勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済ニュース時評

    あじさいのたまご
       

    中国は、台湾の併合による「祖国統一」という悲願達成のため、中国の有力シンクタンク幹部が、「空想的」提案をした。台湾で、何者かが頼清徳総統を拘束し、中国側に治安要員派遣を求める事態を期待するというものだ。

     

    『時事通信オンライン』(7月23日付)は、「頼総統拘束で台湾併合?◇統一問題で中国研究機関幹部」と題する記事を掲載した。

     

    総統拘束は冗談のような話だが、中国が軍事作戦ではなく「治安行動」として台湾を制圧する案は目新しい。背景には、平和統一も武力統一も見通しが立たず、手詰まり状態にあるという認識の広がりがあるとみられる。

     

    中国のニュースサイト『観察者網』は7月10日、シンクタンク「中国・グローバル化センター(CCG)」の高志凱副主任が同4日に行った講演を映像で報じた。高氏は往年の最高実力者、鄧小平氏(故人)の英語通訳。習近平政権と密接な関係にある。7月10日は、台湾が中国の侵攻を想定した過去最大規模の軍事演習「漢光41号」を開始した翌日だった。

     

    (1)「高氏は講演で次のように語った。

    1)平和統一は見通しが立たない。武力統一はコストや代償が大き過ぎる。そこで、第2の西安事件(1936年の蒋介石拘束)発生に期待する。

    2)国民党政権の指導者だった蒋介石を捕まえて抗日を迫った張学良のような人物が台湾に現れ、頼総統を拘束。台湾内部の混乱を理由に、治安要員派遣を中国側に求める。中国は台湾の「地方政府」から要請を受けて、大量の治安要員を台湾に上陸させ、占領する。

    3)台湾メディアによると、台湾の識者からは「中国の台湾併呑(へいどん)手段は武力行使か降伏要求かという単純なものではなく、さまざまな強制手段があるということだ」「中国共産党の代理人が騒ぎを起こす可能性は確かにある」と警戒の声が出る一方で、「高氏は台湾や両岸(中台)の情勢について、よく分かっていない」と相手にしない人もいる」

     

    中国内部で、武力統一はコストや代償が大き過ぎる、という認識が高まっている。これは、日米豪比などが緊密な連携で抑止戦略を展開している結果だ。流血事件を未然に防げれば、抑止効果が出ている証拠だ。そこで編み出されたのが、台湾総統の「生け捕り作戦」という。なんともおかしなことを考え付いたもの。台湾統一とは、こういう低レベルの話なのだろう。

     

    (2)「中国のインターネット世論は総じて好意的ながら、「考えが甘い」との批判意見もある。この件を巡る議論は言論規制の対象になっていないようだ。高氏が名前を挙げた張学良は、日本軍が爆殺した旧満州(中国東北地方)の軍閥、張作霖の息子。蒋介石の共産党討伐に不満を持ち、督戦のため西安に来た蒋を拘束して、内戦停止と抗日断行を迫った。蒋は解放されたが、この事件がきっかけで、後に第2次国共合作による抗日民族統一戦線が成立した。共産党にとっては、九死に一生を得た重要な出来事だった」

     

    中国には、こういう重要人物の拘束に前例がある。満州軍閥の張学良が、蒋介石を拘束した事件だ。これにヒントを得て、頼総統を「生け捕り」にしようというのだ。それにより、台湾統一を認めさせるとしている。幼稚な話である。

     

    (3)「興味深いのは、タカ派の高氏が平和統一、武力統一の両方について、実現は難しいと判断していることだ。確かに、中国より経済的に豊かで政治的自由もある台湾が、一党独裁の中国との統一に積極的に応じる事態は考えにくい。また、大部隊で海を渡る中国の台湾侵攻は、ロシアのウクライナ侵攻よりはるかに難度が高く、失敗した場合のリスクも極めて大きい。そもそも、習近平国家主席に台湾侵攻を決断・実行する政治力があるかどうかも、はっきりしない。最近の中国軍は、習派要人が次々と失脚して政治的混乱が続いているので、なおさらだ。もちろん、「平和統一を目指すが、場合によっては武力を使う」という中国共産党の基本方針は変わっていないし、今後も変わらないだろう」

     

    中国が、台湾統一を諦めないのは「メンツ」上のこと。中国の国際的評価を高めるには、台湾問題を解決しなければならないからだ。

     

    (4)「ただ、平和統一と武力統一の中間的方策は、中国の学術論文にも見られる。例えば、蘇州大学マルクス主義学院で中台関係を研究する王鶴亭教授は最近公表した「非平和的方式による祖国完全統一」に関する論文で、中国側の言う「台独(台湾独立)政権」「台独勢力」に対する手段として、軍事手段による殲滅(せんめつ)のほか、軍事的威嚇による統一強制や強度の低い軍事行動による統一促進を挙げた。また、海上封鎖についても、平時封鎖と戦時封鎖があると指摘した。平時でも、統一政策の一環として封鎖を実行する選択肢があるわけだ」

     

    中国は、台湾にこだわり続けることで、どれだけ西側諸国との摩擦を引き起しているか分らない。米中対立の根源は、台湾問題であるからだ。軍事的統一に拘り続ける限り、中国は、西側と対立して大きな経済的損害を被るだろう。中国の国力は、これからの人口減少とともに落ちていく。台湾武力解放は、ますます困難になろう。最後は、「生け捕り作戦」という非現実的戦術しかなくなるのだ。

     

     

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    「お大尽様」感覚で対応

    逆回転する「土地本位制」

    地方の暮し危機へ揺らぐ

    掛け声だけの「台湾侵攻」

     

    中国は最近、日本へ「融和シグナル」を送っている。日本人が、中国へ渡航する際に必要な短期ビザ(査証)は、11月30日から免除された。従来は、期間15日間が30日間へ延長する「厚遇」だ。中国人は、日本へ入国に必要なビザを免除されていない。一方的に、対日「ビザなし」へ踏み切ったのだ。

     

    これだけでない。自衛隊と中国人民解放軍の中堅幹部らは、11月27~28日まで、北京などで交流事業を始めた。自衛隊は、1等海佐ら13人が参加し、中国の陸軍や空軍の施設を視察した。また、米国のトランプ次期政権発足後の防衛政策などについて意見交換までした。

     

    中国はこれまで、日本に対してことごとく対決姿勢を取ってきた。昨年夏の福島原発処理水放出では、世界中へ「汚染水放出」と非難して回ったほどだ。この中国が、「ニーハオ」と急変し拳に変えて握手を求めている。日本への「戦狼外交」が突然、「微笑外交」へ変わった理由はなにか。それは、中国が経済的な苦境にあるゆえ当面、「敵の数を減らす」べく、戦術を転換したのであろう。

     

    中国が、対日姿勢を融和にする局面は、必ず米中関係が悪化したときである。「二正面戦争はできない」という理由で、米中対立の緩衝材として日本へ接近するパターン外交を取っている。米国次期政権は、トランプ氏復帰である。すでに、60%超の関税引き上げを宣言している。これとは別途に、米議会は中国への貿易で認めている「最恵国待遇」廃止に向けて動き出している。これが実現すると、北朝鮮やキューバといった敵対国と同様に扱かわれることになり、関税が大幅に上がる。中国にとって、死活的な問題になる。

     

    中国には、こういう差し迫った問題が起こっている。日本との関係が悪化したままでは、経済的にもさらに不安定状態となる。そこで、本心は別としても「ニーハオ日本」と言わざるを得ない局面へ落込んでいる。

     

    「お大尽様」感覚で対応

    中国は、習近平氏が国家主席に就任以来、「国家主義」が全面化している。国家に絶対的な優位性を認め、覇権主義をギラギラさせるようになった。周辺国へ軍事的な圧力を加えることに、「愉悦」を感じるかのごとき意図的な振舞を行っているのだ。この背景には、不動産バブルによるGDP成長率「10%平均」の高速成長が突き上げていた。「お大尽様」になったと錯覚したのであろう

     

    このバブル経済がひっくり返って、事態は180度の大転換だ。中国経済の基盤が崩壊したのである。習近平氏は、この思わざる成長経済の脱線で苦汁をなめさせられている。「ニーハオ外交」の裏にあるものは、背に腹を変えられない経済苦境なのだ。いま、「驕れるもの久しからず」の中国版に見舞われている。

     

    中国経済の「蹉跌」は、地方財政の主要財源に土地売却益を組み入れたことが原因である。いはば、「土地本位制」(学術用語でない)によって、地方政府の財源の2~3割を賄ってきたという異常性が、取り返しのつかない事態を招いたのである。

     

    中国3000年の歴史で、土地問題は最大の経済問題になってきた。土地公有制と土地私有制が交互に繰返されてきたのだ。公有制は、田畑が荒れ果てる弊害を生んだ。私有制は、土地集中性を招いて不平等の原因になった。こういう経緯から、辛亥革命(1911年)を指導した孫文は、土地の私有制を基本とし、値上がり分は100%課税する折衷案を提案した。毛沢東は、ありきたりの「国有制」を踏襲して、今日の結果を招く原因を作った。始皇帝以来の農本主義による「土地執着」性をあらわにした結果だ。

     

    今回の不動産バブル崩壊は、長い中国史において失敗した「土地公有制」の一環と位置づけられる。「歴史的失敗」へさらなる1ページを加えたのだ。この視点に立つと、今後の中国経済が致命的な打撃を受けることは不可避で、再び「私有制」が議論されるだろう。

     

    土地が、地方財政の主要財源になったことは、余りにも前近代的財政制度の欠陥を示している。土地を切り売りするという安易な財源調達方法が破綻した以上、この影響が長期にわたることは不可避である。本来であれば、安定した財源として固定資産税(不動産税)や相続税が代替すべきものである。中国は、共産党の古参幹部の子弟(紅二代・三代ら)の反対で、実施できない政治的弱点を抱えている。

     

    銀行でも不動産担保貸出は、時価の6割見当が限度になっている。不動産価格が不安定であるからだ。こういう不動産特有の「不安定さ」を無視し、中国は不動産のバブル化を前提にしたような財源対策を行ってきた。必然的に増える財政需要を、地価上昇分でカバーするという「バブル思考」は、不健全そのものである。中国財政が、地価下落を想定していなかったとすれば、なんとも奇妙な政府であると言うほかない。それだけに、正常化するまでの打撃は大きいのだ。(つづく)

     

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    台湾のTSMCが、中国の華為技術(ファーウェイ)製品に自社半導体が使われている事実を米国に通知した。米国は、中国に先端技術製品が流れ込むことを阻止している。今回の事例は、輸出統制が実際に困難であることを示した。同時に、中国では先端AI(人工知能)半導体が製造できないことも証明した。

     

    TSMCは、自社半導体がファーウェイの製品から見つかったのを受け、使われた半導体に関連した顧客へ出荷停止した。台湾当局筋が明らかにした。TSMCはこの顧客への出荷を約2週間前に停止し、詳しい調査に乗り出していた。TSMCは、「重要な警告事象」だと受け止めて米国、台湾の両政府に既に通知したという。同筋はTSMCが出荷を停止した顧客名を明らかにしなかった。『ロイター』(10月24日付)が報じた。

     

    ファーウェイが、自社名を偽って他社を窓口にして輸入を図っていたことは、中国の半導体技術の未成熟さを証明している。中国では現在、半導体を巡る誤報や詐欺事件が頻発している。半導体「低開発国」の悲哀を滲ませているのだ。

     

    中国では、先の国慶節にまつわる大型連休中に、中国が独自技術で回路線幅8ナノメートル級の半導体製造が可能な深紫外線(DUV)露光装備を開発したというニュースで盛り上がった。このニュースは、中国工業情報省の資料に含まれた中国製アルゴン・フッ素(Arf)露光装置に関する技術指標の誤読というお粗末な結果であった。そこには、「解像度65ナノメートル以下、オーバーレイ精度8ナノメートル以下」という表現がある。この「オーバーレイ精度8ナノメートル以下」を、8ナノメートル級の半導体製造が可能と早とちりした、笑うに笑えないミスが重なったのだ。

     

    中国当局は、この露光設備指標を公開し「意味ある技術的な突破口を開いた」と主張した。しかし、この設備は世界最高水準のメーカーであるオランダASMLが、2009年に発売した深紫外線(DUV)露光装備と同じレベルであることが判明。中国の半導体製造設備は、世界水準よりも15年も遅れであることまでばれてしまったのだ。となれば、ファーウェイが、自国製半導体を諦めて恥をしのんで、他国企業になりすましTSMC製半導体輸入へ手を染めた裏事情が解明できるのだ。

     

    こういう中国の内部事情を知らないメディアは、これまで中国先端技術を「絶賛」してきた。このメディアも今は、ファーウェイ同様に恥ずかしい思いをしているだろう。

     

    韓国『ハンギョレ新聞』(8月18日付)は、「ファーウェイの『驚くべき復活』、米国の制裁が結局足を引っ張る可能性も」と題する記事を掲載した。

     

    ファーウェイの自主開発したAIチップ「Ascend 910C」の性能は、エヌビディアが昨年披露した「H100」と同等の水準だと、同社が顧客会社に説明した。事実なら、先端AIチップの輸入が滞っている中国市場で、相当な売上を上げることが期待されるという評価だ。

     

    (1)「ファーウェイは、今年末に発売するスマートフォンの新作「Mate70」に5ナノチップを搭載すると知られていたが、最近7ナノに変更したという観測も提起されている。高い費用と低い収率が足を引っ張ったということだ。この場合、グローバルライバル企業の技術水準に追いつくことはさらに難しくなりうる。台湾の市場調査機関トレンドフォースは先月、「(ファーウェイが性能のために5ナノに固執するならば)相当なマージンを確保するのに困難を負うだろう」と分析した」

     

    5ナノ半導体を7ナノ半導体へ変更したなどと、真実まがいの報道である。現実には、15年遅れの半導体製造技術しか持っていないのだ。中国では、この種の「半導体詐欺話」が横行している。『朝鮮日報』(10月21日付)が報じた。

     

    中国国内では8月末、「中国版エヌビディア」と呼ばれた象帝先計算技術という画像処理装置(GPU)ファブレス設計業者が解散を宣言した。同社が開発したGPUは、エヌビディアどころか、ファーウェイのAIチップ「アセンド910」シリーズより性能が劣り、販路を見つからなかったという。

     

    北京左江科技も6月28日、データセンター内のサーバー効率を最大化するデータ処理装置(DPU)の開発で注目を集めたが、金融詐欺の疑いにより深セン証券取引所で上場廃止となった。顧客に販売したことになっていたDPUのほとんどが、同社倉庫に山積みになっていた。

     

    このように、中国では半導体にまつわる詐欺事件が頻発している。半導体技術未発達を証明している。

     

     

     

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    台湾半導体メーカーTSMCは、AI(人工知能)半導体が業績を押し上げており、さらなる好循環過程に入った形だ。これからの本格的なAI半導体需要増を見込んで、24年中に台湾で10カ所の工場建設に着手する方針を明らかにした。成熟半導体は、主として日本で生産する「分業体制」が浮き彫りになっている。

     

    『中央日報』(3月7日付)は、「『今年台湾に工場10カ所作る』、恐ろしい勢いで規模拡大するTSMC」と題する記事を掲載した。

     

    世界最大のファウンドリー(半導体委託生産)企業である台湾TSMCが積極的に規模を拡大している。TSMCは今年先端パッケージング工場を台湾西部の嘉義に建設するなど台湾に工場10カ所を追加で建設する計画を明らかにした。

     

    (1)「聯合報と自由時報など台湾メディアが7日に伝えたところによると、国家発展委員会(NDC)の龔明鑫主任委員(閣僚級)は、前日の立法院(国会)経済委員会業務報告でこうした内容を明らかにした。龔氏は業務報告で、先端パッケージング工場の嘉義科学団地建設に対し肯定的に認め「TSMCが人工知能(AI)半導体需要増加に足並みをそろえ北部・中部・南部地域などに建設する2ナノメートル工場、先端パッケージング工場など10カ所に達する」と明らかにした」

     

    TSMCは、AI半導体増産に全力を挙げる。台湾の北部・中部・南部地域などに10カ所の工場建設を行う。

     

    (2)「龔氏は、先月24日にTSMC熊本第1工場開所式と関連し一部で台湾の「シリコンシールド」(半導体の盾)が弱まるとの懸念が提起されるのと関連し「外部に移すのではなく内外で同時に工場を拡張するもの」と説明した。続けて台湾の土地の状況からすべての生産施設を台湾に残しておくことができず、14ナノ以上の成熟工程は海外に建設し最先端工程は台湾に残ると強調した。また、聯合報はTSMCが嘉義にチップオンウエハーオンサブストレート(CoWos)という先端製造工程を利用した先端パッケージング工場を建設する予定だと報道した」

     

    TSMCは、AI半導体を台湾で生産し、14ナノ以上の成熟工程は、海外に建設する工場で行う方針を明確にした。成熟半導体は、主として日本が担うものとみられる。TSMCは、日本で熊本第1工場に次いで、第2工場建設計画を発表した。将来、第4工場まで九州に建設すると報じられている。日台が、成熟半導体の世界的な供給基地になることは、確実な情勢である。

     

    (3)「この工場が今後異種半導体を垂直に積層して連結する3次元(3D)パッケージング工程に変貌する可能性もあると説明した。また、供給網関係者の話としてTSMCに1ナノ世代の製品生産に向けた工場が8~10カ所ほどさらに必要だと付け加えた。ナノは半導体回路線間幅を意味する単位だ。線幅が狭いほど消費電力が減り処理速度が速くなる。現在世界で最も先を行く量産技術は3ナノだ。2ナノ部門ではTSMCが概ね優勢なものと専門家らは評価している」

     

    TSMCが、「異種半導体を垂直に積層して連結する3次元(3D)パッケージング工程」を想定している。これは、いわゆる「チップレット」と呼ばれる分野である。これが、今後の半導体主流になるとされている。日本の国策半導体ラピダスが、この最先端分野の「チップレット」でTSMCと競争する体制を取っている。TSMCとラピダスは、潜在的なライバル関係になって来た。

     

    (4)「TSMCは、2月24日に日本で熊本第1工場開所式を行った。日本はTSMC第1工場設備投資額の半分近い最大4760億円の補助金を提供することにした。熊本県菊陽町に建設されたTSMC第1工場では12~28ナノ工程製品を1カ月に約5万5000枚(300ミリメートルウエハー基準)生産する予定だ。TSMCは年内に熊本県に第2工場建設も始める予定という。また、米アリゾナでも2つの工場を建設し積極的に規模を育てている。TSMCの株価はニューヨーク証券市場で143ドルを記録し、昨年10月末の84ドルと比較して約70%上昇した」

     

    TSMCは、最先端半導体は台湾で行い、成熟半導体を日本で増産するという「分業体制」を取る気配である。これは、日本にとって大きなメリットである。TSMCとは、協業しながら競争するという「使い分け」が求められる。

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    台湾総統選は、1月13日に投開票が行われ40%の得票率で民進党候補の頼清徳・副総統が当選確実となった。同日午後8時半(日本時間同9時半)過ぎに記者会見を開き、勝利宣言した。中央選挙委員会によると、午後8時(日本時間同9時)段階での頼氏の得票率は40.%。国民党・侯氏(33.%)、台湾民衆党・柯氏(26.%)をリードしている。

     

    中国は、一貫して国民党候補を支持してきた。それだけに、民進党の政権維持を口実にして、台湾へ露骨な経済的、軍事的な威圧を加速する可能性が指摘されている。台湾にとっての本当の試練はこれからでないかと見られる。

     

    米政府高官は1月10日、13日の総統選後に非公式の代表団を台湾に派遣すると表明した。具体的な時期やメンバーは「近く発表」としているが、この動きにも中国は神経を使っている。就任式の5月までの間に、中国は何を引き起こすか。外交・安全保障専門家の間では関心を集めている。

     

    中国が、民主的に選ばれた台湾の次期総統に対して、気に入らないという理由で圧力を加える事態があれば、自殺行為に等しい事態となろう。ロシアは、ウクライナ政権打倒で侵略戦争を始めた。習氏は、「熱い戦争」でなくても台湾へ経済制裁を加えるようなことがあれば、西側諸国との溝はさらに大きくなって、中国経済へ不利に働くことは間違いない。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月9日付)は、「台湾総統選が重要な理由」と題する社説を掲載した。

     

    台湾海峡は世界の戦略地政学上の火種の一つとなっているため、今回の総統選はいつになく重要な選挙だ。本土の中華人民共和国は数十年にわたり台湾を併合する決意を示してきており、習近平国家主席は中国政府の主張を一層強硬に訴えるようになっている。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、大きな独裁国家が規模の小さな民主主義の隣人を侵略したいとの誘惑に駆られる可能性があるもう一つの場所として、台湾に注目が集まっている。

     

    (1)「世論調査でトップに立つ与党・民進党の総統候補、頼清徳氏は、台湾の民主的な自治を声高に擁護するという民進党の伝統を受け継ぐことを約束している。頼氏は、任期が残りわずかとなった現職の蔡英文総統の下で副総統を務めている。蔡氏の政策は、米国などの同盟国と関係を強化する一方で、中国との関係を幾分冷え込ませるものだった。この問題に対する台湾の各党の姿勢には重要な差があるが、その差を誇張すべきではない。世論調査で2位につけている野党・国民党の侯友宜氏は、中国に対して、より融和的なアプローチを取ることを約束している。以前に国民党が政権を担った時には、中国との貿易関係が改善し、中国を刺激する可能性が高い発言が減るという特徴があった」

     

    総統選を争った3候補の共通点は、中国との統一を否定していたことだ。その意味では、誰が当選しても、台湾の政治的な位置に変化はないはずであった。それでも、習氏は国民党にテコ入れしていた。それが、有権者の反感を買ったことは言うまでもない。台湾の有権者は、高い政治意識を持って臨んでいた。

     

    (2)「侯氏の主張によれば、同氏も国民党も、台湾を中国本土と統合する政策は目指していない。侯氏は、中国と貿易・投資関係を改善して経済を拡大させながら台湾の民主的主権を維持する上で、自身が最良の候補であることを示そうとしている。第3党(民衆党)の柯文哲氏も同じ姿勢を示している。医師である同氏は、自身について、より実務型のアプローチによって民主的な統治の向上と台湾海峡情勢の改善を達成できる人物だと訴えており、同氏の新鮮な存在は若い有権者を引き付けている」

     

    第3党の柯文哲氏は、総統選終了後は柔軟に対応すると発言している。次期総統選を目指す意思が明らかであり、民進党への協力もあり得る余地を残した。

     

    (3)「予想通り頼氏が勝利すれば、中国政府は、台湾の有権者が中国共産党の意に従わない姿勢を示した際の常として、過剰なほどの怒りを示す可能性が高い。コメンテーターたちは、そのような選挙結果を(中国に対する)挑発行為であるかのように扱うかもしれない。中国は既に、世論調査で頼氏優位の流れが固まる中で、台湾上空に偵察用気球を飛ばすなどの威嚇行為を強めている」

     

    習氏は、台湾へ大人の対応をしないと西側諸国から低評価される危険性がある。経済的にますます追い詰められるのだ。

     

    (4)「中国共産党が侮辱と感じているものは、頼氏の政策ではない。台湾の有権者らは、緊張を高めようとして頼氏を総統に選ぶわけではない。中国語圏で民主主義の地域が繁栄できる実例としての台湾を、中国政府が容認できないことが問題だ。その民主主義の地では、有権者の投票が政治的意見の違いに決着を付ける。台湾海峡で衝突が起きるとすれば、そうした問題が原因となるだろう。投票所に向かう台湾の有権者たちは、そのことを知っている」

     

    下線部の指摘は重要である。習氏にとっては、同じ民族である台湾が民主政治で発展していることを認めがたいのであろう。「中国繁栄・米国衰退」と声高に叫んできた以上、台湾の繁栄を許せないとすれば、もはや言うべき言葉もない。

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