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中国が今秋の党大会前に、台湾侵攻するとの情報がロシア機密文書から漏れ、SNSで拡散されて話題になった。習氏が、党大会前に台湾侵攻を実現し、それをテコに国家主席3選を確実にするというもの。

 

中国が台湾侵攻しても、短期間に勝利できる保証はどこにもないのだ。敗北リスクの高い現状で、そのような危険な賭に出るのか、はなはだ疑問の多い情報である。ただ、チェックの必要性はあるので俎上に上げてみる。

 


『中央日報』(3月18日付)は、「習近平主席、今年秋に台湾武力侵攻 ロシア機密報告書がSNSに」と題する記事を掲載した。

 

台湾を武力で掌握することを考慮したと、台湾メディアがロシア情報機関の連邦保安局(FSB)報告書を引用して16日(現地時間)報じた。台湾自由時報、CNEWSなどによると、ロシアの人権運動家オセチキン氏は最近、フェイスブックに公開したFSBの機密報告書を引用し、このように明らかにした。

 

(1)「FSBの機密報告書は、中国の習近平国家主席が今年秋に第20回党大会を開催する前、台湾を武力で侵攻するという内容だ。また、習主席が第20回党大会前に台湾を収復し、党大会で自身の主席3期目を順調に確定するという内容もあった。ただ、こうした計画はロシアのウクライナ侵攻で支障が生じ、中国が台湾を武力掌握する可能性は低いという。文書の真偽に関連し、ロシアの安保専門家クリスト・グロゼフ氏がFSB元・現職員2人に見せた結果、「文書は疑う余地なくFSBの同僚が作成した」という返答を受けた」

 


中国が、台湾だけと戦う前提であれば、「短期戦」という仮定をするかも知れない、だが、「クアッド」や「AUKUS」という台湾防衛組織が出来上がっている現在、中国の思惑通りに短期戦で済むはずがない。中国敗北の場合、習氏は責任をとって国家主席辞任もありうる。これほどリスキーな戦争を手軽に始める筈がない。

 

(2)「台湾の呉釗燮外交部長(外相)は、「該当文書の真偽は確認できない」と明らかにした。しかし中国の台湾攻撃の有無とは関係なく、台湾は常にどこでも防御を準備する必要があると強調した。FSBの報告書が伝えられると、中国国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は「国家の主権と領土を守るという決意に変わりはない」とし、「『台湾独立』分裂勢力が挑発と圧力、さらにレッドラインを越えれば、やむを得ず措置を取らなければならない」と述べた」

 


台湾は常時、中国警戒姿勢を続けなければならない。今回の、ウクライナ戦争で台湾の愛国心は一段と燃え上がっている。ウクライナが、あれだけの抵抗戦を続けている以上、台湾も不屈の戦いをしなければ世界中の笑い者になるのだ。

 

(3)「台湾の邱国正国防長官(国防相)は昨年10月上旬、台湾立法院(国会)に出席し、自身が軍人になって以降40年間で今が最も重大な時期だと評価した。邱長官は「中国はすでに台湾を侵攻する力量を持っているが、相当な費用を支払うことになるはず」とし「2025年になれば中国が支払う費用が減り、全面的に台湾を侵攻する力を備えることになる」という見方を示した」

 

中国による2025年台湾侵攻説が、よく唱えられている。次期台湾総統選が行なわれるのは2024年。現政権の後継も民進党であれば、中国が戦争を仕掛けるという仮定である。中国が勝利できるかどうかで、習氏の運命が決まる際どい戦争である。

 

中国軍が、戦略上からみて台湾侵攻に賭けるだろうか。日本の軍事専門家は、次のように見ている。

 

『毎日新聞』(3月17日付)は、「ウクライナ侵攻は台湾有事に連動しない」と題する記事を掲載した。筆者は、軍事アナリストの小川和久氏である。

 

中国軍が台湾に侵攻し、占領するためには、台湾軍の兵力の3倍、およそ100万人規模の陸軍部隊を投入する必要がある。これは第二次世界大戦末期の連合国軍によるノルマンディー上陸作戦に匹敵する規模である。

 


(4)「しかし、中国本土と台湾の間には幅130キロの台湾海峡がある。ここで100万人規模の陸軍部隊が渡洋上陸作戦を行うには、3000万トンから5000万トンの船腹量が必要となる。船積みの計算の基本は世界共通で、人間1人は4容積トン、重さ40トンの戦車を90容積トンほどで計算するからだ。船舶保有量6200万トンの中国は、経済活動をすべて停止しなければ海上輸送能力を捻出することはできない。さらに、上陸作戦が可能な海岸線の問題がある。3000人規模の機械化部隊の上陸には、岩礁などがない幅2キロの海岸線が必要とされる。その上陸適地は台湾本島の海岸線約1200キロのうち10%しかない」

 

中国軍は、台湾軍の3倍である100万の大軍を台湾へ輸送しなければならない。これに必要な船舶は、6200万トンにも上がる。民間船まで動員しなければ不可能である。だが、台湾海峡で潜水艦攻撃を受けるから、まともに台湾へ上陸可能な兵員は半分以下となろう。台湾上陸地点は台湾の海岸線の1割程度。そこへ台湾軍が待ち伏せ攻撃すれば、ほぼ殲滅の危険性が高まる。つまり、中国軍の台湾侵攻は、「言うは易く行なうは難し」なのだ。

 


(5)「ここに、対艦戦闘能力を突出させた台湾の海空軍と、台湾を自国の国益に位置づける米国の来援という条件が加わる。中国側は、戦闘機を中心とする作戦用航空機の数こそ台湾側を圧倒しているが、可動率や航空作戦に不可欠な早期警戒管制機、空中給油機と電子戦など、能力の点で難がある。特に米軍の支援があった場合、中国側は航空優勢(制空権)を握ることはできない。日本の専門家が口にすることはないが、ハイテク化されるほどに重要性を増していくデータ中継衛星をはじめとする軍事インフラでも、中国は米国に20年の差をつけられている」

 

メディアでは、中台保有の航空機数の比較を行なっている。だが、航空作戦に不可欠な早期警戒管制機、空中給油機と電子戦など、総合能力の点で中国に難がある。中国が、台湾の制空権を握れる可能性は低くい。中国軍が、制空権を握れないで台湾へ上陸すれば、「蜂の巣」にされるだけである。負け戦になるのだ。

 


(6)「このような条件を前に、台湾侵攻の作戦を立案する中国軍の軍人はいない。筆者との突っ込んだ議論でも、中国軍側は「台湾が独立を宣言すれば、侵攻作戦が失敗することがわかっていても武力を行使する。そのときは日本も無事ではいられない。だから、日本としても台湾独立を煽(あお)らないようにしてほしい」と、台湾侵攻能力がないことを率直に認めている」

 

中国には、率直に言って台湾侵攻能力がない。習氏は、口では勇ましいことを発言するが、その実力は備わっていないのが現実である。