勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ドイツ経済ニュース時評

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    ドイツ・ハイテク企業は、これまで中国企業と相互補完関係にあったが、最近は厳しい競争関係に立たされている。ドイツ企業は、中国へ進出する際に現地生産化を迫られてきたことが、技術漏洩をもたらし独中企業の格差を縮める結果になった。中国の戦略に引っかけられた感じだ。

     

    『レコードチャイナ』(2月23日付)は、「『中国ショック』が到来、ドイツはどうすべきか?―独メディア」と題する記事を掲載した。

     

    独国際放送局ド『イチェ・ヴェレ』(2月15日付)の中国語版サイトは、ドイツ経済が中国との激しい産業競争期に突入し、かつての補完関係が崩壊して構造的な課題に直面していることを報じた。

     

    (1)「記事は、米シンクタンクのロディウム・グループが発表した最新の調査報告を引用し、独中経済の現状を分析。今世紀初頭から約20年間続いた両国間の高い相互補完関係は既に終わりを迎え、現在は世界市場を舞台にした激しい産業競争の時代へ移行したとの見解を伝えた。また、25年のドイツの対中輸出が前年比93%減少する一方、対中貿易赤字が過去最高の約890億ユーロ(約16兆円)に達した事実を提示。ドイツ経済研究所(IW)の分析によると、対中輸出に依存するドイツ国内の雇用も21年比で約40%急減しており、わずか数年で40万人以上の職が失われたと報じている」

     

    ドイツ企業は、中国企業の本質を見誤った。技術の公開を迫る手口に乗せられる、技術漏洩が起こっているのだ。その点、日本企業は早い段階からこの技術伝授に警戒感を示してきた。

     

    (2)「その上で、ドイツ機械工業連盟(VDMA)の専門家が、長年懸念されていた「中国ショック」が本格的に到来したと明言したことに触れ、レーザー加工大手の4JET社など、これまで中国市場で高いシェアを誇っていたドイツ企業が、ハイテク分野で台頭する中国勢の猛烈な追い上げによって苦境に立たされている実態を詳しく伝えた。記事は、中国政府による巨額の国家補助金や人民元安の誘導、不透明な貿易障壁といった不公平な手段が、市場の競争環境を著しく歪めていると指摘。さらに、中国側がドイツ企業に対して輸出ではなく現地生産や現地調達を強く迫っていることが、結果として「メイド・イン・ジャーマニー」の国際的な優位性を削ぐ要因になっていると分析した」

     

    中国政府が、巨額の国家補助金を支給するほか、人民元安の誘導、不透明な貿易障壁といった不公平な手段が、中国での市場競争環境を著しく歪めている。だが、ドイツ企業自身も、この補助金欲しさに中国へ進出した例も多い。自業自得の面も強い。

     

    (3)「このほか、中国によるレアアースの輸出制限や半導体供給の不透明化を受け、ドイツ産業界ではサプライチェーンの脆弱性に対する危機感が一段と増大していると紹介。経済的な「脱リスク」を求める声が官民双方で高まっており、特定の供給網への過度な依存から脱却するための抜本的な見直しが急務であると論じた」

     

    ドイツは、ロシアのウクライナ侵攻前はロシアのエネルギーへ大きく依存していた。工業では、中国市場への依存度が高いなど、特定国依存でアンバランスな面が多い。

     

    (4)「最後に、ドイツ政府が従来の「秩序自由主義」に基づく自由放任的なアプローチを改め、政府主導で強力な産業・技術政策を策定すべきであると提言。メルツ首相が中国の過剰生産リスクを認識し、貿易障壁やサイバーセキュリティ強化の必要性に言及したことに触れつつ、より不安定な時代において産業界と協調した長期的な戦略が不可欠だと論じた」

     

    ドイツ経済は、財政の超健全化と自由放任的な側面が強い。保守的な経済運営である。これが、中国企業にうまく理由された面は否定できない。要するに、「お人好し」な面が多々あるのだ。

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    ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、2月24日から27日まで中国を訪問する。この訪中には、ドイツ首相としてはメルケル元首相(在任:2005-21年)以来の最大規模の財界代表団が同行する。ビジネスチャンスの拡大を目指す。

     

    『レコードチャイナ』(2月16日付)は、「メルツ首相の訪中、メルケル元首相以来の大規模の経済代表団が同行―仏メディア」と題する記事を掲載した。

     

    フランスメディア『RFI』がドイツでの報道を引用するなどで伝えた。メルツ首相の訪中に同行する財界代表団には、ドイツの主要企業とされるDAX企業(DAX指数採用銘柄の企業)の最高経営責任者(CEO)が多く含まれる。また、同行を希望する財界人が提供される人数枠を上回ってしまったほどという。

     

    (1)「ドイツ企業は、中国の競合相手からの日増しに高まる圧力に直面している。中国企業は革新性を備えた新製品を次々に登場させ、かつ価格競争力も極めて強い場合が多い。そして中国企業は自国市場でドイツ企業に挑戦を突きつけるだけでなく、第三国市場においても直接の競争に及んでいる。一方で、政治と企業の対中問題における利益が完全には一致していないことがますます明らかになってきた。欧州各国の政府首脳は、いかにして欧州連合(EU)の工業と雇用を最適化するかを議論しているが、企業にとっては事業の運営場所や市場が本国であれ中国であれ、利益を最大化することが関心事だ」

     

    ドイツ企業は、中国のダンピング輸出に音を上げている。今回の訪中で、なんとか沈静化させたいのであろう。

     

    (2)「ドイツで運営される政府や経済界の動きを最も詳しく伝えるメディア『テーブル・ブリーフィング』によると、メルツ首相に同行する経済代表団は、中国側による輸出規制や人民元レートがもたらす競争のゆがみ、中国での市場参入、公平な競争環境などについて、中国側と議論する考えだ。数字を見れば、ドイツの中国に対する経済依存度は最近になり明確に低下している」

     

    ドイツ企業は、中国に対して「秩序ある輸出」を要望するのであろう。だが、足下に火がついた格好の中国企業がすんなりと受入れるとは思えない。輸出が、生命線であるからだ。

     

    (3)「ドイツ経済研究所によると、ドイツでは21年、約110万人分の雇用が直接または間接に中国関連業務で創出されていたが、この数字は現在までに40万人分にまで減少した。またドイツの輸出全体に占める対中輸出は21年8.5%から5.5%にまで減った。ただし、この変化はある程度まで、ドイツその他の欧州企業が中国本土で中国市場を相手にビジネスを進めることに適応して、中国に進出したことによるものだ」

     

    ドイツでは21年、対中輸出で約110万人分の雇用が直接または間接に創出された。現在は、40万人分にまで減っている。この問題を直接、中国へ提起するのであろうが、馬耳東風であろう。聞く耳をもたいないのだ。

     

    (4)「さらには、中国を拠点に世界に向けてのビジネスを展開する動きも進んでいる。フォルクスワーゲンのオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)は取材に対して、「中国で開発された技術と製品はわれわれに新たな輸出の機会をもたらした。特に、これまで欧州から狙って売り込もうとしても困難だった地域においてだ」と説明した」

     

    VWは、中国部品で製造した「低コスト自動車」の輸出を目指している。中国輸出にあやかろうという戦術である。

     

    (5)「現在ではEU全体として、中国による圧力をますます強く感じる状況だ。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、中国における補助金問題や過剰な製造能力の問題が大きくなっており、欧州では脱工業化のリスクが高まっていると警告した。すなわち、中国では補助金などの関係もあり、企業が過剰な製造能力を持つに至った。そのため、EU域内の工業企業は中国企業に対抗できなくなり、工業全体が衰えかねないとの主張だ。いったん工業の基盤が崩壊すれば、工業製品を中国からの輸入に頼らざるをえなくなり、そのことは安全保障上のリスクにも直結する」

     

    EUは、中国製造業が補助金で支援されていることを問題にしている。こういう手厚い補助を受けた中国企業製品がEU全体を支配すれば、EU製造が重大な影響を受けると警告している。ルールの異なる中国と試合(貿易)することが、いかに難しいかを物語っている。

     

     

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    中国は、レアアースなどの重要資源を「戦略物資」として管理している。中国は世界最大のレアアース生産国だ。輸出規制や価格統制を通じて、他国の産業構造に影響を与える力を外交・経済の交渉カードとして活用している。ドイツは、これまで中国との経済関係を強めることで大きな利益を得てきたが、今やこの危険性に目覚めたようだ。

     

    『レコードチャイナ』(10月25日付)は、「対中依存がわれわれの繁栄をむしばんでいる―独メディア」と題する記事を掲載した。

     

    独国際放送局『ドイチェ・ヴェレ中国語版サイト』(10月23日付け)は、中国への依存が自国の繁栄を脅かしているとするドイツメディアの評論を紹介した。

     

    (1)「記事は、『ディ・ヴェルト』と『ケルン・シュタットアンツァイガー』のドイツ紙2紙による、対中依存リスクに関する評論記事を紹介している。『ディ・ヴェルト』は、ドイツ経済が中国の原材料やサプライチェーンに高度に依存している状況を「極めて危険」と論じ、中国がこの依存関係を地政学的な圧力の武器として無遠慮に利用していると強く警告した」

     

    ドイツはメルケル首相時代の16年間、中国との関係をどっぷりと深めた。中国政府の補助金に釣られて、ドイツ企業は大挙して中国へ進出した。地政学的リスクは、全く考慮していなかった。この関係は、ロシア経済についても全く同様であった。

     

    (2)「中国が、医薬品や半導体レアアースといった多くの重要分野で独占的な地位を確立しており、いつでも「致命的な攻撃」を仕掛ける準備ができていると指摘。最近の例として、中国企業傘下でオランダに本社がある安世半導体(Nexperia)製の特種半導体チップについて、中国政府が輸出規制を発動したことで、フォルクスワーゲンが短時間労働の計画を立てるなどドイツの自動車生産ラインが生産停止の危機にある現状を挙げた。チップの生産はほぼオランダで行われているものの、最終工程のパッケージング(封止)を中国国内で行う必要があるため、中国政府の規制によって輸出が滞ってしまうのだという」

     

    Nexperia半導体は、自動車など特殊分野で使われている。日本でもトヨタ自動車が被害を受けている。

     

    (3)「『ディ・ヴェルト』はその上で、現在ドイツの自動車メーカーが直面する窮状について、長年にわたり対中依存の危険性に関する警告を無視し続けた企業幹部たちによる「自業自得」の結果であると厳しく批判。中国への一方的な依存を大幅に減らすことが喫緊の課題であり、重要製品の大規模な備蓄と、代替的な貿易関係の確立が急務だとし、そのためには困難があろうとも米国とのパートナーシップを継続することが不可欠な選択肢だと評している」

     

    ドイツは、嫌いな米国企業とのパートナーシップ強化を迫られている。西側諸国は、幅広い協調関係維持が求められている。

     

    (4)「『ケルン・シュタットアンツァイガー』は、Nexperia事件について「米中という二大経済圏のはざまで生き残りを図る欧州の困難な状況を露呈した」と指摘。依存関係の低減はリスク管理に役立つものの完全な依存脱却は不可能であること、中国が西側の技術に、西側が中国の原材料に依存するという相互依存関係自体が現在の国際政治の安定要因となっており、一方的に中国への依存から脱却すれば国際政治リスクが高まる恐れがあることから、対中依存脱却について過剰に反応すべきでなく、リスク管理としての低減にとどめるべきとの見解を示した」

     

    中国が西側の技術に、西側が中国の原材料に依存する、相互依存関係自体が現在の国際政治の安定要因となっていることは事実だ。だが、中国がこの相互依存関係を利用して、中国の権益拡大に利用している。おいおい、対中デカップリング(断絶)ケースが出てくるであろう。

     

    (5)「一方で、欧州は環境保護、人権、高い社会基準など、道徳的・倫理的に正しくても到底実現不可能である「崇高な目標」を追い求めるばかりで、経済的な競争力や技術革新を強化して国際的な影響力や発言力を得るための「切り札」の育成を怠ってきたとも指摘。この怠惰がたたり、現状で米中に頼らざるを得ない弱い立場に陥ったとして、欧州の政治姿勢を批判した」

     

    欧州は、「崇高な目標」を追い求め過ぎている。その点で、米国トランプ政権のやり方には大きな違和感があろう。だが、米国の行なっている対外政策のうち、欧州が参考になるケースもあろう。日本との協調が必要である。

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    欧州最大のドイツ経済が正念場を迎えている。政府によると2025年の実質成長率は0.2%にとどまり、3年連続で景気低迷を避けられない見通しだ。23〜24年のマイナス成長からは脱却するものの、26年に見込む1%台への急成長は再軍備を急ぐメルツ政権の財政頼みが鮮明で、景気の実力が見えにくくなる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月12日付)は、「ドイツ経済、3年連続で低迷へ 財政頼み鮮明で強まる『戦時経済色』」と題する記事を掲載した。

     

    「ドイツ経済は19年以降、足踏み状態だ」「国民もうまくいっていないと気づいている」――。メルツ政権で経済製作のかじ取りを担うライヒェ経済相は8日、記者会見の冒頭から厳しい言葉で危機感を訴えた。ドイツ政府は秋の経済見通しで、25年の実質成長率を0.%とした。4月時点のゼロ%から小幅に上方修正したものの24年まで2年連続でマイナス成長に転落しており、景気浮揚は25年も不発に終わりそうだ。「2年連続」は東西統一後で0203年の1度しかなかった。

     

    1)「自動車や化学が屋台骨のドイツ経済は欧州で最も大きく、ユーロ圏の域内総生産(GDP)の3割を占める。ロシアからの安価なガス調達が止まった上、貿易相手国である中国の景気減速で構造不況に直面した。足元はトランプ米政権の高関税も逆風だ。最大の焦点は26年にどこまで景気が持ち直すかだ。政府見通しでは26年に1.%、27年に1.%と一転して急成長に向かうシナリオを描いた。GDPの水準としては、高インフレを招いたウクライナ危機後の景気の落ち込みをようやく取り返す」

     

    ドイツ経済不振の理由はいくつかある。なかでも、主力産業の自動車がEV(電気自動車)の「一本足打法」で躓いた影響は大きい。完全な戦略ミスである。2025年8月の鉱工業生産は前月比で4.3%も低下し、特に自動車生産は18.5%もの落ち込みだ。BMWは業績見通しを下方修正し、ボッシュは1万3000人の追加削減を発表した。2030年までに自動車関連で約10万人の雇用が失われる可能性があるとの分析もある。これは、部品サプライヤーまで含めた広範な雇用減となる。

     

    (2)「メルツ首相は政権発足前に先手を打ち、基本法(憲法)改正で厳格な債務抑制策を緩めた。ロシアの脅威を念頭に国防費の増額に道を開き、インフラ投資とあわせた追加の財政支出は今後10年あまりで1兆ユーロ(約175兆円)規模に達する見通しだ。金融市場では楽観論が先行する。米ゴールドマン・サックスはドイツ政府より強気で、27年の実質成長率が2%近くまで高まるとの予測だ。9月に25年度予算やインフラ投資の基金が成立したことで「財政拡張策が迅速に実行されると期待する」(ニクラス・ガルナート氏)」

     

    ドイツ産業界は塗炭の苦しみにあえぐが、金融市場は楽観論に立っている。インフラ投資とあわせた追加の財政支出は、今後10年あまりで1兆ユーロ(約175兆円)規模に達する見通しであることが材料になっている。

     

    (3)「数字上の景気浮揚とは裏腹に、不安は残したままだ。1%台への急成長は個人消費など需要の持ち直しを前提とするものの、足元では電気自動車(EV)移行に苦しむ自動車大手や部品会社による大規模なリストラが相次いでいる。「(成長の)大部分は防衛投資といった巨額の政府支出がもたらす」(ライヒェ氏)ことで、景気の実力が見えにくくなる危うさがある。独有力シンクタンクのIfO経済研究所なども共同声明で「拡張的な財政政策が成長の弱さを覆い隠す」と指摘する。「景気の底を打ったように見えても、根本的な経済構造の弱さが残るため幅広い回復は期待できない」とクギを刺す」

     

    財政支出の拡大が、ドイツ産業の抱える弱点をカバーするようにみえるが、本質部分は変っていない。自動車関連で約10万人の雇用が、2030年までに失われる可能性があるとの指摘は、ドイツ経済へ重くのしかかっている。

     

    (4)「実際、ドイツ経済は低成長社会に移行している。「景気の巡航速度」を映す潜在成長率は30年まで0.%程度にとどまる見通しだ。メルケル政権の15年には1.%程度あったのが一転、日本と肩を並べるゼロ%台半ばで推移する。成長力を押し下げる一因は労働量の不足だ。移民流入が続いても日本と同様に少子高齢化が進む。高止まりするエネルギー価格の抑制や設備投資の後押し、スタートアップ企業の育成といった成長戦略が求められている」

     

    ドイツ経済も、これから本格的な労働力不足に直面する。潜在成長率は、日本並みの0.5%程度へ低下するとみられる。

     

    (5)「巨額の財政出動を起爆剤にした経済再生は、ドイツにとって大きな賭けだ。独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の持ち株会社ポルシェSEが防衛産業への参入検討を明らかにするなど、マネーの転換を期待した動きも増えてきている。地方政府からはインフラ投資を期待する声も上がる。東部ザクセン・アンハルト州で経済担当のシュテファニー・ペッチュ次官は日本経済新聞の取材に「ビジネス拠点への投資がまさに必要で、道路や橋への資金も重要だ」とインフラ需要を話す」

     

    ドイツは、健全財政に固執した余りにインフラ投資も不足する事態を招いた。こういう弱点はこれから修正されるが、「財政堅実ドイツ」という看板は簡単に下ろせないであろう。

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    ドイツ連邦議会(下院)は18日、防衛およびインフラ支出に向け何千億ユーロもの借り入れを可能にする法案を採決した。これにより、財政拡大政策への大転換が始まる。ドイツが欧州防衛の要になることを確実にするともに、インフラ投資によって国内経済立直しへ向けてテコ入れする。

    ドイツは、過剰貯蓄国であるにもかかわらず、憲法で財政赤字比率をGDPの0.35%に規制してきた。これが、ドイツ経済の活力を奪うという矛盾に陥っていた。それが、ようやく改善されることになった。ドイツが、その国力に応じた経済運営と欧州防衛の核として立ち上がることは、ロシアへの牽制として重要な一歩になる。もはや、欧州は眠れる集団でなくなる。


    『ブルームバーグ』(3月18日付)は、「ドイツは欧州防衛強化の基盤築いているー次期首相有力のメルツ氏演説」と題する記事を掲載した。

    ドイツの次期首相就任が確実視されるメルツ氏は18日、ドイツが軍事支出を増やすために借り入れ制限を解除する動きは、英国やノルウェーなどの欧州連合(EU)非加盟国を含む広範な欧州防衛共同体創設に向けた「第一歩」と捉えるべきだと述べた。

    (1)「中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)陣営を率いるメルツ氏は、18日に予定されている採決を前に、拡張的な財政政策への転換を意味する画期的な法案を支持するよう議員らに訴えた。メルツ氏のCDU・CSU陣営と社会民主党(SPD)が提出し緑の党が支持するこの法案は、21日に連邦参議院(上院)で最終承認を得る前に、連邦議会(下院)の3分の2の賛成多数で可決される必要がある」

    次期首相が有力視されるメルツ氏が率いる保守系会派(CDU)と社会民主党(SPD)は先週、緑の党との間で合意。財政拡大法案を連邦議会で可決させるのに必要な3分の2の賛成票確保のめどが立った。ドイツの16の州が代表を出す連邦参議院(上院)が、21日採決し承認すれば、シュタインマイヤー大統領が署名して法律が成立する。


    メルツ氏が、率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)陣営と、SPDは次期政権樹立に向けた協議を行っている。それに先立ち、大幅な歳出拡大を可能にしようと取り組んできた。国防費の増大によってよって、トランプ氏の米大統領復帰に端を発する地政学的な激変への対応を急ぐ。

    防衛および安全保障関連の支出として、GDPの1%、つまり約450億ユーロ(約7兆4000億円)を超える額が、ドイツ憲法に盛り込まれた借り入れ制限、いわゆる「債務ブレーキ」から除外される。実質的に、GDPの1%を超える支出に上限がなくなることを意味する。同時に、予算外の特別なインフラ基金が憲法に組み込まれ、今後12年間に5000億ユーロを上限として借り入れを行うことが可能になる。さらに、16の州にはGDPの0.35%、160億ユーロ相当までの借り入れの余地が与えられる。これで、地方はインフラ投資が可能になる。

    超右翼政党出現の裏には、厳しい財政規律で地方行政に足かせがはめられたことも一因である。これが、財政的に緩和されればドイツの「右翼化」は是正されるであろう。


    (2)「メルツ氏は、ドイツに自由、平和、繁栄をもたらした政治体制が脅威にさらされており、平和の配当は「とっくに底をついている」ため、抜本的な対策が緊急に必要だと論じた。「今日のわれわれの決定は、今後数年、数十年にわたるわれわれの防衛能力を決定する」と語った。CDU・CSU、SPD、緑の党の議員を合わせると520議席となり、3分の2の賛成に必要な489議席を31議席上回るため法案は可決される見込み。投票結果は現地時間午後3時頃には判明する見通し」

    CDU・CSU陣営とSPDは連立協議を急ピッチで進め、遅くとも復活祭(4月20日)までには合意に達する見通しがついた。CDU・CSUが2月の選挙で勝利して以来、暫定内閣として政権運営を行っているSPDのショルツ氏から、メルツ氏が首相の座を引き継ぐために、連邦議会の承認を確保する道筋が整う。ドイツは、新たな時代を迎える。




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