中国は、自国の勢力圏拡大に懸命である。BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)のメンバー拡大によって、発言権を強めようと狙っている。だが、中国と対立するインドは、これに反対姿勢である。
BRICSは、勢力拡大して結束力を高められるか。その試金石は、2015年に設立されたBRICS銀行である。現在の加盟国は、BRICS5カ国に加えて、バングラデシュ、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)が新たに加わった。2022年12月時点の融資承認総額は328億ドルで、うちブラジル向けが50億ドルを超える。承認されたプロジェクト数は96件だ。
一方、中国はAIIB(アジア・インフラ投資銀行)を2016年に設立している。既に200件以上、400億ドル以上のプロジェクト実施している。BRICS銀行と競合関係だ。AIIBは、BRICS銀行がインドの発案で成立したことへの対抗で設立された経緯がある。このように中印はつばぜりあいしている関係だ。結束は難しいであろう。
『毎日新聞』(6月3日付)「BRICS拡大 加盟国に温度差 前のめりな中国 インドは警戒感」と題する記事を掲載した。
中国、インド、ロシア、ブラジル、南アフリカによる新興5カ国(BRICS)の外相会合は2日、一連の日程を終えた。新たな加盟国の基準や手続きなどについて合意に至るとの観測もあったが、8月の首脳会議に向け、継続して議論するとの結果にとどまった。多くの加盟国がBRICS拡大に前向きな姿勢を示す一方で、インドが中国に主導権を握られることを警戒するなど、温度差もある。
(1)「BRICSにはイラン、アルゼンチン、サウジアラビアなどが加盟を目指す。外相会合は南アフリカ西部ケープタウンで開かれ、2日は非加盟の国々が加わる拡大外相会合も開催された。「新しい血を入れることは新たな活力をもたらす」(習近平国家主席)と拡大に前のめりなのは中国だ。米主導の国際秩序に対抗する思惑から、米欧と距離を置く国々を自陣営に取り込むことを重視しており、今後も議論をリードするとみられる」
中国は、BRICSを拡大して勢力圏を広げたい野望を持っている。G7(主要7カ国)への対抗である。
(2)「習指導部が目指す通貨・人民元の「国際化」にもBRICSの枠組みは有用だ。金融制裁を受けるロシアでは米ドル確保が難しくなったため人民元の利用が急拡大し、ブラジルやアルゼンチンなどでも中国からの輸入時などに、新たに人民元決済を認める動きが広がっている。加盟国拡大は、こうした動きを後押しする可能性を秘める」
中国は、BRICSで人民元の使用を高めたいという野心もある。それには、加盟国が増えることが条件である。だが、国際貿易に占める人民元の比率は2.2%程度である。米ドルに比べたら、足元にも及ばない。
(3)「南アフリカは、今年の議長国として拡大に向けた議論をリードしている。2日の拡大会合にはアフリカの55カ国・地域が加盟するアフリカ連合の議長国コモロなども招いた。パンドール国際関係・協力相(外相)は2日の記者会見で、欧米が主導権を握る国際通貨基金(IMF)など国際金融機関のあり方に疑問を投げかけた。南アは、アフリカ諸国を巻き込みながら既存の国際秩序に挑む姿勢を鮮明にしている」
南アは、既存の国際秩序に不満を持っている。BRICS拡大派である。
(4)「ブラジルのルラ大統領も、自らが掲げる「多極化外交」の一環でBRICSを重視し、加盟国拡大にも前向きだ。4月に北京で習氏と会談後に発表した共同声明では、拡大プロセスについて「加盟国間で積極的な議論を促進することを支持する」と明記した。ただ政府内には、加盟国が増えることで、BRICSにおけるブラジルの影響力が低下することを懸念する声もある」
ブラジルは、大統領と政府部内で意見の食い違いがある。加盟国の増加が、ブラジルの影響力低下を招くことで慎重だ。
(5)「インドの姿勢は異なる。インドは、米欧が主導する既存の国際秩序への不信感を抱くものの、米中のいずれかの陣営に組み込まれる事態も避けたい思いがある。また、国境紛争を抱える中国への警戒感も強い。アルゼンチンなど中国と関係の深い国々が新たに加盟し、BRICS内で中国の立場が強まることを懸念している。インドのジャイシャンカル外相は1日の外相会合で「我々が直面する問題の核心は、あまりにも多くの国々が、経済的に、あまりにも少数の国のなすがままになっていることだ」と指摘した。特定の国を名指しすることはなかったが、米中など大国の動向によって、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国が翻弄(ほんろう)される状況に懸念を示した形だ」
インドは、「グローバルサウス」が米中対立に巻き込まれることを警戒している。同時に、中国の勢力圏拡大にも拒否感を持つ。
(6)「ロシアは、ウクライナ侵攻後に米欧から厳しい制裁を科される中で、中国やインドへの経済的な依存度を高めている。7月にはアフリカ諸国との首脳会議を予定しており、主要国の一つである南アフリカとの関係拡大にも意欲的だ。BRICSの枠組みに欧米諸国と一定の距離を置く国々が新たに加わることは、ロシアにとって追い風となる。ロシアは8月の首脳会議に向け、加盟国の拡大に向けた取り組みを進めるとみられる」
ロシアは、BRICS拡大に賛成である。G7から追放された身であるだけに、拡大BRICSで一矢報いたいところだ。





