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習近平氏は、夜も寝られない状況が続いているはずだ。国内では、4~6月のGDP成長率が前年比+0.4%とゼロに近い状況だ。国外では、弱小新興国がコロナ後遺症と観光客急減で多額の債務が返済できない事態を迎えている。これにより、中国が多額の焦げ付け債権を抱えるリスが発生している。

 

国際金融協会(IIF)が2月に発表したリポート「21年グローバル債務モニター」によると、中国債務は約7兆ドル増の60兆ドルである。GDPに占める割合は約330%だ。債務がこれだけ増えた主な要因は、中国が借金して新興国へ貸付けたことによるものだ。中国は、一帯一路で新興国へ勢力拡大図ってきた。皮肉にも、自らが「債務の罠」に嵌る事態になってきたのだ。

 


21年の新興国債務は、20年より8.5兆ドルも増え、95兆ドル超になった。新興国債務が、GDPに占める比率は約248%。コロナ禍前を20ポイント以上も上回る事態だ。債務は、増加スピードの速さが危険信号となっている。

 

新興国が、20ポイントも急増していることは、それだけ債務返済が困難になる兆候とされている。これは、中国の資金繰りを直撃することを意味する。中国が、新興国の債務整理で、先進国との話合いになかなか応じないのは「債権切り捨て」による損失を恐れているからだ。「国際高利貸し」中国は、大きな危機に立たされている。

 

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月15日付)は、「スリランカ混迷、途上国に迫る債務危機を暗示か」と題する記事を掲載した。

 

スリランカでは財政が破綻し、国家全体が大混乱に陥っている。パキスタンは国際通貨基金(IMF)から40億ドル(約5560億円)の緊急支援を受けたばかりだ。ガーナも支援策を仰いでいる。物価高に抗議する市民のデモは、エクアドルからチュニジアまで随所で発生している。

 

(1)「規模の小さい中低所得国を中心に、世界では今、金融・政治危機が連鎖的に発生している。新型コロナウイルス対策の原資を調達するため外貨建て債務を積み増してきたこれらの国々は、ウクライナでの戦争や借り入れコストの上昇を背景に、燃料・食料価格の値上がりで身動きがとれない状況に追い込まれている。IMFの分析では、途上国38カ国が債務危機に陥るリスクがある」

 


IMFの分析では、途上国38カ国が債務危機に陥るリスクがあるという。中国関連では、
スリランカのほか、中国から多額の融資を受けているアフリカのザンビアとエチオピアも、現在債務再編を行っている。ケニア、カンボジアやラオスを含む他の途上国も、中国からの融資返済期限が近づく債務比率が高い。エコノミストは、それらの国々が返済できるのか不安視している。

 

(2)「途上国では全般的に食料・燃料価格の値上がりによる痛みが広がっているが、最も懸念されるのは、外貨建ての借金を抱えるスリランカのような国で金融危機が迫っている兆候が出ていることだ。物価高とドル高が食料・燃料の輸入価格を押し上げ、自国通貨安と借り入れコスト上昇が債務返済コストを押し上げるという、ダブルパンチに見舞われている。インドやブラジル、メキシコといったより規模の大きい新興国は同じような問題には直面していない。国内市場などを通じて自力で資金調達できるため、ドル建ての借り入れを避けられる」

 

下線のような状況が起こっている。ドル高による新興国通貨の下落が、輸入物価を押上げている。これによって、弱小の新興国は逃げ場がなく、債務不履行という最悪事態に陥っている。この状態を救うには、債務の一部切り捨てによって身軽にすることだ。だが、中国はこういう案を拒否している。元利金を一銭もまけないで、返済期間の延長だけを主張しているのだ。この原因は、中国の貸付けたドル資金が、自己資金でなく借入れ資金の「又貸し」であるからである。「経済大国」ぶって貸付けても、その原資は借入金である。中国の貸付金利が、商業ベースであることも「又貸し」を裏づけている。

 


中国は、日本からODA(政府開発援助)で無償融資を受けていた。その資金を、アフリカで貸付けていたことが発覚、日本の激怒を買った事件がある。中国の「ノンモラル」ぶりを示す例である。日本は、2008年に中国への新規ODA供与を廃止した。最終的には、2022年3月をもって終了し、約40年間に3兆円をつぎ込んだ。

 

(4)「エコノミストはスリランカについて、教訓を与える事例だとみている。同国はかねて財政問題を抱えていたが、そこにコロナ禍に伴う観光収入の激減が追い打ちをかけた。そうした中、スリランカは支出削減を条件としない中国からの借り入れを膨らませた。だが、国際資源価格の高騰が引き金となって輸入代金の増加や4月のデフォルト(債務不履行)、制御不能なインフレ、食料不足、治安悪化を相次ぎ招いた。他国はスリランカほど深刻ではないにしても、同様に観光収入の落ち込みに見舞われたチュニジアなど、同じような苦境に追い込まれる事例が相次いでいる」

 

スリランカの財政破綻は、中国の担保乗っ取り目的で過剰融資したことが原因である。中国は、スリランカによる債務整理計画を取り止めさせ、さらに貸付ける「暴力金融」を演じた。中国がスリランカ大統領を抱き込み、自由に操った結果である。この大統領は、国外逃亡して辞任する醜態を演じた。中国のあくどさが100%出た事件である。

 


(5)「ザンビアが2020年秋にデフォルトの瀬戸際に立たされた際、中国政府は、ザンビアが債権国に既存の債務の削減を計画していると告げた後だったにもかかわらず、インフラ融資の返済を支援するための新規融資を提案しようとしていたという。事情に詳しい関係者らが明らかにした。2021年12月にIMF当局者がザンビア向け債務再編パッケージに合意した後、同国の対外債務の30%超を占める中国が正式な公的債権者委員会に加わるまでには何カ月も要した」

 

ザンビアのケースも、中国の高利貸し体質を示している。「追い貸し」をして融資返済させるパターンだ。スリランカもこれに乗せられて傷を深めた。中国は、あくまでも自国利益追求が第一の貸出である。したがって、IMFの債務削減計画にも応じない姿勢だ。元利金を守るのが、中国「高利貸し」のパターンである。怖い貸付である。