「神の加護を受けられるか否かという人類の行方」を決めることになる。

     

    (1)「ウラジーミル・プーチン大統領は、今回のウクライナ侵攻の目的が一部のウクライナ人の解放だとしており、キリル1世の説明によれば、その一部のウクライナ人は、世界の支配者と称する国々が提供する価値観的なものを拒否しているという。その価値観とは、同性愛者の権利を主張する「ゲイ・プライド」のパレードに代表されるものであり、「こうした諸国に仲間入りする際の」踏み絵の役割を果たしている、と彼は語った。「こうした諸国」とは欧州連合(EU)と、もっと広く西側諸国を指している」

     


    ロシア正教会は1054年、キリスト教が東方教会(ロシア正教会)と西方教会(カトリック教会)に大分裂して以来の歴史を持つ
    。それだけに、ロシア正教会が高い気位に支配されていることは容易に推測がつく。

     

    (2)「ロシア正教は、プーチン氏の地政学的野望を支えるイデオロギーの形成に積極的役割を果たしてきた。その世界観は、現在のロシア政府をロシアのキリスト教文明の守護者と見なすものであり、それゆえ、ロシア帝国と旧ソ連の版図にあった国々を支配する試みを正当化する。ウクライナ生まれの神学者で、キリル1世のアドバイザーを務めた経験を持つシリル・ホボラン神父によれば、こうした考え方は共産主義崩壊後のロシアがイデオロギーの空白を埋めようとする中で生まれたもので、長年迫害されてきたロシア正教が、新たに開けた公共の場で影響力を持つのと同時進行してきた」

     

    下線部は重要である。ロシア政府が、ロシア帝国と旧ソ連の版図にあった国々を支配する正統性を持つという、とてつもない時代錯誤に陥っている。ウクライナ侵略は、ロシアの権利であるという驚くべき現代の「十字軍」意識だ。十字軍とは、11世紀末から13世紀にかけての200年間、7回もキリスト教徒が聖地エルサレムをイスラム教徒から奪還するために行なった遠征である。

     

    (3)「こうした2つの互恵的な力の合流が「ソ連崩壊後の市民宗教」、言い換えれば「ルスキー・ミール(ロシア世界)」という思想の原点になったという。ルスキー・ミールという言葉は11世紀に生まれたもので、現在のロシア・ベラルーシ・ウクライナの大半を含む東スラブ語圏のことを意味する

     

    プーチン氏の脳裏を支配しているのは、ソ連崩壊後の空白とロシア正教会の失地回復が重なりあったものである。これは、プーチン発言の端々に現れている。自らの行為を正統化しているのだ。「ルスキー・ミール(ロシア世界)」の再現である。

     


    (4)「プーチン氏にとってルスキー・ミールは、旧ソ連やそれ以前のロシア帝国の領土を含むロシアの正当な勢力圏を意味する言葉だ。プーチン氏は、ウクライナ侵攻の3日前の2月21日、「ウクライナはわれわれにとって単なる隣国ではない。ウクライナはわれわれの歴史・文化・精神世界と不可分の存在だ」と語っていた。ロシア正教はこの言葉を信奉し、そこに宗教的色彩を加えた。その宗教的意味合いの中では、ウクライナが特別な役割を担っている。ロシア正教の起源は、10世紀にキエフ地域の人々が一斉にキリスト教に改宗した、いわゆるルーシ・カガン国のキリスト教化にある

     

    下線部は、重要である。ロシア正教の起源がキエフ地域にあるとしている。ロシアが、ウクライナへ「十字軍」を送る理由になっているのだ。

     

    (5)「ウクライナでは、ルスキー・ミールの宗教的概念は、政治的概念と同様の抵抗に直面した。ウクライナの正教会信者の多くはロシアが主導する正教会に属しているが、ウクライナにはかなりのカトリック信者のほか、モスクワからの独立を求めてきたウクライナの正教会の信者もいる。2019年に世界的な東方正教会の宗教指導者、コンスタンチノープル総主教のバルトロメオ1世はその独立を認めた」

     

    ウクライナの正教会は2019年、世界的な東方正教会コンスタンチノープル総主教から独立を認められた。ロシア正教会とは別の組織であり、「ルスキー・ミール」でないという認識である。この紛議が、今回のウクライナ侵略の背景にある。

     


    (6)「この決定は東方正教会内に深刻な亀裂をもたらした。さまざまな国の教会が、モスクワ側についたり、コンスタンチノープル側についたりした。キリル1世はバルトロメオ1世との交流を中止し、バルトロメオ1世が「ウクライナ人とウクライナに住むロシア人を精神的にロシアの敵に作り替える」後押しをしていると嘆いた。プーチン氏はバルトロメオ1世が米政府の命令に従っていると非難した」

     

    ウクライナ正教会の独立が、ロシア正教会の敵意をつくり出した。ロシアの侵略が、ウクライナで殺戮を引き起していても、ロシア正教会は何らの精神的苦痛も感じないとすれば、もはや宗教としての存在意義を問われる事態だ。

     


    (7)「ロシア国内で、ルスキー・ミールは深く宗教的な響きを得ている。特に軍においては。ロシア軍に詳しいイスラエル・ライマン大学のドミトリ・アダムスキー教授によると、正教会の聖職者は軍の士気を高め、愛国心を促す。ロシアで核戦力を扱う陸海空の3つの軍には、いずれも守護聖人がいる。正教会はまた、シリア内戦におけるロシアの役割について、少数派のキリスト教徒を守るための「十字軍」だとして熱心に宣伝していたという」

     

    ロシアの核部隊に、ロシア正教会の守護聖人がいるという。となると、ロシア正教会の正統性を守るために「核投下」という悪魔的な決定を下すのだろうか。こうなると,正気の沙汰とは言えない。

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