トランプ米大統領は、中国からの小包輸入品取り締まりを強化している。中国の越境EC業者は、これを乗り越えるべく欧州へ押し寄せている。その一部は、中国移民の家庭を利用してビジネスを拡大する強かさだ。上海から英国へ移住した専業主婦は最近、中国の業者から送られた衣類やバッグ、小型家具を裏庭の小さな倉庫に保管して、注文のたびに発送してかなりの利益を上げているという。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月26日付)は、「安い中国製品、欧州を席巻 『影の物流網』とは」と題する記事を掲載した。
2021年に上海から英国に移住した40代の専業主婦であるシュエさんは最近、中国の業者から送られた衣類やバッグ、小型家具を保管するため、約30平方メートルの倉庫を建てた。こうした業者の多くは米国市場以外に事業を拡大することに熱心だ。シュエさんは注文が入ると商品を梱包して発送し、納期を短縮している。好調なときは月3000~5000ポンド(約62万5000~105万円)を稼いでいる。
(1)「彼女の「ファミリー倉庫」は、中国の貿易黒字を今年初めて1兆ドル(約156兆円)を超える水準に押し上げた影の物流ネットワークの重要な一部だ。新興の貨物航空会社は、自らが「現代のシルクロード」と呼ぶ流通網を構築しており、中国の工場拠点と欧州の人口密集地を結んでいる。このような密集地では、中国系移民が自身の空き部屋に商品を保管することで報酬を得ている。中国の輸出を巡る方向転換は、トランプ氏の貿易戦争が世界貿易をどう再編したかを示す最も劇的な例の一つだ。中国は、同国を孤立させようとするトランプ氏の取り組みの裏をかいており、欧州と東南アジア向けの出荷は、米国向けの約20%の減少を補って余りある」
中国製品は、販売で「正規ルート」を使わず、ゲリラ的商法で販売コストを切下げている。それが、家庭の主婦を使ったルートである。
(2)「中国税関当局のデータによると、総額1000億ドル規模の中国による低価格小包取引で、EUは今年、初めて米国を抜いて最大市場となった。5月初旬以降、米国向けの低価格小包の輸出は40%以上減少している。「デミニミス・ルール」として知られる関税の抜け穴が閉鎖されたことにより、800ドル未満の中国からの小包も米関税の対象となったためだ。一方、EUと英国では中国の電子商取引(EC)が急成長している。EUでは150ユーロ(約2万7000円)未満、英国では135ポンド(約2万8000円)未満の小包が関税免除となっている。ハンガリーとデンマークへの出荷は4倍に増加し、ドイツ、フランス、英国への出荷は50%以上増えている」
EUと英国では、中国の電子商取引(EC)が急成長している。ハンガリーとデンマークへの出荷は4倍に。ドイツ、フランス、英国への出荷は50%以上も伸びている。
(3)「欧州市場にシフトするため、中国のEC企業はソーシャルメディアを席巻した。報酬を支払われた欧州全域のインフルエンサーが、テムのプロモーションで無料で入手したパジャマセットやヘアドライヤー、コーヒーカップなどの動画を数百本投稿している。このような販促活動が数カ月前、イングランド北東部に住むカレン・ジェームズさん(62)の目に留まった。孫がいるジェームズさんはこれまで、超低価格の中国ECプラットフォームをほとんど利用せず、実店舗での買い物を好んでいた。だが、40ポンド以上購入すれば10個の無料アイテムがもらえるという特典は抵抗し難いものだった。「これは当然の選択だと思った」と彼女は話した。「彼らはそういったもので消費者を引き付けている」と」
欧州全域のインフルエンサーが、販路拡大に協力している。一定金額以上の購入には、無料アイテムがつくからだ。
(4)「こうした荷物を中国から欧州へ空輸しているのは、ウズベキスタン人起業家のアブドゥルアジズ・アブドゥラフマノフ氏(36)のような人物だ。同氏の貨物航空会社マイ・フレイターは、世界で最も成長している貨物ルートの一つで台頭しつつある。この「新シルクロード」は中国から始まり、中央アジアを経由して欧州に至るもので、1000年以上前に商人が絹や香辛料を運んだ古代シルクロードのルートと似ている。空港のチェックイン担当者としてキャリアをスタートさせたアブドゥラフマノフ氏は、23年にマイ・フレイターを立ち上げた。現在は中国・欧州間で月間200便を運航し、主に欧州向けのEC小包8000トン以上を輸送している。テムは最大顧客の一つだ」
中国から欧州へ空輸は、正規ルートではない。新興業者を使っている。中国・欧州間で月間200便を運航するほどだ。
(5)「ロンドンのヒースロー空港やブダペスト空港など、欧州の主要空港で発着枠を確保することは、困難かつ高コストになっている。別の新興貨物航空会社であるワン・エアーは、2年前に使用年数32年のボーイング747型機1機を改造して事業を開始した。当初はロンドンの空港を利用していたが、その後、ダービー郊外のイースト・ミッドランズ空港に移った。 イースト・ミッドランズ空港の魅力はその立地だ。イングランド中部だがやや辺ぴな場所にあるため、交通量が少なく、夜間の騒音規制もそれほど厳しくない。近くの農地では羊が草を食み、トラクターを見かけることも珍しくない。別の拠点は、ベルギー東部リエージュにある旧軍用空港だ。同空港は中国語を話すスタッフを採用し、貨物機の駐機場と倉庫スペースを増やすために古い軍用格納庫の解体を計画していると、営業・マーケティング担当副社長のトルステン・ウェファース氏は述べた」
新興航空業者は、名だたる空港を利用せず辺ぴな場所にある空港を利用している。ここででも、徹底的な輸送コストの切下げを行っている。




