勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済ニュース時評

    あじさいのたまご
       

    ホンダと日産の統合案が破談になった。経営が困難になっている日産を巡っては、報道が錯綜している。米テスラが、日産へ投資するとの報道の一方で、台湾の鴻海(ホンハイ)がホンダ・日産・三菱へ協業を申し入れたとの報道もされている。鴻海は、外為法で経営参加が制限されているので「協業」を打ち出したのであろう。

    『ブルームバーグ』『2月21日付』は、「日産にテスラが投資する計画策定、菅氏含む日本のグループ-FT」と題する記事を掲載した。

    (1)「菅義偉元首相を含む日本のハイレベルグループが、米電気自動車(EV)メーカー、テスラが日産自動車に投資する計画を策定したと英紙『フィナンシャル・タイムズ』が報じた。報道を受け、日産の株価は21日午後の東京市場での取引で上げ幅を拡大。一時前日比12%高の471円まで買われ、2024年12月18日以来の日中上昇率を付けた」


    この情報は、日産がITグループと提携を模索しているという流れに沿ったものだ。菅義偉元首相は横浜が選挙区であり、日産本社も横浜という「地縁」から動きが始まったのかも知れない。地元横浜にとっては、万が一でも日産に「異変」が起こり、撤退するということになれば大きな打撃となる。そこで、政界の長老が仲介しているのかとみられる。

    『日本経済新聞 電子版』(2月21日付)は、「鴻海、ホンダに協業を提案 日産・三菱自含む4社で陣営」と題する記事を掲載した。

    台湾電機大手・鴻海(ホンハイ)精密工業がホンダに協業を提案したことが、21日分かった。鴻海は電気自動車(EV)事業の強化に向けて、日産自動車との提携を模索している。日産傘下の三菱自動車を加えた日台による4社での協業を視野に入れている。


    (2)「鴻海の社内関係者が明らかにした。ホンダと日産は13日に経営統合に向けた協議を打ち切ったが、EVやソフトウエア開発など事業面での提携は継続する考えを示している。日産を巡り事実上の競合関係にあったホンダと手を組むことにより、EVで中国勢や米テスラに対抗する新たな陣営作りを目指す。鴻海は2024年秋ごろから水面下で日産への経営参画を探ってきた。信託分を含めて日産株の約36%を持つルノーと話し合っている」

    ルノーの持つ日産株の売却は、日産がその相手を決める権利を持っている。鴻海は、こういう事情を無視して、日産の頭越しにルノーと交渉するなど「僭越行為」を行っている。日本企業の流儀とは甚だ異なっている。

    (3)「鴻海は、日産の買収観測を巡り、買収ではなく提携だとしている。新規参入したEVの設計・製造受託ビジネスを通じて日本の自動車メーカーと協力したいという。鴻海は、EVのプラットフォームやソフトウエアなど次世代技術の開発に力を入れているが、顧客獲得に苦戦している。ホンダや日産など3社と組めれば、アジアで強力なEVの供給網を構築でき、世界展開の足がかりとなる」

    鴻海EVの経営トップは、元日産の「ナンバー3」とされた人物だ。鴻海は、資金量は豊富でも技術は未知数である。こういう相手企業と組むメリットはあるのか。協業を組めば、技術を持ち出されるリスクが高まるであろう。


    (4)「日産は、北米市場の販売不振により業績不振に陥っている。北米ではEV市場に逆風が吹きハイブリッド車(HV)が売れているが、日産はHVを持っていない。鴻海はHVの技術を持つホンダを含めた協業関係を構築することにより、日産の経営再建の後押しにつながると考えているもようだ。今後は、鴻海の提案に対するホンダの回答や日産の出方が焦点となる。鴻海は、日産への経営参画を模索してきたが、日本側の一部に外資による買収に警戒感があるなか、直接交渉は控えてきた」

    鴻海は、電機メーカーのシャープを強引に合併したが、合併成果はゼロどころか、工場用地売却という最悪の結末になった。こういう鴻海が再び、日本の名門企業を狙っていることから、市場は拒絶反応を示している。外為法上の制限から、自動車企業の買収は不可能である。そこで、鴻海は「協業」という形で接近している。ホンダや三菱が、どういう反応するか「見もの」である。三菱は、歴とした三菱グループ「末裔」という流れから拒否反応をするだろう。






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    中国は、米国によって先端半導体への進出を阻まれている。やむを得ず、レガシーチップ(旧世代半導体)増産に向けて全力を挙げている。政府が、補助金を与えて支援している結果だ。レガシーチップでは現在、台湾がトップシェアである。中国が27年に首位にたつものと予想されている。中国全土で、半導体工場の建設に着手しているのだ。

    『ロイター』(2月10日付)は、「台湾レガシー半導体業界、中国にシェア奪われ戦略転換が不可避」と題する記事を掲載した。

    台湾の力晶科技(パワーチップ・テクノロジー)が、中国東部の合肥市と新たなファウンドリー(半導体製造受託)合弁設立契約を結んだ2015年、同社は有望な中国市場へのアクセス向上を期待していた。しかし9年後、その中国ファウンドリー企業である晶合集成(ネクスチップ)は、レガシーチップ(旧世代半導体)分野で最大のライバルの一つとなってしまった。


    (1)「ネクスチップなどの中国ファウンドリー企業は、28ナノメートル以上の技術で製造される563億ドル規模のレガシーチップ市場で急速にシェアを獲得。価格引き下げ、積極的な生産能力拡大計画に乗り出すことで、自動車やディスプレーパネルに使用する半導体市場でパワーチップや聯華電子(UMC)など台湾企業の優位性を脅かしている。パワーチップ再編後の持ち株会社とその傘下上場子会社である力晶積成電子製造(PSMC)で会長を務める黄崇仁(フランク・ファン)氏は、「われわれのような成熟ノード(レガシー)のファウンドリーは変革が必要だ。そうしないと中国の値下げで事態は一段と混乱する」と語った」

    中国が、世界のレガシーチップ市場で主導権を握るであろうことは、昨年から予想されていた。日本は、これに備えて国内でのレガシーチップ増産に力を入れている。台湾のTSMC工場を九州へ誘致した理由もこれだ。

    (2)「台湾半導体企業の幹部によると、先端半導体技術の追求を米国に阻まれた中国ファウンドリー企業は近年、レガシーチップに注力、政府からの強力な資金援助と低利益率を武器に台湾の競合企業に価格面で優位に立っている。トレンドフォースによると、2024年のレガシーチップ生産能力における世界シェアは中国が34%、台湾が43%。27年には中国が台湾を上回ると予測されている。SEMIによると、23~25年生産開始の新しい工場97カ所のうち57カ所は中国にある」

    世界で、23~25年に生産開始した工場97カ所のうち、中国がなんと57カ所を占めている。このことから、レガシーチップ生産能力における世界シェアは、27年に中国が台湾を上回ると予想されている。


    (3)「台湾のファウンドリー企業は、プロセスの安定性や歩留まりの良さといった点でまだ競争力がある。ある台湾の半導体設計会社幹部によると、23年以降は中国ファウンドリー企業の攻勢が強まっている。中国企業にサプライチェーン(供給網)の現地化を求める中国政府の要請も強いようだという。調査会社IDCのシニアリサーチマネジャー、ガレン・ツェン氏は、台湾の半導体設計会社やファウンドリーはプロセスを専門化し、レガシーチップから多角化する可能性が高いと指摘する」

    台湾のファウンドリー企業は、中国企業に対して歩留まりの良さで競争力を維持している。これは、台湾の製造技術が高いことを示すもので、レガシーチップから多角化する可能性を秘めているとされている。

    (4)「パワーチップの黄氏は、中国市場でパフォーマンスを向上させながら消費電力を削減する技術「3Dスタッキング」に重点を移す計画だと述べた。同社はネクスチップの第2位株主として19%の株式を保有しているが、経営面では積極的な役割を担っていない。米国が対中抑止に乗り出し、顧客がサプライチェーンを中国と中国以外のネットワークに分断せざるを得なくなっていることも多少の追い風になるかもしれない。黄氏はロイターに対し、中国に向かうはずだった注文が台湾に回っているとし、それが加速するとの見通しを示した。台湾のある半導体設計会社幹部は「一部顧客は『メイド・イン・チャイナ』はいらないと言っている」と話した」

    台湾半導体は、米中対立の地政学的メリットを受ける素地を持っている。「メイド・イン・チャイナ」は、西側諸国にとって「リスキー」な存在になってきた。中国、自らがつくりだした政治的危険性が、災いの原因である。


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    AI(人工知能)半導体の開発競争が激烈を極めている。世界で8割超のシェアを握るエヌビディアの「1強」状態に風穴を開けようと、各社は独自の技術と戦略を打ち出している。カナダのテンストレントもこの一角で頭角を現している。テンストレントは、米国半導体大手を渡り歩き「伝説のエンジニア」と呼ばれるジム・ケラーCEOが率いる。日本のラピダスと10年契約で連携している。開発したAI半導体は、ラピダスが生産する手はずである。

    こうしたAI開発状況が、台湾にも知られるようになって来た。ラピダスが、TSMCの「敵か味方か」という切迫感をもって報じられ始めたのだ。ラピダスの最先端半導体製造能力の高さは、一部専門家の間でしか認識されていないようだが、今年4月のラピダスの「2ナノ」半導体試作開始とともに、メディアで取り上げられる機会も増えるであろう。
       
    『レコードチャイナ』(1月22日付)は、「日本の半導体メーカー・ラピダスはTSMCの敵か味方か―台湾メディア」と題する記事を掲載した。

    台湾メディア『FTNN新聞網』(1月20日付)は、日本の先端半導体メーカー・ラピダスについて「TSMCの敵か味方か」と題した記事を掲載した。

    (1)「記事は、日本政府と大手企業8社の出資により22年8月に創業されたラピダスについて、今年4月の2ナノメートルプロセス半導体の試作が順調に行けば、27年より生産開始が可能になるとの情報が流れたと紹介。この情報に対し、台湾のシンクタンク「台湾科技力智庫」の烏凌翔(ウー・リンシャン)氏がインターネット番組の中で「ラピダスはTSMCのライバルになるし、日本はTSMCを『仮想敵』と位置付けてきた」との見方を示したと伝えている」

    ラピダスは、TSMCを上回る「2ナノ半導体」製造技術を開発した。昨年12月、米サンフランシスコで開催された「国際電子デバイス会議(IEDM)」で発表された。電気が、微細な回路から漏れないように特定の層に絶縁膜をつくるSLR技術で成功した。これは、世界で初めての成果である。電圧を細かく制御でき、少ない電力で複雑な計算処理がこなせるようになった。

    ラピダスのSLR技術は、従来の古い2ナノチップ製造法であるFinFETを上回るもの。TSMCやサムスンは、このFinFETを採用しており、ラピダスが技術的に追い抜いたのだ。日本は、再び半導体トップへ立てる希望を持てる段階へ到達した。さらに、ラピダスは、世界初の半導体製造の全自動化を成功させた。TSMCは、前工程の自動化に成功したが、後工程は未完である。ラピダスは、前工程・後工程の全自動化を実現した。これにより、TSMCよりも納期を6割短縮する。

    ラピダスの全自動化は、製品コストを左右する歩留まり率を飛躍的に高める。TSMCの「5ナノ」歩留まり率は、70%程度と推測されている。ラピダスは「2ナノ」操業開始後1年程度で最大90%へ引上げられるとラピダス社長が『フィナンシャル・タイムズ』のインタビューで答えている。その上、納期を6割短縮すれば、競争力は抜群につくであろう。

    TSMCも、こうしたラピダスの急速な技術開発を認知せざるを得なくなったのであろう。TSMC「応援団」は、TSMC不敗を信じているが、現実は全く異なっている。

    (2)「記事によると、烏氏は「日本の政府と民間企業が非常に強い決心を持っていることから、ラピダスはおそらくTSMCのライバルになるだろう」との見方を示した上で、日本が1990年代にメモリチップの生産をやめ、今なおロジック半導体の生産に参加していないものの、関連の設備や材料分野では優位性を持っており「戻ろうと思えばいつでも戻れる状態」にあるとした」

    この記事の誤りを訂正しておきたい。日本は、昔からロジック半導体(非メモリー半導体)技術を持っている。だから、1980年代後半に世界一のシェアを握っていた。問題は、その後「40ナノ」レベルに止まっていたことだ。40ナノが「2ナノ」へ超飛躍したので、間違った否定的情報が氾濫した。すべて、現実を無視した「思い込み」である。

    日本が、半導体製造設備や半導体素材で世界的シェアを握っていることから、最先端半導体へ進出することはごく自然な技術的流れである。驚くことでもないのだ。

    (3)「TSMCの先端プロセス半導体が世界市場シェアの6割を占める中、顧客が単一サプライヤーからの供給に対する不安視や価格面での交渉の余地の拡大といった観点から、同様の生産能力を持つメーカーの増加を歓迎する傾向にあることを要因の一つに挙げている。そして「TSMCは現時点で、ラピダスを敵と見るべきか、それとも味方と見るべきかを判断する必要がある」との認識を示した」

    エヌビディアは、ラピダスへ最先端半導体を発注する姿勢をCEOが明らかにしている。「発注先は1社でなく複数あった方がいい」と東京の記者会見で発言している。エヌビディアにとってもラピダスの存在は好都合なのだろう。ラピダスが、TSMCにとってライバルになり得る条件を備えていることは紛れもない事実だ。

    テイカカズラ
       

    習近平中国国家主席は、中国軍の規律弛緩に頭を悩ませている。いくら取り締まっても汚職を根絶できないからだ。なぜ、こういう事態が起こっているのか。権力が習氏に集中している結果であろう。人民解放軍内部では、習近平氏の権力独占にあやかって、習氏の権力「代行」を装って利権漁りをしているに違いない。習氏の「手形」を利用しているのだ。これでは、偉大な「中華民族再興」が危ぶまれる。

    米国防総省は、12月18日に発表した中国の軍事動向に関する年次報告書で、人民解放軍内部の大規模な汚職問題が、2027年までに軍の近代化を実現するという目標の妨げになる可能性があるとの見解を示した。こうなると、習氏にとっては「一大事」である。

    台湾侵攻には、台湾海峡という地理的・気象的に大きな障壁がある。上陸作戦の時期は、年間で4月と10月しかなく、この限られた期間の作戦行動は困難を極めるのだ。中国軍上層部は、この事実を知っているので、習氏に命令に「気乗りしない」のであろう。

    『ロイター』(12月19日付)は、「中国軍、大規模汚職が27年までの近代化目標妨げもー米国防総省報告」と題する記事を掲載した。

    米国防総省は18日に発表した中国の軍事動向に関する年次報告書で、人民解放軍内部の大規模な汚職問題が、2027年までに軍の近代化を実現するという目標の妨げになる可能性があるとの見解を示した。

    (1)「人民解放軍は昨年以降、大規模な汚職摘発を進めている。今年11月には同軍最高指導機関の中国軍事委員会の苗華委員が「重大な規律違反」の疑いで調査を受けていることが分かった。年次報告書は、昨年7~12月に中国で軍の最高幹部クラスや防衛産業の重役の少なくとも15人程度が職務を解任されたと説明。「人民解放軍は昨年、新たな汚職関連捜査と高官解任の波にさらされており、これは27年の近代化達成目標に向けた道のりに混乱をもたらすかもしれない」と指摘した」

    軍内部では、習近平氏との「懇意さ」を強調すれば、百万力の影響力を持つであろう。「習氏に話を付けてやる」と言ったニセ情報が充満し、汚職の引き金になっているとみるほかない。多くの人は、習氏との関係に繋がれば「金儲け」できると夢を膨らませているであろう。権力の集中が、こういう「悲喜劇」を生んでいるのだ。

    (2)「米政府は、習近平国家主席が軍に対して27年までに台湾に侵攻できる態勢を整えるように命じたとの見方を示している。ラトナー国防次官補(インド太平洋安全保障担当)は報告書発表後にシンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で、これら15人の解任は「氷山の一角」であった公算が大きいと言及。人民解放軍内部で汚職が広がっている状況を示唆するとともに、一連の取り締まりによって軍組織の下部に至るまでリスク回避や機能まひの現象が起きる期間が生まれそうだと語った」

    習氏が、27年までに台湾侵攻態勢を整えるように命令しているが、現場は不可能と判断しているのであろう。軍部は、自軍の戦力を冷静にみているはずだ。台湾海峡を越えて台湾本島へ攻込むことが、地理的・気象的にいかに困難であるかを熟知しているのであろう。兵員と物資の輸送艦が、台湾海峡の「藻屑」になるリスクを高めるからだ。

    (3)「米国防総省高官の1人は、汚職の取り締まりは中国の防衛産業を含めた軍事プロジェクトの進行を遅らせてもおかしくないと指摘した。中国外務省の報道官は会見で、この報告書について、「無責任」であり、米国が軍事的覇権を維持するための口実だと主張。「米国の報告書は、これまでの同様の報告書と同じく、事実を無視しており、偏見に満ちている」とし、米国に対し、こうした報告書の作成をやめ、中米軍事関係の安定維持に向けた実際的な行動を取るよう求めた」

    米国CIAの情報網は、ロシアのウクライナ侵攻直前の情報開示によって、その正確さが証明されている。中国外務省の報道官が、米国に対しこうした報告書の作成をやめ、中米軍事関係の安定維持に向けた実際的な行動を取るよう求めたのは、米国の報告書が「事実」であるからだろう。急所を突かれているのだ。

    台湾海峡は、次のような気象条件に置かれている。
    1)11月~3月は、北東季節風が吹く。
    2)5月~9月は、台風シーズンにあたる。

    上記の期間は、中国軍の台湾本島への上陸作戦が困難であることを示している。特に、最近の異常気象の襲来を考えれば、いつ気象条件が急変するか分らないのだ。上記の期間を除くと、1年で4月と10月が「平穏季節」になるが、このわずか1ヶ月で上陸作戦という危険極まりない戦闘行為が終る保証はどこにもない。となると、中国軍は仮に上陸できても援軍がないので、「自然消滅」の危険性が強くなる。中国軍幹部は、こういう事態の到来を読み込んでいるであろう。こうなると、大真面目に「作戦遂行」とは言えなくなろう。

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    中国ファーウェイが、AI半導体の受注を始めたものの、受託生産を担当するSMIC(中芯国際集成電路製造)の歩留まり率はなんと20%と異常な低さだ。台湾TSMCは、70%である。サムスンは50%程度で大赤字に陥っている。SMICが、20%とすれば「論外」だ。一応、「作れます」という程度の話である。それでも、サムスンは大々的に「受注開始」を発表した。中国政府のメンツがかかっているのであろう。

     

    『ロイター』(11月21日付)は、「ファーウェイの最新AI半導体、来年初めに量産開始へ=関係筋」と題する記事を掲載した。

     

    関係筋によると、中国の華為技術(ファーウェイ)は最新の人工知能(AI)半導体「アセンド910C」の大量生産を来年第1・四半期に開始する計画。一部のハイテク企業にサンプルを出荷しており、受注を開始した。米半導体大手エヌビディアに対抗する狙いがある。

     

    (1)「生産は中国の半導体受託製造(ファウンドリー)最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)に委託しているが、米政府の制裁の影響で最新の露光装置を利用できないため、歩留まり率は20%前後にとどまっている。先進半導体の商業化には70%以上の歩留まりが必要とされる。関係筋によると、ファーウェイの現在の先端半導体「910B」もSMICに生産を委託しているが、歩留まり率は50%前後。このため、ファーウェイは生産目標を減らし、納品を遅らせている」

     

    先端半導体は、一般に「7ナノ」以下を指している。SMICの歩留まり率は20%前後と言えば、「試作段階」の話だ。それでも、大々的に「AI半導体受注」とアドバルーンを上げている。内情を知れば知るほど、追い詰められている中国半導体の悲哀が伝わってくる。歩留まり率20%前後では、大赤字になっている。作れば作るほど、赤字が増えるのだ。サムスンは、「5ナノ」で50%の歩留まり率で大赤字になっており、事業縮小の方向へ動いているほどだ。SMICは、政府から赤字を全額補填して貰わなければ倒産するであろう。

     

    (2)「中国は、米国の制裁を受け2020年以降、オランダの半導体製造装置大手ASMLの極端紫外線(EUV)露光装置を調達できない状態にある。EUV露光装置は最先端半導体を製造するために使用される。関係筋は「ファーウェイはEUVがないため、短期的な解決策が存在しないことを理解しており、政府・企業からの戦略的な受注を優先している」と述べた」

     

    先端半導体は、EUV露光装置を使わなくても製造可能だ。古い装置で何度も印刷する「マルチパターニング技術」を用いれば、膨大な時間と低い歩留まりであるが生産可能である。ただ、わずかな量しかできないのだ。ファーウェイは、「5ナノ・スマホ」発売と騒がれた。だが、半導体はこの手間暇かかる職人芸の「マルチパターニング技術」である。

     

    (3)「SMIC製の半導体は、半導体受託生産世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)製の半導体より性能が劣っており、アナリストや関係筋によると、ファーウェイはSMIC製の半導体をTSMC製の半導体で補完している。TSMCは先に、自社の半導体がファーウェイの910Bから見つかったと米商務省に通知。米商務省はTSMCに対し、AIに使用される先端半導体の中国顧客向け出荷を停止するよう命じた」

     

    SMICは、EUV露光装置の導入を米国によって阻止されているので、手造りの「マルチパターニング技術」に依拠するほかない。TSMCの機械製造半導体と、SMICの手造り半導体の違いだ。中国はどうみても、勝負にならないのだ。

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