トランプ氏が、今秋の米大統領選で復帰するかどうか。当の米国よりも米同盟国が警戒姿勢を滲ませている。これまでは、「もしトラ」であったが、「ほぼとら」というほどの警戒音を高めている。だが、トランプ氏が大統領へ当選するには大きな壁が立ちはだかっている。これまで集めた選挙運動資金は、裁判費用に大方使い果したという報道も出ている。米共和党の本流が、どこまでこの破天荒なトランプ氏を支持するのか。投票箱を開けてみるまでは分らないのだ。
『毎日新聞』(2月17日付)は、「ウクライナ、独仏と安保協定締結 10年間軍事支援 戦局好転狙う」と題する記事を掲載した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は2月16日、ドイツとフランスを訪問し、長期的な軍事支援を確保するための2国間の安全保障協定をそれぞれと結んだ。昨年7月に主要7カ国(G7)が提示した国際的な枠組みに基づく協定となる。ウクライナ軍はロシアの侵攻に対し、東部の要衝アブデーフカから撤退するなど苦戦を強いられており、支援を戦局の好転につなげたい考えだ。
(1)「ゼレンスキー氏はこの日、ベルリンでショルツ独首相と会談し、同国との安全保障協定を締結した。協定の期間は10年。ドイツはウクライナに現在進行中の軍事支援を続けるとともに、将来的な攻撃への抑止力を強化するための装備近代化に協力する。ショルツ氏はゼレンスキー氏との共同記者会見で、約11億ユーロ(約1780億円)の追加軍事支援を提供することも発表した」
ゼレンスキー氏は、ドイツ首相と10年間の安全保障協定を締結した。トランプ氏が、米大統領に復帰すれば、どのような事態が起こるか分らない以上、最悪に事態に備える。
(2)「この後、ゼレンスキー氏はパリを訪問。マクロン仏大統領と会談し、フランスとの2国間の安全保障協定にも署名した。仏大統領府によると、協定でフランスはウクライナに武器や訓練を提供するほか、2024年に最大30億ユーロの追加軍事支援を行うことを約束した。協定の効力はドイツと同じ10年間となる。ゼレンスキー氏はマクロン氏との共同記者会見で「野心的かつ極めて実質的な安全保障協定だ」と語った」
ゼレンスキー氏は、フランスへマクロン氏を訪問して10年間の安全保障協定を結んだ。ドイツと同じ内容である。欧州の安全保障は、NATO未加入のウクライナに対しても行うという強い決意である。
(3)「G7は昨年7月の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議にあわせ、長期安全保障の国際的な枠組みを提案する共同宣言を発表した。NATOは原則として加盟国以外に本格的な安全保障を提供しない。このため枠組みでは、西側諸国が2国間協定を通じ、ウクライナに対し持続的な軍事支援を図る。すでに英国も同様の協定に署名しており、これで英独仏の欧州主要3カ国が締結した」
NATOは、原則として加盟国以外に本格的な安全保障を提供しない。このため、西側諸国が2国間協定を通じ、ウクライナに対し持続的な軍事支援を図るものだ。すでに、英国もウクライナと2国間協定を結んだ。これで、仮に「ほぼトラ」でトランプ氏が復帰して、かき回してもウクライナ支援が空洞化しないように手を打ったところだ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月2日付)は、「EUがウクライナ支援を強化」と題する社説を掲げた。
欧州連合(EU)の加盟国首脳は1日、ウクライナに540億ドル(約7兆9000億円)相当の金融支援を提供することで合意した。この支援パッケージは、欧州が応分の貢献をしていないと常日頃主張している、米共和党内の対ウクライナ追加支援反対派への非難ともいうべきものだ。
(4)「支援の詳細確定には欧州議会の承認が必要だが、現在の案によれば540億ドルの支援は融資と無償資金援助で構成され、今後2027年までの期間に分割で実施する。ハンガリーのビクトル・オルバン首相が支援策に反対していたが、EU加盟国はこの問題を克服し、結局は全会一致で支援策を支持した」
EUが、トランプ氏の過激な発言に刺激され、ウクライナを自力で守らなければならないという結束力を強めている面もあろう。米国が支援しなければ、「ウクライナ敗北」となり、ロシアに新たな口実を与えるようなものになる。
(5)「支援のうち420億ドル余りは、ウクライナ政府が年金や教員給与といった基本的なものへの歳出によって機能を維持するのに役立てる。また、重点産業のリスクをカバーする特別投資措置の87億ドルも盛り込まれている。こうした支援はウクライナが生き残りをかけたロシアとの戦いを継続できるようにする点で、EUの戦略上の目的にかなう。ウクライナは今年、400億ドル超の予算不足に直面しており、同国の経済全般が破綻すれば防衛を続けることは一段と難しくなる」
ウクライナ財政を支援する形だ。ウクライナ経済が、侵攻によって破綻に瀕している以上、これを支えなければ、新たな国が同様な憂き目に遭いかねないからだ。