米台は、中国による台湾侵攻へ対抗する準備を急ピッチで行なっている。これまで伏せられていた、台湾による射程2000キロのミサイルが、量産中であることが台湾国会議長によって明らかにされた。北京を射程内に入れており、中国が台湾侵攻すれば、北京が反撃の対象になるとしている。
韓国紙『WOWKOREA』(6月13日付)は、「『台湾ミサイルは北京に到達可能、攻撃は熟考すべき』 台湾国会議長が『警告』」と題する記事を掲載した。
台湾の游錫堃(ゆうしゃくこん)立法院長(国会議長)は、「台湾のミサイルは、中国・北京に到達することができる」とし、「中国は、台湾攻撃を熟考しなければならない」と語った。
(1)「游立法院長は12日、台湾海外網のオンライン演説で、北京を射程圏に置いた射程距離200キロメートル(注:2000キロが正確)の “雲峰”ミサイルについて言及し先のように語ったと、『自由時報』や『連合報』などの台湾メディアが13日報道した。游立法院長は、「陳水扁(ちんすいへん)総統の在任当時(2002年2月~2005年1月末)、雲峰ミサイルが北京に到達できるという事実を知っていた」とし「現在量産している」と説明した」
射程2000キロメートルのミサイル「雲峰」は、北京を反撃可能としている。「雲峰」は、2000年初期から開発されており、現在は量産過程にある。この事実は、これまで伏せられてきた。台湾が、自らの防衛に自信を見せている証拠と言える。
(2)「ただ、「台湾は、中国共産党に追いやられて台湾に退却した蒋介石のように、中国本土回復のための侵攻や、北京と三峡ダムを攻撃したりはしない」と明確にした。游立法院長は、「『全世界の民主主義国家たちは台湾を助け防衛に乗り出すだろう』という戦略的明確性をとり、中国に『台湾との戦争により、大きな代価を支払うことになる』ということをわからせなければならない」と語った。つづけて、「台湾には台湾海峡という
”天然の防壁”があるという点が、ロシアとウクライナの戦争とは異なる点だ」と強調した」
台湾は、妄りに中国へミサイル攻撃をしない、とも明らかにしている。三峡ダムを攻撃すれば、長江(揚子江)一帯が洪水で大惨事になるので、億単位の人命が損なわれる危険性がある。それゆえ、攻撃を控えると余裕ある態度だ。あくまでも、最小限の反撃に止める意向である。侵攻してくる中国軍は、水際で撃退できる準備をしているためだ。
『日本経済新聞 電子版』(6月13日付)は、「米、台湾への武器売却でミサイル防衛優先 中国念頭に」と題する記事を掲載した。
バイデン米政権は台湾への武器売却で、中国軍の上陸作戦の阻止に向けて効果的な兵器を最優先する。対艦ミサイルやミサイル防衛システムを優先対象に挙げた。月内に開く方向で最終調整に入った米台の戦略対話で議論を詰める見通しだ。
(3)「米国務省や国防総省が今年春、多くの米防衛大手が加盟する米国・台湾ビジネス評議会と会議を開き、台湾向けの武器売却の指針について説明した。日本経済新聞は会議記録の概要を入手した。概要によると、国務省高官らは会議で「非対称兵器」の売却を一段と優先していく方針を強調した。非対称兵器とは軍事力が大幅に異なる相手に対抗するための兵器で、①俊敏に移動できる②安価③侵攻作戦への対処に有効――などの条件を満たすとみられている」
ウクライナ軍が、ロシアのウクライナ侵攻で予想を覆して敗退させたのが、非対称兵器である。運搬自由で、攻撃後に直ぐ移動できる兵器である。中国の武器体系は、ロシア軍と同じであるので、台湾軍が非対称兵器を装備すれば十分に反撃可能と踏んでいるのだろう。
(4)「中国は、台湾上陸作戦の序盤で大量の精密ミサイルを使って攻撃する可能性が高いとされる。台湾軍はミサイル攻撃を避けないと上陸作戦に対抗できず、回避に必要な俊敏性がとくに重要になる。米政権は非対称兵器として対艦ミサイルや防空システムに加え、敵の動きを把握する情報収集システムや早期警戒システムを挙げた。台湾に購入を推奨する兵器やシステムのリストを作成し、20程度の具体的な兵器などを売却の優先対象として選定したようだ。戦闘機は非対称兵器には該当しないとみられている。滑走路が破壊されると使えなくなるからだ。米国はすでに戦闘機F16の売却を決めたが、新規の戦闘機売却のハードルは高くなるとみられる」
中国軍が、大量の精密ミサイルを使って攻撃する場合、台湾軍も北京を射程にしたミサイル「雲峰」で反撃するのだろう。攻撃を止めさせるには、敢えて行なう「三峡ダム攻撃予告」も中国を冷静にさせる有力材料であろう。
(5)「国務省高官は、「(非対称兵器に当てはまらない)他の兵器を拒否するわけではないが、台湾に対してこれまでよりも強くそれらの重点分野(の兵器購入)を促していく」と述べた。米国と台湾は安全保障担当高官が参加する「モントレー対話」を月内に米国で開く方向で最終調整している。関係者3人が日本経済新聞の取材で明らかにした。米国から台湾への武器支援が主要テーマになる。台湾が調達する兵器やシステムについて具体的な議論を重ねるとみられる」
米台間では、これから本格的な防衛システムが検討される環境になってきた。ウクライナ侵攻と中国の曖昧な態度が、これに拍車をかけている。
(6)「米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、中国が2027年までに台湾侵攻に必要な能力の取得を目指していると警鐘を鳴らす。バイデン政権内で台湾の自衛力強化に向けた時間は多くないとの懸念は根強い。オースティン米国防長官は11日、シンガポールで開いたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で演説し、台湾の自衛力向上への支援強化を打ち出した。その直後にモントレー対話を調整し、中国の抑止を目指す」
中国は、図らずも米台に防衛強化のきっかけを与えた。西側諸国がこぞって、台湾防衛に協力する体制を整えれば、逆に不利な状況へ追い込まれる。