世界2位のドイツVW(フォルクスワーゲン)は、中国の南京工場閉鎖を検討している。23年の販売台数はピーク時の6割まで低下している。中国は、EV(電気自動車)が主流であり、ガソリン車はすでに傍流へ転落した。VWにとっては、EVが不振であるだけに、南京工場が閉鎖になれば中国での足場の一つを失う。
『東洋経済オンライン』(10月11日付)は、「中国市場で苦戦の独VW、『南京工場』の閉鎖を検討」と題する記事を掲載した。この記事は、中国『財新』記事を転載したものである。
ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)と中国の国有自動車大手、上海汽車集団(上汽集団)の合弁会社である上汽VWが、江蘇省南京市の工場の閉鎖を検討していることがわかった。上汽VWは、財新記者の取材に対してその事実を認めた。
(1)「南京工場は、VWブランドの上級セダン「パサート」の主力生産拠点だ。上汽VWはニューモデル「パサート・プロ」を9月10日に発売したばかりで、現時点の南京工場はフル操業に近い。その一方、上汽VWの工場は建設から年数を経たものが多く、クルマの電動化やスマート化に対応するために生産体制の見直しを迫られている」
中国は、EVが主流になってきたので、ここから外れる車種は生産の見直しにはいる。
(2)「17年前の2007年末、上汽集団は国有自動車メーカーの南京汽車集団を吸収合併するとともに、現在の南京工場の運営を引き継いだ。上汽VWの説明によれば、南京工場は建設時期が古く、都市開発による南京市の市街地拡大とともに、自動車工場の立地としては最適でなくなりつつあった。また、同社は江蘇省儀征市にも工場を持ち、南京工場とは約80キロメートルしか離れていない。そのため経済合理性の観点から、江蘇省内の製造拠点の再配置を検討しているという。南京工場の閉鎖はまだ確定しておらず、(地元政府や取引先などの)関係者とのさらなる調整が必要だ。仮に閉鎖が決まった場合、上汽VWはパサートの生産を別の工場に移管しなければならない」
南京工場は建設時期が古く、都市開発による南京市の市街地拡大とともに、自動車工場の立地としては最適でなくなりつつあるという。生産再編の一環という意味もある。
(3)「上汽VWは、江蘇省の2工場のほか、上海市に3つ、浙江省寧波市、湖南省長沙市、新疆ウイグル自治区ウルムチ市にそれぞれ1つの合計8工場を運営している。このうち上海市の工場では、EVやPHV(プラグインハイブリッド車)の生産に対応した建て替えや設備改修を進めている」
上汽VWは、中国に8工場を運営している。南京工場が閉鎖になっても生産体制に響くことはない。ただ、イメージダウンは避けられない。
(4)「中国市場における乗用車のメーカー別の販売台数ランキングで、上汽VWは長年にわたってトップスリーの一角に君臨。2016年から2019年にかけての全盛期には、年間販売台数が4年連続で200万台を超えていた。ところが、2020年代に入って中国市場のEVシフトが本格化すると、上汽VWの販売は苦戦を強いられるようになった。2023年の販売台数は121万5000台とピークの約6割にとどまり、2024年に入ってからも販売減少に歯止めがかかっていない。さらに電動化とスマート化への対応も急がれる中、業界関係者の間では上汽VWが(エンジン車の工場閉鎖による)生産能力削減に踏み切るのは時間の問題と見られていた」
上汽VWの販売は、すでにピークを過ぎている。エンジン車の工場閉鎖によって生産能力削減に好都合という面もありそうだ。
世界最大級の自動車市場である中国で、VWが過剰生産能力の制御に苦戦している状況がうかがえる。
VWは、上海汽車集団(SAIC)とともに南京工場での「パサット」の生産を江蘇省内の別の工場に徐々に移行する方針とされる。生産を移行する具体的な時期は決まっておらず、工場を完全に閉鎖するのか、それとも売却するのかといったことも未定だと付け加えた。南京工場の一部労働者は、VWとSAICの儀徴市の工場への異動を提示された。同工場では現在、セダン「ラヴィダ」が生産されている。VWとSAICはまた、「シュコダ」の販売を再開する計画も検討している。シュコダは2018年には合弁事業全体の販売で17%を占めていたが、現在のシェアは1%にとどまっている。『ロイター』(9月19日付)が報じた。