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中国はここ3年間、新型コロナウイルスに振り回され続けている。これまで羊のように温和しかった若者が、ついに「牙」を剥いて街頭へ繰り出し不平不満を公然と言い募る事態だ。アップル製品を組立てる主力工場(河南省鄭州市)では、労働者がコロナによる閉じ込めに反発し、工場を脱出して帰郷する騒ぎまで起こっている。こうした一連の騒ぎの中で、アップルは中国依存の生産体制に見切りを付ける段階になった。 

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月5日付け)は、「米アップル、生産拠点を中国外に移す計画加速」と題する記事を掲載した。 

米アップルは生産拠点の一部を中国外に移す計画を加速している。協議に関わる複数の関係者が明らかにした。中国は同社のサプライチェーンで長らく支配的な地位を占めてきた。関係筋によると、同社はサプライヤーに対し、インドやベトナムなどアジアの他の国でアップル製品を生産することをもっと積極的に計画するよう伝えている。電子機器受託製造大手、鴻海科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)を中心とする台湾勢への依存を減らしたい考えだという。

 

(1)「iPhone(アイフォーン)」シティーと呼ばれる中国・河南省鄭州市の大規模製造拠点での混乱がアップルの生産移転の加速につながった。フォックスコンが運営するこの工場では約30万人が働いており、iPhoneなどのアップル製品を製造している。市場調査会社カウンターポイント・リサーチによると、一時期はこの拠点だけでiPhone Proシリーズの約85%を製造していた。この工場では11月下旬、従業員による抗議活動が起きた。オンラインに投稿された動画では、賃金や新型コロナウイルス関連の制限に憤慨した従業員が物を投げ、「権利のために立ち上がろう」と叫んでいる様子が映っている」 

鄭州市で、iPhone Proシリーズの約85%を製造していた。こうした一カ所での集中生産リスクが、今回の労働者の「大量帰郷」によって現実化した。このリスクを避けるのは、経営として当然である。

 

(2)「アップルのサプライチェーンの関係者やアナリストによると、安定した製造拠点としての中国の地位を弱める出来事が1年にわたり相次いだ末に起きた今回の混乱で、アップルは事業の大部分を一つの場所に依存するのは問題だと考え始めた。フォックスコンの元米国幹部は「以前、人々は集中リスクを気にしなかった」と指摘。「自由貿易が標準で、状況は十分に予測可能だった。今は新しい世界に入った」と述べた」 

中国では、これまでの低賃金と社会安定という二大要因が消えかかっている。厳格な社会統制のもたらした歪みである。アップルは、中国に代わる新たな生産拠点が求められる時代に転換していることを認識した。

 

(3)「アップルのサプライチェーンに携わる関係者によると、対応策の一つは、中国に拠点を置く企業を含め、より多くの組み立て業者を利用することだ。アップルとの取引拡大を狙う中国企業としては、立訊精密工業(ルクスシェア・プレシジョン・インダストリー)と聞泰科技(ウィングテック)の2社が挙げられるという。ルクスシェアの幹部は今年行われた投資家との電話会議で、消費者向けエレクトロニクス製品企業の一部顧客が、コロナ対策や電力不足などによって引き起こされた中国のサプライチェーンの混乱を懸念していると述べた。企業名は明かさなかったが、これらの顧客はルクスシェアに中国国外の生産を増やす手助けをしてもらいたいと考えているという」 

アップルは、鴻海(ホンハイ)と深いつながりを持ってきたが、新たに中国の二社とも関係を持ち、中国国外の生産に進出する。

 

(4)「アップルが生産拠点を中国以外に移す動きは、中国の経済力を脅かす二つの要因によって進行している。中国の若者の中には、裕福な人が使う電子機器の組み立てを低賃金で行うことに抵抗感を抱くようになった者もいる。不満の原因の一つは政府の強引なコロナ対策だが、そのコロナ対策自体もアップルをはじめとする多くの西側企業にとって懸念材料だ。コロナの流行が始まってから3年たつが、他の多くの国々がコロナ禍前の日常に戻ったのに対し、中国はいまだに隔離などの措置で感染を抑え込もうとしている」 

下線部こそ、中国が異質の社会であることを自ら証明した。「ゼロコロナ」という非科学的な措置を「中国式社会主義」として押し通す感覚は、完全に世界の動きからずれてしまっているのだ。

 

(5)「中国の各都市で最近行われた抗議デモでは、習近平国家主席の退陣を求める声も上がり、コロナ対策の規制措置に対する批判が政府に対するより大きな運動に発展する可能性がうかがえた。加えて、中国の軍事力の急速な拡大や中国製品に対する米国の関税などを巡り、米トランプ・バイデン両政権下で米中間の軍事・経済的緊張が5年以上続いている」 

中国は、台湾侵攻という地政学的リスクを抱えている。台湾有事になれば、中国での生産はストップしてアップルは大損害を被る。こういうリスクを計算に入れる段階になっているのだ。

 

(6)「アップルのサプライチェーンに詳しい天風国際証券のアナリスト郭明錤氏によると、アップルの長期目標は、インドからのiPhone出荷割合を現在の1桁から40〜45%に拡大することだという。アップルのサプライヤーによれば、ベトナムはAirPods(エアポッズ)やスマートウオッチ、ノートパソコンなど他のアップル製品の製造をより多く担うとみられる」 

インドからのiPhone出荷割合は、現在の1桁から40〜45%に拡大するという。インドが、いずれ中国に代わって主力工場所在地に踊り出ることになろう。ベトンナムは、iPhone以外のアップル製品を生産すると見られる。こうなると、中国は空洞化するはずだ。