中国は、困った存在である。一帯一路で他国を債務漬けにしておきながら返済不能になると、債務再編に協力しないのだ。財政破綻したスリランカへの2国間融資で、最大の債権国は中国である。22年6月時点で、全体の52%にあたる73億ドル分も貸付けているのだ。この中国が、債務の減免に難色を示してきた。対スリランカ融資では、日本が20%、インドが12%、フランスが3%である。
日印仏の三カ国が、中国に代ってスリランカ債務の整理に当たっている。中国は、人ごとのように振る舞っているのだ。これは、スリランカとの二国間で協議し、負担の少ない仕方で別途、有利な方法で取引するのではと裏工作を警戒されている。
『日本経済新聞 電子版』(5月9日付)は、「スリランカ債務、早期圧縮一致 中国はオブザーバー参加」と題する記事を掲載した。
日本政府などは5月9日、デフォルト(債務不履行)にあるスリランカの債務再編に向けた債権国会合を初めて開いた。インドやフランスなど26カ国が参加し、早期の債務圧縮などをめざす方針で一致した。最大の債権国である中国はオブザーバー参加にとどまった。各国は引き続き、正式な参加を呼びかける。
(1)「会合はオンラインで開いた。当事国のスリランカも参加。共同議長を務めた日本、フランス、インドは共同声明をまとめた。会合後、財務省の神田真人財務官は記者団に「仮に(中国の)正式な参加がないような場合でも債権国会合のプロセスを進めていくことが求められる。モメンタム(勢い)を失うことなく交渉を進める」と述べた。中国に今後も正式参加を呼びかける意向も示した。スリランカとの2国間交渉で中国が他国よりも有利な条件で債務再編を進めれば、会合の意義は薄れかねない。日本はスリランカに会合の枠組みの外で交渉を進めないよう求めている」
スリランカを財政破綻国へ追込んだのは、中国の過剰融資である。無駄な空港を建設させた。また、最初から返済不能を見込み、中国が建設した港湾を担保に取り上げるという高利貸し商法を行ったのだ。中国の責任は極めて重い。中国は、最大の債権国として「債権切り捨てリスク」を避けるべく、スリランカと直接取引して「漁夫の利」を得ようとしていると警戒されている。中国への信頼度はここまで落ちているのだ。
(2)「スリランカは新型コロナウイルス禍で主力の観光業収入が急減。中国などから借り入れたインフラ整備資金を返済できず、2022年5月に中所得国として初めて事実上のデフォルトに陥った。足元の物価高で低・中所得国は深刻な状況にある。米欧の急速な利上げも債務返済の重荷になり、問題は低所得国から中所得国に広がる恐れがある。米ボストン大学などは61の途上国と新興国が債務危機か、その高いリスクに直面していると分析する。今回の債権国会合の特徴は、中所得国に分類されるスリランカを対象にしたことにある。11日から開く主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でも低・中所得国の債務問題が議論になる見通しだ」
スリランカは、中所得国である。1人あたり名目GDPは、2017年に4401ドルとピークをつけ、22年には3362ドルまで低下した。24%の落ち込みである。かつては、福祉が充実していたが中国の口車に乗せられて、財政破綻国へ転落した。
(3)「日米欧など先進国で構成する「パリクラブ(主要債権国会議)」が、途上国の債務問題を仕切ってきた時代は変わりつつある。解決を主導する重心は先進国からインドや中国に移っている。中印など新興国は途上国への支援を増やしている。スリランカは、中東・アフリカと東アジアを結ぶシーレーン(海上交通路)上の要衝にある。インドは22年4月、国際通貨基金(IMF)にスリランカ支援を働きかけた。スリランカにはIMFが23年3月に、4年間で30億ドル相当を融資する方針を決めた。IMFが支援に際して求めていた対外債務の整理に、当初は難色を示していた中国が協力する意向を伝えている」
スリランカは、IMFから30億ドルの緊急融資を受けることになったが、この資金の一部が中国へ流れるのではと警戒されている。中国ならやりかねない。こういう警戒観がみなぎっているのだ。スリランカに対しては、中国と直取引しないように釘が刺されている。