インドネシア政府は、中国の出資で建設された総額73億ドルの高速鉄道を運営する会社の株式6割を引き受ける方針だ。プルバヤ財務相と、政府系ファンド「ダナンタラ」の幹部が明らかにした。これは、インドネシアが高速鉄道運営会社の支配権を持つことで、今後の高速鉄道延伸問題で日本との提携可能性を示唆している。
インドネシアは、中国依存を減らし主導権を取り戻す「したたかな国家戦略」を進めている。高速鉄道は、中国の象徴的プロジェクトである。その主導権が、現地政府に移るのは、
中国の海外戦略にとって明確な後退に当たる。中国が建設した高速鉄道は、路線設定のミスが重なって大赤字に陥っている。今後の路線延長は技術力の高い日本へ委託する案も浮上しており、日本側へ有利に展開している。
『ロイター』(8月8日付)は、「中国出資の高速鉄道、インドネシア政府が運営会社の株引き受けへ」と題する記事を掲載した。
プルバヤ財務相は5日、ダナンタラとの共同記者会見で、高速鉄道を運営する
KCICの60%株を引き受けさせるため、財務省傘下の機関を指名する意向を示した。株式の金額的な価値については明らかにしていない。
(1)「「ウーシュ」の名称で運行されている全長142キロメートルの高速鉄道は、首都ジャカルタと南東部の都市バンドンを結んでいる。プルバヤ氏によると、この機関はプロジェクトの残存債務の返済責任を負うが、国家予算は使わない。高速鉄道プロジェクトは、用地取得の問題、新型コロナウイルス流行に伴う遅延、事業費の膨張など、さまざま問題を抱えてきた」
「残存債務の返済責任は負うが、国家予算は使わない」とは、非常に巧妙な戦略である。インドネシアの狙いは、次の点にある。債務返済は高速鉄道収益で行う。国の財政負担は避ける。しかし、経営権は握るというもので、中国の影響力を抑える、としている。リスクは最小化しつつ、主導権を最大化するというものだ。これは、高速鉄道延伸でインドネシア政府の裁量で行うという宣言でもある。日本の新幹線採用へ傾いているからだ。
今回の件は、中国の海外インフラ戦略が抱える構造的問題を示している。中国高速鉄道による建設は、コスト膨張、工期遅延、債務負担の増大によって、現地政府の不満を高めている。また、中国企業の強引な運営が反発を買っており、現地の政治変化に対応しきれなくなっている。インドネシアは、これらの問題を理由にして、中国主導から脱却しようとしている。
(2)「KCICの株式60%は現在、国鉄クレタ・アピ・インドネシア(KAI)を中心とするインドネシア国営企業連合が保有しており、建設会社のウィジャヤ・カルヤも相当の株式を保有している。中国国営企業は引き続き40%株を保有する」
インドネシア政府は、KCICの過半数株式(60%)を握る。これは、中国の同意なしに、路線延伸・追加建設・運営方式の変更を決められることになる。中国は40%しか持たないため、インドネシアが延伸・新線を中国に任せる義務はなくなる。これは極めて大きい転換点である。なぜ、インドネシアは中国主導を嫌ったのか。中国のやり方では、高速鉄道の持続可能性がないと判断した可能性が高い。インドネシアは、高速鉄道の延伸を検討している。バンドン→スラバヤ、ジャカルタ→スマラン、ジャワ島横断高速鉄道などだ。プラボウォ政権は、「バランス外交」を取っており、中国一辺倒を避け、日本・米国との関係を強化する方向である。



