韓国は、「半導体大国」を自慢してきたが、売上トップの座がサムスンから台湾TSMCに移ったことが分った。7~9月期の売上高で逆転されたもの。台湾のTSMCの売上は、約2兆8000億円。前年同期より48%も増えた。サムスン電子の売上は約2兆4000億円に止まった。
明暗を分けたのは、メモリー型半導体主体のサムスンが市況下落に見舞われた一方、TSMCの非メモリー型半導体が受注生産で市況下落と無縁であったことだ。改めて、非メモリー型半導体メーカーの強みを見せた形だ。
『中央日報』(10月11日付)は、「TSMCの逆転、韓国半導体産業の危機」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・チャンギュ経済エディターである。
半導体は、情報保存用のメモリー半導体と、情報処理用の非メモリー半導体に分かれる。サムスン電子が世界1位であるメモリー半導体は景気の流れに敏感だ。非メモリー半導体は大きく3分野に分かれる。まずサムスン電子やインテルのように設計から生産まで行う総合半導体企業がある。また、クアルコムやAMDのように生産施設をもたず設計だけするファブレス企業があり、ファブレス企業が設計した半導体を委託で生産するファウンドリー企業がある。
(1)「景気低迷で需要が減ったりはしたが、ファウンドリー市場はまだ熱い方だ。オーダーメード型製品を生産し市況にあまり敏感でなく安定的だからだ。また、車載用半導体は依然として供給不足の上に、アップル、グーグル、テスラなど半導体を作っていなかった会社まで半導体設計に飛び込んでいる。世界のファウンドリー市場は今年の986億ドルから2025年には1456億ドルに成長する見通しだ」
メモリー型半導体は汎用品である。どの製品にも使われるだけに、大量生産によるコストが勝負になる。どうしても、過剰生産の弊害から逃れられない宿命を負う。非メモリー型半導体は、受注生産であるから事前に価格も取り決められている。この違いは、市況安定力という面で大きく影響する。
(2)「TSMCは、初のファウンドリー企業だ。米テキサス・インスツルメンツなどで勤めたモリス・チャンが1987年に台湾政府などが出資した資本金で設立した。当時の台湾は、生産能力は優れている方だった。だが米国など競合国より設計能力が遅れていた。そこで考え出したビジネスモデルが、顧客が設計した半導体を受託生産するファウンドリーだった。下請け会社にすぎないという批判もあったが、35年間一筋にやってきた。「顧客と競争しない」という社訓の下、委託生産以外には設計などに目を向けなかった。時間が過ぎるほど技術力は蓄積され顧客との信頼は厚くなった」
非メモリー型半導体企業は、顧客の発注とともに成長した。ここに技術流出を避けたいファブレス企業が、競合企業になりかねない総合半導体企業よりもファウンドリー企業を好む傾向がある点も有利に作用した。非メモリー型半導体メーカーは、多くの企業の半導体生産要請に応えてきたので、この間の技術的蓄積がモノを言うようになってきた。
(3)「ファウンドリー市場のシェアでは、TSMCが53%、サムスン電子が16%前後で、両社の格差がますます広がる。TSMCは、「台湾半導体製造会社」という意味だ。会社名から感じられるように公企業から始まったこの会社に対する台湾政府の支援は強力だ。台湾は大規模投資が必要な未来産業の場合、核心技術から人材・研究開発・税制までほぼ全分野を連係して総合支援する」
TSMCは、社名からも分るように台湾政府の支援を受けて成長してきた経緯がある。手厚い政府の支援は、他の半導体企業も享受している。
(4)「台湾半導体産業の法人税負担率は、2019~2021年の平均で14.1%と韓国の26.5%の半分水準にすぎない。企業単位で見ればTSMCは10.9%で、サムスン電子の27%の40%水準だ。また、海外の高級人材を誘致するために所得が300万台湾ドル以上の際の超過分の半分に対してだけ課税する。こうして売上額10億ドルを超える半導体企業の数は台湾が28社で韓国の12社の2.3倍に達する」
台湾半導体の法人税率は14.1%で、韓国の27%に比べ4割の水準だ。売上額10億ドルを超える半導体企業の数は、台湾が28社で韓国12社を圧倒している。台湾が半導体生産で飛び抜けた存在になったので、中国による台湾侵攻リスクが取沙汰されるようにもなっている。