米国は、対中貿易赤字縮小を政策目標に掲げている。だが、中国から米国へのダレクトナ出荷が減った分は、ベトナムやメキシコといった第三国を経由することで増えている。トランプ政権が、2018年に約3000億ドル(約45兆円)相当の輸入品に関税を課して以来、中国企業は課税を回避するためにメキシコやベトナムなどにある新工場への投資を増やしてきたのだ。この流れは、太陽光発電でもみられる。
インドの太陽光発電産業を後押しする米国の取り組みは、中国での強制労働によって製造された部品の輸入を阻止する「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」を骨抜きにしている可能性がある。米国は、この事実に気づいていない。
『ブルームバーグ』(2月7日付)は、「中国の太陽電池、インド経由で米国に流入ー強制労働防止法の抜け穴か」と題する記事を掲載した。
インド最大のソーラーメーカー、ワーリー・エナジーズが、強制労働を巡る懸念から米市場への流入を何度も拒否された中国企業の部品を使った数百万枚のパネルを米国に送っていることが、ブルームバーグ・ニュースが調べたインドと米国の輸入記録で分かった。
(1)「これらの部品は、中国の西安に本社を置く世界最大のソーラーメーカー、隆基緑能科技がマレーシアとベトナムの工場で生産した太陽電池で、テキサスなど米国の州で太陽光発電所を覆い尽くすワーリー製のソーラーパネルに使用されている。米国は中国が新疆ウイグル自治区でウイグル族を強制的に働かせているとし、関連製品の輸入を禁止。ワーリーのパネル出荷は、米税関・国境警備局(CBP)がこうした措置をどのように執行しているのかという疑問を提起している。CBPは禁止措置の執行を2022年6月に開始後、中国系企業が製造したソーラーパネルの一部出荷を止めている」
インド最大のソーラーメーカーであるワーリー・エナジーズが、中国に本社を置く世界最大のソーラーメーカー隆基緑能科技のマレーシアとベトナム工場で生産した太陽電池パネルを米国へ輸出するソーラーパネルに使用されているという。中国の隆基は、マレーシアとベトナムの工場で生産したパネルをインドのワーリーへ輸出するという「ロンダリング」を行っているという指摘がされている。
(2)「中国企業を規制する米国の政策は、インドのソーラーメーカーにチャンスをもたらした。ブルームバーグNEF(BNEF)がまとめたデータによると、インド勢による対米パネル輸出額は昨年1-11月に約20億ドル(約3000億円)に膨らみ、22年通年の5倍となった。太陽光発電のサプライチェーンに関する23年8月の報告書を共同執筆したローラ・マーフィー氏は、「『インド製』と書かれたパネルでさえ、ウイグルの強制労働に絡んでいる可能性がある」と同年10月時点で指摘。同氏はその後、国土安全保障省の税関執行顧問に起用された」
太陽光発電のサプライチェーンに関する23年8月の報告書は、「『インド製』と書かれたパネルでさえ、ウイグルの強制労働に絡んでいる可能性がある」と指摘している。これは、ありそうな話である。中国企業が、そこまで法的に遵守しているとは考えられないからだ。
(3)「同氏の報告書によれば、中国にある複数の供給元からのポリシリコンはしばしば混合されるため、隆基の東南アジア工場で製造されたパネルには、少なくとも一部で新疆ウイグル自治区からの材料が用いられている「非常に高い」リスクがあるという。同社はマーフィー氏の報告書に対し、米市場向けに中国産以外の材料のみを使用する別のサプライチェーンを構築したと説明している。中国当局が少数民族であるウイグルの人々を拘束したり、工場で強制的に働かせたりしているという世界的な懸念から、米国は21年12月にUFLPAを制定。中国政府は新疆ウイグル自治区における人権侵害を否定し、同自治区の政策は教育や過激派の一掃、貧困の緩和が目的だと主張している」
中国の特技は、「抜け穴探し」である。WTO(世界貿易機関)に加盟後、抜け穴探しで生産補助金を使ったダンピング輸出に成功してきた国である。必ず、「裏技」を使ってくると警戒しなければならない。