勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: EU経済ニュース時評

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    ロシアはこれまで、原油や天然ガスの市況高騰に支えられて、財政は豊かと喧伝されていた。だが、それは意図的に流された「謀略」であった。実際の財政は、9月から赤字転落の情況になっていた。

     

    ロシア財務省が今週発表したデータによると、ロシアの財政黒字は夏の間にほぼ消えた。6月末の黒字は1兆3700億ルーブル(約3兆3000億円)だったが、8月末にはわずか1370億ルーブルにまで落ち込んでいた。歳入が落込んでいた結果だ。ロシアの予算では天然ガスよりも石油の収入が大きな割合を占めている。指標となるブレント原油価格は、6月上旬のピーク時から約25%も下落した。一方、ウクライナ侵攻で戦費が嵩んでいる。こうして、財政は9月から赤字情況に落込んでいる。

     


    米『CNN』(9月16日付)は、「
    ロシアの財政黒字が急減、原油安とウクライナでの戦争で打撃」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの財政状態が、急速に悪化している。欧州連合(EU)によるロシアからの海上石油輸入の禁止や、主要7カ国(G7)のロシア産石油の価格上限規制が12月に実施される前にもかかわらず、早くも財政悪化だ。欧州の天然ガス価格は異常高のままだが、EUおよび英国へのガス供給は年初から49%も減少した。ロシアの天然ガス会社ガスプロムが先週に発表して明らかになった。

     

    (1)「ドイツ国際安全保障研究所の上級研究員、ジャニス・クルゲ氏によると、軍事費と、西側諸国の厳しい制裁の影響から経済を守るための対策費が大幅に増えている。ロシア政府のリアルタイムのデータは、予算が現在赤字であることを示しているとクルゲ氏は指摘し、軍事費の上昇に伴いロシアの赤字はさらに膨らむ可能性があると付け加えた。「軍事費はもともと今年3兆5000億ルーブルを予定していたが、今月すでに超えた可能性が高い」とCNNにコメントした。ロシアの経済紙「ベドモスチ」は15日、政府に近い情報筋の話として、財務省が政府機関に対し来年10%の支出削減が必要だと伝えたと報じた。しかし、国防費は増加する見込みという」

     

    軍事費は、当初予算の3兆5000億ルーブルを9月で使い果たしている。戦況不利に伴い、緊急に兵士や武器弾薬を補充しなければならない。現実には、予算もない補充兵もいないという「ないないづくし」状態へ追込まれた。

     


    英紙『フィナンシャル・タイムズ 電子版』(9月13日付)は、「
    ロシア財政が悪化、石油価格下落で 軍事費に影響」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの財政収支は8月、3600億ルーブル(約8600億円)の赤字となった。エネルギー輸出価格の急落が原因で、年初来の黒字の大半が吹き飛ばされた。

     

    (2)「17月の財政収支は5000億ルーブル近い黒字だった。だが、黒字額は8月の時点で1370億ルーブルに落ち込んだ。9月に大幅な財政赤字を計上したことを示唆する。複数のエコノミストは、石油・ガス収入の減少が理由だとみている。16月の財政黒字は1兆3700億ルーブルだった。エネルギー価格の高騰で、ロシアは軍事費を積み増すことができた。ロシア産ガスの欧州向けの輸出量は、ロシアがウクライナに侵攻する前のおよそ5分の1に縮小した。ロシアは9月上旬、バルト海経由でドイツに至るガスパイプライン「ノルドストリーム1」を通じた供給を、西側が対ロシア制裁を解除するまで再開しない考えを示した」

     

    ロシア財政は、8月以降に急速な悪化に見舞われている。石油・ガス収入の減少が理由である。天然ガスの欧州向け輸出量は、ウクライナ侵攻前の2割まで落込んでいる。西側諸国も価格高騰で犠牲を負っているが、ロシアもガス輸出量の落込みで財政赤字に落込んでいる。

     


    (3)「財政的には、ガスよりも寄与が大きな石油が6月以降、かなり値下がりしたこともロシア財政の足かせになっている。原油価格は一時、1バレル120ドル前後に上昇したが、最近では同80ドル台を付けている。欧州へ輸出するはずだった石油をインドなど新たな需要国に引き取ってもらうため、ロシアは販売価格の引き下げを迫られた。2月の侵攻直後に売り込まれたルーブル相場の反転も、通常はドル建てやユーロ建てで取引する石油・ガスの販売によってロシア政府が得る金額を実質、押し下げた18月のロシア政府収入の半分近くを占める石油・ガス収入は前年同期を18%も下回る

     

    原油価格の国際価格の低下も、ロシア財政悪化に拍車を掛けている。1~8月の歳入に占める石油・ガス収入は、前年同期比で18%減になった。今後は、さらに落込みが激しくなる見通しである。ウクライナ侵攻の戦費は、すでに予算を使い果たしている。財政赤字が、雪だるま式に増える状況になった。

     


    (4)「ロシア経済発展省は、7月の実質国内総生産(GDP)が前年同月比で4.%減ったと発表した。ロシアの大手投資会社アトンのアナリストは、同国経済はエネルギー生産の落ち込みで縮小が続き、22年の実質成長率はマイナス5%に落ち込むと予想する。ロシア中央銀行は9月上旬の報告書で、輸出の減少傾向が続く可能性が高いと指摘した。そのうえで同国経済の先行きに慎重な見方を示した」

     

    今年のGDP成長率は、ウクライナ侵攻直後、二桁のマイナス予想であったが、一桁に収まりそうである。マイナス5%成長と予想されている。ただ、今年後半からの財政悪化が、来年はさらに拡大されるので、GDP成長率のマイナス幅が拡大されるだろう。

     

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    ロシア大統領プーチン氏は7月8日、ロシアに対する制裁を継続すれば、世界中の消費者に壊滅的なエネルギー価格の上昇を招くリスクがあると西側諸国に警告した。これは、ロシア経済が西側の制裁によって苦しくなっていることの裏返しだ。ロシアは、戦時経済特有の緊縮財政へ追い込まれている。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(7月7日付)は、「ロシア、戦時経済体制に移行へ 長期戦見据え」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアは経済を一段と強固な戦時体制に移行させるため、民間企業や労働者に対する政府の管理を強化する方針だ。ウクライナの支配を巡る戦争で長期戦に備えていることがうかがえる。ロシア議会下院で審議している法案の添付文書によると、提出された法案は特に軍を支援し、「武器や軍装備品を修理する必要性の短期的な高まり」に対応する狙いがあるという。

     


    (1)「この措置は、ウクライナ侵攻後に迅速な勝利を収めるというロシアの計画が失敗し、紛争が東部ドンバス地方を中心とした消耗戦に発展したことを受けたものだ。また、制裁がロシア経済に大きな打撃を与えると予想されることにも対応している。ボリソフ副首相は「ロシアは強大な制裁圧力の下、これまで4カ月にわたって特別軍事作戦を展開している」と述べた。5日に行われた下院での法案審議中、ボリソフ氏は「ロシアの軍産複合体にかかる負担は著しく増大している」と指摘した。「武器や弾薬の供給を確実にするためには、軍産複合体と防衛産業の協力企業での業務を最適化する必要がある」という」

     

    4ヶ月のウクライナ侵攻が、武器弾薬の強い消耗をもたらしており、緊急対応しなければならない事態へ直面している。

     


    (2)「すでに下院で第2読会(3段階審議の2番目)を通過した1つ目の法案は、政府が企業に国防契約の履行を義務付けることを可能にし、国防省などに契約条件を変更する権限を与えるものだ。例えば、当局は工場に対して生産を軍需品向けに切り替えるよう強制したり、企業が特定の製品やサービスをどの程度供給するかを管理したりできるようになる。ただ、この措置はすでに防衛部門のサプライヤーリストに掲載されている企業が主な対象だとボリソフ氏は説明した。「この法案は、軍のニーズのために民間の中小企業を強制的に事業転換させることは規定していない」という」

     

    ロシア政府は、防衛産業に対して特定の分野の製品やサービスの供給管理をする、としている。

     

    (3)「2つ目の法案は連邦労働法を改正し、政府に労働力の管理を強化する権限を与えるものだ。当局は「所定の労働時間を超えて夜間や週末、休日に勤務する条件や年次有給休暇の規定」を含め、「個々の組織において労使関係の法的条件を定める」ことが認められるという。これには、国と契約する防衛企業で専門職の人材が不足していることに対応する狙いがあるとボリソフ氏は述べた。時間外労働を強いられた従業員には残業代が支払われる。これらの法案は上院も通過しなければならず、その後プーチン大統領の署名を経て成立する。法案の添付文書によると、この新しい措置は制裁下で「ことのほか」重要になるという」

     

    政府は、防衛産業の企業に対し労働時間や休日の管理を行なうという。要するに、政府が防衛産業を管理下に置く法律を準備していることだ。

     


    (4)「ロシア経済に対する制裁の影響は、これまでのところ石油とガスの輸出価格の上昇によって軽減されており、ロシア政府には経済や軍の支援に振り向けられる多額の収入がもたらされている。しかし、ウクライナの同盟国がロシア産エネルギーからの脱却を急ぐ一方、プーチン氏が国民に対する経済的支援策を発表していることから、制裁の影響は拡大することが予想される。国際金融協会(IIF)の副首席エコノミスト、エリナ・リバコワ氏は、ロシアは「最悪の事態に備えている」とみる。「まもなくそうした収入はすべてなくなる可能性もある」と指摘」

     

    ロシアは、制裁効果が浸透することで「最悪事態」を想定し始めている。欧州向けのロシア産の原油や天然ガスは、輸出ゼロの時期が迫っている。財政の逼迫は明らかだ。プーチン氏の強気発言の裏には「悲壮感」が漂っている。

     


    (5)「ロシア紙『ベドモスチ』によると、財務省は輸送インフラや科学技術開発プロジェクトの予算など一部の分野において、今後3年間で1兆6000億ルーブル(約3兆3000億円)の支出削減を提案した。また、社会福祉の支出を大幅に拡大し、来年だけで9360億ルーブル増の3兆4000億ルーブルに引き上げることも計画しているという。同紙は匿名の財務省報道官の発言を引用し、この変更は全般的に、最も重要な分野に支出を集中させるための連邦予算の「バランス調整」だと報じている」

     

    ロシア財務省は、歳入減を見込んでおり、予算削減に着手している。輸送インフラや科学技術開発プロジェクト予算の一部で、今後3年間で1兆6000億ルーブル(約3兆3000億円)の支出削減を提案した。一方で、社会福祉支出を大幅に拡大する。来年だけで9360億ルーブル増の3兆4000億ルーブルに引き上げる。低所得者の手当と年金引上げである。これによって、制裁による不満を緩和させる目的である。国民の目をウクライナ侵攻から逸らすのだ。


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    ロシア陣営で「新G8」

    今来年でGDP大幅減

    これから10年雌伏期

    同盟の価値を再認識へ

     

    ロシアのプーチン大統領は6月17日、「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム」で欧米諸国を痛烈に批判する演説を行い、「一極世界の時代」の終わりを宣言した。西側諸国による経済制裁にも関わらず、原油価格の高騰によって貿易黒字はむしろ増加。プーチン氏が意気軒昂である裏には、こういう事情がある。

     

    一方、西側諸国は自ら科した経済制裁によって原油価格が高騰して、消費者物価が危険ラインを突破している。ロシア外務省広報官が、「西側は自分で自分の足を撃っている」と嘲笑しているほど。プーチン氏が、「一極世界の時代」の終わりと言いたい理由はここにある。

     


    プーチン氏は、すでに戦勝気分である。
    自身について、公然と皇帝ピョートル1世になぞらえているのだ。ピョートル1世は17世紀末~18世紀のロシア皇帝で、ロシア近代化のほかに大国化を推進した。大北方戦争でスウェーデンと長年にわたり領土戦争を繰り広げた皇帝である。プーチン氏は、皇帝ピョートル1世の「再来」として振る舞うつもりだ。

     

    こういう歴史錯誤は、なぜ起こっているのか。

     

    ロシアは、ビザンティン帝国から正教を受容したので、ローマ・カトリック世界とは異なる道を歩むことになった。欧州のような、近代ヨーロッパ文化を誕生させたルネサンスも宗教改革も経験しなかったのだ。この歴史が、ピョートル1世を生み領土拡大が「善」とする国家観を生み出し、プーチン氏にまで引継がれている背景であろう。

     


    ロシア陣営で
    「新G8」

    ロシア下院のヴォロディン議長は6月11日、ロシアに対し友好的な国による「新G8」を提唱した。「アメリカが対ロ制裁などによって新G8結成のための条件を自ら作り出した」とした。その新G8候補国は、「中国、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、トルコ、メキシコ、イラン」などだ。そして、「新G8」のGDPは、購買力平価によれば現在の「G7」を凌ぐとしている。購買力平価という、雲を掴むようなデータを持出して、ロシア側陣営の勝利を宣言しているのだ。

     

    ロシアが、ここまで西側諸国へ対抗心をむき出しにしている裏には、ロシア国内を鼓舞する狙いもあろう。客観的に見て、「新G8」がロシアの要請によってまとまるメリットはない。逆に、西側諸国から不利益を被るリスクの方が高まるだけである。そんな不利な取引になることに加わる国はあるまい。

     


    ロシアが、「新G8」などを言い出している裏には、原油や天然エネルギーの価格が高騰して、「売り手市場」になっていることもあろう。確かに、今年の貿易黒字は昨年を大幅に上回る見込みである。以下は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月17日付)から引用した。

     

    ロシアの貿易黒字は、今年1月~5月に昨年同期に対して、約3倍増の1100億ドル(約14兆5600円)に達した。このまま行けば、今年は過去最高の経常黒字となる見通しだ。ロシアは、この潤沢な資金を緊急時に備えるためではなく、落込む国内経済の下支えに使っている。国際金融協会(IIF)は今月取りまとめた報告書の中で、「ロシアの構造的な経常黒字はバッファーの迅速な構築につながり、制裁の効果が時間と共に低下するのは必至だ」と指摘した。


    IIFの試算によると、資源価格が高止まりし、ロシアがこれまで通り石油・ガス輸出を続けるならば、ロシアは今年、3000億ドル以上のエネルギー販売代価を受け取る可能性がある。これは西側の制裁で凍結されたロシアの外貨準備の額にほぼ匹敵する。

     

    以上の報道から得られる示唆は、厖大な貿易黒字を落込むロシア経済の下支えに使えることだ。これが、経済制裁の効果を目立たなくさせている理由である。問題は、この資源高状況がいつまで続くかである。

     

    ロシア産原油や天然ガスの最大需要先であるEUが、今年年末までに原油の9割を輸入削減する。天然ガスも、EUはアフリカからの輸入を増やす交渉が軌道に乗っている。こう見ると、ロシアが現在享受している「価格高騰」メリットに永続性がないことは明らか。これからは、経済制裁効果を軽減してきたバッファーが消える。ロシア経済へ、ストレートで悪影響が出る局面を迎えるであろう。

     


    今来年でGDP大幅減

    IIFの予測によれば、ロシア経済が今年はマイナス15%、2023年も3%のマイナス成長になるとしている。これによって約15年分の経済成長が消し飛ぶと見ているのだ。このような悲観的なシナリオが出てくる背景を探ってみたい。

     

    ロシアが今後、経験させられるのは「産業化の逆行」である。すなわち、より前の段階の古い技術を生かした経済成長になることだ。新しい技術は、西側諸国からの提供がストップする。技術脆弱国のロシアにとって、致命的な痛手になる。プーチン氏を初め、ロシアの政治家にはその深刻さが全く分かっていないのだろう。(つづく)

     

    次の記事もご参考に。

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    ロシアのプーチン大統領は、意気軒昂である。西側諸国から経済制裁を受けているが、ロシアの経常収支黒字は資源価格の高騰で、今年1月~5月に約3倍増の1100億ドル(約14兆5600億円)にも達している。このまま行けば、今年は過去最高の経常黒字となる見通しだ。

     

    いったい、ロシアへの経済制裁はいつから効き出すのか。この夏から秋にかけて、ロシア経済の問題点が浮き彫りになる。失業率の顕著な上昇である。GDP成長率は、今年と来年の2年間のマイナス成長によって、過去の成長率をゼロにするほどの効き方になると予測されている。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月17日付)は、「対ロシア制裁、まだ効かないのはなぜ」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアに対する制裁は、エネルギー価格高騰という予想外の恩恵によって相殺され、十分な経済的痛みを与えられずにいる。ロシアの戦争遂行努力を妨げ、ウラジーミル・プーチン大統領を交渉の席に着かせる狙いはうまくいっていない。ただ、この「耐性」は長続きしないと見られている。年内に深刻な景気後退が始まり、貧困が拡大し、経済的潜在力が長期的に低下すると多くのエコノミストが予測している。今のところ、制裁を科すペースが遅く、ロシアの経済安定化への取り組みが成功し、石油・ガス輸出を継続できていることが、同国に与える打撃を和らげている。

     

    (1)「ドイツ国際安全保障問題研究所のロシア経済専門家ヤニス・クルーゲ氏は、「現時点で、経済制裁はロシアに交渉に臨む動機を与えていない」と指摘。「ロシア政府は数年間の景気悪化を乗り切り、好転するまで待てるだろうと確信している。西側の制裁をかわすのに成功していることが、ロシアをつけあがらせている」。ロシアのサンクトペテルブルクで今週開催されている国際経済フォーラムには、例年ここに集う世界の政治、経済、実業界のリーダーたちの姿がなかった。

     

    現在のロシアは、経済制裁によって資源価格が高騰してその恩恵に浴している。制裁のマイナスをはるかに超過している。

     


    (2)「欧州はエネルギー面のロシア依存脱却に躍起となるが、ロシアは世界的な価格高騰のおかげもあって毎日何億ドルもの石油・ガス販売収入を得ている。その結果、ロシアの対外貿易の指標である経常収支の黒字額は、今年1月~5月に約3倍増の1100億ドル(約14兆5600億円)に達した。このまま行けば今年は過去最高の経常黒字となる見通しで、ロシアは準備金を相当積み増せる。ロシアはこの潤沢な資金を緊急時に備えるためではなく、経済の下支えに使っている」

     

    今年1月~5月で経常収支の黒字額は前年比、約3倍増の1100億ドルにも達している。その分が、制裁を科している西側諸国の負担になる皮肉なことが起こっている。独仏が、ウクライナ支援に二の足を踏み始めた背景である。

     

    (3)「国際金融協会(IIF)は今月取りまとめた報告書の中で、「ロシアの構造的な経常黒字はバッファーの迅速な構築につながり、制裁の効果が時間と共に低下するのは必至だ」と指摘した。IIFの試算によると、資源価格が高止まりし、ロシアがこれまで通り石油・ガス輸出を続けるならば、ロシアは今年、3000億ドル以上のエネルギー販売代価を受け取る可能性がある。これは西側の制裁で凍結されたロシアの外貨準備の額にほぼ匹敵する」

     

    ロシアは今年、3000億ドル以上のエネルギー販売代価を受け取る可能性があるという。凍結された外貨準備高に匹敵する。これでは、プーチン氏も鼻息が荒くなろう。

     


    (4)「西側諸国にとっては、ロシアへの締めつけを強めるほど、消費者物価の急上昇に直面する自国経済の巻き添えリスクが高まるという現状がある。リスクとのバランスを図るため、西側諸国はエネルギー関連の制裁に慎重にならざるを得ない。欧州連合(EU)がロシア産石油の90%の輸入停止で合意したのは大きな一歩だが、この措置が完全に効力を生じるのは今年末だ。プーチン氏は、西側が仕掛けた経済の電撃戦は失敗したと主張し、制裁の経済的影響を小さく見せようとしている。だが短期的な危機を回避できたのは、ロシア中央銀行が迅速に策を講じたことによるものだ」

     

    EUは、ロシア産石油の90%の輸入停止措置を行なうが、完全に効力を生じるのは今年末からである。それまで部分的にしか、制裁効果は発揮しないである。タイムラグがあるのだ。

     


    (5)「西側が科す制裁の影響は一様ではない。金融セクターの制裁――ロシアを世界的な決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除し、ロシア中銀との取引を禁じるなど――は即効性があるものの、マクロ経済に影響が出るのは時間がかかるとアナリストは言う。IIFの報告書は、「経済制裁は一夜にしてロシアの行動を止めることはできない。行動を続けることで支払う代償を引き上げるのが狙いだ」と指摘した。「その代償は最終的に、ロシアのウクライナに対する戦争が法外に高くつく水準に達する可能性がある」 それがいつ頃になるかは不明だが、すでに将来の経済停滞の輪郭は見え始めている。経済への影響は今年下半期に拡大する見通しだ。アナリストの予想では、これまで横ばいだった失業率が今秋には上昇するという。ロシア事業の縮小を表明した1000社余りの外資企業の多くは、労働者に賃金を払い続けている」。

     

    ロシア経済への影響は、今年下半期から拡大する見通しだ。具体的には、今秋から失業率の目立った上昇が始まると見られる。現状では、外資企業の1000社余りが労働者へ賃金を払い続けている。これも秋頃には期限切れになるからだ。

     


    (6)「前出のドイツのロシア経済専門家ヤニス・クルーゲ氏は、「夏から秋にかけてロシア経済の問題点が、徐々にではあるが増大するだろう」と語った。IIFはロシア経済が今年は15%、2023年も3%のマイナス成長になると予想。それによって約15年分の経済成長が消し飛ぶとみている。ロシアの今年の国内総生産(GDP)の落ち込みをより控え目に予想するアナリストもいるが、それでも10%程度は減少する見込みだという。ロシア中銀のアナリストは、今後経験するのは「産業化の逆行」だと話す。すなわち、より前の段階の技術を生かした経済成長だ」

     

    IIFは、ロシア経済の今年の成長率がマイナス15%、2023年もマイナス3%成長率になると予想する。この2年間のマイナス成長で、過去15年分の成長率が帳消しになり、古い技術による経済成長を余儀なくされる、というのだ。

     

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    EU(欧州連合)は、ウクライナ侵攻を早く止めるために、ロシアへの経済制裁を強化する。6ヶ月以内に、石油製品の輸入は2022年末までに禁止することになった。同時に最大行をSWIFTから除外することも決めた。これに対してロシアが、どのように反撃するかに関心が集まっている。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月5日付)は、「EUのロシア原油禁輸、報復リスクも」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)が打ち出した経済制裁第6弾は、ロシア産原油の禁輸という劇的なひねりを織り込んでいる。欧州委員会は4日、EUによるロシア産原油の購入を6カ月以内に禁止し、石油製品も年内に禁輸対象とすることを提案した。そうした措置を取るのはEUが初めてではないが、EUはロシアが輸出する原油と石油製品の半分近くを購入しているため、この動きは大きな影響をもたらす。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も、この「武器」を見逃すことはないだろう」

     


    (1)「EUは数週間前からロシア産原油の禁輸を議論してきたが、ドイツが代替供給元を見つけた頃からその機運が高まってきた。ハンガリーとスロバキアには、同様に代替供給元を見つけるまで20カ月の猶予がある。ただ、禁輸案の承認にあたっては、ハンガリーによる拒否権行使の可能性も残っている。原油価格は4日の取引開始直後に3%上昇したにすぎないが、これは禁輸措置が十分に予告されていたことや、禁輸の段階的な実施計画に加え、多くの買い手がすでにロシア産原油を避けていたことが理由だ」

     

    ついに、ロシアにとって最大の経済制裁である原油の禁輸問題が、具体的に日程へ上がってきた。原則、6ヶ月以内に輸入停止にする。ロシアにとっては最大の販売先だけに、その打撃は大きい。

     


    (2)「石油企業幹部や市場アナリストはそれ以前から、ロシアの原油輸出が日量200万

    ~300万バレル減少する可能性があると予想していた。ウクライナ侵攻前の総輸出量は日量約500万バレルだった。原油市場は依然としてひっ迫しているものの、このところ中国で新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が敷かれ、世界的な需要は抑制されている。中国のロックダウンが早期に解除されれば、市場への圧力と価格は大幅に上昇するだろう。石油輸出国機構(OPEC)の増産が圧力を和らげるかもしれないとはいえ、実現する可能性は極めて低い」

     

    EUが、ロシアの原油を禁輸にすれば日量200万~300万バレルの減少となる。ロシアは、日量1000万バレルの生産だから、2~3割の減産になる。

     


    (3)「世界の石油供給ラインはすでに変わりつつある。欧米の顧客は新しい生産者を見つけ、ロシア政府はインドと中国の製油所(国営ではなく独立系ではあるが)への販売を増やしている。石油のブレンドが異なると、製油所を変更することなく供給元を変更することは困難である。足元のシフトはおそらく続くだろうが、不確定要素もある。EUの禁輸措置は、米国が対イラン制裁と同様のロシア産原油の禁輸措置を延長する道を開くことになる」

     

    EUは、ロシア経済への打撃を狙っている。二度と隣国を侵略しないように経済制裁の徹底化を目指す。この結果、禁輸措置は延長されるだろうと見られる。ロシアは、今や「敵国」になった。敵国に「塩」を送ることを避ける筈だ。

     


    (4)「ロシアの反応は予測が難しいが、重要だろう。EUの禁輸措置は、短期的にロシアの財政に打撃を及ぼすものではないかもしれない。世界的な価格上昇が輸出の減少を相殺するかもしれないからだ。それでも、それは強力な象徴であり、プーチン氏が反応する可能性は高い。米調査会社ユーラシア・グループのヘニング・グロスタイン氏は、ロシアが突然、欧州の一部の国への供給停止を決定し、現実に石油の供給混乱を引き起こす可能性があると指摘する。あるいは、「ロシアはEUへの天然ガス供給停止で報復するかもしれない」とシンクタンクのブリューゲルのシモーネ・タグリアピエトラ氏は言う。前者の場合は原油、後者の場合は液化天然ガス(LNG)について、世界的な供給不足と価格高騰の引き金となるだろう」

     

    プーチン氏のことゆえ、「やられっぱなし」はない。必ず報復してくると見られる。EUが、原油の禁輸を実施する前に供給停止する。あるいは、天然ガス供給停止を行なうというもの。

     


    (5)「ほぼ確実なのは、欧州のエネルギー価格の上昇だ。これはインフレをさらに加速させ、欧州中央銀行(ECB)が金利を引き上げざるを得なくなる可能性がある。欧州の景気後退リスクは高まり続ける。これまでの制裁は、ロシアに痛手を及ぼす可能性がある石油と天然ガスをおおむね対象から除外していた。EUはここに来て、それが裏目に出る危険性があるにもかかわらず、大砲に頼ろうとしている」

     

    欧州のエネルギー価格は、確実に上昇すると見られる。EUにとっては、ウクライナ侵攻を撃退するための必要コストという認識が求められる。

     

    EUのロシア追加制裁案には、ロシア最大手の銀行スベルバンクを含む3銀行を新たに国際送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から除外する措置が盛り込まれた。残る2行の名前は公表していないが、EU当局者によると、モスクワ信用銀行とロシア農業銀行だという。欧州委員会委員長のフォンデアライエン氏は、「これによりロシア金融セクターの国際システムからの完全な孤立が強化される」と述べた。『ロイター』(5月5日付)が報じた。

     

    EUは、ロシアに対して強硬である。ヨーロッパでの侵略戦争を絶対に回避するというEUの精神に対して、ロシアの行為は重大な挑戦であるからだ。

     

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