世界の自動車業界は、EV(電気自動車)過剰競争に巻き込まれ疲労困憊している中で、トヨタ自動車だけは圏外に立っている。EVの早期挫折を見込んで、HV(ハイブリッド車)で高収益を挙げて無傷であるからだ。この余力を使って、インドで3工場増設(既設3工場)を決めた。インド自動車市場は、米中勢の空白地域である。米国は、現地向き車種がないこと。中国は、インドとの政治的対立で進出できないことが理由だ。こうして、世界3位のインド自動車市場は、日本勢(トヨタ自動車・スズキ)の独壇場になっている。
『日本経済新聞 電子版』(5月1日付)は、「トヨタ工場増設、世界3位市場のインド 米中勢の『空白』に好機」と題する記事を掲載した。
トヨタ自動車が、工場の大幅増設を決めたインドの自動車市場は、米国と中国に次ぐ世界3位の規模を誇る。人口増で今後の市場拡大も有望だ。世界で台頭する中国メーカーは印中政府の対立を背景にほとんど進出できておらず、日本勢の成長余地は大きい。
(1)「インド自動車工業会(SIAM)によると2025年度のインドの新車販売台数(商用車を含む)は前年度比9%増の572万台と過去最高を更新した。すでにドイツや日本の販売台数を超えている。市場をけん引するのは、いち早くインドに進出したスズキだ。同社は現在、年間260万台の生産能力を持つ。30年度をめどに400万台と5割以上増やす計画を掲げる」
インドの自動車新車販売台数は25年、572万台と世界3位の座にある。人口は14億人を超えて世界1位になっている。伸び盛りの市場となっている。トヨタ自動車はインドに3つの完成車の新工場をつくる。同国での生産規模を2030年代に100万台と今の3倍に増やす。米国や中国など主要市場が頭打ちとなるなか、車メーカーの競争軸はグローバルサウス(新興・途上国)の攻略に移る。新工場はインド市場に加え「インド以西」の中東、アフリカに車を供給する輸出拠点の役割を担う。
工場はインド西部のマハラシュトラ州につくる。1つの工場は29年に稼働させ、残り2つは30年代に稼働させる。総投資額は3000億円規模とみられる。インドや新興国で人気の高い3列シートの多目的スポーツ車(SUV)を「カローラ」ブランドで投入する。また環境への意識が高い層に向けてプラグインハイブリッド車(PHV)も生産する。
(2)「インドは、魅力的な市場というだけでなく、人件費が安いため中東やアフリカ展開への足がかりとしても期待される。スズキとトヨタがそれぞれ新工場を予定するグジャラート州とマハラシュトラ州は、輸出に有利な西部の海沿いに位置する。他の日本メーカーもインド市場の開拓・活用に動く。ホンダはインドで電気自動車(EV)を生産し、日本にも輸出する方針だ。EVをめぐって3月に米国での戦略車の生産中止を発表したが、インド発の車種の計画は維持した」
インドは、人件費の安さから中東やアフリカへの輸出基地としても有望である。こうしてインド内外の市場への展開を見込める好立地にある。
(3)「日産自動車もインドを「長期的な成長市場」と位置づける。「7人乗りの小型車」など現地に合わせたラインアップの拡大に動く。経営再建策の一環で現地合弁の株式は25年に仏ルノーに売却したものの、同社に委託して現地で車両を生産している。インドは、国境をめぐる対立を背景に中国メーカーの進出に制約を設けてきた。23年には「安全保障上の懸念」を理由に、インド政府が比亜迪(BYD)の工場計画を拒否したと報じられた。1人当たりの所得水準が依然として低いインドでは、手ごろな小型車の人気が根強い。ゼネラル・モーターズ(GM)など大型車を強みとする米国勢は撤退を余儀なくされた。結果として中国勢や米国勢が入り込みにくい巨大な「空白地帯」となった」
経営再建中の日産は、仏ルノーに委託してインド市場への足がかりを残している。インドは、これほど将来性の大きい市場だ。中国勢は、インドとの政治的対立で進出できず、日本企業には独壇場である。
(4)「インド自動車販売店協会連合(FADA)によると、25年のインド乗用車市場のシェアはスズキが40%弱で首位を維持する。次いでマヒンドラ・アンド・マヒンドラやタタ・グループなどが続き、トヨタも7%強を占める。大気汚染に直面するなか環境規制は強化され、27年には新たな企業の平均燃費規制(CAFE規制)が始まる。ハイブリッド車(HV)などの環境性能を磨いてきたトヨタなどにとって、さらに商機が広がる可能性もある」
インド市場のトップは、4割のシェアを占めるスズキである。インドへ最も早く進出した外資メーカーだ。スズキは、トヨタとの資本関係を生かして積極経営の構えである。
(5)「製造業振興策「メーク・イン・インディア」を掲げるインドは、補助金などを通じて同国での生産活動を優遇する一方で、輸入車には車種によっては100%を超える関税を課す。日本勢を含む海外メーカーが浸透するには、現地での投資や生産が不可欠だ。国際協力銀行によると、日本の製造業の中期的な有望国・地域としてインドは4年連続で1位を獲得している」
インドは、国内での生産奨励目的で高い関税を課している。この結果、現地での投資が不可欠である。トヨタが、既設の3工場に加えて3工場を増設する背景である。



