日本製の艦艇がオーストラリア海軍の次期フリゲート艦に採用される方向になった。総額1兆円規模となる初の艦艇輸出に道筋をつけたのは、過去の教訓を生かして相手国のニーズに応えながら売り込みをかける戦略だった。輸出によって国内防衛産業の育成に弾みがつけば、日本の防衛力強化につながる。
『日本経済新聞 電子版』(8月5日付)は、「日本製の艦艇を初輸出、ドイツに競り勝つ 官民一体で『弱点』克服」と題する記事を掲載した。
日本製の艦艇がオーストラリア海軍の次期フリゲート艦に採用される方向になった。総額1兆円規模となる初の艦艇輸出に道筋をつけたのは、過去の教訓を生かして相手国のニーズに応えながら売り込みをかける戦略だった。輸出によって国内防衛産業の育成に弾みがつけば日本の防衛力強化につながる。
(1)「日本は、2014年に「防衛装備移転三原則」を定め、一部の装備品に限り輸出の道を開いた。これまで完成品の輸出契約にこぎ着けたのはフィリピンへの警戒管制レーダーの1件のみ。攻撃能力を持つ自衛隊の主力装備品が外国に採用されるのは初めてだ。豪政府はフリゲート艦選定の最終段階で日本製の「もがみ」型護衛艦改良型とドイツ製に絞り込んでいた。競り勝った要因は豪州側のニーズに配慮したことだ。豪州が使う米製戦術ミサイル「トマホーク」などを搭載できるよう艦艇を共同開発する案を示した。ドイツの提案は欧州製の防空ミサイルを使用するものだった」
日米豪は、安全保障の「隣組」である。豪州は、この誼で今回の日本製艦艇を購入することになったのだろう。豪州は、安保で日本を最も頼りにしている関係にある。
(2)「コストにも気を配った。「もがみ」型の強みは運航に必要な人員数にある。ドイツ製の120人に対し、日本製は90人で済む点を強調した。防衛装備庁と三菱重工業の幹部は「乗組員を減らせるので全体でみれば安くできる」とプレゼンした。船体寿命や年間の稼働日数も日本製がドイツ製を上回った。日本は米国にも後押しを働きかけた。中谷元防衛相は3月のヘグセス米国防長官との会談で、豪州への艦艇輸出に支援を要請した。輸出する艦艇に米国製のミサイルを搭載するため、米国にも利益があると訴えた」
運航に必要な人員数は、ドイツ製が120人。日本製は90人で済む。これだけの差があると運航コストは日本が大幅に下がる。
(3)「官民一体でセールスをかけた背景には10年代の苦い経験があった。豪州から海上自衛隊の「そうりゅう」型潜水艦を輸出してほしいとの打診があったにもかかわらず、最終的に選ばれたのはフランス製だった。輸出経験がなかったため当初、豪州側の関心に即座に対応できなかったのが響いたというのが日本政府の敗因分析だ」
真相は、当時の豪州は中国と密接な関係にあった。中国スパイが、大量に豪州政界へ食い込んでいたのだ。この件が暴露されて以来、豪州の反中姿勢が明確になった。その意味では、潜水艦受注は記念すべき「中国スパイ」をあぶり出すきっかけになった。
(4)「この教訓を踏まえ、今回は豪側からの関心が表明された直後から官民で売り込みをかけた。海自訓練の機会に豪州側に艦艇の実物を見せた。製造する三菱重工は、現地に事務所を立ち上げた。日豪政府は26年初めに最終契約する。11隻の総額はおよそ1兆円で、日本の防衛産業にとって前例のない大規模な輸出の経験となる。
11隻のうち、3隻は日本で製作。残りは、豪州で日本協力のもとで制作する契約だ。
(5)「防衛産業は長年、顧客が自衛隊に限られ企業の成長分野になりにくかった。一時はやむを得ず撤退する企業も相次いだだけに、輸出拡大へのメーカー側の期待は大きい。三菱重工の西尾浩最高財務責任者(CFO)は5日の決算会見で「成約すれば非常に大きな防衛装備品の移転になる」と述べた。豪州の現地企業と艦艇の修繕などで既にやりとりを始めていると明らかにした」
日本は、防衛装備の輸出に厳格な制限を設けている。これが、国内兵器メーカーの採算を悪化させており、撤退企業を増やす結果になった。兵器輸出をしてコストを切下げることは、日本の防衛費切下げにも役立つのだ。
(6)「別の防衛関連企業の幹部は、「官民の連携がうまくいった成果ではないか。これが推進力となって(さらなる防衛装備品の移転が)進んでくれればいい」と期待を込めた。日本企業は防衛関連の海外展示会に出展するなど外国への売り込みを強めている。レーダー技術に強みを持つ三菱電機は防衛装備の海外輸出が「日本の防衛産業基盤強化や同盟国との連携強化に資する」と強調する。防衛産業は足元の利益率が上昇傾向にあるものの、企業には「いずれ防衛予算の伸びが鈍るタイミングが来るかもしれない。はしごを外されたら怖い」との懸念がある。その局面に備える意味でも、海外需要を取り込める環境を整えようとしている」
次世代戦闘機生産では、日英伊三カ国が共同生産する。サウジアラビアが、資金協力するという大掛かりなチームを編成する。これは、輸出面で大きな威力を発揮する。米国の了解済みのプログラムである。
(7)「さらなる販路開拓で課題となるのは防衛装備移転三原則の存在だ。攻撃用武器の海外供与を禁じるなど輸出できる装備品が限られる。「もがみ」型の輸出ができるのは日本の安保に資する共同開発・生産品であれば開発パートナーに提供できるとの例外規定に基づく。今回は安保上の密接な協力国で生産基盤も持つ豪州が相手だったため話が進んだといえる。相手国に生産基盤や余力がなく、自衛隊の攻撃用武器をそのまま輸出する際は三原則に抵触する。世界各地へ輸出するには縛りが厳しいというのが防衛産業の見方だ」
韓国は、武器輸出で成果を上げている。戦車は、ポーランドへ大量輸出した。低コスト・高パフォーマンスが評価されている。
(8)「自民党は5日、党本部で国防部会などの合同会議を開き、防衛省から輸出に関する説明をした党幹部は、「ニュージーランドは豪州が導入した装備品を購入する傾向がある。さらなる輸出に弾みをつけたい」と意気込みを見せた。NZ海軍も30年代にフリゲート艦の刷新を予定する。少人数で動かせる「もがみ」型への関心が高いとみられる」
NZも日本製フリゲート艦を輸入する可能性も出てきた。豪州とNZは、軍事面で密接な関係にあるので、これに期待しているもの。




