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ロシアは今年7月11日以降、フィンランド国境近くに建設された液化天然ガス(LNG)施設で、相当量の天然ガスを焼却しているという。バルト海を通じてロシアとドイツを結ぶパイプライン「ノルドストリーム1」で、欧州へ販売予定だったものと推測されている。

 

ロシアが、ウクライナ侵攻さえしなかったなら、前記の天然ガスは欧州へ供給されていた筈だ。ドイツ外相は、「ロシアとはウクライナ侵攻前の状態に戻らない」と宣告。ロシアは欧州最大の「親ロ国」ドイツを失った。

 


米『CNN』(8月26日付)は、「ロシア、大量の天然ガスを焼却処理 欧州への供給分か」と題する記事を掲載した。

 

エネルギー調査企業「リスタッド・エナジー」は8月27日までに、欧州向けの天然ガスの供給量を厳しく絞っているロシアが1日あたり約1000万ドル(約13億8000万円)相当のガスを焼却していると推測する分析結果を公表した。

 

(1)「同社は放射熱の水準を調べた衛星監視データに基づき、ロシアは今年7月11日以降、フィンランド国境近くに建設された液化天然ガス(LNG)施設で相当な量の天然ガスを焼失させていると指摘。これらのガスは通常ならば、バルト海を通じてロシアとドイツを結ぶパイプライン「ノルドストリーム1」を経由して欧州へ流れるはずだったものだろうとも推察した」

 


ロシアの天然ガスは、パイプライン「ノルドストリーム1」を通じて欧州へ供給される筈だった。それが、ウクライナ侵攻によるEUとの対立でキャンセルとなって、仕方なく焼却処分にしていると見られる。

 

これまでのロシアと欧州の結合強化は、米国が危惧していたものである。ロシアには、2014年のクリミア半島侵攻以来、地政学的なリスクがつきまとっていたからだ。欧州はそれを軽視して、経済要因(エネルギー)だけで接近して、現在のような経済制裁を科し、自らも傷つくリスクを背負った。改めて、米国の「慧眼」に驚いているところだろう。

 


(2)「同社は先週公表した分析結果で、今月17日時点での欧州市場のガス価格が100万英国熱量単位(MMBtu)あたり67ドルだったことを踏まえれば、ロシアが燃やしているガスの量の価格は1日約1000万ドルと推定した。その量は、1日あたり約434万立方メートルで、年間ベースに換算した場合、16億立方メートルに相当。欧州連合(EU)全体のガス需要のうち約0.5%に匹敵するとした。焼却処分の理由は不明とし、今年後半に稼働予定の同LNG施設の試験操業の一環や組織内部での調整不足が原因の可能性などに言及。政治的な判断が絡むこともあり得るとした」

 

原油や天然ガスは操業が始まると、途中で井戸に蓋をして止めることができない宿命を負っている。一度、止めてしまうとそれ以降の生産に大きな障害を伴うという。ロシアにとって、欧州が天然ガス購入をキャンセルしたことで、代替販売先を確保できない限り、大きな損害になる。

 

(3)「リスタッド・エナジーは、燃えさかる炎は非常に鮮明であることからロシアと友好的な政治関係が戻った場合、欧州へ送ることが可能な準備を整えていることを示唆もしていると述べた」

 

ロシアが、敢えて焼却処分にしているのは、「いつでも供給できますよ」というゼスチャーに見えるという。だが、欧州最大の経済国ドイツは、ロシアへ厳しい姿勢だ。

 

米『CNN』(8月27日付)は、「ウクライナ侵攻前の世界情勢の復元は不可能、独外相」と題する記事を掲載した。

 

ドイツのベアボック外相は27日までに、ロシアによるウクライナ侵攻が半年の節目を迎えたことを受け、恒久的な変質を強いられた世界情勢はもはや以前の構図には戻り得ないとの認識を示した。

 


(4)「首都ベルリンでアイスランドのギルバドッティル外相と共に臨んだ記者会見で述べた。ベアボック氏は、ロシアのプーチン大統領は侵攻開始直前の2月23日の最後の転機でも数多くの話し合いの提案に応ぜず、自国を現在までこれまでにない長い闇夜の状態に陥らせたと主張。この間、悔恨の姿勢も見せず真摯(しんし)な交渉も持ちかけなかったとした。こういう情勢のなかで、仮に侵攻前の国際情勢の復元を求める声が出たとしても、その意図は十分に理解出来るが、かつての世界はもう存在し得ないと指摘。「過去半年で起きたことは元に戻せない」と説いた」

 

プーチン氏が、ウクライナ侵攻前に欧州主要国首脳との話合いで真摯に応じず、ドイツはロシアの開戦責任を鋭く追及する姿勢を見せている。具体的には、経済制裁の厳守だ。これまでの「独ロ」という親密な関係復元は不可能としている。つまり、ロシアからのエネルギー購入はあり得ないという強硬姿勢を見せている。ロシアのような「侵略国家」とは、関係を結ばないという絶縁宣言だ。

 


(5)「ベアボック外相は、「この残忍な侵略戦争がある限り、ドイツは軍事援助や自衛の権利を支える努力を続ける」と宣言。一方で、ドイツ自身もバルト諸国が直面している安全保障上の脅威などを認識し、自国の防衛能力の保持に努めると強調した。一方、ギルバドッティル外相もウクライナ支持の立場にあることを表明。ロシアには侵攻の説明責任があるとし、同国に目標を達成させてはいけないとし「ウクライナは勝利を収めなければならない」と訴えた」

 

ドイツは、ロシアという侵略国家が存在する以上、自衛力強化を行ない対抗する姿勢を明白にしている。ロシアは、エネルギー生産国として有利であるという従来通りの認識を持ち続けていれば、欧州から弾き飛ばされることは確実である。ドイツという「後ろ盾」を失ったのだ。