勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: OPEC経済ニュース時評

    あじさいのたまご
       

    OPECプラスの加盟国が4月2日、日量約116万バレルの自主的な追加減産を5月から年末まで実施すると発表した。減産幅は世界需要の1%に当たる量で、価格を引き上げ、産油国の財政を下支えする狙いだ。米国の消費者物価もようやく頭打ちの状況になってきたが、今回の原油減産は物価上昇をもたらす恐れが強い。夏には、1バレル100ドル説も聞こえる。現在は81ドル強だ。

     

    『ロイター』(4月3日付)は、「サウジ追加減産、予想外とは言えない『力業』の理由」と題する記事を掲載した。

     

    サウジアラビアがまた波紋を広げる行動に出た。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟有力産油国でつくる「OPECプラス」の事実上のリーダーであるサウジなどが追加減産を発表したため、原油価格が3日に高騰したのだ。もっともOPECが置かれた今の立場の強さを踏まえれば、こうした「力業」は予想外というよりは、理にかなっていると言える。

     

    (1)「サウジのムハンマド皇太子が打ち出したこの追加減産が、注目を集めたのは間違いない。世界の供給量の4割を握るOPECプラスが昨年10月、日量200万バレルの協調減産を決めたのは正式な手続きを経た動きだったが、今回の措置はあくまで一部加盟国による「自主的な」減産だからだ。国際エネルギー機関(IEA)など多くの国際予測機関は、中国の需要回復を想定して年内に石油市場の需給が引き締まると見込んでいる。つまりどちらにしても、こうした要因が原油価格を押し上げる可能性はある」

     

    OPECが、減産で原油価格引き上げを目指している。サウジは、金融不安で減った自国の原油収入回復を目指している模様だ。

     

    (2)「一方、サウジは中東地域の安全保障の主な担い手として米国をずっと頼りにしてきた関係で、通常は米国のガソリン値上がりにつながるような軽率な動きは決してしない。ところがムハンマド皇太子には、バイデン政権に「反旗を翻す」だけの経済的な理由が存在する。シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスの経営危機を受け、原油価格は3月に一時15%下がって1バレル=73ドルに沈んだ。これはサウジ産原油の採算ラインに近い水準だけに、同国にとって好ましくない。さらに重要なのは、「ゼロコロナ」政策を解除した中国の需要回復が原油価格を上昇させるはずだとしても、どの程度値上がりするのかは不透明という事実だ。「欧米と異なり、中国の原油消費は旅行ではなく工業が主導する面が強く、工業の業況はまだ十分に上向いていない」

     

    サウジには、サウジの言い分がある。米国の金融不安で原油価格が値下がりしたことだ。一時は、1バレル=73ドル近辺まで下落して、サウジの採算点ギリギリの線に接近したという。この「損失分」を自主減産で取り戻そうという狙いである。

     

    (3)「もしも、サウジが市場シェア喪失、ないし政治的な騒動を生み出すリスクを恐れていたとすれば、追加減産を自重したかもしれない。だがロシアの西側向け原油輸出減少や、米国の新規シェール開発投資が比較的乏しい点から、OPECの価格決定力は高まった。だからムハンマド皇太子は、サウジの市場シェアに大きな打撃を与えずに減産に踏み切れるという喜ばしい状況に身を置いている」

     

    今回の自主減産分116万バレルのうち、50万バレルはサウジの減産である。これだけ減産しても、サウジは市場シェアを失う恐れがないとされる。協調が効いているという自信なのだろう。

     

    (4)「中国の需要が急増し始め、金融システム不安も後退すれば、原油価格は本格的な上昇局面に入ってもおかしくない。ライスタッド・エナジーは、夏までに価格が1バレル=100ドルを突破する可能性があるとみている。そうなれば物価全般を押し上げ、中央銀行当局者が原油価格は現在の85ドル前後を維持すると見込んでいる西側では政策金利が一段と高くなりかねない。しかし、ムハンマド皇太子は既に昨年夏、原油価格の問題でバイデン大統領を悩ますことができると証明し、接近しつつある。今こそ彼が影響力を存分に行使できる時だ」

     

    中国の需要が急増し始め、金融システム不安も後退すれば、原油価格は本格的な上昇局面に入ってもおかしくない、としている。これは、かなり甘い見通しであろう。世界的なインフレが収まっていない段階で、原油価格を引き上げれば、金融引き締めを継続させる要因になるのだ。それは、世界不況を長期化させて、中国の原油需要を増やさせないであろう。となると、1バレル=100ドル説は怪しくなる。

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    米国は、ロシアやサウジアラビアなどが11月から1日200万バレルの大規模な原油減産に合意したことを受け、「サウジがロシアと手を握った」と強く批判する声が上がっている。米国が自国の原油輸出の制限だけでなく、サウジなどに訴訟を起こすことができる「原油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法案」のカードまで出す可能性があると報じられている。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月7日付)は、「OPEC減産『米国で勢い増す報復論』解体も視野に」と題する記事を掲載した。

     

    石油輸出国機構(OPEC)内外の主要産油国で構成する「OPECプラス」が大幅減産を決定したことに対し、米国が反撃に出る構えをみせている。米議会では、OPEC主導の石油カルテル解体や世界貿易機関(WTO)への提訴に加え、加盟国の米国資産凍結も視野に入れた法律制定を目指す機運が高まっている。

     


    (1)「エネ価格高騰を懸念するバイデン米大統領は今夏、OPEC最大の産油国であるサウジアラビアを訪れた。2018年の反政府派ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害事件などを受けて悪化した両国関係を改善する狙いがあった。ところが、バイデン氏はサウジ側から増産の確約を得られなかった。サウジ当局者は市場のバランス取るために必要なことを行うという姿勢を貫いており、今回の大幅減産についても石油需要が減退するとの予測に基づいたものだと説明している」

     

    今夏、バイデン氏はサウジを訪問して、原油増産を申入れたが増産の確約を得られなかった。その挙げ句が、今回の大幅減産の決定だ。米国の怒りが伝わってくる。

     


    (2)「(原油価格引き下げのために)
    バイデン政権関係者は戦略石油備蓄の追加放出を含め、大幅減産に対応していくと指摘。さらに「エネルギー価格に対するOPECの支配力を引き下げるための追加手段や権限を巡り、議会と協議していく」と言明した。エドワード・J・マーキー上院議員(民主、マサチューセッツ州)は、「OPEC説明責任法」と呼ばれる法案を再提出すると明らかにした。法案では、米大統領に対して、OPEC加盟国やパートナーに働きかけ、石油生産や価格に関する協力を廃止するよう交渉することを義務づける内容だ。交渉しても減産を緩和できなければ、米通商代表部(USTR)はWTOでの紛争解決手続きに着手するよう求められる」

     

    米国では、OPECの市場支配力を打ち破るために、「OPEC説明責任法」の再提案が始まっている。OPECが、交渉しても減産を緩和できなければ、USTRはWTO(世界貿易機関)での紛争解決手続きに着手するよう求めるものだ。

     


    (3)「トム・マリノフスキ氏(ニュージャージー州)を中心とする民主党下院議員3人は、
    サウジとアラブ首長国連邦(UAE)から米軍兵士と防衛システムの撤収を義務づける法案を提案している。マリノフスキ氏らは、「バイデン氏による(増産の)申し入れにもかかわらず、サウジ・UAE両国が大幅減産に踏み切ったことは、米国に対する敵対的な行為で、ウクライナでの戦争でロシアの側につくことを選んだ明確なシグナルだ」と指摘。「今回の決定は、米国と湾岸諸国のパートナーとの関係において転換点となる」と主張した」

     

    サウジとUAEの両国は、米軍兵士と防衛システムによって守られている。それにも関わらず、米国の要請を断わりロシアの要求に従ったのは、利敵行為という受取り方をしている。

     


    (4)「アナリストやロビイストの間でさらに影響が大きいと指摘されているのが、「石油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法案」だ。米司法省が反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反でOPEC加盟国を提訴することを認める内容で、20年余り議論されているが、可決に至ったことはない。米国の法律では現在、主権国家について、相手側の政府の同意がない限り、提訴することはできない。だが、NOPECでは、独占行為の禁止を定めるシャーマン法に基づき、司法省が米国の裁判所でOPEC加盟国を価格操作で提訴することが可能になる。さらにその結果生じた損害の賠償原資に充てる目的で、米国内に所有する資産を凍結することが認められている」。

     

    NOPEC法案は、米司法省が反トラスト法(独占禁止法)違反でOPEC加盟国を提訴することを認める強烈な内容だ。調査会社クリアビュー・エナジー・パートナーズのアナリストは顧客向けノートで、米国がこうした権限を行使すれば原油市場へ劇的な介入となると指摘する。介入に踏み切る兆候をみせれば、「OPECプラスは戦略を見直し、『市場の均衡化』という役割を放棄する恐れがある。そうなれば、原油暴落を招き、世界の余剰生産能力が枯渇しかねない」というのだ。

     


    (5)「(OPECでは、
    NOPEC法案に反対している)とはいえ、国内の政治事情がバイデン氏の背中を押すかもしれない。バイデン氏は目下、インフレを抑制するよう圧力を受けている。ガソリン価格は夏場にほぼ一貫して下がってきたが、足元では上昇基調に転じており、バイデン氏にとっては中間選挙を控え、厄介な状況に陥っている。米当局者は、ディーゼルやガソリンの輸出禁止措置もあり得るが、近く導入されることはないとの見方を示している。バイデン政権はここまで極端な措置に踏み切る前に、価格が再び跳ね上がるか、見極める考えのようだ」

     

    NOPEC法案が、実際に米議会で審議されるようになれば、世界の原油市場は大混乱に陥る。ロシアが裏でOPECを操作できる余地は消えて、ロシア経済自体が破綻する。ロシアにとっても正念場になろう。OPECを存続させたければ、米国の意向も参酌すべしという妥協論が出るだろう。原油カルテルのOPECは、存続を賭けた方向にある。


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    原油価格は、ロシアのウクライナ侵攻時に1バレル=90ドル見当であった。それが、一時は120ドルを超えるまで暴騰した。現在は、80ドル台まで沈静化している。すでに、ウクライナ侵攻前の状態だ。原油先物相場で見る限り、ウクライナ侵攻は「終息」という見立てになっているようだ。

     

    ここで、慌てているのが産油国のOPECである。1バレル=80ドルが産油国の財政収支均衡価格という。OPEC(OPECプラス)は5日、ウィーンで閣僚級会合を開き、11月から日量200万バレル減産することで合意した。世界的な金融引き締めで景気が後退し、原油需要が減るとの見方が強まるなか、産油国の財政圧迫を招く原油相場の下落に歯止めをかけようというものだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(10月5日付)は、
    産油国 防衛ライン『80ドル』原油下落歯止めに大幅減産」と題する記事を掲載した。

     

    石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」が日量200万バレルの大幅減産を決めたのは、産油国にとって財政収支の悪化を招く原油価格の下落に歯止めをかけるためだ。会合前の原油価格は収支が均衡する「防衛ライン」の1バレル80ドル前後で推移していた。このまま放置すれば、一段の財政悪化を招くと危機感を強めていた。

     

    (1)「米欧の中央銀行がインフレ退治へ金融引き締めを加速し、世界では景気減速懸念が強まっている。原油需要も落ち込むとの見方から、国際指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は9月26日、一時1バレル76ドル台前半まで下落し、1月上旬以来の安値を付けた。産油国にとって看過できない水準に下がっていた」

     

    かねてから、1バレル=80ドル割れになると産油国に深刻な財政欠陥が起こると指摘されていた。日量200万バレルの大幅減産は、価格立て直しに必要としている。

     

    (2)「中東産油国は国家の歳入の大部分を原油に依存し、原油価格の下落は財政収支を悪化させる。国際通貨基金(IMF)の推計によると、産油量首位のサウジアラビアの財政収支が均衡する原油価格は1バレル79.2ドル。足元の原油価格がこの水準を下回ると、財政赤字になることを意味する。財政収支が均衡する価格は国によってばらつきがあるが、産油量2位のイラク(75.9ドル)など70ドル台後半に集中する。80ドルが主要産油国に共通する「防衛ライン」といえる」

     

    産油量首位のサウジアラビアは、財政収支均衡の原油価格は1バレル79.2ドルという。80ドルを防衛ラインとする背景はこれだ。

     


    (3)「各国では脱炭素投資などで財政支出が増え、均衡価格が上昇傾向にある。産油量3位のアラブ首長国連邦(UAE)の均衡価格は2000年~18年平均で約50ドルだったが、足元で76.1ドルに上昇している。再生可能エネルギーなどへの投資拡大方針を掲げるなど、各国は積極財政を打ち出す。サウジは新型コロナで石油収入が急減した20年は財政状況が厳しかったが、経済再開やロシアのウクライナ侵攻後の原油高が追い風になった」

     

    産油国も、脱炭素投資などで財政支出が増えている。このため原油の財政収支均衡価格が上昇している。UAEの場合、かつては50ドルの均衡価格が現在、76ドルまで上がっている。「脱炭素投資」で原油の均衡価格が上がっているのだ。

     


    (4)「OPECプラスの主要メンバーであるロシアにとっても、原油価格の下落は悩みの種だ。ロシアはウクライナへの侵攻で膨らむ戦費を原油価格の高騰で賄っている。国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシアの石油輸出による月間収益は推計177億ドル(約2兆5500億円)で、6月以降の原油価格の下落で12億ドルほど収入を減らしたとみられている。エネルギー調査機関などの推計では、西側諸国の禁輸などでロシアの生産量が落ちた分、ロシアの財政均衡に必要な原油価格は80ドル前後と以前の60ドル台から上昇したとみられている。会合前には、大幅減産の検討を求めていたのはロシアだったとの見方も出ていた」

     

    ロシアは、ウクライナ侵攻ですでに8月単月で財政赤字になっている。自業自得であるが、ロシアの場合は経済制裁により1バレル20ドル程度の値引きを販売している。ロシアは、国際市況通りの価格販売でないのだ。EU(欧州連合)側は、ロシア産原油購入打切り目標を今年年末としている。ロシアは、ますます値引き販売を余儀なくされるよう。

     

     

     

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    ロシアは、ウクライナ侵攻によって国際秩序へ挑戦したが、西側諸国から強い拒絶反応を受けている。経済制裁の一環として、ロシアからの石油輸入を禁止したからだ。これによって、ロシアの原油生産量は3割も減少すると、IEA(国際エネルギー機関)が予測している。ロシア経済の危機である。

     

    産油国はこれまで、ロシアの反米政策に引きずられてきた。だが、ウクライナ侵攻に見せた厳しい米国の拒絶政策で、米国のリーダーシップを見直し協力姿勢を見せ始めている。産油国におけるロシアの力は、確実に削がれる事態になった。予想外の展開である。

     


    米『CNN』(3月17日付)は、「ロシア石油生産 近く3割減の可能性 IEAが供給危機に警鐘」と題する記事を掲載した。

     

    国際エネルギー機関(IEA)は16日、ロシアが近く原油生産の3割削減を余儀なくされる可能性があると指摘した。サウジアラビアなどの主要なエネルギー輸出国が増産を始めない限り、世界経済はここ数十年で最大の供給危機にさらされると警鐘を鳴らしている。

     

    (1)「ロシアは原油輸出量で世界第2位。IEAによると、大手石油会社や商社、海運会社がロシア産石油を敬遠し、ロシア国内でも需要が低迷するなか、4月には日量300万バレルの生産削減を強いられる可能性がある。ロシアはウクライナ侵攻前、日量約1000万バレルの原油を生産し、その約半分を輸出していた」

     


    ロシアは、4月にも日量約1000万バレルの原油生産が、同300万バレルの減少となる見通しになった。西側諸国の原油輸入禁止措置が、大きな影響力を持つからだ。

     

    (2)「IEAは月次報告書で「世界市場へのロシア産石油の輸出が失われることの意味合いは、決して小さくない」と説明。今回の危機がエネルギー市場に長期的変化をもたらす可能性もあると指摘した。ロシア産石油についてはカナダや米国、英国、オーストラリアが輸入を禁じており、ロシアの輸出の約13%に影響が出ている。しかし、大手石油会社や世界の銀行が取引停止に動いているため、ロシアは原油を大幅に割り引かざるを得ない状況だ」

     

    ロシアが3割減産になると、ロシア経済はウクライナ戦争の戦費(1日200億ドル~250億ドル)が厖大なだけに、経済的な圧迫も大きくなる。財政破綻に追い込まれかねなくなった。

     


    (3)「欧米の大手石油会社は相次いでロシアでの合弁事業や提携を解消したほか、新規プロジェクトも停止した。15日には欧州連合(EU)が、ロシアのエネルギー産業への投資禁止を発表した。今のところ、需給ひっ迫が緩和する兆しはほとんどない。世界で大幅な余剰能力を持つ国はサウジとアラブ首長国連邦(UAE)のみ。両国を含む石油輸出国機構(OPEC)加盟国やロシアなどで構成する「OPECプラス」はここ数カ月、日量40万バレルずつの小幅増産を行っているが、増産目標を達成できないことも多い」

     

    UAEは、米国の要請を受けて原油増産に応じる姿勢を見せている。ロシアの生産減をカバーする姿勢をみせている。

     

    『日経ヴェリタス』(3月20日付)は、「ウクライナ危機、中東への影響は 池内恵東大教授に聞く」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「(質問)UAEの駐米大使はOPEC加盟国に増産を促していると表明しました

    (答)ロシアと協調すればむしろ多大なリスクを抱えると気づき始めたようだ国際社会がロシアのガスや石油を買わなければ、ロシアの産油国としての影響力は大きく弱まる。大規模な密輸も難しく、安く買いたい中国と安く売らざるを得ないロシアの間で取引が成立すれば、ロシアの中国への従属が進む。「OPECプラス」が崩壊し、OPECだけで市場の独占を狙うことになるだろう」

     

    産油国は、ウクライナ戦争で国際的非難を浴びているロシアと協調する危機感を強めている。こうして、産油国ロシアの力は弱まる方向だ。今後、ロシアを含めたOPECプラス」から、ロシアが脱落した元の姿である「OPEC」へ戻るであろう。

     


    (2)「
    石油価格が高すぎると、需要減につながる。米国から制裁を受ける事態にもなりかねないため、OPECは、できる限り増産に力を尽くすという態度を示す方向へと転換していくのではないか。ただ、中東産油国はロシアをテコにして対米交渉力を強めることに慣れてしまっているため、できるだけロシアとの関係持続を望むはずだ。米国が"見返り"を明確に示さない限り、中東諸国の中立的な姿勢は続くとみる」

     

    ロシアが抜けて「OPEC」に戻るとしても、米国はこれら諸国の利益を考慮した行動を取らないと、米国寄りにならず「中立」姿勢を維持するであろう。

     


    (3)「ロシアは、エネルギー市場を不安定化させ、新たな石油ショックの脅威によって米国を屈服させるという絵を描いており、(米・イラン核合意を)邪魔をする展開は続くとみる。ただ米・イラン共に核合意再建への意欲が強い。合意が再建されるなら(イラン産原油の禁輸が解かれ)エネルギー価格が沈静化する見通しなのも交渉を後押しする。ロシアが横やりを入れ続け過ぎると、6カ国の核合意の枠組み自体がなくなり、イランと米国が直接交渉することになろう」

     

    イラン核合意をめぐって「六ヶ国協議」が行なわれている。ロシアが、米国とイランの合意成立を邪魔すれば、米国とイランは直接交渉で合意を再建させ、原油の禁輸が解かれるであろう。こうなると、ロシアは、OPECからもイラン核合意からも排除されて最悪事態を迎える。米国は、ロシアの原油生産を抑制し、OPECやイランの増産でカバーする戦術を軌道に乗せる努力をするであろう。貧乏くじを引くのは、ウクライナ戦争を起したロシアとなる。

     

     

     

     

     

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