勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: フィリピン経済ニュース時評

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    日本とフィリピンは、エネルギーと防衛面で協力関係を一段と緊密化することになった。エネルギーでは、原油備蓄を日本で行い製品化を日本企業へ委託する形が取られる。これによって、これまでの石油製品輸入国から脱して、「自国供給」という形に代り安定化する。日本は、原油輸入・精製という一貫過程を請負うことでフィリピンとの関係が強化される。

     

    この方式は、ベトナムも採用するとみられる。5月8日開催のASEAN首脳会議では、域内で石油備蓄や供給網の強化で協力することを確認した。1986年当時の加盟6カ国で結んだ「ASEAN石油安全保障協定(APSA)」の強化へ、初めて動き出すことになった。この資金100億ドルは日本が提供するもので、フィリピンはこの第1号になる。

     

    『ロイター』(5月28日付)は、「日比首脳、両国関係の格上げで合意 安保・エネルギー分野で連携強化」と題する記事を掲載した。

     

    高市早苗首相とフィリピンのマルコス大統領が28日、東京・元赤坂の迎賓館で会談し、両国関係を「包括的・戦略的パートナーシップ」に格上げすることなどを盛り込んだ共同声明を発出した。マルコス氏は国賓として来日した。フィリピン大統領の国賓訪日は2015年のアキノ大統領以来となる。同国は今年、ASEAN議長国でもあり、日本は自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向けても連携を深めたい考えだ。安全保障や経済など幅広い分野での関係深化を図ることで、東・南シナ海で軍事的威圧を強める中国に対抗する狙いもある。

     

    (1)「会談後の共同記者発表で両首脳は、軍事情報を安全に共有するための「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」締結に向け、正式に交渉を始めることも明らかにした。長引く中東情勢の悪化を受け、フィリピンや東南アジア諸国連合(ASEAN)におけるエネルギー備蓄・供給強靱化に関する日本の協力についても合意した。共同記者発表で高市氏は「厳しさを増す地域の戦略的環境に対処すべく、今後もフィリピンとの協力を深化させていく」と述べた。マルコス氏は「インド太平洋地域で現在生じている課題、中東情勢とエネルギー安全保障への影響を含む地域・国際問題についても有意義な意見交換を行った」とし、「今回の充実した会談は、平和・外交・国際法の順守という共通の価値観と友情を基盤として、フィリピンと日本の包括的・戦略的パートナーシップが力強く前進していくことを示すものだ」と語った」

     

    「GSOMIA」という言葉に記憶はありませんか。韓国の文大統領(当時)が、反日の切り札として日韓GSOMIAを破棄するとして、米国から「大目玉」を食らった事件だ。日比は、この最高級軍事情報を交換することになった。日本は、南シナ海の軍事情報が入手できる。日本とフィリピンは、同盟国に次ぐ強い結束力を固める「包括的戦略的パートナーシップ」を結ぶことになった。

     

    (2)「安全保障面でも両国は関係を深めている。日本は4月、防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、殺傷能力のある装備品の輸出を解禁した。フィリピンに対しては海上自衛隊のあぶくま型護衛艦などの輸出を念頭に防衛当局間の協議が進んでいる。今回の首脳会談を経て、両国は協議を加速化させる。加えて、両国はエネルギー備蓄について、日本からフィリピンなどへの技術提供も進める。高市氏が主導して4月に東南アジア諸国など合意した「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ」(パワー・アジア)のもと、エネルギー供給や原油・石油製品などの相互融通についても協力強化を目指す」

     

    日本の中古護衛艦をフィリピンへ輸出する件も交渉中である。フィリピンのアキレス腱であるエネルギー備蓄については、冒頭に記したように話が進んでいる。フィリピンは、2020〜21年に相次いで閉鎖された。この結果、日本支援の「POWER Asia100億ドル支援」は、願ってもないチャンスである。この資金を使って、日本で原油備蓄を行う。製品化は、日本の製油所へ委託する形となる。フィリピンは、石油製品不安から解放される。

     

    日本に備蓄枠を置く国は、次の国が予想されている。

    フィリピン(実現)、ベトナム(有力)、インドネシア(検討中)、マレーシア(可能性大)、シンガポール(共同備蓄の拡大)などだ。こうして、ASEANの石油安全保障の中核が、日本へ移ることになろう。

     

     

     

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    小泉進次郎防衛相は5月5日、訪問先のマニラでフィリピンのテオドロ国防相と会談した。海上自衛隊が、保有する中古の護衛艦の輸出に向けた実務者協議の枠組みをつくることで一致した。実現すれば、海自が使える整備拠点が増え、有事への備えにもつながる。

     

    フィリピン軍は長年にわたり国内の治安維持を主な任務とし、対外防衛は同盟国の米軍に依存。このため予算が陸軍に集まり、海空軍は後回しにされてきた。しかし、1992年に米軍がフィリピンから撤退した後、中国が南シナ海に建造物を設置。その後も海洋進出の動きを強め、海警船による比船への放水や体当たりといった威圧を繰り返す。

     

    こうした中、比政府は軍の近代化に取り組んできたが、予算の制約などを背景に思うように進まず、現有の主力戦闘艦はフリゲート艦数隻にとどまる。日本の2025年版『防衛白書』によると、中国軍が保有する近代的駆逐艦・フリゲート艦は94隻にも上る。比軍が調達を目指す「あぶくま型」護衛艦は、日本で1989~93年に6隻が就役。全長109メートルで対潜・対艦ミサイルなどを備え、7600超の島々からなるフィリピンの防衛力底上げにつながるとみられている。護衛艦輸出は、フィリピンの対日信頼度の高さを示している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月5日付)は、「日本・フィリピン、護衛艦の輸出協議へ 防衛相会談で合意」と題する記事を掲載した。

     

    日本の輸出対象は、「あぶくま」型護衛艦を想定する。日本政府が4月下旬に完成品の防衛装備品の輸出に制約を課す「5類型」を撤廃し、本格的に議論を始める環境が整った。小泉氏は、会談後の共同記者発表で「防衛協力をさらに深化させ、地域の平和と安定を確保するためにともに取り組む」と強調した。テオドロ氏は日本の防衛装備品の輸出規制緩和に触れ「できるだけ早期に具体的成果を出していきたい」と述べた。

     

    (1)「装備品の輸出に向け、防衛当局間のワーキンググループで協議する。あぶくま型のほか海自の練習機「TC90」について話し合う。教育や訓練、整備や運用などを含めた「包括的な装備協力」の実現をめざす。比海軍は他国軍との戦闘に使える艦艇が少ない。米調査会社グローバル・ファイア・パワーによると、同軍が持つ艦艇の9割超が警戒監視用だ。あぶくま型は対潜水艦・艦船ミサイルや魚雷などを備え、汎用性が高い。1989〜93年の間に計6隻が就役し海自の旧式の部類に入る」

     

    防衛装備品輸出は、国家間の連携を強化するメリットがある。防衛は、単独から共同へと広がりをみせている。日本は、日米安全保障条約という枠組みの中で同士国と連携強化する。これが、経済面での繋がりを強めるメリットがあるのだ。いわゆる、経済安全保障という連携である。

     

    (2)「日本にとっては、比海軍の能力強化を助けると同時に、海自が使える整備拠点を東南アジアに広げる狙いがある。艦艇を長期間動かすにはメンテナンスが欠かせないものの、整備できる施設は限られる。フィリピンがあぶくま型を導入すれば、海自の艦艇を扱える拠点を同国に置ける。自衛隊が使える施設を増やして有事の際のリスクを分散する。フィリピンは、中国の軍事力拡張への警戒を高めている。中国は南シナ海で「九段線」という独自の境界線による管轄権を主張する。中国海警局の船がフィリピン沿岸警備隊の船舶や漁船に衝突、放水などして妨害する事例が頻発する」

     

    比海軍は装備の貧弱さから、常に中国軍の威圧を受けてきた。中国軍による進路妨害は日常茶飯事であり、ホースで水を掛けられるという屈辱を舐めさせられてきた。日本の中古護衛艦が登場すれば、そのような事態も避けられるであろう。

     

    (3)「南シナ海は、日本にとっても太平洋とインド洋をつなぎ貿易に欠かせないシーレーン(海上交通路)の要衝だ。中国による一方的な主張を黙認すれば、日本も資源などの輸入に支障が出かねない。防衛相の会談後に発表した共同プレスステートメントでは、南シナ海情勢を巡り、中国を名指ししつつ「深刻な懸念の共有」の文言を盛り込んだ。日本とフィリピンはともに米国と同盟を結ぶ。比軍は4日、フィリピン北部で大規模な合同演習「バリカタン」の一環として米軍とともに上陸阻止訓練を実施した。日本の自衛隊も参加した。比軍への支援で、米国を含む3カ国で中国への抑止力を高める」

     

    南シナ海の中国軍占拠は、国際法違反という判例が出ているが、中国の完全無視によって違法占拠が続いている。こうして、威圧によって近隣国を隷属させるという、現代では最も忌み嫌われる国家になっている。

     

    (4)「アジア太平洋地域では、インドネシアが中古の潜水艦、ニュージーランドが三菱重工業の「もがみ」型護衛艦改良型に関心を持つ。フィリピンへの輸出が成功すれば、今後の艦艇輸出に弾みがつく」

     

    日本製武器は、インドネシアやニュージーランドにも広がりそうである。武器は、平和を守る手段であって他国侵略の手段ではない。中国は逆になっている。南シナ海の違法占拠こそ、武力を使った領土拡張である。

     

     

     

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    フィリピンは、南シナ海の自国領の島嶼をめぐって中国の軍事的圧力にさらされている。中比両軍の摩擦も日常化しており、フィリピンの対中感情は悪化したままだ。こうした状況下で、フィリピンは米ミサイルシステム「タイフォン」の配備を認めた。最先端の中距離ミサイルシステムであるタイフォンは、射程が最大2500キロメートルで、中国による台湾侵攻を抑止するうえで極めて重要である。中国は、小さなフィリピンの島嶼を狙って大きな代償を払うことに。賢明な振舞とはほど遠い話だ。 

    『日本経済新聞』(11月9日付)は、「フィリピン ミサイル配備の価値」と題する記事を掲載した。筆者は、フィリピン大学アジアセンター上級講師リチャード・ヘイダリアン氏である。 

    フィリピンは、ドゥテルテ前大統領の下で中国、ロシアとの関係強化を試みたが、成果は上がらなかった。新しい政権が誕生すると、米国のインド太平洋戦略の要の一つへと急速に変貌した。2022年に就任したマルコス大統領は外交政策を再構築し、南シナ海を巡る紛争でより妥協しない姿勢をとるようになった。フィリピンが重要なのは独特の地理的条件のためだ。南シナ海にあり、台湾との間に西太平洋につながるバシー海峡を抱える。近隣海域や台湾を支配しようとする中国にとって障害になっている。
     

    (1)「フィリピンへの米ミサイルシステム「タイフォン」の配備を巡るドラマほど、フィリピンの地政学上の重要性を示す例はない。最先端の中距離ミサイルシステムであるタイフォンは射程が最大2500キロメートルに達する。中国による台湾侵攻を抑止するうえで極めて重要だ。中国はフィリピンに対し、キューバ危機のような対立が発生するリスクが高まると繰り返し警告している。だが、南シナ海で中国との度重なる衝突に追われてきたフィリピンは、ミサイル配備を自国の新たな抑止戦略の中心と捉えている。将来的に先端の兵器システム獲得や防衛産業の強化につなげることも目指している」 

    フィリピンは、米ミサイルシステム「タイフォン」の配備を決めた。射程が、最大2500キロメートルもあるだけに、中国へは大きな軍事的な睨みをきかすことになる。 

    (2)「フィリピンは、米国との1世紀にわたる同盟関係にもかかわらず、地域で軍の近代化が最も遅れている国のひとつだ。その一因はマルコス元大統領の独裁政権時代にさかのぼる軍の根深い汚職にある。さらに数十年にわたり反政府武装勢力の鎮圧に重点を置いてきたことは、海軍や空軍を犠牲にして陸軍を肥大化させる要因になった。冷戦時代には米国最大の海外基地を擁した。慢心した無能なエリート層は国家安全保障を米国にほぼ丸投げしていた」 

    これまでのフィリピンは、軍事的に弱体であった。これが、中国の南シナ海進出を許すことになった。フィリピンは今、この反省に立って外交・軍事の戦略を進めている。

     

    (3)「米国防総省が、新たに開発したタイフォンを配備するという決定は、象徴的にも運用面でも大きな意味を持つ。最新の報告では台湾に近い北部イロコスノルテ州に配備されている。台湾有事の際には、中国南部に配備されている「空母キラー」と呼ばれるミサイルシステムを標的にできる可能性がある。米国防総省は最終的に日本の南からグアム、フィリピン北部に連なる「ミサイルのグレートウォール」を構築しようとしている。中国は、フィリピンへのタイフォン配備が状況を一変させる可能性があると考え、外交による警告と軍事力による威嚇の両方を強化した」 

    フィリピンは、日米と一体化した防衛ラインへ加わって、外交力と軍事力によって中国へ対抗する姿勢を鮮明にした。 

    (4)「フィリピンは、ミサイルシステムの配備による外交危機を回避しようとはしていない。フィリピンは、数十年ぶりに自国の防衛能力を飛躍的に高めることができる立場にある。米議会は、フィリピンへの数十億ドル規模の防衛支援法案を支持する。ロムアルデス駐米フィリピン大使によると、今後5年間で最大30億ドル(約4600億円)に上る可能性がある。フィリピン自身も軍事力の強化に最大350億ドルを投資することを目指している。米国の先端兵器システムの配備と購入は、中国からの海洋安全保障上の脅威の監視と抑止に重点を置くフィリピンの新しい「包括的群島防衛構想(CADC)」の中核をなす」 

    フィリピンは、「包括的群島防衛構想」によって南シナ海の自国領を中国から防衛する姿勢を鮮明にしている。

     

    (5)「米国の戦略兵器システムを配備することで、中国による威圧的な行動が増えるのは確実だ。それでも自国の軍の近代化を加速し、インド太平洋地域で台頭できるのであれば、こうした地政学上のリスクを冒す価値はある」 

    フィリピンは、中国の軍事的威嚇を払いのけて自国軍の近代化を進め、インド太平洋地域で信頼される国家を目指そうとしている。明治時代の日本が、ロシアの圧力をはねのけようとしたことと似通った状況にある。

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    フィリピンは、南シナ海の自国所有の島嶼を中国軍に占領されており、防衛面で米国と積極的に協力する姿勢を見せている。ドゥテルテ前大統領時代は、米国と摩擦を起していたが、マルコス新大統領になって対米姿勢が一変した。

     

    『ニューズウィーク』(11月22日付)は、「南シナ海でわが物顔の中国を警戒、米比が防衛協力拡大で合意」と題する記事を掲載した。

     

    中国は南シナ海で、いわゆる「九段線」内の全ての島や礁、砂堆の領有権を主張している。オランダのハーグにある国際仲裁裁判所は2016年、この九段線には法的根拠がなく無効だと認定した。フィリピンと中国が争ったこの裁判の判決を受けて、アメリカをはじめとする複数の国がフィリピンへの支持を表明したが、中国は判決を全面的に拒否した。

     

    (1)「フィリピンと中国の間では、2012年に中国海軍がフィリピンからスカボロー礁の実効支配を強引に奪って以降、何度も小競り合いが起きている。スカボロー礁における中国の不当行為は、これを受けてフィリピンが国際仲裁裁判所に中国を提訴し、大きな注目を集めた(この結果「九段線」は法的根拠なしとの認定が下された)。昨年11月には、フィリピンが実効支配しているセカンド・トーマス礁に向かう補給線を中国海警局の船舶が妨害する問題も発生した。中国は、フィリピンでサモラと呼ばれるスービ(中国名:渚碧)礁を含むスプラトリー(南沙)諸島の3つの礁を完全に軍事化している」

     

    フィリピンは、日本とも防衛面で積極的な交流を始めている。日本・フィリピン外交・防衛「2プラス2」会合も始めた。フィリピン軍と自衛隊の合同演習が可能になるよう、ACSA(物品役務相互提供協定)と円滑化協定(地位協定)も検討段階に入っている。これが実現すると、日本とフィリピンは「準同盟国」並みの親密さを保つことになる。

     

    (2)「こうしたなか、ハリス米副大統領が20日夜にフィリピンに到着した。ハリスはジョー・バイデン米政権の一員としてフィリピンを訪問した最高レベルの米政府高官となり、このことは、6月末にフィリピン大統領に就任したばかりのフェルディナンド・マルコスJr.新大統領が、前任者のロドリゴ・ドゥテルテ前大統領よりもアメリカとの同盟関係を重視していることを示している。マルコスは、17日にAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に出席するため訪問していたタイのバンコクで、中国の習近平国家主席と初会談。21日にはハリスと会談を行い、「アメリカを含まないフィリピンの未来はないと思う」と述べた」

     

    フィリピンは、「アメリカを含まないフィリピンの未来はない」とまで、米国への関係強化に前向きである。日頃、中国の横暴な行動に耐えてきているだけに、中国へ一矢報いたい気持ちが強いのであろう。

     

    (3)「この会談に先立ち、ハリスはフィリピンに対して、1951年に締結された米比相互防衛条約の下での協力を改めて確認した。ドナルド・トランプ米政権以降、南シナ海でのフィリピンに対する攻撃も、米比相互防衛条約の適用対象となっている。ハリスは「南シナ海に関する国際ルールと規範を守るため、我々はフィリピンと共にある」と述べた。「南シナ海において、フィリピン軍や公用船舶、航空機が武力攻撃を受けた場合、アメリカの相互防衛の約束が発動されることになる。これがアメリカの揺るぎない決意」と指摘する」

     

    中国軍は、米軍がフィリピンから撤退した後に、南シナ海を占拠した経緯がある。フィリピンはこれによって、島嶼を中国軍に奪われる結果となった。米比相互防衛条約(1951年)がありながら中国の侵略を許したのは、米国との関係が円滑でなかった結果である。フィリピンは、大きな痛手を被ったのだ。

     


    (4)「
    ある米高官は20日、ハリスは演説で「主権や領土の一体性、航行の自由」をはじめとする原則に言及するだろうと述べた。ハリスはまた、気候変動や違法・無報告・無規制漁業の影響についても述べる見通しだ。ハリスの今回の訪問では、貿易やサイバーセキュリティをはじめとする数多くの分野で二国間協力の強化が期待されている。フィリピンにおける米軍の活動拠点拡大についても前向きだ」

     

    米国もフィリピンとの関係強化はメリットがある。中国の台湾侵攻の際に、フィリピン基地を利用できるからだ。中国にとっては嫌な事態だ。

     

    (6)「アメリカ軍は現在、フィリピン国内の5つの拠点が使用可能だ。フィリピン軍のバルトロメ・バカロ参謀総長は先週、アメリカがパラワン島を含めてさらに5カ所を増やすことを提案してきたと述べていた。米ホワイトハウスの概要報告書によれば、ハリスは既存の5つの拠点について、軍事インフラや備蓄施設などの新設・改修プロジェクト(計21件)に8200万ドルを投じる予定。同報告書は、これにより「アメリカとフィリピンが恒久的な安全保障インフラを築いて長期的な近代化を推し進め、信頼できる相互防衛態勢を構築し、人道支援および災害救助能力を維持し、同盟を強化する」ことができるとしている」 

     

    米軍が、フィリピンで最大10カ所の基地利用が可能になれば、南シナ海一帯での中国軍の動きを監視できる。また、台湾有事の際はフィリピン基地を利用した作戦も可能になる。

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    中国は、ロシアのウクライナ侵攻に対して「反対」意向を示さず、半ば支持する形を取っている。これは、中国がアジアで同様の「侵略戦争」を始める意志があることを言外に示しているのだ。こういう警戒感が、フィリピンでも顕著になっている。

     

    フィリピンは、自国領有の島嶼を中国に奪われている。このため、常設仲裁裁判所へ提訴し、勝訴した経緯がある。中国は、この判決に従わず不法占拠を続けている。フィリピンが将来、中国の軍事行動を警戒するのは当然である。日米と安保関係強化に動いている理由だ。

     

    中国の習国家主席はこれをけん制すべく、4月8日にフィリピンのドゥテルテ大統領とオンライン会談を行なった。その際に習氏は、ロシアによるウクライナ侵攻を念頭に「地域の安全が軍事同盟の強化によって実現できないことを改めて証明している」と指摘した。これは、フィリピンによる日米への接近を批判したものだ。

     


    一方で、習氏はフィリピンへ「アメ」も見せている。「フィリピンからより多くの優良製品を輸入しよう」と提案した。フィリピンにとって中国(香港含む)は、世界最大の輸出先だ。フィリピンでは電子部品や農産品などの輸入拡大への期待が高い。

     

    中国は、これまでフィリピンに対して「戦略的協力関係」を謳いながら、すべて空手形であった。こうして、フィリピンは中国への信頼度が極めて低い。その点、日本と強い信頼関係で結ばれている。4月9日、初めての日比「外務・防衛閣僚会合」(2+2会合)を開催した。日本外務省は、次のように会合結果を発表した。要約のみを掲載する。

     

    (1)「ウクライナ情勢について、日本側から、ロシアによるウクライナ侵略は明白な国際法違反かつ国際秩序の根幹を揺るがす行為であることを指摘しました。その上で、四大臣は、両国間で、今般の侵略が明白な国際法違反であり、国際秩序の根幹を揺るがす行為であること、武力行使の即時停止及びウクライナからの即時撤退を求めること、法の支配やウクライナの主権・領土の一体性の尊重、力による一方的な現状変更への反対といった点で、両国で連携して対応していくことを確認しました」

     

    ウクライナ侵攻について、日本とフィリピン両国が明確な国際法違反と認識した点は重要である。これは、両国が米同盟国として同じ歩調で歩むことを認め合ったことでもある。

     

    (2)「東シナ海・南シナ海情勢については、四大臣の間で深刻な懸念を共有し、比中仲裁判断や国連海洋法条約を始めとする国際法の遵守を確保していくことで一致しました」

     

    南シナ海における中国の不法占拠問題に付いて、中国が常設仲裁裁判所の決定に従うことを要求することで両国が一致した。尖閣諸島問題でも日本の領有権にフィリピンが賛成したのであろう。

     


    (3)「四大臣は、自衛隊とフィリピン国軍の間の訓練等の強化・円滑化のため、相互訪問や物品・役務の相互提供を円滑にするための枠組みの検討を開始することで一致しました。今後、円滑化協定や物品役務相互提供協定の締結の可能性も含め、検討を進めていきます」

     

    この項目は、非常に重要である。自衛隊は、すでに米軍や豪州軍と相互訪問や物品・役務の相互提供を円滑にする協定を結んだ。フィリピン軍とも同様の協定を結ぶべく協議をするというもの。これらの協定を結ぶと、相互に相手国を特別の手続きをすることなく訪問したり、弾薬やサービスの相互利用が可能になる。軍隊は別々であるが、相互に融通が可能になるという意味では、軍隊の「兄弟化」である。極めて密接な関係が成立する。

     


    (4)「四大臣は、国連安保理改革や核軍縮・不拡散体制の維持・強化に向けた連携で一致しました。フィリピン側から、日本の安保理常任理事国入りへの支持が改めて表明されました」

     

    フィリピンは、日本の安保常任理事国入りを支持するとしている。ウクライナのゼレンスキー大統領は、先の日本の国会での演説で国連改革と日本の安保常任理事国入りを支持すると発言している。ロシアのような安保常任理事国が、他国を侵略するという乱れた時代だけに、国連改革は必要である。

     

    今回の日比「外務・防衛閣僚会合」(2+2会合)は、アジアの安全保障体制がゆっくりと民主主義国の団結に向かって動いていることを示唆している。日本は、米国・豪州と密接な関係を築いているが、ここにフィリピンを加えることで、四ヶ国は、「同じ釜の飯」を食う関係になった。

     

    『日本経済新聞』(4月9日付)は、「米『中国が同盟ネットワークを懸念』、習氏発言を念頭に」と題する記事を掲載した。

     

    米国防総省のカービー報道官は、8日の記者会見で「中国が我々の同盟やパートナーシップのネットワークを懸念していることは明白だ」と強調した。中国の習近平国家主席がフィリピンのドゥテルテ大統領に米国との軍事同盟を強化しないよう促したことを念頭に置いた発言だ。

     

    (5)「カービー氏は、「米国はインド太平洋地域に戦略的利点を持っており、それは同盟やパートナーシップだ。中国にはそのようなものは何もない」と言明した。中国国営中央テレビ(CCTV)によると習氏は8日、ドゥテルテ氏と電話協議し、ロシアによるウクライナ侵攻を念頭に「地域の安全が軍事同盟の強化によって実現できないことを改めて証明している」と指摘していた。バイデン米政権は、南シナ海の実効支配を強める中国に対抗するため日本の役割拡大に期待している」

     


    中国と敢えて対決する必要はない。ただ、習近平氏が2035年をメドに、世界覇権を握ると豪語することは、プーチン氏の「ロシア帝国復活」目標と同様に、極めて軍事的に危険な目標である。フィリピンは、これまで「反米・親中」ポーズを見せてきた。だが、ウクライナ侵攻の現実を見るに及んで、ついに親米へ決断した。中国へ接近していたのでは、「第二のウクライナ」にされてしまう危機感が揺り動かしたのであろう。
     

     

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