中国は、国内経済の混乱への目を逸らさせるかのように、台湾へ向けて強硬発言を繰返している。「台湾独立」を叫んだ者は、最高刑で死刑を科すという極端なことを言い出した。一方で、習氏は建軍100周年となる2027年に向け、軍内部の反腐敗の徹底や能力強化を指示している。
この二つの動きを総合すると、どういう解釈ができるか。人民解放軍の士気が低下しているので、台湾侵攻が不可能であるという認識を持ち始めている。だが、これを幸いとして「台湾独立」を叫んだりまた画策する者は、最高刑で死刑に処すという脅しである。習近平氏も細かい細工を始めている。
『日本経済新聞 電子版』(6月21日付)は、「中国『台湾独立行為に死刑適用』、指針公表 頼政権威圧」と題する記事を掲載した。
中国の司法・国家安全当局は21日、台湾独立をめざす勢力による「国家分裂」行為を取り締まるための新たな指針を発表し、同日施行した。他国と接触して独立への賛同を求める行為などに対し、最高刑として死刑を適用する。
(1)「中国の習近平指導部は台湾が自国の一部という「一つの中国」原則を掲げ、台湾の頼清徳総統を「独立分裂分子」と敵視してきた。発足から1カ月たった頼政権を威圧する狙いがある。台湾当局の対中政策を担う大陸委員会は21日、「北京当局は台湾に対して一切の司法管轄権をもっていない。中国共産党の定める法律や規範は何の拘束力もない」とするコメントを発表した」
下線部のように、中国は台湾に対して司法管轄権を持っていない。なぜなら、台湾を統治していない結果だ。ただ、中国の感覚からすれば、南シナ海を中国領海と言い出し平然としているところをみると、「大真面目」にそう考えているのだろう。どう見ても、清国皇帝の感覚である。
(2)「指針は、最高人民法院(最高裁)、最高人民検察院(最高検)と公安、国家安全、司法の3省が連名で発表した。台湾の独立阻止などを目的とした「反国家分裂法」や刑法に基づき、処罰する行為や量刑の内容を定めた。住民投票や法整備により、台湾の法的な地位や「一つの中国」原則を変更しようとする行為を摘発すると明記した。台湾独立に向けた組織の設立や計画の策定、指示、実行も処罰の対象になる。主権国家でつくる国際機関への台湾の加盟を推進したり、「一つの中国」原則に反する教育や報道をしたりした場合も罰する。対象には「台湾を中国から分裂させようとするその他行為」という曖昧な内容も含まれる」
台湾は、最先端半導体技術を持っている國である。中国とは格が違うことを見せつけている。これが、世界における台湾の評価をぐっと押上げているのだ。中国は、こういう現実を忘れて「大言壮語」して力んでいるが、もっと冷静に振る舞えないのだろうか。頭へ血が上って、先が見えないような状況だ。
(3)「被疑者や被告人が中国外にいて不在の場合でも、起訴して裁判をできると定めた。刑法に基づきこうした行いに無期懲役または10年以上の懲役刑を科す。「国家や人民に対する危害が特に重大な場合」や「情状が特に悪質な場合」は死刑になる。台湾独立の主張や扇動に対しても、5年以下の懲役刑や刑事拘留を科す。犯罪が重い場合は5年以上の懲役刑になる。習指導部は5月20日の頼政権発足後、台湾への圧力を強めてきた。5月23〜24日には台湾全域を包囲した大規模な軍事演習を実施した。中国の海上警備を担う海警局も加わった」
国際司法裁判所に問うてみたいものだ。中国が、統治していない地域を取り締まる根拠があるかという問題だ。国家概念から言えば、領土・国民を統治して初めて国家を名乗れる。中国は、台湾を統治していない以上、中国の法律を適用できないのだ。こういった初歩的な知識からも外れているのだ。誰か、法的知識のある御仁は、中国に存在しないのか。
(4)「頼政権の後ろ盾である米国も敵視する。中国外務省は6月21日、米防衛大手ロッキード・マーチンの関連企業に中国国内の資産凍結などの制裁を発表した。ロッキード社の幹部らには中国との取引停止や入国拒否を打ち出した」
台湾海峡が騒がしくないのが、周辺国としての希望である。台湾もいきり立っている中国を刺激しないように、言動にはさらなる注意をしてもらいたい。それにしても、凄い隣人が現れたものだ。「中華帝国」の装いをして立ち上がってきた。「化外」(けがい)の台湾を蹴散らす勢いだ。