勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: NATO経済ニュース時評

    a0005_000131_m
       


    欧州は、米国との関係に苦悩している。米国がNATO(北大西洋条約機構)からの脱退を仄めかすからだ。仮に、米国がNATOから脱退したらどうなるか。欧州で、シミュレーションが行われている。当然、日本との関係強化が浮上する。すでに、NATO加盟国大使が5月、大挙して日本の防衛産業を視察した。日欧共同の武器生産問題である。このように、欧州は日本の関係強化に動き出している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(7月6日付)は、「日欧同盟はあるか 民主主義国の結束、戦争を防ぐ抑止力」と題する記事を掲載した。

     

    6月のG7首脳会議(サミット)は、欧州の米国不信が拭えず、事務レベルの奔走で辛うじて結束を保った。西側分裂という待ち望んだ敵失をロシアは見逃さない。中国との距離を縮め、過去の失敗を繰り返さないよう用心する。世論工作、サイバー攻撃、スパイ活動――。純粋な武力行使との境が曖昧なハイブリッド戦争を欧州に仕掛ける。

     

    (1)「ウクライナ侵略が長引き、ロシアの疲弊も伝わる。真相はどうか。著名な軍事史研究家でもあるリトアニアのアヌシャウスカス元国防相は警戒心を緩めるべきではないと説く。「いまのロシアの情報機関は冷戦期と変わらない。反対派の暗殺などの手口は同じで、工作員網の一部も引き継いだ」。次の展開はドローンによるインフラや弾薬庫の攻撃かもしれないとみる。むろん全面戦争の恐れも捨てきれない。悲惨な戦争につながる際限のない応酬は起こしてはならない。だからこそ侵略を思いとどまらせる抑止力が必要となる。米国が頼れぬなら、誰と組むのか」

     

    民主主義国にとって、同盟は安全保障の要である。NATOは、欧州の安全保障を束ねる「同盟軍」である。そのNATOが、米国脱退の恐怖に怯えている。中核を失うからだ。中核は、軍事的意味だけではない。経済的は心棒という意味でもあろう。国力のない軍隊では、基盤が弱いからだ。

     

    (2)「仮に米国が北大西洋条約機構(NATO)から抜けるなら、代わりは日本やオーストラリア」。そんな案を漏らす欧州の政策当局者が増えた。米国の後ろ盾を失えば日豪も欧州に近づくはずとの読みもある。欧州は中国も警戒するようになった。経済面でロシアを支える一方、レアアース(希土類)で経済威圧をかける。鉄鋼などの輸出攻勢を受ける欧州では対中貿易赤字も膨らむ」

     

    NATOには、米国の抜けた後のパートナーとして、日本や豪州を「候補国」に上げている向きもあるという。NATOが、直面する最大の敵はロシアである。そのロシアは、中国を後ろ盾にしている。となると、ロシア牽制には中国と対峙する日豪両国が最適というのであろう。NATOに日豪が加わると、中ロにとっては米国という最大の敵に加えて、新たな太平洋布陣が固まり挟み撃ちの状況が生まれることになる。

     

    (3)「欧州連合(EU)は、対中貿易を減らす政策を検討中だ。ドイツのメルツ首相はひそかにライヒェ経済相に電話をかけ、なおも中国ビジネスにこだわる自動車業界などのロビー活動に屈しないよう諭した。「欧州を守るため貿易制限はやむを得ない」。長年にわたって自由貿易を信奉してきた欧州中央銀行(ECB)にすら、そんな考えが浸透してきた。日本のように同じ試練を抱えるインド太平洋の国家とは組めるとの機運が急速に広がる」

     

    経済面では、EU(欧州連合)へTPP(環太平洋経済連携協定)が、「準加盟国」(それが可能かどうか検討必要)として参加することも必要であろう。これは、EUにもTPPの加盟諸国にも、市場の拡大になるというプラスが出てくる。

     

    (4)「ドイツの防衛最大手ラインメタルのパッペルガー最高経営責任者(CEO)は、Nikkei LIVE「欧州核心トーク」で、「民主主義や自由などの価値を共有する国が協力しなければならない」と訴えた。兵器の共同生産だけでなく、極東有事の際に欧州が支援することも念頭に置く。日欧とも戦後は平和を志し、多元主義と法の支配を社会の礎にした。それを覆すべきではない。目指すのは戦争の準備ではなく、戦争を未然に防ぐ連携だ。西側の分裂を待ち望む人に隙をみせてはならない。高市早苗首相が7日からのNATO首脳会議を欠席するのは機会損失になる」

     

    日欧が、防衛や経済の面でさらに協力関係を深める。現状は、そういう時代環境になっている。日欧が協力関係を深めれば、米国は欧州重視へ立ち戻るであろう。

    a0960_008527_m
       

    トランプ米大統領は21日、デンマーク自治領グリーンランド領有に反対する欧州諸国に追加関税を課すとしていた方針を撤回するとともに、グリーンランドの取得に「武力は使わない」と言明し、同地の将来について北大西洋条約機構(NATO)と大枠の合意に達したと明らかにした。外電では、グリーンランドに米軍基地を増設することで合意した模様だ。将来、中ロのグリーンランド進出を阻止するというトランプ氏の願望が叶うようだ。

     

    『ロイター』(1月22日付)は、「トランプ氏、グリーンランド『大枠合意』 武力行使否定・関税撤回」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領は21日、デンマーク自治領グリーンランド領有に反対する欧州諸国に追加関税を課すとしていた方針を撤回するとともに、グリーンランドの取得に「武力は使わない」と言明し、同地の将来について北大西洋条約機構(NATO)と大枠の合意に達したと明らかにした。

     

    (1)「トランプ氏はスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)に出席。NATO同盟を揺るがし、新たな世界貿易戦争につながりかねないと懸念された過去数週間の強硬な姿勢を後退させた。トランプ氏はNATOが北極圏におけるロシアと中国の野望を阻止しながら、「ゴールデンドーム」ミサイル防衛システムと重要鉱物へのアクセスに関する自身の要求を満たす新たな協定を結ぶことができると述べた。ダボスでNATOのルッテ事務総長と会談後、記者団に対し、「誰もが満足する合意だ。これは長期的な合意、究極の長期合意だ。特に安全保障と鉱物資源に関して、誰もが非常に有利な立場になる」と語った」

     

    「大山鳴動して鼠一匹」とは、今回のような騒ぎを表現するに相応しい諺だ。同じ仲間同士の揉め事は、話せば分るのだろう。互いに頭を冷やした結果だ。NATOが、米国の要求を受入れ、形式的には「名」を取り、米国が「実」を取る妥協の成果であろう。

     

    (2)「NATOの報道官は、北極圏のNATO加盟7カ国が集団的な安全保障の確保に向けて協力すると明らかにした。「グリーンランドにロシアと中国が経済的にも軍事的にも足場を築くことがないよう、デンマーク、グリーンランド、米国の間で交渉が進められる」と語った。トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に、グリーンランドの将来についてNATOと大枠の合意に達したと投稿。「この理解に基づき、2月1日に発効予定だった関税は発動しない」と述べた。ただ、合意内容の詳細は明らかにしていない」

     

    トランプ外交には、「TACO」なる別名が付けられている。TACOとは、「Trump Always Chickens Out」(トランプはいつも尻込みして退く)の4語の頭文字をとったもの。初めにハッタリを掛けて相手を驚かせ、その後に後退するというパターンである。それでも、しっかりと成果を握ることで、譲歩し側もなんとなく「得をした気持ちになる」不思議な交渉術である。

     

    (3)「デンマークは、この問題はソーシャルメディア上ではなく、非公式の外交ルートを通じて処理されるべきだと指摘した。デンマークのラスムセン外相は公共放送DRに対し、「われわれにとって極めて重要なのは、(デンマーク)王国の一体性と主権、そしてグリーンランドの人々の自決権を尊重した上で、この問題を終わらせることだ」と述べた。ラスムセン氏は、ルッテ氏と協議したと述べたが、合意内容の詳細については明らかにしなかった」

     

    デンマークもグリーンランドも、譲歩した割にはすべてを失わなかったという安堵感が窺える。

     

    (4)「トランプ氏は、バンス副大統領、ルビオ国務長官、ウィットコフ特使にさらなる協議に参加するよう指示したと述べた。トランプ氏はダボス会議での演説で、グリーンランドの取得に「武力は使わない」と言明した。武力行使の可能性を金融市場が嫌気していたことを認め、姿勢を後退させた。「私が武力を行使すると考えられていたようだが、武力を行使する必要はない」とし、「武力は使いたくないし、使わない」と強調した。トランプ氏はこれまで度々、強硬な姿勢を打ち出した後に態度を軟化させてきた」

     

    NATO同盟国同士が、武力を使うなど想像もできない事態だ。最初からトランプ氏の「脅し」であった。それは分っていながら、「ことによると」という危惧の念が晴れたことは良かった。内輪揉めしている時間はない。中ロが、何を仕掛けてくるか分らないだけに、付け入る余地を与えてはならないのだろう。

    a0960_004876_m
       


    トランプ米大統領は16日、デンマーク自治領グリーンランドを米政府が取得する計画を支持しない国に追加関税を課す可能性に言及した。目標の実現へ関税引き上げをちらつかせ、経済力を武器に米国の領有に反対する欧州などに翻意を迫る狙いがある。

     

    この戦略は昨年12月、米国が2025 年の国家安全保障戦略を発表したが、西半球(南北アメリカ)では、米国の最優先利益を貫くことを宣言した。そのためには、中ロの影響力を排除して、米国覇権を再構築するというもの。冷戦後最大級の戦略転換を意味している。突飛にみえるグリーンランド買収事案には、西半球からの中ロ勢力の一掃という地政学的意味合いが込められている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月17日付)は、「トランプ氏、グリーンランド取得『反対国に関税上げも』 欧州に圧力」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領は、ホワイトハウスでの会合で「(米国による)グリーンランドの提案に従わない国には関税を課すかもしれない。グリーンランドは国家安全保障のために必要だからだ」と述べた。その後、記者団に「北大西洋条約機構(NATO)とグリーンランド問題で協議中だ」と明かした。「我々が手に入れなければ、国家安保に大きな穴が開く」と語り、全米防衛システム「ゴールデンドーム」構想とも連動していると唱えた」

     

    中国は、「近北極国家」を自称し、北極圏への影響力拡大を図っている。ロシアも北極圏における軍事・資源開発を強化中。米国はこれに対抗するため、グリーンランドを含む北極圏の支配権強化を模索していると考えられる。この米国の意図が、単なる領土拡張とみなされている。また、レアアース資源確保という説も流されている。トランプ氏は、全米防衛システム「ゴールデンドーム」構想と連動していると、安全保障政策を強調している。

     

    (2)「トランプ氏は、領有へ軍事行動も選択肢だと主張するほか、グリーンランド取得の申し出をデンマークが拒めば、関税を課すと示唆したこともあった。米国の方針に賛同しない第三国にも圧力の対象を広げ、米国に同調するよう促した。デンマークのラスムセン外相、グリーンランド自治政府のモッツフェルト外相は14日、米ワシントンのホワイトハウスで米国のバンス副大統領、ルビオ国務長官と会談した。米国へのグリーンランド売却を拒否する考えを直接伝えた」

     

    デンマーク政府とグリーンランド自治政府は、米国の買収提案を拒否する旨をホワイトハウスへ通告した。これで引き下がるトランプ氏ではない。これから、本格的な攻防戦が繰り広げられるであろう。純粋な意味での安全保障政策となれば、関連国が知恵を出すべき問題であろう。

     

    (3)「デンマーク政府は14日、グリーンランドやその周辺に展開する部隊を増強し、演習も実施すると発表した。NATO加盟国とも調整を進めており、欧州ではデンマーク支援に回る国が目立つ。フランスはデンマークの要請を受けグリーンランドに仏軍を派遣するほか、2月にグリーンランドに領事館を新設する計画だ。スウェーデンも自国軍の将校らを送ると表明した。ドイツやノルウェーの軍関係者も加わる。米CNNテレビが9〜12日に全米で実施した世論調査によると、米国によるグリーンランド領有への賛成は25%だった。トランプ氏が率いる共和党の支持層に限っても賛否が5割で拮抗し、無党派層の8割が反対した」

     

    NATO加盟国が、グリーンランドをめぐる管理で協議するという。グリーンランドの地政学的重要性から言って、当然であろう。円満解決を望みたいが、米国の世界覇権再構築という強烈な意図とNATOの意識をどのように調整するかだ。

    115
       

    米欧の政治家や識者の間では、第2次世界大戦の直前の状況に、現状が似てきたという指摘が広がっているという。ウクライナでは、ロシアによる侵略が続き、欧州にも準戦時ムードが漂っている。アジアでも朝鮮半島や台湾海峡、南シナ海の緊張が高まっている。中ロが手を結んで西側諸国へ戦いを挑むという説に現実性はあるのか。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月2日付)は、「2026年に世界は同時戦争を防げるか 第2次世界大戦の直前に類似」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙のコメンテーター秋田浩之氏である

     

    約80年続いた戦後が終わり、世界は「戦間期」に入った。ウクライナではロシアによる侵略が続き、欧州にも準戦時ムードが漂う。アジアでも朝鮮半島や台湾海峡、南シナ海の緊張が高まる。こうしたなか、米欧の政治家や識者の間では、第2次世界大戦の直前の状況に、現状が似てきたという指摘が広がっている。

     

    (1)「最も懸念されるのがロシアのウクライナ侵略が続き、欧州に戦火が飛び火していくことだ。ウクライナ停戦を実現しようと、トランプ米大統領は8月15日、ロシアのプーチン大統領と米国・アラスカで会談した。詳しいやり取りは一切、公表されていないが、失敗に終わったことは明白だ。会談後の共同記者会見で、プーチン氏はこう力説した。「ウクライナ問題の解決を持続的で長期的なものにするには、危機の根本的な原因をすべて取り除かなければならない」。ウクライナ領土の一部割譲をはじめとする要求を事実上、繰り返したに等しい」

     

    ロシアが、戦線を拡大させるか否かは継戦能力にかかっている。軍事専門家は、戦争だけを取り上げているが、肝心なのは「兵站線」である。安易な戦争拡大論は意味がない。ロシア経済は、「下り坂」である。今後は、大都市での徴兵もしなければならない。反戦論が一挙に高まる。こういう総合論で考察すべき問題である。台湾侵攻も、中国経済の「下り坂」で危機論は収まってきたのだ。

     

    (2)「ロシアは8月下旬以降、停戦実現に水を差すような言動を繰り返している。ウクライナのゼレンスキー大統領とプーチン氏の早期会談について、準備に時間がかかると指摘。停戦後のウクライナへの「安全の保証」に関しても、ロシア抜きの解決に反対する意向を示した。ウクライナの領土をさらに奪い、有利な条件を得るまで侵略をやめない姿勢とみられる。このままウクライナでの戦争が続けば、やがて欧州にも紛争が広がる恐れがある。北大西洋条約機構(NATO)の結束を崩そうと、ロシアが欧州にも攻撃する危険があるからだ。実際、欧州の情報機関の間では、ロシアによるNATO攻撃を警告する分析が相次いでいる」

     

    プーチン氏は、自分の仕掛けた戦争だから止められないだけだ。良い条件が出れば、明日にでも停戦するだろう。ウクライナが停戦しないから、戦線を拡大すればNATOも折れるだろうという駆け引きだ。本当に戦線拡大する経済能力はなくなっている。

     

    (3)「デンマーク国防情報局(DDIS)は25年2月、ロシアが今後5年以内に欧州で「大規模戦争」を起こす可能性を警告した。ドイツの対外情報機関、連邦情報局(BND)のブルーノ・カール長官も同年6月、独メディアに対し、ロシアがエストニアなどに攻撃を仕掛ける危険性を指摘した。考えられるのは全面侵攻ではなく、特殊作戦だ」

     

    ロシアが、エストニアなどに攻撃を仕掛けるのは、全面侵攻ではなく特殊作戦だ。それは、脅しである。この脅しに乗ってはいけない。

     

    (4)「エストニアなどをロシアが攻撃しても、NATOが直ちに集団防衛を発動し、ロシアに反撃することはない。核戦争の危険を冒してまで、ロシアと戦争すべきかどうか、NATO内で意見が割れる。結局、NATOは動けず、結束は失墜する……。仮にロシアがエストニアを攻撃し、NATOが反撃を見送ったとしても、ロシアと欧州が「戦争状態」に突入する可能性がある。対ロ強硬派であるバルト3国や英国、北欧諸国などが有志連合を組み、ロシアに軍事報復することが考えられる」

     

    肝心の米国は、黙ってみているのか。トランプ氏は、「自分が大統領であったなら,ウクライナ戦争を始めさせなかった」と豪語している。今度こそ、ロシアを鎮める番である。

     

    (5)「中朝からみれば、ウクライナでロシア軍が敗北することは受け入れがたい。中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相は7月、外国要人との会談で「(ウクライナで)ロシアの敗北を見たくない」と漏らした。仮にウクライナで敗北し、ロシアが崩壊したら、中朝は国際社会で深く孤立してしまう。逆にいえば、ウクライナでロシア軍が勝てば、支援国である中朝も勝利することになる。中朝ロの枢軸はさらに深まり、軍事的な結束も強まるに違いない。そうなれば、中朝ロはより強気になり、欧州とアジアの緊張が同時に高まってしまう」

     

    目下、ロシアへの経済制裁が強化されつつある。ロシア経済は、急速に悪化している。冷静に事態をみるべきだ。これまでの日経は、米中が台湾問題で取引する、としてきた。今度は、ロシアの戦線拡大論へすり替わっている。経済問題を抜きにした「戦争論」は、説得力を持てないであろう。

     

     

    a1180_012431_m
       

    ドイツ自動車業界が、10月29日に発表したレポートによれば、2035年までに自動車業界で14万人が失職する可能性があると指摘した。このレポートは、プログノスがドイツ自動車工業界から依頼を受けて調査したもの。ドイツの自動車業界は、2019年~2023年にかけすでに4万6000人が解雇されている。このペースが続けば、2035年までにさらに14万人の雇用が失われ、合計で19万人近くが失職するとしている。

    このようにドイツ自動車業界は、斜陽化の色彩を強めているが、ドイツ防衛産業が「好機到来」とばかりに自動車業界の解雇者の受入先になっている。NATO(北大西洋条約機構)は、ロシアの脅威に対抗すべく防衛費の対GDP費3%引上げ説が出始めている。こういう流れの中で、防衛産業の拡充気運が強まっている。

    『ブルームバーグ』(12月14日付)は、「ドイツ自動車業界の労働者、防衛企業が受け入れ-チーム丸ごと雇用も」と題する記事を掲載した。

    ドイツ自動車業界の労働者に、救いの手が差し伸べられている。同業界が苦境に立たされ、人員削減をまさに進めようとしている時、防衛産業は雇用を増強している。

    (1)「ミュンヘンに拠点を置くレーダーメーカーのヘンゾルトは、軍事関連の受注急増に対応するため自動車部品会社の2社からチームを丸ごと雇い入れる交渉を進めていると、同社のオリバー・デーレ最高経営責任者(CEO)が明らかにした。雇用するチームの人数は100人に上るケースもあるという。13日にブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じたデーレ氏は、「自動車業界の現在の苦境は、われわれにとってはまさにチャンスでしかない」と語った」

    ドイツの防衛産業は、ロシアのウクライナ侵攻後に設備投資に積極的に対応している。

    (2)「デーレ氏によると、今年に入りヘンゾルトは既に約1000人を採用し、ソフトウエアエンジニアから成るチームを加入させることになるという。採用交渉を行っている相手の自動車部品メーカーを明かすことは控えた。ヘンゾルトは来年も同程度の人員増加を見込んでおり、新たな提携やM&A(企業の合併・買収)の可能性に対しても積極的になる計画だと、同氏は述べた。他の防衛企業も労働者を受け入れている。戦車や弾薬を生産するラインメタルは6月、タイヤメーカーのコンチネンタルから最大100人の労働者を雇用する計画だと発表した」

    ヘンゾルトは、25年も1000人規模の採用を予定している。自動車業界の苦境を救う役割を担っている。

    (3)「ウクライナや中東での戦争が続き、トランプ米次期大統領が安全保障への強力なコミットメントを求める中で、欧州各国で国防支出は増加。防衛産業には強い追い風が吹いている。トランプ氏は欧州の同盟国に軍事費の負担増を迫っているが、各国の政治指導者らは資金を使って国内の企業や雇用を支援しようとしている」

    欧州防衛産業は、米国の次期大統領のトランプ氏がいかなる要求を出すか分らないので、先手を打って拡充策に出ている。

    (4)「欧州の自動車業界は、電気自動車(EV)の需要低迷と中国との競争激化で苦戦を強いられている。コンチネンタルやボッシュ、シェフラーなどの部品メーカーは、低迷の深刻化に伴い人員を削減した。コンサルティング会社のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、デジタル化とオートメーションで、現在の仕事上の役割が時代遅れになるため、ドイツの自動車業界では現時点で雇用されている77万人の人員は2030年までに12%減少する見通しだ。人員削減を模索するフォルクスワーゲンは、労働組合との緊迫した協議を続けている」

    EVへの転換は、自動車部品点数が大幅に減少するので人員整理が不可避とされている。それだけに、部品メーカーは早手回しに動いているのであろう。防衛産業は、これを「好機」とみて採用を積極化させている。







    このページのトップヘ