AI(人工知能)株が、軒並み高騰しているなかで警戒観もしきりに聞かれるようになった。これまでにない現象だ。豪州では最大の年金基金が、AI相場に警戒観を示すようになっている。AIクラウドが、利益を生むには先行き問題を抱えているからだ。一方、日本のラピダスが試作に取りかかっている「現場AI」は、日本政府が閣議決定した「AI基本計画」の中核技術として組込まれている。AI基本計画に、ラピダスの社名は全く出ていないが、その技術がはめ込まれているのだ。こういう底流からみて、豪州の最大の年金基金のAI相場警戒論には、技術論的根拠がありそうだ。
『フィナンシャル・タイムズ』(12月20日付)は、「豪最大の年金基金、AI相場に警戒 海外株比率を引き下げへ」と題する記事を掲載した。
米株式相場をけん引してきた人工知能(AI)ブームに失速の兆しが見え始めるなか、オーストラリア最大の年金基金は2026年に海外株式への資産配分を減らす考えを示した。
(1)「4000億豪ドル(約42兆円)の運用資産を抱える年金基金オーストラリアンスーパーの投資戦略責任者、ジョン・ノーマンド氏は、フィナンシャル・タイムズ(FT)に、米巨大テック企業の株価水準が過去と比べて割高になっているうえ、AI投資を賄う資金の借入比率(レバレッジ)が「急速に」上昇していると語った。M&A(合併・買収)やベンチャーキャピタル(VC)、新規株式公開などを通じた資金調達のペースも速まっているとみている」
豪州最大の年金基金運用者が、AI株へ警戒観をみせている。理由は、M&AやVC、新規株式公開など資金調達のペースが早まっていることだ。資金は、集まっても果実が生まれないのだ。
(2)「ノーマンド氏は、「来年(26年)はどこかの時点で上場株式への配分を減らす判断をすることになる。AIブームは成熟段階に入り、FRB(米連邦準備理事会)は27年に再び引き締めに向かう可能性が高い。この2つの流れが交わる局面がどこかで見えてくるだろう」。ハイテク株比率の高い米ナスダック総合株価指数は、23年に約43%、24年に約29%上昇したのに続き、25年も19%程度上がっている。一方、市場にはAI関連の設備投資が過熱し、一部企業の株価が持続不可能な水準に押し上げられているとの見方も出始めている」
AIブームは成熟段階に入り、FRB(米連邦準備理事会)が27年に再び金融引き締めに向かう可能性が高い、としている。米国は、トランプ関税による「スタグフレーション」(不況下の物価高)が起こるという前提に立っている。
(3)「米半導体大手エヌビディアの株価は4月、トランプ米大統領が「解放の日」と称して相互関税を発表した直後につけた安値から2倍に急伸し、年初来でも3割超上昇した。PER(株価収益率)は43倍に達する。米グーグルの親会社のアルファベットはおよそ6割上昇し、PERは30倍前後だ。世界の株価指数は米国株の比重が高く、特に巨大テックやAI関連企業などへの集中が進んでいる。「マグニフィセントセブン」と呼ばれる巨大テック7銘柄だけで先進国全体の株式の値動きを示すMSCIワールド指数の時価総額のおよそ4分の1を占める」
巨大テック7銘柄「マグニフィセントセブン」が、先進国全体の株高を演出している。これは異常なことで、この「突起部分」がいつ凹むかだ。
(4)「AI相場への慎重な姿勢は他の基金でも見られる。英国の複数の年金基金も、一握りの巨大テック株に一段と資金が集中してバブルのリスクがあると警戒し、米国株への資産配分を減らしている。他の地域への投資を増やしたり、株価下落に備えて防御策を強化したりしている。カナダ最大の年金基金、カナダ年金制度投資委員会(CPPIB)のジョン・グラム最高経営責任者(CEO)も12月、FTに対して米国株相場の「集中リスクを懸念し」、運用資産7775億カナダドル(約88兆円)のうち対米投資ではAI関連株の保有比率を「意図的に低く抑えている」と明かした」
AI相場への慎重な姿勢は、豪州の年金だけではない。英国の複数の年金基金も、一握りの巨大テック株に一段と資金が集中するリスクに警戒している。カナダ最大の年金基金も同様に警戒姿勢を強めている。
(5)「ノーマンド氏は、債券相場についても、市場は現在、27年のFRBによる利上げ幅を0.25%しか織り込んでいないため「足元に不安定さ」があると指摘する。過去の例では利下げ局面の後、翌年は通常、それ以上の利上げをすることが示されているという。「金利見通しが修正されれば、割高な資産が最も影響を受ける」とノーマンド氏は言う。「(それは)主にテック株やAI関連株になりそうだ。AI相場の終わりを意味するものではないが、リスクには十分留意する必要がある」と指摘する」
ノーマンド氏は市場が現在、27年のFRBによる利上げ幅を0.25%しか織り込んでいないと指摘する。スタグフレーションが、深刻化するという想定だ。27年の米国利上げ説が、早くも飛び出している点も気懸かりである。





