ペロシ米下院議長の訪台に対して、中国は台湾を封鎖する形の大軍事演習を行ない抗議した。再び米議会の要人の訪台をさせないという意思表示であったのだろう。米国は、ヤンキー魂というのか。これに屈することなく14日には、米議会上下両院の超党派による議員団5人が訪台した。中国の横暴に鼻を明かした形である。
『日本経済新聞 電子版』(8月14日付)は、「米超党派議員団が台湾訪問、15日に蔡総統と会談」と題する記事を掲載した。
米上下院の超党派議員団が14日、台湾に到着した。上院外交委員会東アジア太平洋小委員会のマーキー委員長(民主党)ら5人で、15日午前に蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談する予定だ。台湾にはペロシ米下院議長が訪問したばかり。相次ぐ米議員の訪台で、中国の反発は必至だ。
(1)「米国の窓口機関である米国在台湾協会(AIT)と台湾の外交部が14日、議員団の訪問を発表した。滞在は15日まで。蔡氏や呉釗燮・外交部長(外相)と会談するほか、立法院(国会)に訪問する。安全保障や経済・貿易関係で意見交換する。台湾の総統府の報道官は14日、「訪問を心から歓迎する」と述べた。中国の軍事演習が地域の緊張を高めているとし「米議会の台湾への強い支持と、平和と安定の維持に協力する決意を改めて示すものだ」とした。中国はペロシ氏の訪台に強く反発し、訪問直後の4日から台湾を取り囲む形で大規模な軍事演習を実施した。14日も複数の中国軍機が台湾海峡の事実上の停戦ライン「中間線」を台湾側に越えるなど、圧力が続いている」
米議員団は、中国の反発を織り込み済である。米議会の断固たる台湾支援姿勢を内外に示すことが目的であろう。米議会が、このように対中強硬姿勢を見せている理由は現在、審議中の「台湾政策法2022」成立へ強い意志を示したと見られる。台湾政策法2022とは、次のような内容である。
「台湾政策法2022」は、米上院外交委員会のメネンデズ委員長(民主)と予算委員会のグラハム委員長(共和)が共同提出した法案である。注目される中身は、
1)台湾に対する4年間で45億ドルの軍事支援する
2)台湾をNATO非加盟の主要な同盟地域に指定する
3)中国の台湾侵攻抑止のため強力な制裁体制の確立する
成立を目指す理由は、ウクライナで起きた悲劇を台湾で起こさせないためとしている。この法案が成立すれば、2)の通り台湾を正式にNATO(北大西洋条約機構)同盟扱いすることになり、米国は台湾に対する防衛義務が生じ、従来の方針である米軍が台湾へ介入するかどうか曖昧にする戦略を転換することになる。中国の「火遊び禁止法」になる。
バイデン政権は、この法案が台湾を正式にNATO(北大西洋条約機構)同盟扱いすることに難点を示している。できれば、この法案の成立を忌避したい動きを見せている。今回の超党派議員団の訪台は、バイデン政権とは反対に法案成立への強い意志を示しているように見える。立法府と行政府の対立になってきた。
『日本経済新聞 電子版』(8月14日付)は、「米政権、台湾と貿易促進へ工程表 中国に対抗」と題する記事を掲載した。
米国のバイデン政権は12日、台湾との貿易促進に向けた工程表を近く公表すると明らかにした。中国に依存する台湾の貿易構造の是正を後押しし、禁輸措置で台湾に圧力をかける中国に対抗する。
(2)「米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるカート・キャンベル氏は12日、記者団に対して「一つの中国政策と整合させながら、経済や貿易関係の強化も通じて台湾との結びつきを深めていく」と言及した。「貿易交渉に関する野心的な工程表を作成しており、数日中に発表する方針だ」と話した。米国と台湾は6月、新たな貿易協議の枠組みを立ち上げたと発表した。デジタル貿易や環境・労働者の保護、貿易手続きの簡素化を主要テーマとした。工程表ではテーマごとの交渉期限を示す可能性がある」
米台の貿易関係を密にする目的である。台湾は、米国産豚肉の自由化も決めており、米台で障害になる事項はすべて解決している。今度は米国が度量の大きいところを見せなければならない。
(3)「米国のペロシ下院議長が8月上旬に台湾を訪問すると、中国は事実上の対抗措置として台湾からのかんきつ類や魚類の輸入停止を発表した。経済に打撃を与えて米国との関係強化を停止するよう台湾に迫る狙いがあったとみられる。バイデン政権は議会承認が必要な自由貿易協定(FTA)に慎重で、関税の引き下げは想定していない。貿易協議を通じ、米台の貿易がどれほど増えるかは不透明な面がある」
バイデン政権は、関税引き下げ措置は米議会の審議を必要とするので、民主党から反対論が予想される。労働組合が雇用を奪われると神経しであるからだ。10月の中間選挙を控えて、議会で波風が立つことを回避したいからだ。どこの国でも、選挙前は慎重である。