勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済ニュース時評

    a0960_008527_m
       

    米国は、半導体「母国」であるが現在、生産を海外へ任せる方式になった。半導体設計部門を残して他部門を海外諸国で生産している。だが、最近の地政学的リスクの増大によって、米国内での半導体生産の必要性に迫られている。バイデン政権による「CHIPS・科学法」が、このテコの役割を果している。 

    すでに、米国へ進出した台湾のTSMCは、試験操業段階で台湾並みの製品歩留まりの好成績を上げているという。TSMCはこれまで、米国の「モノ作り文化」に疑問を呈してきたが、どうやら杞憂に終わりそうだ。従業員教育をきめ細やかに行えば、台湾並みのパフォーマンスを上げられる見通しがついたようであう。 

    『フィナンシャル・タイムズ』(10月7日付)は、「米半導体戦略が抱える深刻な問題」と題する記事を掲載した。 

    バイデン政権の政策を振り返ると、CHIPS・科学法を超党派で2022年に成立させたことは、いかなる成果リストでもトップ近くにランキングされるだろう。

     

    (1)「米国だけでなく世界にとって、現在のデジタル経済に欠かせない半導体の生産拠点をもっと分散させる必要があることは以前から明白だった。つい最近まで半導体の大半はアジア地域で生産され、高性能半導体に限れば台湾が生産をほぼ独占していた。その台湾は、ウクライナと中東に次いで世界で3番目に地政学的リスクが高い地域といえる。そして今、CHIPS法のおかげで米国と欧州の双方では半導体の生産能力が新たに築かれつつあり、欧州連合(EU)は米国に対抗すべく独自の支援策を打ち出している」 

    半導体が、高度の戦略製品であることから、地政学的リスクと敏感に反応するようになった。 

    (2)経済界や産業界の一部には、こんなやり方で米国が産業の再活性化を図れるのかと懐疑的にみる向きもあるが、経済はインセンティブが後押しする方向に進むものだ。米国内での生産を後押しするために、530億ドル(約7兆8700億円)に上る公的資金と4000億ドル近い民間資金を投じて、2年間でどれほど成果を達成できるのかといえばそれには驚くべきものがある。例えば、台湾積体電路製造(TSMC)が米アリゾナ州に建設した半導体工場(2025年までに量産を開始する予定)ではこの9月上旬、台湾の本社工場と同程度の歩留まり率を実現した。これは大きな成果だ。歩留まり率の上昇は、利益率を高める重要な要因であるばかりか生産性の向上にもつながる」 

    米国政府が、半導体育成でCHIPS法により企業支援していることは理に叶っている。

     

    (3)「台湾の半導体産業の成功から学ぶべき大事な教訓がある。それは、モノ作りが重要だということだ。実際にモノの生産を増やしていけば、イノベーションの階段を上っていくことができる。それは経済学者たちには分かりにくいとしても、エンジニアにとっては常に明白なことだ。米国で半導体生産を復活させる取り組みを巡っては、その遅れを批判する声が多くある(数兆ドル規模にも達する業界をわずか数カ月で再構築できるとでも考えているようだ)。しかし、歩留まり率だけでなく、労働者の育成といった分野でも大きな進歩がみられる」 

    米国では、半導体製造が空洞化しているが、再び復活への動きが始まっている。 

    (4)「半導体生産における熟練労働者の不足は、大きな弱点となってきた。生産が他国へと移転されれば労働者も離れていくし、そうした労働者を支える教育プログラムも消えていく。CHIPS・科学法ではかなりの規模の資金が、ニューヨーク州北部などの地域における学校や職業訓練プログラムの強化に充てられた。ニューヨーク州北部では、米エネルギー省科学局は米半導体大手のマイクロン・テクノロジーと覚書を交わし、同社は今後20年、約1000億ドルを半導体生産に投資する計画だ」 

    CHIPS・科学法によるかなりの資金規模が確保されたことで、復興への芽が着実に育っている。

     

    5)「同半導体プログラムを運営する商務省は、全米教員連盟およびマイクロンと協力し、新しい技術に関するカリキュラムをまとめた。それが今秋、ニューヨークの10の州学区で導入されたのを皮切りに他の州にも広がりつつある。これは教育関係者と雇用創出者が優れた労働力を育成すべく密接に連携した一例だ」 

    半導体教育プログラムは、ニューヨークの10の州学区で導入されたのを皮切りに、他の州にも広がりつつある。人材育成が始まっている。 

    6)「筆者はそれでも半導体生産復活に向けた米国の取り組みの今後について懸念している。我々はモノ作りが重要であることを学んだが、産業政策を体系だって進める方法についてはまだ学習していない。個人の利益よりも公的な利益を優先していく方法も学んでいないからだ。特に人工知能(AI)向け半導体を含め、半導体生産ではこうした問題への取り組みがとりわけ重要だ」 

    半導体が、公的利益に寄与するという理念を植え付けることが重要である。企業の私的利益追求が第一義的になっては拙いのだ。その理由は、次に述べる。 

    7)「大きな課題のひとつは、同盟国や友好国とサプライチェーン(供給網)を構築する「フレンドショアリング」をどの国・地域とどう進めるかだ。米国とアラブ首長国連邦(UAE)は9月下旬、AI分野での能力の増強を目指して半導体やクリーンエネルギーなどの先進技術に関する協力関係を深めることで合意した。しかし、日本製鉄によるUSスチール買収が国家安全保障上の問題をもたらしかねないと懸念するのであれば、人権やプライバシーはほとんど尊重しないうえ、中国と学術およびビジネス分野で深いつながりを築いている独裁国家と、米国が最先端の戦略的技術を共有することについても懐疑的になるべきだ。防衛および情報関係者の多くも筆者と同じ懸念を感じている」 

    米国とアラブ首長国連邦(UAE)が、AI分野で技術提携することは問題含みである。UAEは、中国と学術およびビジネス分野で深いつながりを築いている國である。そういう相手国と戦略製品の半導体技術で提携するのはリスキーである。

    a0960_008707_m
       

    台湾の頼清徳総統は10月5日、中華人民共和国よりも台湾の歴史(中華民国)が長いため、中華人民共和国は台湾の人々の祖国にはなり得ないと述べた。10月10日の台湾の建国記念日に相当する「双十節」を前に行われた関連行事でこのように挨拶した。中華人民共和国が10月1日に建国75周年を迎え、数日後には中華民国が建国113周年を迎えることに言及したもの。

     

    『ロイター』(10月7日付)は、「『中国は台湾の祖国になり得ない』、記念日行事で頼総統」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「頼氏は、「年数という観点で言えば、中華人民共和国が中華民国の人々の『祖国』になることは絶対に不可能だ」とした上で、「中華人民共和国の75歳以上の人々にとっては、むしろ中華民国が祖国になるかもしれない」と述べた」

     

    中国共産党は、国民党との内戦で勝利して「中華人民共和国」を建国した。敗北した国民党の「中華民国」は台湾へ移転した。この関係からいえば、「中華民国」の母国が「中華人民共和国」とは言えないのであろう。だが、習近平中国国家主席は、中国共産党が、中国の国土と国民を統治しているので中国の正統な政権という主張になる。

     

    習近平氏にとって、頼氏の発言は「聞き捨て」にならぬものである。何らかの軍事的圧力を台湾へかけてくると予想されている。

     

    『ロイター』(10月7日付)は、「中国、10日の台湾総統演説後に軍事演習の可能性ー関係筋」と題する記事を掲載した。

     

    台湾の頼清徳総統が10日、建国記念の日に相当する「双十節」の式典で演説するのに合わせて、中国が台湾に圧力をかけるために軍事演習を開始する可能性が高いと、台湾高官が明らかにした。

     

    (2)「中国は5月、頼氏の総統就任後に「分離主義的行為」への対応として、台湾周辺で「連合利剣2024A」と称する軍事演習を実施した。台湾の安全保障当局高官は、収集した情報や中国政府の動向を分析した結果、すでに演習が計画され、頼氏の演説の内容に関係なく、「連合利剣2024B」といった名前を付けて行われる可能性があるとの見解を示した。頼氏の演説が口実に使われる公算が大きいと述べた」

     

    台湾は、中国が頼氏の演説を口実にして、かねてから準備している「連合利剣2024B」作戦を展開するだろうと予想している。台湾包囲の軍事作戦を繰返して、台湾市民に「自主防衛」を諦めさせる戦術とみられている。だが、民主主義の恩恵に浴している台湾市民が、言論の自由もなく人権蹂躙の共産党体制を受入れるとは思えない。香港の現状を見れば、それが明らかだ。

     

    (3)「ロイターが入手した台湾安全保障当局の内部メモは、中国が演習を頼氏の演説での「挑発」のせいにするかもしれないとしている。「(中国は)絶えず各国のレッドラインを試し、(武力攻撃以外で打撃を与える)グレーゾーン作戦を最大化しようとしている」と指摘した。台北を拠点とするある外交筋は、米大統領選挙が近いことから、中国は演説に対する軍事的反応を抑制する可能性があると語った。大統領選直前に台湾問題が国際的な注目を集めることを中国は望んでいないという。「中国はもはや台湾周辺で軍事演習を行う口実を必要としていない。いつでも好きなときに実施できる」と述べた」

     

    下線部のように、中国は絶えず他国の出方を調べている。秦の始皇帝が、統一を実現した手法がこれだ。一国ずつ「落とし」、最後は中核を手に入れる戦術である。「合従連衡」とは、同盟(合従)を破壊しながら一対一の関係(連衡)を持ち込み、最後は「飲み込む」(占領)のだ。こういう中国伝統の領土拡張策を阻止するには、最後まで「同盟」をしっかりと組むことにある。途中で、心変わりして中国側へつけば、それで「終わり」である。

     

    ドイツの哲学者カントは18世紀末、著書『永遠平和のために』の中で、共和国(民主国)は、同盟を組んで独裁国へ対抗しなければ、平和を維持できないと説いている。同盟を組むことが、平和を維持する唯一の方法である。まさに、現代で言えば集団安全保障論の原型である。

     

    不幸にして戦争になった場合、同盟国は互いに協力して戦術を組めるが、独裁国は同盟軍が少ないので、それだけで戦いにおいて不利になる。日露戦争で、「新興国」日本が強国ロシアに勝利を得たのは、米英が日本を外交戦術で支援した結果だ。当時のロシアは、米英に対抗する力がなかったので、米英の外交力に屈したのである。外交も安全保障において重要な役割を役割を果す。

     

     

     

     

    a0960_008707_m
       


    台湾や韓国は、日本の半導体企業ラピダスが日米政府の支援で順調なスタートを切っていることで「そわそわ」し始めている。日本は、半導体製造措置や半導体素材で世界有数のシェアを持ち、1980年代後半では世界半導体生産のチャンピオンであった。その日本が再び、世界の地政学リスクを背景に最前線へ躍り出てきたのだ。台湾や韓国が、落ち着かずそわそわし出しているのは当然であろう。 

    『日本経済新聞 電子版』(6月25日付)は、「日本の半導体『復活できる』台湾パソコン大手エイサー創業者スタン・シー氏 供給網の日台協力訴え」と題する記事を掲載した。 

    台湾パソコン大手、宏碁(エイサー)の創業者で著名実業家の施振栄(スタン・シー)氏が、6月中旬に台湾で日本経済新聞の取材に応じた。日本の半導体・電子産業について「復活できる」との見方を示し、サプライチェーン(供給網)の日台協力を訴えた。

     

    (1)「近年、台湾の半導体企業が海外へ進出しているが、純粋なコストは台湾が一番安い。工場稼働率や歩留まり(良品率)が高く、人件費も相対的に競争力がある。(台湾以外に)唯一、チャンスがあるのは日本だ。かつて高い生産能力を持った実績がある。先端半導体は研究開発の段階から分野をまたいだ協力が必要だ。日本の材料や製造装置はとても強い。ただ、日本企業は他社への技術移転に消極的で、リスクをとることを避けがちという課題もある」 

    下線部は、日本の半導体製造措置や半導体素材の企業が、技術移転に消極的と指摘している。台湾では、それだけに日本の半導体総合力に「敬意」を表しているのだ。 

    (2)「私は日本の半導体・電子産業が復活できると思う。大切なのは『共存共栄』だ。台湾と日本のそれぞれが強みを持ち寄り、価値を創造する双方向の関係を築くべきだ」 

    台湾は、日本半導体・電子産業が復活可能とみている。日本の貿易収支が赤字である背景には、この問題が深く絡んでいる。それだけに、この難所をクリアできれば、「日本復活」が可能になる。

     

    『中央日報』(6月25日付)は、「半導体復活の日本とどう手を組むか、『これからは韓日の水平協力が必要』」と題する記事を掲載した。 

    最近の日本の半導体復活の動きと関連し、韓国の業界に日本と水平的な協力関係を結ぶべきという主張が出てきた。韓国産業研究院のキム・ヤンペン専門研究員は24日、ソウル大学グローバル工学教育センターで開かれた第2回システム半導体共生フォーラムで、「日本の半導体産業の現況」を主題に発表しながらこのように話した。 

    (3)「キム研究員は、「(日本は)国内供給網構築を加速化し、米国が日本の半導体産業を再び推している。ラピダスが1.5ナノまで作るというなど米国政府の承認がなくてはできないことが起きている。TSMCが日本に工場を誘致することになったのも米国の容認がなかったなら可能だったか疑問」と話した。その上で「(韓国と日本の)ファブレス(半導体設計専門企業)間協力は半導体産業内に最も可能性があるもの。世界のファブレス市場でのシェアは韓国が3%、日本は韓国よりさらに低いため、競争よりは長所を合わせて海外市場進出に協力するのが良い」とした。技術流出などの問題が比較的少ないため協力時には利点があるという話だ」 

    韓国半導体は、日本との協力を要望している。ラピダスは口外していないが、秘かにサムスンを第一標的にしている。AI半導体への進出を目指しており、オープンAIと話合いを始めている。NTT(光半導体)もその意向をみせている。後は、SBGが手がける半導体の製造をラピダスへ委託するかだ。このように、ラピダスはサムスンよりも日本国内に有力ユーザーを抱えている。この点で有利な位置にある。

     

    (4)「キム研究員は、両国産業界の水平的協力を提案した。彼は「韓日間協力はこれまで垂直的だった。韓国は製造し、日本は素材と装備を供給する伝統的協力が続いた。これまでは韓国企業の素材・部品・装備競争力が落ちていたため」と説明した。続けて「最近では韓国の技術力が高まったため従来の垂直協力から水平協力に変化しなければならない」と話した」 

    日韓半導体の水平的協力は不可能だ。韓国の製造装置や素材のレベルが、日本に大きく出遅れているからだ。現実は、依然として「垂直的」関係にある。 

    (5)「キム研究員は(韓国が)規模の経済の面でも米国と欧州、中国など世界的覇権競争主導者に個別のプレーヤーとして対抗するのは容易でないとし、日本との協力を強調した。基本技術がある米国などに対応する案としてキム研究員は「ソニーがオランダASMLの極端紫外線(EUV)装備がなくても希望の工程が可能な露光装備を開発した。韓国のサムスン電子、SKハイニックスがこれを採択する場合、地図が変わるかもしれない」とした」 

    ソニーが、ASMLの露光装置に負けない最先端製造装置を完成させたという。キヤノンもASMLへ肉迫する製造装置を完成させた。期せずして、日本の半導体製造装置が世界的な脚光を浴びている。これも、「ラピダス効果」である。日本の半導体業界へ再起の自信を与えたのだ。

     

     

    a0960_008707_m
       


    中国は、これまで二度も台湾包囲の演習を行った。これは、台湾を軍事侵攻する目的でなく、内部へ恐怖心をまき散らして平和統一論を自然に引き起そうという狙いである。米国シンクタンクは、1年間のシミュレーションを行いこういう分析結果を発表した。戦争をしかけるポーズをみせながら、無血占領するというのだ。この場合、台湾市民は「第二の香港」の運命を甘受する前提である。 

    『朝鮮日報』(6月3日付)は、「1年間ウォーシミュレーションした米専門家ら中国『戦争なしに台湾を支配することは可能』」と題する記事を掲載した。 

    反中基調を前面に押し出す頼清徳・台湾総統が5月20日に就任し、中国と台湾の間で衝突の危険が高まるという懸念が出る中、米国ワシントンの専門家らが「中国は戦争なしでも台湾を『接収』できる」という分析結果を得た。低強度の脅しを繰り返すことで台湾内部の「危険な反中より安全な親中がまし」という世論を拡散させ、米国・台湾関係の弱体化を誘導する戦略を通し、台湾を実効的にコントロールできる-という結論をシミュレーションで導き出した。 

    (1)「米保守陣営を代表するアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)と軍事戦略専門の米国戦争研究所(ISW)は最近、協同で発表した115ページの報告書を通して、明らかにした。AEIとISWは過去1年間、中国当局の立場から「ウォーゲーム(戦争シミュレーション)」形式の仮想シナリオを展開した結果、こうした結果を導き出した。本紙が入手した報告書によると、中国の最終目標は台湾といわゆる「平和協定」を結び、「平和両岸委員会」など政治機構を立ち上げて事実上台湾の支配権を獲得することだ」 

    台湾市民の民主主義への希求を全く無視したシミュレーションである。

    (2)「報告書は、中国が「戦争なき台湾支配」戦略を4段階に分けて進めるとの見通しを示した。頼清徳総統が就任した2024年5月から次期総統選挙がある28年まで、中国が台湾を実質的に支配するため遂行する仮想のシナリオを次のように提示した。第1段階は来年末まで。中国が台湾周辺の航路および航空路を閉鎖し、海底ケーブル切断、電子戦などを通して台湾社会の不安感を造成する。報告書は「(中国の妨害で)きれいな水道を利用できなかったりエネルギーが突然途切れたりして台湾社会は動揺することになり、政権の支持率は下落する可能性がある」とした。頼清徳政権の反中路線が中国をいら立たせ、台湾居住者の危険を大きくしている-という世論を形成することが目社が標だ」 

    過去の台湾大統領選では、直前の中国による威嚇が台湾市民の反発を買って国民党候補が落選した。台湾市民が、中国の脅迫に弱いという前提は間違っている。 

    (3)「2段階は米台関係のかく乱。米国は中国との貿易紛争の過程で、このところ台湾と一層密接になっている。台湾周辺の混乱は、中国ではなく米国のせいだという世論を広めて台湾内部の反米感情を増幅させようというのが目的だ。米国では、米国民1億7000万人が使用している中国企業所有の動画シェアアプリ・ティックトックなど、ソーシャルメディアを動員して「他国の対立への介入を最小限にしよう」という外交基調である孤立主義の雰囲気を拡大する見込みだと報告書は示した。孤立主義は、今年11月の米国大統領選挙に共和党候補として出馬するドナルド・トランプ前大統領が掲げる「アメリカ・ファースト」の基調とも通じる部分がある」 

    台湾市民が、中国の謀略に引っかかるほど愚かではないであろう。台湾政府は、謀略へ警戒しており、AIを使ってまで謀略文書の摘発を行っている。

    (4)「3段階は、海上封鎖など軍事的な脅しを徐々に強めていくと同時に、台湾内部に「中国との和親を通しての平和」世論を拡散させるというもの。報告書は「この過程で韓日など周辺国が台湾問題に神経を使えないように、北朝鮮の核実験および局地挑発などを誘導することもあり得る」と予想した。こうした過程を経て台湾と米国などで「台湾は中国と平和に過ごす方がよい」という世論が固まれば、最後の第4段階を通して平和協定を結び、平和委員会を立ち上げて「支配体制」を完成させるというのが報告書の結論だ。 

    海上封鎖は、国際紛争へ発展するリスクをはらんでいる。「中国との和親を通した平和」世論を拡散すると言うが、中国の甘い戦術はすでに見抜かれている。台湾は、「台湾人」意識が半分以上も占めているのだ。中国の市民権弾圧をみれば、統一論に賛成するだろうか。台湾市民を余りにも軽蔑した分析にみえる。 

    (5)「報告書は、「米国およびインド太平洋地域の同盟諸国の支援に後押しされた台湾内部のいわゆる“分離主義者”を挫折させ、『両岸の平和』という名目で中国の要求に100%応じる(親中)政治家に権力を移譲するのが中国の計画」だとした。報告書は「米国政府が、中国の軍事的挑発の可能性にのみ集中して準備する場合、中国が既に隠密裏に進めている『ハイブリッド強圧戦略』にはきちんと対応できないかもしれない」と警告した」 

    台湾は、野党を含めて中国との統一論がゼロである。この状態で、どのようにして統一論者をつくり挙げるのか。現実離れしたシミュレーションである。

    テイカカズラ
       


    中国は、台湾の民意によって就任した頼総統に対して、その演説が中国への「恭順」の意を示さず、対等であると主張したことに怒っている。早速、得意の台湾包囲の演習を始めたところだ。まさに、中国の「帝王感覚」をみせつけている。台湾は、中国の一省にすぎないという認識の表明である。 

    この台湾包囲の軍事演習は、どんな意味を持っているのか。 

    米インド太平洋軍のスティーブン・スクレンカ副司令官(海兵隊中将)は5月23日、中国人民解放軍が2023年に台湾海峡で実施した軍事演習で台湾侵攻を想定した演習が行われたと指摘した。海上・上空の封鎖、上陸作戦、他国軍の介入への対応などを想定した訓練を実施したと述べた。ただ、中国軍の侵攻が差し迫っているわけでなく、不可避でもないとの見解も示した。オーストラリア・キャンベラの記者クラブで述べた。『ロイター』(5月23日付)が報じた。 

    台湾包囲の演習は、台湾侵攻を想定したものだと指摘している。ここまで手の内をみせてしまえば、台湾防衛の手がかりを与えるようなものであろう。台湾威嚇手段ともみえるのだ。

     

    『毎日新聞』(5月23日付)は、「習近平政権はなぜそんなに怒るのか、台湾包囲し軍事演習する訳」と題する記事を掲載した。

    中国の習近平部は、台湾の頼清徳新総統の20日の就任演説について中台を別の国と見なす「二国論」だと断じ、大規模な軍事演習に踏み切った。「懲罰」という言葉を使い、台湾の民意を一顧だにしない強硬姿勢を示した。中台関係の「現状維持」の解釈を巡り、認識のずれが生じることで緊張が高まるリスクもあらわになった。 

    (1)「これまで中国政府は、台湾が中国に属するという「一つの中国」原則の受け入れを対話の条件として台湾側に突きつけ、歴代の台湾総統の就任演説に神経をとがらせてきた。頼氏は今回の演説で「現状維持」を表明しながらも、「中華民国台湾は主権独立国家」「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」「(台湾も)我々の国家の名称」など台湾の独自性も強調していた。習指導部は、同じ民進党の蔡英文前総統より大きく後退する発言だとして武力による威圧を選択した模様だ」 

    頼総統は、本省人(台湾出身)である。それだけに中国本土に対しては、「対等」という意識であろう。これは、台湾に出自を持つ全ての人たちに共通している。国民党支持者の多くは、本土が出自の外省人である。日本撤退後に移ってきた人たちが多いだけに、「望郷の念」は強い。この人たちは統一派である。中国にとっては、「平和的統一」が困難な状況にある。

     

    (2)「中国紙『環球時報』(電子版)は23日の社説で、2016年の蔡氏による初の就任演説は「不完全な答案」だったが、頼氏の演説は「答案用紙を破り捨てるものだ」と厳しく批判した。中国政府は一貫して頼氏を「トラブルメーカー」と批判しており、台湾海峡の緊張を高めた責任は頼氏にあると主張して、演習を正当化するとみられる」 

    中国は、台湾本省人嫌いが徹底している。頼氏をトラブルメーカーと呼んでいる。これも、まことに礼儀を弁えない話だ。 

    (3)「習指導部は中台統一を悲願とし、国民のナショナリズムに訴えてきた。それだけに国内に弱腰の姿勢は見せられないという内向きの論理も働いたとみられる。だが、力を振りかざすほど、国際社会で高まる対中脅威論に説得力を持たせるリスクもある。実際、呉江浩・駐日中国大使が頼氏の就任式当日の20日、日本が中国の分裂に加担すれば「日本の民衆が火の中に引きずり込まれることになる」と発言して物議を醸した」 

    中国は、清国時代から台湾に対して「化外(けがい)の地」(野蛮な土地)という認識であり、真面目な統治が行われなかった。日本統治へ任せたのは、「渡りに船」であったのが真相である。台湾の近代化は、日本の植民地時代に基盤が成立した。これが、台湾近代史の裏面である。

     

    (4)「本来、経済の停滞に直面する習指導部は外交関係の安定を必要としている。そのジレンマがうかがえたのは演習の規模だ。ペロシ米下院議長(当時)の訪台に反発して弾道ミサイルまで発射した22年8月の大規模演習と異なり、今回は事前に航行禁止区域を公表するほど大がかりなものではなかった。米国などを過剰に刺激しないよう規模や内容を考慮した可能性がある。一方、台湾住民は事態を冷静に受け止め、市民生活に混乱は見られなかった。台湾外交部(外務省)の報道官は「台湾は民主主義の理念を守り続ける。脅迫や圧力を受けても変わることはない」と強調した」 

    民主主義という点では、台湾が中国を引離している。それだけに、台湾で民主主義を捨てて、中国本土の「非言論」社会へ移行したという人たちは限られるであろう。中国の焦りはここにある。 

    (5)「習指導部が今後も軍事、外交、経済などあらゆる面で頼政権に圧力を加え続けるのは必至だ。ただ、こうした強硬姿勢が台湾の「中国離れ」を招き、民進党の長期政権につながった。武力の誇示に頼らざるを得ない現状は、中国の統一戦略の手詰まり感を映し出してもいる」 

    中国が、台湾包囲演習を重ねていけば、台湾の中国離れは一段と進むであろう。下線部のように、中国は台湾政策で手詰まり感を強めている。

    このページのトップヘ