勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 台湾経済ニュース時評

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    台湾総統選は、1月13日に投開票が行われ40%の得票率で民進党候補の頼清徳・副総統が当選確実となった。同日午後8時半(日本時間同9時半)過ぎに記者会見を開き、勝利宣言した。中央選挙委員会によると、午後8時(日本時間同9時)段階での頼氏の得票率は40.%。国民党・侯氏(33.%)、台湾民衆党・柯氏(26.%)をリードしている。

     

    中国は、一貫して国民党候補を支持してきた。それだけに、民進党の政権維持を口実にして、台湾へ露骨な経済的、軍事的な威圧を加速する可能性が指摘されている。台湾にとっての本当の試練はこれからでないかと見られる。

     

    米政府高官は1月10日、13日の総統選後に非公式の代表団を台湾に派遣すると表明した。具体的な時期やメンバーは「近く発表」としているが、この動きにも中国は神経を使っている。就任式の5月までの間に、中国は何を引き起こすか。外交・安全保障専門家の間では関心を集めている。

     

    中国が、民主的に選ばれた台湾の次期総統に対して、気に入らないという理由で圧力を加える事態があれば、自殺行為に等しい事態となろう。ロシアは、ウクライナ政権打倒で侵略戦争を始めた。習氏は、「熱い戦争」でなくても台湾へ経済制裁を加えるようなことがあれば、西側諸国との溝はさらに大きくなって、中国経済へ不利に働くことは間違いない。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月9日付)は、「台湾総統選が重要な理由」と題する社説を掲載した。

     

    台湾海峡は世界の戦略地政学上の火種の一つとなっているため、今回の総統選はいつになく重要な選挙だ。本土の中華人民共和国は数十年にわたり台湾を併合する決意を示してきており、習近平国家主席は中国政府の主張を一層強硬に訴えるようになっている。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、大きな独裁国家が規模の小さな民主主義の隣人を侵略したいとの誘惑に駆られる可能性があるもう一つの場所として、台湾に注目が集まっている。

     

    (1)「世論調査でトップに立つ与党・民進党の総統候補、頼清徳氏は、台湾の民主的な自治を声高に擁護するという民進党の伝統を受け継ぐことを約束している。頼氏は、任期が残りわずかとなった現職の蔡英文総統の下で副総統を務めている。蔡氏の政策は、米国などの同盟国と関係を強化する一方で、中国との関係を幾分冷え込ませるものだった。この問題に対する台湾の各党の姿勢には重要な差があるが、その差を誇張すべきではない。世論調査で2位につけている野党・国民党の侯友宜氏は、中国に対して、より融和的なアプローチを取ることを約束している。以前に国民党が政権を担った時には、中国との貿易関係が改善し、中国を刺激する可能性が高い発言が減るという特徴があった」

     

    総統選を争った3候補の共通点は、中国との統一を否定していたことだ。その意味では、誰が当選しても、台湾の政治的な位置に変化はないはずであった。それでも、習氏は国民党にテコ入れしていた。それが、有権者の反感を買ったことは言うまでもない。台湾の有権者は、高い政治意識を持って臨んでいた。

     

    (2)「侯氏の主張によれば、同氏も国民党も、台湾を中国本土と統合する政策は目指していない。侯氏は、中国と貿易・投資関係を改善して経済を拡大させながら台湾の民主的主権を維持する上で、自身が最良の候補であることを示そうとしている。第3党(民衆党)の柯文哲氏も同じ姿勢を示している。医師である同氏は、自身について、より実務型のアプローチによって民主的な統治の向上と台湾海峡情勢の改善を達成できる人物だと訴えており、同氏の新鮮な存在は若い有権者を引き付けている」

     

    第3党の柯文哲氏は、総統選終了後は柔軟に対応すると発言している。次期総統選を目指す意思が明らかであり、民進党への協力もあり得る余地を残した。

     

    (3)「予想通り頼氏が勝利すれば、中国政府は、台湾の有権者が中国共産党の意に従わない姿勢を示した際の常として、過剰なほどの怒りを示す可能性が高い。コメンテーターたちは、そのような選挙結果を(中国に対する)挑発行為であるかのように扱うかもしれない。中国は既に、世論調査で頼氏優位の流れが固まる中で、台湾上空に偵察用気球を飛ばすなどの威嚇行為を強めている」

     

    習氏は、台湾へ大人の対応をしないと西側諸国から低評価される危険性がある。経済的にますます追い詰められるのだ。

     

    (4)「中国共産党が侮辱と感じているものは、頼氏の政策ではない。台湾の有権者らは、緊張を高めようとして頼氏を総統に選ぶわけではない。中国語圏で民主主義の地域が繁栄できる実例としての台湾を、中国政府が容認できないことが問題だ。その民主主義の地では、有権者の投票が政治的意見の違いに決着を付ける。台湾海峡で衝突が起きるとすれば、そうした問題が原因となるだろう。投票所に向かう台湾の有権者たちは、そのことを知っている」

     

    下線部の指摘は重要である。習氏にとっては、同じ民族である台湾が民主政治で発展していることを認めがたいのであろう。「中国繁栄・米国衰退」と声高に叫んできた以上、台湾の繁栄を許せないとすれば、もはや言うべき言葉もない。

    テイカカズラ
       

    台湾総統選は1月13日で目前に迫った。これまでの世論調査では、与党民進党候補が首位を固めている。中国はこういう事態を受けて、台湾へ圧力を強化しているのだ。

     

    台湾国防部は、昨年12月から複数回にわたり、台湾海峡で中国の気球を確認したと発表してきた。最近は、台湾本島の主要な空軍基地付近の上空に飛来したと報告している。国防部は、気球が中国による台湾に対する「グレーゾーン」戦術の一環で心理戦を仕掛けており、台湾市民の士気に影響を与えようとしていると分析している。国防部は、これまでに気球が主に気象観測用との認識を示していた。今回の声明は、グレーゾーン戦術の一環という見解に言及し、以前よりも強い内容となった。『ロイター』(1月6日付)が報じた。

     

    中国は、気球を台湾へ飛ばして無言の威嚇をしているのだろう。だが、こういう戦術は「吉」(国民党候補当選)と出るか、「凶」(民進党候補当選)と出るかは、台湾有権者の受け取り方しだいだ。

     

    『ロイター』(1月5日付)は、「13日の台湾総統選、与党勝利なら状況一変も」と題する記事を掲載した。

     

    台湾の1月13日投開票の総統選で与党・民主進歩党(民進党)が勝利し、前例のない3期目を迎えることになれば、世界的にも重要な意味を持つことになる。台湾を自国の領土と主張する中国は苛立ち、米中関係に悪影響が及ぶ可能性がある。

     

    (1)「総統選に立候補した3人の候補はいずれも、台湾の「現状維持」に努めると主張している。その解釈はそれぞれ異なるものの、多かれ少なかれ、台湾の正式な独立も中国との統一もない現在の中途半端な状態を表している。それが、長年にわたって台湾の平和を守る鍵となってきた。民進党候補の頼清徳副総統も現状維持の立場を堅持すると強調しているが、中国政府は頼氏を危険な分離主義者と見ている」

     

    中国は、民進党を毛嫌いしている。国民党に勝利させて、台湾を手近に引き寄せようという戦術である。ただ、国民党も「現状維持」を主張している。中国と統一しようというわけでない。こういう国民党が、国民の最終的な支持を得られるか。中国が、「エール」を送り過ぎると逆効果だ。中国の「気球」という脅迫がどう反応するか、である。

     

    (2)「2016年に民進党が政権を取った後、台湾と中国の公式対話は停止した。最大野党の国民党から立候補している侯友宜氏と野党第2党・台湾民衆党の候補である柯文哲氏は、より有意義な方法で中国と再び対話することができると主張している。中国の習近平国家主席が新年に向けた演説で中国と台湾の「統一」は必然だと述べ、中国が台湾周辺の軍事活動を強化するにつれて米国を巻き込んだ戦争への懸念が強まる中、対話再開は急務とされる」

     

    中国が、台湾へ軍事行動を起こすかどうかは台湾総統選と直接の関係はないだろう。中国が、勝てる戦争とみれば戦争に踏み切るに違いない。問題は、中国がそういう「大博打」を打って、國家経済が保つかどうかという点に関わる。

     

    (3)「市場は楽観的だ。台湾の主要株価指数は民進党が政権を握った2016年から2倍以上に上昇。海外勢の記録的な買いも入り、昨年は史上最高値圏で取引を終えた。当然ながら株価の好調は世界的な半導体企業TSMCの支配力に大きく影響されている。世界の半導体売上高の30%を占め、台湾の主要株価指数でも同様のウエートを占めるTSMCは、グローバルサプライチェーンのリスク回避を求める米国の要請に応え、2026年までにアリゾナ州で2つの製造工場を稼働させる計画だ。国民党はこうした決定は、中国との緊張を高め、台湾の産業を空洞化させるとして、民進党を非難。TSMCを選挙戦に巻き込んだ」

     

    台湾市場は、大統領選に関係ないという楽観論に立っている。中国経済の疲弊ぶりを把握しているからだろう。中国が、台湾侵攻できないほど混乱している実態を知っているに違いない。

     

    (4)「民進党は、中国との政治問題から離れれば、賃金の低迷や住宅価格の高騰といった若者の最大の関心事に対処できていない。彼らの票が、選挙結果を左右する可能性がある。1996年の台湾初の総統選以来、国民党と民進党の政権交代が続いており、両党ともに3期連続して政権を維持したことはない。今回の総統選で民進党が勝利すれば、台湾だけでなく世界の地政学にとっても、何もかもが一挙に変わる可能性もある

     

    下線部は、重要な指摘である。民進党候補が勝利を収めれば、習氏の立場が弱くなるので、これを跳ね返すべく「一芝居」打つという予想をしている。これは度が過ぎれば、米国のさらなる規制強化へ繋がる。だが、習氏としては何もしないわけにはいかない。何かを始めるに違いない。一波乱、起こるであろう。

    テイカカズラ
       

    中国政府は、言行不一致である。宗教はアヘンとして忌避しながら、台湾で航海・漁業の守護神として最も人気のある海の女神「媽祖」(まそ)信者を本土へ旅行させ、「共産主義」を植え込んでいる。巧妙なやり方だ。

     

    『ロイター』(12月25日付)「中国、台湾の媽祖信仰に触手 総統選への影響画策か」と題する記事を掲載した。

     

    来年1月の台湾総統選を前に、中国共産党が対中融和路線の政党支持へと世論を操作するため、台湾農村部の宗教団体との交流を活発化させていることが、台湾政府の文書と安全保障当局者らの証言で明らかになった。

     

    (1)「中国政府や共産党が運営する宗教団体、国営メディアのウェブサイトを調査したところ、中国のゼロコロナ政策が終了したのを受け、今年は台湾から中国への宗教的な旅行が増加している。そのうちの数十件は、海の女神「媽祖」(まそ)崇拝に関連するものだ。媽祖は航海・漁業の守護神として台湾で最も人気のある神で、1000万人の信者がいる。ロイターは台湾の安全保障文書5本を調査し、台湾の安全保障当局者5人、媽祖廟の指導者5人、アナリスト4人にインタビューした」

     

    中国には、本当の信仰は存在しない。来世を信じないからだ。代わって、長寿や金持ちという現世御利益を求めている。即物的である。中国人の行動の裏には、これがバックボーンになっている。中国には、西側諸国を納得させるという普遍的な価値観が存在しないのだ。

     

    (2)「その結果、中国共産党幹部が中国への旅行を補助するなどして宗教界の重鎮らと関係を築こうとしている実態について、これまで報道されてこなかった詳細が明らかになった。これに対し、台湾は媽祖信仰を含む中国本土・台湾間の宗教活動の監視を強化している。対中関係を担う台湾の大陸委員会の説明と、ロイターが閲覧した文書3本から明らかになった。台湾政府関係者5人によれば、中国は1月13日の台湾総統選および立法委員(国会議員)選を前に、対中関係強化を唱える政党への支持を高めるため、宗教関連の活動を行っている」

     

    中国流のやり方は、賄賂を掴ませて「帰順」させる方式だ。台湾でも、媽祖信仰信者を大陸へ招待旅行させている。「一帯一路」は全て、この「現ナマ主義」で相手を屈服させてきた。それが、膨大な不良債権になって中国を悩ませている。賄賂ブーメランに直撃されているのだ。

     

    (3)「ロイターが、今年10月に確認した諜報報告書によると、中国は国家宗教事務局などを介して台湾の媽祖信仰への影響力を確立してきた。台湾のキリスト教徒や仏教徒、道教徒にも関与する同事務局は、習近平国家主席が中国の対外的な影響力を拡大するための「魔法の武器」と呼ぶ共産党「統一戦線工作部」の管轄下にある。文書によると、少なくとも5つの台湾媽祖廟協会が6つの中国側団体と接触しており、その6団体は全て同事務局によって運営されている。ある文書は、中国と最も密接な関係があるこの信仰を、中国は世論操作活動の「軸」に据えていると指摘した。媽祖の起源は台湾海峡を挟んだ中国の福建省にあり、中国本土にも何百万人もの信者がいる

     

    媽祖信仰の信者は、高齢者であろう。現代信仰では、重要な「魂救済」という部分が完全欠落しているからだ。となれば、中国がいつまでもこの媽祖信者を利用することは不可能であろう。

     

    (4)「中国は、公式には無神論の立場だが、ロイターが調査した2020年と2016年の統一戦線の報告書によれば、統一戦線は長い間、民間宗教を利用して台湾の信者と関係を築いてきた。信者の多くは巡礼のために定期的に中国を訪れている。中国国営メディアは9月、媽祖関連の交流プログラムは台湾との「平和的統一」において「重要な役割」を果たしていると伝えた。台湾の大陸委員会はロイターに対し、中国との真の宗教交流は歓迎するが、統一戦線の「活動空間を縮小」するため、台湾の寺院への関与と監視を強化すると文書で回答した

     

    台湾側としては、中国の「高等戦術」には監視を強める必要があろう。

     

    (5)「中国は、台湾の与党・民主進歩党(民進党)と同党の総統候補である頼清徳副総統を危険な分離主義者とみなし、民進党への投票は中国との戦争に投票することに等しい、と訴えている。頼氏は一貫して世論調査で対立候補をリードしている。対中融和姿勢を採る最大野党、国民党の高官らも同様の表現を使ってきた。中国は対照的に「親中政党を支持することは平和を意味する」というシグナルを台湾の有権者に送っていると関係者の一人は語った。国民党は、中国とメッセージが類似していることについて問われ、民進党が中国との対話不足ゆえに台湾を戦争の淵に導いていることは「紛れもない事実」だと答えた

     

    野党の国民党は、中国との関係強化を認めている。中国と戦争をしないために交流が必要という立場だ。ならば、香港はどうか。中国に対してあれだけ従順であったにも関わらず、最後は「征服」されてしまった。中国外交の基本が、「合従連衡」であることを忘れていた結果だ。合従=同盟を壊し、連衡=一対一の関係に持ち込み征服するという手法だ。台湾に対しても米国との連携を断ち切らせて、「連衡」に持ち込み征服=統一を狙っている。西側諸国は、こういう中国の「伝家の宝刀」を知り抜いているのだ。

     

     

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    11月の米中首脳会談で、バイデン大統領は習国家主席へ「台湾総統選へ介入しないよう」に警告したが、中国は親中派の国民党候補へのテコ入れを行っている。台湾有権者にとって、中国経済低迷は「中台統一」の魅力低下を意味する。中国経済「繁栄」のメリット享受という宣伝が効かないからだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月14日付)は、「米中にらみ合いの台湾総統選、見える習近平氏の『焦り』」と題する記事を掲載した。

     

    「台湾に戻って投票をしてくださいね」。12月7日、中国・北京市。中国を拠点にビジネスを展開する台湾人「台商」を集めた会議が盛大に開かれた。台湾資本の企業152社、幹部約300人が呼ばれた会の主催者は習近平国家主席の側近で、台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室(国台弁)トップの宋濤主任だった。関係者によると、台湾総統選と同日に投開票のある立法委員(国会議員)選挙で、中国寄りの野党系の候補者への投票を呼びかけた。

     

    (1)「11月、台湾南部・高雄市の地方検察署は、最大野党・国民党の支援団体「中華泛藍協会」(高雄市)の会員らが、中国当局の費用負担で訪中し、接待を受けていたことを公表、22人を取り調べた。台湾当局は「露骨な選挙介入だ」と断じた。習近平指導部は、与党・民主進歩党(民進党)の総統候補、頼清徳副総統を「台湾独立分子」と敵視し、米国とパイプをもつ副総統候補で前駐米代表の蕭美琴氏には、これまで2度の制裁を科した。習近平指導部は与党・民進党の頼清徳氏の当選を警戒しているとみられる」

     

    中国は、国民党候補の当選へ向け露骨な干渉をしている。中国は、「国土安全保障法」を香港へ押し付けて、自由と民主主義を奪った前歴がある。こういう実態をみている台湾有権者が、統一論を簡単に受入れるか。大きな疑問である。

     

    (2)「一方で、中国人民大国際関係学院の時殷弘教授は「もし、総統選で国民党候補が当選すれば、中国の台湾に対する圧力は著しく弱まるだろう」とみる。なぜ習指導部はこれほどまでに、来年1月に控える台湾総統選を警戒するのか。中国共産党の動向に詳しい台湾の淡江大学の趙春山名誉教授は、そこには「習氏の焦りがある」と指摘する。台湾の総統は2000年以降、2期8年間を務めてきた。仮に頼氏が今回当選すれば、32年まで続ける可能性がある。習氏はその時80歳に近い。趙氏は「香港返還に道筋をつけた鄧小平の権威を、習氏は『中台統一』で急ぎ追い抜きたい。残された時間は決して長くないからこそ、台湾独立志向の強い頼氏の当選などは、決して受け入れられないはずだ」と話す。総統選後は、経済制裁と武力行使を組み合わせた強制的統一を迫るシナリオさえあるとみる」

     

    次回大統領選で、民進党が勝利を収めれば2期8年継続する可能性も出てくる。その時、習氏は79歳を過ぎている。気力・体力がともに衰える時期だ。こうなると、中台統一は夢に終わる。焦って当然であろう。

     

    (3)「米政府は、台湾総統選に中立的な立場を示し、表だったコメントは控えている。バイデン米大統領は11月15日に会談した習氏に対し、台湾総統選に「介入しないよう警告した」と明かした。無論、米は対中融和路線をとる最大野党・国民党ではなく、与党・民進党が政権を維持するのが望ましいというのが本音だ。米野党・共和党のマイケル・マコール下院外交委員長は日本経済新聞とのインタビューで、中国寄りとされる国民党について「本質的に中国共産党の操り人形(puppet)の候補だ」と強調する。「中国は『国民党は平和の党で、民進党は戦争の党であり、米国の操り人形だ』というデマも流している。中国が推す候補が今回勝てなければ、台湾封鎖も視野に入れるだろう」と警戒する」

     

    台湾有権者は、総統選が最終的に米国か中国いずれかを選択する選挙であることを認識しているだろう。「体制選択」であるのだ。

     

    (4)「米国では、親米派の頼氏の勝利を望む声が多い。ただ一方、頼氏は行政院長(首相)時代に自らを「(台湾)独立工作者」と話し、米国の警戒心を高めた過去もある。米シンクタンクのアジア・ソサエティー政策研究所のシモナ・グラノ氏は民進党の陳水扁政権時代を振り返り「頼氏が台湾独立を声高に主張し、(陳政権と同じ)イデオロギー色の強い姿勢をとれば、米国の利益に逆行し、台湾が得た国際的な支持を失いかねない」と警告する。台湾で暮らす人々の8割以上は「現状維持」を望む。習指導部は台湾統一に向け、武力行使を絶対に排除しない。新総統が米中の間で、かつてなく難しいかじ取りを担うのは間違いない」

     

    台湾の世論では、8割が「現状維持」である。それは、民進党候補を選ぶことに通じる。結果は、どう出るかだ。

     

     

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    韓国のハ韓悳洙(ハン・ドクス)首相は4月20日、6か月にわたり落ち込んでいる輸出について「産業の体質が変われば、多くの困難を克服することができる」と語った。漠然とした発言であり、その場限りの無責任なものだ。「産業の体質を変える」とは、何を指すのか不明である。世界経済の風向きが好転するのを待つほかないのだ。

     

    半導体市況は、2008年当時をに接近するほど悪化している。パンデミック下の「特需」(在宅勤務)が消えて、パソコン需要が大幅な落ち込みになっているのだ。最近のパソコンは、性能が一段と良くなっていることから、買い換え期間は延びる方向である。まずは、パソコン市況の回復が何時からになるのか。それを掴むことが第一予測になる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月20日付)は、「世界の半導体総崩れ 台湾TSMC 23年12月期は減収予想」と題する記事を掲載した。


    世界で半導体需要が急減し、各社は総崩れの様相だ。業界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は20日、2023年1〜3月期の純利益が前年同期比で2%増にとどまったと発表した。通期は減収となる見込み。韓国サムスン電子も大幅に利益を落としている。半導体は景気の先行指標とされ、足元の需要は今後半年間の景気を映す。世界経済の先行きにも不安材料を与える結果となった。

     

    (1)「TSMCの1〜3月期の売上高は3.%増の5086億台湾ドル(約2兆2400億円)で、純利益は2.%増の2069億台湾ドルにとどまった。売上高は1月に公表した予想を下回った。TSMCは同日、記者会見を開き、経営トップの魏哲家・最高経営責任者(CEO)は1〜3月期について「世界経済の低迷で需要が予想以上に落ち込んだ。特に中国が厳しかった」と述べた。魏氏は通期予想についても厳しい認識を示し、23年12月期は米ドルベースで「1ケタ台前半(1〜5%)の減収になる」と述べた。22年まで3年連続で過去最高の売上高と純利益が続き、急成長を遂げた状況から一変する。TSMCは、年間の設備投資について1月に公表した最大360億米ドル(約4兆8000億円)を据え置いた」

     

    TSMCは、1~3月期の業績落ち込みの理由として中国需要の予想外の不振を上げた。中国が業績不振の理由であれば、今後のカギは中国の動向次第ということだ。

     

    (2)「世界の半導体市場は20年から22年まで好調が続いた。約3年間は新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークなどが普及。パソコンを中心に未曽有の「デジタル特需」が生まれた。だが、コロナが終息に向かうなか、22年後半から次第に特需が消滅し、市況は一転、下り坂となった」

     

    20~22年は、パンデミック下の「デジタル特需」で異常な盛り上がりを見せた。その反動が、これから起こるのだ。

     

    (3)「TSMCのライバルの韓国サムスン電子は、1〜3月期の全社営業利益(速報値)が96%減の6000億ウォン(約600億円)にまで落ち込んだ。米最大手のインテルや韓国大手のSKハイニックスも22年10〜12月期に最終赤字に転落し、1〜3月期はさらに悪化した可能性もある。米マイクロンテクノロジーも23年2月まで、2四半期連続の最終赤字だ。サンジェイ・メロートラCEOは3月、「業界は過去13年間で最悪の不況に直面する」と説明した

     

    「デジタル特需」の反動で、過去13年間で最悪の不況に直面する、としている。「山高ければ谷深し」である。定石通の動きである。

     

    (4)「半導体は好不調の波(シリコンサイクル)が激しいのが特徴で、今回も現状では需要の底が見えない。世界半導体市場統計(WSTS)によると、世界全体の半導体売上高は2月、前年同月比で24%減となり、リーマン危機直後の08年末〜09年初に次ぐ下落幅となった」

     

    現在の半導体市況は、リーマンショック時と僅差まで接近するほど急落している。いかに、急落幅が大きいかを物語るのだ。サムスンも、ここまで落ち込むとは予想もできなかったのであろう。

     

    (5)「設備投資にも急ブレーキがかかる。国際団体SEMIは、半導体各社による製造装置(前工程)への投資額が23年に前年比で22%減の760億ドル(約10兆円)と、4年ぶりに前年割れとなると予測した。業界では年初、今回の半導体不況は年前半には収束し、次の成長サイクルに入るとの期待もあった。だが、最終製品の販売回復は予想以上に遅れており、パソコンの13月期の世界出荷台数(米調査会社IDC調べ)は前年同期比で約3割減だった。主要4社はそろって2〜4割の大幅減の状況にある」

     

    パソコンの需要が振るわない。この状況では、半導体市況が反応するはずがない。

     

    (6)「新たな需要のけん引役も見えず、TSMCの今回の予想以上の業績落ち込みで、ある有力サプライヤー幹部は「6月浮上論はこれでなくなった。本格回復は24年に持ち越しだ」と肩を落とした。台湾経済研究院の劉佩真アナリストも「世界経済がこの状況で弱いままなら、半導体市況の反転は年末までずれ込む。成長軌道に戻るのは24年以降になる」と予想した」


    TSMCの1~3月期の業績悪化が予想以上であったのは、半導体市況に回復要因のないことを示している。半導体市況が成長軌道へ復帰するのは24年へずれ込む。韓国経済には深刻な影響を与えよう。

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