北欧二ヶ国のフィンランドとスウェーデンが、NATOへ加盟申請した。ロシアは事前に、報復を仄めかしていたが、いまのところ無反応だ。米英は、ロシアが報復すれば防衛するとまで発言している。これでは、たとえロシでも静観せざるを得まい。このまま、騒ぎにならぬように祈るばかりである。
英紙『フィナンシャル・タイムズ』(6月5日付)は、「フィンランド情報機関長官『ロシア報復なし』に驚き」と題する記事を掲載した。
北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指しているフィンランドの情報機関トップが、同国のNATO加盟申請が現時点でロシアの報復措置につながっていないことに驚きを示している。フィンランドのNATO加盟には今のところ、テロ対処を巡りトルコが反対している。
(1)「フィンランド安全保障情報庁のアンティ・ペルタリ長官はフィナンシャル・タイムズ(FT)紙に対し、同国政府は東の隣国ロシアが干渉してくる可能性をなおも「警戒」しているが、ロシアはウクライナでの戦争で手いっぱいだと述べた。「かなり静かな状況で、このままであることを望むばかりだ」とペルタリ氏は異例のインタビューで語った。「何も起きていないのは良いことだ。しかしそれは同時に、我々が備えを固め、社会を守れるようにしてきたという証しでもある」と指摘」
ロシアが、北欧2ヶ国へ軍事的に無反応なのは、ウクライナ侵攻で勢力を削がれている結果であろう。北欧2ヶ国も多分、これを見越してNATOへの加盟申請をしたと見られる。
(2)「フィンランドはNATO加盟の是非をめぐる議論の間、そして正式に加盟するまでの数カ月間、ロシアのサイバー攻撃やハイブリッド攻撃を受ける恐れがあると身構えていた。フィンランドの当局者らは、NATOに加盟するという決定をロシアのプーチン大統領は容認したのではないかと期待を抱いているが、フィンランドに外国の部隊や核兵器を配備するかどうかといった決定に関して、ロシア側は影響を及ぼそうと考えているかもしれないと受け止めている。ペルタリ氏は「NATOへの加盟後、フィンランドがどのようなメンバーになるのかに彼らは関心を持っている」と語った」
ロシアが静観しているは、NATO加入後にフィンランドへ、NATO軍が駐屯するか否かを見ているとみられる。フィンランドでは、ロシアの懸念を払拭すべくNATO軍の駐屯を否定している。
(3)「フィンランドは、外国の部隊や核兵器配備に何らの関心を示していないが、同時に加盟申請したスウェーデンとは異なり、その可能性を排除してはいない。かつてフィンランドは、ソ連に対して慎重にコミュニケーションをとる戦略で知られたが、今はロシアについてもっと率直に語るようになっているとペルタリ氏は付け加えた。フィンランドのニーニスト大統領は5月、自身のロシアに対するメッセージは「これを引き起こしたのは、あなたたちだ。鏡を見てほしい」と、印象に残る発言をした。ペルタリ氏はこう続けた。「大きく変わることはない。備えを固め、国の安全を期す。それがフィンランド流だ。我々の決意は固いが、騒ぎ立てたりはしない」と」
従来のフィンランドは、ロシアに対して慎重な物言いであった。最近は、NATO加盟で気持ちも大きくなり、大胆な発言になっている。これが、普通の外交関係である。フィンランドは、これまでどれだけ萎縮していたが分るようだ。ロシアの圧力が、いかに大きかったかを物語っている。
(4)「フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に残る障害はトルコの反対だ。加盟申請前にニーニスト氏がトルコのエルドアン大統領と協議した際、エルドアン氏は「前向きに」検討するだろうと明言した。だが同氏はその後、フィンランドはテロリストの「ゲストハウス」で、トルコが敵視するクルド系武装組織、クルド労働者党(PKK)の活動に目をつぶっていると主張するようになった。フィンランドは現在、外相がトルコ製ドローン(小型無人機)の購入や武器売却の条件改善の可能性を示すなど、トルコ側の歓心を買おうと攻勢に出ている」
トルコが、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に反対している。両国が、トルコの敵視するクルド系武装組織を保護しているとの理由だ。トルコの反対は、外交的な駆引きとも見られる。いずれ、米国が中に入って解決するであろう。