中国は、焦っている。国力が目に見えて低下していく現実の中で、いかに他国へ威圧感を与えるかに腐心している。これが、レアアース(希土類)の主権宣言によって、世界の製造業を支配下におさめるという野心の表明に現れた。だが、これは逆効果になった。EU(欧州連合)は、ドイツの対中姿勢が警戒ムードになったことに合わせることになった、だが、スペインが最近、対中接近姿勢をみせており、EUの統一方針を乱すリスクも抱えている。
『ロイター』(11月21日付)は、「EUの対中通商姿勢、ドイツの方針転換で強化へ
12月3日に公表予定の「経済安全保障ドクトリン」はEU欧州委員会が通商防衛の手段を見直し、中国のレアアース(希土類)供給制限や米国の強硬な通商政策などの脅威に対して一段の対応が必要かどうかを判断する。
(1)「中国は、政策の中心的課題となるだろう。欧州が環境保護対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)移行を推進するために必要な重要鉱物の供給を中国に依存している状況や、欧州企業が中国の補助金による輸出で不公正な競争にさらされている状況を巡る懸念が高まっているためだ。志を同じくする貿易相手国との関係を強化・深化させる政策変更を推し進めたり、あるいは報復措置を発動したりするためには結束が必要とされるだろう。これは、加盟27カ国が米国の関税政策に対する上でなかなか達成できなかったことだ」
欧州は、中国の補助金による輸出で不公正な競争にさらされている状況に対して、共同で対応する体制を整備しつつある。
(2)「重大なことには、域内最大の経済規模のドイツが中国に関して同調しつつある兆しが見受けられる。ドイツは1年前、中国製の電気自動車(EV)に対する関税に反対していたが「安全保障に関連する対中貿易関係」について議会に助言する専門家委員会を先週設置し、「リスク低減」戦略を復活させた。メルツ首相は今月、第6世代(6G)移動通信システムに中国企業製の部品を使用しないと表明した」
ドイツが、中国に対する姿勢を融和から警戒へ変えたことで、EUは結束して対応可能となってきた。
(3)「さらに、ドイツが長年の重視していた自由貿易の原則を覆し、欧州の鉄鋼産業の保護を訴えた。クリンクバイル副首相兼財務相は今週訪中し、中国のレアアース輸出規制や産業の過剰生産能力に懸念を示した。上海でロイターに「自由で開かれた市場を支持するが、欧州やドイツが敗者になるのは望まない」と語った。中国側の何立峰副首相はクリンクバイル氏と共同記者会見した際、中国が「公正かつ公平で差別のないビジネス環境の促進」に協力して取り組むと述べた」
中国のレアアース輸出規制によるレアアース主権宣言は、EUを心底から中国への警戒姿勢を高めている。
(4)「中国は景気減速のために、ドイツにとってもはやかつてのような安定した輸出市場でなくなっている。EUのモノの対中貿易赤字は、2019年以降約60%拡大し、ドイツの対中貿易収支は23年に黒字から赤字に転じ、赤字幅が拡大し続けている。EU首脳は10月、不公正な貿易に対抗するため、中国から大量に届く低価格小包に対する関税免除の終了を早めることなどEUの経済手段を効果的に活用するべきだという点で合意した」
EUもドイツも、そろって対中貿易で赤字幅を拡大している。中国製品のダンピングがもたらした結果だ。
(5)「欧州委が12月に発表するドクトリンは、輸出規制、投資審査、外国補助金の制限などを強調すると見込まれる。最終的な切り札は「反威圧措置規則(ACI)」で、輸出入や投資、公共調達へのアクセスを制限できる。ドイツのシンクタンク・メルカトル中国研究所のジェイコブ・ギュンター氏は、ドイツの強硬姿勢は状況を一変させる要因となり得るためEUがより強い行動を取ることができるようになる、と述べた」
EUは、「反威圧措置規則(ACI)」で中国からの経済アクセスを制限できる。ACIとは、第三国がEUやその加盟国に対して、経済的手段を使って政治的な圧力をかける行為(経済的威圧)に対抗するための法的枠組みだ。
2023年10月にEU理事会で正式に採択され、2023年12月に施行された。第三国が、貿易・投資などの手段を使って、特定の政策変更や行動を強制しようとする行為を禁じる。中国の対リトアニア制裁や、米国の一方的な関税措置などが契機になった。中国対抗への切り札になる。日本も、ACIを導入すれば、中国の圧力を跳ね返すことができよう。
(6)「欧州委のシェフチョビッチ委員(貿易・経済安全保障担当)は先月、EUが「実質的な投資」を求めていると述べた。しかし、ドイツが中国に対してこれまでよりも冷淡になると同時に、スペインは再生可能エネルギー、EV電池、鉱業の分野で中国投資を受け入れようとしている。スペインの豚肉業者も貿易協定によって販売を拡大できる上に、中国が反ダンピング調査で他のEU諸国よりも関税を低く抑えた恩恵を受けている。米シンクタンクのロジウムグループのノア・バーキン氏は、スペインの対中政策について欧州委、ドイツ、フランスで築かれた欧州のコンセンサスからますますかけ離れていると述べた。「『スペイン・ファースト』の姿勢はEUがレアアースや半導体メーカーのネクスペリアを巡る中国の経済的圧力に直面する重要な時期に結束を損なうリスクをもたらしている」と語った」
皮肉なもので、ドイツが中国へ厳しい姿勢をみせる一方、スペインが「親中姿勢」に転じた。スペインは、中国の甘い「誘惑」に乗せられたのであろう。いずれ、ドイツ同様に目が覚める時期が来るのだ。




