台湾半導体トップ企業TSMCは、2月24日に開所式を行う。半導体産業の日台協力の第一歩が始まる。米中対立を背景に半導体ブームに沸く日本で、台湾の半導体関連企業が事業を広げつつある。受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に新設する工場にだけでなく、再興を目指す日本の半導体産業全体に商機があるとみて、過去2年間に少なくとも9社が日本に進出、あるいは既存拠点を拡充したことがロイターの取材で明らかになった。
『ロイター』(2月22日付)は、「日本の半導体に台湾勢が商機 『脱・中国』で事業拡大」と題する記事を掲載した。
(1)「用途ごとに異なるカスタム半導体の設計を手掛けるアルチップ・テクノロジーは、日本進出の1社だ。同社は、2003年10月に日本支社を開設し、自動車用半導体を製造するルネサスエレクトロニクスなどと取引してきたが、ここへ来て日本で人員の増強を進めている。事情に詳しい関係者によると、アルチップは22年時点で大半の技術者を中国に置いていたが、中国国外へ移し始めており、異動先の多くが日本だという。同社はロイターの問い合わせに対し、日本と北米、台湾で採用活動を行っているとしたが、人事に関するこれ以上のコメントを控えた」
半導体の設計を手掛けるアルチップは、22年時点で大半の技術者を中国に置いていた。現在すでに、中国国外へ移し始めており、異動先の多くが日本という。
(2)「取材に応じたアルチップ・ジャパンの古園博幸ゼネラルマネージャーは、日本政府がポスト5G、AI(人工知能)などを積極的に支援しており、「新しいプロジェクトが次々と生まれている」と説明した。古園氏は「日本の半導体市場は成長が期待できる」とした上で、「すでにいくつかの優良なプロジェクトに参画している」と語った。ロイターの取材によると、22年以降に日本へ進出したり事業を拡大した台湾の半導体関連企業は、TSMCが約35%の株式を持つ設計会社のグローバル・ユニチップ・コーポレーション(GUC)など少なくとも9社あった。GUCは、日本に注目する理由として、能力の高い技術者と商機の広がりを挙げている」
ロイターの取材によると、22年以降に日本へ進出したり事業を拡大した台湾の半導体関連企業は、TSMCが約35%の株式を持つ設計会社のグローバル・ユニチップ・コーポレーション(GUC)など少なくとも9社ある。
(3)「メモリー半導体回路の設計開発を支援するイーメモリー・テクノロジーは22年4月、イーメモリージャパンを設立し、神奈川県のJR新横浜駅近くにオフィスを構えた。TSMCの技術者だった何明洲(マイケル・ホー)社長は、「オフィスを開設してから顧客との会話が増えた」と話す。今は設計と営業部隊11人を抱える。業界関係者によると、9社以外にもさらに多くの台湾企業が日本での事業開始に向けて検討中だという」
業界関係者によると、9社以外にもさらに多くの台湾企業が日本での事業開始に向けて検討中だという。台湾で経済政策の司令塔を担う「国家発展委員会」トップの龔明鑫・主任委員(大臣に相当)は、「従来は日本の製造装置・材料メーカーが(TSMCの工場が集まる)台湾に投資してきた。今回は台湾企業が日本に大規模投資し、生産拠点を作る点で大きな意義がある」と強調する。『日本経済新聞 電子版』(2月22日付)が報じた。
(4)「『日の丸半導体』再興の流れに弾みをつけたのはTSMCの誘致成功で、同社が熊本県菊陽町に建設を進めてきた工場は2月24日に開所式を迎える。同工場に製造装置を納めるフィネステクノロジーは九州に自社工場を建設しており、受託材料分析サービスのマテリアル・アナリシス・テクノロジーは昨年末に九州に新研究所を開設した。複数の関係者によると、半導体設計のマーケテック・インターナショナルもTSMCの生産能力拡張と足並みをそろえる。
TSMCと密接な関連を持つ企業が、続々と熊本へ工場や研究所を建設している。
(5)「TSMCは第2工場の建設も計画。さらに日本の官民で最先端半導体の量産を目指すラピダスが北海道千歳市に、金融大手SBIホールディングスは台湾の力晶積成電子製造と組んで宮城県大衡村に工場を新設する予定で、いちど失った半導体産業が日本に再び集積しつつある。武者リサーチの武者稜司代表は、米国が中国との「デカップリング」を模索していたところに円安が進み、半導体産業を中心に受け皿としての日本の重要性が高まったとみる。「産業力から見て中国の生産を代替できる国は日本しかない」と語る。日本貿易振興機構(JETRO)によると、台湾の対中直接投資は23年に前年比39.8%減少し、30億3681万ドル(4557億円、1ドル=150円換算)だった。一方、日本の財務省によると、対日投資は2697億円と同46.9%増加した」
台湾企業は、対中投資を減らして対日投資を増やしている。台湾の脱中国が、鮮明になっている。TSMCの日本進出が、台湾関連企業を大挙、日本へ「引き連れる」形になっている。これは、大きな流れだ。