中国が警戒する頼清徳(ライ・チンドォー)総統は、5月20日に台湾総統へ就任した。就任演説で「独立論」を封印し、中国と対等の立場で対話に応じる考えを示した。米国など国際社会との連携で、中国への抑止力を効かせると説明した。演説の冒頭で、「(『一つの中国』を前提とした)中華民国憲法の体制に基づき、重責を担う」と語った。中華民国(台湾)憲法では、一つの中国を前提にしているからだ。
中国は、台湾が独立論を主張すれば即刻、「侵攻」する体制を整えている。それだけに、頼総統は「独立論」を封印するほかない。米国からも強く要請されている。中国へ口実を与えないためだ。頼氏には、慎重な言動が望まれるのだ。
『中央日報』(5月20日付)は、「『中国の台湾』vs『世界の台湾』」と題する記コラム掲載した。筆者は、ユ・サンチョル中国研究所長/チャイナラボ代表である。
頼清徳氏(65)が今日、台湾の新しい総統になる。中国の思いは複雑だ。いくつ理由があるが、まず台湾の民心がますます統一から遠ざかる様相だ。台湾国立政治大学の選挙研究センターが2月に発表した世論調査によると、統一を望む台湾人は7.4%にすぎなかった。半面、独立支持は25.3%にのぼった。61.1%の多数は現状維持を選択した。このような構図の中で総統選挙をしたため独立性向の民進党が勝利しやすい。
(1)「頼清徳氏は、前任総統の蔡英文氏よりも強硬な独立主義者だ。中国がいう「中国の台湾」でなく「世界の台湾」と主張する。中国の祖国統一方針に対する明確な反対意思表示だ。未来はどうなるのか。中国の立場ではさらに絶望的だ。頼氏のランニングメイトで副総統となった蕭美琴氏を見るとそのように推察できる。1971年生まれの蕭美琴氏は、父が台湾人、母が米国人、生まれたところは日本だ」
頼氏が、総統を2期務めたと仮定し、蕭副総統が後継としてさらに2期総統を務めると8年になる。今後、16年の民進党政権が続くことになる。これまでの蔡総統時代で8年過ぎているので、実に24年もの民進党政権になりかねないのだ。習近平中国国家主席にとっては、耐えがたい屈辱になるだろう。そうなると、「中国の台湾」でなく、「世界の台湾」という位置づけになる。
(2)「中国は、台湾にいつも同じ血筋であることを強調する。ところが蕭氏は、どう思っているだろうか。北京よりもワシントンや東京に親近感を感じるかもしれない。中国が懸念するもう一つの原因は、台湾の民主化にある。頼氏は自身の当選を「台湾が民主主義と権威主義の間で民主主義の方に立つことにした」とし、国際的に民主主義同盟国と肩を並べるという。また、2300万人の台湾人の意思で台湾の将来を開くと話している」
台湾の将来は、中国が決めるのか。あるいは、台湾が選択するのかという問題になる。これは、台湾独立論と誤解されるがそうではない。独立するかしないかと関わりなく、「台湾人」のメンタリティは中国本土から離れていくという意味だ。
日本の植民地時代から台湾に住んでいた人々(本省人)は、戦後に本土から渡来した人々(外省人)と別の思いを抱いている。本土への愛着は希薄である。それ故、「中国の台湾」と言われてもピンとこないのだ。それよりも、台湾を統治した日本への親しみと憧れがはるかに強い。これは、日本が撤退後に本土から進出した外省人が、本省人を理由もなく弾圧したことへの反発である。この結果、植民地時代の日本の方が、はるかに愛情を持っていたと評価しているのだ。
(3)「これは14億人の中国人全体でなく、その10%にもならない共産党員の意志に基づいて動く中国に対する批判だ。頼氏は内閣の構成でも成熟した民主国家のパターンを見せる。国防相に有名弁護士の顧立雄氏を任命した。文人に国防を任せたということだが、国防を単純に軍事問題でなく政治問題として認識するためだ。また外相には中国の村民自治を研究した学者出身の林佳龍氏を選択した」
頼政権は、文人を国防相に任命した。外相も学者出身である。台湾のソフト路線を強調するのであろう。
(4)「台湾最高情報機関の国家安全局のトップも、軍出身でなく学者出身の蔡明彦氏を任命し、文民統治の雰囲気を漂わせた。国家安全保障を前に出して取り締まりと統制の手綱を引く中国とは完全に違う姿だ。中国は、2004年に台湾民進党の陳水扁氏が総統に再選した当時、大きな衝撃を受けたという。台湾の民主化ロードマップが将来、共産党の権力独占に大きな脅威になると考えたからだ。頼氏の就任式を見る中国共産党の内心は20年前とそれほど変わらないようだ」
台湾の民主化路線は、ますます固まっていく。香港の「中国化」によって、台湾の人々は、さらに「統一」を望まなくなっている。外省人の代替わりが進めば、一段と中国離れが確固としたものになるであろう。中国自身が、民主化路線へ変わらなければ平和裏の統一は困難であろう。





