日本からみた戦後ドイツは、冷静沈着な国というイメージだ。過去の戦争にまつわる失敗を深く反省してきた。それが、ロシアや中国に対して極度の開放政策になった理由だ。現在、これらがすべて裏目になっている。
長期政権になったメルケル前首相は、東ドイツ出身である。それだけに共産主義国家への親和性が強かった。こうして、経済的な依存度を高めすぎ、今やのっぴきならない局面へと遭遇させた。異次元な政治体制である国家に対しては、それなりの「抑制」が必要であることを改めて教えている。
『ブルームバーグ』(10月7日付)は、「ドイツ不動産市場がメルトダウン、開発業者に不況の波-大手も破綻」と題する記事を掲載した。
戦後ドイツ復興の象徴だったニュルンベルクの「クエレ・ビル」再開発事業では今年7月、市長が出席して最後の梁(はり)を配置する式典が行われた。生まれ変わったクエレ・ビルはオフィスや店舗、住宅からなる巨大な複合施設となり、2024年に開所する予定だった。ところが、開発を請け負っていたゲルヒ・グループは、プロジェクト関連会社の1社とともに過去数週間で破産手続きの開始を申請した。これにより施設開所の時期はいまや不透明だ。
(1)「ゲルヒはまた、総額40億ユーロ(約6300億円)の建設中プロジェクトを抱えている。不動産市場は、低金利で資金調達できた時代の終わりに新たな打撃が加わった格好だ。不動産市場の変化の影響を最も受けやすいのは、誰かを浮き彫りにしてもいる。現在の不動産危機を巡る投資家の不安は不動産保有者に集中していたが、ゲルヒなどの苦境は建設プロジェクトを抱える開発業者が差し迫った危機にさらされていることを示す」
ニュルンベルクの「クエレ・ビル」再開発事業を担っているゲルヒ・グループが、破産申請した。ニュルンベルクは、人口50万人を超えるバイエルン州第2の都市だ。第二次世界大戦でのドイツの残虐行為を裁いた場所として、国際的に知れ渡っている都市である。その復興事業の最後のプロジェクト工事を行ってきた建設会社が破産したのだ。
(2)「ドイツの法律事務所ノールの再建・破綻担当共同責任者を務めるマーリース・ラシュケ氏は、「プロジェクト開発業者は膨らむ建設コスト、上昇する金利、価格の下落に苦しんでいる」と説明。「過去数週間に開発業者数社の破産申請があった。さらに出てくると予想している」と述べた。ゲルヒのほか、デービッド・チッパーフィールド氏ら著名建築家との協力関係を武器に売り込んでいたミュンヘンのユーロボーデンも破綻の仮処分手続きの過程にある。8月には、プロジェクト・イモビリエン・グループも傘下のプロジェクト会社の多くとともに破産を申請。暫定管財人の広報担当者によると、プロジェクトの一部は新たな請負業者選定で入札にかけられるという」
建設会社にとって、人件費上昇と金利急騰は大きな負担になった。破産はゲルヒだけでない。多くの建設企業がお手上げになっている。
(3)「開発業者は、世界的に見ても憂き目に遭っている。オーストラリアでは今年に入り、コスト高騰と需要減を受けて、ポーター・デービスなど複数の住宅建設会社が清算に追い込まれた。スウェーデンでは、建設不況で倒産件数が増加。その隣国フィンランドの建設業界団体によると、同国の住宅着工件数は1940年台以来の水準に落ち込む恐れがある。超低金利が長期にわたって続き、利回りを求める投資家の資金が不動産に流入していた時期から状況は急速に変わった。安く資金を調達してプロジェクトを買い込み、価格が上昇を続ける市場で売りさばくことは、ゲルヒなどの開発業者にとって難しくはなかった」
ドイツだけで建設企業が破産しているのではない。オーストラリア、スウェーデン、フィンランドでも同様の事態に陥っている。高金利と人件費高騰が破綻要因になっている。
(4)「いまや様子は全く異なる。不動産仲介を手掛けるサビルズによると、12ヶ月連続ベースのドイツのオフィス用不動産取引は少なくとも2014年以来の低水準に落ち込んだ。同国の大手不動産保有会社ボノビアは、新規の建設開発が「ほぼ不可能」だと警告した。ドイツ最大級の不動産投資会社コメルツ・リアルのヘニング・コッホ最高経営責任者(CEO)は、「調整のスピードが著しい」と指摘。「ドイツ不動産市場のリセッションは1年半前に始まり、ここ2~3カ月は開発業者の破綻がいっそう増えている」と述べた」
商業用ビルは、米国でも需要不振によって空室率が拡大し、不動産相場は低落の一途だ。パンデミックによる在宅勤務が定着して、オフィスの空室が広がっている結果だ。日本は、交通事情が良くて「通勤苦」が減っている事情も手伝い、在宅勤務比率は21カ国中で下から2番目である。日本の不動産事情とは状況が異なっている。





