1990年代に北朝鮮を襲った大飢饉は、人口の3~5%に相当する60万~100万人の住民が生命を失ったものと推定されている。この大飢饉に匹敵する事態が、再び北朝鮮に起ころうとしている。
一方、北朝鮮が昨年行ったミサイル発射にかかった費用は、全住民が46日間食べられるコメを購入できることが分かった。韓国政府関係者が明らかにしたもの。国連が禁止するミサイル発射によって、北朝鮮の食糧支援の動きは鈍いという。
韓国紙『WOWKOREA』(1月20日付)は、「北朝鮮、100万人が餓死した90年代『大飢饉』以来の最悪な状況―北朝鮮専門ディア」と題する記事を掲載した。
「今の北朝鮮の食糧不足事態は、100万人ちかい餓死者を生んだ1990年代の大飢饉以来の最悪な状況だ」という診断が伝えられた。
(1)「米国の北朝鮮専門メディア“38ノース”は19日(現地時間)「北朝鮮の食糧価格と北朝鮮の食糧在庫量に関する各種の資料を分析した結果、昨年8月基準で北朝鮮の食糧可用性が最小限の水準に落ちている」と報道した。このメディアは「北朝鮮の秘密主義ゆえ、食糧事情を把握する正確な資料を確保するのが困難なため、食糧農業機関(FAO)・世界食糧計画(WFP)など国連の資料や北朝鮮専門メディアを通じて入手した資料などを比較・分析し『北朝鮮の食糧状況は、災難的な大飢饉となった1990年代以来の最悪な状況におちいっている』という結論を導き出した」と伝えた。1990年代に北朝鮮を襲った大飢饉では、人口の3~5%に相当する60万~100万人の住民が生命を失ったものと推定されている」
38ノース(38North)は、米国のシンクタンクであるスティームソン・センターが運営する情報分析サイト。北朝鮮の核関連施設やミサイル関連施設の画像分析を専門的に扱っている。この分析によれば、1990年代以来の大飢饉が北朝鮮を襲っている。
(2)「38ノースは、「このような状況にもかかわらず北朝鮮政権は核プログラムに全ての力を注いでいることから、海外援助方式の
“外交的テコ”も最小化するしかない状況だ」と指摘した。つづけて「慢性的な食糧不安定を解消するためには、財産権の強化・産業やサービス分野の開放と活性化・輸出志向的な経済モデル包容などの措置をとらなければならないが、北朝鮮政権は内部の軋轢(あつれき)と政権の終末を懸念してそのような改革を目指すことにためらっている」と付け加えた」
北朝鮮は、抜本的な経済改革が必要である。私有財産権の拡充によって、勤労意欲を高める必要があろう。ただ、下線部のように政権の終末を懸念して改革を阻害する動きもあるという。こうなると、最低限必要な食糧自給制を確立できないことになろう。
『聯合ニュース』(12月29日付)は、「食糧不足の北朝鮮、中国通じコメを大量輸入 23年6月までに50万トン」と題する記事を掲載した。
新型コロナウイルスの感染拡大や自然災害で食糧不足に陥っている北朝鮮が中国を通じたコメの大量輸入に動いていることが29日、分かった。
(3)「中国内の消息筋によると、北朝鮮は中国の貿易会社2~3社とコメの購入契約を結び、先週から中国・大連の港を通じて輸入を始めた。23年6月にかけて計50万トン程度を北朝鮮に運ぶ予定という。消息筋は、コメの輸送のため最近は1日に3~5隻の北朝鮮船舶が毎日この港に入港していると伝えた。コメは比較的安価なベトナム産などが中心だという」
北朝鮮は、23年6月にかけて計50万トン程度のベトナム米を輸入する。
(4)「北朝鮮は22年、新型コロナ拡大、春の干ばつや夏の洪水、コロナによる中朝陸路貿易の停滞に伴う肥料不足などが影響し、深刻な食糧不足に陥っているとされる。韓国農村振興庁は12月14日、今年の北朝鮮の食糧収穫量は451万トンで前年比18万トン減少したと推定。北朝鮮が23年は食糧の輸入を例年より増やす可能性があると予想した。また、韓国政府の関係者は19日、北朝鮮の食糧事情を考慮すると、例年と同程度の穀物を輸入するとしても23年も食糧が80万トン程度不足するとの見方を示した。北東部の咸鏡北道で食糧不足により多くの餓死者が出たとも伝えた」
北朝鮮は、例年通りの食糧輸入をしても80万トン程度の不足になるという。冒頭で「38ノース」が、1990年代以来の大飢饉の到来を予想するのは、こういう食糧事情を指していると見られる。