勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    (3)「最大の焦点は、訪問後半のワシントンでの日程で、米国の政策決定に近い層との接触レベルが問われる。ハードルは高いものの、トランプ氏との会談が実現すれば象徴的な成果となる。1979年の米台断交後、米大統領と台湾の指導者クラスが直接会談した例はない。極めて異例のケースとなる。その半面、リスクも大きい。トランプ氏や閣僚級との接触が実現しなければ、米国側から距離を置かれているとの印象が広がりかねない。成果が乏しければ、バランス外交の実効性にも疑問符がつき、党内基盤に響く可能性がある」

     

    鄭氏は、南京で行った日本批判が 米政権幹部との面会レベルを確実に下げる要因になっている。閣僚級面会は、ほぼ不可能とされる。NSC(国家安全保障会議)では中堅との面会の可能性はあるが慎重とされている。米議会では、「日本批判=同盟軽視=中国寄り」 と見なすため、最も反発が強くなっている。こうみてくると、鄭氏の米国行脚は厳しい旅行になりそうだ。

     

    (4)「党内では、鄭氏の最大ライバルとみられている台中市長の盧秀燕氏との比較もある。盧氏は春に訪米し、米議会関係者や州政府・市長らと交流した。国民党の関係者は「盧氏以上のレベルで米政界と接触できなければ、痛手になる」と話す。今回の訪米は鄭氏個人の評価にとどまらず、国民党が掲げる外交路線の現実性を見極める試金石となる」

     

    米国が、「信頼する台湾政治家」の特徴は、台湾政治家を好き嫌いではなく、対中戦略上の信頼性で評価している。中国の圧力に屈しない、中国の歴史戦・宣伝戦に乗らない、中国の「和平攻勢」に利用されないという3点だ。 鄭氏は、ここで大きく減点している。

     

    米国が、国民党内で最も評価している人物は、次の3氏に絞られている。

    1)侯友宜(ホウ・ヨウイー)。米国が、最も信頼している国民党政治家である。理由は、対中融和に慎重である。発言が一貫している。治安・行政能力が高い。中国に利用されにくいタイプである。 「国民党の中で最も米国が安心して話せる人物」である。

     

    2)朱立倫(前主席)。米国とのパイプが太い、中国との距離感も比較的バランス型、国際感覚がある。 ワシントンでは、「国民党の中では現実的で扱いやすい」と見られる。

     

    3)盧秀燕(台中市長)。米国は慎重に観察している段階。中国との距離が近いという懸念はある。ただし、鄭氏ほどの危うさはない。 「まだ評価保留」だが、鄭氏よりは信頼度が高いとされている。

     

    この盧氏は、この春に訪米し、米議会関係者や州政府・市長らと交流した。鄭氏の面会相手が、盧氏との面会クラスよりも「下位」であれば、米国の評価が低いことを意味する。気の休まらない米国訪問になりそうだ。

     

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    昨年12月、中国が台湾の周辺で軍事演習を活発化させていた時期に、台湾の最大野党・国民党の鄭麗文党首が原因は台湾の頼清徳総統にあると非難する動画を、中国共産党系のニュースメディアが交流サイト(SNS)に投稿した。この51秒間の動画は中国の短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の中国版「抖音(ドウイン)」に投稿され、フェイスブックやユーチューブなどにも拡散された。

     

    『ロイター』(4月24日付け)は、「中国、台湾野党の「声」を情報戦に活用 SNSで動画を大量拡散」と題する記事を掲載した。

     

    鄭氏は、動画の中で頼氏が台湾の独立を追求することで「(島民)2300万人全員を」「行き止まり、死への道」へ引きずり込んでいると強調した。中国が、国民党など台湾野党の有力議員が台湾政府を批判した公式発言を取り込み、中国国営メディアやSNS上で与党・民主進歩党(民進党)批判のメッセージとして大量に発信していることが、データや関係者の話で明らかになった。こうした動画クリップはその後、フェイスブックやTikTok、ユーチューブ、抖音など台湾で普及しているプラットフォームに転載・拡散され、中国の関与を見えにくくする形に加工・演出されることも多いという。

     

    (1)「台湾の治安当局者らは、こうした中国の動きについて、独立志向がある台湾の頼政権の信頼を傷付ける狙いがあると解説する。治安当局者らによると、台湾人の声や発音はより信頼感を持って受け止められやすい。中国側は以前から台湾の著名人をプロパガンダに利用してきたが、最近のこの手法を一段と強化しているという」

     

    台湾野党は、頼政権批判で中国と組むことが一種の「利敵行為」という認識をもつべきであろう。台湾野党も本心では中国に統一されることを否定している。だが、台湾で政権を取りたいから、中国と手を握るのはあまりにも軽率であろう。

     

    (2)「台湾の治安当局者5人および台北に拠点を置く調査団体、台湾情報環境研究センター(IORG)がロイターに提供したデータによると、中国の国営メディアは国民党と関係のあるインフルエンサーや政治家らを巻き込み、台湾の与党・民主進歩党(民進党)への批判を増幅させようとしている。IORGと3人の安全保障当局者は、民進党が400億ドルの追加防衛支出案を承認するように議会へ求めている中で、中国の軍事力が圧倒的であり、台湾が米国製兵器を調達するために巨額を投じるのは無意味だと台湾人に納得させることも狙っているとの見解を示した」

     

    台湾国民党は、中国によって光り輝いていた香港が現在、没落状況にあることを忘れている。政権欲しさに、中国に利用されるような言動を慎まなければならない。台湾島内では、いくら政権批判しても構わないが、中国へ出かけての台湾政権非難は利敵行為である。

     

    (3)「IORGによると、2025年第4・四半期に中国共産党の公式メディアが運営する1076のアカウントによって抖音に計約56万本の動画が投稿された。うち、約1万8000本が台湾に関する内容だった。IORGが顔認識技術を用いて解析したところ、2730本の動画に57人の台湾人が登場しているのを特定。台湾人の声が収録されたビデオの本数は25年1011月に前年同期の2倍超に膨らんだ。月間投稿時間は2.64倍の369分に跳ね上がった」

     

    中国動画2730本の中に、57人の台湾人が登場しているという。この人達の発言が、加工されて悪用されている。

     

    (4)「動画では、中国との「平和」を訴える発言、頼総統を外部勢力の「駒」と批判する言葉、台湾独立をめぐる民進党の立場を「破壊的」と評した発言などが増幅して拡散された。こうしたクリップの一部は、中国の国営メディアやSNSで流れた後、台湾で普及するプラットホームに転載・再加工されている」

     

    台湾野党が、政権欲しさに中国と組むことは「自殺行為」である。これは、「売国的行為」であろう。批判は、台湾内部で行い中国に利用されることを警戒することだ。

     

    (5)「情報戦は、武力に頼らず台湾を消耗させる北京の戦略の一環といえる。この点で、中国政府との関係強化を重視する国民党が中国にとって格好の機会を提供している。国民党の鄭氏は今月、北京で習近平国家主席と会談した。習氏はこの席上で、国民党と共産党は「政治的相互信頼を固め」、「手を携えて祖国統一という輝かしい未来を切り開かなければならない」と述べた」

     

    中国共産党は、国民党が中国で戦って敗れた相手である。その逃げ帰った先の台湾で生まれた政権を非難するとは恥ずべき行動である。台湾が存在しなかったら、国民党は消える運命であった。それが、現在まで残っているのは台湾あってのことだ。こういう故事来歴を調べれば、台湾出身の人々が統治する現政権を非難するにしても、一定の抑制があるべきであろう。わざわざ、北京まで出向き敗れた相手の共産党の軍門にへつらい、台湾政権を非難するとは人間の道に外れている。政権批判は台湾内部で行い、中国まで出かけ行うべきことではない。恥知らずの行動である。


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    中国の習近平国家主席は10日、台湾最大野党、国民党の鄭麗文主席(党首)と北京で会談した。鄭氏は、国民党トップとして約9年半ぶりに訪中した。中国が、台湾に軍事的圧力を強める中で、緊張緩和を目的とした平和ミッションだとした。習氏は、台湾海峡の両岸の人々はともに中国人であり、両岸関係の未来は中国人の手にあると述べた。

     

    注目すべきは、中国が台湾に対して「10項目の経済交流」を実施するとしたことだ。これは、中国伝統の「朝貢貿易」でもある。朝貢貿易とは、周辺国が中国皇帝に貢ぎ物(朝貢)をささげ、その見返りとして皇帝から多くの返礼品(回賜)や交易の機会を与えられる、政治と貿易が一体となった不平等な国際貿易制度だ。中国が上位、周辺国が臣下という関係を前提に行われた。今回の鄭氏による訪中は、現代版「朝貢貿易」であろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月16日付)は、「14秒の握手が意味するもの」と題する記事を掲載した。

     

    先週、習近平国家主席は台湾人の魂を巡ってあからさまなパフォーマンスを行った。これは、中国が太平洋地域を支配するためには戦争を必要としないことを示すためのものだった。必要なのは静かな部屋と長い握手、そして目をそらしている米国だけだ。

     

    (1)「ホワイトハウスが、中東への対応に没頭している間、人民大会堂の東ホールは習氏と鄭麗文氏の14秒間にわたる握手の舞台となった。鄭氏は、親中の台湾最大野党・国民党の主席(党首)だ。中国の軍艦の影が台湾海峡でちらつく中でも、一発の銃弾も発射せずに服従に向けた前進を示すことを意図していた。国民党の指導者が前回習氏と向かい合ったのは2015年のことで、その際の雰囲気は慎重で対等と呼べるものだった。シンガポールのホテルという中立的な場所で開催された対等な者同士の会談だった。当時、習氏と国民党の馬英九氏は、表面的にも対等であることを示すために公式の肩書きではなく、お互い単純に「氏」を敬称として使った」

     

    中国は、米国大統領トランプ氏の訪中前に、台湾と友好を深めているという「実績づくり」を行った。だから、米国は台湾問題へ介入しないでくれというメッセージだ。

     

    (2)「10年後、力関係はその光景と同じくらい変化した。今回の鄭氏の訪中は、まるで帝国の中心への巡礼のようだった。中立的なホテルも対等を演出する外交儀礼もなかった。代わりに、鄭氏は人民大会堂の高い金色の天井の下で迎えられた。2015年には、台湾が相対的な強さ、あるいは少なくとも自律の立場から交渉しているという感覚があった。今回、中国政府がちらつかせた「10項目の贈り物」(優遇策)――観光の再開と貿易禁止の緩和の約束――は、相互合意というよりも、家賃の猶予を提供する家主のように感じられた」

     

    中国が、台湾野党へ10項目の贈物(朝貢貿易)をしても、現実には政府間レベルの話である。「言っただけ」のことに過ぎないのだ。

     

    (3)「元台湾立法委員で現在はハドソン研究所上級研究員のジェイソン・シュー氏が指摘したように、これは台湾を巡る見方を変更しようとする習氏の意図的な試みだ。シュー氏によると、鄭氏を招くことで、中国は米国に対し、台湾は「(中国による)強制に抵抗する統一された民主主義」ではなく、中国本土と話す意思のある代替の声を持つ「分裂した政体」であるとシグナルを送っているのだ」

     

    10項目の贈物は、トランプ氏の目を惑わす狙いかもしれない。中国は、台湾へこれほど融和的であるという宣伝だ。

     

    (4)「分裂した台湾を演出しようとするこの動きは、はるかに大きな交渉の最初の一手だ。トランプ氏の訪中が目前に迫る中、習氏は両岸「対話」のイメージを利用して、米国の台湾政策再編成への基礎を築き始めようとしている。「それは、中国の軍事的圧力が続いている間でさえ、中国側の条件の下での『平和的な』関与のための政治的空間があると示すことで、中国側の交渉姿勢を強化する可能性がある」とシュー氏は語った。実際、習氏と鄭氏が話し合いのために座っている間にも、台湾の国防部は台湾海峡の中間線を越える16機の中国軍機を追跡していた。これは習氏にとって、オリーブの枝(和解)と銃剣は常にセットであることを思い出させるものだった」

     

    中国が、台湾へ贈った平和メッセージには、常に軍事威圧を与えている「合間」に行われたものだ。台湾への「降伏勧告」であろう。

     

    (5)「ここでの問題は、米国政府が鄭氏を台湾の公式の声と間違えるということではなく、この訪問が米国で高まる不安を深めているということだ。国民党主導の台湾立法院が400億ドルの追加防衛支出を巡る審議を停滞させている最中に、その指導者が人民大会堂で習氏と握手する光景は、無視できない複雑なメッセージを送っている。それは、台湾の決意が自らの内部から静かに試されていることを示唆している。さらに、シュー氏は、この訪問は現在国民党自体を引き裂いている危機も露呈させたと指摘した。同党は、生き残るためには米国政府からの信頼が必要であると考えている親米派と、中国と話すことが党としての比較優位であると信じている親中派の間で分かれている」

     

    鄭氏が、孫文墓地前で行った演説に対して、台湾の5割が反発した。支持は3割であった。国民党は一枚岩でないのだ。親米派と親中派に別れている。香港との「一国二制度」を破棄した中国が、台湾へ何を約束しようとも額面通りに受け取られまい。身から出たサビである。

     

     

    テイカカズラ
       

    中国が、台湾国民党へ「アメ」を与えた。台湾頼政権へは厳しい非難をする一方で、野党国民党へは手厚い配慮をしている。習政権は、台湾最大野党・国民党の鄭麗文主席(党首)の訪中終了に合わせて、観光規制の緩和、「健全な」テレビドラマの放映容認、食品販売の促進など、台湾に対する新たな10項目の措置を発表した。中国は、露骨に台湾政治へ介入している。

     

    国営新華社通信が公表した10項目の措置には、国民党と中国共産党の定期的な意思疎通の仕組みの確立、双方間の航空便の全面再開、上海市と福建省の住民による台湾への個人旅行の許可を「模索する」内容が盛り込まれた。食品・水産物の検査基準緩和の仕組みも設ける。ただし、「台湾独立に反対する」という政治的基盤が前提条件となる。

     

    台湾頼政権は、これらの10項目について政府間の話合いでない以上、「架空」の話という扱いだ。実効性ゼロである。これほど中国のメンツ丸潰れの話もないがやむを得ないことである。政府間という公的ルートでないから「それだけのこと」だ。

     

    今回の措置は、台湾国民党党首・鄭麗文氏の訪中に合わせて発されたもので、公的な取り決めではない。政治的成果を狙ったアドバルーンである。これによって、国民党に「成果」を与える目的であることはあきらかだ。台湾国内で「国民党なら中国と話せる」という印象を作って、民進党政権を相対的に弱める政治的意図が露骨に出ている。

     

    効果は、極めて限定的であろう。中国は過去にパイナップル輸入停止など恣意的な経済制裁を繰り返してきた国だ。台湾の一般市民の反応は冷ややかである。「どうせまた気に入らなければ止める」、「政治的条件付きのは信用できない」、「中国の観光客依存は危険」といった認識が、台湾社会に広く浸透しているのだ。

     

    台湾の若者は、特に反発している。台湾の若い世代は、民主主義、自由、台湾アイデンティティを重視しており、 中国の「懐柔策」は逆効果になる。

     

    中国は現在、経済減速、外資流出、国際的孤立の進行、米国の対中包囲網強化 という四重苦に直面している。その中で、台湾問題だけは「柔らかいカード」を使う余地があると判断したのであろう。つまり、軍事圧力だけでは台湾を動かせない以上、経済・文化の「懐柔」に切替えたものだ。しかし、台湾はもう懐柔される時代ではない。台湾社会は、香港の変貌やかつてのパイナップル禁輸問題。それに、日常化している軍事圧力を見ており、 中国の「飴と鞭」戦略を完全に見抜いている。そのため、今回の措置は「政治的演出」以上の効果は出ないというのが現実だ。中国の措置は「新国共合作」的な政治演出である。

     

    中国の対台湾政策が、なぜ効果を失ったのか。

     

    1)中国の政策には、常に「飴と鞭」が用意されている。鞭がバレたら経済優遇(飴)不満が出たら制裁(パイナップル・魚介類・観光客停止)というパターンの繰り返しである。この結果、「中国に依存すると、いつでも締め上げられる」という学習が台湾社会に定着している。

     

    2)香港の「崩壊」が決定打になったことだ。「一国二制度」の約束が香港で反故にされたことで、台湾人は「香港ですらああなるなら、台湾はもっとひどい」と確信した。以後、「平和統一」や「経済融合」の言葉は完全に説得力を失った。

     

    3)軍事威嚇と懐柔策を同時にやる矛盾である。ミサイル演習・軍機の越境・サイバー攻撃。一方では、観光緩和・ドラマ解禁・経済優遇を同時にやろうとしている。これは、「殴りながら、笑顔で握手を求めてくる」状態で、信頼を完全に破壊した。

     

    4)台湾の世論が中国をどう見ているか(世代別)。若い層ほど「中国=リスク」、年長ほど「中国=複雑」という反応をみせている。

     

    高齢層(〜60代後半)は、中国を「同じ民族」「商売相手」と見る感覚がまだ残っている。ただし香港・ウクライナ問題以降は、「統一歓迎」が急減した。国民党支持層でも「統一は現実的でない」が主流である。

     

    中年層(30〜50代)は、経済的には中国と付き合ってきた世代である。しかし、子どもの世代の将来を考えると「民主主義は手放せない」という意識が強い。「中国とビジネスはするが、政治的には距離を取る」が基本姿勢である。

     

    若年層(10〜30代)は、物心ついたときから「台湾=民主主義」「中国=威圧」の構図に染まっている。香港の映像・ネット世論・ポップカルチャーを通じて、中国を「別世界」と見ているのだ。「中国に行きたい」より「日本・欧米・東南アジアに行きたい」が主流である。中国の懐柔策は、若者ほど逆効果になりやすのが現状だ。

     

    中国は、香港で「一国二制度」を破棄するという背信行為を行ったことで、台湾の信頼は地に墜ちている。この状態で「国共合作」を行ったところで、波及効果はゼロだ。自ら蒔いた種に苦しむであろう。

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    日本の半導体メーカー・ラピダスは、未だ量産化過程へ入っていないにもかかわらず、台湾メディアは「世界4大半導体メーカー」に数えるという高評価ぶりである。ラピダスを、TSMC、インテル、サムスン電子と並んで取り挙げているのだ。ラピダスの石丸一成CTO(最高技術責任者)は、「TSMCとの技術格差を半年まで縮める」と技術的展望を示している。ラピダスは、27年の2ナノ半導体量産化に続き、1.4ナノ生産にも着手する意向を発表した。それなりに、技術的な見通しを持っているのであろう。

     

    『レコードチャイナ』(4月3日付)は、「世界の半導体競争は1ナノ時代へ、大手4社が相次ぎ量産目標―台湾メディア」と題する記事を掲載した。

     

    台湾『自由時報』(4月2日付)は、TSMC、インテル、サムスン電子、ラピダスの半導体大手4社が次世代の1.4ナノおよび1ナノメートルプロセス半導体の量産目標を相次いで掲げ、開発競争を加速させていると報じた。

     

    (1)「記事は、半導体業界の現状について、業界リーダーであるTSMCが今年後半に16ナノプロセスの量産を開始し、エヌビディアの次世代チップ「Feynman(ファインマン)」に初採用される見通しであるとした。そして、来年には14ナノ級プロセスの試作を行い、2028年後半の量産を計画していると紹介。同プロセスは2ナノ比で性能が最大15%向上し、消費電力を最大30%削減できる見込みで、アップルiPhone向け次世代プロセッサーの製造が予定されていると伝えた」

     

    半導体のコスト競争のカギは、歩留まり率をいかに高めるかだ。ラピダスは、すでに世界初で唯一の半導体前工程と後工程の全自動化技術を確立している。これは、理論的に言えば100%に近い歩留まり率であることを表わしている。さらに、台湾の『中時新聞網』は、ラピダスの2ナノプロセスがTSMCのN2とほぼ同等のロジック密度を達成したと報じているほどだ。世界4大メーカーと言っても事実上、ラピダスとTSMCの「2強」争いになる様相を見せ始めている。

     

    (2)「その上で、この王者の背中を追う各社の動向として、インテルが28年の14ナノ量産を目指しているほか、日本の国策企業ラピダスも26年に研究開発を開始し、29年頃の量産を目標としていることを伝え、石丸一成CTO(最高技術責任者)が「TSMCとの技術格差を約半年まで縮める」との野心を示したことを紹介した。さらに、サムスン電子は、29年頃に14ナノ、30年までに1ナノ技術へ進出するロードマップを策定しており、1ナノ段階ではTSMCも30年の導入を検討しているトランジスタをより高密度に実装できる新構造「フォークシート(Fork sheet)」の採用が見込まれると伝えた」

     

    ラピダスは、未だ製品を世に送っているわけでない。したがって、実質的には「TSMCとの差が依然大きい」ことは確かだ。だが、台湾メディアの論調は、驚きと警戒が混じっている。それは、次の三つの理由による。

     

    1)日本が本当に先端半導体へ戻ってきたことだ。技術指標でTSMCと並んだことは、台湾にとって衝撃である。TSMC一強の構造に変化が生まれる可能性があるからだ。

     

    2)IBM技術導入+日本の製造力の組み合わせが結実してきた点である。ラピダスは、IBMから技術を導入し、日本の装置・材料産業が支える構造を確立した。台湾から見ると、「日本が本気で戻ってきた」という評価になっている。

     

    3)TSMCの地政学リスクが高まる中で、日本の台頭が顕著であることだ。台湾情勢の不安定化により、「日本が先端製造のバックアップになる」という国際的期待が高まっている。ラピダスへの期待が高まると、相対的にTSMCの「弱点」がみえてくる点も否めない。

     

    TSMCの弱点は、歴史的に積み上げた「人の技」が多いことだ。工場ごとに微妙な差があること。自動化は進んでいるが「後付け」であることである。

     

    ラピダスの強みは、2020年代の最新思想でゼロから設計されている。IBM方式でプロセスが標準化されているのだ。日本の装置・材料メーカーが「最適化された状態」で参加していることも大きな支えである。自動化が前提なので、ラインのバラツキが極小である。こうして、歩留まりの立ち上がり速度は、TSMCより速くなる可能性が高いと指摘されている。

     

    (3)「記事はこのほか、サムスンが現在、足元の2ナノプロセスの歩留まり安定化にも注力していると指摘。世界で2ナノプロセスを手掛けるのはTSMCとサムスン電子の2社のみで、受注ではTSMCが先行するものの、サムスン電子も歩留まりを約60%まで引き上げており、技術革新と量産安定化の両面が今後の勝敗を分けるとの見方を伝えている」

     

    台湾メディアが、ラピダスを高評価する理由は、次の点にある。台湾側は、ラピダスの技術性能だけでなく、「歩留まりでTSMCを脅かす可能性」を感じ取っていることだ。台湾メディアの論調はこうである。技術密度はTSMCと同等でインテルを上回っている。日本の装置・材料産業がフルで連携している上に、IMB方式で技術的に最短距離を歩んでいる。ラピダスの独自技術では、自動化で歩留まりが高い可能性と台湾情勢の地政学リスクで日本が「バックアップ」されている。つまり台湾は、「日本が本当に戻ってきた」と認識し始めているのだ。「ジャパン・イズ・バック」が実感となって来たのであろう。

     

     

     

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