勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済ニュース時評

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    台湾メディア『中時新聞網』は6日、「9日間の日本旅行で激疲れした」という女性の投稿を掲載し反響を呼んでいるという。欧米人では、2週間以上の「長旅」が普通であるが、アジア人は「駆け足で見て回る」が旅行と心得ている。この旅行スタイルの違いが、「激疲れ」か「心の癒やしか」の違いになるのだろう。かく言う私もかつては“駆け足派”、一カ所にゆっくり止まったほうが、記憶にも長く残るもの。今になって気付かされている。

     

    アジア人の旅行は、「詰め込み型」が多いと指摘されている。1日に35スポットを回り、都市を短期間で移動する。「元を取る」意識が強いとされる。特に、有名な「写真スポット」を巡って満足する。これが結果として、体力消耗を起こしやすくなる理由だ。そう言われれば、スイスのマッターホルンで、椅子に腰かけてじっと座っている欧米人が多かった。天を突き抜けるようなマッターホルンの山容に見惚れていたのだろう。私たちは、その側をけたたましく通過した。心の中で笑われていたに違いない。恥ずかしい限りだ。

     

    欧米人は、移動そのものを楽しむ。カフェで2時間も読書する。公園で昼寝をする。美術館で半日を費やす。1都市に長期滞在する。アジア人は、「移動=義務」になりがちで、 疲労が蓄積しやすい。欧米は長期休暇が当たり前である。2週間〜1か月は、仕事を完全に離れる。だから、「休むための旅行」になる。アジアは短期休暇が多く、短い期間で最大限楽しもうとするため、疲れやすくなるのであろう

     

    『レコードチャイナ』(7月8日付)は、「9日間の日本旅行で激疲れ、投稿に共感集まる台湾メディア」と題する記事を掲載した。

     

    台湾メディア『中時新聞網』(7月6日付)は、「9日間の日本旅行で激疲れした」という女性の投稿が反響を呼んだことを伝えた。

     

    (1)「記事によると、この女性は最近、SNSのThreads(スレッズ)に「日本を9日間旅行してから、やっと大勢の人が海外旅行の日数を45日にする理由が分かった」と投稿した。旅が9日間に及ぶと体力の消耗がひどく、ホテルの部屋もいろいろな物で散らかってしまい、チェックアウト前の荷物整理にもかなりの時間がかかったという」

     

    9日間の旅行は、長いほうだ。どういうスケジュールであったか不明だが、きっと色々とスケジュールを立てたに違いない。地方であれば、ゆっくり過ごせたであろう。大都会の9日間は刺激の連続である。

     

    (2)「記事は、この投稿に1万8000件以上の「いいね」が寄せられたことを紹介し、大勢のネットユーザーが「5日程度がちょうどいい。6日を超えると疲れを感じ始め、家に帰りたいとさえ思ってしまう」と共感を示したことや、中には「以前、11日間の日本旅行に行ったことがあるが、4日目には台湾の食べ物が懐かしくなり、最終日はすごくうれしかった」との声が聞かれたことを伝えた」

     

    確かに、食事が異なることから受ける疲労感はある。通常の食事と変ればイライラも募る。私は、ヨーロッパからの帰国便で、間食に「インスタントラーメン」が出されて生き返った気持ちになった。これも、短期海外旅行でゆったりとしなかった結果であろう。

     

    (3)「一部の人からは、「旅行の日数が問題ではなく、大切なのはスケジュールの組み方。予定を過度に詰め込むことをせず、ペースを落とせば旅行を楽しめる」「日数が短すぎると航空券代がもったいない」という意見や、「日本を10日間旅行したことがあるが、慌ただしいスケジュールではなく、すごく楽しめたよ」との体験談も寄せられたという」

     

    このパラグラフの指摘は、その通りであろう。ゆっくりできる時間を持ち、日本人と会話する機会があれば、日本旅行ははるかに充実したものになったであろう。やっぱり、そこに暮している人々の会話があれば、疲労も軽減されたであろう。惜しいことであった。

     

     

     

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    米国では、与野党問わずに「親中派」をもっとも警戒している。中国の唱える和平論は、中国への譲歩を意味するからだ。西側諸国が、「インド太平洋戦略」を結成しているのは、中国の台湾侵攻への抑制目的である。その守られている台湾の最大野党国民党の鄭麗文主席が、訪中して習近平氏と「肝胆相照らす」会談を行い、南京で強烈な日本批判を行った。これだけで、米国政界が鄭氏を警戒するのは当然であろう。

     

    中国の唱える「和平論」は、皮肉にもこれまで中国が最も警戒した「和平演変論」(和平論を口実に相手国へ革命を仕掛ける)を、台湾に向けて行っていることである。米国は、こういう見方だ。鄭氏は、米国内の世論を完全に見誤り、大きな失点になった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月16日付)は、「台湾・国民党の訪米不発 トランプ氏に会えず、統一地方選に影」と題する記事を掲載した。

     

    台湾最大野党・国民党の鄭麗文主席が、訪米を終えて16日に台湾に戻った。トランプ米大統領との面会は実現せず、政権幹部との会合も公表されなかった。対米パイプの弱さを露呈し、11月の統一地方選にも影を落とす可能性がある。

     

    (1)「鄭氏が米側に伝えたかったのは、国民党は「親中」ではなく、中国と対話しつつ米国とも意思疎通できる「和平の使者」(鄭氏)という点だった。4月に習近平国家主席と会談し、2カ月足らずでの訪米はその立場を直接説明し、米側の不信感を和らげる狙いがあった。鄭氏は、議会関係者やシンクタンクとの面会を重ね、国民党の対中対話路線が抑止力の放棄を意味しないと強調した。台湾海峡の緊張緩和には対話が不可欠であり、米国の利益にも合致すると訴え、国民党の戦略的役割への理解を求めた」

     

    トランプ政権は、「親中」と見られることを極端に嫌っている。 鄭主席は、習近平氏と会談した直後の訪米で、米側は中国に「利用される」ことを警戒した。国民党の「和平路線」は、ワシントンで極めて不信感が強い。これは、 「対話=譲歩」と受け止められやすいからだ。米議会は、超党派で対中強硬路線である。 民進党の方が、米国にとって「信頼できるパートナー」と見られている。米メディアは、鄭氏の動向をほぼ無視した。これは、台湾政治家の訪米として異例の冷遇である。

     

    (2)「こうした説明は、米側の評価を大きく変えるには至らなかった。国民党の対中接近に対する警戒は根強く、「和平」路線は一部で中国寄りの主張と受け止められている。トランプ政権は、鄭氏と接近することで習氏に肩入れしていると受け止められるのを避けたとみられる。鄭氏の主張はトランプ政権が掲げる台湾海峡での過度なエスカレーション回避と軌を一にするが、与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳(ライ・チンドォー)政権の唱える防衛予算の大幅増には反対している」

     

    民進党の対米関係は、極めて強固である。民進党は、米議会・国防総省・シンクタンクとのパイプが、国民党よりも圧倒的に太い状況にある。理由は、米議会が超党派で民進党を支持していることだ。 民主党・共和党ともに「台湾防衛」を重視している結果である。例えば、頼清徳政権は防衛費増額を明確に支持。米国の対中抑止戦略と完全に一致している。蔡英文政権時代に築いた信頼が、今も継続しているのだ。米国の台湾政策は、政権が変わっても「対中抑止」が軸である。民進党は、その文脈で「最も対応しやすいパートナー」と位置づけられている。

     

    (3)「台湾で訪米は、政治的力量を測る試金石とされ、4年に1度の台湾総統選前には候補者が競うように訪米する。誰と会えたかが対米関係の深さとして世論の評価に直結してきた。与党の民進党が対米関係で優位を保ってきた背景にも、歴代政権の積み重ねがある。今回の結果は国民党にとって痛手となりそうだ。中国との関係改善を掲げつつ米国とも関係を維持する「バランス外交」は、前提となる対米パイプの細さという課題を突きつけられた」

     

    地方選の主要争点は何になるか。本来は、内政(物価・住宅・交通)が中心である。今回は、「対中・対米関係」が例外的に重くなるであろう。中国が、台湾封鎖の「予行演習」を恒常化させている。有権者は、敏感に反応せざるを得ない状況である。こういう中で、中国との「和平論」は白旗を掲げろということになりかねないリスクを抱える。

     

    国民党の誤算は、「対話すれば平和になる」という前提がすでに崩壊していることだ。香港の例で、「一国二制度」が簡単に破棄された現実に、台湾社会は完全に目を覚ましている。中国は、「対話」を交渉でなく「服従の入口」と見ているのだ。 これは、米国・日本・豪州の共通認識になっている。国際社会は、台湾に「自衛の意思」を求めている。 その意思が弱い政党は、国民からも信用されないという時代風潮へ変化しているのだ。

     

    (4)「米側の慎重姿勢も影響したとみられる。国民党幹部は鄭氏の訪米中も中国側と接触を重ねており、ワシントンでは警戒感があった可能性が指摘される。米中対立が続くなか、台湾の主要政治家を見る目線は一段と厳しくなっている。今回の訪米は、党としての対米関係の構築力にも課題があることを示した。影響は11月の統一地方選にも及びかねない。内政や生活を巡る課題が争点となる地方選は、今回は対中・対米関係も判断材料に組み込まれる可能性がある。中国の軍事的威嚇がやまない状況で対米関係での劣勢が意識されれば、無党派層を中心に支持に影響する恐れがある」

     

    11月の台湾地方選挙は、国民党が国民からどのように評価されているかを示す機会になる。これは、28年の総統選挙の「予備選」のような位置づけだ。中国の頼政権批判のボルテージはさらに高まり、中国軍の台湾包囲演習は過激になろう。それは、過去の例からみても国民党に不利な結果をもたらしている。台湾世論は、「暴力」に屈しないという強い姿勢を見せているのだ。それが、次回の総統選でも継続するのか。国際世論が注目している点である。

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    (3)「最大の焦点は、訪問後半のワシントンでの日程で、米国の政策決定に近い層との接触レベルが問われる。ハードルは高いものの、トランプ氏との会談が実現すれば象徴的な成果となる。1979年の米台断交後、米大統領と台湾の指導者クラスが直接会談した例はない。極めて異例のケースとなる。その半面、リスクも大きい。トランプ氏や閣僚級との接触が実現しなければ、米国側から距離を置かれているとの印象が広がりかねない。成果が乏しければ、バランス外交の実効性にも疑問符がつき、党内基盤に響く可能性がある」

     

    鄭氏は、南京で行った日本批判が 米政権幹部との面会レベルを確実に下げる要因になっている。閣僚級面会は、ほぼ不可能とされる。NSC(国家安全保障会議)では中堅との面会の可能性はあるが慎重とされている。米議会では、「日本批判=同盟軽視=中国寄り」 と見なすため、最も反発が強くなっている。こうみてくると、鄭氏の米国行脚は厳しい旅行になりそうだ。

     

    (4)「党内では、鄭氏の最大ライバルとみられている台中市長の盧秀燕氏との比較もある。盧氏は春に訪米し、米議会関係者や州政府・市長らと交流した。国民党の関係者は「盧氏以上のレベルで米政界と接触できなければ、痛手になる」と話す。今回の訪米は鄭氏個人の評価にとどまらず、国民党が掲げる外交路線の現実性を見極める試金石となる」

     

    米国が、「信頼する台湾政治家」の特徴は、台湾政治家を好き嫌いではなく、対中戦略上の信頼性で評価している。中国の圧力に屈しない、中国の歴史戦・宣伝戦に乗らない、中国の「和平攻勢」に利用されないという3点だ。 鄭氏は、ここで大きく減点している。

     

    米国が、国民党内で最も評価している人物は、次の3氏に絞られている。

    1)侯友宜(ホウ・ヨウイー)。米国が、最も信頼している国民党政治家である。理由は、対中融和に慎重である。発言が一貫している。治安・行政能力が高い。中国に利用されにくいタイプである。 「国民党の中で最も米国が安心して話せる人物」である。

     

    2)朱立倫(前主席)。米国とのパイプが太い、中国との距離感も比較的バランス型、国際感覚がある。 ワシントンでは、「国民党の中では現実的で扱いやすい」と見られる。

     

    3)盧秀燕(台中市長)。米国は慎重に観察している段階。中国との距離が近いという懸念はある。ただし、鄭氏ほどの危うさはない。 「まだ評価保留」だが、鄭氏よりは信頼度が高いとされている。

     

    この盧氏は、この春に訪米し、米議会関係者や州政府・市長らと交流した。鄭氏の面会相手が、盧氏との面会クラスよりも「下位」であれば、米国の評価が低いことを意味する。気の休まらない米国訪問になりそうだ。

     

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    昨年12月、中国が台湾の周辺で軍事演習を活発化させていた時期に、台湾の最大野党・国民党の鄭麗文党首が原因は台湾の頼清徳総統にあると非難する動画を、中国共産党系のニュースメディアが交流サイト(SNS)に投稿した。この51秒間の動画は中国の短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の中国版「抖音(ドウイン)」に投稿され、フェイスブックやユーチューブなどにも拡散された。

     

    『ロイター』(4月24日付け)は、「中国、台湾野党の「声」を情報戦に活用 SNSで動画を大量拡散」と題する記事を掲載した。

     

    鄭氏は、動画の中で頼氏が台湾の独立を追求することで「(島民)2300万人全員を」「行き止まり、死への道」へ引きずり込んでいると強調した。中国が、国民党など台湾野党の有力議員が台湾政府を批判した公式発言を取り込み、中国国営メディアやSNS上で与党・民主進歩党(民進党)批判のメッセージとして大量に発信していることが、データや関係者の話で明らかになった。こうした動画クリップはその後、フェイスブックやTikTok、ユーチューブ、抖音など台湾で普及しているプラットフォームに転載・拡散され、中国の関与を見えにくくする形に加工・演出されることも多いという。

     

    (1)「台湾の治安当局者らは、こうした中国の動きについて、独立志向がある台湾の頼政権の信頼を傷付ける狙いがあると解説する。治安当局者らによると、台湾人の声や発音はより信頼感を持って受け止められやすい。中国側は以前から台湾の著名人をプロパガンダに利用してきたが、最近のこの手法を一段と強化しているという」

     

    台湾野党は、頼政権批判で中国と組むことが一種の「利敵行為」という認識をもつべきであろう。台湾野党も本心では中国に統一されることを否定している。だが、台湾で政権を取りたいから、中国と手を握るのはあまりにも軽率であろう。

     

    (2)「台湾の治安当局者5人および台北に拠点を置く調査団体、台湾情報環境研究センター(IORG)がロイターに提供したデータによると、中国の国営メディアは国民党と関係のあるインフルエンサーや政治家らを巻き込み、台湾の与党・民主進歩党(民進党)への批判を増幅させようとしている。IORGと3人の安全保障当局者は、民進党が400億ドルの追加防衛支出案を承認するように議会へ求めている中で、中国の軍事力が圧倒的であり、台湾が米国製兵器を調達するために巨額を投じるのは無意味だと台湾人に納得させることも狙っているとの見解を示した」

     

    台湾国民党は、中国によって光り輝いていた香港が現在、没落状況にあることを忘れている。政権欲しさに、中国に利用されるような言動を慎まなければならない。台湾島内では、いくら政権批判しても構わないが、中国へ出かけての台湾政権非難は利敵行為である。

     

    (3)「IORGによると、2025年第4・四半期に中国共産党の公式メディアが運営する1076のアカウントによって抖音に計約56万本の動画が投稿された。うち、約1万8000本が台湾に関する内容だった。IORGが顔認識技術を用いて解析したところ、2730本の動画に57人の台湾人が登場しているのを特定。台湾人の声が収録されたビデオの本数は25年1011月に前年同期の2倍超に膨らんだ。月間投稿時間は2.64倍の369分に跳ね上がった」

     

    中国動画2730本の中に、57人の台湾人が登場しているという。この人達の発言が、加工されて悪用されている。

     

    (4)「動画では、中国との「平和」を訴える発言、頼総統を外部勢力の「駒」と批判する言葉、台湾独立をめぐる民進党の立場を「破壊的」と評した発言などが増幅して拡散された。こうしたクリップの一部は、中国の国営メディアやSNSで流れた後、台湾で普及するプラットホームに転載・再加工されている」

     

    台湾野党が、政権欲しさに中国と組むことは「自殺行為」である。これは、「売国的行為」であろう。批判は、台湾内部で行い中国に利用されることを警戒することだ。

     

    (5)「情報戦は、武力に頼らず台湾を消耗させる北京の戦略の一環といえる。この点で、中国政府との関係強化を重視する国民党が中国にとって格好の機会を提供している。国民党の鄭氏は今月、北京で習近平国家主席と会談した。習氏はこの席上で、国民党と共産党は「政治的相互信頼を固め」、「手を携えて祖国統一という輝かしい未来を切り開かなければならない」と述べた」

     

    中国共産党は、国民党が中国で戦って敗れた相手である。その逃げ帰った先の台湾で生まれた政権を非難するとは恥ずべき行動である。台湾が存在しなかったら、国民党は消える運命であった。それが、現在まで残っているのは台湾あってのことだ。こういう故事来歴を調べれば、台湾出身の人々が統治する現政権を非難するにしても、一定の抑制があるべきであろう。わざわざ、北京まで出向き敗れた相手の共産党の軍門にへつらい、台湾政権を非難するとは人間の道に外れている。政権批判は台湾内部で行い、中国まで出かけ行うべきことではない。恥知らずの行動である。


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    中国の習近平国家主席は10日、台湾最大野党、国民党の鄭麗文主席(党首)と北京で会談した。鄭氏は、国民党トップとして約9年半ぶりに訪中した。中国が、台湾に軍事的圧力を強める中で、緊張緩和を目的とした平和ミッションだとした。習氏は、台湾海峡の両岸の人々はともに中国人であり、両岸関係の未来は中国人の手にあると述べた。

     

    注目すべきは、中国が台湾に対して「10項目の経済交流」を実施するとしたことだ。これは、中国伝統の「朝貢貿易」でもある。朝貢貿易とは、周辺国が中国皇帝に貢ぎ物(朝貢)をささげ、その見返りとして皇帝から多くの返礼品(回賜)や交易の機会を与えられる、政治と貿易が一体となった不平等な国際貿易制度だ。中国が上位、周辺国が臣下という関係を前提に行われた。今回の鄭氏による訪中は、現代版「朝貢貿易」であろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月16日付)は、「14秒の握手が意味するもの」と題する記事を掲載した。

     

    先週、習近平国家主席は台湾人の魂を巡ってあからさまなパフォーマンスを行った。これは、中国が太平洋地域を支配するためには戦争を必要としないことを示すためのものだった。必要なのは静かな部屋と長い握手、そして目をそらしている米国だけだ。

     

    (1)「ホワイトハウスが、中東への対応に没頭している間、人民大会堂の東ホールは習氏と鄭麗文氏の14秒間にわたる握手の舞台となった。鄭氏は、親中の台湾最大野党・国民党の主席(党首)だ。中国の軍艦の影が台湾海峡でちらつく中でも、一発の銃弾も発射せずに服従に向けた前進を示すことを意図していた。国民党の指導者が前回習氏と向かい合ったのは2015年のことで、その際の雰囲気は慎重で対等と呼べるものだった。シンガポールのホテルという中立的な場所で開催された対等な者同士の会談だった。当時、習氏と国民党の馬英九氏は、表面的にも対等であることを示すために公式の肩書きではなく、お互い単純に「氏」を敬称として使った」

     

    中国は、米国大統領トランプ氏の訪中前に、台湾と友好を深めているという「実績づくり」を行った。だから、米国は台湾問題へ介入しないでくれというメッセージだ。

     

    (2)「10年後、力関係はその光景と同じくらい変化した。今回の鄭氏の訪中は、まるで帝国の中心への巡礼のようだった。中立的なホテルも対等を演出する外交儀礼もなかった。代わりに、鄭氏は人民大会堂の高い金色の天井の下で迎えられた。2015年には、台湾が相対的な強さ、あるいは少なくとも自律の立場から交渉しているという感覚があった。今回、中国政府がちらつかせた「10項目の贈り物」(優遇策)――観光の再開と貿易禁止の緩和の約束――は、相互合意というよりも、家賃の猶予を提供する家主のように感じられた」

     

    中国が、台湾野党へ10項目の贈物(朝貢貿易)をしても、現実には政府間レベルの話である。「言っただけ」のことに過ぎないのだ。

     

    (3)「元台湾立法委員で現在はハドソン研究所上級研究員のジェイソン・シュー氏が指摘したように、これは台湾を巡る見方を変更しようとする習氏の意図的な試みだ。シュー氏によると、鄭氏を招くことで、中国は米国に対し、台湾は「(中国による)強制に抵抗する統一された民主主義」ではなく、中国本土と話す意思のある代替の声を持つ「分裂した政体」であるとシグナルを送っているのだ」

     

    10項目の贈物は、トランプ氏の目を惑わす狙いかもしれない。中国は、台湾へこれほど融和的であるという宣伝だ。

     

    (4)「分裂した台湾を演出しようとするこの動きは、はるかに大きな交渉の最初の一手だ。トランプ氏の訪中が目前に迫る中、習氏は両岸「対話」のイメージを利用して、米国の台湾政策再編成への基礎を築き始めようとしている。「それは、中国の軍事的圧力が続いている間でさえ、中国側の条件の下での『平和的な』関与のための政治的空間があると示すことで、中国側の交渉姿勢を強化する可能性がある」とシュー氏は語った。実際、習氏と鄭氏が話し合いのために座っている間にも、台湾の国防部は台湾海峡の中間線を越える16機の中国軍機を追跡していた。これは習氏にとって、オリーブの枝(和解)と銃剣は常にセットであることを思い出させるものだった」

     

    中国が、台湾へ贈った平和メッセージには、常に軍事威圧を与えている「合間」に行われたものだ。台湾への「降伏勧告」であろう。

     

    (5)「ここでの問題は、米国政府が鄭氏を台湾の公式の声と間違えるということではなく、この訪問が米国で高まる不安を深めているということだ。国民党主導の台湾立法院が400億ドルの追加防衛支出を巡る審議を停滞させている最中に、その指導者が人民大会堂で習氏と握手する光景は、無視できない複雑なメッセージを送っている。それは、台湾の決意が自らの内部から静かに試されていることを示唆している。さらに、シュー氏は、この訪問は現在国民党自体を引き裂いている危機も露呈させたと指摘した。同党は、生き残るためには米国政府からの信頼が必要であると考えている親米派と、中国と話すことが党としての比較優位であると信じている親中派の間で分かれている」

     

    鄭氏が、孫文墓地前で行った演説に対して、台湾の5割が反発した。支持は3割であった。国民党は一枚岩でないのだ。親米派と親中派に別れている。香港との「一国二制度」を破棄した中国が、台湾へ何を約束しようとも額面通りに受け取られまい。身から出たサビである。

     

     

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