勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時評

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    ハンガリーで12日に控える議会選を前に、中国との関係性が争点に浮上している。中国企業の車載電池工場で環境汚染が発覚し、地元住民の間で反対運動が広がっているからだ。野党は、オルバン首相の中国傾斜を批判材料に使い、世論調査でリードしている。中国は、これまでハンガリーを足場にしてEU(欧州連合)進出へ果たしてきた。オルバン政権が、親中派であったことで何かと有利な扱いを受けた結果だ。野党が政権を握れば、中国には逆流となる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月8日付)は、「ハンガリー議会選、野党は政権の親中路線批判 中国の投資戦略に逆風」と題する記事を掲載した。

     

    ハンガリーの議会選では与党の親中路線に批判が集まっている。野党は中国企業との契約内容の精査にも言及している。中国はハンガリーを欧州連合(EU)域内に進出する拠点としてきたが、戦略の見直しを迫られる可能性がある。

     

    (1)「オルバン首相は、これまで中国からの投資を積極的に誘致してきた。中国の自動車大手、比亜迪(BYD)はハンガリーに欧州の事業を統括する欧州本社を設け、南部セゲド市で近く電気自動車(EV)の本格生産を始める。米国のシンクタンク、ロジウム・グループによると、ハンガリーは2025年まで3年連続でEU域内での中国からの最大投資先となった。EU域内における外国直接投資全体の25%に達する」

     

    EUには、ハンガリーが親中ロ姿勢を強めていたことから頭を痛めてきた。EUが、ウクライナへ支援を強化しよとしても、ハンガリーが反対するなど結束できずに来た。

     

    (2)「オルバン氏は、「非リベラル民主主義」と称する強権体制を敷き、中国の習近平国家主席と親密な関係を築いた。習氏は24年にブダペストを訪問し、EV関連の投資拡大などで合意した。ハンガリーは法の支配などをめぐってEUと対立を深め、経済支援を一部凍結されている。汚職のまん延などで経済成長が停滞するなか、中国からの投資に依存を強めた経緯がある。インフラ分野などでの投資では、詳細な契約内容を公開していない。トラブル発生時の対応などをめぐり、中国に有利な条件が盛り込まれているとの指摘が多い」

     

    ハンガリーは、EUの「鬼っ子」であった。親中ロの立場を鮮明にしてきたからだ。EUは、「全会一致」原則がある。ハンガリーが、これを破ることが多かった。議会選の結果によっては、中ロにも大きな影響を及ぼしそうだ。

     

    (3)「環境問題でも中国企業に配慮し、規制をなおざりにしているとの批判が繰り返されてきた。車載電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)がハンガリー第2の都市である東部のデブレツェンで本格操業の最終準備を進める工場では、環境汚染が表面化している。地元の住民は同工場を監視するため「環境のための母親の会」を設立した。市内周辺の18カ所に大気汚染を観測する設備を配置し、日々の汚染状況を公表している」

     

    オルバン政権は、親中の立場から中国企業の進出を歓迎してきた。これが、中国企業のEU進出の橋頭堡になって、EU全体へ負の影響を及ぼす結果となった。

     

    (4)「同会の幹部であるティボル・ネメスさん(51)によると、冬季に大気の状況は「危険レベル」に達する日が多い。工場は産業用水を大量に必要とするため、主力産業の農業で灌漑(かんがい)用の水が不足する懸念も強い。ネメスさんは州政府などに計画の見直しや環境対策を求めるが、住民への説明会すら開かれていないという。「中国企業の撤退を懸念して、環境保護を二の次にしている」と批判する。強引な産業政策に地元住民の不満は募り、与党離れが広がりつつある。世論調査によると、デブレツェンの選挙区(6議席)では、与党が23議席を失う公算が大きい。前回の22年選挙では与党が全勝していた」

     

    オルバン政権が、ここまで親中姿勢を強めたことで、中国企業による公害が市民生活を圧迫する事態まで生んでいる。

     

    (5)「オルバン氏が失脚すれば、中国の対EU外交にも痛手となる。中国はハンガリーをEU市場に食い込む足がかりと位置づけてきた。欧州各国が中国への依存を引き下げるデリスキングを模索するなか、ハンガリーは対中制裁に一貫して反対してきた。環境団体は野党の「ティサ(尊厳と自由)」と、環境保護の徹底について意見を交わしている。「ティサは政権交代が実現すれば環境保護省を設立し、対策を徹底することを約束した」(ネメスさん)という。ティサはオルバン政権と中国が結んだ不透明な投資契約を問題視し、政権を握れば精査する方針も表明している。オルバン氏が推し進めた中国傾斜に歯止めがかかる可能性が高まる」

     

    オルバン政権が敗北すれば、EU全体にとって結束力が高まり、ウクライナ支援もスムーズに行くであろう。オルバン政権はこれまで、国益無視で親中ロ路線を強化してきた。今、その総決算を迫られている。

    テイカカズラ
       


    原油価格の急騰に、プライベートクレジット(ノンバンク融資)を巡る深刻な懸念が重なり、現在の市場動向は金融危機前夜を想起させると、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト、マイケル・ハートネット氏は指摘する。一応、頭には入れておくべきであろう。

     

    『ブルームバーグ』(3月14日付)は、「まるで金融危機前夜、原油高と融資問題が同時進行-ハートネット氏」と題する記事を掲載した。

     

    2007年7月に1バレル当たり70ドルだった原油価格が、翌年8月までに140ドルに倍増したことに同氏は言及し、同じ時期にノーザン・ロックやベアー・スターンズなどをのみ込む形で拡大した「サブプライム危機による震動」が始まったと指摘した。米国とイスラエルが、今年2月28日にイランを攻撃して以来、原油価格は急騰し、年初来で60%を超える値上がりとなっている。

     

    (1)「ハートネット氏はリポートで、「今年の資産パフォーマンスは不気味なほど、07年半ばから08年半ばに見られた価格動向に近い」と述べた。ウォール街の取引が「07年から08年の局面と似ているというのは不吉だ」と続けた」

     

    現状は、あのリーマンショック直前の07年半ばから08年半ばに見られた状況に似ているという。

     

    (2)「プライベートクレジットに対する銀行のエクスポージャーを巡る懸念は、日を追うごとに深刻化している。プライベートクレジットにはファンドの解約や、引き受け基準への疑問、人工知能(AI)の影響など、問題が指摘されている。同時にイラン戦争によるエネルギーコスト急騰は、スタグフレーションへの懸念を深めている。経済成長が停滞している中で物価圧力が高まり、中央銀行が利上げを迫られる可能性が警戒されている」

     

    ノンバンク問題は、昨年春頃から指摘されてきた。再び今、話題になっている。ペルシャ湾も物騒である。米海軍が、監視を始めるまでは安心はできないからだ。

     

    (3)「欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのカジミール・スロバキア中銀総裁は今週、イラン戦争とインフレへの影響を受けて、ECBは想定より早く利上げを迫られる可能性があると指摘した。2008年7月、原油価格がピークを付けた当日にECBが金利を引き上げたのは「史上最大級の政策ミスだ」とハートネット氏は批判した。後に起きたリーマン・ブラザース破綻と、バレル40ドルへの原油価格急落を背景に「原油より信用収縮の方が深刻」との見方が広がり、ECBは結局、74日間で合計325ベーシスポイント(bp1bp0.01%)の利下げを「余儀なくされた」と同氏は解説した」

     

    ECBは、原油高騰を理由に早期利上げへの構えをみせている。仮に、ECBが利上げに動けば、リーマンショック直前と同じ条件が揃う。

     

    (4)「現時点での市場コンセンサスは、イランでの紛争は長期化せず、プライベートクレジットの問題もシステミックではないと織り込んでいるとハートネット氏は述べた。「政策当局は常にウォール街の救済に乗り出す」との見方に基づき、投資家が強気ポジションを継続することを後押ししているという。同氏によれば、原油価格の上昇と金融環境の引き締まりが株式にもたらすリスクとしては、インフレよりも企業決算の方が大きい。原油が1バレル100ドルを超え、ドル指数が100を上回れればそれぞれの売りを推奨し、30年債利回りが5%を超え、S&P500種株価指数が6600を割り込めば、それぞれの買いを推奨すると述べた」

     

    市場コンセンサスは、イランでの紛争は長期化せず、プライベートクレジットの問題もシステミックではないと織り込んでいる。だが、そうかと言って警戒心を解くわけにはいかないだろうとしている。ここ当分は、様子見が賢明というニュアンスである。

     

    (5)「13日の米金融市場では、30年債利回りは4.88%。ドル指数は100.11と昨年11月以来の高水準にあり、S&P500種は6663で推移している。BofAのストラテジスト、セバスチャン・レードラー氏は、ブルームバーグテレビジョンで「クレジットセクターにざわめきが多く見られる。2007年との類似点がいくつかある」と述べた」

     

    13日の米金融市場では、2007年との類似点がいくつかあると言う。警戒心を持つべきであろうか。

     

     

     

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    中国製EVは、低価格を武器に欧州市場へなだれ込む動きをみせているが、厳しい警戒論も持ち上がっている。中国製EVを「走るスマホ」とみなしており、スパイ活動が盛んになると恐れているのだ。

     

    『レコードチャイナ』(1月27日付)は、「中国車は『4輪のスマホ』、販売台数4倍増の裏で高まるスパイ活動への警戒独メディア」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツ国際放送局『ドイチェ・ヴェレ』中国語版サイト(1月25日付)は、ポーランド国防省が中国ブランド車による軍事基地への立ち入りや戦略的要衝付近での駐車を禁止する措置を検討していると報じた。

     

    (1)「記事は、ポーランド国防省が準備を進めている新規制案の内容を詳細に紹介。中国製車両による機密エリアへの接近を禁じることに加え、現役の軍人が公務用の携帯端末を中国製車両の車載コンピュータに接続することを禁止する条項も含まれているとした。そして、中国製車両に対する規制を強化する条項からは、中国の電気自動車(EV)メーカーが自社の車両を「四つの車輪がついたスマートフォン」と形容するほど、高度な通信・情報処理機能を備えている実態を重く見たものだと分析している」

     

    ポーランド国防省は、中国製EVによる機密エリアへの接近を禁じるほか、現役の軍人が公務用の携帯端末を中国製車両の車載コンピュータに接続することも禁止する。機密情報の漏洩防止だ。

     

    (2)「ポーランド政府による警戒感の背景には、国内における中国製EVの爆発的な普及もあるとし、昨年には販売台数が前年比で4倍に急増したことを指摘。競合他社に比べて価格が一般的に15~20%ほど安く、なおかつ先進的な技術を搭載している中国車が、新しもの好きなポーランドの消費者の志向に合致した反面、データセキュリティー上の懸念を表面化させることになったと解説した」

     

    中国製EVは割安を武器にして売上を伸している。一方では、データセキュリティー上の懸念を表面化させると指摘している。

     

    (3)「記事はさらに、ワルシャワのポーランド東方研究センターに所属する中国問題専門家、パウリナ・ウズナンスカ氏が1カ月前に発表した報告書が社会に大きな波紋を広げたと紹介した。報告書の内容について記事は、中国メーカーがスマートカーの研究開発で世界をリードする一方、車両に搭載された大量のセンサーや高解像度カメラ、レーダー機器が車内や車外のデータを全面的に収集可能である点に警鐘を鳴らしたほか、極端なケースではスパイ活動やサイバー攻撃、さらには軍事作戦に転用される恐れがあると指摘したことを伝えている」

     

    中国EVは、車両に搭載された大量のセンサーや高解像度カメラ、レーダー機器が車内や車外のデータを全面的に収集可能である。極端なケースでは、スパイ活動やサイバー攻撃、さらには軍事作戦に転用される危険性を秘めているという。

     

    (4)「また、ウズナンスカ氏が「欧州の道路を走行するほど収集データの精度が高まる」と警告するとともに、中国自身が外国メーカーのスマートカーに対して厳格な規制を敷き、技術の進歩に合わせて随時ルールを更新するのと同様に、欧州連合(EU)も中国側のリスク管理措置を参考にすべきだと提言したことを紹介した。記事はこのほか、ポーランド国際問題研究所の専門家であるマルチン・プシホドニャク氏が国防省の新規制について、実際に起きるかは別として、可能性がある以上は事前対策が必要という意味で「病気を予防するためのワクチン」に例えたことにも言及した」

     

    中国自身が、外国メーカーのスマートカー(EV)に対し厳格な規制を敷き、技術の進歩に合わせて随時ルールを変えている点に留意することだ。中国が行っている外国製EV規制は、他国でも同様に中国製EVに規制をかけるベきである。


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    米EV(電気自動車)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、持ち株が急落して慌てている様子だ。保有資産額が、昨年11月以来で初めて3000億ドル(約44兆3000億円)を割り込んだからだ。原因は、言わずと知れた米国トランプ成句による相互関税である。

    大富豪になればなるほど、資産の目減りには敏感になる。こうしてマスク氏は、トランプ氏へ関税引上げ中止を進言したが、聞き入れられなかったという。トランプ氏の性格を熟知しているはずのマスク氏が、「ダメ元」であえて進言したのは、よほどの事情によるのであろう。

    『ブルームバーグ』(4月8日付)は、「マスク氏もトランプ関税で打撃、資産3000億ドル割れ-テスラ株安響く」と題する記事を掲載した。

    (1)「ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、マスク氏の純資産額は2978億ドル。7日のテスラ株下落で44億ドル目減りした。米株が歴史的な急落に見舞われた3、4日は合わせて310億ドル相当の資産価値が失われた。資産額は年初来で計1347億ドル減少した」

    4月7日現在、マスク氏の純資産額は2978億ドルで、年初来で計1347億ドル(約19兆5300億円)減少したという。実に31%も消えた計算だ。これだけの巨額資産が減価することは、痛手であろう。マスク氏は、忠勤を励んできたトランプ氏に対して、相互関税による株価下落を食止めるべく、あえて「関税中止」を進言せざるを得なかったのであろう。このマスク氏が、関税中止に代って新たな提案をしている。


    『ロイター』(4月8日付)は、「マスク氏、関税撤回をトランプ氏に進言 聞き入れられず=米紙」と題する記事を掲載した。

    トランプ米政権で「政府効率化省(DOGE)」を率いる実業家イーロン・マスク氏が先週末、トランプ大統領に新たな関税措置を撤回するよう進言したが聞き入れられなかったと、米紙ワシントン・ポストが7日、関係者2人の話として報じた。

    (2)「トランプ氏は2日、貿易相手国に相互関税を課すと発表。全ての輸入品に一律10%の基本関税を課した上で、各国の関税や非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せするとした。マスク氏は5日、イタリア連立与党の右派「同盟」の会合にオンラインで参加し、「欧州と米国がともに関税ゼロの状況に移行し、欧州・北米間に事実上、自由貿易圏を形成するのが理想的だと思う」と述べた。

    マスク氏は、欧州と米国がともに関税ゼロの状況に移行し、自由貿易圏を形成するのが理想的と述べた。これは、正論である。米国とEUが関税をゼロにすれば、ほぼ同じ経済環境だけに、まさに経済学の教科書通りの「最適資源配分」が可能になる。米国も製造業復活で企業がイノベーションに取組む必要がある。


    だが、こういう正論はなかなか実現しないであろう。米国は、欧州よりもアジアへ関心を深めているからだ。だが、米国は世界中へ関税をかけるという「荒技」に出ている。本来、重視しなければならないアジアも巻き込んでの高い関税だ。ここで、興味深い提言が出されている。

    英国経済誌『エコノミスト』(4月5日号)は、「相互関税、貿易拡大で対抗を」と題する記事を掲載した。

    米ホワイトハウスで演説したトランプ氏は、ほぼすべての貿易相手国に「相互関税」を課すと発表した。関税率は中国が34%、インドが26%、日本が24%、欧州連合(EU)は20%となる。


    (3)「既存の関税と合わせると、中国への税率は計65%にのぼる。(すでに25%の追加関税を発動している)カナダとメキシコは今回の関税の対象からは外れた。この新たな関税は、25%の自動車関税や別途検討されている半導体への追加関税といった分野別関税には上乗せされない。だが、米国の全体的な関税率は大恐慌時代の水準をはるかに上回り、19世紀にまでさかのぼることになる」

    米国は、大変な高関税を世界中にかけているが、19世紀まで遡るほどの「蛮行」である。この影響が小さく済むはずがないのだ。

    (4)「欧州の調査機関グローバル・トレード・アラートの試算では、米国が(関税で)輸入を完全に停止したとしても、現在の傾向が続けば貿易相手の100カ国は失った輸出をたった5年以内に完全に取り戻せるという。EUや包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)加盟12カ国、韓国、経済が小規模で開かれたノルウェーのような国を合わせると、世界の輸入需要の34%を占める」

    ここでは、極めて興味深い提案がされている。EUとTPPのほか、韓国やノルウェーを加えた自由貿易圏をつくれば、米国市場を失っても5年で取り戻せるという。これは、日米関係から言って米国を排除する形になるので実現は難しいが、米国を翻意させるには良い「薬」になろう。いずれトランプ関税は、行き詰まるであろう。日本は、米国を支えながらも翻意させる働きかけが必要である。TPPへ米国が加われば、鬼に金棒となろう。


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    IMEC(インド・中東・欧州経済回廊)構想が、関係国の覚え書き署名によって動き出す態勢ができあがった。IMECは23年9月、ニューデリーで開催した20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、モディ首相とバイデン米大統領が明らかにした巨大インフラプロジェクトである。中国の「一帯一路」へ対抗するもので、インド経済が欧州・中東と結びつく上で欠かせないルートになる。

    このほどIMECは、インド、米国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、フランス、ドイツ、イタリア、欧州連合(EU)が参加を表明し覚書に署名した。インド洋からアラビア半島に向かい、UAE、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエルを通過して地中海や欧州に至る経済回廊を築く。総距離は、陸上と海上を含めて7000~8000キロメートルとされる。一帯一路は、8000~1万キロメートルとみられるのでIMECが有利な立場とされる。

    IMEC構想が実現すれば、インドとヨーロッパの間の貿易が大幅に改善される。中国にとって脅威なのは、欧州がインドと直結して将来、欧州市場喪失リスクが高まることだ。

    『日本経済新聞 電子版』(1月13日付)は、「インド・欧州、経済回廊が始動 中国の『一帯一路』に対抗」と題する記事を掲載した。

    中東を経由してインドと欧州を結ぶ「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」の計画が動き始めた。構想自体は2023年に持ち上がったが、その後の中東情勢の混乱で協議は棚上げになっていた。インドのシン外務担当相は24年12月20日、「東回廊はインドと湾岸地域を結び、北回廊は湾岸地域と欧州を結ぶ。アジア、欧州、そして中東の画期的な統合を呼び込むだろう」。国会でIMECの役割を問われこう自信を示した。

    (1)「IMECは、湾岸地域とアラビア海の港湾からイスラエルのハイファ港までを結ぶ鉄道路線など、物流網の他に送電網、通信網、水素輸出に用いるパイプラインなども構築する。インドは、サプライチェーン(供給網)を強化し、持続的な経済成長につなげたい考えだ。この構想は米印の発表からわずか1カ月後に失速の憂き目に遭う。イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が激しくなり、中東各国の協議が遅れてきた。一連の計画はここにきて具体化し始めた。24年12月にはUAEのアブドラ・ナハヤン副首相兼外相が訪印し、モディ氏との間で「歴史的な取り組み」とうたいIMEC計画の推進で合意した」

    IMECは、中国とロシアには不気味な存在になる。中国は、欧州市場を失いかねないこと。ロシアは、自国天然ガスが湾岸諸国産に代替されるリスクである。

    (2)「IMECに、中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗する狙いがあるのは明らかだ。中国は、イランとサウジの国交回復で仲介役を演じるなど、中東に触手を伸ばしてきた。米国はその影響力を封じ込めたいと考えている。インドは、近海で拡張主義をみせる中国海軍の存在に脅威を感じており、IMECが海洋安全保障にも機能すると期待する面がある。ロシアのウクライナ侵略が長引いたことで、欧州によるIMECへの関心は高まった。ロシア産天然ガスのEUへの供給が減少し、その代替として湾岸諸国産の液化天然ガス(LNG)に注目するためだ」

    IMECが完成すれば、中ロは欧州や湾岸諸国との経済的な結びつきが弱体化する。外交面でも弱点を抱えることになる。

    (3)「中東との距離感は複雑だ。インド側には「UAEやサウジアラビアなどが進める経済開発にインドも一枚かみたい」(印シンクタンクORFのカビール・タネジャ氏)という考えがある。一方、トルコ政府の視線は冷たい。トルコは、欧州とアジア間の物資輸送で中心的な役割を果たしてきたとの自負があり、IMECを脅威とみなす。エルドアン大統領は「トルコ抜きの回廊はありえない」と述べた。スエズ運河の通航料で外貨を稼ぐエジプトも心穏やかではない。欧州とインドが運河への依存度を減らせば、エジプトの財政状況には大きな打撃になるからだ。思惑の不一致や主導権争いはプロジェクトの遅延などを誘発する要素になる」

    IMEC構想では、トルコとエジプトの利益が損なわれる問題が出てくる。この二国への経済的配慮が必要になろう。

    (4)「IMECの最大の問題は資金調達だ。当初の試算では輸送回廊の各ルートの費用は30億ドル(約4700億円)〜80億ドルになるとされているが、さらに膨らむとの指摘がある。中国が単独で資金調達と監督を行う一帯一路とは異なり、国境を越えた多様な国家や企業の協力が必要で、それゆえに大きなリスクを伴う。インド経済に詳しい国際貿易投資研究所の野口直良専務理事は、「民間投資の誘致を呼び込むためにも、開発銀行など国際的な金融機関の参加が欠かせない。日本も経済安全保障上のインフラとして活用の機会を探るべきだ」と指摘する」

    IMECの資金は、30億ドル(約4700億円)〜80億ドル(約1兆2500億円)程度だ。その気になれば、簡単に捻出可能な規模である。それだけ、工事も簡単という意味だ。





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