共産党得意芸「ダメコン」
救いのない減衰経済過程へ
習氏生残りに硬軟合わせ術
国民無視で政権永続は不可
中国の7~9月期GDPは、前期よりも減速した。前年同期比4.6%だが、前期比を年率換算すると3.6%である。西側諸国では、前期比の年率換算が普通表示である。中国経済の実態は、すでに4%割れ状態だ。不動産バブル崩壊で直撃された形である。
中国の潜在成長率は現在、4%台と見積もられている。中国政府が24年の経済成長目標を「5%前後」としているのは、かなり背伸びしたものと言える。現に、7~9月期のGDP成長率が前期比換算で3%台であるのは、低下した潜在成長率に見合った動きだ。
潜在成長率は、労働力の動向が大きく影響する。中国の一人っ子政策が、35年間(1979~2014年)と一世代も続いたので、現在は急速な生産年齢人口比率の低下を招いている。これは、中国経済にとって取り返しのつかない失策であった。この対策として、2025年から15年かけて定年延長(男子63歳、女子58歳)へ踏みきるが、強制的でなく希望者のみとしている。こうした微温的な定年延長策に出たのは、国民の反発を恐れた結果である。
中国経済の弱点は、これから労働力不足が顕著になることだ。西側諸国では、日本を初めとして70歳定年の動きが始まっている。それにもかかわらず、中国の定年延長が15年かけて3歳程度の延長に止まっている。その理由は、国民の反発が強いからだ。共産党独裁政権が、国民の反発を最も恐れているのは奇異にみえる。だが、選挙で選ばれた政権でない弱みが、習近平国家主席を弱気にさせているのであろう。
中国共産党は、国民に選挙権を与えない代わりに高い経済成長率で補ってきた。今後は、これが不可能な状況だけに、中国共産党の基盤は強固と言えない事態へ向っている。これが、中国の将来を占う上で極めて重要な要因となる。
共産党得意芸「ダメコン」
中国共産党は問題が深刻化した場合、政権に傷を付けない目的で急遽、判断を変えることがある。「ダメージ・コントロール:ダメコン」(応急処置)である。9月24日、政府が株価対策を発表したのもその表れである。具体的な財政政策がないままに、株式市場へ「口先介入」して株価テコ入れをした。それが、一過性であることから株価の乱高下を招く騒ぎを招いている。これが、政府への信頼を失墜させるのである。
22年12月、突如としてゼロコロナ解除を決めたのもそれだ。これ以上、事態を放置すると国民の不満が政権に向けられという危機感が強まり方向転換した。医療側に事前連絡しないままに行われたゼロコロナ解除なので、高齢者の感染が激増しわずか2ヶ月で200万人以上の犠牲者を出した。死亡者数の発表もされないままに終わっている。
習近平氏は、なぜ「ダメコン」を多用するのか。ここに中国の直面する問題点が隠されている。習氏の本音ベースの経済政策は、次のようなものとみられる。
1)破綻寸前の地方政府の救済
2)株式市場の浮揚
3)国家主導で自国を産業・技術大国にする方針堅持
4)大規模な需要喚起でなく、金融危機の発生を防ぐ「デリスキング(リスク低減)」
5)経済全体を安定させて24年の成長目標(5%前後)を達成する
これら5項目をみて気付くのは、中国経済がなぜ現在の危機を招いたのかという根本的な視点がないことだ。突出しているのは、3)国家主導で自国を産業・技術大国にする方針堅持である。従来の供給力重視政策が貫かれている。一方、4)大規模な需要喚起でなく、金融危機の発生を防ぐ「デリスキング(リスク低減)」としていることだ。大規模な需要喚起の策を行う意思がみられないのだ。需要不足をカバーして、産業構造の転換を図る意思がないことを明らかにしている。
供給力を重視するあまり、需要喚起によって経済を安定化させる視点が全くないことに注目すべきだ。前述のように、一人っ子政策を35年も続ける「無神経」さは、その後の経済政策にも共通している。不動産バブル崩壊後の本命政策としては、世界レベルからみて対GDP比で20%ポイントも低い個人消費を引上げる。そういう構造転換の発想は片鱗もないのだ。
その基底には、「国民無視」がある。国民をただの「駒」扱いしているのだ。だが、この羊のような駒が、ひとたび立ち上がって反抗することには極度の神経を使っている。それが、「ダメコン」を行わせている。本心で、過去を改めるのでなく目先を変えて「危機回避」するだけだ。
救いのない減衰経済過程へ
「国家主導で自国を産業・技術大国にする方針堅持」には、裏の顔がある。これは、台湾侵攻を前提にしている話だ。習氏が、終身国家主席であり続けられる条件は一つしかない。台湾を統一すると言い続けることだ。そして、軍事的手段に訴えるとも付け加えておく。習氏は、これによって「強い国家主席」を演じ続けられる。(つづく)
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