EU(欧州連合)とインドは1月27日、自由貿易協定(FTA)交渉で妥結した。人口や経済規模で世界の2割を超す巨大な自由貿易圏が誕生する。これで、EUは念願の脱中国を一歩進める。同時に、米国の関税政策に振り回される影響度も下がる。
約20年に及ぶ交渉の末、2026年1月27日に妥結した。 双方の輸出品の大半で関税が撤廃・削減され、20億人規模の自由貿易圏が誕生する。世界GDPの約25%、世界貿易の3分の1をカバーする。 モディ首相は「世界の人々が“あらゆる協定の母”と呼ぶだろう」と述べた。双方とも90%台後半の関税を撤廃することになった。
中国にとっての痛手は、EUが「一帯一路」構想の周縁国が接近したことだ。 インドは、中国と国境問題を抱えつつ、経済面ではEU・米国との連携を強化する。これは、中国の地政学的包囲網を強める動きとなる。EUが、インドを中国の代替供給地と見なすことで、中国の輸出主導モデルに打撃を与える。中国は、「世界の工場」としての地位が揺らぐことになるだろう。
『日本経済新聞 電子版』(1月27日付)は、「EUとインドがFTA妥結 人口規模20億人、広がる『米抜き貿易圏』」と題する記事を掲載した。
EUのフォンデアライエン欧州委員長とコスタ大統領が27日、インドのモディ首相とニューデリーで会談した。2007年に開始したFTA交渉の妥結で合意に達した。EUは発効に必要な正式署名に向け、加盟国による承認手続きに入る。
(1)「欧州委員会によると、インドはEU製の自動車に課す関税に関して、年25万台の割当枠を設けたうえで現在の110%から10%まで段階的に引き下げる。自動車部品の関税は5〜10年後になくす。22%かかっている化学品や11%の医薬品に対する関税もほぼ撤廃する。EU産の農産品の関税も下げる。フランスなどが強みを持つワインの関税率を150%から段階的に20%まで削減する。最大50%だったパスタやチョコレートなど加工食品への関税は撤廃する。インド商工省の声明によると、EUは取引商品の99.5%の関税を引き下げる。インドの水産物や皮革・繊維製品、宝石・宝飾品などは関税をゼロにする。双方は欧州で農家の反発が予想される牛肉など一部農産品を関税引き下げの対象から除外するなどし、折り合った」
インドは、これまで関税引下げに頑な姿勢を貫き、保護貿易に徹してきた。それが一転して、EUの対インド輸出の96.6%が関税撤廃・削減する。 自動車、産業製品、ワイン、チョコレートなどが対象だ。インドとしては、大英断である。それだけ、EU市場が魅力的に映るのだろう。
(2)「フォンデアライエン氏は、27日発表した声明で、FTAについて「世界最大の民主主義国間のパートナーシップを深化させる」と意義を説明した。「ルールに基づく協力が依然として大きな成果をもたらすことを世界に示した。これは始まりにすぎない」と成果を誇った。EU加盟国とインドの人口は合計で約20億人に上り、日本や英国が参加する包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)の5億9000万人を大きく上回る。世界の名目GDP(国内総生産)に占める割合も21%と、14%のCPTPPより高い。交渉は20年近い時間を要した。妥結へEUとインドを駆り立てた一因として、トランプ米大統領の存在がある。なりふり構わず高関税政策を振りかざすトランプ氏への不満が両者を近づけた」
FTA交渉は、20年近い時間を要した。インド側が関税撤廃に決断が付かなかったのであろう。だが、トランプ関税という「爆弾」がEUへ接近させた。
(3)「EUは、サプライチェーン(供給網)の中国依存を和らげようと動いてきた。最近では「脱米国依存」の必要性を巡る議論も広がり始めた。有力な貿易パートナーを増やそうとするのはその一環と言える。インドとの妥結に先立ち、17日には南米5カ国でつくる関税同盟メルコスル(南米南部共同市場)とのFTAにも署名した。CPTPPとの連携も提起する。EUのモノに限った貿易をみると、インドの割合は2.5%程度という。EU高官は、15%近くを占める中国と比べ「大きな伸びしろがあり、未開拓の潜在力をFTAで解き放てる」と見込む」
EUは、サプライチェーンの中国依存を引下げる一歩となる。最近では「脱米国依存」の必要性も出てきた。世界の名目GDPに占める割合は、21%と膨らむ。EUとインド双方にとって好結果が期待される。
(4)「EUは、インドの高度人材も欧州に取り込む。今後加盟国と調整し、テック人材などがEU域内に移動しやすくする措置も検討する。トランプ政権が外国人材の就労環境を厳しくするなか、欧州の技術革新に向けてインドの有能人材を獲得する好機とする。EUとインドは新たに「安全保障・防衛パートナーシップ」を結ぶことでも合意した。EUがこうした関係をアジア地域で締結するのは、日本と韓国に次いで3カ国目となる。偽情報やサイバー攻撃など地理的な制約をこえた脅威に共同で対処できる能力を高める。防衛産業協力を進めるための枠組みも設け、双方の防衛関連企業による連携案件を増やす方向で協議する」
EUは、インドの高度人材を取り込めるメリットがある。米国が、業務ビザ取得に法外な料金を課しただけに、これからはEUへ向うだろう。




