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インドは2年前の6月、中印国境で中国兵の急襲によって20名の兵士が犠牲になった。これ以来、中国への警戒姿勢を一段と強めている。すでに、ファーウェイ製品のインド販売を禁止している。これに加え最近は、対中国企業への新たな抑制方針を取っている。

 

インドは、クアッド(日米豪印)に加わる一方で、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・中国・南ア)のメンバーである。歴史的経緯から言えば、BRICSの結成が先でクアッドは一昨年だ。インドは、BRICSに所属しながらクアッドへ参加した形になる。

 

インドは、なぜこのような「二股」をかけたのか。中国との関係悪化への対応策である。クアッドは、暗黙裏に対中国戦略であることから、インドは日米豪の協力を得て中国へ対抗する構えだ。この意味で、冒頭に掲げた中国企業への抑制策は、規定方針に基づくものだろう。

 


『日本経済新聞 電子版』(7月19日付)は、「インド、中国企業締め出し 資産凍結や買収不許可」と題する記事を掲載した。

 

インドが自国市場から中国企業を締め出そうとしている。スマートフォン大手の資産凍結や、自動車工場の買収不許可といった動きが相次ぐ。一方、中国の対応は抑制的だ。ロシアとの協調にインドを取り込む狙いがあるとみられるが、中国側が受ける打撃は大きくなっている。インドと中国の関係が一段と悪化しかねない。

 

(1)「インド当局は7日、中国スマホ大手のvivo(ビボ)に立ち入り捜査を実施し、資産を差し押さえたと明らかにした。ロイター通信によると、マネーロンダリング(資金洗浄)に関する捜査の一環で、vivoのインド事業に関係する119の銀行口座から46億5000万インドルピー(約80億円)を差し押さえた。インド当局は、vivoのインド法人が同国での納税を回避するため、6247億6000万インドルピーを中国などに送金していたと主張している」

 

インド当局は、マネーロンダリングの疑いでvivoの銀行口座から約80億円を差し押さえた。

 


(2)「インド当局は、中国スマホ大手の小米(シャオミ)についても4月末、「不正な海外送金」に関連して555億ルピーを超える資産を差し押さえたと明らかにしていた。関係者によると、事業継続に必要な一部の支払いについては差し押さえられた口座での取引が認められているという。自動車産業にも影響は広がる。中国自動車大手の長城汽車は6月末、米ゼネラル・モーターズ(GM)のインド工場の買収を断念した。インド市場撤退を決めたGM201月に買収で合意したと発表していたが、長城汽車のインド事業代理人は「期限内に(当局の)承認がおりなかった」と明かす」

 

インド当局は、シャオミについても不正な海外送金の疑いで、555億ルピーを超える資産を差し押さえた。中国自動車大手の長城汽車は6月末、米GMのインド工場買収を断念させられた。

 

(3)「今回は、中国企業の締め出しがスマホなどにも広がった格好だ。背景の一つとして考えられるのは、インドの対中貿易収支の悪化だ。中国税関総署によると、インドの対中貿易赤字は21年に693億ドル(約9兆5000億円)となり、直近の10年では最大に膨らんだ。対中貿易赤字は22年1~5月も384億ドルで、前年同期を6割上回る。スマホ向けなどの電子部品の輸入が急増しているためだ」

 

インドはなぜ最近、矢継ぎ早に中国企業へ抑制的に動いているのか。中印貿易で、インドが大幅な赤字に陥っている結果、これに敏感に反応して中国へ否定的動きをしているというのだ。この解釈は、強引すぎる。牽強付会という趣だ。

 

真因は、中印の対立が激化している結果であろう。インドは、ロシアへの武器輸入依存を減らすべく、米英仏イスラエルと共同開発へ動いている。西側諸国は、インドを中ロから引離すべく秘策を練っているのだ。その成果が、次第に軌道に乗ってきたのであろう。今回のインドにおける一連の中国企業抑制は、インドによる中ロ離れの一環と読むべきだろう。

 


(4)「香港の調査会社カウンターポイントによると、インドのスマホ出荷台数に占める小米やvivoなど中国企業の製品のシェアは6割を超える。パソコンやテレビなどの市場でも中国勢の存在感は大きい。自動車分野でも格安の電気自動車(EV)で知られる上汽通用五菱汽車が23年前半、インドで現地提携先を通じ、新型EVの発売を目指す。これからもインド当局の介入が続けば、各社は戦略の見直しを迫られる」

 

インドは、中国企業のインドでの活動を規制しようとしている。その分、クアッドへ傾斜し始めていると読めるのだ。

 

(5)「中国の対応はこれまでのところ抑制的だ。「中国企業への頻繁な調査は経営活動を混乱させ名誉を損なう」。在インド中国大使館は5日、インド当局への不快感をあらわにした。中国外務省も「インドでの投資や経営に対し、公平・公正・無差別な環境の提供を望む」と主張するが、インド企業への目立った報復措置には踏み切っていない。中国はロシアと連携してインドを自陣営に取り込む狙いがあるとみられる。ウクライナを巡り、ロシアと日米欧が対立するなか、ロシアと協調する中国もインドとの正面対立は避けたい思惑を持つようだ」

 

中国は、中印国境でインドと厳しい対立を繰り返しながら、インドを自陣営へ引き込む戦略である。これは、インドを余りにも甘く見ていると言うほかない。インドが、これに屈するはずがないのだ。最終的に、インドはクアッド一員として中ロと対決する宿命だろう。それには、インドが武器輸入でロシアへ依存しなくて済む体制を確立することである。この体制が整ったとき、インドは名実共にクアッド一員になろう。