勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時評

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    日本が、「高温ガス炉」の実証試験に成功しグリーン水素製造に道を開いたことから、欧州が日本へ接近している。高温ガス炉試験では、OECD(経済協力開発機構)も立ち会っており、技術が「本物」であることを確認した欧州連合(EU)のシムソン欧州委員(エネルギー担当)は6月2日までに、日本経済新聞の書面インタビューに応じた。次世代燃料として期待される水素の市場をつくるために「日本との連携は不可欠だ」と述べた。シムソン氏は6月上旬に日本を訪れ、斎藤健経済産業相と水素分野での連携で合意する。 

    『日本経済新聞 電子版』(6月2日付)は、「日EU、水素活用へ国際ルール 安全性など主導し市場開拓」と題する記事を掲載した。 

    日本と欧州連合(EU)は次世代燃料として有力視される水素の普及に向け、製造装置や輸送技術などの国際規格の策定に着手する。水素の純度や安全性を担保する基準を設ける。水素活用のルールづくりを主導することで中国などの過剰生産を防ぎ、日欧の国際競争力を高める。

     

    (1)「日本の斎藤健経済産業相とEUのシムソン欧州委員(エネルギー政策担当)が近く会談し、水素の活用に向けた2040年ごろまでの共同工程表をつくる方針で合意する。日本とEUの研究開発支援、安全管理、既存燃料との価格差支援を担う政府系機関がそれぞれ覚書を結ぶ」 

    2040年というと、ずいぶん先の話に聞こえるがそうではない。水素経済への離陸が2040年であって、その前に準備を全て終えていなければならない。その意味では、それほど時間はない。 

    (2)「水素は製鉄、化学など温暖化ガスを多く出す産業で化石燃料に代わる燃料として期待されている。燃料電池自動車や航空機用の合成燃料にも使える。特に太陽光や風力といった再生可能エネルギーによる電力を使って水電解装置でつくる「グリーン水素」は今後の利用拡大が見込まれる。工程表は国際規格の策定のほか日欧の企業間協力、水素市場の育成などを含む幅広い分野での官民連携を盛り込む想定で、夏にも具体的な議論を始める」 

    水素は、高温ガス炉などの製造では二酸化炭素を排出しない。天然ガスや石炭からの製造では、二酸化炭素を排出する。前者は、グリーン水素。後者は、グレー水素と呼んで区別している。当初は、グレー水素でスタートする。次は、グリーン水素が主役を務める。

     

    (3)「水素に関係する明確な国際規格はまだ確立しておらず、日欧で先行してルール整備することで市場開拓を有利に進める。具体的には水素を製造する水電解装置水素トラックなど車両への充填技術液化水素などの輸送技術水素エンジンなどの燃焼技術――といった分野で規格作りに必要なデータを収集して共有する。燃料電池車に欠かせない水素の純度といった品質規格についても議論する方向だ。水電解装置に関しては有毒ガスが発生する事故を防ぐ安全性要件や水素の生産効率に関する基準をつくることが選択肢となる」 

    水素を製造する水電解装置は、高温ガス炉の利用の他に、再生エネルギーを利用して淡水からも製造可能だ。問題は、どちらのコストが安いかである。③は、トヨタ自動車が実用化済み。2030年には燃料電池システム(FC)を普及させる目的で、年間10万台ベースで世界販売する。この計画は、昨年発表された。水素自動車は、水素を内燃機(エンジン)でガソリンと同様に使うもので、トヨタが開発している。 

    (4)「EUのシムソン氏は、日本経済新聞との書面インタビューで「低炭素な水素市場をグローバルに拡大するためには日本との緊密な連携が不可欠だ」と述べた。その上で「EUは高水準の規格を策定し、公平な競争条件を確保するために日本と協力したい」と強調した。日本とEUで「水素や太陽光、風力発電などクリーンエネルギー政策で協調するための作業部会をつくりたい」とも語った」 

    日本とEUは、クリーンエネルギー政策で合同作業部会をつくるという。EUが、日本に遅れまいと必死になっている姿が浮かび上がっている。EUは、日本と共同して水素経済を世界へ広める旗振り役を目指す。これで、日本の水素製造技術は世界標準技術になる可能性が高まる。製造装置や部品が、世界へ輸出される。

     

    (5)「40年ごろを見据えた共同工程表をつくるのは、日欧それぞれの中長期のエネルギー政策に反映させるためだ。日本は24年度中に策定する次期エネルギー基本計画に2040年度の電源構成目標を盛り込む。EUの執行機関である欧州委員会は40年に1990年比で温暖化ガス排出量を90%削減する目標案を公表しており、実現するための計画をたてる必要がある」 

    エネルギー確保は、日本経済の宿願である。この問題が、水素開発で解決可能な見通しがついてきた以上、日本は「満願成就」と言っても過言でない。それだけ、凄いことが実現に向っているのだ。 

    (6)「中国が将来、水素を過剰生産するとの懸念に対処する思惑も日欧は一致する。脱炭素のカギを握る水素について国際規格を設けることは、価格の安さを競争力とする国への対抗手段となる。電気自動車(EV)や再生可能エネルギーで中国製品に市場をとられた反省をいかす」 

    中国が将来、再び水素製造で世界市場を「荒らさないか」と、今から取り越し苦労している。EUは、中国にソーラーパネルで酷い目に遭っているだけに警戒心が強い。日本・EU・米国が大同団結して、水素技術で市場を守らなければならないという決意を固めているようだ。

    次の記事もご参考に。

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    https://www.mag2.com/m/0001684526

     



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    中国の習近平政権が、欧州への外交攻勢を強めている。14日からドイツのショルツ首相を中国に招き、経済面での関係強化を図っている。また、習氏はフランス訪問計画も取り沙汰されている。米国が、アジア太平洋で中国包囲網を狭める中、西側諸国の連携にくさびを打つ狙いだ。だが、「血は水よりも濃し」の喩え通り、有事の際は「価値観」が決め手になる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月16日付)は、「習氏『中独で世界に安定を』、首脳会談欧州を引き込み」と題する記事を掲載した。

     

    ショルツ氏の訪中は2022年11月以来で、首相就任後は2度目となる。習氏は16日の会談で「中独は第2位、3位の経済大国だ。世界にさらなる安定をもたらすため協力すべきだ」と述べた。ショルツ氏は「ドイツは保護主義に反対し、自由貿易を支持する。EUと中国の良好な関係促進へ役割を果たしたい」と語った。両首脳はロシアによるウクライナ侵略や中東情勢についても話し合った。

     

    (1)「中国は欧州外交を重視する。習氏は5月上旬にフランスやハンガリーを訪問する方向だ。フランスではマクロン大統領と会談し、経済問題などを話し合う。マクロン氏が23年4月に訪中した際は、習氏が2日連続で一緒に会食するなどして厚遇した。背景には、米国が主導する先端半導体の対中輸出・投資規制への警戒心がある。日本やオランダも同調し、中国の技術開発や産業政策に影響を及ぼしたとされる」

     

    中国が、外交的に「息抜き」できる相手国は、独仏二国である。先進国のほとんどは米国の同盟国である。それだけに、習近平氏はこれら二国の引き留めに必死である。

     

    (2)「習氏が、3月に訪中したオランダのルッテ首相と北京で会談し、この規制をやめるよう促した。「人為的に技術障壁をつくり、サプライチェーン(供給網)を寸断させるのは対立を招くだけだ」と強調した。独仏との関係強化を通じ、EUによる中国企業への規制強化を回避する思惑もある。EUは中国政府から多額の補助金を受けた中国製の電気自動車(EV)や太陽光パネルが域内の競争を阻害しているとみて調査を始めた。結果を踏まえてEUが制裁関税を課せば、中国の輸出戦略に響く可能性がある。習氏はショルツ氏との会談で、中国製のEVと太陽光パネル、リチウムイオン電池を挙げ「世界の供給体制を豊かにしただけでなくインフレ圧力を緩和した」と力説した」

     

    EU加盟国は、全部で27ヶ国である。一国一票の原則であるから、中国が独仏二ヶ国へ肩入れしても、他国の「反中意識」が強いので賢明な策ではない。「ボス取引」ができないのだ。EUは、中国に対する強硬姿勢を強め、域内のグリーン産業や半導体分野に資本を動員する産業政策を推進している。

     

    ドイツは、中国から「デカップリング(経済分断)」しないよう求める働きかけが続いている。他国が資本を引き揚げる中で、ドイツの対中直接投資は2023年に過去最高を記録した。ドイツの中国へのこだわりは強い。

     

    (3)「米欧が、問題視するEVなどの過剰生産能力を巡っては「客観的にみるべきだ」と反論した。中国企業に対して「公平で透明性があり差別のないビジネス環境」を提供するよう求めた。中国の欧州接近は11月の米大統領選も絡む。北大西洋条約機構(NATO)に加盟する欧州各国の国防費負担が少ないと問題視してきたトランプ前大統領が勝利すれば、米欧関係がきしむ恐れがある。中国にとっては米欧にくさびを打ち込む好機となる

     

    中国は、対欧州外交で一番の弱点が人権問題である。この点を突かれたらアウトである。中国は、こういうアキレス腱を抱えているだけに、下線のように米欧へ外交的なクサビなど打てるはずがない。欧州が、それほど盲目でないからだ。中国外交の限界を示している。

     

    (4)「ショルツ政権は、メルケル前政権の対中融和路線からの軌道修正を図ってきた。23年7月に中国に関する初の外交戦略をまとめ、過度な経済依存を避ける「デリスキング(リスク軽減)」を打ち出した。それでも対中関係を重視せざるを得ない事情がある。

    ドイツの主要な経済研究所が3月下旬に公表した共同予測で、24年の実質成長率は0.1%とほぼ横ばいだ。ドイツ商工会議所はマイナス0.%と厳しい見方を示す。景気浮揚に向け、8年連続で最大の貿易相手国だった中国とのビジネス拡大は欠かせない」

     

    ドイツが、経済的に中国市場へ深くコミットしていることが最大の弱点である。市場転換ができないのだ。これは、ドイツ経済が中国と盛衰を共にするということでもあろう。危険きわまりない事態である。

     

    (5)「中国市場での売り上げ減を危惧する産業界からは、対中規制強化への慎重論があがる。ドイツ自動車工業会はEUが検討する中国製EVへの追加関税に反対の立場だ。ヒルデガルト・ミュラー会長は14日、独紙『ウェルト』とのインタビューで「中国とのビジネスによりドイツで多くの雇用が確保されている」と表明し、貿易摩擦による雇用への悪影響に懸念を示した」

     

    ドイツ産業界は、中国経済の潜在力をどのように評価しているのか。ロシアのウクライナ侵攻前は、ロシアへのエネルギー依存で大失敗した。この教訓が、中国経済への対応で全く生きていないのは不思議と言うべきだ。

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    中国は、EV(電気自動車)の輸出へ本腰を入れている。国内需要が曲がりカーブに達したので、余剰生産力を輸出でカバーしようという狙いだ。EV稼働率は、わずか33%である。これでは、死に物狂いで輸出するほかない。これを受けて立つ日欧米は、「ダンピング輸出」を阻止すべく対策を練っている。

     

    『朝鮮日報』(10月30日付)は、「EV輸出、中国が圧倒的首位 世界各国で障壁構築相次ぐ」と題する記事を掲載した。

     

    中国は今年、史上初めて自動車輸出世界首位に浮上すると予想される。韓国自動車モビリティー産業協会(KAMA)の集計によると、18月の中国自動車輸出は約321万台で、前年13位だった日本(277万台)、ドイツ(207万台)を圧倒的に上回っている。2021年に韓国を抜き初めて3位となり、昨年ドイツを抜いて2位に浮上した中国は、今年不動の首位日本まで追い抜くことになる。

     

    (1)「(中国輸出の)うち108万台は、中国で「新エネルギー車(NEV)」と呼ばれる電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車だ。中国が輸出するEVの約25%は米テスラの中国工場などの出荷分だが、残りは上海汽車や比亜迪(BYD)など中国企業が占める。主要国のEV市場では今年、内燃機関車より割高な価格、補助金削減、不便な充電インフラなどが障害となり、EV販売の伸びが鈍化している。一方、中国は国内でNEVの割合が約30%まで増え、急成長を示している。EVの中核部品である電池も今年の世界シェア12位が寧徳時代新能源科技(CATL)、BYDという中国企業だ」

     

    中国EV輸出の25%は、米テスラの出荷である。残りがBYDや上海汽車などの民族資本企業である。テスラが、中国以外の工場進出に慎重なのは中国での生産コスト安がある。補助金支給だ。

     

    (2)「このように、中国のEVが内需市場だけでなく、破竹の勢いで世界市場に食い込むと、各国は対応に追われた。昨年8月の米インフレ抑制法(IRA)を皮切りに、自国のEV産業を保護するために補助金・関税などの貿易障壁を高める動きが見られる。EV市場に出現した自国優先主義傾向の核心には「反中」がある。欧米による中国製EVけん制は価格競争力を低下させることが中心だ。EVは通常、同じクラスの内燃機関車より20~40%割高だが、中国のEVは自国企業から安価で電池を調達し、内燃機関車並みの水準にまで価格を下げ、それを武器に世界市場を攻略している」

     

    中国は、あらゆる産業で補助金をばら撒いている。日本企業も恩典に預かっているほどだ。これは、輸出価格と国内価格を一致させなければ、WTO(国際貿易機関)によって、ダンピングと認定されるからである。これをクリアするには、国内生産段階で補助金をつけなければならない。

     

    (3)「このため、昨年8月に米国が導入したIRAのようなEV保護主義が世界に広がっている。IRAは政府補助金を受けるためにはEVを北米で生産しなければならず、電池など主要部品の現地生産比率も一定水準をクリアしなければならないことが骨子だ。フランスがそれに倣い、来年1月からEVの生産・流通時に発生する炭素排出量に応じて補助金に差を付けることにした。中国はもちろん、韓日など欧州以外の地域から輸入されるEVは、車体を輸送する際に炭素を多く排出するため、ほとんど補助金を受けられない見通しだ。イタリアもEVの生産・流通過程の炭素排出量に沿ったインセンティブを検討している。業界は中国のEVを狙い撃ちにした政策だと分析している」

     

    米国は、インフレ抑制法(IRA)によって、国内でのEVや電池の生産で企業へ補助金を出す一方、中国EVへ23%の高関税を掛けて中国へ対抗している。この結果、中国EVは締め出されている。

     

    (4)「日本は、国内での電池生産量に比例して、税額控除を受けられるようにする「戦略物資生産基盤税制」の導入を検討中だ。これは米国のIRAと類似した制度で、中国への依存度が過度に高い電池のサプライチェーンを再編する狙いがあるとされる。欧州連合(EU)は今年9月、中国から輸入するEVについて、中国政府が支給した補助金に違法性がないかどうか調査に着手した。調査結果に基づき、高い関税を課すことを検討している。ブラジルも関税カードを切る。現在EVの輸入関税を免除しているが、今後3年間で税率を最高35%まで引き上げる方針だ」

     

    日本も電池の国内生産には、税額控除を認める方向だ。EUは、EVダンピング調査に乗りだしている。来年には結論を出して中国EVの締めだしを始める。かつて、EUは太陽光発電で苦杯をなめさせられた。EUに育った太陽光発電が、中国の補助金つき太陽光発電に一掃されたからだ。この思いもあって、「太陽光発電の二の舞はご免」という強い態度をみせている。

     

    (5)「自動車生産インフラはないが、EVの重要部品である電池に使用される鉱物を産出する国では、EV産業に便乗した「資源民族主義」が強まっている。リチウム埋蔵量世界10位のメキシコは9月末、中国企業に与えた採掘権を回収した。メキシコは昨年、リチウムの採掘や商業化を政府が独占できるようにする法律も制定した。リチウム埋蔵量世界1位のチリも4月にリチウム産業の国有化を発表。インドネシアは2019年からニッケルの輸出を全面中断している。マレーシアも9月、首相がレアアースの原料輸出を制限する政策を導入すると発表した」

     

    メキシコは昨年、リチウムの採掘や商業化を政府が独占できるようにする法律も制定した。中国資本の締め出しである。欧米の鉱山会社は、中国抜きでEV用電池のサプライチェーン(供給網)を構築しなければならないプレッシャーに直面している。そのため、長い間避けてきたアフリカでの金属加工を模索している。中国から権益を守る動きである。

     

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    欧州の極右勢力が、ロシアへ親近感を持っている裏には「反米・反EU」という強い感情的な反発がある。中国は、こういう極右勢力を利用すべく資金をばらまいているとの指摘が出てきた。中国は、EUが米国と一体化して中ロへ対抗することを極度に恐れている。それだけに、ドイツの極右勢力へ接近して反米勢力をつくろうという動きを強めているというのだ。

     

    『ニューズウイーク 日本語版』(10月19日付)は、「ドイツ極右に『中国との癒着』が発覚、中国の『脅しと賄賂』に、欧州の政党が屈してしまう理由」と題する記事を掲載した。筆者は、『フォーリン・ポリシー』副編集長のジェームズ・パーマー氏である。

     

    ドイツで急伸する極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に醜聞である。今月、独メディア「ティー・オンライン」はAfD所属の欧州議会議員マクシミリアン・クラーと中国当局との癒着を報じた。

     

    (1)「EU懐疑主義、反移民を掲げる同党は来年の欧州議会選で親中派として知られるクラーを筆頭候補に据えている。報道によると、クラーに「非常に近しい人々」が、中国から資金提供を受けていた。また、彼の側近はドイツ国内の中国反体制派グループと中国当局の双方とつながりがあり、前者の動きを後者に注進している疑いがあるという。クラーはこの報道を「事実無根だ」と否定しており、この一件が彼の強固な支持基盤に影響を与えることはなさそうだ」

     

    ドイツでは、AfDが支持を集めている。地方選挙では、与党を上回る力をみせている。それだけに、中国から資金提供を受けていたとなれば、ゆゆしきことだ。


    (2)「ただ、中国とつながるAfDの指導層はクラーだけではない。過去1年の間に、同党の政治家が数人、当局の招待で中国を訪れたことが分かっている。同党は中国・新疆ウイグル自治区での国家主導の残虐行為や、ウクライナ戦争での中国のロシア支援を受けて中国と距離を取るドイツ政府の姿勢に反対の立場だ。専制国家への接近は、AfDだけでなくドイツの極左運動にも共通して見られる。しかし同党の親中化はそれよりも、中欧・東欧の極右全体に見られる明確なパターンをなぞっている」

     

     

    AfDは、親ロ・親中の路線を明らかにしている。専制国家への接近は、AfDだけでなくドイツの極左運動に共通して見られることだ。ヒトラーを生んだドイツは、それなりの反省をしていると思いきや、底辺ではこういう動きがあるのだ。日本の政治情勢の方が、はるかに健全である。

     

    (3)「このパターンは欧州の各勢力に「ばらまき」をいとわない中国の姿勢と、中国の事実上の同盟国であるロシアと極右勢力が概して友好的であることの両方の帰結だ。アメリカやEUが中国と対決姿勢を強めているため、欧州諸国の反米・反EUの右派が中国に傾いていることも背景にある。例えばハンガリーのオルバン首相や、セルビアのブチッチ大統領は親中傾向を隠さない。チェコではゼマン大統領(当時)が2015年、中国の政商、葉簡明(イエ・チエンミン)を経済顧問に任命したほどだった」

     

    EUは、決して一枚板ではない。政治的な思惑が渦巻いている。極右が、移民反対論を唱えて支持を集めているのだ。発展途上国の政情安定化が、移民問題を沈静化させる要因であるから、EUにとって途上国支援は不可欠になっている。


    (4)「対照的に、西ヨーロッパの極右政党は中国に対して複雑な態度を取っている。フランスでは国民連合のマリーヌ・ルペン党首がインド太平洋における対中戦略を訴える。イタリアではメローニ首相が中国の「一帯一路」構想から離脱する方針を決めた。極右化が進むイギリスの保守党にも強力な反中派閥がある。中国側からすると、中欧・東欧の極右勢力との協力はイデオロギーの親和性ではなく、便宜上の理由に基づいている。味方になりそうな各国の周縁的な勢力を見つけてはせっせと資金を注ぐことを繰り返しているだけだ」

     

    西ヨーロッパの極右政党は、中国へ警戒姿勢をとっている。東ヨーロッパの極右とは、違った行動パターンである。

     

    (5)「とはいえ、ブレア元英首相からシュレーダー元独首相に至るまで、主流派政治家に対してさえも中国が「求愛」するのは以前から見られる光景ではあった。大筋では、中国は他の大国との間で影響力拡大のゲームを競っているにすぎない。脅しや賄賂が中国の常套手段であることは確かだが、その他の手管はアメリカなどと同じ──政治家の自尊心をくすぐり、外国との取引の機会や、時には資金を提供する──だ。その違いは手段ではなく、中国の人権侵害に対する批判を封じるという目標にこそある。AfDの台頭は、ハンガリーやセルビアのような小国よりもドイツを重視する中国にとって、大きなチャンスではあるだろう。ただ本当に危険なのは、欧州のこうした周縁的な親中勢力ではなく、中道政党が権力を得るためそうした勢力と手を結ぶ意欲を強めていることかもしれない

     

    中国は、極右だけでなく主流派政治家へも手を伸している。中国の人権侵害批判を封じる目的である。中国のEUへの触手は、十分に警戒すべきであろう。

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    中国とEU(欧州連合)の両外相は9月16日、マルタで会談した。その席で王氏は、双方は「開かれた態度」を維持し、自由貿易を断固として支持し保護主義を拒否し、中EU協力のプラス効果を達成すべきだと述べた。EU委員会が13日、EV(電気自動車)の対中輸入に関して補助金調査を行うと発表したことを受けての発言で、EUを牽制していることは明らかだ。 

    EUは、リチウムイオン電池や燃料電池でも2030年までに中国に依存する恐れがある。このため、強力な対応が必要と認識していることがわかった。ロイターが入手したEU首脳向けの文書で明らかになったものだ。 

    『ロイター』(9月18日付)は、「EU、電池で中国依存の恐れ『ロシア頼み並みに深刻』と警告」と題する記事を掲載した。 

    EU首脳向けの文書は、10月5日にスペインのグラナダで開かれるEU首脳会議で欧州の経済安全保障に関する議論のたたき台となる。会議では、中国の世界的な存在感の高まりと経済的な影響力を懸念し、欧州が中国に過度に依存するリスクを減らし、アフリカや中南米に調達先を多様化する必要性について議論する。

     

    (1)「文書は、太陽光や風力などの再生可能エネルギー源は供給が時々止まるという性質があるため、欧州が50年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロとする目標を達成するためには、エネルギーを貯蔵する手段(注:大型蓄電池)が求められると指摘した。その上で、「これによりリチウムイオン電池や燃料電池、電気分解装置の需要が急増し、今後数年間で10~30倍になることが見込まれる」との見通しを示した」 

    自然エネルギー依存によるリスクは、原発と違って安定的な供給ができないことだ。気象条件によって変化するので、大型蓄電池を備えてバッファーにしなければならない。 

    (2)「さらに、「強力な対策を講じない限り、欧州のエネルギーエコシステムは30年までに、ウクライナ侵攻前のロシアとは異なる形で、深刻な中国依存に陥る可能性がある」と警告した。EUは電気分解装置の中間・組み立て段階で、世界シェアの50%超を握っているが、電気自動車(EV)に不可欠な燃料電池やリチウムイオン電池は中国に大きく依存している。文書はまた、EUの脆弱性は電池分野に限らないとした上で「同様のシナリオがデジタル技術分野でも起こる可能性がある」と警鐘を鳴らした」 

    EUは、すでに中国EV(電気自動車)の輸入シェアが高まっていることから、ダンピング調査へ着手する。同様に、リチウム電池などの対中依存度が高まる危険性は、ロシアのウクライナ侵攻で明らかになったので引下る必要性に迫られている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月22日付)は、「中国抜きEV供給網の構築 目指すはアフリカ」と題する記事を掲載した。 

    欧米の鉱山会社は、中国抜きで電気自動車(EV)用電池のサプライチェーン(供給網)を構築しなければならないというプレッシャーに直面している。そのため、長い間避けてきたアフリカでの金属加工を余儀なくされている。 

    (3)「中国は、エネルギーシフトの鍵となるコバルトやリチウムといった重要鉱物の生産と加工の両方を支配している。そのため、米国など西側諸国の間では、中国に依存することへの懸念が高まっている。一部の欧米企業や投資家は現在、アフリカ大陸で採掘した原料を現地で精製し、欧州と米国に直接輸出できるよう、アフリカに加工施設を建設し始めている。このような投資は、欧米の経営者がアフリカの多くの国々に伴うリスクをいかに受け入れるようになったかを示している。インフラが脆弱(ぜいじゃく)であったり、熟練労働者が限られていたり、中には政府の汚職で悪評が立つ国もある。また、アフリカで加工施設を建設すれば、自国の土壌から採掘した金属や鉱物の現地加工を増やすことを長年求めてきたアフリカ各国政府の要求に応えることにもなる」 

    欧米が、コバルトやリチウム精錬から手を引いていたのは環境破壊という「汚れ仕事」であったことだ。中国は、それをうまく利用してきた。欧米企業も、アフリカで精錬事業を始めざるを得なくなっている。

     

    (4)「英豪系鉱業大手BHPグループは、米国を拠点とするライフゾーン・メタルズとともに、タンザニアのニッケル鉱山に2022年から1億ドル(約145億円)を投資し、現地で精製工場を建設する計画だ。BHPによれば、この種の施設はアフリカで初めて。26年には米国と世界市場に向けて電池グレードのニッケルを供給する見通しだという。「われわれにとって絶好のタイミングだ」とライフゾーンのクリス・ショウォルター最高経営責任者(CEO)は言う。「相当な需要があるだろう」と指摘する」 

    BHPは、アフリカでの精錬によって26年からニッケル供給を始める。トヨタの全固体電池は26年から本格化する。これに合わせるような形だ。 

    (5)「電池用金属の需要急増が予想されることや、中国が現在この業界を支配していることから、アフリカの加工施設への投資は今後増加する可能性が高い。オックスフォード・エコノミクス・アフリカのアフリカ・マクロ経済担当責任者、ジャック・ネル氏はそう指摘する。こうした動きは、トレンドの始まりのようだと述べている」 

    中国は、リチウム鉱石を輸入して国内で精錬している。BHPは、鉱石を生産するアフリカで精錬するので、中国よりもコストが安くなるはずだ。

     

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