11月15日の米中首脳会談で、隠れた話題が台湾総統選であった。バイデン米大統領は、習中国国家主席に対して、「台湾総統選へ介入しないように」と釘を刺すほど、神経を使っている。親米路線の与党民進党が3期続けて総統を務めるか。あるいは、対中融和路線の野党候補が政権を担うのか、米中双方にとって大きな影響が出る。
『ブルームバーグ』(11月27日付)は、「親米か対中融和か 路線選択を迫られる台湾有権者ー来年1月に総統選」と題する記事を掲載した。
2024年1月に実施される台湾総統選挙は三つどもえで争われる構図が固まった。総統選は有権者にとって、蔡英文政権の下で亀裂が深まった対中関係を修復し、有事リスクを後退させるチャンスとなる。しかし、対中融和を掲げる最大野党・国民党と野党第2党・民衆党が候補一本化の調整に失敗したことから、先行きは不透明となった。
(1)「総統選は、与党・民進党の頼清徳副総統、国民党の侯友宜新北市長、民衆党の柯文哲前台北市長の争いとなった。頼氏は米国との連携を一段と強める姿勢を示している。一方、野党候補の2人は共に、中国との対話を再開する計画だと表明している。フォックスコン・テクノロジー・グループ創業者の郭台銘氏は立候補を断念した」
一時は、野党2候補の統一で合意されたが失敗した。形の上では、与党候補が有利にみえるが、支持率は接近している。
(2)「野党が候補一本化に失敗したとはいえ、民進党の3期連続の政権運営となるかどうかは予断を許さない状況だ。特に若い有権者の間では、8年近く政権を担ってきた同党への不満や、変化を求める声が高まっている。民間シンクタンクの台湾民意基金会が24日に公表した世論調査結果によると、頼氏の支持率は31.4%に低下し、侯氏(31.1%)が迫っている。柯氏は25.2%だった。
与党候補が、国民党候補をわずかにリードしている。ここで、何かアクシデントが起これば、支持率はがらりと代わる微妙なところである。
(3)「ペンシルベニア州のフランクリン&マーシャル大学の顏維婷助教は「変化を望む有権者はかなり多く、民進党が立法院(国会)で過半数を失う可能性は高い」と指摘した。フーバー研究所の特別研究員、カリス・テンプルマン氏は「現在の情勢は台湾の多くの有権者にとって危険なように思われる」とし、「突然の禁輸措置や、外交的孤立の深まり、さらなる戦争の脅し」に関する懸念を理由に挙げた。その上で同氏は、侯氏が自分の政権は中国と協調できると説得力をもって主張できるし、侯氏が総統になれば、より抜本的な国防改革を行うための時間が稼げるだろうと述べた」
立法院は、国民党が過半数を握る可能性があるという。変化を望む民意が、背景にあると指摘する。
(4)「顏助教は、侯氏が趙氏を副総統候補に選んだことは、台湾の最終的な中国との統一を支持する有権者層を固めることを狙った明確なシグナルだと指摘。「国民党がこの戦略的な投票キャンペーンに成功すれば世論調査で同党候補の支持率が上がり、より接戦になることが予想される」と分析した」
国民党の侯候補は、テレビ司会者でメディア経営者の趙少康氏を副総統候補に選んだことで中国統一を明確にした。趙氏は、かつて国民党の立法委員だったが離党して、統一を強硬に主張する政党を共同創立した経緯がある。2021年に国民党へ復帰した。中国との統一を明確にした国民党は、国民の支持率をどこまで得られるか。
『日本経済新聞 電子版』(11月29日付)は、「微笑の習氏へ別れ際に拳、米中絡む台湾野合破局の大波」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙編集委員の中沢克二氏である。
(5)「北京と台北の政界の雰囲気を知る人物はこう見る。多くの台湾政局観察者が見落としている重要な事実があると指摘する。「重要なのは(2008〜16年の)馬英九(国民党)政権時代に重なる中国経済の最盛期が、終わろうとしていることだ。バイデンが米中会談の直後、あえて再び習を『独裁者』と呼んだように、(習への)権力集中が目立つ中国と、民主主義の台湾の距離も広がっている。仮に侯友宜、柯文哲が総統選で勝っても、(台湾の)世論を考えれば習政権に一気に近付くことなどありえない」。確かに中国経済の全盛期が終わり、なお停滞が続く深刻な状況下では、台湾経済がこれ以上、中国に依存する構造にはなりえない。むしろ、中国から他国に拠点を移す動きのほうが目立っている」
国民党出身の馬英九元総統は、中国経済全盛期に統一論を展開したが、現在の中国経済はバブル崩壊後遺症で大きなダメージを受けている。台湾経済自体が、「脱中国」の動きを強めているほどだ。こういう経済的に下降へ向う中国との統一論に台湾有権者は魅力を感じるか、という問題が指摘されている。
(6)「バイデンが「独裁者」と呼んだ習の中国と、民主主義が成熟しつつある台湾の政治的な基盤には大きな溝もある。中台関係は、習が中国共産党トップに就いてからの11年で、中国の思惑とは別の方向へ構造的に変化してしまったのだ。それでも、もし、中国と距離をおく民進党政権が3期目に入るなら、習は安心して内政に専念できなくなる。常に台湾けん制に気をとられ、喫緊の課題である中国経済の立て直しも「うわの空」になりかねない」
台湾有権者は、独裁色を強める中国と台湾の成熟化する民主主義と比較して、どちらに軍配を上げるかだ。前回の総統選では、直前に香港の中国化が持ち上がって民進党が勝利を収めた。中国の政治状況は、当時と全く変わっていないのだ。台湾有権者の選択が興味深い。
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2023-11-27 |




