台湾や韓国は、日本の半導体企業ラピダスが日米政府の支援で順調なスタートを切っていることで「そわそわ」し始めている。日本は、半導体製造措置や半導体素材で世界有数のシェアを持ち、1980年代後半では世界半導体生産のチャンピオンであった。その日本が再び、世界の地政学リスクを背景に最前線へ躍り出てきたのだ。台湾や韓国が、落ち着かずそわそわし出しているのは当然であろう。
『日本経済新聞 電子版』(6月25日付)は、「日本の半導体『復活できる』台湾パソコン大手エイサー創業者スタン・シー氏 供給網の日台協力訴え」と題する記事を掲載した。
台湾パソコン大手、宏碁(エイサー)の創業者で著名実業家の施振栄(スタン・シー)氏が、6月中旬に台湾で日本経済新聞の取材に応じた。日本の半導体・電子産業について「復活できる」との見方を示し、サプライチェーン(供給網)の日台協力を訴えた。
(1)「近年、台湾の半導体企業が海外へ進出しているが、純粋なコストは台湾が一番安い。工場稼働率や歩留まり(良品率)が高く、人件費も相対的に競争力がある。(台湾以外に)唯一、チャンスがあるのは日本だ。かつて高い生産能力を持った実績がある。先端半導体は研究開発の段階から分野をまたいだ協力が必要だ。日本の材料や製造装置はとても強い。ただ、日本企業は他社への技術移転に消極的で、リスクをとることを避けがちという課題もある」
下線部は、日本の半導体製造措置や半導体素材の企業が、技術移転に消極的と指摘している。台湾では、それだけに日本の半導体総合力に「敬意」を表しているのだ。
(2)「私は日本の半導体・電子産業が復活できると思う。大切なのは『共存共栄』だ。台湾と日本のそれぞれが強みを持ち寄り、価値を創造する双方向の関係を築くべきだ」
台湾は、日本半導体・電子産業が復活可能とみている。日本の貿易収支が赤字である背景には、この問題が深く絡んでいる。それだけに、この難所をクリアできれば、「日本復活」が可能になる。
『中央日報』(6月25日付)は、「半導体復活の日本とどう手を組むか、『これからは韓日の水平協力が必要』」と題する記事を掲載した。
最近の日本の半導体復活の動きと関連し、韓国の業界に日本と水平的な協力関係を結ぶべきという主張が出てきた。韓国産業研究院のキム・ヤンペン専門研究員は24日、ソウル大学グローバル工学教育センターで開かれた第2回システム半導体共生フォーラムで、「日本の半導体産業の現況」を主題に発表しながらこのように話した。
(3)「キム研究員は、「(日本は)国内供給網構築を加速化し、米国が日本の半導体産業を再び推している。ラピダスが1.5ナノまで作るというなど米国政府の承認がなくてはできないことが起きている。TSMCが日本に工場を誘致することになったのも米国の容認がなかったなら可能だったか疑問」と話した。その上で「(韓国と日本の)ファブレス(半導体設計専門企業)間協力は半導体産業内に最も可能性があるもの。世界のファブレス市場でのシェアは韓国が3%、日本は韓国よりさらに低いため、競争よりは長所を合わせて海外市場進出に協力するのが良い」とした。技術流出などの問題が比較的少ないため協力時には利点があるという話だ」
韓国半導体は、日本との協力を要望している。ラピダスは口外していないが、秘かにサムスンを第一標的にしている。AI半導体への進出を目指しており、オープンAIと話合いを始めている。NTT(光半導体)もその意向をみせている。後は、SBGが手がける半導体の製造をラピダスへ委託するかだ。このように、ラピダスはサムスンよりも日本国内に有力ユーザーを抱えている。この点で有利な位置にある。
(4)「キム研究員は、両国産業界の水平的協力を提案した。彼は「韓日間協力はこれまで垂直的だった。韓国は製造し、日本は素材と装備を供給する伝統的協力が続いた。これまでは韓国企業の素材・部品・装備競争力が落ちていたため」と説明した。続けて「最近では韓国の技術力が高まったため従来の垂直協力から水平協力に変化しなければならない」と話した」
日韓半導体の水平的協力は不可能だ。韓国の製造装置や素材のレベルが、日本に大きく出遅れているからだ。現実は、依然として「垂直的」関係にある。
(5)「キム研究員は(韓国が)規模の経済の面でも米国と欧州、中国など世界的覇権競争主導者に個別のプレーヤーとして対抗するのは容易でないとし、日本との協力を強調した。基本技術がある米国などに対応する案としてキム研究員は「ソニーがオランダASMLの極端紫外線(EUV)装備がなくても希望の工程が可能な露光装備を開発した。韓国のサムスン電子、SKハイニックスがこれを採択する場合、地図が変わるかもしれない」とした」
ソニーが、ASMLの露光装置に負けない最先端製造装置を完成させたという。キヤノンもASMLへ肉迫する製造装置を完成させた。期せずして、日本の半導体製造装置が世界的な脚光を浴びている。これも、「ラピダス効果」である。日本の半導体業界へ再起の自信を与えたのだ。