a0070_000030_m
   

アップルは、脱中国の動きを本格化させている。アップルのサプライヤーである台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業は、インドのiPhone工場の人員を今後2年間で4倍にする計画が明らかになったからだ。

 

これまで、インドの部品製造能力に問題があるとして、アップルのiPhone生産は中国に集中してきた。だが、中国はゼロコロナでいつ生産が止るか分からないリスクを抱えている。これに加えて、急激な人件費アップも「脱中国」を促進させている。こういう経済的な要因以外に、地政学的リスクという企業レベルでは対処不可能な問題が持ち上がった。

 

それは、米中対立問題である。米国政府は、アップルが中国の半導体大手の長江存儲科技(YMTC)からiPhone向け部品を調達していることに規制が加わってきたことだ。米国政府は、半導体を巡る中国への規制を段階的に強化しており、その一環としてYMTCからの半導体供給を問題視しているものだ。

 

『ロイター』(11月11日付)は、「鴻海、インドのiPhone工場従業員を4倍にー関係筋」と題する記事を掲載した。

 

米アップルのサプライヤーである台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業は、インドのiPhone工場の人員を今後2年間で4倍にする計画。台湾政府関係者が明らかにした。

 

(1)「鴻海の中国・鄭州工場は、厳格な新型コロナウイルス規制で生産が混乱しており、アップルは「iPhone14」と「iPhone14 Pro Max」の出荷台数が、従来の想定より少なくなるとの見通しを示している。鴻海はインド南部の工場従業員を今後2年間で5万3000人増やし7万人とする計画。鄭州工場の従業員数(20万人)との比較では少ないが、中国からインドに生産をシフトするアップルの取り組みの柱となる。(台湾)政府関係者は、iPhoneの需要拡大に対応することが主な狙いだと説明。台湾の関係者は、基本モデルの生産能力拡大とインドの需要への対応が目的だと述べた」

 

インドにとっては朗報である。IT企業の育成が課題だっただけに、念願のアップル製品の生産が増えることで、直接的な雇用増のほかに関連産業が刺激を受け発展基盤が整うことである。鴻海は、インド南部の工場従業員を今後2年間で5万3000人増やし7万人とする計画という。将来は、さらに増えるであろう。蟻の一穴で堤防は崩れるというが、ゼロコロナと米中デカップリングが引き起こした「脱中国」の動きである。

 


英誌『エコノミスト』(10月29日号)は、「アップル、インド・ベトナムに視線」と題する記事を掲載した。

 

インド南部のチェンナイとべンガルールを結ぶ車の多い道路沿いに3つの巨大な建物が並ぶ。外の騒音から遮断された建物内には台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)が運営するハイテク機器の製造施設が広がる。車でさらに少し行くと台湾のテック企業、和碩聯合科技(ペガトロン)の広大な新工場が目に入る。フィンランドの充電器メーカー、サルコンプの新工場も遠くない。さらに西にはインド大手財閥タタ・グループが新設した500エーカーに及ぶ拠点がある。アップルにとってこれら新工場は新たな章の幕開けを意味する。

 

(2)「ベトナムとインドはアップルの生産拠点見直しの最大の受益国だ。同社の大手サプライヤーのうち両国の企業数は17年の18社から21年には37社に増えた。昨年9月にはインドで最新機種のiPhone14の生産も始めた。ベトナムでノートパソコンの生産を近く始めるとの報道もあった。イヤホン「AirPods(エアポッズ)」は半分近くがベトナムで作られており、米銀大手JPモルガン・チェースは25年までにこれが3分の2になるとみる。同行は、中国外で生産されるアップル製品は今、全体の5%弱だが、25年までに25%に上昇すると予想する

 

JPモルガン・チェースによれば、中国外で生産されるアップル製品は、25年までに25%(現在5%弱)に上昇すると見る。かくて、中国の牙城は崩れる運命だ。