日本とフィリピンは、エネルギーと防衛面で協力関係を一段と緊密化することになった。エネルギーでは、原油備蓄を日本で行い製品化を日本企業へ委託する形が取られる。これによって、これまでの石油製品輸入国から脱して、「自国供給」という形に代り安定化する。日本は、原油輸入・精製という一貫過程を請負うことでフィリピンとの関係が強化される。
この方式は、ベトナムも採用するとみられる。5月8日開催のASEAN首脳会議では、域内で石油備蓄や供給網の強化で協力することを確認した。1986年当時の加盟6カ国で結んだ「ASEAN石油安全保障協定(APSA)」の強化へ、初めて動き出すことになった。この資金100億ドルは日本が提供するもので、フィリピンはこの第1号になる。
『ロイター』(5月28日付)は、「日比首脳、両国関係の格上げで合意 安保・エネルギー分野で連携強化」と題する記事を掲載した。
高市早苗首相とフィリピンのマルコス大統領が28日、東京・元赤坂の迎賓館で会談し、両国関係を「包括的・戦略的パートナーシップ」に格上げすることなどを盛り込んだ共同声明を発出した。マルコス氏は国賓として来日した。フィリピン大統領の国賓訪日は2015年のアキノ大統領以来となる。同国は今年、ASEAN議長国でもあり、日本は自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向けても連携を深めたい考えだ。安全保障や経済など幅広い分野での関係深化を図ることで、東・南シナ海で軍事的威圧を強める中国に対抗する狙いもある。
(1)「会談後の共同記者発表で両首脳は、軍事情報を安全に共有するための「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」締結に向け、正式に交渉を始めることも明らかにした。長引く中東情勢の悪化を受け、フィリピンや東南アジア諸国連合(ASEAN)におけるエネルギー備蓄・供給強靱化に関する日本の協力についても合意した。共同記者発表で高市氏は「厳しさを増す地域の戦略的環境に対処すべく、今後もフィリピンとの協力を深化させていく」と述べた。マルコス氏は「インド太平洋地域で現在生じている課題、中東情勢とエネルギー安全保障への影響を含む地域・国際問題についても有意義な意見交換を行った」とし、「今回の充実した会談は、平和・外交・国際法の順守という共通の価値観と友情を基盤として、フィリピンと日本の包括的・戦略的パートナーシップが力強く前進していくことを示すものだ」と語った」
「GSOMIA」という言葉に記憶はありませんか。韓国の文大統領(当時)が、反日の切り札として日韓GSOMIAを破棄するとして、米国から「大目玉」を食らった事件だ。日比は、この最高級軍事情報を交換することになった。日本は、南シナ海の軍事情報が入手できる。日本とフィリピンは、同盟国に次ぐ強い結束力を固める「包括的戦略的パートナーシップ」を結ぶことになった。
(2)「安全保障面でも両国は関係を深めている。日本は4月、防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、殺傷能力のある装備品の輸出を解禁した。フィリピンに対しては海上自衛隊のあぶくま型護衛艦などの輸出を念頭に防衛当局間の協議が進んでいる。今回の首脳会談を経て、両国は協議を加速化させる。加えて、両国はエネルギー備蓄について、日本からフィリピンなどへの技術提供も進める。高市氏が主導して4月に東南アジア諸国など合意した「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ」(パワー・アジア)のもと、エネルギー供給や原油・石油製品などの相互融通についても協力強化を目指す」
日本の中古護衛艦をフィリピンへ輸出する件も交渉中である。フィリピンのアキレス腱であるエネルギー備蓄については、冒頭に記したように話が進んでいる。フィリピンは、2020〜21年に相次いで閉鎖された。この結果、日本支援の「POWER Asia100億ドル支援」は、願ってもないチャンスである。この資金を使って、日本で原油備蓄を行う。製品化は、日本の製油所へ委託する形となる。フィリピンは、石油製品不安から解放される。
日本に備蓄枠を置く国は、次の国が予想されている。
フィリピン(実現)、ベトナム(有力)、インドネシア(検討中)、マレーシア(可能性大)、シンガポール(共同備蓄の拡大)などだ。こうして、ASEANの石油安全保障の“中核”が、日本へ移ることになろう。



