勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時評

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    ロシア陣営で「新G8」

    今来年でGDP大幅減

    これから10年雌伏期

    同盟の価値を再認識へ

     

    ロシアのプーチン大統領は6月17日、「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム」で欧米諸国を痛烈に批判する演説を行い、「一極世界の時代」の終わりを宣言した。西側諸国による経済制裁にも関わらず、原油価格の高騰によって貿易黒字はむしろ増加。プーチン氏が意気軒昂である裏には、こういう事情がある。

     

    一方、西側諸国は自ら科した経済制裁によって原油価格が高騰して、消費者物価が危険ラインを突破している。ロシア外務省広報官が、「西側は自分で自分の足を撃っている」と嘲笑しているほど。プーチン氏が、「一極世界の時代」の終わりと言いたい理由はここにある。

     


    プーチン氏は、すでに戦勝気分である。
    自身について、公然と皇帝ピョートル1世になぞらえているのだ。ピョートル1世は17世紀末~18世紀のロシア皇帝で、ロシア近代化のほかに大国化を推進した。大北方戦争でスウェーデンと長年にわたり領土戦争を繰り広げた皇帝である。プーチン氏は、皇帝ピョートル1世の「再来」として振る舞うつもりだ。

     

    こういう歴史錯誤は、なぜ起こっているのか。

     

    ロシアは、ビザンティン帝国から正教を受容したので、ローマ・カトリック世界とは異なる道を歩むことになった。欧州のような、近代ヨーロッパ文化を誕生させたルネサンスも宗教改革も経験しなかったのだ。この歴史が、ピョートル1世を生み領土拡大が「善」とする国家観を生み出し、プーチン氏にまで引継がれている背景であろう。

     


    ロシア陣営で
    「新G8」

    ロシア下院のヴォロディン議長は6月11日、ロシアに対し友好的な国による「新G8」を提唱した。「アメリカが対ロ制裁などによって新G8結成のための条件を自ら作り出した」とした。その新G8候補国は、「中国、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、トルコ、メキシコ、イラン」などだ。そして、「新G8」のGDPは、購買力平価によれば現在の「G7」を凌ぐとしている。購買力平価という、雲を掴むようなデータを持出して、ロシア側陣営の勝利を宣言しているのだ。

     

    ロシアが、ここまで西側諸国へ対抗心をむき出しにしている裏には、ロシア国内を鼓舞する狙いもあろう。客観的に見て、「新G8」がロシアの要請によってまとまるメリットはない。逆に、西側諸国から不利益を被るリスクの方が高まるだけである。そんな不利な取引になることに加わる国はあるまい。

     


    ロシアが、「新G8」などを言い出している裏には、原油や天然エネルギーの価格が高騰して、「売り手市場」になっていることもあろう。確かに、今年の貿易黒字は昨年を大幅に上回る見込みである。以下は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月17日付)から引用した。

     

    ロシアの貿易黒字は、今年1月~5月に昨年同期に対して、約3倍増の1100億ドル(約14兆5600円)に達した。このまま行けば、今年は過去最高の経常黒字となる見通しだ。ロシアは、この潤沢な資金を緊急時に備えるためではなく、落込む国内経済の下支えに使っている。国際金融協会(IIF)は今月取りまとめた報告書の中で、「ロシアの構造的な経常黒字はバッファーの迅速な構築につながり、制裁の効果が時間と共に低下するのは必至だ」と指摘した。


    IIFの試算によると、資源価格が高止まりし、ロシアがこれまで通り石油・ガス輸出を続けるならば、ロシアは今年、3000億ドル以上のエネルギー販売代価を受け取る可能性がある。これは西側の制裁で凍結されたロシアの外貨準備の額にほぼ匹敵する。

     

    以上の報道から得られる示唆は、厖大な貿易黒字を落込むロシア経済の下支えに使えることだ。これが、経済制裁の効果を目立たなくさせている理由である。問題は、この資源高状況がいつまで続くかである。

     

    ロシア産原油や天然ガスの最大需要先であるEUが、今年年末までに原油の9割を輸入削減する。天然ガスも、EUはアフリカからの輸入を増やす交渉が軌道に乗っている。こう見ると、ロシアが現在享受している「価格高騰」メリットに永続性がないことは明らか。これからは、経済制裁効果を軽減してきたバッファーが消える。ロシア経済へ、ストレートで悪影響が出る局面を迎えるであろう。

     


    今来年でGDP大幅減

    IIFの予測によれば、ロシア経済が今年はマイナス15%、2023年も3%のマイナス成長になるとしている。これによって約15年分の経済成長が消し飛ぶと見ているのだ。このような悲観的なシナリオが出てくる背景を探ってみたい。

     

    ロシアが今後、経験させられるのは「産業化の逆行」である。すなわち、より前の段階の古い技術を生かした経済成長になることだ。新しい技術は、西側諸国からの提供がストップする。技術脆弱国のロシアにとって、致命的な痛手になる。プーチン氏を初め、ロシアの政治家にはその深刻さが全く分かっていないのだろう。(つづく)

     

    次の記事もご参考に。

    2022-06-02

    メルマガ365号 習近平10年の「悪行」、欧米から突付けられた「縁切り状」

    2022-06-06

    メルマガ366号 韓国、山積みになった「請求書」 長期低迷期に入る覚悟あるか

    2022-06-20

    メルマガ370号 韓国新政権「負の遺産」に苦悩 忍びよる債務破綻、家計・国家が抱える

     

     

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    ロシアのプーチン大統領は、意気軒昂である。西側諸国から経済制裁を受けているが、ロシアの経常収支黒字は資源価格の高騰で、今年1月~5月に約3倍増の1100億ドル(約14兆5600億円)にも達している。このまま行けば、今年は過去最高の経常黒字となる見通しだ。

     

    いったい、ロシアへの経済制裁はいつから効き出すのか。この夏から秋にかけて、ロシア経済の問題点が浮き彫りになる。失業率の顕著な上昇である。GDP成長率は、今年と来年の2年間のマイナス成長によって、過去の成長率をゼロにするほどの効き方になると予測されている。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月17日付)は、「対ロシア制裁、まだ効かないのはなぜ」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアに対する制裁は、エネルギー価格高騰という予想外の恩恵によって相殺され、十分な経済的痛みを与えられずにいる。ロシアの戦争遂行努力を妨げ、ウラジーミル・プーチン大統領を交渉の席に着かせる狙いはうまくいっていない。ただ、この「耐性」は長続きしないと見られている。年内に深刻な景気後退が始まり、貧困が拡大し、経済的潜在力が長期的に低下すると多くのエコノミストが予測している。今のところ、制裁を科すペースが遅く、ロシアの経済安定化への取り組みが成功し、石油・ガス輸出を継続できていることが、同国に与える打撃を和らげている。

     

    (1)「ドイツ国際安全保障問題研究所のロシア経済専門家ヤニス・クルーゲ氏は、「現時点で、経済制裁はロシアに交渉に臨む動機を与えていない」と指摘。「ロシア政府は数年間の景気悪化を乗り切り、好転するまで待てるだろうと確信している。西側の制裁をかわすのに成功していることが、ロシアをつけあがらせている」。ロシアのサンクトペテルブルクで今週開催されている国際経済フォーラムには、例年ここに集う世界の政治、経済、実業界のリーダーたちの姿がなかった。

     

    現在のロシアは、経済制裁によって資源価格が高騰してその恩恵に浴している。制裁のマイナスをはるかに超過している。

     


    (2)「欧州はエネルギー面のロシア依存脱却に躍起となるが、ロシアは世界的な価格高騰のおかげもあって毎日何億ドルもの石油・ガス販売収入を得ている。その結果、ロシアの対外貿易の指標である経常収支の黒字額は、今年1月~5月に約3倍増の1100億ドル(約14兆5600億円)に達した。このまま行けば今年は過去最高の経常黒字となる見通しで、ロシアは準備金を相当積み増せる。ロシアはこの潤沢な資金を緊急時に備えるためではなく、経済の下支えに使っている」

     

    今年1月~5月で経常収支の黒字額は前年比、約3倍増の1100億ドルにも達している。その分が、制裁を科している西側諸国の負担になる皮肉なことが起こっている。独仏が、ウクライナ支援に二の足を踏み始めた背景である。

     

    (3)「国際金融協会(IIF)は今月取りまとめた報告書の中で、「ロシアの構造的な経常黒字はバッファーの迅速な構築につながり、制裁の効果が時間と共に低下するのは必至だ」と指摘した。IIFの試算によると、資源価格が高止まりし、ロシアがこれまで通り石油・ガス輸出を続けるならば、ロシアは今年、3000億ドル以上のエネルギー販売代価を受け取る可能性がある。これは西側の制裁で凍結されたロシアの外貨準備の額にほぼ匹敵する」

     

    ロシアは今年、3000億ドル以上のエネルギー販売代価を受け取る可能性があるという。凍結された外貨準備高に匹敵する。これでは、プーチン氏も鼻息が荒くなろう。

     


    (4)「西側諸国にとっては、ロシアへの締めつけを強めるほど、消費者物価の急上昇に直面する自国経済の巻き添えリスクが高まるという現状がある。リスクとのバランスを図るため、西側諸国はエネルギー関連の制裁に慎重にならざるを得ない。欧州連合(EU)がロシア産石油の90%の輸入停止で合意したのは大きな一歩だが、この措置が完全に効力を生じるのは今年末だ。プーチン氏は、西側が仕掛けた経済の電撃戦は失敗したと主張し、制裁の経済的影響を小さく見せようとしている。だが短期的な危機を回避できたのは、ロシア中央銀行が迅速に策を講じたことによるものだ」

     

    EUは、ロシア産石油の90%の輸入停止措置を行なうが、完全に効力を生じるのは今年末からである。それまで部分的にしか、制裁効果は発揮しないである。タイムラグがあるのだ。

     


    (5)「西側が科す制裁の影響は一様ではない。金融セクターの制裁――ロシアを世界的な決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除し、ロシア中銀との取引を禁じるなど――は即効性があるものの、マクロ経済に影響が出るのは時間がかかるとアナリストは言う。IIFの報告書は、「経済制裁は一夜にしてロシアの行動を止めることはできない。行動を続けることで支払う代償を引き上げるのが狙いだ」と指摘した。「その代償は最終的に、ロシアのウクライナに対する戦争が法外に高くつく水準に達する可能性がある」 それがいつ頃になるかは不明だが、すでに将来の経済停滞の輪郭は見え始めている。経済への影響は今年下半期に拡大する見通しだ。アナリストの予想では、これまで横ばいだった失業率が今秋には上昇するという。ロシア事業の縮小を表明した1000社余りの外資企業の多くは、労働者に賃金を払い続けている」。

     

    ロシア経済への影響は、今年下半期から拡大する見通しだ。具体的には、今秋から失業率の目立った上昇が始まると見られる。現状では、外資企業の1000社余りが労働者へ賃金を払い続けている。これも秋頃には期限切れになるからだ。

     


    (6)「前出のドイツのロシア経済専門家ヤニス・クルーゲ氏は、「夏から秋にかけてロシア経済の問題点が、徐々にではあるが増大するだろう」と語った。IIFはロシア経済が今年は15%、2023年も3%のマイナス成長になると予想。それによって約15年分の経済成長が消し飛ぶとみている。ロシアの今年の国内総生産(GDP)の落ち込みをより控え目に予想するアナリストもいるが、それでも10%程度は減少する見込みだという。ロシア中銀のアナリストは、今後経験するのは「産業化の逆行」だと話す。すなわち、より前の段階の技術を生かした経済成長だ」

     

    IIFは、ロシア経済の今年の成長率がマイナス15%、2023年もマイナス3%成長率になると予想する。この2年間のマイナス成長で、過去15年分の成長率が帳消しになり、古い技術による経済成長を余儀なくされる、というのだ。

     

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    EU(欧州連合)は、ウクライナ侵攻を早く止めるために、ロシアへの経済制裁を強化する。6ヶ月以内に、石油製品の輸入は2022年末までに禁止することになった。同時に最大行をSWIFTから除外することも決めた。これに対してロシアが、どのように反撃するかに関心が集まっている。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月5日付)は、「EUのロシア原油禁輸、報復リスクも」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)が打ち出した経済制裁第6弾は、ロシア産原油の禁輸という劇的なひねりを織り込んでいる。欧州委員会は4日、EUによるロシア産原油の購入を6カ月以内に禁止し、石油製品も年内に禁輸対象とすることを提案した。そうした措置を取るのはEUが初めてではないが、EUはロシアが輸出する原油と石油製品の半分近くを購入しているため、この動きは大きな影響をもたらす。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も、この「武器」を見逃すことはないだろう」

     


    (1)「EUは数週間前からロシア産原油の禁輸を議論してきたが、ドイツが代替供給元を見つけた頃からその機運が高まってきた。ハンガリーとスロバキアには、同様に代替供給元を見つけるまで20カ月の猶予がある。ただ、禁輸案の承認にあたっては、ハンガリーによる拒否権行使の可能性も残っている。原油価格は4日の取引開始直後に3%上昇したにすぎないが、これは禁輸措置が十分に予告されていたことや、禁輸の段階的な実施計画に加え、多くの買い手がすでにロシア産原油を避けていたことが理由だ」

     

    ついに、ロシアにとって最大の経済制裁である原油の禁輸問題が、具体的に日程へ上がってきた。原則、6ヶ月以内に輸入停止にする。ロシアにとっては最大の販売先だけに、その打撃は大きい。

     


    (2)「石油企業幹部や市場アナリストはそれ以前から、ロシアの原油輸出が日量200万

    ~300万バレル減少する可能性があると予想していた。ウクライナ侵攻前の総輸出量は日量約500万バレルだった。原油市場は依然としてひっ迫しているものの、このところ中国で新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が敷かれ、世界的な需要は抑制されている。中国のロックダウンが早期に解除されれば、市場への圧力と価格は大幅に上昇するだろう。石油輸出国機構(OPEC)の増産が圧力を和らげるかもしれないとはいえ、実現する可能性は極めて低い」

     

    EUが、ロシアの原油を禁輸にすれば日量200万~300万バレルの減少となる。ロシアは、日量1000万バレルの生産だから、2~3割の減産になる。

     


    (3)「世界の石油供給ラインはすでに変わりつつある。欧米の顧客は新しい生産者を見つけ、ロシア政府はインドと中国の製油所(国営ではなく独立系ではあるが)への販売を増やしている。石油のブレンドが異なると、製油所を変更することなく供給元を変更することは困難である。足元のシフトはおそらく続くだろうが、不確定要素もある。EUの禁輸措置は、米国が対イラン制裁と同様のロシア産原油の禁輸措置を延長する道を開くことになる」

     

    EUは、ロシア経済への打撃を狙っている。二度と隣国を侵略しないように経済制裁の徹底化を目指す。この結果、禁輸措置は延長されるだろうと見られる。ロシアは、今や「敵国」になった。敵国に「塩」を送ることを避ける筈だ。

     


    (4)「ロシアの反応は予測が難しいが、重要だろう。EUの禁輸措置は、短期的にロシアの財政に打撃を及ぼすものではないかもしれない。世界的な価格上昇が輸出の減少を相殺するかもしれないからだ。それでも、それは強力な象徴であり、プーチン氏が反応する可能性は高い。米調査会社ユーラシア・グループのヘニング・グロスタイン氏は、ロシアが突然、欧州の一部の国への供給停止を決定し、現実に石油の供給混乱を引き起こす可能性があると指摘する。あるいは、「ロシアはEUへの天然ガス供給停止で報復するかもしれない」とシンクタンクのブリューゲルのシモーネ・タグリアピエトラ氏は言う。前者の場合は原油、後者の場合は液化天然ガス(LNG)について、世界的な供給不足と価格高騰の引き金となるだろう」

     

    プーチン氏のことゆえ、「やられっぱなし」はない。必ず報復してくると見られる。EUが、原油の禁輸を実施する前に供給停止する。あるいは、天然ガス供給停止を行なうというもの。

     


    (5)「ほぼ確実なのは、欧州のエネルギー価格の上昇だ。これはインフレをさらに加速させ、欧州中央銀行(ECB)が金利を引き上げざるを得なくなる可能性がある。欧州の景気後退リスクは高まり続ける。これまでの制裁は、ロシアに痛手を及ぼす可能性がある石油と天然ガスをおおむね対象から除外していた。EUはここに来て、それが裏目に出る危険性があるにもかかわらず、大砲に頼ろうとしている」

     

    欧州のエネルギー価格は、確実に上昇すると見られる。EUにとっては、ウクライナ侵攻を撃退するための必要コストという認識が求められる。

     

    EUのロシア追加制裁案には、ロシア最大手の銀行スベルバンクを含む3銀行を新たに国際送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から除外する措置が盛り込まれた。残る2行の名前は公表していないが、EU当局者によると、モスクワ信用銀行とロシア農業銀行だという。欧州委員会委員長のフォンデアライエン氏は、「これによりロシア金融セクターの国際システムからの完全な孤立が強化される」と述べた。『ロイター』(5月5日付)が報じた。

     

    EUは、ロシアに対して強硬である。ヨーロッパでの侵略戦争を絶対に回避するというEUの精神に対して、ロシアの行為は重大な挑戦であるからだ。

     

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