中国輸出は、急ブレーキがかかっている。2022年10~12月のドル建て輸出額は、前年同期比7%減。2年半ぶりのマイナスとなった。ゼロコロナで傷ついた中国経済のテコ入れには輸出しかない。その頼みの綱がマイナスでは、ショックも大きい。国・地域別にみると、米国向けは19%減で2四半期連続のマイナス。欧州連合(EU)向けも12%の減少に転じているのだ。
米国は、安全保障を巡る対立激化で輸出減になったが、EUは何としても地盤を失いたくないという切羽詰まった局面にある。EUは、中国にとって最大の貿易相手国だ。中国はEUに対して巨額の貿易黒字を計上している。これが、中国の対EU外交へ力を入れている背景にある。
『フィナンシャル・タイムズ』(1月11日付)は、中国、「『経済リセット』より重視、ゼロコロナ後」と題する記事を掲載した。
(1)「欧州勢力との関係修復を求める中国政府は、欧州側に対して「ノー・デカップリング(非分断)」というスローガンを唱えることに同意するよう強く主張している。(編集注、デカップリングは中国経済が先進国経済とは非連動という意味で使われてきた)とりわけ機密的な技術などの特定分野で中国との経済的な関係を制限しようとしている米国政府とは明らかに異なる対応を求めている」
中国は、欧米が一本化して「脱中国」にならぬよう、離間作戦を始めている。だが、EUもこの手は先刻承知済。EUは、ロシア依存のエネルギー政策で苦しんだだけに中国依存に対して慎重である。
(2)「香港バプティスト大学の中国専門家、ジャンピエール・キャペスタン氏は「中国は同時にあまりにも多くの国々、特に現在も主要な貿易・経済上のパートナーである西側諸国と敵対していることに気づいた」と分析する。「そのため、EUや欧州主要国のドイツ、フランス、イタリア、スペインだけではなく、日本や韓国などアジアの米同盟国、米国と(安全保障面で密接な関係にある)ベトナムなどに(関係修正を)懸命に働きかけている」と指摘」
中国は、「喉元過ぎれば」である。日韓に対しては、コロナの水際対策を巡る行き違いから、ビザ発給を中止して圧力を掛けている。相変わらずの「自国中心主義」に陥っている。これでますます、日韓は中国との距離は開くだけだ。
(3)「欧州の当局者やアナリストらによると、欧州各国首脳の大きな動機付けとなっているのが、ロシアによる核兵器使用の抑制を中国が手助けすることができるという期待だ。米カリフォルニア大学サンディエゴ校の教授で21世紀中国センターの会長を務めるスーザン・シャーク氏は「中国は常に核兵器の使用に反対してきたはずだ」と指摘したうえで、「しかし習近平国家首席が欧州首脳らにこのようなことを語る際には、(中国と)ロシアの間には一定の距離があることを強調しようとするだろう」と話す」
中国のEU接近の「常套句」は、ロシアの核使用反対論である。これによって、EUを引きつけようという戦略である。
(4)「中国政府がより重要視しているのが国内の経済成長を押し上げる経済リセットだ。具体化されつつある成長志向戦略の背景には、向こう数カ月に中国経済はコロナがもたらした景気低迷から脱却するという不透明な前提がある。中国共産党中央財経委員会の主要幹部である韓文秀氏は昨年12月、23年1〜3月期は大きな混乱による悪影響は避けられないとしながらも、4~6月期には「加速したペース」で景気が回復する見通しだと言明した」
中国共産党中央財経委員会の主要幹部は、4~6月期の景気急回復を予測している。コロナ感染急拡大の後遺症が、どうなるか未知数である。中国疾病予防コントロールセンターの首席疫学者だった曽光氏は、新型コロナウイルス感染のピークが2~3カ月続く見込みで、医療資源が比較的乏しい農村部に間もなく感染の波が広がるとの見方を示した。『ロイター』(13日付)が伝えた。楽観論は要注意だ。
(5)「アナリストらは、韓氏の発言について中国政府が不動産市場を23年中に安定させる計画であると解釈している。韓氏の口頭での支援に加え、中国政府は不動産市場向けに16項目に及ぶ包括支援策を発表しており、国有銀行は特定の不動産開発企業向けに推定2560億ドル(約33兆8000億円)の融資枠を設定している」
中国政府は、不動産企業への資金調達制限などを緩め、支援政策に転換する。大手不動産に対して定めた財務指針「3つのレッドライン」を緩和する。だが、問題は需要側(家計)の住宅ローン支払能力である。雇用もままならぬ中で、多額の住宅ローンを抱える余裕があるのか疑問だ。