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中国は、一帯一路の一環として中東欧16ヶ国へ経済支援を名目に接近し「16+1」を結成した。「1」は中国である。だが、大風呂敷を広げて多額の経済支援をすると約束したものの、履行されないままに終わっている。これに、リトアニアは強く反発しすでに昨年、「16+1」を脱退した。チェコも、脱退案の国会議決を済ませている。

 

リトアニアは、中国の人権弾圧にも抗議している。中国から圧力を加えられている台湾へ同情して、関係強化に動いていたが、この面でも中国と衝突することになった。リトアニアは昨年7月、首都ビリニュスに台湾の代表機関の設立を認めたが、中国はこれに反発して、駐リトアニア中国大使を召還した。中国がEU加盟国から大使を召還するのは初めてだ。リトアニアも駐中国リトアニア大使館を閉鎖するなど、険悪な関係に陥っている。

 


バルト三国は、ロシアのウクライナ侵攻に強く反対している。このロシアへ支援の声を送る中国へ「嫌悪感」を見せている。リトアニアやチェコ以外にも、「16+1」から脱退する国は増えるであろう。

 

『大紀元』(6月10日付)は、「チェコ、中国との『16+1』離脱を検討 リトアニアに追随」と題する記事を掲載した。

 

チェコは中国主導の中東欧16カ国との経済協力枠組「16+1」から離脱することを検討している。カタール国営メディア「アルジャジーラ」が8日伝えた。

 

(1)「報道によると、チェコ議会の外務委員会は5月中旬、離脱を求める決議案を満場一致で可決し、決議案を同国外務省と政府に送付した。対中強硬派のヤン・リパフスキー外相は離脱を支持している。リパフスキー外相はアルジャジーラに宛てた声明で、「16+1」の下で両国間の経済・外交上の協力、大規模な投資、互恵的貿易に対する中国側の約束は「10年経った今も果たされていない」とし、同国の「16+1」への加盟を「再検討する必要がある」と示した」

 


チェコ議会はすでに満場一致で、「16+1」からの離脱を議決した。10年前に約束した中国からの経済支援は、一つも実現されていない状況だ。これでは、敢えて「16+1」に止まっている必要はないわけだ。中国が、ロシアのウクライナ侵攻を精神的に支援していることも大きな要因であろう。バルト三国は、ロシアからの軍事的な圧力に悩まされているので、そのロシアと親密な中国とは相容れないというのだ。

 

(2)「中国が2012年に「16+1」枠組みの立ち上げを主導した後、中国と中東欧諸国の首脳はほぼ毎年会合を開催していた。2019年4月、ギリシアの加盟により「17+1」と名称変更した。21年5月、台湾問題を巡って中国との関係が悪化したリトアニアが離脱したことで、再び「16+1」となった。「16+1」離脱でチェコが中国から政治的、経済的な報復措置を受ける可能性があることに対し、リパフスキー外相は「16+1枠組みに参加していたとき、対中貿易赤字は深刻だった。だから、チェコは失うものがほとんどない」と答えた」

 

リトアニアは、冒頭に説明したような事情で対中関係が悪化している。よって、「16+1」(正しくは17+1)に止まる必要性はなくなり脱退したもの。中国は、リトアニアに対して経済制裁を科したが、EU(欧州連合)全体の支援を受けており、中国へ抗議する姿勢を強めている。現在、EUと中国の関係は新疆ウイグル族弾圧事件を契機に、一段と悪化しているので、中国が、リトアニアやチェコを単独で制裁できる状況でなくなっている。

 


(3)「報道によると、チェコでは昨年11月にペトル・フィアラ中道右派政権が発足して以来、同政権はゼマン大統領の中露など東側に接近する路線を修正し、西側諸国との関係強化に努めてきた。今年2月のロシアのウクライナ侵攻から、同政権はこの動きをさらに加速させている。リパフスキー外相は、「チェコの現政権は中国との関係を見直し修正する」「16+1を巡る取組みはその一環だ」とした。いっぽう、現在日本を訪問しているリトアニアのランズベルギス外相は7日、日経アジアのインタビューで、他の中東欧諸国に対し「16+1」から離脱するよう呼びかけた」

 

チェコは昨秋の政権交代で、西側諸国との関係強化に乗出している。中国との関係見直しが当然、進む環境になっている。リトアニアは、他の中東欧諸国に対し「16+1」から離脱するよう呼びかけている。中国は、思わざるところで足を掬(すくわれ)ている。傲慢で約束を守らない戦狼外交の破綻というべきだ。