勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: ドイツ経済ニュース時評

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    VW(フォルクスワーゲン)は9月2日、ドイツでの工場閉鎖を検討していると公表した。乗用車のほか商用車、車部品など独国内の工場約10カ所を対象に、1カ所以上を閉鎖する可能性があるとしている。VWが本拠地で工場閉鎖に踏み切れば、1937年の同社設立以来で初めてとなる。

     

    自動車は、ドイツの基幹産業である。そのドイツ自動車業界を代表するVWが、複数の工場閉鎖を検討していると発表した。VWは、トヨタ自動車に次いで世界2位の座にあるが、EV(電気自動車)需要の見通しを誤り、先行投資負担が大きく工場閉鎖の危機に追込まれた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月20日付)は、「ドイツ工場閉鎖検討のVW、独経済相『支援考えている』」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツ国内工場の閉鎖を検討している自動車大手フォルクスワーゲン(VW)を巡り、ハベック独経済・気候相は19日、記者団に対して「連邦政府と州はどのようにしてVWを支援できるか考えている」と語った。

     

    (1)「独政府は2023年12月に電気自動車(EV)の購入補助金を打ち切り、販売不振に拍車をかけたとみられていた。ハベック氏は購入補助については明言を避けながらも「EVを強化するための手段が確かに政治的課題だ」と述べた。VWが検討している独国内工場の閉鎖については、「その会社とそこでの雇用がドイツにとって非常に重要だ」と強調した。需要の落ち込みを背景に同工場はすでに減産しており、夜勤の停止など従業員の労働時間を短縮している」

     

    ハベック独経済・気候相は、EV補助金打ち切りがVWの経営に打撃を与えたことから、EV補助金復活を示唆する発言を行った、

     

    (2)「独最大の産業別労働組合IGメタルは予定を1カ月前倒し、9月25日からVWとの労使交渉を始める。工場閉鎖と人員削減、従業員への補償などについて議論する予定だ。独経済紙マネジャーマガジンによると、VWは中期的に最大3万人を削減する可能性があるという。VWとIGメタルは否定している」

     

    IGメタルは、「経営陣は、従業員に対する責任を果たしていない」とし、労使交渉で工場閉鎖と人員削減について反対の立場をとる考えを改めて示した。リストラ計画の撤回に加え、7%の賃上げも要求すると強い姿勢をみせている。

     

    工場閉鎖には、2の壁が指摘されている。強力な労組のIGメタルの壁とドイツ政界の壁 とされている。2025年秋にドイツ連邦議会(下院)選挙が行われるのだ。その選挙直前に生産拠点の大幅削減と大量解雇ができるのかという問題である。与党・ドイツ社民党の支持基盤は、IGメタルを含む労組である。会社側の要求だけを貫くというのは難しいという理由の背景である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月11日付)は、「VW、最大労組との協約破棄 工場閉鎖・大量解雇に道筋」と題する記事を掲載した。

     

    独フォルクスワーゲン(VW)は9月10日、本国で検討する工場閉鎖に関し、雇用保障を含めた労働組合との労働協約を破棄すると明らかにした。同国最大の産業別労組IGメタルに通知した。工場閉鎖に伴う大規模な人員削減の現実味が増してきた。IGメタルや同社労組は解雇に伴う補償など条件闘争を本格化させる。

     

    (3)「VWは、2029年までの雇用保障を含めた複数の協約を労組と結んでいる。現行の協約を打ち切ることで、工場閉鎖時に人員削減が可能になる。会社側は、数千人規模の削減を検討しているとされる。雇用保障の協約は今年末まで有効で、期限を迎えると会社は2025年7月から強制的な人員削減が可能になる。労組側は、新たな協約締結に向けた交渉を9月中に始めることを求めている」

     

    VWは、すでに2029年までの労組と結んだ雇用保障を含めた複数の協約を破棄した。工場閉鎖に備えた準備である。会社側が、不退転の決意で臨んでいることわかる。

     

    (4)「ドイツでは、会社が決めた工場閉鎖方針に対し、閉鎖撤回を求めるストライキはできないが、閉鎖時の従業員への補償などに関するストは合法とされている。ストもちらつかせる労組陣営と、会社側の条件交渉は今後本格化する。すでに同労組は、VWの工場閉鎖の代替策として、週4日勤務の導入を要請することを示唆する。さらにVWでは従業員代表が監査役会に、メンバーとして参加するなど労組の経営への影響力が強い。交渉は一筋縄ではいかない見通しだ」

     

    労組は、工場閉鎖撤回求めるストはできないが、従業員補償を求めるストは合法化されている。労組は、解雇を巡る条件闘争が可能だ。労組は工場閉鎖の代替策として、週4日勤務の導入を要請することを示唆している。解雇者を出さない提案である。政府は、この提案を支援すべくEV補助金の復活をするのだろうか。ドイツにおける自動車産業は、基幹産業だけに、難しい対応が求められている。

     

    ドイツ自動車業界に比べれば、日本の自動車産業は微動だにしない堅塁を誇っている。業界の協調がうまく進んでいるからだ。日本の自動車7社は、EVを核にトヨタグループと日産・ホンダ・三菱自の2グループに分かれた感じだ。

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    ドイツのVW(フォルクスワーゲン)が、初めての人員整理を検討している。トヨタ自動車に次いで世界2位のVWが、苦境に立たされているのだ。中国での販売も低下しており内憂外患に直面している。トヨタは、EV(電気自動車)の先行投資負担がないほか、EV代替のHV(ハイブリッド車)の売行き好調である。トヨタとVWの差は、さらに広がる。 

    『フィナンシャルタイムズ』(9月3日付)は、「VW、ドイツでの工場閉鎖と人員削減を検討」と題する記事を掲載した。 

    ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、創業87年の歴史で初となるドイツでの工場閉鎖を検討している。オリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)は欧州の自動車産業は「非常に深刻な状況にある」と指摘した。同社は2023年にコスト削減に着手したが、これまでの削減額は数十億ユーロにとどまる。従業員を代表する労働評議会との合意により、従業員の早期退職や自主退職プログラムでしか人員を削減できないことが足かせとなっている。

     

    (1)「ブルーメ氏は、「経済環境はさらに厳しさを増しており、新たなライバルが欧州市場に参入している。こうした環境で、企業として断固とした行動をとらなくてはならない」と語った。同社は29年まではドイツで人員削減に踏み切らないとの約束を撤回する方針を示した。労働評議会から反発が出る可能性がある。欧州での電気自動車(EV)の需要が予想を下回り、VWなど欧州の自動車メーカーは打撃を受けている。VWはドル箱市場だった中国でのシェア低下にも苦しんでいる」 

    VWは、国内でのEV販売不振と中国市場不振が重なって苦境に立たされている。世界2位の誇りを捨てて、抜本的対策を打つほかなくなった。トヨタとは大きな違いである。 

    (2)「同社の主力ブランドであるVWは23年6月、26年までに100億ユーロ(約1兆6200億円)のコストを削減し、営業利益率6.%を達成する目標を打ち出した。24年6月末時点の営業利益率は2.%にとどまる。同社は2日、「(退職者を補充しないという)人口動態の変化だけに基づくリストラでは、短期的な競争力向上のために急務である構造調整を達成するには不十分だった」と語った」 

    24年6月末時点の営業利益率は2.%に落込んでいる。自動車メーカーのレッドラインは5%である。これを割込むと研究開発も滞る事態になる。トヨタは、7%台を維持している。

     

    (3)「同社のドイツ国内での雇用者数は約30万人と、世界全体の半数弱に上る。同社の株式20%を保有するニーダーザクセン州にとって雇用の維持は最優先事項であり、同州はVWの監査役会で半数の議席を持つ労働評議会の側につくことが多い。ニーダーザクセン州のシュテファン・バイル首相は2日、「VWが行動を起こす必要があるのは明らかだ」と述べた一方、工場閉鎖は選択肢の一つに過ぎないとも語った。同氏は「(工場閉鎖が)起こらないことを期待している」と強調し、同州は「この点に特に注目している」と述べた」 

    地元のニーダーザクセン州は、雇用確保から工場閉鎖が起こるか注目している。 

    (4)「VW労働評議会のダニエラ・カバロ議長は2日、従業員宛ての文書で、VWの主力ブランドは赤字に転落する恐れがあり、経営陣はドイツの工場閉鎖を検討していると注意を促した。ドイツの規定では、労働評議会は監査役会で労働者の利益を代表する。カバロ氏は「このため、経営陣はドイツの工場、社内の賃金協定、29年末までの雇用保障協定を問題視している」と述べた。カバロ氏はVWのヘルベルト・ディース前CEOと対立し、22年に同氏を退任に追い込んでいる。VWは「極めて緊迫した」財務状況により「自動車生産工場や部品工場の閉鎖ももはや排除できない」と認めた。従業員代表と交渉に入ることも明らかにした」 

    VWの主力ブランドが、赤字に転落する恐れが出てきた。これは、一大事である。財務状況が緊迫しているという。

     

    (5)カバロ氏は、経営陣の計画は激しい抵抗に遭うだろうと示唆した。「私がついている限り、VWの工場閉鎖はない」と従業員に断言した。欧州最大の自動車メーカーでリストラを巡って対立がくすぶっているのは、国内市場と中国の双方で需要低迷に直面し、新たなライバルが欧州市場に参入しているためだ。比亜迪(BYD)など中国のEVメーカーは欧州に参入する計画を相次いで打ち出しており、VWなどの既存ブランドは低価格EVの開発にしのぎを削っている」 

    中国のBYDが、欧州へ工場進出する。VWは、EVで全面対決の局面になる。これを迎え撃つためにも経営をスリムにするほかなくなった。 

    (6)「アナリストはかねてVWに対し、EVシフトに多額の投資が必要ななかでコスト削減を果たすために、人員削減に踏み切るよう求めてきた。独立系自動車アナリストのマティアス・シュミット氏は、「VWの文化に大きな変化が起きている」と指摘する。「労組は現実を突きつけられており、今回はリストラに協力的になるだろう」との見方を示した。カバロ氏は工場閉鎖に反対する姿勢をみせたが、米スタイフェル・ファイナンシャルの自動車アナリスト、ダニエル・シュワルツ氏はカバロ氏の語調の変化を指摘した。カバロ氏はVWブランドが直面している問題の大きさを認識しており、ブルーメ氏への直接の批判を避けたという。シュワルツ氏は「労組のこうした反応は非常に心強い」とも述べた」 

    労組は、事態の深刻さを理解している模様である。最終的には、工場閉鎖を受入れるのであろう。トヨタの世界独走態勢がさらに強化される。

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    中国鉄鋼業界は、不安定な時代に突入しつつある。危機に陥っている国内不動産業界からの需要は期待できず、建設に軸足を置いた政府主導の成長モデルも、財政的にますます維持できなくなっているからだ。河北敬業集団の創業者で会長の李赶坡氏は、6月の民間企業会合で、5年間にわたり続く低迷によって中国製鉄所の3分の1近くが破綻すると警告している。 

    中国鉄鋼業は、過剰在庫処分で海外市場へ殺到している。これによって各国の鉄鋼価格を押し下げ、製鉄所を廃業に追い込んでいる。失業者が増加しているのだ。中国に端を発する鉄鋼不況が、世界鉄鋼市場を破綻させる危険性を高めている。 

    『ブルームバーグ』(8月19日付)は、「中国の鉄鋼過剰、世界揺るがす 業界全体が窮地に陥る恐れ」と題する記事を掲載した。 

    中国は年10億トン余り、つまり、世界の生産量の半分以上を生産している。今、その中国が揺らいでいる。中国が鉄鋼のスーパーパワーになる過程で世界の鉄鋼業界に衝撃を与えたように、そのピークからの退潮もまた、それに劣らない激動を招く可能性を秘めている。中国国内の建設不況が意味しているのは、鉄鋼が多過ぎ、需要が少な過ぎるということだ。各国は中国で余った鉄鋼が自国市場に流れ込み、価格を押し下げ、製鉄所を廃業に追い込み、労働者を失業させるのではと懸念。そうなれば、世界が今直面している経済的課題が一段と悪化することになる。

     

    (1)「中国共産党の習近平総書記(国家主席)は、不動産頼みの経済成長から脱却しようとしているが、これは鉄鋼業界にとって重大な意味を持つ。習氏は今後数十年かけハイテク製造業とグリーンテクノロジーを中国経済の原動力にしたいと考えている。そうした中で、不動産危機によって、鉄鋼需要が急拡大していた長い時代は終わりを告げた。だが、経済と雇用を支えようとする習指導部が、需要縮小をどのように管理できるかを巡っては大きな疑問が残る。ユィ氏は「価格急落に伴い利益率も小さくなっている。中国の鉄鋼需要は先細り」と述べた」 

    習氏は「三種の神器」(EV・電池・ソーラーパネル)の輸出に力を入れているが、鉄鋼の過剰生産問題では、これまで手を打たずにきた。 

    (2)「中国宝武鋼鉄集団の胡望明会長は最近、この課題の深刻さを明確に示した。胡氏は毎年1億3000万トンの鉄鋼を生産する高炉帝国を統括している。この生産量は米国とドイツ、フランスを合わせても及ばない。警告を発したのは胡氏が初めてではないにせよ、中国の鉄鋼セクターが「厳しい冬」に直面していると述べた同氏の言葉には、中国国内だけでなく世界全体が重みを感じた。山西建邦集団も最近、危機感を強調。ソーシャルメディアの微信(ウィーチャット)への投稿によると、鉄鋼業界が現在の苦境から抜け出すためには企業の3割余りが淘汰(とうた)される必要があるとの見方を張鋭ゼネラルマネージャーが15日に示した」 

    中国鉄鋼業界の3割は、淘汰される運命になってきた。

     

    (3)「コンサルティング会社、上海スチールホームEコマースを創業し、業界に40年携わってきたウー・ウェンチャン氏は「中国の鉄鋼需要はすでに天井を打ち、次は着実に減少していくはずだ」と分析。「製鉄会社間の合併や再編を政府が強力に後押ししない限り、鉄鋼が今後2、3年でこのサイクルから抜け出すのは非常に難しいだろう」と予想した。不動産不況に加え、インフラ財政支出にも陰りが見え始め、製鉄所は右肩下がりの価格下落に苦しんでいる」 

    中国鉄鋼業界は、3年間で再編整理しなければ苦境脱出が困難になるとの見方が出ている。 

    (4)「チリ政府は今年、中国からの輸入品に科す新たな関税を急ぎ導入し、製鉄会社CAPの高炉閉鎖をいったんは阻止した。閉鎖の決定を撤回した同社だったが、さらに大きな四半期損失を出すと閉鎖計画を復活させた。その結果、労組リーダーの一人としてメディナ氏(72)は従業員2500人の退職金交渉に追われることになった。また、2万人以上が何らかの関連事業に依存している地元経済にとっても大きな打撃だ」 

    チリは、鉄鋼所閉鎖によって2500人が退職せざるを得なくなっている。中国の安値輸出の影響だ。

     

    (5)「鉄鋼需要がすでに低迷している欧州では、ドイツのザルツギッターが1-6月(上期)の赤字を報告した際、過剰生産能力と中国の輸出をその理由に挙げた。独経済省はブルームバーグに対し、状況を注視しているとし、「厳しい国際競争」に触れた。欧州トップの鉄鋼メーカー、アルセロール・ミタルも同じような批判を展開している。ドイツ鉄鋼協会のマネジングディレクター、マーティン・テューリンガー氏は、「われわれの懸念が現実になりつつあることを中国からの警告が示している。過剰生産能力は、この業界の収益性と持続可能性を危うくしている」と述べた」 

    ドイツ鉄鋼業へも波及している。独経済省や欧州トップの鉄鋼メーカー、アルセロール・ミタルは、中国批判に転じている。 

    (6)「欧米と中国の間にある現在の貿易摩擦の多くは、21世紀のテクノロジーに集中している。だが、特に米国のラストベルト(さびた工業地帯)や英国の北部イングランドなど歴史ある企業やその周辺に築かれた地域社会に関して言えば、鉄鋼は感情に訴える力を保持している。加えて、国防部門が鉄鋼を必要としていることを踏まえると、鉄鋼は国家安全保障上の問題でもある」 

    鉄鋼業は歴史的産業であり、国家安全保障上の要である。中国の安値輸出が、この「聖域」を冒せば反発を受けるのは当然である。

     

    テイカカズラ
       

    ロシアのウクライナ侵攻が契機となって、日独は中国の台湾侵攻阻止目的で協調態勢を組むことになった。ドイツはEUの中核国である。日本が、ドイツとの関係強化を進めるのは、インド太平洋の安全保障でNATO(北大西洋条約機構)との関係強化を進める上で重要なパートナーという認識に基づく。 

    岸田文雄首相は7月12日(日本時間13日未明)、ベルリンでドイツのショルツ首相と会談した。防衛分野でインド太平洋地域へのドイツの関与を強化すると確認した。共同訓練などを通じ部隊間の協力を深めていく。岸田首相は共同記者会見で「欧州大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分だ」と強調した。 

    『日本経済新聞 電子版』(7月13日付)は、「日本とドイツ、打算絡む中国リスク管理 防衛と経済安保」と題する記事を掲載した。 

    岸田文雄首相とドイツのショルツ首相は12日にベルリンで会談し、経済安全保障と防衛分野の協力を前面に押し出した。経済で温度差のある日独双方とも意識するのは中国の動きだ。軍事的な脅威に備えつつ、両国の打算が絡んで対中リスクの管理を優先する。

     

    (1)「ショルツ氏は、会談後の共同記者会見で「私たちはクリアなストラテジーを持っている。インド太平洋戦略だ」と強調した。岸田首相は「ドイツがインド太平洋地域への関与を強化している。中国の動きへの対応、経済安保で更なる連携を期待している」と語った。ドイツが2020年に策定したインド太平洋地域への認識を示した文書を念頭に置く。ショルツ政権は23年に対中国の外交戦略もまとめており「付き合い方を変える必要がある」と明記した」 

    戦前の「日独伊」三国同盟では、日本がドイツに引き込まれた形だ。現在の日独関係は、日本がドイツを引き込んでいる。ドイツが、日本の「誘い」に乗っているのは、メルケル時代が全くの無防備で中ロへ接近していた反動である。日本は、中国に関して歴史的にも十分な情報を持っている。それだけに、ドイツは日本へ接近することで「中国情報」を利用できるメリットがある。ドイツ企業は、政府の投資保険で中国へ進出している。それだけに、ドイツ政府のリスクが高くなっている。日本経由の「中国情報」は不可欠であるのだ。

     

    (2)「今回の首脳会談で設置を決めた日独の経済安保協議は、半導体や鉱物資源などのサプライチェーン(供給網)づくりを話す場となる。ショルツ氏が「我々は経済的構造が似ている」と指摘したように、日独は産業国として自由貿易を重視する共通項がある。日本はドイツの「中国傾斜」に頭を悩ませてきた。ドイツ経済研究所によると、ドイツから中国(香港を含む)への直接投資額は23年に119億ユーロ(約2兆円)と過去最高になった。メルケル政権の終焉(しゅうえん)やロシアによるウクライナ侵略を経てドイツでも中国脅威論への認識が進んでいる。それでも大企業を中心に独企業の対中投資への意欲は根強い。 

    ドイツ企業が、中国へ23年に約2兆円もの過去最高の投資を行った理由は、中国政府の補助金とドイツ政府の投資保険でカバー可能と見ている結果だ。日本から見れば、企業の「甘え」である。 

    (3)「欧州連合(EU)による中国製電気自動車(EV)への追加関税の採決を巡り、ドイツが棄権すると取り沙汰されている。ショルツ氏は共同記者会見で理由を問われ「(中国による過剰生産に)問題があるのは確かで国際的にフェアな形で競争力を持っていないといけない」と述べるにとどめた。ショルツ氏は21年12月の首相就任以降、日本を3度訪問する一方で中国を2度訪れた。主要7カ国(G7)メンバーの米国、英国、フランスが国政選挙で政治が不安定化する状況で、岸田首相はリスク管理の重要性を直接伝えるため初めてベルリンに赴いた」 

    ショルツ氏は、明らかに日本重視の姿勢をみせている。メルケル時代は,全くの逆で中国べったりであった。岸田首相の外交手腕は、もっと評価されるべきだろう。

     

    (4)「日本は、ドイツに中国への脅威意識を高めてもらうため、安全保障面の働きかけも進める。両首脳は今回の会談でドイツのインド太平洋地域への関与拡大を確認し、自衛隊とドイツ軍の防衛協力を強化していくと申し合わせた。首脳会談の当日に日独の部隊間で燃料などを融通し合う「物品役務相互提供協定(ACSA)」を発効させた。日本周辺での共同訓練を通じて協調していく姿勢を打ち出す狙いがある」 

    自衛隊は、ドイツ軍との間で「物品役務相互提供協定(ACSA)」を発効させた。ドイツは、日本がACSAを結ぶ7カ国目になる。米国、英国、フランス、カナダ、オーストラリア、インド、ドイツだ。これは事実上、「準同盟国」という位置づけになる。 

    (5)「欧州でも、中国による東・南シナ海での一方的な現状変更の取り組みはウクライナの状況も絡んでより脅威とみなされるようになった。中国がエネルギー調達や経済活動を通じて間接的にロシアを支えているとも問題視する。岸田首相はショルツ氏に繰り返し「欧州・大西洋とインド太平洋の安保は不可分だ」と訴えた。両首脳は23年に立ち上げた安保の協議を軸とする日独政府間協議を定例化し、25年にドイツで開催することも決定した」 

    岸田首相が、ドイツに対してインド太平洋の安保の必要性を説いている様子がわかる。日本の安全保障は、NATOとの連携が不可欠になっている。

    テイカカズラ
       

    トヨタ自動車に次いで世界2位のドイツVW(フォルクスワーゲン)が、EV(電気自車)不振で旗艦車種「ID.3」の生産計画を取り止める事態になった。ドイツは昨年12月、EV補助金が前面的に打ち切られており、EVの販売環境は悪化している。 

    『日本経済新聞』(3月14日付)は、「独VW、EV失速鮮明 価格競争・需要減で利益率低下 欧州はエンジン車回帰」と題する記事を掲載した。 

    自動車大手ドイツのフォルクスワーゲン(VW)が電気自動車(EV)失速のあおりを受けて採算が低下している。13日発表の2023年12月期通期決算は売上高が15%増だったが営業利益率は低下した。欧州ではEVの生産体制を縮小し、コスト削減を進める。一時的な「エンジン車回帰」が利益率改善に寄与する皮肉な状況にある。

    (1)「VWのオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)は「持続可能で前向きな発展のためにグループで準備を進めていく」と13日の決算記者会見でEVシフトの堅持を強調した。ただ足元では関連投資の先延ばしが目立つ。VWは今夏から独北部ウォルフスブルクにある本社工場で量産型EV「ID.3」の生産を始める計画を取り下げると決めた。元々は23年末から生産開始する予定だったが延期していた。ID.3は年14万台を販売するEVの旗艦モデルだ。同モデルを製造する独東部ツウィッカウの主力工場では昨秋から3交代勤務を見直し、生産ラインを削減した。東欧で検討していたEV用電池セル生産工場の投資決定延期も表明済みだ」 

    トヨタに比べて、VWはEVを巡ってドタバタ劇を繰り返している。EV需要の見通しを誤った結果だ。EVへ前のめりになってきたので、需要減による反動も大きくなっている。VWは、リチウムイオン電池の限界に気づかなかったことが致命傷になった。

     

    (2)「主因は、EV需要の失速にある。欧州最大市場のドイツでは23年9月にEV補助金の給付対象から企業が外れ、12月中旬には全面的に打ち切られた。独国際自動車製造協会によると、独国内のEV販売は24年2月、前年同月比15%減の2万7479台に落ち込んだ。フランスや英国など欧州全域でEV補助金の削減・停止の動きが広がる」 

    ドイツ政府は、財政難からEV補助金を打ち切っている。補助金なしに高額なEV販売は、不可能である。 

    (3)「23年12月期はサプライチェーン(供給網)の回復から新車全体の販売台数が伸び、売上高は15%増の3222億8400万ユーロ(約52兆円)だった。ただ製造コストの上昇やEVの値下げ競争の影響などから、営業利益は2%増の225億7600万ユーロ、営業利益率は8.%から7%に下がった。利益改善のため24年12月期に乗用車部門で数十億ユーロのコストを削減する。24年に販売を予定する新型EVは高級車が多く、手ごろな価格帯がない。EV生産体制の縮小に加え、新型量産車の少なさもコスト削減にプラスに働くとみる」 

    VWは、営業利益率が7%に下がった。5%を割ると開発費に差し支えると言われるので、EV転換はやむを得なかったのであろう。

     

    (4)「エンジン車は、モデルチェンジした人気車を24年に相次ぎ投入する。ウォルフスブルクの本社工場では、量産EV「ID.3」の生産を取りやめた代わりにエンジン車の生産ラインの増強も検討する。独メッツラー銀行のアレクサンダー・アデック氏は、EVより利益率が高いエンジン車の生産拡大で「EVの稼働率低下などの減益要因を埋める効果がある」と指摘する。VWも24年12月期の営業利益率は「7~7.%」と前期よりやや改善すると予測する」 

    エンジン車増産でカバーし、24年12月期営業利益率は7%台前半への回復を目指す。トヨタの営業利益率は、23年3月期で7.33%である。半導体供給不足が影響した。22年3月期は9.55%であった。24年3月期は、9%台を超えるのか注目点だ。 

    (5)「エンジン車に回帰する欧州とは対照的に、需要が堅調な中国ではEVシフトを加速させる。ブルーメCEOが「再建請負人」と呼ぶ、乗用車ブランド取締役のトーマス・ウルブリッヒ氏を4月から中国に駐在させる人事を決めた。中国のEV販売では中国新興や米テスラに後れを取る。EVとプラグインハイブリッド車(PHV)を合わせた中国の23年販売台数は中国EV大手、比亜迪(BYD)の12分の1にすぎない。エンジン車を含めた新車販売全体でも「中国国内シェア首位」の座をBYDに奪われる月もあった。ウルブリッヒ氏は出資する中国EV、小鵬汽車(シャオペン)との共同技術開発を指揮し、中国市場向けEVの開発期間を50カ月から36カ月に短縮。30年までにEV30車種の投入を狙う」 

    VWは、中国でEVシフトを加速させる。中国EVの小鵬汽車と組んで、中国流EVを発売する。

     

    (6)「VWは、「将来はEVになると確信している」(アルノ・アントリッツ最高財務責任者=CFO)と、30年までに世界のEV新車販売比率を50%に高める自社目標を撤回しなかった。販売台数の多いVWが欧州連合(EU)の厳しい二酸化炭素(CO2)排出規制をクリアするのに目標達成が欠かせないという事情もある。ただ、23年のEV比率は8.%にとどまりゴールは遠い」 

    EUのEV比率は、23年で8.3%である。EUも、EVオンリー主義を緩和して「合成ガソリン」車を二酸化炭素無害車として承認した。なんと、二酸化炭素を原料にするという「逆転の発想」である。

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