ドイツの極右政党AfD(ドイツのための選択肢)は、世論調査で20%台を維持するほどの支持を受けている。この背景には、ドイツ経済の深刻な不況問題がある。第一次大戦後のドイツが味わった大不況下で、ヒトラーが政権を握ったと同じ状況が起こっているのだ。AfDは、移民排撃をしたことやエネルギー危機克服で原発再開を主張するなど、世論を引きつける発言をしている。
ドイツでは、ヒトラー再来という危機感から数十万人がデモに繰り出し、AfD反対への意思を示した。それにしても、ドイツの民主主義はどうなっているのか。景気が悪化すれば、ポピュリズム政党の発言になびくとは哀しい話だ。日本が、太平洋戦争を決断した東条英機を礼賛するようなものである。
『フィナンシャル・タイム』(1月22日付)は、「ドイツ極右指導者、英国のEU離脱は『自国のモデル』」と題する記事を掲載した。
ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のアリス・ワイデル共同党首は、同党が政権に就いた場合、欧州連合(EU)加盟について、ブレグジット(英国のEU離脱)のような国民投票の実施を目指すと明言した。その上で英国の離脱は「大正解」だったと称賛した。同氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで、「これはドイツにとってのモデルであり、国はあのような主権的判断を下せるということだ」と強調した。
(1)「主流政党が熱烈な親EU派のドイツでは、この考え(注:EU離脱)は大きなタブーを破ることになる。また、ドイツ憲法は国民投票に厳しい制限を設けており、仮に投票が実施されたとしても、世論調査ではドイツ国民の大多数がEU残留に投票することを示している。しかし、AfDに投票する有権者の間では、EUへの支持が最も弱い。ワイデル氏の発言は、AfDへの支持が急伸していることを背景にしている。世論調査での同党の支持率は22%で、ショルツ首相の不安定な連立政権に参加しているドイツ社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党すべてをリードしている」
ドイツでも、EU離脱論が出ている。この背景には、ドイツの主権が制限されていることへの不満があろう。かつての「ドイツ帝国」再来を夢見ている。だが、EUのお陰で通貨「ユーロ」の恩恵を最も受けてきたにはドイツだ。マルク時代より割安に設定されているユーロで、ドイツは輸出を伸してきたことを忘れている。もう一つ、第一次・第二次の世界大戦を始めた責任だ。ドイツは、EUの中で協調することにより過去の罪を許される。日本まで戦争に巻き込んだ歴史は消えないのだ。
(2)「AfDは9月にザクセン、ブランデンブルク、チューリンゲンの旧東独地域3州での重要な州議選で勝利すると見られている。もっとも、その他すべての主要政党がAfDと連立協定を組むのを拒んでいるため、権力の座への道筋ははっきりしない。ドイツの国内情報機関はAfDの大部分をなす派閥を過激派に指定し、幹部数人を監視下に置いている。それでも、同党はショルツ氏および悪化する経済の運営方法への国民の怒りから恩恵を受けている」
AfDは、ポピュリズム政党である。不況下で失業者が増えていることを理由に、移民反対を叫んで人気を集めている。ただ、単独で州レベルでの政府を組織できない限界がある。他党が、連立を拒否しているからだ。
(3)「複数のAfD議員とオーストリアの極右活動派マルティン・ゼルナー氏が昨年11月に会合を開き、物議を醸したことが報じられると、AfDはここ数日、大騒動の渦中に置かれることになった。会合では、ドイツのパスポートを所有する市民を含め、外国から移住してきた過去がある数百万人の人をドイツから強制的に「再移住」させる計画が話し合われた。ドイツの多くの都市でAfDに反対する大規模デモが開かれ、政治家は同党がドイツの民主主義制度に及ぼす危険について警鐘を鳴らした」
複数のAfD議員は、オーストリアの極右活動派と会合を開いたことが大騒動になっている。移民禁止を話し合ったからだ。ヒトラーが、ユダヤ人追放で悲劇を生んだ歴史と直結する。
(4)「他党は、AfDとの連立や協力を一切排除する「ファイアウオール」を築くことによってAfDの脅威に対応してきた。その結果、世論調査での高い支持率にもかかわらず、同党はドイツ連邦16州で州政府を一つたりとも支配していない。ドイツ国会議事堂を見渡せ、反政府デモの喧噪が遠くに聞こえるオフィスで、ワイデル氏自身が「2029年より前」にAfDがベルリンで政権の座に就くことはないと認めた。だが、AfDが将来、政府内で一定の役割を果たすことは「避けられない」と主張し、同党のボイコットを真っ先に放棄するのは中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)だと予想した」
AfDは、当面の政権担当の可能性を否定している。だが、CDUはいずれAfDと連立政権を組むだろうと予測している。CDUがその間、政権につく可能性がないと前提しているようだ。CDUも甘くみられている。
(5)「AfDが政権を握った場合の最優先課題は何かと問われると、ワイデル氏は「効果的な国境管理を導入し、外国人の犯罪者を直ちに強制送還することだ」と答えた。さらに、税制を改革し、国家をスリム化し、化石燃料から再生可能エネルギーへのドイツの転換を打ち切るという。「フランスは15カ所もの新規原子力発電所を計画しているのに、我々は自分たちで作ることさえできない風力タービンと太陽光パネルに命運を託している」と指摘した」
AfDが政権を取れば、原発再開を約束している。脱原発が、エネルギー危機を生んでいることを利用したものだ。現政権は、こういうAfDの動きを警戒して、原発問題で柔軟姿勢が求められる。「ヒトラー再現」阻止には、原則論だけで対応することが困難になろう。



