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いかにも「計算高い」中国らしい振る舞いをしている。中国は、インド洋に浮かぶ紅茶の国・スリランカへ「一帯一路」名目で巨額融資をし、債務返済が滞ると港を「99年租借」にして担保回収に出た。そのスリランカが今度は、国債元利金返済に直面して苦境に立たされている。だが、中国は新規の融資話を断り、スリランカが路頭に迷っている。

 

スリランカ国内では、外貨不足で為替安に直面し物価急騰を招き、政情不安が高まっている。そこで、緊急融資先として日本へ「SOS」を打つ事態になった。スリランカ大統領によれば、日本との話合いが近くまとまりそうだという。

 


『日本経済新聞 電子版』(5月27日付)は、「緊急融資『日本に期待』、スリランカ大統領が表明」と題する記事を掲載した。

 

経済危機に直面するスリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は26日、日本で開催中のシンポジュームに映像メッセージを寄せ、目先の生活必需品の供給や債務再編に向け「緊急のつなぎ融資が必要だ」と述べた。金額には言及しなかったが、日本との間で交渉が進んでいることも明らかにした。

 

(1)「スリランカの対外債務残高は2021年末時点で500億ドル(約6兆3000億円)を超える。22年中に70億ドル分の支払いが期限を迎えると報じられている。ラジャパクサ氏は映像メッセージで、同国が「深刻な財政危機に見舞われている」と認めた。新型コロナウイルスの感染拡大で激減した観光客の数はなお回復途上で、国際収支が悪化。外貨不足で輸入が滞り、品不足で生活必需品の価格高騰が深刻になっている。スリランカ政府は4月、経済再建策がまとまるまで対外債務の返済を一時停止すると表明した」

 


現在、輸入品を中心とした生活必需品の値上がりが、国民生活を直撃している。4月のコロンボ消費者物価指数は前年同月比29.%増という記録的な水準だ。政権への抗議デモが続き、政権支持者との衝突などによる死傷者も出ている。

 

政権の要職を親族で独占してきたゴタバヤ・ラジャパクサ大統領らへの批判が高まるなか、5月に入って兄のマヒンダ・ラジャパクサ首相が辞任した。ゴタバヤ氏は挙国一致内閣の設立を訴え、12日に野党の統一国民党(UNP)総裁のウィクラマシンハ氏を新首相に任命した。ラジャパクサ兄弟が親中派と目されてきたのに対し、ウィクラマシンハ氏は親インド・欧米派とされる。

 

中国はなぜ、新たな融資を断ったのか。真相は不明だが、先の融資では、担保としてハンバントタ港を「99年租借」した。今回、融資してもハンバントタ港のような価値のある資産が見当たらなくなったから断った、という見方もされている。

 


スリランカ大統領はこの1月、中国の王毅外相と会談。スリランカは、中国に対する債務が少なくとも33億8800万ドル、日本円で4300億円余りにのぼるなど膨らみ続けている。このため、中国に対する債務支払期限の延長など、返済条件の緩和を検討するよう求めたもの。

 

中国からの債務漬けの発端は、スリランカ南部のハンバントタ港を約14億ドルかけて開発したことにある。金利が高く、港の稼働率も悪かったため、返済のメドが立たなくなってついに、ハンバントタ港の運営権を「99年租借」という形で奪われることになった。中国は、これを見越していたのである。

 

中国が、スリランカへの新規融資を断ったのは、中国の外貨事情悪化も大きな要因と見られる。中国の経常収支は昨年、パンデミック下の僥倖で大幅黒字を出したが、今年は大幅な減少が見込まれる。今年は、3000億ドルもの資本純流出が見込まれるほどだ。外貨準備高3兆ドル割れもありうる事態である。とても、他国の面倒を見ている余裕がなくなったに違いない。

 


それに、スリランカを中国へ引きつけて置くメリットがなくなったのであろう。ハンバントタ港の運営権は99年間握った。後は、深入りせずに「実益」を守ることを選んだに違いない。中国の高利貸し的商法が全面に出てきた。

 

(2)「ラジャパクサ氏は、国際通貨基金(IMF)のプログラムが開始されるまでのつなぎ融資で経済を安定させることが急務だとの認識を示した。「日本からのつなぎ融資についての交渉が近く完了することを期待する」と指摘した。スリランカはインド洋の島国で、中東・アフリカと東アジアを結ぶシーレーン(海上交通路)上の要衝だ。緊張関係にある中国とインドがそれぞれ、経済・安全保障の両面で影響力を競ってきた。ラジャパクサ氏は「インドの惜しみない支援に感謝している」と述べたが、中国には言及しなかった。スリランカは中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」の途上にあるが、同国からの過剰な融資を受け入れ、返済に窮している」

 

日本は、ODA(政府開発援助)で長期・低利の融資で借入れ国の立場で融資をしてきた。スリランカにして見れば、日本の「親切さ」にすがって、危機を乗り切りたいのであろう。

 


(3)「スリランカの経済危機について、ラジャパクサ氏は「欧州での衝突」も背景にあると述べ、ロシアのウクライナ侵攻による世界経済の枠組みの揺らぎの影響を受けていると示唆した。19年の大統領選で当選したラジャパクサ氏は、兄の大統領経験者を首相に就けるなど、一族で政権を牛耳ってきた。経済危機に抗議する市民らは最大都市コロンボなどでデモを続け、ラジャパクサ氏の大統領辞任を要求している。だが、同氏は辞任を拒否。映像メッセージでは「民主主義の枠組み」を通じ、事態を解決すると主張した」

 

スリランカは、外国人観光客でもっている国である。2019年のGDPへの寄与は4.3%。40万人余の雇用を生み出したという。外国人観光客の動向が、経済成長の鍵を握っているのだ。その入国者数は、新型コロナの影響から大きく減少している。2021年は、2019年比89.8%減の19万5000人へと激減したほど。これでは、経済が回らないであろう。

 

今年は、これから「ウイズコロナ」で次第に外国人観光客も増えるであろう。それに期待して経済立直しをするほかない。くれぐれも、中国の「口車」に乗せられて高利の融資を受けないように。世界中の新興国にとっても教訓になろう。