中国企業が、ベトナムに投資を進め、事業を拡大させている。同じ社会主義国で国境を接している両国は、領有権問題などを抱え複雑な関係だったが、トランプ米大統領による輸入関税引き上げという逆風が双方を急接近させている。
『ロイター』(12月13日付)は、「トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベトナム展開加速」と題する記事を掲載した。
中国通信大手の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)はベトナムで5G(第5世代移動通信システム)設備の供給契約を相次いで獲得。ベトナム当局は高速鉄道建設のための中国から融資を受けることを承認し、ベトナムの航空会社が中国国有航空機メーカー、中国商用飛機(COMAC)の中国製小型機を運航することを認可した。
(1)「アジア太平洋安全保障研究センターのアレクサンダー・ブビング氏は、ベトナムが中国に急接近する背景には、外交関係のバランスを取るという長年の方針がある可能性を指摘。一方で、この傾向が続けばベトナムは西側諸国との関係でリスクが生じ、「揺れる国」というより「分裂した国」になる可能性があるとの見解を示した。
ベトナムは、中国へ急接近している。この傾向が続けば、ベトナムは西側諸国との関係で「揺れる国」というより「分裂した国」になるリスクが高まっている。
(2)「米国が1990年代にベトナムへの禁輸措置を解除した後、ベトナムは米国系の多国籍企業や技術に門戸を開いた。一方で1979年の中越戦争や、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島の領有権争いなどを背景に、中国に対しては慎重な姿勢を保ってきた。ただトランプ氏による関税引き上げで米国との関係が悪化した間隙を突くように、中国の影響力が高まっている」
トランプ関税が、中国のベトナムに対する影響力を高めるテコになっている。一時的なことか、永続性を持つのか。注目点になっている。
(3)「ロイターのデータ分析と業界関係者への取材で、中国企業はこれまでは慎重だった技術の移転を約束し、ベトナムを単なる組立工場ではなく消費市場として捉える傾向が強まっていることが明らかになった。シンガポールのシンクタンク「ISEAS─ユソフ・イシャク研究所」の研究員、ファン・スアン・ドゥン氏は、このような変化はトランプ氏が課した20%の関税によって加速したと指摘。「ベトナム当局は米国の措置を懲罰的と受け止めて不快感を持ち、経済面で中国への依存度を高めることでリスクヘッジを図った」と分析する」
中国企業は、ベトナムへこれまでは慎重だった技術移転を約束し始めている。ベトナムを単なる組立工場ではなく消費市場として捉える傾向がみえる。中国市場の延長という理解だ。
(4)「トランプ政権の中国「デカップリング(切り離し)」圧力にもかかわらず、ベトナムの中国からの輸入は増えている。ベトナムの統計によると、2025年1―11月の中国からの輸入額は約1680億ドルと前年同期比で30%弱増えた。年間で過去最高だった24年通年の輸入額を既に大きく上回っている。輸入額のうち3分の1弱は電子部品で、これらの米国向け製品に組み込まれて再輸出される場合が多い。野菜や自動車などの消費者関連商品の輸入も増加している。若年層の反中感情が薄れつつあることが輸入急増を後押ししている。トランプ関税を受け新規市場開拓を進める中国の戦略のもと、中国企業がベトナム国内で競争を激化させている」
ベトナムは、中国輸出の「中継地点」になった。関税回避の一環である。こうなると、今度はベトンナムが、米国との関係悪化というリスクを抱える。
(5)「中国の小売業やIT大手もベトナム進出を加速させている。不動産会社CBREは8月、「24年終盤以降のホーチミン市の小売業の顕著な特色の一つは中国ブランドの進出と拡大だ」としてKKVなどのチェーン店の広がりを例に挙げ、首都ハノイでも同様の傾向が見られると指摘した」
中国不況で、中国資本がベトナムへシフトし始めている。
(6)「トランプ関税回避のための生産拠点移転を背景に、中国企業のベトナム投資がこの数年伸び続けている。ベトナム中国ビジネス評議会のスティーブ・ブイ会長は、ベトナム企業との合弁事業がより一般的になりつつあり、技術移転を伴うケースも出ていると話す。ブイ氏によると、機密契約を除くと同評議会に加盟する中国企業12社が2025年、ベトナムの協業企業に技術移転を実施または計画している。24年には全くなかったことからも、ベトナムに長期的に関与していることが現れていると言及した」
中国企業12社が2025年、ベトナムの協業企業に技術移転を実施または計画している。24年にはなかったことだ。中国企業が、腰を据えた進出であろう。





