勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済ニュース時評

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    台湾最大野党・国民党の鄭麗文主席が、6月1日から米国を訪問する。トランプ米大統領との面会を打診しているとされるが、可能性は極めて低いとみられる。鄭氏は4月、訪中しており南京で激しい反日演説を行った。米国では、同盟国である日本を批判する政治家発言は低評価されている。米同盟国批判が、間接的に米国批判と受け取られているのだ。鄭氏は、こうして米国の空気を読めない政治家とみられている。それだけに、大統領はもちろん、閣僚クラスとの面会も不可能とされている。せいぜい、シンクタンクでの講演程度という見方も。同盟国日本批判は、米国にとってタブーである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月1日付)は、「台湾最大野党・国民党主席が1日訪米 トランプ氏に面会打診」と題する記事を掲載した。

     

    台湾最大野党・国民党の鄭麗文主席が1日から米国を訪問する。トランプ米大統領との面会を打診し、米中双方に通じる「バランス外交」を打ち出して中間層の支持獲得を狙う。米高官との接触が実現しなければ、党内の求心力が下がり逆風となる可能性もある。

     

    (1)「台湾メディアによると、鄭氏はおよそ2週間の日程で、ワシントンやニューヨーク、ロサンゼルスなどを訪問し、政界関係者や有力シンクタンクの会合に出席する。4月には国民党幹部を引き連れて訪中し、中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記と会談したばかりだ。今回の訪米と合わせ、米中双方を往復できる外交力を示すことで、中台対立の激化を望まない中間層の支持取り込みを狙う」

     

    米国が最も嫌うのは、「中国のプロパガンダに乗る台湾政治家」である。鄭麗文主席が、4月訪中し南京で行った日本批判は、米国の対中専門家の間で次のように受け止められている。「中国の歴史戦に協力した」、「中国の対日・対米分断戦略に利用された」、「国民党の対中融和が行き過ぎている証拠」などだ。特に南京という場所での発言は、 中国共産党が長年使ってきた「反日ナショナリズム」の文脈に完全に乗ったと見られている。

     

     米国は、「日本批判=同盟軽視」と受け止めている。米国の対中戦略は、 日米台の三角連携が前提である。その中で、台湾の野党トップが 中国の土俵で日本批判をするのは、米国から見ると「台湾は本当に我々の陣営にいるのか?」とされるほど重大発言になる。 米国にとって、「日本批判」は単なる歴史問題でなく、同盟の根幹に関わる問題と受止められている。レッドラインを超えたのだ。

     

    (2)「与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳(ライ・チンドォー)政権が進める対米重視路線に対抗し、国民党としてより幅広い選択肢を有権者に提示する構えだ。11月には台湾総統選の前哨戦となる統一地方選を控える。支持率が2割強にとどまる鄭氏にとって、訪米は巻き返しの足がかりとなる。外交成果を上げることで「批判一辺倒」のイメージを転換し、指導力をアピールしたい考えだ」

     

    ワシントンにおける鄭氏の人物評価は、かなり厳しいとされている。

    1)「戦略性よりもパフォーマンス重視」。南京での発言は、 台湾国内の特定層へのアピールに見え、 国際的な影響を計算していないと受け止められている。

     

    2)「中国に利用されやすい」。習近平氏との会談 や 南京での発言。さらに 訪米 という流れが、「中国の対米・対日分断戦略の一部に見える」という声もあるほど。鄭氏は、まず米国を訪問してから訪中すべきであった。訪問の順序をまちがえたのだ。

     

    3)「危ういポピュリスト」とみられている。ワシントンの専門家の表現を借りれば、「目の前の聴衆に迎合しすぎる」という評価が複数ある。


     

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    中国国家主席習近平氏は、台湾の独立宣言に過剰なまでの神経を使っている。万一、「独立宣言」したら、たちどころに台湾へ侵攻するという剣幕である。戦争を仕掛ける糸口を探している感じが強い。だが、台湾与党の民進党も野党の国民党も、台湾はすでに大陸から独立した主権を行使しているという意味で「独立」していると宣言している。改めて、宣言する必要性がないという立場だ。こうなると、習氏は、振り上げた拳の置き場所に困るであろう。台湾侵攻の口実は、永遠に来ないからだ。

     

    『毎日新聞 電子版』(5月30日付)は、「中国の主張とは裏腹の台湾 『独立宣言』が議論されない背景とは」と題する記事を掲載した。

     

    5月中旬の米中首脳会談で、中国の習近平国家主席は「台湾独立」に強く反対し、トランプ米大統領は会談後の取材に「(台湾の)独立の動きは見たくない」と繰り返した。その直後の17日、台湾の頼清徳総統はイベントで「台湾は主権を有する独立した民主国家だ」と発言している。実は、頼氏の言う「独立」と習氏やトランプ氏が使う「独立」に、ニュアンスの違いがある。背景にあるのは台湾の民主化の歩みだ。

     

    (1)「歴史は、1949年にさかのぼる。中国大陸で中華民国を統治していた国民党が共産党との内戦に敗れ、国号を維持したまま台湾に移った。国民党がその後の長期独裁で住民を弾圧したことで、一部の台湾人に「中華民国」体制を倒して独自の国家を造る考えが広まった。これが本来の意味での「台湾独立」を指す。台湾の安全保障上の後ろ盾である米国が支持しない立場を堅持しているのも、この「独立」だ。一方、現在の与党・民進党は86年に結成され、91年の党綱領に台湾共和国の建国を掲げた。だが99年の党大会決議で、総統選挙の直接投票化などで事実上独立した民主国家になったとして、建国の主張を封印。「中華民国」という名前を容認する穏健路線に転じた」

     

    与党の民進党は、99年の党大会で事実上、独立した民主国家である以上、建国の主張を封印した。独立宣言をしないという立場である。

     

    (2)「頼氏の発言は、この延長線上にある。同日のフェイスブックへの投稿では「自由民主主義的な憲法体制を守ることが台湾人の共通認識だ」として、台湾独立問題は存在しないとも述べた。新しい国家を造ろうとしているわけではないとの考えで、これまでも言及してきたものだ。最大野党・国民党は、台湾独立に反対する一方、「中華民国は主権を有する独立国家」(鄭麗文主席=党首)とも述べている。中国にルーツを持つ政党として、「中華民国」解体や国家性の否定は自らの存在意義を失うことにつながる。中国の習政権は民進党を「台湾独立派」扱いするが、民進党も国民党も台湾の現状を維持する立場にそれほど違いはない」

     

    国民党は、「中華民国(台湾)は主権を有する独立国家」としている。結局、民進党も国民党も台湾の現状を維持する立場に変わりない。

     

    (3)「主要政党が、本来の意味での「独立」の主張から距離を置く中、台湾でその実現性が議論されることはまれだ。独立を宣言したり、新国家建設に向けて憲法改正に動いたりすれば、中国の武力行使を招くことは必至だ。世論調査でも独立支持は数%に過ぎない。中国は、「世界に中国は一つで、台湾は中国の一部であることが台湾海峡の現状だ」との立場だ。台湾問題を担当する国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は、27日の記者会見で頼氏の投稿について「民進党は台湾を中国から分離させることを長く主張してきた『台独』政党だ。表現上は偽装をしたが、国土を分裂させる主張は放棄していない」と批判。民進党政権が「台独分裂」の立場に固執していることが台湾海峡の緊張の根源だと主張した」

     

    中国は、「仮想敵」が必要であり台湾民進党を挙げている。その意味で、日本も「仮想敵」に組入れた。軍事国家・中国の運命は、過剰な国防予算がもたらす財政圧迫で「自壊リスク」を高めることになろう。

     

     

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    台湾の第一野党代表である鄭麗文・国民党党首が4月8日、南京の孫文の墓を参拝した。鄭氏は、孫文の墓前で日本に11回も言及して批判したという。孫文が、革命運動を始めてから官憲に追われて身を隠した先は日本である。鄭氏は、宮崎滔天などが孫文を物心両面の支援をした歴史的事実を忘れて日本を批判したのだ。これには、泉下の孫文も驚いたであろう。鄭氏は、中国へ媚びるために「日本を売った」のだ。これでは、日本へ来るつもりはないのだろう。

     

    『中央日報』(4月9日付)は、「中国を訪問中の台湾・国民党主席、日本に11回言及し批判…あすにも習主席と会談か」と題する記事を掲載した。

     

    5泊6日の日程で中国を訪問している鄭氏は8日午前、両岸(中台)双方が「国父」と認める孫文の墓所である中山陵を参拝した。身長が178センチという鄭氏は、参拝後に3000字に及ぶ長文の演説文を約18分間朗読し、8回も声を詰まらせたと台湾メディアは報じた。

     

    (1)「鄭氏は、演説で「孫文先生が死後、国際舞台で世界的偉人の仲間入りを果たしたのは、孫先生が満清を倒してアジア初の民主共和国である中華民国を建国したからだけでなく、世界の弱小民族のために生涯堅持した信念のためだ」と述べ、台湾の国号である中華民国に言及した」

     

    孫文の評価は、彼の残した『三民主義』にある。現代の中国は、この三民主義からかけ離れた政治体制である。台湾こそ、孫文の主義主張に沿った国づくりである。鄭氏は、孫文の墓前でこの三民主義を語れば、習近平体制の批判になるので言及を避けたのだろう。代って、孫文を庇護・支援した日本を批判した。本末転倒である。

     

    (2)「あわせて異例にも日本に11回言及した。鄭氏は「孫中山(孫文)は逝去する4カ月前、大アジア主義を提示した」とし「日本が侵略の野欲を隠すために宣伝した大東亜共栄圏とは異なり、アジア民族連盟の形態でアジアの弱小民族の地位向上を訴えた」と述べ、過去の日本帝国主義を批判した。国民党が、台湾で引き起こした白色テロ「2・28事件」と38年間続いた戒厳統治にも言及した。また、台湾海峡の分断を130年前の日清戦争と日本帝国主義のせいにした」

     

    日本は台湾を植民地にしたが、利益収奪を目的にしなかった。中国の行政が及んでいなかった台湾が、近代化できたのは日本の努力によるものだ。教育制度の普及を行い「台湾帝国大学」まで設立した。台湾が現在、半導体で世界1位に成長できた裏には、近代教育による高い知性が支えているのだ。鄭氏は、自らの知性の根源がどこにあるかを静かに考えるべきだろう。第4代中華民国総統になった李登輝氏は生前、繰返し日本の統治を高く評価していた。それは、日本による近代化教育が、台湾人を目覚めさせたとしている。

     

    (3)「台湾の大陸委員会はこの日午後、書面による立場表明を通じて「鄭主席が隠すようにして中華民国に言及した」と指摘した。また「意図的に中国共産党の歴史叙述に呼応した」とし、「これは台湾国民の認識とは異なる、非常に遺憾なことだ」と強調した。台湾の政権交代を促す掛け声も登場した。中山陵で鄭氏一行を見た中国の観光客は「鄭麗文主席、頑張れ」「国民党ファイト」「28年に民進党を追い出してほしい」といったシュプレヒコールを叫んだと、香港の明報などが9日、報じた」

     

    鄭氏の演説は、台湾の大陸委員会から批判されている。「意図的に中国共産党の歴史叙述に呼応」したという批判だ。「中華民国」という国名を決めたのは孫文である。国家理念(五権憲法・三民主義)と結びつけたものだ。

     

    (4)「中国ではこの日、江蘇省と上海市の党書記が相次いで鄭氏と会談した。信長星・江蘇省党書記は「2005年の連戦・元国民党主席による『平和の旅』の出発点が、ここ南京だった」と言及した。午後に会談した陳吉寧・上海市党書記は「両岸の同胞は血は水よりも濃い一つの家族だ」と歓迎した。鄭氏は「今の世代は、若者世代の障害物ではなく、助力者にならなければならない」と強調した」

     

    同じ民族である中国と台湾が、統一されることは望ましい。だが、政治体制は全く異なるのだ。三民主義の台湾と独裁政治の中国が、同じ器に収まるはずがない。中国が民主化されない限り、台湾が受け付けないであろう。鄭氏は、いったい何を夢見ているのか。三民主義を捨てるつもりならば、「反逆」というレッテルを押されるであろう。孫文を口にする資格がないのだ。孫文を隠れ蓑に使ってはならない。

     

     

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    TSMC(台湾積体電路製造)は5日、熊本県菊陽町で人工知能(AI)向け半導体の生産を検討すると表明した。回路線幅3ナノ(ナノは10億分の1)メートルの工場建設を計画。九州に世界最先端レベルの製造拠点ができる。TSMCとの取引を目指す企業には、これまで以上に厳しい技術や品質管理が求められる。関連産業の誘致も課題だ。熊本県は、TSMC工場周辺に半導体関連企業やAI関連のスタートアップを呼び込み、起爆剤としたい考えだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月6日付)は、「TSMCの熊本AI半導体、供給網の覚悟問う 技術・品質より高く」と題する記事を掲載した。

     

    九州にある半導体製造装置部品の関連企業トップは1月、TSMCの計画変更を見据え「従来の2.5〜3倍となる10億円規模を投資しないと追いつかない」。早くも、こうそろばんをはじき出した。

     

    (1)「TSMCが2025年10月に着工した熊本第2工場(同町)では、従来は車載向けや通信機器などに適する6〜40ナノ品を造る予定だった。新たに検討する3ナノは同社が25年に量産を始めた2ナノ品に次ぐ高度な技術だ。携わるサプライヤーもより大規模な設備投資が必要で、部品の扱いなども気を使う作業が求められる。先端半導体はわずかなチリやホコリの付着も許されない。この企業トップは、「納品する装置部品の清浄度のチェックがより厳しくなる。高価なパーティカルカウンター(微粒子計測器)も用意する必要がある」と身構える」

     

    第2工場は、3ナノ製造である。携わるサプライヤーは、より大規模な設備投資が必要で、部品の扱いなども気を使う作業が求められる。技術の向上が必須要件になる。

     

    (2)「装置部品を拭き取る際に使うアルコールは、揮発しやすい高級品に切り替え、製造や加工に用いる純水や薬液も高機能品に変える必要があるという。「自社工場や搬送車両にも高度なクリーンルームなどの設備が必要になりそう」と話し、新工場の建設や新卒採用にも意欲を示す。TSMCがサプライヤー企業に求める技術や品質管理の水準は高い。TSMC熊本工場の運営子会社JASM(同町)は半導体素材などのサプライチェーン(供給網)について、国内調達比率を30年に60%程度に高める目標を掲げる。だが先端半導体の工場と取引するなら、対応できる国内企業はより限られる可能性もある」

     

    第二工場は、半導体素材などのサプライチェーン(供給網)について、国内調達比率を30年に60%程度に高める目標を掲げる。地元は、これに応えられる技術が求められる。ラピダスは、2ナノである。前工程と後工程の全自動化を目指している。

     

    (3)「それでも多くの手間やコストをかけてTSMCの要求に食らいつくサプライヤー企業があるのは、世界的に需要が高いAI半導体市場の恩恵を期待するからだ。TSMCの魏哲家董事長兼最高経営責任者(CEO)は5日、首相官邸で高市早苗首相と面会し、熊本第2工場の検討内容について説明した。魏氏は、「3ナノ技術はAIやスマートフォン製品に使う最先端のプロセスだ。地域経済の成長にさらに貢献し、日本のAIビジネスの基盤を形成すると確信している」と話した」

     

    TSMCは、3ナノ生産で地域経済の成長と日本のAIビジネスの基盤形成に貢献すると発言している。このチャンスを生かすことで、日本経済に寄与する。

     

    (4)「世界最先端の半導体工場が九州に建つことに地元の期待も大きい。熊本県の木村敬知事は5日、「生成AIや自動運転など未来の産業を生み出したい」との考えを示した。TSMC工場周辺に半導体関連企業やAI関連のスタートアップを呼び込む起爆剤としたい考えだ。九州地銀の関係者は「(最先端半導体の国産化を目指す)ラピダスとかぶらない技術になってよかったのでは」と話す。熊本第2工場の生産品目は2ナノ品になるとの見方も一時浮上していた。同じ2ナノを手がけるラピダスとの競合が懸念されていた」

     

    地元は、生成AIや自動運転など未来の産業を育成したとしている。これが、起爆剤になることは確実だ。

     

     

     

     

    テイカカズラ
       

    半導体受託製造の世界最大手TSMCから最先端技術に関する営業秘密が不正に取得された事件で、捜査当局である台湾高等検察署は8月27日、すでに摘発済みだった3人を起訴した。うち1人は、東京エレクトロン元社員(事件を受け懲戒解雇)、残る2人はTSMC元社員(同)で、いずれも国家安全法および営業秘密法に違反したとして懲役7~14年が求刑されている。事件の真相が明らかになってきた。

     

    『東洋経済オンライン』(8月28日付)は、「台湾TSMCの『国宝級』2ナノ技術流出で3人をスピード起訴――東京エレクトロンを襲う"3つのショック"、主犯の元社員に懲役14年を求刑」と題する記事を掲載した。

     

    台湾は、2022年に国家安全法を改正し、企業の営業秘密のうち国家安全保障に関わるものの海外流出を阻止する措置を新設している。具体的には第3条で「国家の核心的重要技術(国家核心関鍵技術)」についての規定を新設し、さらに別途、行政院(日本の内閣に相当)が対象となる技術をリストで指定している。このリストの中で半導体製造技術については、「14ナノメートル以下のプロセスノードの技術」と明示されている。

     

    (1)「今回の事件は、国家安全法の法改正以降で初めて、核心的重要技術の営業秘密の海外流出を摘発したケースだった。しかも不正取得されたのは、世界的にも最先端レベルの2ナノ技術。いわば、台湾の国家安全保障戦略においては「国宝級」とも称すべき最重要技術だ。このため捜査当局とTSMCは事件の解明と犯人の厳正な処罰に全精力を傾注しており、それが超スピード起訴に繋がった」

     

    台湾当局は、TSMCの最先端(2ナノ)技術が流出した事件だけにスピード対応している。「国宝級」技術だけに神経を尖らせている。当然であろう。

     

    (2)「まず1つ目は、東京エレクトロンの元社員で陳姓の人物が「主犯」であり、しかもその犯行経緯は業務と深く密接していたことが明らかになった点だ。起訴された3人の中でも、最も長い14年が求刑されている。他の2人はそれぞれ、7年と9年の求刑だった。この差は事件の詳細に基づく捜査当局の判断であり、捜査当局の発表文で明解に示されている。発表に基づくと、事件は以下のようなものだった。東京エレクトロン元社員はもともとTSMCの社員で、ファブ12(第12工場)の歩留まり改善を担う部門で働いていた。補足すると、ファブ12は3~5ナノの先端技術まで手がける重要工場の1つである」

     

    主犯は、元TSMC社員で東京エレクトロン営業部へ転職した人物である。この主犯は、TSMCで3~5ナノの先端技術を扱う部署に勤務していた。

     

    (3)「この元社員は、TSMCを辞めて東京エレクトロンに転職し、営業部門に配属された。そして東京エレクトロンの装置が、「TSMCの先端ラインのより多くの工程で採用されること」を狙って、複数の元同僚に対して複数回にわたりTSMCの営業秘密の提供を求めた。そして元同僚の助力で営業秘密を撮影・複製するという犯行を主導した。実は捜査当局が、この事件について東京エレクトロンという企業名に公式に言及するのは、これが初めてだ。今回の起訴対象はあくまで元社員個人であり東京エレクトロンは含まれていないが、犯行の背景に業務が関係していることから、企業名にも言及したとみられる」

     

    今回の起訴対象は、あくまで元社員個人である。東京エレクトロンは含まれていない。

     

    (4)「2つ目は、事件が東京エレクトロンのビジネス上の「泣き所」と直結していたことだ。捜査当局の発表によると、主犯の元社員はTSMCから窃取した情報を使って、東京エレクトロンの「エッチング装置」の性能を改善し、TSMCの2ナノ量産ラインで自社のエッチング装置がより多くの認証を獲得できるよう活用したという。東京エレクトロンは半導体製造装置で世界4位、国内最大手の有力メーカーである。特にコーター/デベロッパと呼ばれる塗布現像装置は世界シェア9割を誇り、TSMCもこの装置については東京エレクトロン以外に選択肢がない」

     

    主犯の元社員は、TSMCから窃取した情報を使って、東京エレクトロンの「エッチング装置」の性能を改善。TSMCの2ナノ量産ラインで、自社のエッチング装置がより多くの認証を獲得できるよう活用したという。この点では、皮肉にもTSMCへ貢献している形だ。

     

    (5)「一方、チップに回路形成する工程で使われるエッチング装置については、世界シェア2位ではあるもののアメリカのラムリサーチに水をあけられ続けている。半導体業界のあるコンサルタントは、次のように指摘する。「エッチング装置において、ラムリサーチとの技術力の差が埋められない。エッチング装置が厳しく業績の重しになっているというのが、業界における共通認識だ」。エッチング装置は、東京エレクトロンの新規装置売上高の3割以上を占めるため、ここの動向は業績を大きく左右する」

     

    東京エレクトロンは、チップに回路形成する工程で使われるエッチング装置で競業企業に水を開けられている。そこで、TSMCの盗用技術を知らずに利用し効率を上げた、とされる。

     

    (6)「今回の事件で主犯の人物は、エッチング装置の性能を改善することにTSMCの営業秘密を利用したという。これが個人の犯行に留まるのか否かは、今後の捜査と公判の結果を待つしかない。現時点で指摘できることは、元社員の犯行は東京エレクトロンの経営において利益をもたらすものであったという点だ」

     

    今後の裁判過程で、東京エレクトロンは盗用技術であることを全く知らずに採用したのかどうかが焦点になる。東京エレクトロンが起訴されていないことは、無関係としているのであろう。

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