勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: スリランカ経済ニュース時評

    a0960_008567_m
       

    中国は、一帯一路の名前で新興国へ融資をしてきたが、相手国の発展を目指したものでなかった。中国の利益確保が第一目的である。その犠牲にされた第一号が、インド洋に浮かぶスリランカである。

     

    中国は、スリランカ指導者を籠絡し返済不能を知りながら、無駄な4車線高速道路や1500人収容の大会議場を建設させた。総事業費31億ドルをかけた港湾建設も、借金の担保に中国へ99年間貸与という形で取り上げたほど。中国が、途上国を食い荒らす典型例として、世界中へ報道されている。

     

    スリランカでは、外貨不足からエネルギーや食糧の輸入ができず、中国に籠絡された大統領は、国民の怒りで国外逃亡するという前代未聞の事態に陥っている。原因は、中国の私利私欲のためだ。温厚なスリランカ国民は、ついに中国へ怒りを向けるようになった。

     


    『日本経済新聞 電子版』(8月8日付)は、「
    スリランカ、中国『調査船』入港に延期要請 現地報道」と題する記事を掲載した。

     

    スリランカが中国の調査船を巡り、南部ハンバントタ港への入港延期を求めていることがわかった。スリランカやインドのメディアが報じた。調査船『遠望5号』は11日から17日までの停泊を予定している。中国船のスリランカ入りを巡っては、隣国のインド側から懸念の声が上がっていた。

     

    (1)「地元メディアによると、スリランカ外務省は5日に「本件についてさらなる協議が実施されるまで」入港しないよう中国に求めたという。それまでスリランカ政府は入港について補給目的と説明し、停泊を認める方針を示していた。スリランカは中国に対する債務の返済に行き詰まり、2017年にハンバントタ港の99年間の運営権を引き渡している。中国から借金をした結果、権益を奪われる「債務のワナ」の典型例と指摘されてきた」

     

    中国が、スリランカを債務漬けにし、担保としてハンバントタ港の99年間租借権を取り上げた。だが、皮肉なものでスリランカ政府の管轄下にある。ここへスパイ船と疑われている調査船を7日間停泊させるべく入港申請した。だが、隣接国インドの情勢を探る目的であると騒がれている。中国のやりそうなスパイ行為だ。

     

    中国は、インドと国境を巡って長いこと紛争が続いている。一昨年は、ヒマラヤ山中でインド兵20名が中国兵に殺害された事件が起こっている。インドが、中国に警戒感を強めるのは当然である。

     

    (2)「『遠望5号』は衛星などの観測任務を担ってきたというが、隣国インドのメディアは同船が中国人民解放軍の管理下にある「スパイ船」だと報じている。インド外務省の報道官は7月28日、『遠望5号』のスリランカ入りの情報について「インドの安全保障や経済的利益に関する全ての動きを政府は注視している」と述べていた」

     

    インド政府は、中国調査船を「スパイ船」と決め付けている。それなりの根拠があるのだろう。中国は、インドのスパイをするため、スリランカを「債務漬け」にしたとも考えられる。インドは、必死になってスリランカへ中国調査船の入港を阻止するように訴えているのだ。

     


    (3)「スリランカでは、大統領や首相を歴任したマヒンダ・ラジャパクサ氏のもとで、中国資本による開発が進んだ。最近までマヒンダ氏の弟であるゴタバヤ氏が大統領を務めていたが、22年に入って物価上昇などの経済危機に端を発した政権への抗議活動が激化。ゴタバヤ氏は7月に国外に脱出して大統領を辞任した。その後、首相や大統領代行を務めてきたウィクラマシンハ氏が大統領に就いた。ラジャパクサ兄弟が、「親中派」と指摘されてきたのに対し、ウィクラマシンハ氏は欧米やインド寄りとみられている。スリランカは中東・アフリカと東アジアを結ぶシーレーン(海上交通路)上の要衝にあたる」

     

    スリランカ経済は、中国の邪な考えで大混乱に陥っている。その恨みもあって、中国調査船の入港を阻止しようとしているのだろう。中国は、スリランカへ「極めつき」の悪いことをしてきたのだ。

    a1320_000159_m
       

    返済不可能な事態が、来ることを知りつつ貸し付ける。これが、中国式の国際高利貸し手法である。その犠牲になった国が、インド洋に浮かぶスリランカである。ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は13日に国外逃亡し、まだ正式辞任していない。

     

    豪奢な大統領官邸は、デモ隊に占拠され荒らされ放題になっている。ラジャパクサ一族は、20年弱にわたり中国の支援を受け、スリランカを支配してきたが、悲劇的な結末を迎えた。ウィクラマシンハ首相は同日、大統領代行として全土に非常事態を宣言した。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月14日付)は、「スリランカ債務危機、問われる中国の貧困国融資」と題する記事を掲載した。

     

    スリランカが新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期に多額の債務を抱え、同国の外貨準備が減少し始めた際、一部の当局者は、国際通貨基金(IMF)に救済を求めるべき時が来たと主張した。これは通常、痛みを伴う緊縮政策を含む政治的に厄介な措置だ。

     

    (1)「スリランカの現旧当局者によると、同国にとって最大の債権国である中国は、当面はIMFの苦い薬を使わず、債務返済のために新たな借り入れを増やし続けるという魅力的な選択肢を提示したという。スリランカ政府はこれを受け入れ、2020年と2021年に中国の銀行から30億ドル(約4110億円)の新たな融資を獲得した。この計画は今や破綻し、スリランカを混乱に陥れた。巨額の負債とインフレ高進により、同国は生活必需品の輸入に必要な米ドルを使い果たし、国民は燃料購入のために何時間も待たされ、主要都市は電力供給の維持に必死になっている」

     

    中国の責任は重い。スリランカは2年前、IMFへ救済融資を求めようとしたが、それを止めさらに資金を貸し続けたのだ。IMFから緊急融資を受ける事態になると、中国の法外な貸付実態が明るみに出る。それを恐れたのだ。

     


    (2)「スリランカ政府が、4月にようやくIMFへの支援要請を決定するまでに、同国経済は急速に悪化し、1948年の独立以来最大規模のリセッション(景気後退)が迫っていた。4月から5月まで暫定的にスリランカの財務相を務めたアリ・サブリ氏は「保有する限られた外貨準備金を活用して事前に債務を再編することはせず、準備金がすべてなくなるまで債務返済を続けた」と振り返った。同氏はまた、「現実的に考え、少なくとも実際より12カ月早く(IMFに)支援を求めるべきだった」と語った」

     

    スリランカは、残りわずかな外貨準備高を使って、債務返済の整理をすべきであった。それをしないで、最後まで債務返済し続けていた。返済相手は、中国であろう。中国は、追加融資して返済させる「高利貸し手法」を使っていた。スリランカは、中国の甘言に乗らず、1年前にIMFへ支援を求めるべきであった。中国は、国際高利貸しである。

     

    (3)「スリランカは約350億ドルの対外債務を抱え、アジア太平洋地域では1999年のパキスタン以来初となる国際的債務のデフォルト(債務不履行)に陥った。IMFとの交渉は、中国の融資政策が一因となったと批判される発展途上国の公的債務危機の解決に向け、中国政府が積極的に協力するかどうかの試金石となるだろう」

     

    中国は、多くの発展途上国を過剰債務へ落とし込んできた。中国の意向を無条件で受入れさせる目的であったのだろう。貸付資金が、確実に返済される見通しに立つ、堅実手法をとらなかったのだ。貸付け担保を最終的に抑える目的であろう。

     

    (4)「中国は(2000年代半)以降、戦略的な「一帯一路」構想を下支えするための巨額の貸し付けを続けている。世界銀行のデータによると、現在では、中国一国の低所得国に対する融資残高が、パリクラブ(注:西側諸国と一部のアジア諸国から成る主要債権国22カ国の非公式の集まり)の全参加国の低所得国に対する債務残高の合計を上回る中国は通常、西側諸国の常識を無視し、債務再編に対して型破りなアプローチを取る。西側諸国は、返済に困っている借り手の債務をこれまでと将来の歳入を基に、持続可能な水準にまで(債務を)減額すべきだと考える。中国政府は、借り手が当初約束した額の全額返済を求め、返済期限は延長するが、元本には手を付けないことが多い

     

    中国は現在、主要債権国22ヶ国を上回る債権残高を抱えている。中国の経済規模から言っても異常な貸付け状態である。これは、中国の貸付け目的が「担保目当て」にあったことを覗わせるに十分な証拠である。現に、返済不能国に対して債務減額措置を取らず、元本を必ず取り立てている。まさに、シェイクスピアの「ベニスの商人」顔負けの行為だ。

     

    (5)「スリランカのほか、中国から多額の融資を受けているアフリカのザンビアとエチオピアも、現在債務再編を行っている。ケニア、カンボジアやラオスを含む他の途上国も、中国からの融資で返済期限が近づいている債務比率が高く、エコノミストはそれらの国々が返済できるのかを不安視している。中国は、途上国の財政難の問題が拡大する中、これらの諸国にとって最も重要な債権国としての役割にどう取り組むのかについて、ほとんど何も述べていない一方、ときに債務再編の取り組みを妨げる動きに出ている」

     

    中国は、一帯一路で勢力圏を広げる手段で、発展途上国を狙い撃ちにした。だが今、これら諸国は経済危機に立たされている。中国にとっても貸倒れの危機になっている。 

     

    このページのトップヘ