勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 豪州経済ニュース時評

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    セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、カナダの同業大手クシュタールから買収提案を受けて防戦中である。一方、豪州では日本式運営で2030年までに1000店舗(3割増)を目標に展開中だ。目玉は、日本同様に「食」である。店内には、焼きたてパンやフライドポテトの匂いが立ち込めているという。スーパーにも対抗できる品揃えを急いでいる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月27日付)は、「セブン、豪州で日本式コンビニ拡充 店舗3割増1000点にと題する記事を掲載した。

     

    セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、オーストラリアでコンビニエンスストア事業の拡大を急ぐ。日本式の運営ノウハウで食品や日用品を充実させ、2030年までに現在より約3割多い1000店舗にする。

     

    (1)「この店ができて生活が楽になった」。豪州北東部ブリスベン郊外の再開発地、ボーウェン・ヒルズの「セブンイレブン」を訪れた女性(38)はこう話す。1杯2豪ドル(約200円)以下のコーヒーを目当てに毎日通う。買い物は少し離れたスーパーではなく「セブンで事足りるようになった」という。同店舗は日本式のコンビニ運営を取り入れたモデル店舗として8月に開業した。注力したのは「食」だ。店内には焼きたてパンやフライドポテトの匂いが立ち込める。冷凍食品や日用品も増やした。ペットフードやトイレットペーパー、ストッキング、メッセージカードまでそろえる。280平方メートルの広さの店内で取り扱う商品は3074点と従来店舗の2倍だ。改装後の1日あたりの売り上げ(平均日販)は2割増えた」

     

    豪州では、生活費の高騰が深刻だ。スーパーやファストフード店と競合するようになっている。セブンでは、アプリを活用すれば1杯2豪ドル(200円)のコーヒーを1.50豪ドルで飲める。サンドイッチは5豪ドルからと値ごろだという。

     

    現状は120万人のアプリ会員をもつ。個人の好みに合わせたポイントサービスを強化する。デリバリーも2024年内に(全店舗の8割に相当する)600店舗で対応する予定だ。現状は1日あたり平均で16件のデリバリー注文があり、特に店舗が静かになる夜の時間帯の新たな収益源となりつつあるという。攻めの経営に徹している。

     

    (2)「豪州など海外のコンビニ事業を担うセブンイレブンインターナショナルの阿部真治取締役兼会長は、「どんな立地でも『近くて便利なあなたの隣にある店』というコンセプトは変わらない」と強調する。豪州には40平方メートル程度の小さな店舗も多いが、棚を高くしたり壁面を活用したりして3000商品を展開していくという。セブンは、豪州で現地企業に「ライセンス」を供与して「セブンイレブン」ブランドの店舗の運営を委ねてきた。現地企業を買収してセブンイレブンインターナショナルによる直接運営に切り替え、4月から改革を進めてきた」

     

    現地企業に「ライセンス」を供与する形では、なかなか日本式運営が難しいのであろう。そこで、セブン直営方式が効率経営を展開する上で必要なのだ。日本人でも、「我は」と思う人は現地で挑戦するのも良かろう。私は、シドニーへ行った経験しかないが、広大な場所である。

     

    (3)「阿部氏は、「立地選定で日本のノウハウを生かせる」と話す。豪州では立地選定の参考になる歩行者数や通過する車の数のデータをとっていなかった。今後は、日本同様に都市部で店舗を増やせるとみる。店舗数は、現在の800店舗弱から30年に1000店舗以上に増やす。都市部のほか、物流拠点と主要都市を結ぶ未出店地域で新規出店する。豪州のコンビニ市場規模は60億豪ドル(約6000億円)規模とされ、日本の1割未満にとどまる。セブンのシェアは、3割を超え首位で30年には45%以上まで引き上げる。ライセンス形式では、地元企業に運営を任せることで出店を広げやすいメリットがある。自前で店舗網を広げる場合は、人材確保や収益管理も課題となる

     

    豪州は、戦後の対日観が非常に悪かった。今は、大の「親日国」である。「対日親密度」は、78%である。米国の70%より高いほど。安全保障でも密接な関係を築いている。セブンは、こういう好条件を生かして行けば必ず道が開けるであろう。

     

    (4)「海外コンビニ事業は、コンビニ全体の売上高の約7割を占める。それだけに、今後のてこ入れが急務だ。セブンは、30年度までの目標として、コンビニを展開する国・地域の数を現在の20から30に増やし、世界の店舗数も現在より2割多い10万店にすることを掲げる。今後は、欧州や中南米、中東やアフリカなどで未進出の地域にも日本式コンビニを広げる。豪州での取り組みの成否は、今後のグローバル展開の試金石となる」

     

    セブンは、高収益路線の軌道へ乗せなければならない。日本国内の伸び代は少なく、海外展開に依存するほかない。豪州は、セブンにとって今後の試金石になろう。

     

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    中国と豪州は、12月22日で国交樹立50年を迎えた。だが、2020年以来、両国関係は悪化して冷却関係が続いてきた。豪州が、中国のコロナ発生問題の徹底調査を求めたことに中国が反発。豪州産品へ関税引上げを行い「嫌がらせ」を行なってきたもの。豪州は、これに怯まず中国への対抗姿勢を強め、中国包囲網の有力メンバー国として名乗り上げる結果になった。中国の経済制裁が、完全にボタンの掛け違いを招き、実質的に豪州に屈した感じである。

     

    中豪の国交樹立50年を機に、両国が歩み寄り豪州のウォン外相が訪問中国を訪問した。豪閣僚の訪中は2019年11月以来、約3年ぶり。中国外相の王氏は、会談で「初心に戻り、関係改善を進めよう」と呼びかけた。ウォン氏は「互いの違いを賢く利用すれば、2国間関係を発展させられる」と語った。

     

    韓国紙『中央日報』(12月22日付)は、「経済報復浴びせた中国、結局オーストラリアと和解」と題する記事を掲載した。

     

    中国とオーストラリアの修交50周年記念日となる21日、中国の王毅外相とオーストラリアのウォン外相が北京の釣魚台国賓館で第6回中豪外交・戦略対話を始めた。

     

    (1)「中国共産党機関紙『人民日報』が22日に伝えたところによると、今回の会合では両国間の祝電交換も行われ。習近平中国国家主席はこの日、オーストラリアのハーリー連邦総督に送った祝電で「中豪関係の健全で安定した発展は両国人民の根本的利益に合致し、アジア太平洋地域と世界の平和と安定、繁栄にもつながる。中豪全面戦略パートナー関係の持続可能な発展を追求することを希望する」と伝えた」

     

    豪州は、対中国外交で弱みを見せないことが重要であることを示した。毅然として対応し、逆に中国包囲網形成で一役買う外交姿勢を見せた。中国が、「ニーハオ」と歩みよらざるを得なくさせたのである。

     

    (2)「王外相の発言も7月にインドネシアのバリで行われたウォン外相との初めての会合と比較して大きく和らいだ。王外相は「過去数年中豪関係は困難と挫折に直面したが、われわれが望んだことではなかった。中豪は歴史的に積もった怨恨はなく、根本的な利害衝突もない」と強調した。両国は共同声明も発表した。282字の短い共同声明は「双方は安定して建設的な中豪関係の両国・地域・世界に対する重要性を繰り返し明らかにした。相互尊重、平等共栄、意見の違いの管理に基づいて両国関係、経済貿易問題、領事事務、気候変動、国防、地域と国際問題領域で対話と疎通を再開することに同意した」と明らかにした」

     

    豪州は、安全保障面で日本と密接な関係を築いている。日豪両軍の合同演習なども実施する程になっており、「準同盟国」になっている。

     

    (3)「オーストラリアは、中国との関係を正常化しながらも原則に基づいて対応するという、釘を刺す発言も忘れなかった。ウォン外相は会談後オーストラリア外務省公式発表文で「両国が意見の違いを賢明に処理するならばわれわれは2国間関係を進展させることができ、国益を維持できるとの観点を繰り返し明らかにした」と強調した」

     

    中国は、意見の違いを「制裁」という過激な手段で解決しようとしてきた。対豪州では、完全に失敗した。逆に、防衛面で包囲される立場に立たされている。

     

    (4)「アルバニージー首相もやはり「豪中関係には多くの共同の利益がある。だが処理が必要な意見の違いも存在する。意見の違いで両国関係を定義するわけにはいかないが、意見の違いは明らかで開かれた疎通の重要性を強調する」と19日に在中オーストラリア大使館サイトを通じて発表した豪中修交50周年慶祝寄稿文で指摘した。また「われわれは率直に両国間の意見を議論し、私はオーストラリアが常にわれわれの利益と価値観を基準としてことを処理するだろうと明確に明らかにした」と強調した」

     

    豪州は、経済行為と価値観は別であると一線を引いた。あくまでも、民主主義という価値観を守るとしている。中国に対する「静かな戦闘継続宣言」であろう。

     

    (5)「オーストラリアの「中国批判」に対し、中国はオーストラリア産ワインと麦に高率の関税を課し、石炭輸入を規制する経済報復に踏み切った。これにより2021年のオーストラリアの対中酒類輸出は2019年より95%、石炭は99.8%減少し、麦は100%減って輸出額がゼロを記録した。だがオーストラリアは中国に屈しなかった。米国、日本、オーストラリア、インドの4カ国により安全保障の枠組みであるクアッド、5カ国で機密情報を共有するファイブアイズ、原子力潜水艦技術を共有する新安全保障同盟のAUKUSの核心参加国として中国に対抗する「正面対抗モデル」を取った」

     

    中国は、豪州へ高関税を課したので、対中輸出はほぼゼロに近い状況になった。豪州は、この減少分を他国市場に振り向けて切り抜けた。中国に対抗するには、「正面対抗モデル」で乗りきれるケースをつくることになった。豪州は、原子力潜水艦建艦を契機に、精密工業の育成に乗り出す計画を立てている。

     

     

    ポールオブビューティー
       

    中国外交は、完全に有頂天になっている。中国の王毅外相は7月8日、悪化している豪州との関係改善を協議する場で、4点の要求を突付けた。米国の言いなりにならず、国内問題だけ考えていろ、というもの。豪州は、即座にこれを拒否したのは当然である。

     

    中国のこういった高姿勢は、外交交渉の常識に反したものである。豪州との関係改善を意図したものでなく、むしろ喧嘩を売っているようなものだ。豪州が、もはや中国と昔のような良好な関係に戻れないという前提であろう。それにしても、中国のこの無礼な態度は何であろうか。

     

    『大紀元』(7月12日付)は、「中国『関係改善に4条件』 豪州が一蹴『国益譲歩しない』」と題する記事を掲載した。

     

    豪州のアンソニー・アルバニージ首相は7月11日、中国が両国関係を改善するために挙げた4つの条件について、「応じない」とメディアに明かした。

     

    (1)「アルバニージ首相は、「オーストラリアは国益において譲歩しない」とする姿勢を示した。8日、インドネシアのバリ島で開幕した20カ国・地域(G20)会合の合間に中豪外相会談が行われた。近年、両国の緊張関係が続いていることを背景に、豪州のぺニー・ウォン外相は会談を「関係安定化のための第一歩」と評価した。中国の王毅外相は、摩擦の「根本的な原因」は、モリソン前政権が中国を「敵」または「脅威」とみなしていたことだと述べ、対応を改めるよう促した」

     

    王毅外相は、中豪関係の悪化原因がすべて豪州側にあるという立場だ。真相は、2020年の新型コロナの発症原因について、豪州が中国に原因究明を求めたことだ。ごく普通の要請だが、中国はこれに激怒して豪州に経済制裁を加え両国関係は悪化したもの。中国は、コロナの発症は中国に原因がないとして、一時は米国へ擦り付けるという情報操作すらしたほど。要するに、逃げ回っているのだ。

     


    (2)「具体的には、次のようなものだ。

    1)中国を敵対国ではなくパートナーとして扱うこと

    2)米国を念頭に「第三者の言いなりにならないこと」

    3)(両国の)共通点を見出すこと

    4)現実的な社会的基盤の構築と国民の支持の獲得に専念すること

    ウォン豪外相は8日の会談の冒頭挨拶で、中国外相に対し「オーストラリアの政権が変わっても、国益を守ろうとする我々の政策は変わらない」と述べた」

     

    上記4点のうち、2)と4)についてコメントしたい。

    2)「第三者の言いなりにならないこと」とは、相手国に対して最大の侮辱である。こういう姿勢で臨んだ王毅氏は、最初から関係完全が不可能と見ていることを示している。豪州は「クアッド」(日米豪印)の一員であり、軍事同盟「AUKUS」(米英豪)の当事国として、中国を標的にしている。豪州をここまで追込んだのは、中国の傲慢な経済制裁にある。

     


    4)「国民の支持の獲得に専念すること」とは、明確な内政干渉である。豪州は、外交問題よりも内政問題だけに専念していればいい。こういう中国の言分は、余りにも傲慢無礼な態度であり、「戦狼外交」そのものである。あの王毅氏の面相で、こういう発言をする時の雰囲気が伝わって来る感じだ。ちなみに、豪州のぺニー・ウォン外相は女性である。相手を「舐めた」感じも出ている。不愉快な話である。

     

    (3)「モリソン前政権の「中国を敵対国、ひいては脅威とみなす」ことが中豪関係を悪化させたとする王外相の主張に対し、モリソン前政権で貿易・観光・投資相を務めたダン・テハン氏は「現政権でもこの政策は継続していく」と述べた。11日、豪スカイニュースの取材に応じたテハン氏は、「オーストラリアは北京の要求を拒否し、国益にかなうことを続けるべきだ」と訴えた。さらに、「我々は自国の主権が侵害されない範囲内で建設的な関与を望んでいる」とし、「オーストラリアの立場は明確で変わっていない。変わったのは中国のほうだ」と同氏は付け加えた」

     

    豪州前政権で貿易・観光・投資相を務めたダン・テハン氏は、中国外相の発言に反発している。中国は、こうして「反中ムード」を高めるようなことを敢えて行なっている。それが、「大国の道」と誤解しているからだ。中国は、豪州との関係改善を完全に諦めていると見るべきだろう。

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