a1320_000159_m
   

中国は、米国覇権の向こうを張って始めた「一帯一路」戦略は、大風呂敷を広げただけで、

大きな岐路に立たされている。中国は、中東欧諸国で2012年に「16+1」枠組みの立ち上げを主導した後、中国と中東欧諸国の首脳はほぼ毎年会合を開催してきた。2019年4月には、ギリシアの加盟により「17+1」と名称変更したほど。

 

だが、21年5月リトアニアは、台湾問題を巡って中国との関係が悪化したことで離脱し再び「16+1」となった。中国は、リトアニアへ経済制裁を科し、リトアニアで生産した部品を組込んだEU製品の輸入禁止措置を発表した。EUが、すぐに中国へ抗議しWTO(世界貿易機関)へ提訴されている。リトアニアは、対中関係の悪化にもかかわらず、一段と台湾との関係強化に動いている。

 


リトアニアは、他のバルト三国のうち、ラトビアエストニアに対しても、前記の「16+1」からの離脱を呼びかけてきた。8月11日これら両国も、離脱すると発表した。リトアニアは、台湾を巡る対立が主因だが、ラトビアエストニアは、ウクライナへ侵攻したロシアを支持する中国への不信感が「16+1」離脱の引き金になった。

 

『ロイター』(8月12日付)は、「ラトビアとエストニア、中国と中東欧諸国の協力枠組みから離脱」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国を巡っては、台湾に対する軍事的圧力の強化やウクライナ侵攻を続けるロシアとの関係緊密化に西側諸国から批判が高まっている。ラトビア外務省は、対中協力の枠組みに引き続き参加するのは「現在の国際環境においてわれわれの戦略的目標にもはや合致しない」と述べた。同国とエストニアはいずれも、ルールに基づく国際秩序と人権を尊重しつつ、「中国との建設的かつ実際的な関係」に向けて引き続き取り組む考えを示した」

 

この記事では、いわゆる「きれいごと」だけで、真相を報じていない。ハッキリ言えば、バルト三国はNATO(北大西洋条約機構)加盟国であるが、何時ロシア軍の攻撃を受けるかも知れないと日々、懸念を深めている。中国は、こともあろうにこういうロシアを支援しているのは「言語道断」という怒りである。中国外交の二股が破綻したのだ。

 

チェコも「16+1」からの離脱を議会が検討している。

 


『大紀元』(6月9日付)は、「チェコ、中国との『16+1』離脱を検討 リトアニアに追随」と題する記事を掲載した。

 

チェコは中国主導の中東欧16カ国との経済協力枠組「16+1」から離脱することを検討している。カタール国営メディア「アルジャジーラ」が8日伝えた。

 

(2)「報道によると、チェコ議会の外務委員会は5月中旬、離脱を求める決議案を満場一致で可決し、決議案を同国外務省と政府に送付した。対中強硬派のヤン・リパフスキー外相は離脱を支持している。リパフスキー外相はアルジャジーラに宛てた声明で、「16+1」の下で両国間の経済・外交上の協力、大規模な投資、互恵的貿易に対する中国側の約束は「10年経った今も果たされていない」とし、同国の「16+1」への加盟を「再検討する必要がある」と示した」

 

チェコは、「16+1」へ参加したものの、中国側の約束は果たされていないとしている。中国は、「債務漬け」にできる弱小国へ集中して貸付けてきた。それは、めぼしい担保がある場合に限られる。チェコには、そういう中国の利益になる担保がなかったのだろう。「高利貸し」中国は、担保を狙っているのだ。

 


(3)「チェコが「16+1」離脱で中国から政治的、経済的な報復措置を受ける可能性があることに対し、リパフスキー外相は「16+1枠組みに参加していたとき、対中貿易赤字は深刻だった。だから、チェコは失うものがほとんどない」と答えた。報道によると、昨年11月にペトル・フィアラ中道右派政権が発足して以来、同政権はゼマン大統領の中露など東側に接近する路線を修正し、西側諸国との関係強化に努めてきた。今年2月のロシアのウクライナ侵攻から、同政権はこの動きをさらに加速させている。リパフスキー外相は「チェコの現政権は中国との関係を見直し修正する」「16+1を巡る取組みはその一環だ」とした」

 

中国経済が、これから顕著に低迷傾向を強めれば輸入も減る筈だ。中東欧諸国からの輸入は増えるはずもない。現在、アフリカで同様の問題に直面している。中国は、輸入を増やしたくないので、輸入障壁を高めるというWTO違反行為を堂々と重ねている。中国は、口で言うことと行なうことに大きなギャップのある国である。要注意国である。